JP2017119853A - 水溶性フィルム、薬剤包装体及び水溶性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の水溶性フィルムは、PVA系樹脂(A)を含有してなる水溶性フィルムであって、その一方の面をα面、他方の面をβ面としたときに、α面とβ面とを接触させて測定される動摩擦係数(X)が0.290〜0.650のものである。かかる動摩擦係数(X)のより好ましい範囲は0.300〜0.600、更に好ましくは0.400〜0.600、特に好ましくは0.400〜0.500、殊に好ましくは0.400〜0.450である。かかる動摩擦係数(X)が小さすぎるとフィルム同士が滑ってしまい、巻きずれを起こしやすくなり、大きすぎるとフィルム同士の密着力が上がり、ブロッキングを起こしやすくなる。
即ち、23℃、40%RHに調湿した水溶性フィルムを2枚用意する。このときに、水溶性フィルムの流延製膜(キャスト製膜)において、キャスト面と接する面側のフィルム面をβ面、その反対面をα面としておく。そして、1枚のフィルムのβ面ともう1枚のフィルムのα面とを接触させて、その摩擦試験力Nを、島津製作所社製のオートグラフ「AG−X Plus」を用いて、JIS K 7125に準拠して測定し、下式(1)より、動摩擦係数を算出する。
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)としては、未変性PVAや変性PVA系樹脂が挙げられる。
上記の中でも、水溶性フィルムの引張強度の点で融点が85℃以上、特には90℃以上のものが好ましい。なお、融点の上限は300℃、特には200℃が好ましい。
かかる可塑剤(b1)が少なすぎるとPVA系フィルムが柔らかくなりすぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向があり、多すぎるとPVA系フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下でもろくなる傾向がある。また、可塑剤(b2)が少なすぎるとPVA系フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下でもろくなる傾向があり、多すぎるとPVA系フィルムが柔らかくなりすぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
本発明で用いられるフィラー(C)は、耐ブロッキング性の目的で含有されるものであり、具体例としては、無機フィラーや有機フィラーが挙げられ、中でも有機フィラーが好ましい。また、平均粒子径としては、0.1〜50μmであることが好ましく、更には0.5〜40μmであることが好ましい。なお、上記平均粒子径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置等で測定することができる。
溶解方法としては、通常、常温溶解、高温溶解、加圧溶解等が採用され、中でも、未溶解物が少なく、生産性に優れる点から高温溶解、加圧溶解が好ましい。
溶解温度が、高温溶解の場合には、通常80〜100℃、好ましくは90〜100℃であり、加圧溶解の場合には、通常80〜130℃、好ましくは90〜120℃である。
溶解時間としては、通常1〜20時間、好ましくは2〜15時間、更に好ましくは3〜10時間である。溶解時間が短すぎると未溶解物が残る傾向にあり、長すぎると生産性が低下する傾向にある。
更に、溶解した後、得られたPVA系樹脂水溶液に対して脱泡処理が行われるが、かかる脱泡方法としては、例えば、静置脱泡、真空脱泡、二軸押出脱泡等が挙げられる。中でも静置脱泡、二軸押出脱泡が好ましい。
静置脱泡の温度としては、通常50〜100℃、好ましくは70〜95℃であり、脱泡時間は、通常2〜30時間、好ましくは5〜20時間である。
例えば、下記の製膜条件にて行うことができる。
かかる熱処理においては、熱ロールにて行うこともできるが、その他、フローティングや遠赤処理等も挙げられる。とりわけ、熱ロールにて行うことが生産性の点で好ましい。熱処理温度としては、80〜135℃であることが好ましく、より好ましくは90〜125℃、更に好ましくは90〜120℃である。かかる温度が低すぎるとカール改善効果が低い傾向があり、高すぎると溶解性が低下する傾向がある。
この場合においても、フィルムの熱処理の際には、キャスト面側(β面側)とは反対の面側(α面側)に熱処理ロールが接触することが、フィルム表裏の熱履歴が近似することになることから好ましい。
かかる凹凸加工に際しては、加工温度は、通常60〜150℃であり、好ましくは70〜140℃、特に好ましくは80〜120℃、更に好ましくは85〜105℃である。かかる温度が低すぎるとブロッキングの懸念があり、高すぎると溶解性が低下する傾向がある。
加工圧力は、通常2〜8MPa、好ましくは3〜7MPaである。
加工時間は、上記加工圧力、製膜速度にもよるが、通常0.01〜5秒であり、好ましくは0.1〜3秒である。
また、必要に応じて、凹凸加工処理の後に、熱によるフィルムの意図しない延伸を防止するために、冷却処理を施してもよい。
なお、上記含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、得られた揮発分の値を含水率とする。
芯管(S1)の内径は、3〜30cmが好ましく、より好ましくは10〜20cmである。
芯管(S1)の肉厚は、1〜30mmが好ましく、より好ましくは2〜25mmである。
芯管(S1)の長さは、フィルムの幅より長くすることが必要で、フィルムロールの端部から1〜50cm突出するようにするのが好ましい。
芯管(S2)の内径は、3〜30cmが好ましく、より好ましくは10〜20cmである。
芯管(S2)の肉厚は、1〜30mmが好ましく、より好ましくは3〜25mmである。
芯管(S2)の長さは、製品のPVA系フィルム幅と同等或いはそれ以上の長さのものであればよく、好ましくは同等〜50cm長いものである。
かかるスリットに当たっては、シェア刃やレザー刃などを用いてスリットされるが、好ましくはシェア刃でスリットすることがスリット断面の平滑性の点で好ましい。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が使用される。
保護パットの形状は、フィルムロールにあわせて、円盤状のシート、フィルムが実用的である。保護効果を顕著にするため発泡体、織物状、不織布状等の緩衝機能を付加させるのが良い。又、湿度からフィルムロールを守るため乾燥剤を別途封入したり、前記保護パットに積層又は混入したりしておくこともできる。
保護パットの素材はプラスチックが有利であり、その具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
市販されているシート状乾燥剤の例としては、株式会社アイディ製の「アイディシート」や品川化成株式会社製の「アローシート」、「ゼオシート」、ハイシート工業株式会社製の「ハイシートドライ」等がある。
ブラケットはベニヤ板やプラスチック板からなるものであり、その大きさはブラケットの4辺がフィルムロールの直径より大きいものであればよい。
また、上記一対のブラケットがぐらつかないように、両者を結束テープで固定するのが有利であり、そのときテープの移動や弛みが起こらないようにブラケットの側面(厚さ部分)にテープ幅と同程度のテープズレ防止溝を設けて置くのも実用的である。
なお、上記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
本発明の薬剤包装体としては、水溶性フィルムからなる包装体内に薬剤、とりわけ液体洗剤が内包されてなるものである。薬剤包装体の大きさは、通常長さ10〜50mm、好ましくは20〜40mmである。また、水溶性フィルムからなる包装体のフィルムの厚みは、通常10〜120μm、好ましくは15〜110μm、より好ましくは20〜100μmである。内包される薬剤、とりわけ液体洗剤の量は、通常5〜50mL、好ましくは10〜40mLである。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
・カルボキシル基変性PVA(A1):20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度94モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%
・カルボキシル基変性PVA(A2):20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度96モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量4.0モル%
・未変性PVA(A3):20℃における4%水溶液粘度18mPa・s、平均ケン化度88モル%
PVA系樹脂(A)として、20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度94モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%のカルボキシル基変性PVA(A1)を90部、20℃における4%水溶液粘度18mPa・s、平均ケン化度88モル%の未変性PVA(A3)を10部、可塑剤(B)として、ソルビトール(b1)を20部及びグリセリン(b2)を20部、フィラー(C)として澱粉(平均粒子径20μm)を8部、界面活性剤(D)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩を2部及び水を混合して、溶解処理をし、澱粉が分散したPVA水溶液(固形分濃度25%)を得た。
そして、上記水分散液を用い、ステンレス製のエンドレスベルトを備えたベルト製膜機により、12m/minの速度で流延製膜法に従い製膜し、温度95℃の条件で乾燥させ、PVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た(フィルム幅:1000mm、フィルム長さ:300m、フィルム膜厚:87m)。
得られたPVA系フィルム(水溶性フィルム)について、以下の評価を行った。評価結果は表1に示す。
上記で得られたPVA系フィルム2枚を、23℃、40%RHにて2日間調湿した。このときに、水溶性フィルムの流延製膜(キャスト製膜)において、キャスト面と接する面側のフィルム面をβ面、その反対面をα面としておく。そして、1枚のフィルムのβ面ともう1枚のフィルムのα面とを接触させて、その摩擦試験力Nを、島津製作所社製のオートグラフ「AG−X Plus」を用いて、JIS K 7125に準拠して測定し、下式(1)より、動摩擦係数を算出した。
フィルムを150mm角にカットし、表裏(α面及びβ面)が同じ向きになるように50枚重ね、その上に150mm角の2kgの錘を置き、60℃90%の条件下で1日放置した。その後、フィルムを取り出し、四辺の端部から1cmずつカットした後の様子を以下のように評価した。
○:ブロッキングが認められなく、軽く剥がれる
×:ブロッキングが認められ、力を加えないと剥がれない
長さ300mのフィルムロールの巻き取り端部をテープで固定した後に、ロールを立て、芯管部分のみを持って持ち上げた時に、内周と外周で巻きずれが起こるかどうかを目視判断した。評価基準は以下の通りである。
○:巻きずれが全く起こらない。
△:外周が1cm未満の巻きずれをした。
×:外周が1cm以上巻きずれした。
実施例1において、更に、下記のエンボス加工を行った以外は同様に行い、PVA系フィルム(水溶性フィルム)を得、実施例1と同様の評価を行った。
上記のPVA系フィルムに、90℃に加熱された梨地模様を有するエンボスロール(表面粗さ(Ra)3μm)と65℃に加熱されたバックアップロールとの間を押圧力50kg/cmで、12m/minの速度で通過させ、エンボス加工を施し、梨地模様が形成されたPVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
実施例1において、更に、下記のエンボス加工を行った以外は同様に行い、PVA系フィルム(水溶性フィルム)を得、実施例1と同様の評価を行った。
上記のPVA系フィルムに、100℃に加熱された梨地模様を有するエンボスロール(表面粗さ(Ra)3μm)と65℃に加熱されたバックアップロールとの間を押圧力50kg/cmで、12m/minの速度で通過させ、エンボス加工を施し、梨地模様が形成されたPVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
PVA系樹脂(A)として、20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度96モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量4.0モル%のカルボキシル基変性PVA(A2)を100部、可塑剤(B)として、ソルビトール(b1)を25部及びグリセリン(b2)を10部、フィラー(C)として、澱粉(平均粒子径20μm)を8部、界面活性剤(D)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩を2部及び水を混合して、溶解処理をし、澱粉が分散したPVA水溶液(固形分濃度25%)を得た。
得られたPVA水溶液を80℃にて脱泡し、40℃まで冷やした。そのPVA水溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延し、3mの乾燥室(105℃)の中を0.350m/分の速度で通過させ乾燥し、厚さ89μmのPVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
上記で得られたPVA系フィルム(水溶性フィルム)について、実施例1と同様の評価を行った。
なお、耐ブロッキング性が「×」であったため、耐巻きずれ性の評価までは行なわなかった。
PVA系樹脂(A)として、20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度96モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量4.0モル%のカルボキシル基変性PVA(A2)を100部、可塑剤(B)としてグリセリン(b2)を16部、トリメチロールプロパンを10部とした以外は実施例1と同様にPVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
上記で得られたPVA系フィルム(水溶性フィルム)に、エンボスロールとバックアップロールを用いて絹目エンボス加工を実施した。120℃に加熱された凹凸形状(絹目、深さ180μm)を刻印されたエンボスロールと65℃に加熱されたバックアップロールとの間を押圧力50kg/cmで、15m/minの速度で通過させてエンボス加工を施し、40メッシュで深さ140μmの絹目模様が形成されたPVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
得られたPVA系フィルム(水溶性フィルム)について、実施例1と同様の評価を行った。
Claims (10)
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有してなる水溶性フィルムであって、その一方の面をα面、他方の面をβ面としたときに、α面とβ面とを接触させて測定される動摩擦係数(X)が0.290〜0.650であることを特徴とする水溶性フィルム。
- 可塑剤(B)を含有してなることを特徴とする請求項1記載の水溶性フィルム。
- 可塑剤(B)の含有量が、ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して20重量部以上であることを特徴とする請求項2記載の水溶性フィルム。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)が、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有してなることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の水溶性フィルム。
- フィルムの含水率が3〜15重量%であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の水溶性フィルム。
- 薬剤包装に用いることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の水溶性フィルム。
- 請求項1〜6いずれか記載の水溶性フィルムで、液体洗剤が包装されてなることを特徴とする薬剤包装体。
- 液体洗剤が、水に溶解又は分散させた時のpH値が6〜12で、水分量が15重量%以下であることを特徴とする請求項7記載の薬剤包装体。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有してなる製膜原料を製膜し、乾燥した後、80〜135℃で熱処理することを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の水溶性フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)を含有してなる製膜原料を製膜し、乾燥した後、60〜150℃でエンボス加工することを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の水溶性フィルムの製造方法。
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