JP4649730B2 - 燃料電池システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素と酸素との化学反応により電気エネルギー発生させる燃料電池からなる燃料電池システムに関するもので、車両、船舶及びポータブル発電器等の移動体に適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、水素と酸素(空気)との電気化学反応を利用して発電を行い、負荷に電力を供給する燃料電池システムが知られている。例えば、電気自動車に搭載される燃料電池システムでは、車両走行に必要な電力を発電するために必要な水素量および酸素量を算出し、燃料電池にガス供給を行っている。このような燃料電池は、構成単位であるセルが複数積層されたスタック構造となっており、各セルは電気的に直列接続され各セルには同じ電流が流れる。
【0003】
図10は、燃料電池を構成するセルの出力電圧、出力電流、出力電力の関係を示したセル特性マップである。燃料電池の必要水素量および必要酸素量は、所定の水素利用率(燃料電池10に必要とされる理論水素量に対する燃料電池10に実際に供給される水素量の比)λにおけるセル特性マップ上で目標電流Ibrを求めた上で算出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、電気化学反応で発生した水分の凝縮による有効電極面積の減少等により各セルに均等に水素が供給されなくなり、セル間で電圧分布が生ずる場合がある。このような場合、図10の破線で示すように、最も電圧が低いセルが0V以下まで到達して過放電することがある。過放電の状態で大きな電流を流し続けると、セルを構成している電解質膜が破損するという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、燃料電池を構成する各セルの電圧特性がばらついた場合でも、電圧低下による過放電を防止できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水素と酸素の供給により電力を発生する燃料電池(10)を備え、負荷(20)に電力を供給するとともに負荷(20)の要求電力量に応じて燃料電池(10)に対する水素供給量を変更する燃料電池システムであって、燃料電池(10)を構成しているすべてのセル(10a)あるいは燃料電池(10)を構成しているセル(10a)のうち選択された複数個のセルの出力電圧を検出するセル電圧検出手段(17)と、セル(10a)の出力電流と、出力電圧と、燃料電池(10)が所定電力を発電するのに必要な理論水素量に対する燃料電池(10)に実際に供給される水素量の比である水素利用率とが予め関係付けられたマップに基づいて、所定水素利用率(λ)における水素供給量を算出する制御部(30)とを備え、セル電圧検出手段(17)により検出した複数のセル出力電圧のうち最も低い最低セル電圧(Vbm)が所定下限電圧(Vmin)以下の場合に、最低セル電圧(Vbm)が所定下限電圧(Vmin)より大きくなるように燃料電池(10)への水素供給量を所定量増加させ、制御部(30)は、最低セル電圧(Vbm)および所定下限電圧(Vmin)に基づいて所定水素利用率(λ)を算出することを特徴としている。
【0007】
これにより、燃料電池(10)の各セル(10a)の特性がばらついて、最低セル電圧(Vbm)が所定下限電圧(Vmin)以下となった場合であっても、燃料電池(10)への水素供給量を増加させることで最低セル電圧(Vbm)を上昇させることができ、セルの過放電を防止することができる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明のように、最低セル電圧(Vbm)および下限電圧(Vmin)に基づいて水素利用率(λ)を再設定することで、最低セル電圧(Vbm)が下限電圧(Vmin)以下とならない範囲で、水素利用率(λ)を常に効率のよい値に設定することができる。また、水素利用率(λ)を最低セル電圧(Vbm)と下限電圧(Vmin)との関係に基づいて水素利用率(λ)を常に変動させることで、最低セル電圧(Vbm)が下限電圧(Vmin)以下とならないように常に余裕を持たせて水素利用率λを固定値にする場合に比較して、水素利用効率のよい運転が可能となる。
【0010】
また、請求項に記載の発明では、目標電流(Ibr)および水素利用率(λ)の所定時間当たりの変化量に制限を設けたことを特徴としている。これにより、目標電流値(Ibr)と水素利用率λが急激に変動するのを避けることができ、システムの安全性を向上させることができる。
【0011】
また、請求項に記載の発明のように、燃料電池(10)と並列に接続された2次電池(22)を備え、負荷(20)の要求電力量が燃料電池(10)の最大発電量を超える場合には、負荷(20)の要求電力量に対して最大発電量で不足する電力量を、2次電池(22)から負荷(20)に供給するように構成することができる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を適用した第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。本実施形態は、本発明の燃料電池システムを電気自動車に適用したものである。
【0014】
図1は、本実施形態の燃料電池システムの全体構成を示している。図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムには、燃料電池(FCスタック)10、2次電池22、DC/DCコンバータ(電圧調整手段)23、制御部(ECU)30等が設けられ、車両走行用モータ(負荷)20に電力供給するように構成されている。
【0015】
FCスタック10は、固体高分子電解質型の燃料電池であり、電解質膜が一対の電極で挟まれたセルが多数積層されたスタック構造となっている。FCスタック10の負極側には水素供給部11より水素供給通路12を介して水素が供給され、正極側にはエア供給部14より空気供給通路15を介して空気(酸素)が供給されるように構成されている。FCスタック10では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギが発生する。
(負極側)H2→2H++2e-
(正極側)2H++1/2O2 +2e-→H2
水素供給通路12にはFCスタック10に供給される水素量を検出する水素流量検出装置13が設けられており、空気供給通路15にはFCスタック10に供給される空気量を検出する空気流量検出装置16が設けられている。水素流量検出装置15および空気流量検出装置16は、それぞれのセンサ信号を制御部30に出力する。
【0016】
図2はFCスタック10の拡大概略図を示している。図2に示すようにFCスタック10を構成する各セル10aは電気的に直列接続されている。FCスタック10には、FCスタック10を構成するセル10aの出力電圧値Vbを検出する電圧センサ(セル電圧検出手段)17と出力電流値Ibを検出する電流センサ(電流検出手段)18が設けられている。電圧センサ17は、FCスタック10を構成する各セル10aの電圧Vb1〜Vbnを検出できるように構成されている。電圧センサ17および電流センサ18は、それぞれのセンサ信号を制御部30に出力する。
【0017】
図3は、FCスタック10に供給される水素流量を固定した場合の、セル10aの電流−電圧特性を示している。図3に示すように水素流量が一定の場合には、セル10aの電流−電圧特性IV1〜IV4は直線状となる。IV1→IV4に向けて水素流量は増加している。これらの電流−電圧特性IV1〜IV4を延長した見かけ上の開放電圧を理論開放電圧Voとする。本第1実施形態では、理論開放電圧Voを1.3Vとする。なお、図3中の曲線はセル10aの出力電力が等しくなる等電力曲線である。
【0018】
図4は、FCスタック10を構成するセル10aの出力電力Pと出力電流Iとの関係を示している。図4に示すように、出力電力−出力電流特性は水素利用率λに依存している。水素利用率λは、FCスタック10が所定電力を発電するのに必要な理論水素量に対してFCスタック10に実際に供給される水素量の比であり、水素利用率λ=(理論上FCスタック10に必要な水素量)/(実際にFCスタック10に供給される水素量)=(1/水素過剰率)で得られる。図4に示すように、水素利用率λが高いほど出力電力Pに対する出力電流Iは小さくなり、水素利用率λが低いほど出力電力Pに対する出力電流Iは大きくなる。
【0019】
図5は、FCスタック10を構成するセル10aの出力電圧V、出力電流I、出力電力Pの関係を示したマップである。所定の水素利用率λ(例えば80%)におけるマップ上でFCスタック10の出力制御が行われる。図5のマップに基づいて、車両走行に必要となる要求出力電力Ptおよび水素利用率λから目標電流値を算出することができる。
【0020】
また、図5に示すように、FCスタック10には、セル電圧Vb1〜Vbnの所定下限電圧Vminが予め設定されている。所定下限電圧Vminは、セル電圧Vb1〜Vbnが0V以下まで低下して、過放電によりセルを構成する電解質膜が破壊されるのを防止するために設定された値である。下限電圧Vminは0Vより大きい値で任意に設定できるが、本実施形態の制御を行ってから実際にセル電圧Vb1〜Vbnが変動するまでに若干のタイムラグがあることから、下限電圧Vminは余裕を持たせて設定することが望ましい。本第1実施形態では下限電圧Vminを0.5Vと設定している。
【0021】
FCスタックにて発生した直流電力は、インバータ21で交流電流に変換され走行用モータ20に供給される。これにより、モータ20は車輪駆動力を発生させ車両を走行させる。また、本実施形態の燃料電池システムでは、2次電池(バッテリ)22がFCスタック10と電気的に並列接続されており、FCスタック10とともに2次電池22からもモータ20に電力を供給するように構成されている。2次電池22としては、例えば一般的な鉛蓄電池を用いることができる。2次電池22には、2次電池22の充電量(SOC)を検出するSOCセンサ(図示せず)が設けられており、制御部30にSOC信号を出力する。
【0022】
FCスタック10と2次電池22とを並列に接続してモータ20に電力供給する場合、両者の電位を等しくする必要がある。そこで、本実施形態ではFCスタック10側に電圧変換を行うDC/DCコンバータ23を設け、FCスタック10の電圧が2次電池22と同じ電圧になるように、DC/DCコンバータ23にて電圧変換を行っている。このような構成により、FCスタック10と2次電池22とで、モータ20への電力供給分担を行うことができる。
【0023】
本実施形態の燃料電池システムでは、車両走行に必要となる走行要求電力Ptに対してFCスタック10からの電力で不足する場合には、2次電池22より不足分の電力が供給(放電)される。また、走行要求電力Ptに対してFCスタック10からの電力が余剰する場合には、2次電池22に余剰分の電力が蓄積(充電)される。
【0024】
本実施形態の燃料電池システムには、各種制御を行う制御部30が設けられている。制御部30には、FCスタック10への水素供給量および空気供給量、FCスタック10の出力電圧Vbおよび出力電流Ib、SOC信号、アクセル開度、車速等が入力され、水素供給部11、エア供給部14、インバータ21、DC/DCコンバータ23に制御信号を出力するように構成されている。また制御部30は、上記図5で示したFCスタック10を構成するセル10aの出力電力P、出力電流I、出力電圧V、水素利用率λとが予め関係付けられたセル特性マップを備えている。
【0025】
以下、本第1実施形態の燃料電池システムの作動を図5、図6に基づいて説明する。図6は制御部30が行う制御手順を示すフローチャートである。図6に示すように下限電圧Vmin=0.5V、理論開放電圧Vo=1.3Vとする。
【0026】
まず、水素利用率λを初期値λ1(例えば80%)に設定する(ステップS100)。この水素利用率λの初期値λ1は任意に設定できるが、システムの安全性を考慮し、FCスタック10に対して常に過剰な水素を供給できるように、水素利用率100%に対して若干の余裕を持たせることが望ましい。
【0027】
次に、アクセル開度、車速等の信号と車重等の車両諸元に基づいて走行に必要となる走行要求電力Ptを算出する(ステップS110)。次に、図5で示したセル特性マップにより、水素利用率λにおける走行要求電力Ptを発電するために必要な電流値Ibrを算出する(ステップS120)。
【0028】
次に、目標電流値Ibrを発電するために必要となる水素量nH2および空気量(酸素量)nO2を算出する(ステップS130)。ここで、目標電流値Ibrを出力するために必要な水素量nH2(モル/秒)および酸素量nO2(モル/秒)の算出について説明する。FCスタック10を構成する各セル10aでは、以下の電気化学反応が起こり電流が発生する。
(負極側)H2→2H++2e-
(正極側)2H++1/2O2 +2e-→H2
そして、FCスタック10の各セルでは、水素1モル/秒および酸素0.5モル/秒から取り出せる電流は2×96500Aであり、これにセルの積層数を乗じた値がFCスタック10全体から取り出せる電流である。従って、目標電流値Ibrを出力するために必要な水素量nH2(モル/秒)および酸素量nO2(モル/秒)は、以下の数式から求めることができる。
【0029】
必要水素量nH2は、2×96500×nH2=Ibrとなり、従ってnH2=Ibr/(2×96500)となる。また、必要酸素量nO2は、2×96500×2×nO2=Ibrとなり、従ってnO2=Ibr/(4×96500)となる。
【0030】
次に、上記ステップS130で算出した必要水素量nH2および必要酸素量nO2をFCスタック10に供給するように、水素供給部11および空気供給部14に制御信号を出力する(ステップS140)。
【0031】
次に、電圧センサ17および電流センサ18により、現在の各セル10aの電圧Vb1〜VbnおよびFCスタック10の電流Ibを検出する(ステップS150)。検出したセル電圧Vb1〜Vbnのいずれかが下限電圧Vmin以下であるか否か、すなわち検出したセル電圧Vb1〜Vbnのうち最も電圧の低い最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下であるか否かを判定する(ステップS160)。
【0032】
図6中▲1▼のように最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下である場合には、図6中▲2▼のように最低セル電圧Vbmを下限電圧Vminまで上げるように目標電流値Ibrおよび水素利用率λを再設定する(ステップS170、S180)。目標電流値Ibrは、セル電圧Vb1〜Vbnを上げるために小さくなるように再設定される。また、再設定後の水素利用率λ′も再設定前(前回の制御時)の水素利用率λより低く設定される。
【0033】
上記ステップS170、S180における目標電流値Ibrおよび水素利用率λの再設定を図6に基づいて具体的に説明する。図6中▲1▼で示すように、現在の出力電圧Ib=235A、最低セル電圧Vbm=0.1V、水素利用率λ=80%であるとする。
【0034】
再設定後の目標電流値Ibr′は、Ibr′=Ib×(理論開放電圧Vo−下限電圧Vmin)/(理論開放電圧Vo−最低セル電圧Vbm)で求めることができ、Ibr=230A×(1.3V−0.5V)/(1.3V−0.1V)=153Aとなる(ステップS170)。
【0035】
また、再設定後の水素利用率λ′は、再設定後の目標電流値Ibr′のときの必要水素量nH2と現在電流値Ibのときの必要水素量nH2の比から求めることができる(ステップS180)。従って、λ′=λ×(nH2(Ibr′)/nH2(Ib))=0.8×(153/230)=0.53となる。
【0036】
以上により、図6中▲2▼で示すように、再設定後の目標電流値Ibr′=153A、再設定後の水素利用率λ′=53%となる。
【0037】
一方、セル電圧Vb1〜Vbnのすべてが下限電圧Vminを上回っている場合であっても、水素利用率λが初期値λ1を下回っていれば、上記ステップS170、S180の目標電流値Ibrおよび水素利用率λの再設定を行う(ステップS190)。システムの効率上、水素利用利率λは高い方が望ましいため、前回の制御時での水素利用率λの再設定により、水素利用率λが初期値λ1を下回っている場合には、水素利用効率向上のために水素利用率λが再設定される。
【0038】
次に、FCスタック10に現在供給されている水素量および空気量を検出する(ステップS200)。ステップS200で検出した水素量および空気量に基づいて発電可能な電流値Ibaを算出し(ステップS210)、FCスタック10の出力電流が発電可能電流値IbaとなるようにDC/DCコンバータ22により電力分配制御を行う(ステップS220)。
【0039】
走行用モータ20の要求電力量がFCスタック10の発電可能な最大発電量を超える場合には、走行用モータ20の要求電力量に対して最大発電量で不足する電力量が2次電池22から供給される。一方、FCスタック10の発電可能な最大発電量が走行用モータ20の要求電力量を超える場合には、走行用モータ20の要求電力量に対する余剰電力量は2次電池22の充電に用いられる。
【0040】
以降、ステップS110〜ステップS220の制御を繰り返し行う。上記ステップ180で再設定された水素利用率λを用い、ステップS120では図5のマップを用い、再設定された水素利用率λにおけるマップ上で走行要求電力Ptから目標電流Ibrが求められ、ステップS130で必要水素量nH2が算出される。上記ステップS160でセル最低電圧Vbmが下限電圧Vmin以下となった場合には、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vminを下回らないように水素利用率λが低く再設定される。これにより、必要水素量nH2が増加することとなる。
【0041】
以上、本第1実施形態によれば、FCスタック10の各セル10aの特性がばらついて、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下となった場合であっても、水素利用率λを再設定して水素供給量を増加させることで、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vminを下回らないようにすることができ、セルの過放電を防止することができる。
【0042】
また、最低セル電圧Vbmおよび下限電圧Vminに基づいて水素利用率λを再設定することで、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下とならない範囲で、水素利用率λを常に効率のよい値に設定することができる。
【0043】
このように、水素利用率λを最低セル電圧Vbmと下限電圧Vminとの関係に基づいて水素利用率λを常に変動させることで、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下とならないように常に余裕を持たせて水素利用率λを固定値にする場合に比較して、水素利用効率のよい運転が可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図7のフローチャートに基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態に比較して、ステップS170で算出する目標電流値Ibrの変化量に時間的制限を設けている点が異なる。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図7に示すように、上記第1実施形態と同様にステップS170で目標電流値Ibrを修正した後、前回制御時の目標電流値Ibr′から今回の目標電流値Ibrへの変化量が、予め設定された変化量制限値limitを超えているか否か判定する(ステップS171)。具体的には、ΔIbrが前回の目標電流値Ibr′と今回の目標電流値Ibrとの差であり、Δtが制御周期であるとした場合に、|ΔIbr/Δt|>変化量制限値limitであるか否かを判定する。
【0046】
この結果、目標電流値Ibrの変化量が変化量制限値limitを超えていれば、目標電流値Ibrの変化量を変化制限値limitに抑える(ステップS172)。具体的には、ΔIbr>0であればIbr=Ibr′+limitとなり、ΔIbr<0であればIbr=Ibr′−limitとなる。
【0047】
以下、上記第1実施形態と同様にステップS180で水素利用率λの再設定を行う。これにより、目標電流値Ibrと水素利用率λの時間的な変化量に制限を設け、目標電流値Ibrと水素利用率λが急激に変動するのを避けることができ、システムの安全性を向上させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図8のフローチャートに基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態に比較して、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vminをまたぐ場合に、本発明の制御を遅らせる点が異なる。上記第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
図8に示すように、上記第1実施形態と同様にステップS160でセル電圧Vb1〜Vbnのいずれかが下限電圧Vmin以下か否か判定し、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下である場合には、さらに、前回制御時のセル電圧Vb1〜Vbnのいずれかが下限電圧Vmin以下であったか否かを判定する(ステップS160)。すなわち、連続してVbm≦Vminとなったか否かを判定する。
【0050】
この結果、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下であって、前回制御時にも最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下であった場合には、目標電流値Ibrおよび水素利用率λの再設定が行われる。一方、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下であっても、前回制御時にも最低セル電圧Vbmが下限電圧Vmin以下でなかった場合には、目標電流値Ibrおよび水素利用率λの再設定が行われない。
【0051】
これにより、最低セル電圧Vbmが下限電圧Vminをまたいで変動する場合であっても、目標電流値Ibrと水素利用率λが頻繁に変動するのを避けることができ、システムの安定性を向上させることができる。
【0052】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、図1に示すようにDC/DCコンバータ23をFCスタック10側に設けたが、これに限らず、図9に示すようにDC/DCコンバータ23は2次電池22側に設けても上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、上記各実施形態では、図2に示す電圧センサ(セル電圧検出手段)17によりFCスタック10を構成するすべてのセル10aの電圧を検出したが、これに限らず、FCスタック10を構成するセル10aのうち複数個のセル10aを選択し、選択したセル10aの電圧のみを検出するように構成してもよい。このとき、FCスタック10の構成上、電圧の低くなりやすいセル10aを選択することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】上記第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図1の燃料電池システムのFCスタック10の拡大概念図である。
【図3】FCスタックを構成するセルの出力電圧と出力電流の関係を示す特性図である。
【図4】FCスタックを構成するセルの出力電力と出力電流との関係を示す特性図である。
【図5】FCスタックを構成するセルの出力電力、出力電流、出力電力、水素利用率の関係を示す特性図である。
【図6】上記第1実施形態の燃料電池システムの制御手順を示すフローチャートである。
【図7】上記第2実施形態の燃料電池システムの制御手順を示すフローチャートである。
【図8】上記第3実施形態の燃料電池システムの制御手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の燃料電池システムの変形例を示す概念図である。
【図10】従来技術におけるFCスタックを構成するセルの出力電圧、出力電流の関係を示す図である。
【符号の説明】
10…FCスタック(燃料電池)、17…電圧センサ(セル電圧検出手段)、20…走行用モータ(負荷)、21…インバータ、22…2次電池、23…DC/DCコンバータ(電圧調整手段)、30…制御装置。

Claims (3)

  1. 水素と酸素の供給により電力を発生する燃料電池(10)を備え、負荷(20)に電力を供給するとともに前記負荷(20)の要求電力量に応じて前記燃料電池(10)に対する水素供給量を変更する燃料電池システムであって、
    前記燃料電池(10)を構成しているすべてのセル(10a)あるいは前記燃料電池(10)を構成しているセル(10a)のうち選択された複数個のセルの出力電圧を検出するセル電圧検出手段(17)と、
    前記セル(10a)の出力電流と、出力電圧と、前記燃料電池(10)が所定電力を発電するのに必要な理論水素量に対する前記燃料電池(10)に実際に供給される水素量の比である水素利用率とが予め関係付けられたマップに基づいて、所定水素利用率(λ)における前記水素供給量を算出する制御部(30)とを備え、
    前記セル電圧検出手段(17)により検出した前記複数のセル出力電圧のうち最も低い最低セル電圧(Vbm)が所定下限電圧(Vmin)以下の場合に、前記最低セル電圧(Vbm)が所定下限電圧(Vmin)より大きくなるように前記燃料電池(10)への水素供給量を所定量増加させ
    前記制御部(30)は、前記最低セル電圧(Vbm)および前記所定下限電圧(Vmin)に基づいて前記所定水素利用率(λ)を算出することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記目標電流(Ibr)および前記水素利用率(λ)の所定時間当たりの変化量に制限を設けたことを特徴とする請求項に記載の燃料電池システム。
  3. 前記燃料電池(10)と並列に接続された2次電池(22)を備え、
    前記負荷(20)の要求電力量が前記燃料電池(10)の最大発電量を超える場合には、前記負荷(20)の要求電力量に対して前記最大発電量で不足する電力量を、前記2次電池(22)から前記負荷(20)に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池システム。
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