JP4646102B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質型燃料電池に関する。更に詳しくは、複数の単セルが積層されてなる燃料電池において、各々の単セルにおける空気極とセル間セパレータとの間に介装された集電体と、セル間セパレータとの間の接触抵抗を低減させることにより、長期に渡って安定した出力が維持される固体電解質型燃料電池に関する。
本発明は、各種の構造を備える固体電解質型燃料電池において広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
平板型の固体電解質型燃料電池(以下、「平板型SOFCスタック」ということもある。)は、複数の単セルがセパレータを介して積層され、形成されている。この平板型SOFCスタックは、1000℃を越える高温で動作させることが多いが、近年、Y等により安定化されたジルコニアなどの固体電解質層をできるだけ薄くして内部抵抗を低減し、900℃以下、特に800℃以下の比較的低温域で動作させる研究が活発化している。この場合、従来から使用されている耐熱性の高いセラミックセパレータに代えて、金属製の安価なセパレータを使用することができ、特に、より安価なステンレス鋼を用いることができれば、大幅にコストを引き下げることができる。
【0003】
このように金属製のセパレータを使用し、各々の単セルの燃料極及び空気極とセパレータとを、それぞれ集電体により電気的に接続した平板型SOFCスタックでは、各々の電極とセパレータとの間の接触抵抗が高いと、出力が低下して大きな問題となる。特に、空気極の側では、常に酸素ガスが存在し、セパレータが酸化され易く、生成する絶縁性の酸化皮膜により接触抵抗が高くなる傾向にある。このような問題に対処するため、優れた導電性を有するAgを用いた集電体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、耐熱合金からなる母材の表面にクロム酸化物層を介して銀メッキ層が形成された導電性に優れるセパレータも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−280026号公報
【特許文献2】
特開2002−289215号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の集電体、及び特許文献2に記載のセパレータを使用すれば、低温で動作させても出力密度の高い固体電解質型燃料電池とすることができると記載されている。しかし、これらの集電体及びセパレータは非常に高価であり、より安価であって、且つ接触抵抗を十分に低下させることができる接触手段が必要とされている。
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、空気極の側において集電体とセル間セパレータとの間の接触抵抗を低減させることにより、安定した出力が維持される固体電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の通りである。
1. 複数の単セルが金属製のセル間セパレータを介して積層された構造を備える固体電解質型燃料電池において、各々の単セルは、固体電解質層、該固体電解質層の一面に設けられた燃料極、及び他面に設けられた空気極を有する発電層と、該セル間セパレータと該空気極との間に介装された集電体とを備え、該集電体の少なくとも一部が緻密質部であると共に、該緻密質部の一方の面と該セル間セパレータとが接合材を介して面的に接触している固体電解質型燃料電池であって、
上記集電体の一部が上記緻密質部であると共に、上記集電体の他の一部が支燃性ガスを通過させ得る多孔質部であることを特徴とする固体電解質型燃料電池。
2. 上記接合材がろう材であり、上記緻密質部と上記セル間セパレータとが接触する面がろう付けされている上記1.に記載の固体電解質型燃料電池。
3. 上記ろう材がAgを主成分とする上記2.記載の固体電解質型燃料電池。
4. 上記集電体が、支燃性ガスを上記空気極に向って通過させ得るように構成されている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の固体電解質型燃料電池。
【0007】
【発明の効果】
本発明の固体電解質型燃料電池では、集電体とセル間セパレータとが接合されて両者の接触抵抗が低減され、長期に渡って安定した出力が維持される。
また、集電体の一部が緻密質部であると共に、集電体の他の一部が支燃性ガスを通過させ得る多孔質部である場合は、支燃性ガス流路の形状自由度を拡大できるだけでなく、形状によっては集電体強度を向上することもできる。
また、接合材がろう材であり、緻密質部とセル間セパレータとが接触する面がろう付けされている場合は、耐熱サイクル性等が向上され、さらに安定した出力が維持される。
また、ろう材がAgを主成分とする場合は、集電体とセル間セパレータとの接触抵抗をさらに安定して低減させることができる。
さらに、集電体が、支燃性ガスを上記空気極に向って通過させ得るように構成されている場合は、燃料電池運転時に、支燃性ガスと空気極とを好適に接触させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本実施形態に係る固体電解質型燃料電池は、複数の単セルが金属製のセル間セパレータを介して積層され、形成されている。この燃料電池において各々の単セルは発電層を備え、それぞれの発電層は、固体電解質層と、この固体電解質層の一面に設けられた燃料極と、他面に設けられた空気極とを有する。更に、各々の発電層の燃料極及び空気極とセル間セパレータとは、それぞれ集電体により電気的に接続されている。また、各々の単セルは、燃料電池の構造にもよるが、燃料ガスの流路と支燃性ガスの流路とを隔離するための隔離セパレータを備え、この隔離セパレータも金属により形成することができる。更に、それぞれの単セル間を電気的に絶縁するため、絶縁性セラミックからなる枠体が、積層方向の所定部分に配設されることもある。
【0009】
上記「セル間セパレータ」は金属からなり、特に、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金等の耐熱合金により形成される。尚、セル間セパレータの上面に更に他の単セルが積層されない場合は、蓋部材として機能し、セル間セパレータの下面に更に他の単セルが積層されない場合は底部材として機能する。
更に、平板型SOFCスタックの構造によっては、燃料ガス又は支燃性ガスの流路が形成されたセル間セパレータが用いられることもある。
【0010】
また、上記「固体電解質層」は、Scにより安定化されたジルコニア(ScSZ)等により形成することができる。この固体電解質層は、電池の動作時に燃料極に導入される燃料ガス又は空気極に導入される支燃性ガスのうち一方の少なくとも一部をイオンとして移動させることができるイオン伝導性を有する。どのようなイオンを伝導することができるかは特に限定されないが、イオンとしては、例えば、酸素イオン及び水素イオン等が挙げられる。
上記「燃料極」はNi及びScSZ等により形成することができる。この燃料極は、水素源となる燃料ガスと接触し、平板型SOFCスタックにおける負電極として機能する。
上記「燃料ガス」は、水素源となりうる限り、その成分などは特に問わないが、水素の他に、たとえばメタンやエタンなど炭化水素ガスなどを挙げることができる。さらに、燃料ガス組成は、純ガス,混合ガスを問わない。
上記「空気極」はLa1−xSrxMnO3系複合酸化物等により形成することができる。この空気極は、酸素源となる支燃性ガスと接触し、平板型SOFCスタックにおける正電極として機能する。
上記「支燃性ガス」は、酸素源となり得る限り、その成分等は特に問わないが、例えば、酸素と他の気体との混合ガス等を挙げることができる。
【0011】
上記「集電体」は、少なくとも一部が緻密質部であると共に、他の一部が支燃性ガスを通過させ得る多孔質部である限りは、その形状、材質等は特に問わない。この集電体は、通常、支燃性ガスを空気極に向って通過(透過も含む。)させ得るように構成されている。また、この集電体は、例えば、その全部が緻密質部であることができるが、この場合、図6及び11に示すように、この緻密質部は、支燃性ガスを空気極に向って通過させ得るガス流路を有する(このように全部が緻密質部の場合は参考例となる)。また、この緻密質部の一方の面がセル間セパレータと接触すると共に、他方の面が空気極と接触する。また、集電体は、本発明では、上述のようにその一部が緻密質部であると共に、他の一部が支燃性ガスを通過させ得る多孔質部である。この場合、図8〜10に示すように、この緻密質部及び多孔質部は、互いに積層されていたり、同一平面内に配設されていたりできる。また、この多孔質部としては、例えば、セラミック多孔体、金属からなる発泡体、フェルト、メッシュ等を挙げることができる。また、この多孔質部は、1種の材料のみからなっていてもよく、2種以上の材料からなっていてもよい。
また、この集電体を用いると、空気極側のセル間セパレータの抵抗、集電体の抵抗、及びそれらの接触抵抗からなる総抵抗を、緻密質部を有していない多孔質集電体を用いる場合の総抵抗の50%未満(好ましくは、30%未満)とすることができる。
【0012】
また、集電体は、セル間セパレータと同等以上の耐酸化性を有することが好ましい。この酸化の難易は、集電体を形成する材料からなる試験片を500時間程度燃料電池の運転温度にて熱処理し、その後、試験片の断面を鏡面研磨し、この断面を電子顕微鏡により観察し、酸化被膜の厚さ、及びこの酸化被膜が剥離していないか、剥離している場合は剥離の程度等を確認することで評価することができる。尚、集電体はセル間セパレータより酸化し難いことが特に好ましく、この場合、電流集中によって集電体が発熱したとき、集電体がより酸化し難く、電気特性が悪化し難いため好ましい。
【0013】
また、集電体の少なくとも一部に空気極を構成する元素と同じ元素が含まれていることが好ましい。同じ元素が含まれていることにより、空気極と集電体との間の反応が抑えられ、これらが変質せず、接触抵抗の増加が抑制されて安定した出力が維持される。更に、集電体の少なくとも一部が空気極と同じ組成を有することがより好ましい。同じ元素が含まれていても、組成が異なる場合は、濃度の高い側から低い側へと元素等がマイグレーションすることがあり、変質及び接触抵抗の増加を十分に抑えることができない場合がある。一方、組成が同じであれば、空気極と集電体との間の反応及び元素等のマイグレーションが十分に抑制され、出力をより安定させることができる。
【0014】
上記「緻密質部」は、少なくともその一部が後述の接合材を介してセル間セパレータと接触している限り、その材質、形状等は特に問わない。この緻密質部としては、例えば、セラミック又は金属からなるブロック状体、板状体、異形状体等を挙げることができる。また、この緻密質部は、1種の材料のみからなっていてもよく、2種以上の材料からなっていてもよい。
ここで、緻密質部とは、セル間セパレータと接触する集電体の面を鏡面研磨した場合、気孔率8%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは3%となっており且つ1mm2以上の面積を有する部位を意味する。この気孔率の測定としては、例えば、鏡面研磨した面を電子顕微鏡等で画像を取得し、任意の範囲について画像解析処理装置を用いて、全面積に対する気孔の占める面積を計算させ、これを気孔率とするものを挙げることができる。
【0015】
上記「接合材」は、集電体とセル間セパレータとを密着させ、安定して接触させることができる限り特に限定されない。この接合材としては、例えば、ろう材、導電性材料等を挙げることができる。このろう材としては、特に、平板型SOFCスタックの動作温度を650〜900℃と想定した場合、耐熱性、耐酸化性、耐食性等の観点からAgを主成分とするものが好ましい。また、Agを主成分とし、Pd、Ti等を含有するものがより好ましい。Agを主成分とするとは、ろう材を100質量%とした場合に、Agが50質量%以上であることを意味し、このAgは70〜98質量%、特に90〜98質量%、更には93〜97質量%含有されていることが特に好ましい。Agが70〜98質量%、特に90〜98質量%含有されるろう材であれば、ろう付け時にろう材が十分に流動し、接触抵抗を低下させることができる。更に、酸化され難く、十分な耐久性を有するろう付け部を形成することができる。
【0016】
ろう材を用いて集電体とセル間セパレータとをろう付けする際の温度は特に限定されないが、ろう材の固相点温度以上で、且つ液相点温度を50℃越える温度以下とすることが好ましい。Agの融点は約962℃であるが、ろう材の固相点温度以上の温度でろう付けすれば、Agを含有するろう材成分が融解し、展延性に富むAgが集電体とセル間セパレータとの間に十分に流動し、これらを密着させることができる。また、特にろう材の液相点温度を越える温度でろう付けした場合は、より安定した十分な密着性及び接合強度が維持され、容易に剥離することがない。一方、このろう付けの温度は液相点温度を50℃越えて高い温度とする必要はなく、固相点温度以上、且つ液相点温度を50℃越える温度以下でろう付けすれば、十分な密着性及び接合強度が得られる。
【0017】
ろう付けの際の雰囲気は不活性雰囲気であれば特に限定されず、真空、及びアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気とすることができる。ろう付けの際の雰囲気は特に真空であることが好ましく、真空雰囲気であれば接合強度を大きく向上させることができる。この真空の程度は10Pa以下、特に1×10−2〜1Paとすることが好ましい。
尚、平板型SOFCスタックでは、集電体とセル間セパレータの他、同様にAgを含有する接合材等により気密にシールする必要のある部分が多くあり、これらの接合操作の際に同時にろう付けすることができる。従って、集電体とセル間セパレータとをろう付けしても、平板型SOFCスタック製造のための操作、工程の増加は僅かである。
【0018】
また、上記導電性材料としては、例えば、燃料電池の運転環境下において化学的に安定しているといった観点から、白金、金、銀、及びパラジウムのうちの少なくとも一種を主成分とするものが好ましい。特に、コスト面、化学的安定性等の観点から、銀を主成分とするものが好ましい。ここで、主成分とするとは、導電性材料を100質量%とした場合に、主成分となる金属の合計が50質量%以上であることを意味し、その主成分は70〜98質量%、特に90〜98質量%、更には93〜97質量%含有されていることが特に好ましい。
また、導電性材料を含有する導電性ペーストを、集電体の緻密質部及びセル間セパレータのうちの少なくとも一方に塗布し、その塗布面を介して集電体の緻密質部とセル間セパレータとを接触させた状態で熱処理すれば、集電体の緻密質部とセル間セパレータとの間に導電性材料を介在させることができる。なお、熱処理の条件は、特に限定されず、材料により異なるためそれぞれに適した熱処理温度、時間、雰囲気等とすることができる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実験例1〜7及び比較実験例1
下記(1)の試片を使用し、下記(2)のようにしてSUS製角板と集電体<1>〜<5>又は角板とをろう付けし、図12のような試験体を作製して下記(3)のようにして総抵抗を測定した。
(1)試片
実験例の試片としては、平板型SOFCスタックにおいて、セル間セパレータ等として使用されるSUS430からなる35mm角、厚さ0.3mmのSUS製角板(s1)と、後記の表1に示す材質及び形状を組み合わせてなる集電体<1>〜<5>(s2)(いずれも外郭形状は、30mm角、厚さ2mm)とを使用した。具体的には、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3(気孔率3%以下;後記の表1では「LSCF6428」と表記する。)からなる集電体<1>〜<5>と、インコネル610からなる集電体<1><5>とを用意した。
比較実験例の試片としては、実験例の試片と同じ構成のSUS製角板(s1)と、LSCF6428多孔体(気孔率50%)であって形状が30mm角、厚さ2mmの角板(s2)とを使用した。
【0020】
上記集電体<1>(s2)は、図6及び7に示すように、上下側に貫通する複数の長孔(ガス流路)(g)が形成された緻密質体である。また、集電体<2>(s2)は、図8に示すように、緻密質部(厚さ0.2mm)(m)と、この緻密質部(m)の下面側に積層される多孔質部(気孔率20%、厚さ0.2mm)(n1)と、この多孔質部(n1)の下面側に積層される多孔質部(気孔率40%、厚さ1.6mm)(n2)とを有している。また、集電体<3>(s2)は、図9に示すように、緻密質部(m)と多孔質部(n)を交互に配列し、上下側に貫通するガス流路(g)を多孔質部(n)で形成している。また、集電体<4>(s2)は、図10に示すように、緻密質部(厚さ0.2mm)(m)と、この緻密質部(m)の下面側に積層される多孔質部(気孔率40%、厚さ1.8mm)(n)とを有している。さらに、集電体<5>(s2)は、図11に示すように、下面側に開口する複数の長溝(ガス流路)(g)が形成された緻密質体である。なお、図6〜11において、SUS製角板(s1)及び各集電体<1>〜<5>(s2)を燃料電池として用いる際の位置関係を明瞭にするため、セル部iを仮想線で示す。
尚、集電体<1>〜<5>をセラミック材料で作製する場合、例えば、集電体<1><2><4><5>は、性質(気孔率等)の異なる、又は、予めガス流路となる部分を打抜いたセラミックシートを積層し焼成して作製することができる。また、集電体<1><5>は、プレス成形により一度で成形される成形品を焼成して作製することもできる。また、集電体<3>は、押し出し成形法を用い、性質(気孔率等)の異なる材料を交互に配列し成形される成形品を焼成することで作製できる。さらに、集電体<1>〜<5>を金属材料で作製する場合、例えば、粉末治金法により作製(金属粉末を用いて、上記セラミック材料と同様の作製法をする。)したり、金属ブロックを切削加工により作製したりできる。
【0021】
(2)ろう付け(実験例1〜7及び比較実験例1)
SUS製角板(s1)と、上記集電体<1>〜<5>又は角板(s2)とを、95質量%のAgと5質量%のPdとからなるろう材を使用してろう付けにて接続した。具体的には、SUS製角板(s1)と、上記集電体<1>〜<5>または角板(s2)とを、95質量%のAgと5質量%のPdとからなり、30mm角、厚さ50μmのろう材シートを介在させて積層した。この際、各々の中心が同じくなるようにして積層した。その後、真空熱処理炉に導入し、1050℃で30分保持してろう付けし、SUS製角板と上記集電体<1>〜<5>の緻密質部または角板(s2)とが接合部(c)を介して接合されてなる積層体を形成した。昇降温速度はいずれも500℃/時間とした。
【0022】
(3)総抵抗の評価
外径40mm、長さ500mmのアルミナ管(a)の先端にPt網(p)を被せたものを2本用意し、そのうちの1本をPt網を被せた側を上方として垂直に立て、先端のPt網上に、上述の積層体をSUS製角板(s1)を下にして載せた。その後、積層体上に更に他のアルミナ管をPt網が集電体<1>〜<5>又は角板(s2)と接触するようにして立設させ、試験体(e)を作製した。次いで、大気圧下、700℃でSUS製角板(s1)側から集電体<1>〜<5>又は角板(s2)側へと通電し(電流2A)、その際の電圧変化により、SUS製角板(s1)の抵抗、集電体<1>〜<5>又は角板(s2)の抵抗及びこれらの接触抵抗からなる総抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1の結果によれば、集電体<1>〜<5>の緻密質部がろう付けされている実験例1〜7の総抵抗は、多孔体である角板がろう付けされている比較実験例1の総抵抗より非常に低いことが分かる。従って、実験例1〜7では、集電体として電気抵抗を小さく抑えると共に、ガス流路を容易に形成することができる有効な手法であることがわかった。また、集電体<1>〜<5>へのろう材の滲入は見られず、集電体<1>〜<5>の緻密質部が良好に接合されていた。
【0025】
参考例1(積層された3個の単セルを有し、燃料極を基板とする内部マニホールド型の平板型SOFCスタック)
(1)構造
<1>発電層及び各種セパレータ
3個の発電層等が積層された平板型SOFCスタック100の外観を図1に斜視図により示す。また、図2は、図1におけるA−A断面の模式図であり、図3は、図1におけるB−B断面の模式図である。
この平板型SOFCスタック100では、3個の単セルがセル間セパレータ211、212を介して積層されている。各々の単セルが備える発電層は、それぞれNiとScSZとからなり、平面形状が正方形であり、厚さが1000μmの燃料極12を基板としている。この燃料極12の表面にはそれぞれScSZからなり、平面方向の形状、寸法が燃料極12と同じであり、厚さが30μmの固体電解質層11が形成されている。更に、この固体電解質層11の表面にはそれぞれLa1−xSrxMnO3からなり、平面方向の形状が固体電解質層11と同じであり、寸法が固体電解質層11より小さく、厚さが30μmの空気極13が形成されている。
【0026】
上部単セルは、セル間セパレータ211の上面に配設されたニッケルフェルトからなる集電体4、基板となる燃料極12、固体電解質層11、空気極13、インコネルからなる緻密質集電体5及び蓋部材22をこの順に備える。この緻密質集電体5は、上下方向に貫通するガス流路5aが形成されている(図6及び7参照。)。この緻密質集電体5と蓋部材22とは、これらが接触する面の全面において、95質量%のAgと5質量%のPdとからなるろう材によりろう付けされ、ろう付け部6が形成されている。また、上部単セルでは、固体電解質層11の上面が上部単セル用隔離セパレータ23と接合され、この上部単セル用隔離セパレータ23の上面が絶縁性セラミックであるMgO−MgAl2O4焼結体からなる枠体7及び金属製枠体81を介して蓋部材22と接合されている。
【0027】
中間部単セルは、セル間セパレータ212の上面に配設されたニッケルフェルトからなる集電体4、基板となる燃料極12、固体電解質層11、空気極13、及びインコネルからなる緻密質集電体5をこの順に備える。この緻密質集電体5は、上部単セルの場合と同様にして、ガス流路5aが形成されていると共に、セル間セパレータ211の下面とろう付けされ、ろう付け部6が形成されている。また、中間部単セルでは、固体電解質層11の上面が中間単セル用隔離セパレータ24と接合され、この中間単セル用隔離セパレータ24の上面が絶縁性セラミックであるMgO−MgAl2O4焼結体からなる枠体7及び金属製枠体83を介してセル間セパレータ211と接合されている。
【0028】
下部単セルは、底部材26の上面に配設されたニッケルフェルトからなる集電体4、基板となる燃料極12、固体電解質層11、空気極13、及びインコネルからなる緻密質集電体5をこの順に備える。この緻密質集電体5は、上部単セルの場合と同様にして、ガス流路5aが形成されていると共に、セル間セパレータ212の下面とろう付けされ、ろう付け部6が形成されている。また、下部単セルでは、固体電解質層11の上面が下部単セル用隔離セパレータ25と接合され、下部単セル用隔離セパレータ25の上面が枠体7及び金属製枠体85を介してセル間セパレータ212と接合されている。
【0029】
セル間セパレータ211、212、蓋部材22、上部単セル用隔離セパレータ23、中間単セル用隔離セパレータ24、下部単セル用隔離セパレータ25、底部材26、金属製枠体81、82、83、84、85、86は、いずれもSUS430により形成されている。更に、蓋部材22と金属製枠体81、金属製枠体81と枠体7、枠体7と上部単セル用隔離セパレータ23、上部単セル用隔離セパレータ23と金属製枠体82、金属製枠体82とセル間セパレータ211、セル間セパレータ211と金属製枠体83、金属製枠体83と枠体7、枠体7と中間単セル用隔離セパレータ24、中間単セル用隔離セパレータ24と金属製枠体84、金属製枠体84とセル間セパレータ212、セル間セパレータ212と金属製枠体85、金属製枠体85と枠体7、枠体7と下部単セル用隔離セパレータ25、下部単セル用隔離セパレータ25と金属製枠体86、及び金属製枠体86と底部材26、はそれぞれAg、Pd及び少量のTiを含有する接合材により接合され、接合層10が形成されている。
【0030】
<2>燃料ガス導入管又は排出管、及び支燃性ガス導入管又は排出管
上部単セルにおいて、上部単セル用隔離セパレータ23とセル間セパレータ211との間に形成された空間には、上部単セルの燃料極12に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入管91が開口している(図2参照)。また、この空間の燃料ガス導入管91の開口部と対向する側には、上部単セルの燃料極12から燃料ガスを排出するための燃料ガス排出管92が開口している(図2参照)。更に、蓋部材22と上部単セル用隔離セパレータ23との間に形成された空間には、上部単セルの空気極13に支燃性ガスを導入するための支燃性ガス導入管93が開口している(図3参照)。また、この空間の支燃性ガス導入管93の開口部と対向する側には、上部単セルの空気極13から支燃性ガスを排出するための支燃性ガス排出管94が開口している(図3参照)。さらに、それら支燃性ガス導入管93及び支燃性ガス排出管94が開口する空間は、所定の連絡路(図示せず)を介して緻密質集電体5のガス流路5aと連絡されている。
【0031】
また、中間部単セルにおいて、中間部単セル用隔離セパレータ24とセル間セパレータ212との間に形成された空間には、中間部単セルの燃料極12に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入管91が開口している(図2参照)。更に、この空間の燃料ガス導入管91の開口部と対向する側には、中間部単セルの燃料極12から燃料ガスを排出するための燃料ガス排出管92が開口している(図2参照)。また、セル間セパレータ211と中間部単セル用隔離セパレータ24との間に形成された空間には、中間部単セルの空気極13に支燃性ガスを導入するための支燃性ガス導入管93が開口している(図3参照)。更に、この空間の支燃性ガス導入管93の開口部と対向する側には、中間部単セルの空気極13から支燃性ガスを排出するための支燃性ガス排出管94が開口している(図3参照)。さらに、それら支燃性ガス導入管93及び支燃性ガス排出管94が開口する空間は、所定の連絡路(図示せず)を介して緻密質集電体5のガス流路5aと連絡されている。
【0032】
更に、下部単セルにおいて、下部単セル用隔離セパレータ25と底部材26との間に形成された空間には、下部単セルの燃料極12に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入管91が開口している(図2参照)。また、この空間の燃料ガス導入管91の開口部と対向する側には、下部単セルの燃料極12から燃料ガスを排出するための燃料ガス排出管92が開口している(図2参照)。更に、セル間セパレータ212と下部単セル用隔離セパレータ25との間に形成された空間には、下部単セルの空気極13に支燃性ガスを導入するための支燃性ガス導入管93が開口している(図3参照)。また、この空間の支燃性ガス導入管93の開口部と対向する側には、下部単セルの空気極13から支燃性ガスを排出するための支燃性ガス排出管94が開口している(図3参照)。さらに、それら支燃性ガス導入管93及び支燃性ガス排出管94が開口する空間は、所定の連絡路(図示せず)を介して緻密質集電体5のガス流路5aと連絡されている。
【0033】
また、上部単セル、中間部単セル及び下部単セルの各々に燃料ガス又は支燃性ガスを導入し、又は排出するためのそれぞれの管は、本管に側管が取り付けられた構造であり、上部単セル、中間部単セル及び下部単セルの各々の発電層に燃料ガス及び支燃性ガスが同時に導入され、且つ排出される。更に、燃料ガス導入管と燃料ガス排出管、及び支燃性ガス導入管と支燃性ガス排出管は、この参考例1の場合は、燃料ガス及び支燃性ガスがそれぞれ対向方向に流通するような位置に取り付けられている。これにより、上部単セル、中間部単セル及び下部単セルのそれぞれの発電層の各々の燃料極と燃料ガス、及び空気極と支燃性ガスをそれぞれ効率よく接触させることができる。
【0034】
(2)燃料電池からの電力の取り出し
この平板型SOFCスタック100では、上部単セルの燃料極12は、ニッケルフェルトからなる集電体4を介してセル間セパレータ211と電気的に接続されている。また、セル間セパレータ211は、インコネルからなる緻密質集電体5を介して中間部単セルの空気極13と電気的に接続されている。更に、中間部単セルの燃料極12は、集電体4を介してセル間セパレータ212と電気的に接続されている。また、セル間セパレータ212は、緻密質集電体5を介して下部単セルの空気極13と電気的に接続されている。このように上部単セル、中間部単セル及び下部単セルは各々直列に接続されている。また、スタックを所定の動作温度に昇温させ、燃料ガス導入管91に水素等の燃料ガスを導入して燃料極12と接触させ、支燃性ガス導入管93に空気等の支燃性ガスを導入して空気極13と接触させることにより、燃料極12と空気極13との間に起電力が生じ、この電力を外部に取り出すことにより発電装置として機能させることができる。
【0035】
電力は、燃料極側においては下部単セルの発電層の下面に配設された集電体4を介して底部材26に取り出され、空気極側においては上部単セルの発電層の上面に配設された緻密質集電体5を介して蓋部材22に取り出され、蓋部材22と底部材26との間でスタック全体の電力を取り出すことができる。この平板型SOFCスタック100では、3個の発電層がそれぞれ燃料極支持型であり、この構造の場合、600℃程度の動作温度でも電流を取り出すことができ、蓋部材、各種セパレータ、金属製枠体及び底部材を、セラミックではなくSUS430等のステンレス鋼により形成することができるものである。
【0036】
(3)燃料ガス及び支燃性ガス
参考例1の固体電解質型燃料電池を用いて発電させる場合、燃料極側には燃料ガスを導入し、空気極側には支燃性ガスを導入する。燃料ガスとしては、水素、水素源となる炭化水素、水素と炭化水素との混合ガス、及びこれらのガスを所定温度の水中を通過させ加湿した燃料ガス、これらのガスに水蒸気を混合させた燃料ガス等が挙げられる。炭化水素は特に限定されず、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等が挙げられる。更に、メタン、エタン、プロパン、ブタン及びペンタン等の炭素数が1〜10、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜4の飽和炭化水素、並びにエチレン及びプロピレン等の不飽和炭化水素を主成分とするものが好ましく、飽和炭化水素を主成分とするものが更に好ましい。これらの燃料ガスは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。また、50体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。
【0037】
支燃性ガスとしては、酸素と他の気体との混合ガス等が挙げられる。また、この混合ガスには80体積%以下の窒素及びアルゴン等の不活性ガスが含有されていてもよい。これらの支燃性ガスのうちでは安全であって、且つ安価であるため空気(約80体積%の窒素が含まれている。)が好ましい。
【0038】
実施例1(積層された3個の単セルを有し、燃料極を基板とする内部マニホールド型の平板型SOFCスタック)
尚、本実施例1においては、集電体の構成以外は参考例1と同じ構成であり、その同じ構成部位には同符号を付けて詳細な説明を省略する。
図4及び5に示すように、平板型SOFCスタック200を構成する上部単セルは、セル間セパレータ211の上面に配設されたニッケルフェルトからなる集電体4、基板となる燃料極12、固体電解質層11、空気極13、La0.8Sr0.2MnO3からなる集電体50及び蓋部材22をこの順に備える。この集電体50は、緻密質部50a(気孔率3%)と、この緻密質部50aの下面側に積層される多孔質部50b(気孔率40%)とを有している。この集電体50の緻密質部50aと蓋部材22とは、これらが接触する面の全面において、95質量%のAgと5質量%のPdとからなるろう材によりろう付けされ、ろう付け部6が形成されている。
【0039】
中間部単セルは、セル間セパレータ212の上面に配設されたニッケルフェルトからなる集電体4、基板となる燃料極12、固体電解質層11、空気極13、及びLa0.8Sr0.2MnO3からなる集電体50をこの順に備える。この集電体50は、上部単セルの場合と同様にして、緻密質部50a及び多孔質部50bを積層してなると共に、その緻密質部50aがセル間セパレータ211の下面とろう付けされ、ろう付け部6が形成されている。
【0040】
下部単セルは、底部材26の上面に配設されたニッケルフェルトからなる集電体4、基板となる燃料極12、固体電解質層11、空気極13、及びLa0.8Sr0.2MnO3からなる集電体50をこの順に備える。この集電体50は、上部単セルの場合と同様にして、緻密質部50a及び多孔質部50bを積層してなると共に、その緻密質部50aがセル間セパレータ212の下面とろう付けされ、ろう付け部6が形成されている。
【0041】
また、上部単セル、中間部単セル及び下部単セルの各々は、参考例1と同様にして、電気的に直列に接続されている。そして、スタックを所定の動作温度に昇温させた状態で、燃料ガス導入管91に水素等の燃料ガスを導入すると共に、支燃性ガス導入管93に空気等の支燃性ガスを導入する。すると、燃料ガスが集電体4を透過して燃料極12と接触し、支燃性ガスが集電体50の多孔質部50bを透過して空気極13と接触することにより、燃料極12と空気極13との間に起電力が生じ、この電力を外部に取り出すことにより発電装置として機能させることができる。
【0042】
尚、本発明では上記の実施例に限られず、目的、用途等によって本発明の範囲内において種々変更した実施例とすることができる。例えば、蓋部材、各種セパレータ、底部材を形成するステンレス鋼としては、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼が挙げられる。フェライト系ステンレス鋼としては、SUS430以外に、SUS434、SUS405等が挙げられる。マルテンサイト系ステンレス鋼としては、SUS403、SUS410、SUS431等が挙げられる。オーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS201、SUS301、SUS305等が挙げられる。更に、ニッケル基合金としては、インコネル600、インコネル718、インコロイ802等が挙げられる。クロム基合金としては、Ducrlloy CRF(94Cr5Fe1Y2O3)等が挙げられる。これらの各種の耐熱合金は、それぞれ積層体の用途等によって選択することができる。
【0043】
発電層等の平面形状は、長方形、円形及び楕円形等とすることができ、同様の平面形状を有する固体電解質型燃料電池とすることができる。また、平板型SOFCスタックでは、各種セパレータ等の金属成形体の間は溶接などの方法によっても接合することができる。しかし、実施例の内部マニホールド型のスタックにおけるセパレータの周縁の貫通孔の内部は溶接では接合することができない。この場合、Agを含有する特定の接合材を使用すれば、展延性に優れるAgによって貫通孔の周縁を十分に気密に密着させることができる。
【0044】
更に、固体電解質層の形成に用いる材料はScSZに限定されず、平板型SOFCスタックの使用条件等により適宜選択することができる。この材料としては、例えば、ZrO2系セラミック、LaGaO3系セラミック、BaCeO3系セラミック、SrCeO3系セラミック、SrZrO3系セラミック及びCaZrO3系セラミック等が挙げられる。これらのセラミック系材料のうちでは、ZrO2系セラミックが好ましく、Y及び希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたZrO2系セラミックが好ましい。こられの安定化ジルコニアもScSZと同様に優れたイオン伝導性及び機械的強度を有する。
尚、この固体電解質層の厚さは電気抵抗と強度とを勘案し、5〜100μm、特に5〜50μm、更には5〜30μmとすることができる。
【0045】
また、燃料極の形成に用いる材料もNi及びScSZに限定されず、平板型SOFCスタックの使用条件等により適宜選択することができる。この材料としては、例えば、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni及びFe等の金属が挙げられる。これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の金属の合金でもよい。また、これらの金属及び/又は合金と、Y及び希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のジルコニア系セラミック、セリア系セラミック及び酸化マンガン等のセラミックとの混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。更に、Ni及びFe等の金属の酸化物と、上記セラミックのうちの少なくとも1種との混合物などが挙げられる。
また、燃料極の平面形状は特に限定されないが、固体電解質層及び空気極と同じ形状であることが好ましい。更に、燃料極と固体電解質層とは各々の全面で積層されていることが好ましい。
【0046】
固体電解質型燃料電池において、各々の単セルが有する発電層は、強度の観点から過度に薄くすることは好ましくないが、発電性能の観点では前記のように固体電解質層を厚くすることは好ましくない。そのため、参考例1のように燃料極支持型とすることができ、この燃料極支持型では、燃料極は固体電解質層の20倍以上の厚さであることが好ましい。20倍未満であると発電層の機械的強度が不十分となる傾向にある。この燃料極の厚さは200〜3000μm、特に500〜2000μmであることが好ましい。200μm未満であると基板として有効に機能せず、3000μmを越えると、体積当たりの発電効率が低下する傾向にある。一方、空気極支持型とすることもでき、この場合は、燃料極の厚さは、10〜50μm、特に20〜40μmであることが好ましい。この厚さが10〜50μmであれば、電極として十分に機能し、50μmを越えて厚くする必要はない。
【0047】
また、空気極の形成に用いる材料はLa1−xSrxMnO3系複合酸化物に限定されず、平板型SOFCスタックの使用条件等により適宜選択することができる。この材料としては、例えば、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru及びRh等の金属が挙げられる。これらの金属は1種のみでもよいし、2種以上の金属の合金でもよい。更に、La、Sr、Ce、Co及びMn等の酸化物(例えば、La2O3、SrO、Ce2O3、Co2O3、MnO2及びFeO等)が挙げられる。また、La、Sr、Ce、Co及びMn等のうちの少なくとも1種を含有する各種の複合酸化物(例えば、La1−xSrxCoO3系複合酸化物、La1−xSrxFeO3系複合酸化物、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、Pr1−xBaxCoO3系複合酸化物及びSm1−xSrxCoO3系複合酸化物等)が挙げられる。
【0048】
また、この空気極の平面形状は特に限定されないが、固体電解質層及び燃料極と同じ形状であることが好ましい。更に、その平面方向の寸法は、特に、隔離セパレータが固体電解質層の一表面の周縁に接合されない場合等、燃料電池の構造によっては、固体電解質層及び燃料極と同じにすることもできる。これら空気極と固体電解質層とは各々の全面で積層されていることが好ましい。
【0049】
空気極は、発電層の強度を支持する基板として形成することもできる。空気極支持型である場合は、空気極の厚さは固体電解質層の20倍以上の厚さであることが好ましい。20倍未満であると発電層の機械的強度が不十分となる傾向にある。この空気極の厚さは200〜3000μm、特に500〜2000μmであることが好ましい。200μm未満であると基板として有効に機能せず、3000μmを越えると、体積当たりの発電効率が低下する傾向にある。一方、燃料極支持型である場合は、空気極の厚さは10〜100μm、特に20〜50μmであることが好ましい。10μm未満であると電極として十分に機能しないことがあり、100μmを越えると固体電解質層から剥離することがある。
【0050】
ろう材には、Cuが含有されていてもよい。Cuが含有されている場合のAg、Pd及びCuの各々の含有量は特に限定されないが、Ag、Pd及びCuの合計を100質量%とした場合に、Agの含有量は45〜65質量%、特に50〜60質量%、Pdの含有量は15〜35質量%、特に20〜30質量%、Cuの含有量は10〜30質量%、特に15〜25質量%であることが好ましい。Cuが含有されている場合、含有されていないろう材に比べてより多量のPdを含有していても、十分な流動性を有し、優れた密着性が維持される。一方、AgとCuの合計が65質量%未満、即ち、Pdの含有量が35質量%を越えると、流動性が低下し、密着性が不十分になる傾向にある。
【0051】
ろう材にTiが含有されていることにより、接合温度が比較的低い場合でも、特に大きな接合強度が得られる。このTiの含有量は、Ag、Pd及びTiの合計を100質量%とした場合に、又はCuが含有されているときは、Ag、Pd、Cu及びTiの合計を100質量%とした場合に、0.05〜10質量%であることが好ましく、特に0.05〜8質量%、更には0.05〜6質量%であることがより好ましい。Tiの含有量が0.05〜10質量%であれば、ろう付けの雰囲気が真空ではなく、アルゴン等の不活性雰囲気であっても、実用上、十分な強度を有するろう付け部を形成することができる。また、ろう付けの雰囲気が真空である場合は、Tiの含有量は、0.05〜20質量%、特に0.05〜15質量%とすることもでき、更に、Tiの含有量が0.08〜10質量%であれば、接合強度が大きく向上する。
【0052】
ろう材には、接合強度及び密着性等が低下しない範囲で更に他の成分が含有されていてもよい。この他の成分としてはSn、In、Ni、Nb等が挙げられる。これらの他の成分は、AgとPdとの合計、更にCuを含有する場合はAg、Pd及びCuの合計、更にTiを含有する場合はAg、Pd及びTiの合計、又はAg、Pd、Cu及びTiの合計を100質量部とした場合に、10質量部以下、特に0.1〜10質量部、更には0.5〜5質量部含有させることができる。
【0053】
また、上記実施例、及び参考例では、空気極側においてセル間セパレータと集電体とをろう付けにより接合するようにしたが、これに限定されず、例えば、導電性材料を含有する導電性ペーストをセル間セパレータ及び集電体のうちの少なくとも一方に塗布し、その塗布面を介して両者を接触させた状態で熱処理することによって、空気極側のセル間セパレータと集電体とを接合するようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施例1では、緻密質部と多孔質部とを積層して集電体を構成したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、緻密質部と、気孔率の異なる複数層の多孔質部とを積層して集電体を構成してもよい。この場合、集電体を構成する緻密質部とセル間セパレータとがろう付けされることとなる。また、図9に示すように、同一平面内に緻密質部と多孔質部とを交互に配設して集電体を構成してもよい。この場合、集電体を構成する緻密質部及び多孔質部の一方の面とセル間セパレータとがろう付けされると共に、緻密質部及び多孔質部の他方の面と空気極とが接触することとなる。ここで、セル間セパレータと集電体の多孔質部との界面に接合材が導入されていても、燃料電池としての性能に悪影響を与えない。また、多孔質部の上下面側に緻密質部を積層して集電体を構成してもよい。この場合、空気極側の緻密質部にはガス流路が形成される。さらに、上記参考例1では、緻密質集電体5のガス流路を上下に開口するようにしたが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、ガス流路は、少なくとも空気極側に開口していればよい。
【0055】
また、セル間セパレータと燃料極との間に介装される集電体としては、ニッケルフェルトに限られず前記の空気極の場合と同様の形状のものを用いることができる。この燃料極側の集電体はセル間セパレータとの接触面において空気極側と同様にしてろう付けされていてもよいが、燃料極側ではセル間セパレータは酸化され難いため、ろう付けされていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1の燃料電池の外観を示す斜視図である。
【図2】 図1の燃料電池のA−A断面を示す模式図である。
【図3】 図1の燃料電池のB−B断面を示す模式図である。
【図4】 実施例1の燃料電池の縦断面を示し、図1のA−A断面に相当する模式図である。
【図5】 実施例1の燃料電池の縦断面を示し、図1のB−B断面に相当する模式図である。
【図6】 実験例で使用した集電体<1>を模式的に示す説明図である。
【図7】 図6のVII−VII線断面図である。
【図8】 実験例で使用した集電体<2>を模式的に示す説明図である。
【図9】 実験例で使用した集電体<3>を模式的に示す説明図である。
【図10】 実験例で使用した集電体<4>を模式的に示す説明図である。
【図11】 実験例で使用した集電体<5>を模式的に示す説明図である。
【図12】 総抵抗の評価に用いた試験体を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
100,200;平板型SOFCスタック、11;固体電解質層、12;燃料極、13;空気極、211、212;セル間セパレータ、22;蓋部材、23;上部単セル用隔離セパレータ、231、232;貫通孔、24;中間単セル用隔離セパレータ、25;下部単セル用隔離セパレータ、26;底部材、251、252;貫通孔、31;燃料ガスの流路、32;支燃性ガスの流路、4;ニッケルフェルトからなる集電体、5;緻密質集電体、5a;ガス流路、50;集電体、50a;緻密質部、50b;多孔質部、6;ろう付け部、7;枠体、81、82、83、84、85、86;金属製枠体、91;燃料ガス導入管、92;燃料ガス排気管、93;支燃性ガス導入管、94;支燃性ガス排気管、10;接合層。
Claims (4)
- 複数の単セルが金属製のセル間セパレータを介して積層された構造を備える固体電解質型燃料電池において、各々の単セルは、固体電解質層、該固体電解質層の一面に設けられた燃料極、及び他面に設けられた空気極を有する発電層と、該セル間セパレータと該空気極との間に介装された集電体とを備え、該集電体の少なくとも一部が緻密質部であると共に、該緻密質部の一方の面と該セル間セパレータとが接合材を介して面的に接触している固体電解質型燃料電池であって、
上記集電体の一部が上記緻密質部であると共に、上記集電体の他の一部が支燃性ガスを通過させ得る多孔質部であることを特徴とする固体電解質型燃料電池。 - 上記接合材がろう材であり、上記緻密質部と上記セル間セパレータとが接触する面がろう付けされている請求項1に記載の固体電解質型燃料電池。
- 上記ろう材がAgを主成分とする請求項2記載の固体電解質型燃料電池。
- 上記集電体が、支燃性ガスを上記空気極に向って通過させ得るように構成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固体電解質型燃料電池。
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