JP4647121B2 - エンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリビニルアルコール系フィルムからなる包材は、農薬、薬剤、染料、洗剤、肥料、化粧品、生理用品等を収容するための材料として多用されており、かかる包材は、ポリビニルアルコールの水溶性を利用して、直接、水性媒体中へ投入して包材を分解又は溶解せしめて溶液を得たり、使用時に開封した包材をそのまま水に流して捨てる等の用途に用いられているが、かかるポリビニルアルコール系フィルムは、吸湿性を有しているため、高湿時においてはその表面がしばしば粘着性を帯びてフィルム同士がブロッキングする傾向がある。
【0003】
かかるブロッキング性を防止するために、フィルムにエンボス加工を行うことが通常行われ、例えば、特開平7−290567号公報では、凹部の厚みが15〜25μmで、フィルムの引張強度が2.5〜4.5kg/mm2であるエンボス加工された水溶性フィルムが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のフィルムでは、水への分散性並びに溶解性、機械的強度等の改善は認められるものの、耐ブロッキング性の更なる改善や製品に高級感を与える外観性等については十分に考慮されていない。
特に、耐ブロッキング性については、従来の耐ブロッキング性の評価は、単にフィルムの上から圧力をかけてその時のブロッキング性を測定するのが通常であるが、現実の製品形態、つまりフィルムをロール状に巻き取った状態でのブロッキング性の測定の方がより実用レベルに近い評価となると共に、上記の単なるフィルムでの評価より一層厳しい耐ブロッキング性をも要求されることになるのである。
【0005】
すなわち、本発明の目的とするところは、耐ブロッキング性が更に向上し、ロール状で保管しても耐ブロッキング性を維持することができ、さらには外観性に優れたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、エンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法について鋭意研究をした結果、ポリビニルアルコール系原反フィルムをエンボスロールとバックアップロールの間を通過させることによりエンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムを製造するにあたり、
(I)ポリビニルアルコール系原反フィルムが、4重量%水溶液粘度が10〜40mPa・s(20℃)で、ケン化度が70〜99モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなること、
(II)バックアップロールの表面硬度(ショアーD)が60〜90であること、
(III)エンボス加工時のバックアップロールによるポリビニルアルコール系原反フィルムへの押圧力が30〜100kg/cmであること、
(IV)エンボス加工時のエンボスロールの表面温度が100〜180℃であること、
(V)エンボス加工時のバックアップロールの表面温度が50℃以上であること、及び
(VI)エンボス加工時のポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率が4〜15重量%であることを満足させて、
(VII)ポリビニルアルコール系原反フィルムをエンボス頂部の結晶度指数が0.50〜0.90となるようにエンボス加工することにより上記の目的を達成できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0007】
さらに、エンボス加工後のフィルムの見掛けの厚み(Tμm)とエンボス加工前の原反フィルムの厚み(tμm)との比(T/t)が3〜5であるとき、本発明の作用効果をより顕著に得ることが可能となる。
なお、本発明では、かかる(T/t)をエンボス度合いと称することがある。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明で用いるポリビニルアルコール系原反フィルムの原料であるポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されることなく、公知の方法で製造することができる。
すなわち、ビニルエステル系化合物を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得られるものである。
【0010】
かかるビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が単独又は併用で用いられるが、実用上は酢酸ビニルが好適である。
【0011】
また、本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲において、他の単量体を共重合させることも可能で、かかる単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等を挙げることができる。
【0012】
重合(あるいは共重合)を行うに当たっては、特に制限はなく公知の重合方法が任意に用いられるが、通常は、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、乳化重合、懸濁重合も可能である。
【0013】
また、重合反応は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触媒を用いて行われ、反応温度は50℃〜沸点程度の範囲から選択される。
【0014】
得られたビニルエステル系重合体をケン化するにあたっては、該重合体をアルコールに溶解してアルカリ触媒の存在下に行なわれる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は、20〜50重量%の範囲から選ばれる。
【0015】
ケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができる。かかる触媒の使用量はビニルエステルに対して1〜100ミリモル当量にすればよい。なお、場合によっては、酸触媒によりケン化することも可能である。
【0016】
かくしてポリビニルアルコール系樹脂が得られるのであるが、ポリビニルアルコール系原反フィルムに用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、特に4重量%水溶液粘度が10〜40mPa・s(20℃)で、ケン化度が70〜99モル%のものである。
【0017】
かかる4重量%水溶液粘度が10mPa・s(20℃)未満では、得られるポリビニルアルコール系フィルムの機械的強度が低下したり、エンボスの結晶度指数が下がりすぎる傾向にあり、逆に40mPa・s(20℃)を越えると、水への溶解性が低下して、フィルムの製膜時においては良好なポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得ることが困難となり、フィルムが得られたとしても得られたフィルムの水溶性が低下したり、またエンボスの結晶度指数が上がりすぎる傾向にあり好ましくない。かかる4重量%水溶液粘度の更に好ましい範囲は10〜37mPa・s(20℃)で、特に好ましい範囲は11〜35mPa・s(20℃)である。
【0018】
また、ケン化度が70モル%未満或いは99モル%を越えると、ポリビニルアルコール系樹脂の水への溶解性が低下して上記と同様の理由で好ましくなく、さらには、ケン化度が70モル%未満ではエンボスの結晶度指数が下がりすぎる傾向にあり、逆に99モル%を越えるとエンボスの結晶度指数が上がりすぎる傾向にあり好ましくない。い。かかるケン化度の更に好ましい範囲は75〜98モル%で、特に好ましい範囲は80〜97モル%である。
【0019】
上記の如きポリビニルアルコール系樹脂から、ポリビニルアルコール系原反フィルムを製造(製膜)するにあたっては、特に制限されることなく、該樹脂を水溶液とした後、ロール、ドラム、エンドレスベルト等の平滑な金属面上に流延する方法や該樹脂に適宜水や後述の可塑剤を加えて押出法等の手段によって溶融成形する方法等により、プレーンなポリビニルアルコール系原反フィルムを得ることができる。
【0020】
また、上記の製造時においては、必要に応じて、該樹脂や水溶液に可塑剤(グリセリン、ジグリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、剥離剤(ソルビタンエステルエーテル等)、ハジキ防止剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等)、抗酸化剤(フェノール系、アミン系等)、安定剤(リン酸エステル類等)、着色料、香料、増量剤、消包剤、防錆剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤、更には他の水溶性高分子(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉等)などを添加しても差し支えない。
さらに、必要に応じて、ポリビニルアルコール系樹脂は、2種以上混合して用いてもよい。
【0021】
かかるポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚については、特に限定されないが、5〜80μm(更には7〜70μm、特には8〜65μm、殊に10〜60μm)であることが好ましく、かかる膜厚が5μm未満では機械強度が不足することとなり、逆に80μmを越えると溶解性の低下や製膜効率の低下を招き好ましくない。
【0022】
本発明においては、上記の如きポリビニルアルコール系原反フィルムをエンボス頂部の結晶度指数が0.50〜0.90となるようにエンボス加工することを最大の特徴とするもので、かかる結晶度指数が0.50未満では、十分な見掛け膜厚が得られず、逆に0.90を越えるとフィルムにピンホールが発生して本発明の目的を達成できない。
かかる結晶度指数の更に好ましい下限は、0.55で、特には0.60であり、逆に更に好ましい上限は0.85で、特には0.80である。
【0023】
なお、ここで言う結晶度指数とは、赤外分光光度計を用いて、顕微ATR法(全反射吸収測定法)によって測定される赤外線吸収スペクトルにおいて、結晶化バンドとして知られている1142cm-1付近の吸収帯ピーク強度(a)の1420cm-1付近の吸収帯ピーク強度(b)に対する強度比(a/b)を算出したもので、例えば、Nicolet社製『MAGNA 760』(赤外分光光度計)を用いて、ATRプリスムとして、Geの45度入射角のもの(Spectra−Tech Inc社製)を用いて測定することができる。なお、上記の吸収帯の強度をチャートから読みとるにあたっては、それぞれのベースラインを横軸(波数軸)と平行に引いてピーク値の強度を求めた(図1参照)。
また、赤外線吸収スペクトルで測定される上記のエンボス頂部とは、エンボスロールの凸部により刻印されたフィルムの頂部である。
【0024】
かかる結晶度指数をコントロールするにあたっては特に限定されず、上記の原料ポリビニルアルコール系樹脂の調整以外に、ポリビニルアルコール系原反フィルムをエンボス加工するときのエンボス圧力、バックアップロールの表面硬度、エンボス速度(エンボス時のフィルム速度)、等を適宜調整することにより可能である。
以下、エンボス加工について具体的に説明する。
【0025】
エンボス加工にあたっては、エンボスロールとバックアップロールが用いられるのであるが、該エンボスロールとしては、彫刻又は旋盤加工等により、その表面が凸状に形成された金属ロール又はセラミックロール等が用いられる。かかる凸部の形状については、格子状、絹目状、亀甲状、菱型状等が挙げられ、10〜200メッシュ、好ましくは20〜100メッシュの凸部を有したロールが用いられる。
【0026】
かかる凸部のメッシュが10メッシュ未満では細かな凹凸感のあるフィルムが得られなくなり、200メッシュを越えると立体感のあるエンボス加工が得られなくなり好ましくない。
【0027】
一方、バックアップロールとしては、ロールの表面硬度(ショアーD)が60〜90のものを用いることが必要であり、かかる硬度が60未満ではシャープなエンボス模様が得られないことがあり、逆に90を越えるとフィルムにピンホールが発生しやすく、またフィルムが破断する恐れもあり好ましくない。かかる硬度の更に好ましい下限は65で、特には70であり、逆に更に好ましい上限は88で、特には85である。
【0028】
なお、ここで言う表面硬度(ショアーD)とは、JIS K 6253に準じた測定方法により求められる硬度であり、D形硬さ試験機を用いて測定される。
【0029】
かかるバックアップロールとしては、上記範囲の表面硬度を有するものであれば特に限定されず、例えば、金属ロール、樹脂ロール、ペーパーロール、コットンロール等を挙げることができるが、容易にシャープなエンボス柄が得られる点で、コットンロールを用いることが好ましい。
【0030】
本発明においては、上記の如きポリビニルアルコール系原反フィルムを、上記の如きエンボスロールとバックアップロールの間を通過させることによりエンボス加工を行うわけであるが、かかるバックアップロールによるポリビニルアルコール系原反フィルムへの押圧力は、使用するバックアップロールの表面硬度及びエンボスロールの凹凸形状によって適宜選択され得るが、本発明では30〜100kg/cmであり、より好ましくは30〜80kg/cmである。
【0031】
かかる押圧力が10kg/cm未満では充分な深さを有するエンボス加工が得られず、100kg/cmを越えるとエンボスフィルムの厚みが部分的に薄くなり機械的強度が低下し易くなり、又ピンホールが発生する傾向にあり好ましくない。
【0032】
また、本発明では、エンボス加工時のエンボスロールの表面温度は100〜180℃(更には105〜170℃、特には110〜160℃、殊に115〜150℃)であり、かつ、バックアップロールの表面温度は50℃以上(更には55〜110℃、特には60〜100℃、殊に65〜95℃)である。
【0033】
かかるエンボスロールの表面温度が100℃未満では充分な深さを有するエンボス加工が得られなくなり、逆に180℃を越えるとフィルムの溶解性が低下することとなり好ましくない。また、バックアップロールの表面温度が50℃未満では充分な深さを有するエンボス加工が得られなくなり好ましくない。
【0034】
エンボスロール加工時のフィルムの速度は、原反フィルムの厚み等により一概に言えないが、通常は1〜40m/min(更には3〜30m/min、特には5〜20m/min)の範囲であることが好ましい。
【0035】
上記の如きエンボス加工により目的とするポリビニルアルコール系フィルムが得られるのであるが、エンボスの凹凸形状については、特に限定されず適宜選択されるが、10〜200メッシュ、好ましくは20〜100メッシュの格子状、絹目状、亀甲状、菱型状等の柄を有する凹凸形状であることが好ましい。
【0036】
かくして、エンボス頂部の結晶度指数が調整されたポリビニルアルコール系フィルムが得られるのであるが、本発明においては、さらに、該フィルムのエンボス度合いが3〜5(更には3〜4.5、特には3〜4)であることが好ましく、かかるエンボス度合いが3未満では、耐ブロッキング性や外観性の更なる改善効果が認められず、逆に5を越えると耐ピンホール性が低下して好ましくない。
【0037】
かかるエンボス度合いを調整するには特に限定されないが、エンボス加工する前の原反フィルムの厚みを選択したり、エンボス加工前の原反フィルムの含水率等を調整することで可能である。
【0038】
かかる原反フィルム含水率については、含水率を4〜15重量%(更には5〜12重量%、特には6〜10重量%)とすることが必要であり、かかる含水量が4重量%未満或いは15重量%を越えると、得られるフィルムのエンボス度合いを大きくすることが困難になることがあり好ましくない。
【0039】
ポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率を上記範囲に調整する方法としては、製膜後、乾燥前のポリビニルアルコール系原反フィルムを引き続き乾燥して含水率を調整したり、含水率4重量%未満のポリビニルアルコール系原反フィルムを水に浸漬あるいは調湿等を施して含水率を調整したりする方法等が挙げられる。
【0040】
かくして得られたフィルムは、ロール状に巻いて保存したときにも耐ブロッキング性に優れ、さらには外観性に優れた(フィルム表面にテカリがなく、高級感がある)もので、かかるフィルムは、農薬、薬剤、染料、洗剤、肥料、化粧品、生理用品等の包材として有用で、特に各種薬剤等のユニット包装用として非常に有用である。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお、例中「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0042】
実施例1
ポリビニルアルコール系樹脂[4%水溶液粘度が30mPa・s(20℃)、ケン化度88モル%]の25%水溶液を、93℃の熱ロールへ流延し、製膜し、更に含水率を8%に調湿して、厚さ40μmのポリビニルアルコール系原反フィルムを製造した。
【0043】
次いで、該フィルムを、130℃に加熱されたエンボスロール[40メッシュの絹目状]と110℃に加熱されたバックアップロール[コットンロール、ロールの表面硬度(ショアーD)が85]との間を押圧力50kg/cmで、15m/minの速度で通過させ、エンボス加工を施し、40メッシュの絹目状(凹凸)柄を形成させて、見掛け膜厚が140μm(エンボス度合い3.5)のエンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムを得た。
【0044】
得られたフィルムのエンボス頂部の結晶度指数を本文中に記載の方法で測定したところ、0.75であった。
得られたフィルムについて、以下の評価を行った。
【0045】
(耐ブロッキング性)
得られたポリビニルアルコール系フィルム100mを、張力3kg/m、巻き取り速度5m/minでロール状(支管径約3inch)に巻き取って、室温で2週間放置後、ロールを解いて、以下のように評価した。
○・・・ブロッキングが認められず、巻芯部分までスムースに巻き解きができた
×・・・巻芯部分にブロッキングが見られ、巻解き時にフィルムの一部に破損が認められた
【0046】
(外観性;表面の風合い)
得られたポリビニルアルコール系フィルムに斜め45度の角度から白熱灯でフィルム表面を照らして、反対側45度の方向から目視観察して、以下のように評価した。
○・・・テカリが認められない
×・・・テカリが認められる
【0047】
実施例2
実施例1において、エンボスロールの表面温度およびコットンロールの表面温度をそれぞれ130℃および100℃に変更した以外は同様に行って、見掛け膜厚が140μm(エンボス度合い3.5)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.67のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0048】
実施例3
実施例1において、エンボスロールの表面温度およびコットンロールの表面温度をそれぞれ100℃および85℃に変更し、さらにフィルムの通過速度を5m/minとした以外は同様に行って、見掛け膜厚が125μm(エンボス度合い3.1)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.59のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0049】
実施例4
実施例1において、ロール表面硬度(ショアーD)が75のコットンロールを用いた以外は同様に行って、見掛け膜厚が135μm(エンボス度合い3.4)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.72のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0050】
実施例5
実施例1において、ロール表面硬度(ショアーD)が65のコットンロールを用いた以外は同様に行って、見掛け膜厚が130μm(エンボス度合い3.3)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.71のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0051】
実施例6
実施例1において、ロール間の押圧力を70kg/cmとした以外は同様に行って、見掛け膜厚が150μm(エンボス度合い3.8)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.78のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0052】
実施例7
実施例1において、エンボス加工されるポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率を4%とした以外は同様に行って、見掛け膜厚が130μm(エンボス度合い3.3)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.68のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0053】
実施例8
実施例1において、4%水溶液粘度が15mPa・s(20℃)、ケン化度95モル%のポリビニルアルコール系樹脂を用いた以外は同様に行って、見掛け膜厚が140μm(エンボス度合い3.5)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.80のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0054】
実施例9
実施例1において、4%水溶液粘度が15mPa・s(20℃)、ケン化度95モル%のポリビニルアルコール系樹脂を用い、かつエンボス加工されるポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率を12%とした以外は同様に行って、見掛け膜厚が140μm(エンボス度合い3.5)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.85のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0055】
比較例1
実施例1において、エンボス加工されるポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率を3%とし、さらにエンボスロールの表面温度およびコットンロールの表面温度をそれぞれ100℃および70℃とした以外は同様に行って、見掛け膜厚が140μm(エンボス度合い3.5)で、エンボス頂部の結晶度指数が0.40のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
【0056】
比較例2
実施例1において、エンボス加工されるポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率を3%とし、さらにエンボスロールの表面温度およびコットンロールの表面温度をそれぞれ200℃および150℃に変更した以外は同様に行って、見掛け膜厚が140μm(エンボス度合い3.5)で、エンボス頂部の結晶度指数が1.00のポリビニルアルコール系フィルムを得て、同様に評価を行った。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0057】
〔表1〕
【0058】
【発明の効果】
本発明では、エンボス頂部の結晶度指数が特定の値を示すようにエンボス加工しているため、得られたポリビニルアルコール系フィルムは、ロール状に巻いて保存したときにも耐ブロッキング性に優れ、さらには外観性に優れた(フィルム表面にテカリがなく、高級感がある)もので、かかるフィルムは、農薬、薬剤、染料、洗剤、肥料、化粧品、生理用品等の包材として有用で、特に各種薬剤等のユニット包装用として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で得られたポリビニルアルコール系フィルムの赤外線吸収スペクトルのチャート
Claims (3)
- ポリビニルアルコール系原反フィルムをエンボスロールとバックアップロールの間を通過させることによりエンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムを製造するにあたり、
(I)ポリビニルアルコール系原反フィルムが、4重量%水溶液粘度が10〜40mPa・s(20℃)で、ケン化度が70〜99モル%のポリビニルアルコール系樹脂からなること、
(II)バックアップロールの表面硬度(ショアーD)が60〜90であること、
(III)エンボス加工時のバックアップロールによるポリビニルアルコール系原反フィルムへの押圧力が30〜100kg/cmであること、
(IV)エンボス加工時のエンボスロールの表面温度が100〜180℃であること、
(V)エンボス加工時のバックアップロールの表面温度が50℃以上であること、及び
(VI)エンボス加工時のポリビニルアルコール系原反フィルムの含水率が4〜15重量%であることを満足させて、
(VII)ポリビニルアルコール系原反フィルムをエンボス頂部の結晶度指数が0.50〜0.90となるようにエンボス加工することを特徴とするエンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。 - エンボス加工後のフィルムの見掛けの厚み(Tμm)とエンボス加工前の原反フィルムの厚み(tμm)との比(T/t)が3〜5であることを特徴とする請求項1記載のエンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- エンボス加工時のバックアップロールとして、表面硬度(ショアーD)が60〜90のコットンロールを用いることを特徴とする請求項1または2記載のエンボス加工されたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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- 2001-03-16 JP JP2001075205A patent/JP4647121B2/ja not_active Expired - Fee Related
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