JP4649774B2 - イオン源及びフィラメントの交換方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プラズマ発生室内に作動ガスを満たし、アーク放電によりこの作動ガスをプラズマ化させ、このプラズマよりイオンビームを引き出すイオン源に係り、特にフィラメントの交換を好適に行うことができるように改良されたイオン源に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン源は、プラズマ発生室内で作動ガスをプラズマ化させ、このプラズマに電場を与えてイオンを引出すものである。プラズマ発生室に満たされる作動ガスは、所望のイオンの元になる元素が水素と化合したガスであり、例えば、燐イオンを得るためにはPH3 、硼素イオンを得るためにはB2 H6 が用いられる。
【0003】
これらの作動ガスを電離させるためにプラズマ発生室内でアーク放電が行われる。電離されてプラズマとなった作動ガス構成元素のイオンは、引き出し用の電場で加速され、プラズマ発生室外に引き出される。
【0004】
ところで、上述のイオン源では、装置の運転に伴って、アーク放電を行うためのフィラメントが劣化するため、定期的なフィラメントの交換が必要である。従来、フィラメントの交換作業は、プラズマ発生室を大気開放して行われていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プラズマ発生室を大気開放すると、作動ガスの種類によっては、プラズマ発生室内の表面に酸化膜や窒化膜が生成されたり、様々な不純物がプラズマ発生室内に入り、汚染された状態となる。この種のイオン源は半導体基板材料へのイオンドーピング等のプロセスに用いるものであり、高純度雰囲気を要求し、極度に汚染を嫌う。このため、プラズマ発生室を大気開放して真空チャンバ内壁全体の掃除を行った後、再び真空排気して運転を開始するまでの立ち上げに丸一日かかっていた。
【0006】
このように従来のイオン源は、フィラメントの交換を行うために、運転を停止し、分解掃除を行い、長時間をかけて立ち上げる必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、プラズマ発生室を大気開放することなく、フィラメントの交換を短時間で行うことができるイオン源及びフィラメントの交換方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、プラズマ発生室内に作動ガスを満たし、アーク放電によりこの作動ガスをプラズマ化させ、このプラズマよりイオンビームを引き出すイオン源において、上記プラズマ発生室に隣接して設けられた真空ボックスと、この真空ボックスと上記プラズマ発生室とを連通する長穴状の開口部を、閉塞板によって閉塞又は開放することで、上記真空ボックスと上記プラズマ発生室とを気密状態で区画開閉するゲートバルブと、基端部が上記真空ボックスの側壁に回転自在に支持されると共に、先端部がフィラメントを支持している支持アームであって、上記基端部を回転させることで、開いた状態の上記開口部を通過させて、上記フィラメントを上記真空ボックス内と上記プラズマ発生室内との間で移動させる支持アームと、上記真空ボックスを開放するための蓋部材と、フィラメント交換後に上記真空ボックス内を真空状態とするための大気吸引手段とを備えたイオン源である。
【0009】
上記構成によれば、フィラメントを真空ボックス内に移動させて、ゲートバルブを閉塞した後に、真空ボックスを開けてフィラメントを交換することによって、プラズマ発生室を大気開放することなくフィラメントの交換を行うことができ、プラズマ発生室の分解掃除等を行う必要がなく、短時間で交換作業を行うことができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のイオン源のフィラメント交換方法であって、上記支持アームを作動させて、上記先端部に支持された上記フィラメントを、開いた状態の上記開口部を通過させ上記真空ボックス内に移動させて、上記閉塞板で上記開口部を閉塞した後に、上記真空ボックスの上記蓋部材を開けて上記フィラメントを交換し、その後上記蓋部材を閉めて、上記大気吸引手段で上記真空ボックス内を真空状態にした後、上記開口部を開けて、新たなフィラメントを上記プラズマ発生室内に移動させるようにしたイオン源のフィラメント交換方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1は本発明に係るイオン源の実施の形態を示した斜視図、図2は本発明に係るイオン源の運転時の状態を示した断面図、図3は図2のA−A線を示した断面図である。
【0013】
まず、本実施の形態に係るイオン源の構成を説明する。
【0014】
イオン源1には、プラズマ発生室2が設けられている。プラズマ発生室2は、上部が閉じられ且つ下部が開放された円筒状に形成されており、その内部には、図示しない作動ガス注入部より注入された作動ガスが満たされている。
【0015】
プラズマ発生室2の上部中央には、アーク放電用のカソード電極となるフィラメント3が配置されている。これに対するアーク放電用のアノード電極はプラズマ発生室2の側壁4に沿って環状に設けられている。プラズマ発生室2の側壁4にはプラズマを閉じ込めるための磁場を形成する環状の磁石が多段に設けられている。
【0016】
プラズマ発生室2の下部には、イオンを加速する引出し電極が、開放された部分を覆うように設けられている。この引出し電極は、イオンビームを通過させる多数の穴を有するグリッド電極である。引出し電極の外方にはプラズマ発生室2に連通するプロセス室が設けられており、このプロセス室内にはイオンビームの照射対象である半導体基板を置くようになっている。プロセス室は真空排気系に連通している。
【0017】
上記構成によれば、アノード電極にアーク放電電圧を印加して、アーク放電によりプラズマ発生室2内の作動ガスをプラズマ化させ、発生したプラズマは、環状の磁石が形成する磁場によって閉じ込められ、引出し電極の電位によって加速され、均一な流れのイオンビームとなってプロセス室に引き出される。
【0018】
ところで、本発明は、プラズマ発生室2に隣接して設けられた真空ボックス5と、この真空ボックス5とプラズマ発生室2とを連通する長穴状の開口部14を、閉塞板15によって閉塞又は開放することで、真空ボックス5とプラズマ発生室2とを気密状態で区画開閉するゲートバルブ6と、基端部が真空ボックス5の側壁21に回転自在に支持されると共に、先端部がフィラメントを支持している支持アーム7であって、基端部を回転させることで、開いた状態の開口部14を通過させて、フィラメント3を真空ボックス5内とプラズマ発生室2内との間で移動させる支持アーム7と、真空ボックス5を開放するための蓋部材8と、フィラメント2の交換後に真空ボックス5内を真空状態とするための大気吸引手段9とでなるフィラメント交換機構を備えたことを特徴とする。
【0019】
真空ボックス5は、直方体状に形成されており、プラズマ発生室2の上部に、フィラメント3の導入部となるゲートバルブ6を覆うように配置されている。
【0020】
ゲートバルブ6は、プラズマ発生室2の上部壁12の真空ボックス5に覆われた部分に形成された開口部14とこの開口部14を閉塞する閉塞板15とで構成されている。開口部14は長穴状に形成されており、この開口部14を通過して、フィラメント3がプラズマ発生室2と真空ボックス5間で移動することとなる。閉塞板15は開口部14と同形に形成され、プラズマ発生室2と真空ボックス5内とを気密に区画するようになっている。
【0021】
真空ボックス5内の両側壁16間には、閉塞板15を移動して開口部14を開閉させるための回転ロッド17が掛け渡されている。閉塞板15は、回転ロッド17にブラケット19を介して一体的に固定されている。回転ロッド17は、その少なくとも一方が側壁16を気密状態で貫通して、外部に突出しており、その突出部分18を操作して回転ロッド17を回転させ閉塞板15を移動させるようになっている。
【0022】
支持アーム7は、L字状に形成された一対のパイプにて構成されており、その内部にはフィラメント3に接続される導線が挿入されている。支持アーム7の基端部は、真空ボックス5の側壁21に設けられた回転板22に支持されている。
回転板22は、円盤状に形成されており、側壁21に対して気密状態を保持しながら回転すると共に、フィラメント3に接続される導線を気密状態で貫通させるようになっている。一対の支持アーム7の先端には、フィラメント3が掛け渡されている。
【0023】
支持アーム7は、先端部が下方を向いている場合は、フィラメント3がプラズマ発生室2内に位置し、回転板22の回転時には、フィラメント3が開口部14を周囲に接触しないように回転し、先端部が側方を向いている場合(支持アーム7が真空ボックス5内に収容されている場合)は、フィラメント3が真空ボックス5の内壁に接触しないような長さとなっている。
【0024】
蓋部材8は、真空ボックス5の上部に形成されており、その外周に沿ってビード等が周設され、真空ボックス5内外を気密状態で区画可能となっている。なお、蓋部材8の形成位置は、真空ボックス5の上部に限られるものではなく、フィラメント3の交換が可能な位置であれば、側部であっても構わない。
【0025】
大気吸引手段9は、真空ボックス5の内部に開口して接続された大気吸引管23と、この大気吸引管23の途中に接続された開閉弁24と、ブロア等の吸引装置(図示せず)とで構成されている。
【0026】
次に、上記構成によるイオン源1のフィラメント3の交換作業手順とその作用を説明する。
【0027】
まず、運転を停止した後に、図4に示すように、回転板22を90度回転させて、支持アーム7を回動させる。これによって、支持アーム7の先端に支持されたフィラメント3がプラズマ発生室2と真空ボックス5とを気密状態で区画開閉するゲートバルブ6の開口部14を通過して真空ボックス5内に移動して収容されることとなる。
【0028】
その後、図5に示すように、回転ロッド17を回転させて、閉塞板15を開口部14に嵌合させ、プラズマ発生室2と真空ボックス5内とを気密状態で区画する。
【0029】
そして、図6に示すように、真空ボックス5のみを大気吸引管23及び開閉弁24によって大気開放した後、蓋部材8を開けて支持アーム7の先端のフィラメント3を交換する。
【0030】
交換後は、真空ボックス5内の掃除を行った後に、蓋部材8を閉じて、大気吸引手段9を構成する吸引手段で真空ボックス5内の空気を吸い出し、開閉弁24を閉じて、真空ボックス5内を真空状態に戻す。そして、ゲートバルブ6を開けて、真空ボックス5とプラズマ発生室2とを連通させる。その後、支持アーム7が下方に向くように、回転板22を90度回転させて、フィラメント3をプラズマ発生室2内に移動させ、フィラメント3の交換作業が終了する。
【0031】
上述のように、イオン源1によれば、真空ボックス5内のみを大気開放するだけでフィラメント3の交換が行える。従って、プラズマ発生室2を大気開放する必要がないので、プラズマ発生室2内の汚染を防止できる。よって、従来行われていたプラズマ発生室2の分解掃除等を行わなくてよいので、作業時間の大幅な短縮が達成されると共に、すぐに運転を開始できるので、運転効率の向上が図れる。
【0032】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、フィラメントを真空ボックス内に移動させて、ゲートバルブを閉塞した後に、真空ボックスを開けてフィラメントを交換することによって、プラズマ発生室を大気開放することなく、プラズマ発生室内の汚染を防止できるので、プラズマ発生室の分解掃除等を行う必要がなく、作業短時間で交換作業を終わらせることができ、運転効率の向上が図れるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るイオン源の実施の形態を示した斜視図である。
【図2】本発明に係るイオン源の運転時の状態を示した断面図である。
【図3】図2のA−A線を示した断面図である。
【図4】本発明に係るイオン源のフィラメント交換時の第一工程の状態を示した断面図である。
【図5】本発明に係るイオン源のフィラメント交換時の第二工程の状態を示した断面図である。
【図6】本発明に係るイオン源のフィラメント交換時の第三工程の状態を示した断面図である。
【符号の説明】
1 イオン源
2 プラズマ発生室
3 フィラメント
5 真空ボックス
6 ゲートバルブ
7 支持アーム
8 蓋部材
9 大気吸引手段
Claims (2)
- プラズマ発生室内に作動ガスを満たし、アーク放電によりこの作動ガスをプラズマ化させ、このプラズマよりイオンビームを引き出すイオン源において、
上記プラズマ発生室に隣接して設けられた真空ボックスと、
この真空ボックスと上記プラズマ発生室とを連通する長穴状の開口部を、閉塞板によって閉塞又は開放することで、上記真空ボックスと上記プラズマ発生室とを気密状態で区画開閉するゲートバルブと、
基端部が上記真空ボックスの側壁に回転自在に支持されると共に、先端部がフィラメントを支持している支持アームであって、上記基端部を回転させることで、開いた状態の上記開口部を通過させて、上記フィラメントを上記真空ボックス内と上記プラズマ発生室内との間で移動させる支持アームと、
上記真空ボックスを開放するための蓋部材と、
フィラメント交換後に上記真空ボックス内を真空状態とするための大気吸引手段とを備えたことを特徴とするイオン源。 - 請求項1に記載のイオン源のフィラメント交換方法であって、
上記支持アームを作動させて、上記先端部に支持された上記フィラメントを、開いた状態の上記開口部を通過させ上記真空ボックス内に移動させて、
上記閉塞板で上記開口部を閉塞した後に、
上記真空ボックスの上記蓋部材を開けて上記フィラメントを交換し、
その後上記蓋部材を閉めて、上記大気吸引手段で上記真空ボックス内を真空状態にした後、
上記開口部を開けて、新たなフィラメントを上記プラズマ発生室内に移動させるようにしたことを特徴とするイオン源のフィラメント交換方法。
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