JP4649892B2 - ハードコートフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はハードコートフィルムの製造方法に関し、より詳しくは活性エネルギー線照射によるハードコート層の急激な硬化収縮を抑制し平面性を改善したハードコートフィルムの製造方法に関する。
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルムなどの光学用途に使用される透明樹脂フィルムでは、様々な機能を持たせるために幾つかの機能性薄膜層が塗設されている。機能性薄膜としては、例えば、帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層、膜付き性を向上させるための下引き層、カールを防止するためのアンチカール層、或いは防眩層、反射防止層などである。この中で特にハードコート層と反射防止層は重要である。
上記透明樹脂フィルムにハードコート層を形成する際、通常紫外線等の活性エネルギー線により硬化する硬化物層を塗工し、活性エネルギー線を照射し硬化させる。この時、活性エネルギー線照射によるハードコート層の急激な硬化収縮が起こり、平面性が劣化するという問題があり、この改善が求められていた。特に広幅の透明樹脂フィルムではその現象が顕著であった。更に、ハードコート層を形成したハードコートフィルム上に反射防止層を設けると、基材の平面性の状態により色ムラが発生し、酷い場合はその部分は廃棄することとなり、生産性が著しく悪いものであった。特に表示装置の前面に用いられる偏光板或いは反射防止フィルムではその要求性能が厳しく、より色ムラのない均一性に優れた光学薄膜が望まれていた。
また、樹脂フィルム基材上に架橋硬化型塗料を塗布した後、加熱ロールに巻き付けて裏面から加温しつつ紫外線を照射することにより硬化させて塗膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)が記載されているが、この方法で作製した硬化樹脂層を有するプラスチックフィルム上に反射防止層を形成すると、塗布むらが生じその改善が求められていた。更に、薄膜を形成する際、破断が多く著しく生産性を低下し、その改善が求められていた。
特開平3−4969号公報
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は活性エネルギー線照射によるハードコート層の急激な硬化収縮を抑制し平面性を改善したハードコートフィルムの製造方法で、且つ反射防止層を設けた時に反射色ムラ、破断の低減したハードコートフィルムの製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
(請求項1)
幅1.4〜4mの樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた後、活性エネルギー線の照射時間(t)と照度(W)の関係が下記a、bの範囲に調整された活性エネルギー線照射ゾーンを通過させて、活性エネルギー線を照射し硬化することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
a.最大照度Wmaxが0.1〜0.3(W/cm2)の範囲
b.照射開始から最大照度Wmaxに達するまでの傾きdW/dtが、0.1〜0.6(W/cm2・sec)の範囲
(請求項
前記樹脂フィルムがセルロースエステルフィルムであり、かつ膜厚が10〜60μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
本発明により、活性エネルギー線照射によるハードコート層の急激な硬化収縮を抑制し平面性を改善したハードコートフィルムの製造方法で、且つ反射防止層を設けた時に反射色ムラ、破断の低減したハードコートフィルムの製造方法を提供することが出来る。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、幅1.4〜4mの樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた後、活性エネルギー線の照射時間(t)と照度(W)の関係が下記a、bの範囲に調整された活性エネルギー線照射ゾーンを通過させて、活性エネルギー線を照射し硬化することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法により上記課題を達成出来ることを見出したものである。
a.最大照度Wmaxが0.1〜0.3(W/cm2)の範囲
b.照射開始から最大照度Wmaxに達するまでの傾きdW/dtが、0.1〜0.6(W/cm2・sec)の範囲
本発明者らは、活性エネルギー線照射の照射エネルギー量や照度と、活性エネルギー線硬化樹脂層の硬化状態について詳細な検討を加えた結果、従来の活性エネルギー線の照射は、一般的に集光型の反射板を設けたランプによってその集光位置近傍で照射行う為、照射開始から最大照度に達するまでの傾きが急峻になる為、活性エネルギー線硬化樹脂層の急激な硬化収縮の発生が起こり易いという解析結果を得、照射条件を上記の範囲内に改善することで本発明の第1の目的である平面性の向上が達成出来ることを見出したものである。
本発明のハードコートフィルムの製造方法及び用いる装置について図をもって説明する。
図1は本発明のハードコートフィルムの活性エネルギー線照射ゾーンの概略構成図である。図中、搬送される樹脂フィルム1は矢印方向に連続搬送されており、該樹脂フィルム上には塗布装置(不図示)により活性エネルギー線硬化樹脂層が塗布され、塗布物中に溶剤が含有する場合は乾燥工程(不図示)を経た後、樹脂フィルムはバックアップロール2にて背面を支持しながら、1個の活性線光源10を用いて活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化物層を硬化する。活性エネルギー線光源10は、ランプボックス3を有し、その中には反射板4及び活性エネルギー線を発生するランプ5を内蔵している。該ランプボックスは塗布工程で用いられた溶媒等の引火を防止するため防爆構造とすることが好ましく、また冷却機構を有することが好ましい。本発明では、反射板4は一般の集光型でもよいが、集光型の場合には光路上に拡散面を有するガラス板を設置することが好ましく、より好ましくは拡散型反射板を用いることである。
図2は本発明のハードコートフィルムの活性エネルギー線照射ゾーンの別の概略構成図である。活性エネルギー線照射ゾーンを2ケ所設けることにより、均一な活性エネルギー線を照射出来る。
上記照度測定は、活性エネルギー線が紫外線の場合は、アイグラフィックス(株)UV METER UVPF−36、家田貿易(株)紫外線強度計 RMX−3W、VLX−3W等により行うことが出来る。
本発明では、a.最大照度Wmaxが0.1〜0.3(W/cm2)の範囲であり、かつb.照射開始から最大照度Wmaxに達するまでの傾きdW/dtが、0.1〜0.6(W/cm2・sec)の範囲に入ることが本発明の効果を得る上で必須である。最大照度Wmaxが0.1未満では硬化しないか、ばらつきが生じやすく、0.3を超えると樹脂層の収縮により平面性が劣化する。傾きdW/dtが、0.1未満の場合は硬化に必要な活性エネルギー線の光量を得るのに長時間を要したり、フィルムの搬送速度が極端に遅くなるなど生産効率が低下する。傾きdW/dtが0.6を超えると、前述のように急激な硬化収縮が起こり平面性が劣化する。
この様な範囲に照度及び傾きを調整する方法としては、後述する活性エネルギー線照射ランプの種類、反射板の種類/構造(集光型乃至は拡散型)、拡散板の設置、透明樹脂フィルムの搬送速度、ランプ〜透明樹脂フィルム間の距離等を適宜変化させることによって調整することが出来る。
更に、本発明では活性エネルギー線のランプから活性エネルギー線硬化樹脂層表面までの照射距離(x)と照度(W)の関係がc.dW/dxが0.005〜0.025(W/cm2・cm)の範囲に調整されていることが好ましい。0.005未満では硬化に必要な活性エネルギー線の光量を得るのに長時間を要したり、フィルムの搬送速度が極端に遅くなるとか、照射ゾーンの大きさが極端に大きくなるなど生産効率が低下する方向なので好ましくない。0.025を超えるとランプから硬化樹脂層までの距離が小さくなる為、照射開始から最大照度Wmaxに達するまでの傾きdW/dtを本発明の範囲内に調整することが困難になる。
は、本発明に用いられる活性エネルギー線照射ランプ及び反射板の形状を表した模式図であるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
aは集光型反射板を有する活性エネルギー線照射ランプの構成、図bはその光軸上に拡散板を設置した構成、図cは拡散型反射板を有する活性エネルギー線照射ランプの構成を示す模式図である。
本発明のランプ、反射板の構成は集光型、拡散型のどちらでも使えるが、上述の理由により集光型では集光点での使用よりも集光拡散点での使用が好ましい。但し、照射ランプと透明樹脂フィルムとの距離が大きくなり効率が低下する可能性がある為、光路上に拡散板6を設置し集光点で使用することも好ましい。更に拡散型(平行光型ともいう)は、本発明の活性エネルギー線の照射時間(t)と照度(W)の上記a、bの関係を調整し易い為、特に好ましい態様である。この場合でも拡散板6を設置することも出来る。
活性エネルギー線が紫外線の場合は、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の市販のランプを用いることが出来る。
反射板の材料としては、活性エネルギー線の透過率が低い若しくは活性エネルギー線を透過しない材料であればどのようなものでも良く、例えば、金属板、不透明樹脂板や紙等種々の材料を用いることが出来る。反射板は、耐久性、遮蔽性の観点から、好ましく金属板であり、鉄、銅、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、鉛、或いはこれらの何れかを主成分とする合金等が挙げられるが、ステンレス板或いはアルミニウム板が好ましく、特に活性エネルギー線光源側は鏡面加工がほどこしてあることが好ましい。また、活性線光源側に熱線を吸収して紫外線を反射する皮膜、例えばTiO2等の酸化金属蒸着膜を被着したコールドミラーで構成しても良い。
以下、本発明に用いられる材料について詳細に説明する。
本発明で用いられる樹脂フィルムには特に限定はなく、例えば、透明樹脂フィルムとしてポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート或いはセルロース誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム或いはポリアリレート系フィルム等を挙げることが出来る。
本発明では特に幅広の樹脂フィルムに対して優れた硬化を有し、特に幅1.4〜4mの樹脂フィルムに対して好ましく適用される。また、特に樹脂フィルムがセルロースエステルを含有するフィルムに対して優れた効果が期待出来る。これはセルロースエステルフィルムは可塑剤等の添加物を有しており、塗布溶媒による溶解や膨潤を受けやすい性質がある。セルロースエステルフィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルローストリアセテート(TAC)などが挙げられる。特に膜厚が10〜60μmである薄膜フィルムではその影響が顕著であり、高度な平面性が要求される光学フィルムの製造方法として、本発明の方法は優れた効果を発揮することが出来る。
以下、セルロースエステルフィルムの製膜法について述べる。セルロースエステルフィルムは一般的に、セルロースエステルフレーク原料及び可塑剤をメチレンクロライドに溶解して粘稠液とし、これに可塑剤を溶解してドープとなし、エクストルーダーダイスから、エンドレスに回転するステンレス等の金属ベルト(バンドともいう)上に流延して、乾燥させ、生乾きの状態でベルトから剥離し、ロール等の搬送装置により、両面から乾燥させて巻き取り、作られる。本発明の光学フィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムは、乾燥過程でテンター等の装置によってフィルムの端部を把持され、幅方向に張力を付与して幅保持若しくは延伸されたものであることがより高い平面性が得られるために好ましい。
本発明の光学フィルムの製造に用いられるセルロースエステルフィルムのセルロースエステル樹脂としては、セルロースの低級脂肪酸エステル樹脂であることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸が好ましく、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの特に好ましい例として挙げられる。
また、上記以外にも、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることが出来る。上記記載の中でも、最も好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルとしてはセルローストリアセテート(以下、TACという)、セルロースアセテートプロピオネートである。
本発明に係るセルロースエステルの数平均分子量は、70,000〜250,000が、成型した場合の機械的強度が強く、適度なドープ粘度となり好ましく、更に好ましくは、80,000〜150,000である。
本発明で用いられるセルロースエステルとしては、アセチル基及び/またはプロピオニル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をX、またプロピオニル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルが特に好ましい。
(I)2.5≦X+Y≦3.0
(II)0≦Y≦1.2
アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することが出来る。
セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独或いは任意の比率で混合して用いることが出来る。ベルトやドラムからの剥離性が若しくは問題になれば、ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用すれば生産性が高く好ましい。木材パルプから合成されたセルロースエステルを混合して用いた場合、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が40質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため好ましく、60質量%以上が更に好ましく、単独で使用することが最も好ましい。
ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解出来る溶媒であれば何でも良く、また単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解出来るものであれば使用することが出来る。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
このほか使用出来る良溶媒としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来るが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独若しくは2種以上を適宜組み合わせて用いることが出来る。
本発明で用いることの出来る可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを用いることが出来る。
リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等或いはトリメチロールプロパントリベンゾエート等を好ましく用いることが出来る。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることが出来る。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることが出来る。
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることが出来る。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロースエステルとの相溶性の点から好ましい。
また、200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、更に好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)、上記ポリエステル可塑剤等が挙げられる。
これらの可塑剤は単独或いは2種以上併用して用いることが出来る。
可塑剤の使用量は寸法安定性、加工性の点を考慮すると、セルロースエステルに対して、1〜40質量%添加させることが出来、3〜20質量%の範囲で添加することが好ましく、更に好ましくは4〜15質量%である。3質量%未満の場合は、スリット加工や打ち抜き加工した際、滑らかな切断面を得ることが出来ず、切り屑の発生が多くなる。
本発明のセルロースエステルフィルムには酸化防止剤や紫外線吸収剤などを添加することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト等が挙げられる。特に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
また、この他、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤を加えてもよい。
本発明のセルロースエステルフィルムは、その高い寸法安定性から、偏光板または液晶表示用部材等に使用されるが、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。具体的には380nmの透過率が10%未満であることが好ましく、特に5%未満であることがより好ましい。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。また、特開平6−148430号、特開2002−47357号記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。或いは特開平10−152568号に記載されている紫外線吸収剤を用いることも出来る。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては下記一般式〔1〕で示される化合物が好ましく用いられる。
Figure 0004649892
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一でも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシル基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ若しくはジアルキルアミノ基、アシルアミノ基または5〜6員の複素環基を表し、R4とR5は閉環して5〜6員の炭素環を形成してもよい。
また、上記記載のこれらの基は、任意の置換基を有していて良い。
以下に本発明に係る紫外線吸収剤の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
UV−1:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−2:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−3:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−4:2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−5:2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
UV−6:2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)
UV−7:2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
UV−8:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール(TINUVIN171、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
UV−9:オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物(TINUVIN109、チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
以下にベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
UV−10:2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
UV−11:2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
UV−12:2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン
UV−13:ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムでは、フィルムに滑り性を付与し、ロール状フィルムのブロッキングを防止するために微粒子を添加することが好ましい。
本発明に係る微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
無機化合物としては、珪素を含む化合物、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースエステル積層フィルムの濁度を低減出来るので、二酸化珪素が特に好ましく用いられる。
二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用出来る。
有機化合物としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
上記記載のシリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用出来る。
微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを好ましく使用することが出来る。
《調製方法A》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープ液に加えて撹拌する。
《調製方法B》
溶剤と微粒子を撹拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。ここで添加するセルロースエステルとして、本発明の固形物を添加することが特に好ましい。
これに前記微粒子分散液を加えて撹拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
《調製方法C》
溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
《分散方法》
二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースエステルに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースエステル100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部が更に好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方がヘイズが低く、凝集物も少ない点が優れている。
分散機は通常の分散機が使用出来る。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)社製UHN−01等が挙げられる。
また、これらの微粒子はフィルムの厚味方向で均一に分布していてもよいが、より好ましくは主に表面近傍に存在するように分布していることが好ましく、例えば、共流延法により、2種以上のドープを用いて、微粒子を主に表層側に配置されたドープに添加することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。好ましくは3種のドープを使用して表層側の少なくとも1つのドープ若しくは表層側の2つのドープに主に微粒子を添加することが望ましく、中心層を形成するドープには微粒子がほとんど含まれないか、まったく含まれないことが好ましい。可塑剤或いは紫外線吸収剤などでブリードアウトの恐れがある添加剤は主に中心層を形成するドープに添加し、表層側の2つのドープには中心層を形成するドープへの添加量に対して80質量%未満の添加量とすることが好ましく、より好ましくは50質量%未満とすることであり、ほとんど添加しないかまったく添加しないことが、工程汚染を防止する点でより好ましい。
この様な製膜工程で得られたセルロースエステルフィルムを一度巻き取った後、或いは巻き取ることなく連続的に、本発明のハードコートフィルムの製造方法によって、塗布層を設けることが出来る。
本発明に係る活性エネルギー線線硬化樹脂層について説明する。活性エネルギー線線硬化樹脂層とは紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応などを経て硬化する樹脂を主たる成分とする層をいう。活性エネルギー線線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などが代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性エネルギー線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、若しくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種若しくは2種以上を選択して使用することが出来る。
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、テトラメチルウラムモノサルファイド、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。紫外線硬化性樹脂組成物に用いられる光反応開始剤また光増感剤は該組成物100質量部に対して0.1〜15質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。
活性エネルギー線としては、電子線、X線、放射線、可視光線、紫外線等が挙げられるが、特に紫外線が好ましく用いられ、その場合、紫外線を発生する光源であればいずれでも使用出来る。例えば、前記した低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることが出来る。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cm2程度あればよく、好ましくは、50〜2000mJ/cm2である。近紫外線領域から可視光線領域にかけてはその領域に吸収極大のある増感剤を用いることによって使用出来る。
また、活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、若しくは2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性が優れたフィルムを得ることが出来る。
更に活性線を照射する際の雰囲気温度を15〜45℃の範囲にすることが好ましい。45℃を超えると熱の為に平面性が劣化し易い。上記温度範囲にする為に、活性エネルギー線照射ゾーンに温度制御可能な送風装置を組み込むことが出来る。
この活性エネルギー線線硬化樹脂層に、表示装置パネルの表面に防眩性を与えるために、また他の物質との密着性を防ぐために、或いは耐擦り傷性付与のために、無機或いは有機の微粒子を加えることも出来る。例えば、無機粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることが出来、また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、或いはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物に加えることが出来る。これらの粒子粉末の平均粒径としては、0.01μm〜10μmであり、紫外線硬化樹脂組成物と微粒子粉末との割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜20質量部となるように配合することが望ましい。防眩効果を付与するには、平均粒径0.1〜3μm、樹脂組成物100質量部に対して1〜15質量部が好適である。
また更に、ブロッキング防止機能を果たすものとして、或いは微細な凹凸を形成するため上述したものと同じ成分で、体積平均粒径0.005〜0.1μmの粒子を樹脂組成物100質量部に対して0.1〜5質量部、併せて用いることも出来る。
塗布液に含まれる有機溶媒は紫外線照射前に蒸発させるため、乾燥工程を必要とする。
塗布液として使用出来る有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル(具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等)、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート))、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素類その他の溶媒などが挙げられる。特にこれらに限定されるものではないが、これらを適宜混合した溶媒が好ましく用いられる。
活性エネルギー線線硬化樹脂を含有する塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。塗布量はウェット膜厚で0.1〜30μmが適当で、好ましくは、0.5〜15μmである。
活性エネルギー線線硬化樹脂を含有する塗布液は塗布乾燥された後、紫外線等の活性線を照射するが、照射の条件は前述した通りである。照射時間に特に制限はないが、0.1秒〜5分が好ましく、硬化性樹脂の硬化効率、作業効率等から0.1秒〜1分がより好ましい。
本発明の活性エネルギー線線硬化樹脂を含有する塗布液には好ましくは有機溶媒が用いられる。このとき、樹脂フィルムを溶解若しくは膨潤させる性質を有する溶媒を用いることが塗設された層と樹脂フィルムとの密着性に優れるため好ましく用いられる。溶剤としては前述の溶剤が用いられる。
本発明のハードコートフィルムの製造方法により製造されたハードコート層上に高屈折率層或いは低屈折率層などの反射防止層を塗設し光学フィルムを形成することが出来、反射光の色ムラが著しく改善された光学フィルムが得られる。
本発明の製造方法により得られる光学フィルムの層構成としては、下記の例が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。このうち、クリアハードコート層、防眩性ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層のうち少なくとも1層は塗布乾燥の後、活性線照射し硬化する層とすることが出来る。反射防止層はTiやSiのどの金属アルコキシドを用いたゾルゲル法で形成してもよく、Zr、Zn、Ti、Si、Sn、In等の金属酸化物微粒子とバインダーを含む組成物を塗設してもよい。
バックコート層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/樹脂フィルム/クリアハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/樹脂フィルム/防眩性ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
本発明によって得られた光学フィルムは平面性に優れるため、特に液晶表示装置、或いは有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイの前面に用いられる反射防止フィルム或いは防眩フィルム、クリアハードコートフィルムとして有用であり、優れた視認性を提供することが出来、これらを偏光板保護フィルムとして用いた偏光板或いは表示装置を提供することが出来る。
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
《透明樹脂フィルムの作製》
(ドープ組成物)
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.88) 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1質量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 1質量部
酸化珪素微粒子(アエロジル200V) 0.1質量部
メチレンクロライド 430質量部
メタノール 90質量部
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解した。
次に、このドープ組成物を濾過、冷却して33℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離後、テンターによって幅把持しながら乾燥させ、幅手方向で1.1倍となるように延伸し、更に多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ膜厚40μm、幅1.5mの透明樹脂フィルムを得た。
この時、ステンレスバンドに接している面をb面とし、もう一方の面をa面とする。
《バックコート層(BC層)の形成》
(バックコート層(BC層)塗布組成物)
アセトン 72質量部
メタノール 18質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
ジアセチルセルロース 0.5質量部
2%アセトン分散超微粒子シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジル200V)
0.1質量部
上記透明樹脂フィルムa面に、上記バックコート層塗布組成物をウェット膜厚13μmとなるように塗布し、80℃に設定された乾燥部で乾燥して、BC層を設けた。
《クリアハードコート層(CHC層)の形成》
(クリアハードコート層(CHC層)塗布組成物)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 2質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
酢酸エチル 50質量部
メチルエチルケトン 50質量部
上記作製した透明樹脂フィルムのb面に、上記クリアハードコート層塗布組成物を押し出しコートし、次いで80℃に設定された乾燥部で乾燥した後、下記の条件にて図1に記載の紫外線照射設備を使用して紫外線を照射した。照度の調整は表1に記載のようにランプ電力、ランプ及び拡散板の形状または透明樹脂フィルムの搬送速度を変化させて行い、膜厚7μmのクリアハードコート層(CHC層)を有する透明樹脂フィルム1〜21を得た。
紫外線照射装置:図1に記載の構成とし、600φのバックアップロール2を使用し、表面の温度が25℃となるように設定し、バックアップロール2と透明樹脂フィルム1が接している180度の範囲を光源で照らせるように、活性線光源10を透明樹脂フィルム1表面から50mm離れた位置に配置した。
活性線光源:紫外線ランプ 出力3kW(アイグラフィック(株)社製高圧水銀タイプ)
作製したハードコートフィルムを用いて下記の評価を行い、結果を下記表1に記載した。
《クリアハードコート層の評価》
(平面性)
幅90cm、長さ100cmの大きさに各試料を切り出し、50W蛍光灯を5本並べて試料台に45°の角度から照らせるように高さ1.5mの高さに固定し、試料台の上に各フィルム試料を置き、フィルム表面に反射して見える凹凸を目で見て、次のように判定した。この方法によって「つれ」及び「しわ」の判定が出来る。
◎:蛍光灯が5本とも真っすぐに見えた
○:蛍光灯が少し曲がって見えるところがある
△:蛍光灯が全体的に少し曲がって見える
×:蛍光灯が大きくうねって見える
Figure 0004649892
更に作製したハードコートフィルムを用いて下記の反射防止層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
《多層反射防止層の形成》
(中屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 250質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.48質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
22質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 21質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4840質量部
(高屈折率層塗布組成物)
テトラ(n)ブトキシチタン 310質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.4質量部
アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)
4.8質量部
UV硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500) 4.6質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 4900質量部
イソプロピルアルコール 4800質量部
(テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製)
テトラエトキシシラン580gとエタノール1144gを混合し、これにクエン酸水溶液(クエン酸1水和物5.4gを水272gに溶解したもの)を添加した後に、25℃にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
(低屈折率層塗布組成物)
テトラエトキシシラン加水分解物A 1020質量部
末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)
0.42質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 2700質量部
イソプロピルアルコール 6300質量部
上記CHC層を有する透明樹脂フィルム1〜21上に、中屈折率層、高項屈折率層、低屈折率層の順番でCHC層の上に、ダイを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、CHC層形成時と同様の条件(表1に記載の条件)で紫外線照射を行い各反射防止層を硬化させ、多層反射防止層を形成した。形成される層の膜厚をオンラインで測定しながら流量条件を制御した。この様にして、中屈折層(厚さ:0.075μm)、高屈折層(厚さ:0.070μm)、低屈折率層(厚さ:0.093μm)を形成し、多層反射防止層を有する反射防止フィルム1〜21を作製した。
各層の屈折率と膜厚は、各層を単独で塗工したサンプルについて、分光光度計の分光反射率の測定結果から求める。分光光度計はU−4000型(日立製作所製)を用いて、サンプルの裏面を粗面化した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行い、裏面の光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400〜700nm)の反射率測定を行う。出来上がった各層単独の屈折率は中屈折率層1.65、高屈折率層1.90、低屈折率層1.45であった。
《反射防止フィルムの評価》
(色ムラの評価)
上記作製した各反射防止フィルムの反射防止層を塗設したのとは反対側の面に黒いアクリル板を貼り付け、反射防止層塗設面側表面を強い白色光源で照射し、目視による色ムラ発生の有無を確認し、更に、アクリル板を外し、透過光による色ムラ発生の有無を確認し、下記の基準に則り色ムラの評価を行った。
◎:黒アクリル板貼付品でも、色ムラの発生は認められない
○:黒アクリル板貼付品で極弱い色ムラが認められるが、透過光による観察では色ムラが認められない
△:黒アクリル板貼付品の一部で色ムラが認められるが、実用上許容の範囲にある
×:黒アクリル板貼付品及び透過光による観察で色ムラがはっきりと認められ、実用上問題がある
以上により得られた結果を、上記表1に示す。
表1より明らかなように、本発明で規定した活性照射条件を用いて作製した光学フィルムは、比較例に対し、クリアハードコート層を塗設した状態において平面性が良好であり、更にその上に反射防止層を塗設した状態でも、色ムラの発生がなく、塗膜の均一性に優れていることが分かる。更に、光学薄膜を形成する際に破断しにくい光学フィルムであった。
本発明の光学フィルムの製造装置の概略構成図である。 本発明の光学フィルムの製造装置の概略構成図の他の例である。 本発明に用いられる活性エネルギー線照射ランプ及び反射板の形状を表した 模式図である。
符号の説明
1 透明樹脂フィルム
2 バックアップロール
3 ランプボックス
4 反射板
5 ランプ
6 拡散板
10 活性線光源

Claims (2)

  1. 幅1.4〜4mの樹脂フィルム上に活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた後、活性エネルギー線の照射時間(t)と照度(W)の関係が下記a、bの範囲に調整された活性エネルギー線照射ゾーンを通過させて、活性エネルギー線を照射し硬化することを特徴とするハードコートフィルムの製造方法。
    a.最大照度Wmaxが0.1〜0.3(W/cm2)の範囲
    b.照射開始から最大照度Wmaxに達するまでの傾きdW/dtが、0.1〜0.6(W/cm2・sec)の範囲
  2. 前記樹脂フィルムがセルロースエステルフィルムであり、かつ膜厚が10〜60μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルムの製造方法。
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