以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明は、セルロースエステル樹脂を溶融フィルム形成する際に、2台以上の押出し機を直列につなぐタンデム方式とし、2台の押出し機の間に、200メッシュ以上、800メッシュ以下のフィルターを配置し、上流の押出し機から炭酸ガスを導入し、下流側の押出し機にベント口を設けて炭酸ガスを排出する機構を有することを特徴とするディスプレイ用光学セルロースエステルフィルム(以下、セルロースエステルフィルムともいう)の製造方法であり、これらの手段、構成により、本願の目的を達成出来たのである。
溶融流延法による光学用途フィルム製膜のためには、材料を溶融し、フィルタを通過させることによる異物の除去を行うことが必須である。その際、フィルタの上流側では、樹脂材料及び添加剤を溶融し混錬するための溶融混錬機が必要であり、押出し機が適している。その押出し機に高圧炭酸ガスを供給し、フィルタを通過させた後、炭酸ガスを排出する際にも、押出し機にベント口を設けることで達成出来る。
そのため、二台以上の押出し機を直列につなぐタンデム方式が望ましく、二台の押出し機の間に最も目の細かいフィルタを配置する構成とし、上流側の押出し機にて、炭酸ガスを供給し、下流側の押出し機にベント口を設けて、炭酸ガスを排出する。
下流側押出し機のベント口には、樹脂を排出せずにガスのみ排出するため、多孔質膜を配置した。
又、ベント口より先には、炭酸ガスの排出圧力を調整するため、レギュレーターを設置し、ガスの圧力が一定値を超えた場合に、排出する機構を採用している。
本発明者らの検討によれば、炭酸ガスの溶融樹脂への混入については、溶融樹脂の可塑化が見込まれ、10MPaの炭酸ガスを混入することで、250℃の溶融セルロースエステルの粘度が、およそ1/2程度になることが分かってきている。
又、本発明においては、前記炭酸ガスの排出時の圧力が、0.2〜1.0MPaであることが、ダイライン防止に対し、本発明の効果をより奏する点で好ましい。これは、ダイから樹脂を押出しす際に、発泡しない程度の炭酸ガスが溶け込んでいることにより、樹脂の粘度が低下し、押出直後の樹脂表面の平滑化に寄与するためと推定している。
また、本発明においては、前記最も目の細かいフィルターのメッシュが200メッシュ以上、800メッシュ以下であることが本発明の効果をより奏する点で好ましい。フィルタサイズが、200メッシュ以下では、光学用途フィルムとしては問題となる20μm以上の異物が捕集しきれず、800メッシュ以上では、炭酸ガスを導入した系においても、圧力損失が大き過ぎるため、溶融樹脂の流速が上げられず、溶融セルロースエステルの滞留時間が延びることになり、着色の原因になってしまう。
本発明では、ディスク形状フィルター;キャンドル形状フィルター;リーフディスク形状フィルターを用いることが出来るが、特に、次の理由からリーフディスク形状のフィルターが好ましい。
(1)濾過面積を大きくできる。
(2)構造的な強度を持たせることができる。
(3)溶融樹脂の滞留箇所を少なくできる。
フィルターの材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
本発明に用いられるフィルターの濾材としては、金属の繊維や粉末を圧縮、成形後高温で焼結した多孔質の金属焼結体を用いることがより好ましい。濾材の材質は、特に限定はされないが、ステンレススチール、ブロンズ、銅などの金属が適し、樹脂との反応性、耐腐食性の点でステンレススチールが好ましい。ステンレススチールの中でもSUS304、SUS316、SUS316L、SUS430などが加工性や耐腐食性の点で特に好適である。また、濾材以外の支持体、溶接などの他部材の材質についても、ステンレススチール、ブロンズ、銅などの金属が適し、ステンレススチールの中でもSUS304、SUS316、SUS316L、SUS430などが特に好適である。
金属粉末焼結体の濾材は、例えば、粉末の素材がステンレススチールの場合は、数10μmから数100μmの金属粉末を圧縮成型後、1200℃から1300℃程度の温度で1時間から3時間程度焼結して得られる。用いる粉末の径は1種類でも2種類以上を混合したものでもよい。
金属繊維焼結体は、好ましくは、直径数μmから数10μm程度の繊維を重ね合わせて圧縮成形後、金属粉末焼結体よりはやや低い温度で焼結したものであり、金属繊維の径は1種類でも、2種類以上でもよく、数種の異なる径の繊維を混合して焼結したものでも、また、直径の異なる繊維を個々に重ね合わせて焼結したものでも良い。
濾材は、金属粉末焼結体、金属繊維焼結体それぞれを単体で用いても、これらを積層、混合したものでも、用途に応じて選択できる。これら濾材の中でも金属粉末焼結体が、特に好ましく、樹脂濾過用のフィルターとしての性能が優れている。
前記セルロースエステル樹脂がセルロースアセテートプロピオネートであること、前記セルロースアセテートプロピオネートのプロピオニル置換度が0.1から2であること、溶融押出法で成形したセルロースエステルフィルム上に、セルロースエステル樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸して製造すること、或いは、溶融押出法で成形したセルロースエステルフィルムを少なくとも一軸方向に延伸した後に、セルロースエステル樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥して製造することが、本発明のダイライン低減の効果をより奏することで好ましい。
更に、本発明においては、溶融押出し法で成形する温度がセルロースエステルフィルムのTg+50℃〜Tg+150℃であること、ディスプレイ用光学セルロースエステルフィルムの膜厚が20〜150μmであることが、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
また本発明のディスプレイ用光学セルロースエステルフィルムは、本願の請求項1〜9の何れか1項に記載のディスプレイ用光学セルロースエステルフィルムの製造方法で得られることを特徴としている。
更に、本発明の偏光板の少なくとも1方の面が本願の請求項10に記載のディスプレイ用光学セルロースエステルフィルムであり、また、本発明の液晶表示装置は請求項10に記載のディスプレイ用光学セルロースエステルフィルム又は請求項11に記載の偏光板が液晶セルに配置されていることを特徴とする。
(セルロースエステル樹脂)(以下、単に、セルロースエステルともいう)
本発明に用いられるセルロースエステル樹脂について、詳述する。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、溶融流延法により製造される。溶融流延法はフィルム製造時の有機溶媒使用量を、大幅に少なくすることが出来るため、従来の有機溶媒を多量に使用する溶液流延法に比較して、環境適性が大幅に向上したフィルムが得られる。
セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステル樹脂としては、溶融製膜可能なセルロースエステル樹脂であれば特に限定はされず、セルロースエステル、セルロースエーテル、グラフトポリマーセルロースが挙げられる。例えば芳香族カルボン酸エステルなども用いられるが、光学特性等の得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用することが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。炭素原子数が6以上の脂肪酸で置換されたセルロースエステル樹脂では、溶融製膜性は良好であるものの、得られるセルロースエステル樹脂フィルムの力学特性が低く、実質的に光学フィルムとして用いることが難しいためである。力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。なお溶液流延製膜で一般に用いられているセルロースエステル樹脂であるトリアセチルセルロースについては、溶融温度よりも分解温度の方が高いセルロースエステル樹脂であるため、溶融製膜には用いることは出来ない。
従って、最も好ましいセルロースの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、酢酸による置換度、即ちアセチル基の置換度をXとし、炭素数3〜5の有機酸による置換度、即ち、特に炭素数3〜5の脂肪族有機酸から導かれるアシル基、例えば、プロピオニル基またはブチリル基等のアシル基による置換度をYとした時、下記式(1)、(2)を満たすセルロースエステルが好ましい。
式(1) 2.6≦X+Y≦3.0
式(2) 0.0≦X≦2.5
この中でも、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.5≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦2.0であるセルロースエステルを用いることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
本発明で用いられるセルロースエステル樹脂は、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.0〜5.5のものが用いられ、特に好ましくは1.4〜5.0であり、更に好ましくは2.0〜3.0である。また、Mwは10万〜50万、中でも15万〜30万のものが好ましく用いられる。
セルロースエステル樹脂の平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出する。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステル樹脂の原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステル樹脂は適宜混合して、或いは単独で使用することが出来る。
例えば、綿花リンター由来セルロース樹脂:木材パルプ(針葉樹)由来セルロース樹脂:木材パルプ(広葉樹)由来セルロース樹脂の比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることが出来る。
セルロースエステル樹脂は、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステル樹脂の合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することが出来る。
アセチル基、プロピオニル基、ブチル基等のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
また、工業的にはセルロースエステル樹脂は硫酸を触媒として合成されているが、この硫酸は完全には除去されておらず、残留する硫酸が溶融製膜時に各種の分解反応を引き起こし、得られるセルロースエステル樹脂フィルムの品質に影響を与えるため、本発明に用いられるセルロースエステル樹脂中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜40ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が40ppmを超えると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加するため好ましくない。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1未満とするにはセルロースエステル樹脂の洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。更に0.1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、同様にASTM−D817−96により測定することが出来る。
また、その他(酢酸等)の残留酸を含めたトータル残留酸量は1000ppm以下が好ましく、500ppm以下が更に好ましく、100ppm以下がより好ましい。
合成したセルロースエステル樹脂の洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、更に十分に行うことによって、残留酸含有量を上記の範囲とすることが出来、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、後述するリターデーションRt値、Ro値が良好なフィルムを得ることが出来る。また、セルロースエステル樹脂の洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、或いは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることが出来、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去する事が出来る。更に、セルロースエステル樹脂の洗浄は、ヒンダードアミン、亜リン酸エステルといった酸化防止剤の存在下で行うことが好ましく、セルロースエステル樹脂の耐熱性、製膜安定性が向上する。
また、セルロースエステル樹脂の耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステル樹脂の良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステル樹脂の低分子量成分、その他不純物を除去する事が出来る。この時、前述のセルロースエステル樹脂の洗浄同様に、酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。
更に、セルロースエステル樹脂の再沈殿処理の後、別のポリマー或いは低分子化合物を添加してもよい。
また、本発明で用いられるセルロースエステル樹脂はフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステル樹脂フィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステル樹脂フィルムを観察した時に、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロース樹脂に含まれる未酢化若しくは低酢化度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステル樹脂を用いる(例えば、置換度の分散の小さいセルロースエステル樹脂を用いる)ことと、溶融したセルロースエステル樹脂を濾過すること、或いはセルロースエステル樹脂の合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくとも何れかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することも出来る。溶融樹脂は粘度が高いため、後者の方法のほうが効率がよい。
フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステル樹脂の含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向があるが、輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、更に100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、更に100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステル樹脂を単独で溶融させたものを濾過するよりも可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤等を添加混合したセルロースエステル樹脂組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。もちろん、セルロースエステル樹脂の合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することが出来る。濾過はセルロースエステル樹脂を含む溶融物の粘度が10000P以下で濾過されるこが好ましく、更に好ましくは5000P以下が好ましく、1000P以下であることが更に好ましく、500P以下であることが更に好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などの弗素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものが更に好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することも出来る。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることが出来るが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
別の実施態様では、原料のセルロースエステル樹脂は少なくとも一度溶媒に溶解させた後、溶媒を乾燥させたセルロースエステル樹脂を用いても良い。その際には可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、酸化防止剤及びマット剤の少なくとも1つ以上と共に溶媒に溶解させた後、乾燥させたセルロースエステル樹脂を用いる。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることが出来、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしても良い。このようなセルロースエステル樹脂を用いると、溶融状態にした時の各添加物を均一にしやすく、光学特性を均一に出来ることがある。
本発明のセルロースエステルフィルムはセルロースエステル樹脂以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステル樹脂と相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにした時の透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。
(添加剤)
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、光安定剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、マット剤、染料、顔料、蛍光体、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、二色性色素、屈折率調整剤、リターデーション制御剤、ガス透過抑制剤、抗菌剤、導電性付与剤、生分解性付与剤、ゲル化防止剤、粘度調整剤、粘度低下剤等の各種の機能を有する添加剤などが挙げられる。また、上記機能を有するものであれば、これに分類されない添加剤も用いられる。
本発明のセルロースエステル樹脂は200〜280℃といった高温下で溶融して製膜されるため、従来の溶液流延製膜に比べてセルロースエステル樹脂の分解・劣化が起きやすいプロセスである。セルロースエステル樹脂組成物の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等、解明出来ていない分解反応を含めて、着色や分子量低下に代表される変質や材料の分解による揮発成分の生成を抑制するために添加剤を用いる。
また、添加剤自身にも高い耐熱性が要求される。添加剤の耐熱性として、1%質量減少温度Td1が250℃以上である事が好ましい。(1%質量減少温度Td1は、JIS K7120「プラスチックの熱重量測定方法」記載のTG曲線より求められる、熱変性、分解により試料質量が1%減少する時温度である。本発明では、示差熱重量同時測定装置TG/DTA(セイコーインスツル株式会社製)を用い、窒素流量100n・ml/分の下、開始/終了温度 30/500℃、昇温速度10℃/分にて測定を行った。)
セルロースエステル樹脂組成物を加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や分子量低下に由来した該構成材料の強度劣化を伴うことがある。またセルロースエステル樹脂組成物の分解反応によって、好ましくない揮発成分の発生も併発することもある。セルロースエステル樹脂組成物を加熱溶融するとき、上述の添加剤が存在することは、材料の劣化や分解に基づく強度の劣化を抑制すること、または材料固有の強度を維持出来る観点で優れており、本発明のセルロースエステルフィルムを製造出来る観点から上述の添加剤が存在することが必要である。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、酸捕捉剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。これらの中から選ばれる少なくとも1種を、フィルム形成材料中に含むことが好ましい。
また、添加剤の存在は、加熱溶融時において可視光領域の着色物の生成を抑制すること、または揮発成分がフィルム中に混入することによって生じる透過率やヘイズ値といった光学フィルムとして好ましくない性能を抑制または消滅出来る点で優れている。
本発明において液晶表示画像の表示画像は、本発明の構成の光学フィルムを用いるとき1%を超えると影響を与えるため、好ましいヘイズ値は1%未満、より好ましくは0.5%未満である。
また、偏光子保護フィルム、位相差フィルム等として本発明のセルロースエステルフィルムを用いる場合、偏光子が紫外線に対して弱いため、少なくとも偏光子に対して光が入射する側のセルロースエステルフィルムには紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。
また、本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして用いる場合には、リターデーションを調節するための添加剤を含有させることが出来る。リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているようなリターデーション制御剤を使用することも出来る。
また、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を調整するために、有機高分子または無機高分子をセルロースエステルフィルムに添加することも出来る。
セルロースエステル樹脂これらの添加剤を添加する際は、それらを含めた総量が、セルロースエステル樹脂の質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。1質量%以下では溶融製膜性が低下し、30質量%以上では得られるセルロースエステル樹脂フィルムの力学特性や保存安定性などが確保出来なくなることがあるためである。
上述のセルロースエステル樹脂組成物の保存或いは製膜工程において、空気中の酸素による劣化反応が併発することがある。この場合、上記添加剤の安定化作用とともに、空気中の酸素濃度を低減させる効果を用いることも本発明を具現化する上で併用出来る。これは、公知の技術として不活性ガスとして窒素やアルゴンの使用、減圧〜真空による脱気操作、及び密閉環境下による操作が挙げられ、これら3者の内少なくとも1つの方法を、上記添加剤を存在させる方法と併用することが出来る。セルロースエステル樹脂組成物が空気中の酸素と接触する確率を低減することにより、該材料の劣化が抑制出来、本発明の目的のためには好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして活用するため、本発明の偏光板及び偏光板を構成する偏光子に対して経時保存性を向上させる点からセルロースエステル樹脂組成物中に上述の添加剤が存在することが好ましい。
本発明の偏光板を用いた液晶表示装置において、本発明のセルロースエステルフィルムに上述の添加剤が存在するため、上記の変質や劣化を抑制する点からセルロースエステルフィルムの経時保存性が向上出来るとともに、液晶表示装置の表示品質向上においても、セルロースエステルフィルムが付与された光学的な補償設計が長期にわたって機能発現出来る。
以下、添加剤について、更に詳述する。
(可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムは、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤または多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤から選ばれる少なくとも一種以上のエステル系可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、本発明においては、セルロースエステル単独での溶融温度よりも溶融温度を低下させるため、また同じ加熱温度においてセルロースエステル樹脂単独よりも可塑剤を含むフィルム組成物の溶融粘度を低下させるために、可塑剤を添加する。また、セルロースエステルの親水性を改善し、光学フィルムの透湿度を改善する透湿防止剤としても添加される。
ここで、フィルム組成物の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。セルロースエステル樹脂を溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率或いは粘度が低下し、流動性が発現される。しかしセルロースエステル樹脂では高温下では溶融と同時に熱分解によってセルロースエステル樹脂の分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度でセルロースエステル樹脂を溶融させる必要がある。フィルム組成物の溶融温度を低下させるためには、セルロースエステル樹脂のガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することが出来る。本発明に用いられる、下記一般式(1)で表される有機酸と多価アルコールが縮合した構造を有する多価アルコールエステル系可塑剤は、セルロースエステル樹脂の溶融温度を低下させ、溶融製膜プロセスや製造後にも揮発性が小さく工程適性が良好であり、かつ得られるセルロースエステルフィルムの光学特性・寸法安定性・平面性が良好となる点で優れている。
多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤、多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤はセルロースエステルと親和性が高く好ましい。
多価アルコールエステル系の一つであるエチレングリコールエステル系の可塑剤:具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
多価アルコールエステル系の一つであるグリセリンエステル系の可塑剤:具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
その他の多価アルコールエステル系の可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落30〜33記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
上記多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤の中では、アルキル多価アルコールアリールエステルが好ましく、具体的には上記のエチレングリコールジベンゾエート、グリセリントリベンゾエート、ジグリセリンテトラベンゾエート、特開2003−12823号公報の段落32記載例示化合物16が挙げられる。
多価カルボン酸エステル系の一つであるジカルボン酸エステル系の可塑剤:具体的には、ジドデシルマロネート(C1)、ジオクチルアジペート(C4)、ジブチルセバケート(C8)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
その他の多価カルボン酸エステル系の可塑剤としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。更にフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
上記多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤の中では、ジアルキルカルボン酸アルキルエステルが好ましく、具体的には上記のジオクチルアジペート、トリデシルトリカルバレートが挙げられる。
更に本発明のセルロースエステルフィルムは、可塑剤として、下記一般式(1)で表される有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有するエステル化合物を、可塑剤として1〜25質量%含有することが特に好ましい。1質量%よりも少ないと可塑剤を添加する効果が認められず、25質量%よりも多いとブリードアウトが発生しやすくなり、フィルムの経時安定性が低下するために好ましくない。より好ましくは上記可塑剤を3〜20質量%含有するセルロースエステルフィルムであり、更に好ましくは5〜15質量%含有するセルロースエステルフィルムである。
上記一般式(1)において、R1〜R5は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらは更に置換基を有していて良く、R1〜R5のうち、少なくとも何れかは1つは水素原子ではない。Lは2価の連結基を表し、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表す。
R1〜R5で表されるシクロアルキル基としては、同様に炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基である。これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
R1〜R5で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、γ−フェニルプロピル基等の基を表し、また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
R1〜R5で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、もしくはt−ブトキシ等の各アルコキシ基である。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)、アルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい))、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基が、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。
R1〜R5で表されるシクロアルコキシ基としては、無置換のシクロアルコキシ基としては炭素数1〜8のシクロアルコキシ基が挙げられ、具体的には、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の基が挙げられる。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
R1〜R5で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられるが、このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等前記シクロアルキル基に置換してもよい基として挙げられた置換基で置換されていてもよい。
R1〜R5で表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられ、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
R1〜R5で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8の無置換のアシル基が挙げられ(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
R1〜R5で表されるカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらの基は更に前記シクロアルキル基に置換してもよい基と同様の基により置換されていてもよい。
R1〜R5で表されるオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、またフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基を表す。これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
また、R1〜R5で表されるオキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基を表し、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
また、これらR1〜R5のうち、少なくとも何れかは1つは水素原子ではない。なおR1〜R5のうちの何れか同士で互いに連結し、環構造を形成していても良い。
また、Lで表される連結基としては、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表すが、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の基であり、これらの基は、更に前記のR1〜R5で表される基に置換してもよい基としてあげられた基で置換されていてもよい。
中でも、Lで表される連結基として特に好ましいのは直接結合であり芳香族カルボン酸である。
またこれら本発明において可塑剤となるエステル化合物を構成する、前記一般式(1)で表される有機酸としては、少なくともR1またはR2に前記アルコキシ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基を有するものが好ましい。また複数の置換基を有する化合物も好ましい。
なお本発明においては3価以上のアルコールの水酸基を置換する有機酸は単一種であっても複数種であってもよい。
本発明において、前記一般式(1)で表される有機酸と反応して多価アルコールエステル化合物を形成する3価以上のアルコール化合物としては、好ましくは3〜20価の脂肪族多価アルコールであり、本発明おいて3価以上のアルコールは下記の一般式(3)で表されるものが好ましい。
一般式(3) R′−(OH)m
式中、R′はm価の有機基、mは3以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。特に好ましいのは、mとしては3または4の多価アルコールである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、グルコース、セロビオース、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成出来る。実施例に代表的合成例を示したが、前記一般式(1)で表される有機酸と、多価アルコールを例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸を予め酸クロライド或いは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルからなる可塑剤としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
前記一般式(2)において、R6〜R20は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらは更に置換基を有していて良い。R6〜R10のうち、少なくとも何れか1つは水素原子ではなく、R11〜R15のうち、少なくとも何れか1つは水素原子ではなく、R16〜R20のうち、少なくとも何れか1つは水素原子ではない。また、R21はアルキル基を表す。
R6〜R21のシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基については、前記R1〜R5と同様の基が挙げられる。
この様にして得られる多価アルコールエステルの分子量には特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
以下に、本発明に係わる多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
本発明に好ましい可塑剤である前記一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールからなるエステル化合物は、セルロースエステルに対する相溶性が高く、高添加率で添加することが出来る特徴があるため、他の可塑剤や添加剤を併用してもブリードアウトを発生することがなく、必要に応じて他種の可塑剤や添加剤を容易に併用することが出来る。
(その他の可塑剤)
本発明に用いられるその他の可塑剤としては、更にリン酸エステル系可塑剤、ポリマー可塑剤等が挙げられる。
リン酸エステル系の可塑剤:具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
更にリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
ポリマー可塑剤:具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。数平均分子量は1000〜500000程度が好ましく、特に好ましくは、5000〜200000である。1000以下では揮発性に問題が生じ、500000を超えると可塑化能力が低下し、セルロースエステルフィルムの機械的性質に悪影響を及ぼす。これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
本発明の可塑剤は、前述のセルロースエステル樹脂同様に、残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去する事が好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロースエステル樹脂を溶融製膜する上で、熱劣化を抑制出来、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
(安定化剤)
(酸化防止剤)
セルロースエステルは、溶融製膜が行われるような高温環境下では熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明のセルロースエステルフィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素による溶融成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることが出来るが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられる。これらの中でも本発明では、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物から選ばれる少なくとも1種以上の酸化防止剤(安定剤)を含有することが特徴である。これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止出来る。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
フェノール系化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物のうち好ましい化合物として、下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
式中、R11、R12、R13、R14及びR15は置換基を表す。置換基としては、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げらる。これらの置換基は更に置換されても良い。また、R11は水素原子、R12、R16はt−ブチル基であるフェノール系化合物が好ましい。フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、”Irganox1076”及び”Irganox1010”という商品名で市販されている。
本発明のヒンダードアミン系化合物としては、下記一般式(B)で表される化合物が好ましい。
式中、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。R24は水素原子、メチル基、R27は水素原子、R22、R23、R25、R26はメチル基が好ましい。
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。また、高分子タイプの化合物でも良く、具体例としては、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などで、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。
上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、”Tinuvin144”及び”Tinuvin770”、旭電化工業株式会社から”ADK STAB LA−52”という商品名で市販されている。
本発明のリン系化合物としては、下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)、(C−5)で表される部分構造を分子内に有する化合物が好ましい。
式中、Ph1及びPh’1はフェニレン基を表し、該フェニレン基の水素原子はフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph1及びPh’1は互いに同一でもよく、異なってもよい。Xは単結合、硫黄原子又は−CHR6−基を表す。R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。Ph2及びPh’2はフェニル基又はビフェニル基を表し、該フェニル基又はビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph2及びPh’2は互いに同一でもよく、異なってもよい。Ph3はフェニル基又はビフェニル基を表し、該フェニル基又はビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。またこれらは前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されても良い。
式中、Ph3は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくは、Ph3はフェニル基又はビフェニル基を表し、該フェニル基又はビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。またこれらは前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されても良い。
式中、Ph4は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくは、Ph4は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を表し、該アルキル基又はフェニル基の水素原子は前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されても良い。
式中、Ph5、Ph’5及びPh”5は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。より好ましくは、Ph5、Ph’5及びPh”5は炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基を表し、該アルキル基又はフェニル基の水素原子は前記一般式(A)記載と同義の置換基により置換されても良い。
リン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピンなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。上記タイプのリン系化合物は、例えば、住友化学工業株式会社から、”スミライザーGP”、旭電化工業株式会社からADK STAB PEP−24G”及び”ADK STAB PEP−36”という商品名で市販されている。
また、本発明ではイオウ系化合物を酸化防止剤として用いることも好ましく、下記一般式(D)で表される化合物が好ましい。
式中、R31及びR32は置換基を表す。置換基とは前記一般式(A)記載と同義の基を示す。R31及びR32はアルキル基が好ましい。
イオウ系化合物の具体例としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。上記タイプのイオウ系化合物は、例えば、住友化学工業株式会社から、”スミライザーTPL−R”及び”スミライザーTP−D”という商品名で市販されている。
酸化防止剤は、前述のセルロースエステル樹脂同様に、製造時から持ち越される、或いは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去する事が好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロースエステル樹脂を溶融製膜する上で、熱劣化を抑制出来、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
(酸掃去剤)
酸掃去剤とは製造時から持ち込まれるセルロースエステル中に残留する酸(プロトン酸)をトラップする役割を担う剤である。また、セルロースエステルを溶融するとポリマー中の水分と熱により側鎖の加水分解が促進し、CAPならば酢酸やプロピオン酸が生成する。酸と化学的に結合出来ればよく、エポキシ、3級アミン、エーテル構造等を有する化合物が挙げられるが、これに限定されるものでない。
具体的には、米国特許第4,137,201号明細書に記載されている酸掃去剤としてのエポキシ化合物を含んでなるのが好ましい。このような酸掃去剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油などの組成物によって代表され、例示され得る、エポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物 EPON 815c、及び一般式(4)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
上式中、nは0〜12に等しい。用いることが出来る更に可能な酸掃去剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
酸掃去剤は、前述のセルロースエステル樹脂同様に、製造時から持ち越される、或いは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去する事が好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸、及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロースエステル樹脂を溶融製膜する上で、熱劣化を抑制出来、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
なお酸掃去剤は酸捕捉剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることが出来る。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来るが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、紫外線吸収剤の構造は、紫外線吸収能を有する部位が一分子中に複数存在している二量体、三量体、四量体等の多量体でも良く、特開平10−182621号公報、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)360(何れもチバ−スペシャルティ−ケミカルズ社製)を用いることも出来る。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜20質量%添加することが好ましく、更に0.5〜10質量%添加することが好ましく、更に1〜5質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
(粘度低下剤)
本発明において、溶融粘度を低減する目的として、水素結合性溶媒を添加する事が出来る。水素結合性溶媒とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)と電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子間に生ずる、水素原子媒介「結合」を生ずることが出来るような有機溶媒、即ち、結合モーメントが大きく、かつ水素を含む結合、例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)、F−H(フッ素水素結合)を含むことで近接した分子同士が配列出来るような有機溶媒をいう。これらは、セルロースエステル樹脂の分子間水素結合よりもセルロースとの間で強い水素結合を形成する能力を有するもので、本発明で行う溶融流延法においては、用いるセルロースエステル樹脂単独のガラス転移温度よりも、水素結合性溶媒の添加によりセルロースエステル樹脂組成物の溶融温度を低下する事が出来る、または同じ溶融温度においてセルロースエステル樹脂よりも水素結合性溶媒を含むセルロースエステル樹脂組成物の溶融粘度を低下する事が出来る。
水素結合性溶媒としては、例えば、アルコール類:例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、グリセリン等、ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等、カルボン酸類:例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、エーテル類:例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等、ピロリドン類:例えば、N−メチルピロリドン等、アミン類:例えば、トリメチルアミン、ピリジン等、等を例示することが出来る。これら水素結合性溶媒は、単独で、又は2種以上混合して用いることが出来る。これらのうちでも、アルコール、ケトン、エーテル類が好ましく、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、オクタノール、ドデカノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランが好ましい。更に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン、テトラヒドロフランのような水溶性溶媒が特に好ましい。ここで水溶性とは、水100gに対する溶解度が10g以上のものをいう。
(リターデーション制御剤)
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて配向膜を形成して液晶層を設け、光学フィルムと液晶層由来のリターデーションを複合化して光学補償能を付与した偏光板加工を行ってもよいし、リターデーションを制御するための化合物をセルロースエステルフィルムに含有させてもよい。
リターデーションを制御するために添加する化合物は、欧州特許第911,656A2号明細書に記載されているような、二つ以上の芳香族環を有する芳香族化合物を使用することも出来る。また2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。該芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族性ヘテロ環であることが特に好ましく、芳香族性ヘテロ環は一般に不飽和ヘテロ環である。中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物が特に好ましい。
(マット剤)
本発明のセルロースエステルフィルムには、滑り性を付与するためにマット剤等の微粒子を添加することが出来、微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。マット剤はできるだけ微粒子のものが好ましく、微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることが出来る。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低く出来るので好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。
表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが挙げられる。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の二次粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の二次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましくは7〜14nmである。これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、光学フィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させる為に好ましく用いられる。微粒子のセルロースエステルフィルム中の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用出来る。
上記マット剤として用いられるフィルム中の微粒子の存在は、別の目的としてフィルムの強度向上のために用いることも出来る。また、フィルム中の上記微粒子の存在は、本発明のセルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステル樹脂自身の配向性を向上することも可能である。
(高分子材料)
本発明のセルロースエステルフィルムはセルロースエステル樹脂以外の高分子材料やオリゴマーを適宜選択して混合してもよい。前述の高分子材料やオリゴマーはセルロースエステル樹脂と相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースエステル樹脂以外の高分子材料やオリゴマーの少なくとも1種以上を混合する目的は、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を向上するために行う意味を含んでいる。この場合は、上述のその他添加剤として含むことが出来る。
(成型物の製造方法及びその大きさ)
ペレット状の成型物を得る方法としては、2軸押出し機にてセルロースエステル樹脂のガラス転移温度以上融点+30℃以下の温度にて溶融押出しして棒状のストランドを得た後、所望の大きさに裁断する方法などが挙げられる。
セルロースエステル樹脂は熱による劣化が著しい材料のため、劣化しない温度にて成型する方法が好ましい。
セルロースエステル樹脂と有機系添加剤を混合し得られた成型物の大きさは、1mm×1mm×1mm〜20mm×20mm×20mmの立方体の範囲内であることが本発明の効果を得る上で好ましい。溶融押出し法においては、1mm×1mm×1mmより小さいと、成型物投入時にブロッキングを起こし供給が安定せず、また、20mm×20mm×20mmより大きいと、成型物の溶融及び粉砕性が悪く、結果投入口で詰まり、生産性が著しく悪くなる恐れがある。また、1mm×1mm×1mmより小さいと、成型物の比表面積が大きくなるため空気(特に酸素と水)との接触面積も大きくなり、セルロースが劣化しやすくなり、分子量が低下し、結果、機械的強度が低下する恐れがある。加圧加熱溶融法においては、20mm×20mm×20mmより大きいと膜厚の小さい(100μm以下)フィルムが得られにくくなる。また、膜厚にムラが出来やすくなる。(膜厚精度が悪くなる。)
成型物にすると、樹脂と添加剤が密着するため、混合・分散性が高まる。また、空気(特に酸素と水)との接触面積が小さくなるためセルロースエステル樹脂の劣化にも有利である。
例えば、本発明に用いられるセルロースエステル及び添加剤の混合物を、熱風乾燥又は真空乾燥した後、溶融押出し、T型ダイよりフィルム状に押出しして、静電印加法等により冷却ドラムに密着させ、冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。
本発明のセルロースエステル及び添加剤は、0.1〜20mm程度の粉体、またはペレットである。原料によっては含有する水分の量が多く、乾燥が必要なものもある。乾燥は、単独に乾燥しても良く、複数の原料を混合してから乾燥しても良い。セルロースエステルは加熱により酸を発生することがあり、この酸により分解劣化が進行するので、酸を発生させないように60〜90℃程度で乾燥することが好ましい。到達乾燥レベルを上げるために、露点の低い乾燥空気を使用するか、減圧ないし真空乾燥することも好ましい。好ましい露点は−20℃以下、更に好ましくは−30℃以下である。添加剤によっては融点が低いものもあり、混合してから乾燥する場合は、乾燥中に粘着して固まらないように、使用材料中最も融点の低い物質の融点以下で乾燥する必要がある。もちろん単独に乾燥してから混合すればよいのであるが、混合中に吸湿することがあるので、混合してから乾燥するのが好ましい。
乾燥終了した原料は、すぐ押出し機に送るか、吸湿を防止するために高温低露点ないし減圧に維持されたストックタンクに保管された後、押出し機に送る。
原料として、製膜後スリットしたり、巻き取った後製品にならなかったロスフィルムを回収再使用することが出来る。回収フィルムは通常粉砕して供給するが、それだけでペレットに成形したり、造粒して供給することも出来る。回収フィルムも乾燥が必要であるが、単独で乾燥しても良いし、バージンのポリマー原料と混合してから乾燥しても良いし、添加剤と混合してから乾燥しても良い。
溶融押出しは、一軸押出し機、二軸押出し機、更に2台の押出し機を直列に連結するタンデム押出しなどが挙げられるが、本発明では2台の押出し機を直列に連結するタンデム押出しが特徴である。
該押出し機下流にダイを設置して直接押出し製膜しても良いし、ストランドダイを設置していったんペレット化してからそのペレットを押出し製膜しても良い。
更に、原料タンク、原料の投入部、押出し機内といった原料の供給、溶融工程を、窒素ガス等の不活性ガスで置換、或いは減圧することが好ましい。本発明では、セルロースエステルと複数の添加剤を混合するため、混練性能に優れた二軸押出し機を使用してペレット化した後、定量性の良い単軸押出し機を用いて溶融押出し製膜するのが好ましい。
特にフィルムを製造する上で留意することは、なるべく機械的ストレスを与えずに加熱溶融させる方法が好ましい。既存の装置としては、1軸押出し機、ホットプレス機などがある。1軸押出し機の場合、透明なフィルムを得ることが出来る温度において、出きる限り低温にて短時間で押出しすことが望ましい。投入口からダイまでの経路においては、セルロースエステル樹脂のガラス転移温度:Tg〜融点:Tm+50℃の温度に設定しておくことが望ましく、ダイに近づくにつれて温度を段階的に上げるのが好ましい。ダイの温度は、Tm〜Tm+30℃に設定するのが好ましい。
滞留時間(押出し時間)は、可能な限り短時間の方が好ましい。20〜360秒が好ましく、より好ましくは20〜60秒であった。滞留時間が長いと、劣化が著しくなる恐れがあり、また、あまりにも短時間すぎると、溶融が不十分になる恐れがある。滞留時間は、シャフトの回転数、成型物の粘弾性、加熱温度などによって調整される。
本発明の前記溶融押出し時の温度はセルロースのTg+50℃以上、Tg+150℃以下の範囲であることが好ましい。
押出し機下流に、ギヤポンプ、フィルターを配置するのが好ましい。ギヤポンプは溶融樹脂を定量的に搬送出来るので、引取りフィルムの膜厚を均一にするために好ましく適用出来る。ギヤポンプ直前に、ギヤポンプ保護のためのフィルターを配置するのが好ましい。ギヤポンプは、2ギヤタイプ、3ギヤタイプなどあるが、定量性のより良い3ギヤタイプが好ましい。ギヤポンプ下流にメインフィルターを配置する。メインフィルターは製品フィルム中の異物を減らし、製品品質を向上する。
ダイは、Tダイが好ましい。押し引きボルト、リップヒータ、ヒートボルトなどのリップ間隙調整機構を備え、膜厚を均一に調整する。リップを傷つきにくくするために、メッキしたり、ダイヤモンドライクカーボンのような超硬度処理することも好ましい。吐出する方向は、水平方向でも垂直方向でも良い。引取りロールにあわせて斜め下に吐出することも適用出来る。
吐出された溶融フィルムの引取りは、静電印加法等により冷却ドラムに密着させて引取りる方法、または2本のロールの間に溶融フィルムを挟んで引取りる方法も好ましく適用出来る。冷却ドラムの温度はセルロースエステルのTg−100〜Tgに維持されていることが好ましい。ダイ出口から冷却ドラムや引取りロールの周辺雰囲気を吸引することが好ましく行われる。溶融押出しされたフィルムからポリマー分解物や可塑剤などの添加剤が揮発し、ダイリップやロールに付着汚染するのを防ぐためである。吸引は、ダイリップから樹脂が吐出された直後に設置することが好ましい。揮発ガスの除去効果を上げるために周辺を囲むことも好ましい。囲って吸引すると、隙間を通して周囲から空気を吸い込むことにより、ダイリップから吐出された樹脂フィルムがゆらいで膜厚ムラとなることがあるので、吸引風量と同量の新鮮空気を囲いの中に供給することも好ましい。供給する空気の温度が振れると樹脂フィルムの温度が変化して膜厚ムラを生じるので、温度も一定に制御することが好ましい。このような措置を施したとしても、溶融フィルムからの揮発ガスによるロール汚染を完全になくすわけにいかないので、引取りロールや冷却ドラムに清掃装置を設置することが好ましく行われる。清掃装置はフィルム成形中もずっと継続して機能するタイプと、定期的にフィルム成形を中断して機能するタイプのどちらも適用出来る。
本発明の偏光板保護フィルム用のセルロースエステルフィルムは、幅手方向もしくは製膜方向に延伸製膜されたフィルムであることが特に好ましい。
前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群及び/又は赤外線ヒーター等の加熱装置を介してセルロースエステルのガラス転移温度(Tg)からTg+100℃の範囲内に加熱し、一段又は多段縦延伸することが好ましい。延伸の倍率は5〜200%の範囲で製品に要求されるリタデーションを満足するように選択される。
次に、上記のようにして得られた縦方向に延伸されたセルロースエステルフィルムを、Tg−20℃〜Tg+20℃の温度範囲内で、5〜200%の範囲で横延伸し、次いで熱固定することが好ましい。
横延伸する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると、幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。延伸の順番は、タテ、ヨコの順に限らず、ヨコ、タテの順でもかまわない。
また同時二軸延伸も好ましく適用出来る。逐次延伸では2段目の延伸時に破断しやすい傾向があるが、同時二軸延伸は破断しにくく、縦横の配向が均一に出来るメリットがある。
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tg+50℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg−30℃以上の温度範囲内で、横方向及び/又は縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。又冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルにより異なるので、得られた延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
また、製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料として又は異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
(延伸操作、屈折率制御)
本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして用いる場合、延伸操作により屈折率制御を行うことが好ましい。延伸操作としては、セルロースエステルの1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで好ましい範囲の屈折率に制御することが出来る。
例えばフィルムの長手方向(製膜方向)及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅手方向に対して、逐次または同時に延伸することが出来る。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
例えば溶融して流延した方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、フィルムの厚み方向の屈折率が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制或いは、幅方向にも延伸することで改善出来る。幅方向に延伸する場合、幅手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、テンター法を用いた場合にみられることがあるが、幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、所謂ボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、該流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制出来、幅手の位相差の分布を少なく改善出来るのである。
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少出来る。セルロースエステルフィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
セルロースエステルフィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、幅方向に延伸することで、セルロースエステルフィルムの遅相軸が幅方向に付与することが出来る。この場合、本発明において、表示品質の向上のためには、セルロースエステルフィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、(幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)を満たすことが必要である。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、或いは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことが出来、破断等の危険性が減少出来るので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持或いは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明のセルロースエステルフィルムの厚さは10〜500μmが好ましい。特に20μm以上、更に35μm以上が好ましい。又、150μm以下、更に120μm以下が好ましい。特に好ましくは25以上〜90μmが好ましい。上記領域よりも偏光板保護フィルムが厚いと偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと、リターデーションの発現が困難となること、フィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
本発明のセルロースエステルフィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角をθ1とするとθ1は−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。このθ1は配向角として定義出来、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて行うことが出来る。
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与出来、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現を得ることに寄与出来る。
また、本発明のセルロースエステルフィルムは、溶融押出法で成形したセルロースエステルフィルム上に、セルロースエステル樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸して製造すること、或いは、溶融押出法で成形したセルロースエステルフィルムを少なくとも一軸方向に延伸した後に、セルロースエステル樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥して製造することが、本発明のダイライン低減の効果をより奏することで好ましい。
セルロースエステル樹脂を含有する塗布液は、前記したセルロースエステル樹脂を下記に示す溶剤に溶解させ、塗布液を作製することが出来る。
セルロースエステル樹脂の溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどの低級アルコール類、シクロヘキサン、ジオキサン類、メチレンクロライドのような低級脂肪族塩化炭化水素類などを用いることが出来る。
塗布液を調製する時のセルロースエステル樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることが出来るが、好ましい方法としては、セルロースエステル樹脂を貧溶剤と混合し、湿潤或いは膨潤させ、更に良溶剤と混合する方法があげられる。このとき加圧下で、溶剤の常温での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、「ゲル」や「ママコ」と呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
溶剤比率としては、例えばメチレンクロライド70〜95質量%、その他の溶剤は5〜30質量%が好ましい。またセルロースエステル樹脂の濃度は10〜50質量%が好ましい。溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度が好ましく例えば60℃以上、80〜110℃の範囲に設定するのが好適である。また、圧力は設定温度において、溶剤が沸騰しないうに定められる。
塗布液には、必要に応じて前記可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、界面活性剤等を添加してもよい。
作製したセルロースエステル樹脂を含有する塗布液は溶融押出法で成形したセルロースエステルフィルム上に、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することが出来る。十分なダイラインの改善効果を奏する為には、該塗布液の膜厚は0.5〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜10μmの範囲である。
本発明では、塗布液を塗布し、乾燥後、少なくとも一軸方向に延伸して製造するか、少なくとも一軸方向に延伸した後に、セルロースエステル樹脂を含有する塗布液を塗布し、乾燥して製造することが好ましい。延伸方法、条件は前記の延伸操作の項で説明した方法、条件を用いることが出来る。
(機能性層)
本発明のセルロースエステルフィルムの製造に際し、延伸の前及び/又は後帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易滑性層、易接着層、防眩層、バリアー層、光学補償層等の機能性層を塗設してもよい。特に、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、易接着層、防眩層及び光学補償層から選ばれる少なくとも1層を設けることが好ましい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことが出来る。
(偏光板)
本発明のセルロースエステルフィルムを有する偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することが出来る。得られたセルロースエステルフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面にセルロースエステルフィルムを貼り合わせてもよいし、少なくとも片面に本発明のセルロースエステルフィルムを偏光子に直接貼合してもよい。もう一方の面には別の偏光板保護フィルムを用いてもよく、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UX−RHA−N、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することが出来る。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
(液晶表示装置)
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明のセルロースエステルフィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムにはクリアハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが好ましい。また、延伸した本発明の偏光板保護フィルムは視野角拡大の為の位相差フィルムとして用いることも好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムは反射型、透過型、半透過型LCD或いはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜けなどもなく、その効果が長期間維持され、MVA型液晶表示装置では顕著な効果が認められる。特に、色むら、ぎらつきや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
セルロースエステルとして、総置換度2.6、アセチル置換度1.3、プロピオニル置換度1.3、重量平均分子量19万の(A)セルロースアセテートプロピオネート:100質量部を用いた。
添加剤として、(B)トリメチロールプロパントリベンゾエート:10質量部、(C)下記合成例1で得られる特定構造のポリエステルポリオール:5質量部、(D)イルガノックス1010(チバスペシャルティケミカルズ社製):0.5質量部、(E)アデカスタブLA52(旭電化社製):0.25質量部、(F)アデカスタブLA31(旭電化社製):1.2質量部、(G)スミライザーGP(住友化学社製):1質量部、(H)アエロジルR972V:0.5質量部を用いた。
(合成例1)
冷却凝縮器を装着した反応器に、648質量部のエチレングリコール、58質量部のジエチレングリコール、1121質量部のコハク酸、83質量部のテレフタル酸、0.03質量部のテトラブチルチタネートを投入し、140℃で2時間、220℃で2時間、冷却凝縮器を外して220℃で更に20時間、脱水縮合反応を行って、数平均分子量1500のポリエステルポリオール(C)を得た。
(A)を80℃、24hr減圧乾燥し、80℃に保ったストレージタンクに保管した。(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)はそれぞれ0.5mmのふるいを通して粒径を揃えた後、それぞれ所定量を計量し、V型ブレンダーで混合し、乾燥機に送り、常圧で60℃、24hr、DP−40℃の脱湿空気を循環して乾燥した。乾燥終了後、(H)を所定量混合した。この組成物を(I)とする。
(A)をストレージタンクからホッパーを経由してスクリューフィーダーにより定量的にニ軸押出し機(スクリュー径:40mm、L/D:50、同方向回転型)に供給した。このとき、材料が吸湿しないように、ホッパーとスクリューフィーダーは80℃に保温し、除湿エアでパージした。(A)を供給したのと同じ供給口に、(A)100質量部に対して、(I)18.45質量部となるように、スクリューフィーダーにより(I)を供給した。このとき、材料が吸湿しないように、ホッパーとスクリューフィーダーは60℃に保温し、除湿エアでパージした。
この材料を用いて、図1に示す装置で押出し製膜を行った。
第1段二軸押出し機は、原料供給部を水冷し、下流から順に、L/D:10ずつ5ゾーンを180℃、250℃、250℃、250℃、250℃に設定した。上流から4番目のブロック(二軸押出し機8)にガス圧入部(炭酸ガス圧入装置9)を設置し、炭酸ガスをボンベから圧力3MPaで導入した。導入したガスが上流側へ漏れないように、ガス導入部直前のスクリューにシールリングを設けてある。
第1段二軸押出し機の根元からL/D:30の位置に、別の二軸押出し機から、製膜の際にスリットされたエッヂ部を粉砕した再使用原料を、溶融サイドフィードした。
第1段二軸押出し機の下流にメインフィルター10を設置する。フィルターメディアは800メッシュのメタルファイバーフィルターでカプセルツリータイプ、全濾過面積は10m2、保温のため、ヒータと断熱材でカバーしてある。
フィルター下流に第2段二軸押出し機(二軸押し出機11)を設置し、濾過した溶融ポリマーを供給した。第2段二軸押出し機は、スクリュー径:40mm、L/D:50、同方向回転型で、250℃に温度制御し、第2段二軸押出し機(二軸押し出機11)にベント口20を設置した。ベント口には、加圧した樹脂材がベント口から漏れ出さないよう、多孔質膜を配置し、加圧状態での炭酸ガスの排出を行った。炭酸ガスの排出圧力は、レギュレーターにて各々0.1、0.2、0.5、1.0、2.0MPaになるように調整し、炭酸ガスを排出した。
第2段二軸押出し機(二軸押し出機11)の下流にギヤポンプ、ダイを設置した。ギヤポンプ13は3ギヤタイプ、ダイ14は、コートハンガー型Tダイでスリット間隙を1mm、温度設定を240℃とした。ダイ14直前にスタチックミキサーを配置した。
ダイから押出しした樹脂シートを、100℃に温調した2本の超鏡面クロムメッキロールに挟んで引取りった。ダイとロールは干渉しない範囲で出来るだけ近づけて配置した。ダイとロールの間の空間に吸引ノズルを設置して、樹脂シートから発生する揮発ガスを吸引除去した。引取りった樹脂シートの厚みが135μmになるようにギヤポンプの回転数と引取りりロールの回転数を調整し、それに合わせて押出し機への原料供給量、押出し機の回転数などを調整した。
引取りった樹脂シートをクリップ式同時二軸延伸テンターに導き、フィルムの両端をクリップで把持し、予熱ゾーンを経て、フィルム温度を150℃まで昇温し、タテ、ヨコ同時に32%ずつ延伸した。フィルム温度は非接触式赤外線温度計で両面の温度を測定した。延伸終了後幅を保って10秒間150℃に保ったままフィルムを搬送し、ついで徐々に冷却した。冷却ゾーンで、フィルム搬送速度と幅を2%ずつ緩和した。フィルム表面温度が50℃以下になってからクリップから開放し、エッヂ部をスリットし、両端にナーリング加工してからワインダーに巻き取った。スリットしたエッヂ部は前述したように粉砕後押出し機に供給し、第1段押出し機に溶融合流した。炭酸ガスの排出圧力を、レギュレーターにて0.1、0.2、0.5、1.0、2.0MPaになるように調整し、得られたフィルム1−01〜1−05の各々のセルロースエステルフィルムの膜厚は80μmだった。
実施例2
実施例1と同様の材料で、ただし、トリメチロールプロパントリベンゾエートに代えてトリメチロールプロパントリ(o−アセトキシ)ベンゾエートを(B)として15質量部使用し、(C)のポリエステルポリオールを使用せずに、あとはすべて実施例1と同様にしてセルロースエステルフィルム2−01〜2−05を得た。
実施例3
実施例2と同様にして、ただし、(D)イルガノックス1010と、(E)アデカスタブLA52を使用せず、(G)スミライザーGPを3質量部使用して、あとは実施例1と同様にしてセルロースエステルフィルム3−01〜3−05を得た。
比較例1
実施例3と同様にして、ただし、二軸押出し機11とレギュレーター12を使用せずに、二軸押出し機8に炭酸ガスを圧入した後フィルター10、ギヤポンプ13、ダイ14と接続してセルロースエステルフィルム(4)を製膜した。
比較例2
実施例3と同様にして、ただし、炭酸ガスを導入せずに製膜を行い、セルロースエステルフィルム5を得た。
《評価》
(ダイラインの評価)
得られたセルロースエステルフィルムを通して蛍光灯を見たとき、次の3段階で評価した。△と×は商品価値がない。
◎:蛍光灯が歪まずにくっきりと見える
○:蛍光灯が歪まずきれいに見える
△:蛍光灯の輪郭のラインに、微少な波打ちが見える
×:蛍光灯の輪郭が、ギザギザに見える
表1の結果より本発明のセルロースエステルフィルムは、比較例のセルロースエステルフィルム4、5に対し、ダイライン評価において優れていることが明らかである。特に炭酸ガスの排出圧力が0.2〜1MPaの範囲が好ましい。
実施例4
実施例1と同様にして、炭酸ガスの排出圧力を0.5MPaに固定し、得られる膜厚が135μmになるように押出し機とギヤポンプの回転数を調整して、セルロースエステルフィルム6を得た。得られたフィルム6をクリップ式同時二軸延伸機を用いて150℃で縦横同時に各々30%ずつ延伸した。延伸はスムーズに行われ、厚み80μmのフィルムが得られた。
実施例5
実施例2と同様にして、炭酸ガスの排出圧力を0.5MPaに固定し、得られる膜厚が135μmになるように押出し機とギヤポンプの回転数を調整して、セルロースエステルフィルム7を得た。得られたフィルム7をクリップ式同時二軸延伸機を用いて150℃で縦横同時に各々30%ずつ延伸した。延伸はスムーズに行われ、厚み80μmのフィルムが得られた。
実施例6
実施例3と同様にして、炭酸ガスの排出圧力を0.5MPaに固定し、得られる膜厚が135μmになるように押出し機とギヤポンプの回転数を調整して、セルロースエステルフィルム8を得た。得られたフィルム8をクリップ式同時二軸延伸機を用いて150℃で縦横同時に各々30%ずつ延伸した。延伸はスムーズに行われ、厚み80μmのフィルムが得られた。
比較例3
比較例1と同様にして、ただし得られる膜厚が135μmになるように押出し機とギヤポンプの回転数を調整して、セルロースエステルフィルム9を得た。得られたフィルム9をクリップ式同時二軸延伸機を用いて150℃で縦横同時に各々30%ずつ延伸した。延伸開始直後に破断した。
比較例4
比較例2と同様にして、ただし得られる膜厚が135μmになるように押出し機とギヤポンプの回転数を調整して、セルロースエステルフィルム10を得た。得られたフィルム10をクリップ式同時二軸延伸機を用いて150℃で縦横同時に各々30%ずつ延伸した。延伸開始直後に破断した。
実施例7及び比較例5
セルロースエステルポリマーを、総置換度2.6、アセチル置換度1.9、プロピオニル置換度0.7、重量平均分子量19万のセルロースアセテートプロピオネートに代えて、実施例1〜6及び比較例1〜4の実験を行った。結果は同様であった。
本発明の試料が比較に比して全ての評価項目の点で優れていることが分かる。
実施例8
実施例1において、溶融温度200℃炭酸ガス排出圧力を0.1MPaに設定し、フィルタメッシュが150、200、500、800、850のフィルタを用いて製膜を行い、セルロースエステルフィルム6−01〜6−05を得た。更に、そのフィルムについて、ダイラインの評価を行った。
表2の結果より、フィルタメッシュが200〜800の範囲において、本発明の効果がよりはっきり発現することが分かった。
実施例9
実施例1において、炭酸ガス排出圧力を0.1MPa、フィルタメッシュサイズ150に設定し、溶融温度をTg+40°、Tg+50°、Tg+100°、Tg+150°、Tg+160℃に調整し、製膜を行い、セルロースエステルフィルム7−01〜7−05を得た。更に、そのフィルムについて、ダイラインの評価を行った。
表3の結果より、溶融温度がTg+50〜Tg+150℃の範囲において、本発明の効果がよりはっきり発現することが分かった。
実施例10
実施例1で用いたセルロースエステルを下記に示す溶剤に溶解させ、塗布液を作製した。
セルロースアセテートプロピオネート(総置換度2.6、アセチル置換度1.3、プロピオニル置換度1.3) 0.5質量部
アセトン 70質量部
メタノール 20質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
超微粒子シリカ アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)0.002質量部
セルロースエステルフィルム8−01については、上記塗布液を用いて、実施例1において、溶融温度を200℃炭酸ガス排出圧力を0.1MPa、フィルタメッシュサイズ150に設定し、製膜を行って作製した製膜品に、塗布液を乾燥膜厚として2μmとなるようにダイコータを用いて塗布した。塗布後、フィルムの両端をクリップで把持し、予熱ゾーンを経て、フィルム温度を150℃まで昇温し、タテ、ヨコ同時に32%ずつ延伸した。フィルム温度は非接触式赤外線温度計で両面の温度を測定した。延伸終了後幅を保って10秒間150℃に保ったままフィルムを搬送し、ついで徐々に冷却した。冷却ゾーンで、フィルム搬送速度と幅を2%ずつ緩和した。フィルム表面温度が50℃以下になってからクリップから開放し、エッヂ部をスリットし、両端にナーリング加工してからワインダーに巻き取り、光学フィルム8−01を得た。
セルロースエステルフィルム8−02については、実施例1と同様に製膜を行って作製した製膜品をフィルムの両端をクリップで把持し、予熱ゾーンを経て、フィルム温度を150℃まで昇温し、タテ、ヨコ同時に32%ずつ延伸した。フィルム温度は非接触式赤外線温度計で両面の温度を測定した。延伸終了後幅を保って10秒間150℃に保ったままフィルムを搬送し、ついで徐々に冷却した。冷却ゾーンで、フィルム搬送速度と幅を2%ずつ緩和した。フィルム表面温度が50℃以下になってからクリップから開放し、エッヂ部をスリットし、両端にナーリング加工してからワインダーに巻き取った製膜品について、上記塗布液を用いて、乾燥膜厚として2μmとなるようにダイコータを用いて塗布を行い、乾燥して光学フィルム8−02を得た。それらのフィルムについて、ダイラインの評価を行った。
表4の結果から、本発明のセルロースエステルフィルム8−01、8−02はダイラインに優れていることが明らかである。
実施例11
《偏光板の作製》
実施例1で作製した本発明のセルロースエステルフィルム1−03、比較のセルロースエステルフィルム4を用いて、下記手順により偏光板を作製した。
(ハードコート層の形成)
上記セルロースエステルフィルム上に、下記のハードコート層用塗布液を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、これをマイクログラビアコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cm2で、照射量を0.1J/cm2として塗布層を硬化させ、ドライ膜厚7μmのハードコート層を形成しハードコートフィルムを作製した。
(ハードコート層塗布液)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布液とした。
アクリルモノマー;KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製) 220質量部
イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製) 20質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 110質量部
酢酸エチル 110質量部
〈反射防止層付き偏光板保護フィルムの作製〉
上記作製したハードコートフィルム上に、下記のように高屈折率層、次いで、低屈折率層の順に反射防止層を塗設し、本発明のセルロースエステルフィルム1−03を用いた反射防止層付き偏光板保護フィルム、比較のセルロースエステルフィルム4を用いた反射防止層付き偏光板保護フィルムを作製した。
(反射防止層の形成:高屈折率層)
ハードコートフィルム上に、下記高屈折率層塗布組成物を押出しコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させ、次いで紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、更に100℃で1分熱硬化させ、厚さが78nmとなるように高屈折率層を設けた。
この高屈折率層の屈折率は1.62であった。
(高屈折率層塗布組成物)
金属酸化物微粒子のイソプロピルアルコール溶液(固形分20%、ITO粒子、粒径5nm) 55質量部
金属化合物:Ti(OBu)4(テトラ−n−ブトキシチタン) 1.3質量部
電離放射線硬化型樹脂:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 3.2質量部
光重合開始剤:イルガキュア184(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)
0.8質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 1.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 120質量部
イソプロピルアルコール 240質量部
メチルエチルケトン 40質量部
(反射防止層の形成:低屈折率層)
前記高屈折率層上に下記の低屈折率層塗布組成物を押出しコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させた後、紫外線ランプにて紫外線を0.1J/cm2照射して硬化させ、耐熱性プラスチックコアに巻き長4000mで巻き取り、次いで80℃3日間の加熱処理を行い反射防止層付き偏光板保護フィルムを作製した。
尚、この低屈折率層の厚さ95nm、屈折率は1.37であった。
(低屈折率層塗布組成物の調製)
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン289gとエタノール553gを混和し、これに0.15%酢酸水溶液157gを添加し、25℃のウォーターバス中で30時間攪拌することで加水分解物Aを調製した。
テトラエトキシシラン加水分解物A 110質量部
中空シリカ系微粒子(下記P−2)分散液 30質量部
KBM503(シランカップリング剤、信越化学(株)製) 4質量部
直鎖ジメチルシリコーン−EOブロックコポリマー(FZ−2207、日本ユニカー(株)製)の10%プロピレングリコールモノメチルエーテル液 3質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 400質量部
イソプロピルアルコール 400質量部
〈中空シリカ系微粒子(P−2)分散液の調製〉
平均粒径5nm、SiO2濃度20質量%のシリカゾル100gと純水1900gの混合物を80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同母液にSiO2として0.98質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gとAl2O3として1.02質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO2・Al2O3核粒子分散液を調製した。(工程(a))
この核粒子分散液500gに純水1700gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)3000gを添加して第1シリカ被覆層を形成した核粒子の分散液を得た。(工程(b))
次いで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%になった第1シリカ被覆層を形成した核粒子分散液500gに純水1125gを加え、更に濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、第1シリカ被覆層を形成した核粒子の構成成分の一部を除去したSiO2・Al2O3多孔質粒子の分散液を調製した(工程(c))。上記多孔質粒子分散液1500gと、純水500g、エタノール1,750g及び28%アンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO228質量%)104gを添加し、第1シリカ被覆層を形成した多孔質粒子の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成した。次いで、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%の中空シリカ系微粒子(P−2)の分散液を調製した。
この中空シリカ系微粒子の第1シリカ被覆層の厚さは3nm、平均粒径は47nm、MOx/SiO2(モル比)は0.0017、屈折率は1.28であった。ここで、平均粒径は動的光散乱法により測定した。
次いで、厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光膜と前記反射防止層付き偏光板保護フィルム及び裏面側のセルロースエステルフィルムを貼り合わせて偏光板を作製した。裏面側のフィルムには市販のセルロースエステルフィルムであるコニカミノルタタックKC8UCR−4(コニカミノルタオプト(株)製)を用いてそれぞれ偏光板とした。
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した前記反射防止層付き偏光板保護フィルムを得た。
工程2:前記偏光膜を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した反射防止層付き偏光板保護フィルムの上にのせて積層した。
工程4:工程3で積層した反射防止層付き偏光板保護フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した反射防止層付き偏光板保護フィルムと偏光膜とセルロースエステルフィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
《液晶表示装置の作製》
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
富士通製15型ディスプレイVL−150SDの予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのガラス面に貼合した。
その際、その偏光板の貼合の向きは、上記反射防止層付き偏光板保護フィルムの反射防止層の面が、液晶の観察面側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、液晶表示装置を各々作製した。
本発明のセルロースエステルフィルム1−03を用いた反射防止層付き偏光板保護フィルムを用いた偏光板は、比較のセルロースエステルフィルム4を用いた反射防止層付き偏光板保護フィルムを用いた偏光板に対し、膜厚ムラやリターデーションムラによる反射色ムラも無く優れた視認性を有していた。