JP4334903B2 - 固体酸化物形燃料電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、作動温度が650〜800℃の範囲である低温作動固体酸化物形燃料電池のシール構造体及びシール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体酸化物形燃料電池〔SOFC(=Solid Oxide Fuel Cell):以下適宜SOFCと略称する〕は、作動温度が800〜1000℃程度、通常1000℃程度と高い。SOFCの単電池すなわちセルは固体酸化物電解質を挟んで燃料極及び空気極(酸化剤として酸素が用いられる場合は酸素極)が配置され、燃料極/電解質(固体酸化物電解質)/空気極の3層ユニットで構成される。図1はその構成を原理的に示す図である。なお、SOFCでは水素のほか、COも燃料となるが、図1では代表して水素について示している。
【0003】
空気極に導入される空気中の酸素は空気極で酸化物イオン(O2-)となり、固体酸化物電解質を通って燃料極に至る。ここで、燃料極に導入される燃料と反応して電子を放出し、電気と水等の反応生成物を生成する。空気極での利用済み空気は空気極オフガスとして排出され、燃料極での利用済み燃料は燃料極オフガスとして排出される。単電池1個の電圧は低いため、通常、単電池を複数層直列に積層してSOFCが構成される。
【0004】
燃料極としては、例えばニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合物の焼結体(Ni/YSZサーメット)等の多孔質体が用いられ、電解質材料としては、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等のシート状焼結体が用いられ、空気極としては、例えばSrドープのLaMnO3等の多孔質体が用いられる。これらは、通常、電解質材料の両面に燃料極と空気極を焼き付けることにより単電池が構成される。
【0005】
SOFCには平板方式や円筒方式や一体積層方式などがあるが、これらは原理的には同じである。平板方式SOFCは、固体酸化物電解質膜自体でその構造を保持するものが一般的であり、自立膜式と称される。固体酸化物電解質膜の厚さは通常100μm程度と厚く構成される。隣接する単電池(セル)を電気的に接続すると同時に燃料極と空気極のそれぞれに燃料と空気を適正に分配、供給し排出する目的で、セパレータと単電池とが交互に積層される。
【0006】
ところで、このようなSOFCでは、流通する燃料、空気、燃料極オフガス、空気極オフガスはすべて気体であり、しかも作動温度が1000℃程度と高いことから、セパレータ相互間やセパレータと電池間でのシールが不十分であるとガス漏れが生じて電池として致命的となる。このため、そのためのシール材やシール箇所の構造上の改良について幾つかの提案がなされている(特開平8−134434号、特開平9−120828号、特開平10−168590号)。
【0007】
特開平8−134434号では、ガラス粉とマグネシア粉を所定の比率で混合してなる高温シール材、あるいはこの混合粉末に対し酸化物セラミックス粉を混合してなる高温シール材が提案され、また、特開平9−120828号では、ガラスをマトリックスとし、平均粒径10μm以下のガラスと反応しないか、あるいはガラスとの反応性が低い微粒子を分散させてなる燃料電池用封止材料が提案されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−134434号公報
【特許文献2】
特開平9−120828号公報
【特許文献3】
特開平10−168590号公報
【0009】
しかし、これらに記載の高温シール材あるいは封止材料は、その記載、特に実施例の記載からみても、作動温度が800〜1000℃程度、特に1000℃程度という高温作動のSOFCに対するものであり、650〜800℃程度の範囲、例えば700℃程度というような低温作動のSOFC用のシール材や封止材料についてのものではない。
【0010】
以上のように、従来のSOFCはその作動温度が800〜1000℃程度と高いが、最近では800℃程度以下、例えば750℃程度の温度で作動するSOFCも開発されつつある。図2〜4はそのSOFCの態様例を説明する図である。図2は単電池の構成例、図3は単電池を組み込んだSOFCスタックの構成例、図4は図3中X−X線断面図である。図2(a)は側面図、図2(b)は斜視図である。図2のとおり、単電池は、燃料極の上に電解質膜(固体酸化物電解質膜)が配置され、固体酸化物電解質膜の上に空気極が配置されて構成され、この単電池が図3〜4のように組み込まれてSOFCスタックが構成される。
【0011】
電解質膜として例えばイットリア安定化ジルコニア等のジルコニア系やLaGaO3系などの材料を用いて、その膜厚を例えば10μm程度というように薄くし、これを膜厚の厚い燃料極で支持するように構成されており、支持膜式と称される。支持膜式においては固体酸化物電解質膜の膜厚を薄く構成できることなどから、前記自立膜式の場合に比べてより低温で運転できる。このため、そのセパレータ等の構成材料として例えばフェライト系ステンレス鋼などの安価な材料の使用を可能とし、また小型化が可能であるなど各種利点を有する。
【0012】
図3〜4のとおり、支持膜式SOFCスタックは、上部から下部へ順次セパレータA、セパレータB、セパレータC、接合材、単電池(セル)、セパレータDが配置される。セパレータAの上部、セパレータDの下部には集電板等が配置される。図4にその一部を示しているが、図3では省略している。またセパレータA〜Dは耐熱合金等の金属で構成され、その例としてはフェライト系ステンレス鋼等のステンレス鋼が挙げられる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような低温作動のSOFCにおいても、流通する燃料、空気、燃料極オフガス、空気極オフガスはすべて気体であり、しかも作動温度が650〜800℃程度と、なお高いことから、セパレータ相互間やセパレータと電池間でのシールが不十分であるとガス漏れが生じて電池として致命的となる。また、SOFCは繰り返し使用されることから、低温作動のSOFCについてもシールの問題が解決されないとSOFCとして体をなさず、実用化は困難である。
【0014】
それらシールのうち、特に単電池とセパレータ(図3〜5中セパレータCに相当するセパレータで、セルサポートフォイルとも呼ばれる。以下セルサポートフォイルと言う。)間でのシールは、電解質膜とセルサポートフォイルとの間でのシールとなる。図5はそのシール状態を示す図である。図5中接合箇所として示すとおり、電解質膜の周縁上面とセルサポートフォイルとの間をガラス系シール材で接合させることで接合、シールされる。しかし、ガラス系シール材は熱サイクルによりクラック生成または剥離しやすいので実用上困難である。これに対して、金属ろう材は割れないので、熱サイクル性は良好であるが、セラミックスに対しては接合し難いという問題がある。
【0015】
本発明は、低温作動のSOFCにおける燃料極、電解質膜とセルサポートフォイルとの間における上記のような接合、シールの問題を解決するためになされたものであり、起動→運転→停止→起動というように繰り返し使用してもガス漏れを防止し、長期間にわたり安定して作動できる低温作動の固体酸化物形燃料電池のシール構造体及びそのシール方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は(A)金属を含むセラミック材料で構成された燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層して構成された単電池の周縁上面にセルサポートフォイルを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池のシール構造体であって、燃料極を還元処理した後、燃料極及び電解質膜の側周面とセルサポートフォイルの下面との間を金属ろう材でろう付けしてなることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池のシール構造体及びシール方法を提供する。
【0017】
本発明は(B)金属を含むセラミック材料で構成された燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層して構成された単電池の周縁上面にセルサポートフォイルを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池のシール構造体であって、燃料極上面に燃料極の周縁上面が露出するような電解質膜の形成と燃料極の還元処理を行い、次いで当該露出面とセルサポートフォイルの下面との間を金属ろう材でろう付けしてなることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池のシール構造体及びシール方法を提供する。
【0018】
本発明は(C)金属を含むセラミック材料で構成された燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層して構成された単電池の周縁上面にセルサポートフォイルを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池のシール構造体であって、燃料極上面に燃料極の周縁上面が露出するような電解質膜の形成と燃料極の還元処理を行い、次いで当該露出面及び燃料極側面とセルサポートフォイルの下面との間を金属ろう材でろう付けしてなることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池のシール構造体及びシール方法を提供する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明は、金属を含むセラミック材料で構成された燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層して構成された単電池の周縁上面にセルサポートフォイルを配置してなる、作動温度が650〜800℃の範囲の固体酸化物形燃料電池を対象とする。そして、その電解質膜、燃料極及びセルサポートフォイル間の接合、シールの問題を解決してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池のシール構造体及びシール方法である。ここで、上記電解質膜または燃料極の周縁上面とは、電解質膜または燃料極の上面全面のうちその周縁部分の面を意味する。
【0020】
燃料極は金属を含むセラミック材料で構成される。このうちセラミック材料としては、例えばイットリア安定化ジルコニア〔YSZ:(Y2O3)X(ZrO2)1-X(式中x=0.05〜0.15)]が用いられ、その金属としてはNi、Cu、Fe、Ru及びPdから選ばれた少なくとも1種の金属が用いられる。電解質の構成材料としては、例えばイットリア安定化ジルコニア等のジルコニア系やLaGaO3系などのシート状焼結体が用いられる。空気極の構成材料としては、例えばSrドープLaMnO3が用いられる。セルサポートフォイルの構成材料としてはステンレス鋼などの耐熱性合金が用いられる。
【0021】
以下、燃料極がNiとイットリア安定化ジルコニアの混合物の焼結体(Ni/YSZサーメット)で構成された燃料極を例に説明するが、他の金属を含むセラミック材料で構成された燃料極の場合についても同様である。
【0022】
本発明(A)においては、その上に電解質膜を配置した燃料極を還元処理した後、燃料極及び電解質膜の側周面とセルサポートフォイルの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする。図6は本発明の構成態様を説明する図である。図6(a)は単電池本体を示す図で、図2に示す構成に相当している。単電池は順次燃料極、電解質膜及び空気極を配置し、通常空気雰囲気で焼成して構成されるため燃料極の表面が酸化される。そこで、本発明(A)においては、燃料極を還元状態にしてNiOを還元しておくことで、金属ろうとの濡れ性を良好にし、接合強度を向上させるものである。燃料極に電解質膜を配置した段階で燃料極を還元処理するが、この時電解質膜も還元雰囲気中に置かれることになるが影響はない。この点、本発明(B)〜(C)における還元処理においても同じである。
【0023】
図6(b)は還元処理後の状態を示している。還元処理は、電解質膜を配置した燃料極を雰囲気炉に配置し、水素や窒素、あるいはその混合ガス等の還元性ガスを導入して800〜1000℃の温度に加熱することにより行う。この点、本発明(B)〜(C)における還元処理においても同じである。当該還元処理は、この処理に続くろう付け処理とは別の炉で行ってもよいが、ろう付けを行う炉に還元ガスを流すことにより還元条件を設定して行ってもよい。この点、本発明(B)〜(C)における還元処理についても同様である。
【0024】
次いで、電解質膜の周縁表面にセルサポートフォイルを当接させ、燃料極及び電解質膜の側周面とセルサポートフォイルの下面との間に金属ろう材を介在させて加熱する。この時、金属ろう材が毛管現象により燃料極内に数100ミクロン程度浸透する。これに基づくアンカー効果により、金属ろう材と燃料極間の強固な接合が達成される。加熱温度は、金属ろう材のろう付け温度で、例えばAg−Cu系ろう材であるAg71.0〜73.0wt%、残部Cuのろう材(融点:780℃)では780〜900℃である。この点、本発明(B)〜(C)における加熱においても同じである。図6(c)はこうして燃料極の露出面とセルサポートフォイルとが強固に接合された状態を示している。
【0025】
本発明(A)によれば、上記のように還元処理を経て、燃料極の還元状態の側周面と耐熱合金製のセルサポートフォイルとの接合となるので、両者を強固に接合し、良好なガスシールを達成することができる。
【0026】
次に、本発明(B)〜(C)は、燃料極上面に電解質膜を燃料極の周縁上面が露出するように形成し、その露出面にセルサポートフォイルを当接、接合することを必須とする。その露出面の形成の仕方については特に限定はないが、例えば以下(1)〜(3)のようにして形成することができる。(1)燃料極の全面に形成された電解質膜のうち、当該周縁上面の電解質膜を除去する。燃料極に対する電解質膜の形成をスラリーコーティング、すなわち電解質のスラリーによる燃料極の浸漬処理、スクリーン印刷、あるいはウォッシュコート等により行う場合、電解質膜は燃料極の全面に形成される。こうして形成された電解質膜のうち、当該周縁上面を研磨等により除去する。(2)電解質のスラリーコーティング時に当該周縁上面をマスキングする。(3)燃料極上面への電解質膜のスラリーコーティング時に、燃料極上面全面のうち、当該周縁上面を残してコーティングする。図7はこうして形成された燃料極上面の露出状態を示している。
【0027】
本発明(B)においては、燃料極上面に燃料極の周縁上面が露出するような電解質膜の形成と燃料極の還元処理を行い、次いで当該露出面とセルサポートフォイルの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする。ここで、燃料極上面に燃料極の周縁上面が露出するような電解質膜の形成と燃料極の還元処理は、以下〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程1〉ないし〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程3〉で行うことができる。
【0028】
〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程1〉
(1)焼結前の燃料極に電解質のスラリーをコーティングする。(2)燃料極と電解質膜を共焼結する。(3)燃料極の周縁上面すなわち周縁部の電解質膜を研磨等により除去する。(4)還元処理する。このうち、(3)と(4)の工程は順序を逆に、すなわち還元処理をした後、燃料極の周縁上面すなわち周縁部の電解質膜を研磨等により除去してもよい。
【0029】
〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程2〉
(1)焼結前の燃料極に電解質のスラリーをコーティングする。(2)燃料極の周縁上面すなわち周縁部の電解質膜を研磨等により除去する。(3)燃料極と電解質膜を共焼結する。(4)還元処理する。
【0030】
〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程3〉
(1)焼結前の燃料極に電解質のスラリーをコーティングする際に、燃料極の周縁上面すなわち周縁部にマスキングをし、当該周縁部を除いて電解質のスラリーのコーティングする。(2)燃料極と電解質膜を共焼結する。(3)還元処理する。
【0031】
図8は本発明の構成態様例を説明する図である。図8(a)のとおり、まず、燃料極上に電解質膜を燃料極の周縁上面が露出するように形成する。次いで、燃料極を還元処理する。図8(b)は還元処理後の状態を示している。その後、燃料極の周縁上面の露出面とセルサポートフォイルの間に金属ろう材を介在させて両者を当接させる。図8(c)はこの状態を示している。次いで加熱する。この時、金属ろう材が毛管現象により燃料極内に数100ミクロン程度浸透する。これに基づくアンカー効果により、金属ろう材と燃料極間の強固な接合が達成される。図8(d)はこうして燃料極の露出面とセルサポートフォイルとが強固に接合された状態を示している。
【0032】
本発明(B)によれば、上記のように還元処理を経て、燃料極の周縁上面の還元状態の露出面と耐熱合金製のセルサポートフォイルとの接合となるので、両者を強固に接合し、良好なガスシールを達成することができる。
【0033】
本発明(C)においては、燃料極上面に燃料極の周縁上面が露出するような電解質膜形成と燃料極の還元処理を行い、次いで当該露出面及び燃料極側面とセルサポートフォイルの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする。ここで、燃料極上面に燃料極の周縁上面が露出するような電解質膜の形成と燃料極の還元処理は、前記本発明(B)での〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程1〉ないし〈電解質膜の形成と燃料極の還元処理工程3〉と同様にして行うことができる。
【0034】
図9は本発明(C)の構成態様例を説明する図である。まず、燃料極上面に電解質膜を燃料極の周縁上面が露出するように形成する。図9(a)はこうして形成された燃料極の周縁上面の露出状態を示している。その後、燃料極を還元処理する。図9(b)は還元処理後の状態を示している。次いで、燃料極の周縁上面の露出面とセルサポートフォイルとの間に金属ろう材を介在させて両者を当接させるとともに、燃料極の側周面とセルサポートフォイルの下面との間に金属ろう材を介在させる。図9(c)はこの状態を示している。次いで加熱する。この時、金属ろう材が毛管現象により燃料極内に数100ミクロン程度浸透する。これに基づくアンカー効果により、金属ろう材と燃料極間の強固な接合が達成される。図9(d)はこうして燃料極の周縁上面の露出面及び燃料極の側周面とセルサポートフォイルとが強固に接合された状態を示している。
【0035】
本発明(C)によれば、上記のように還元処理を経て、燃料極の周縁上面の還元状態の露出面及び燃料極の還元状態の側周面と耐熱合金製セルサポートフォイルとの接合となるので、両者を強固に接合し、良好なガスシールを達成することができる。
【0036】
本発明における金属ろう材としては、Ag、Cu、Ti、Ni、Au、Al及びPdのうち少なくとも1種の金属を含むものであればいずれも使用できるが、特にAgまたはNiを含む金属ろう材であるのが好ましい。その例としてはAg−Cu系合金(例えばAg=71.0〜73.0%、残部=Cu:780〜900℃)(%はwt%、温度℃はろう付け温度、以下同じ)、Ag−Cu−Zn系合金(例えばAg=44.0〜46.0%、Cu=29.0〜31.0%、Zn=23.0〜27.0%:745〜845℃)、Ag−Cu−Zn−Cd系合金(例えばAg=34.0〜36.0%、Cu=25.0〜27.0%、Zn=19.0〜23.0%、Cd=17.0〜19.0%:700〜845℃)、Ag−Cu−Zn−Sn系合金(例えばAg=33.0〜35.0%、Cu=35.0〜37.0%、Zn=25.0〜29.0%、Sn=2.5〜3.5%:730〜820℃)、Ni−P系(P=10.0〜12.0%、C=0.10%以下、残部=Ni:925〜1025℃)、Ag−Cu−Zn−Ni系合金(例えばAg=39.0〜41.0%、Cu=29.0〜31.0%、Zn=26.0〜30.0%、Ni=1.5〜2.5%:780〜900℃)などが挙げられる。
【0037】
金属ろう材の使用形態については、特に制限はなく、粉体、スラリー、ゾル、ペースト、シート、あるいはワイヤー等の形で使用することができる。スラリーやゾルやペーストは、例えば金属ろうの粉をPVA等のバインダーとともに水や有機溶媒等の溶媒に分散させることで作製される。シートやワイヤーは、例えば金属ろうの塊を圧延することなどで作製される。金属ろうをスラリー、ゾルまたはペーストの形で使用すればその作業上も有利である。
【0038】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはもちろんである。
【0039】
固体酸化物電解質膜としてY2O3をドープしたZrO2を用い、燃料極としてニッケルとイットリア安定化ジルコニアの混合物の焼結体(=Ni/YSZサーメット。NiとYSZとの重量比=6:4。気孔率=60%)を用い、空気極としてSr及びFeをドープしたLaCoO3〔(La、Sr)(Co、Fe)O3)〕を用いた。まず、燃料極上の全面に固体酸化物電解質膜が形成された焼結体を作製した後、その周縁部分の電解質膜を研磨機で研削、研磨して図7のように燃料極を露出させた。次いで、雰囲気炉にて水素を4vol%含む窒素ガスを流通させながら1000℃で5時間還元処理した。
【0040】
その後、その露出部に銀ろう(組成:Ag72wt%−Cu28wt%、融点:780℃)のペーストを塗布し、その上にセルサポートフォイル(SUS430製)を重ね合わせた。その状態で、真空雰囲気炉内に配置し、接合部に荷重がかかるように重石を載置し、炉内を10-2〜10-3Paの真空度まで減圧した。炉内を850℃まで昇温して10分間保持してろう付けした後降温した。こうして半電池とセルサポートフォイルの接合体を複数個作製し、その数個について電解質膜面に空気極〔(La、Sr)(Co、Fe)O3)]を焼き付けて電池を作製した。
【0041】
〈接合強度試験〉
上記接合体を1cmの幅に切り出し、電極(燃料極)部を固定し、フォイル側を90゜折り曲げて引っ張り、フォイルが電極から剥離する時の強度を測定した。図10にその状況を模式的に示している。その結果、33.8N/cmの接合強度を示した。比較例として、上記金属ろう材に代えてガラス接合材を用い、上記と同様にして作製した接合体について測定したところ、0.6N/cmの接合強度を示した。ここで、本試験における接合強度は、試料1cm幅あたりの強度としてN/cm単位で記録した。なお、本ガラス接合材はSiO2-Al2O3-Na2O-K2O系のガラス接合材で、セラミックと金属間の接合材として市販されているものである。
【0042】
〈ろう材の燃料極への浸透の有無の判定〉
上記接合体についてEPMA(電子プローブマイクロアナライザ)による組成の線分析測定を行ったところ、燃料極とろう材との接合境界部分の燃料極寄り(燃料極側)の約300ミクロン幅の領域において、ろう材の成分であるAg、Cuと燃料極の成分であるNi、Zrが混在する領域が確認された。この結果はろう材が燃料極に浸透していることを裏づけるものである。
【0043】
〈発電試験〉
上記電池を用いて発電試験を行った。電池温度は750℃とし、燃料として水素を、酸化剤として空気を用い、開回路電圧(OCV:V0と略称する)及び電流密度0.2A/cm2における電圧(V0.2と略称する)を測定した。これを200℃/hの速度で室温まで降温した後、同じ速度で再び750℃まで昇温する熱サイクルを繰り返し行い、各昇温後のV0及びV0.2の測定を行った。その結果、V0及びV0.2の初期特性がそれぞれ1.15V、0.91Vであったものが、熱サイクル1回後に1.12V、0.87V、5回後に1.10V、0.78Vと低下したが、それ以降は性能が安定した。10回の熱サイクル後において1.11V、0.80Vを示した。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、低温作動のSOFCにおける単電池と耐熱合金製のセルサポートフォイル間でのシールの問題を解決し、SOFCを長期間にわたり起動→運転→停止→起動というように繰り返し作動して使用しても十分にシールし、ガス漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体酸化物形燃料電池の構成を原理的に示す図
【図2】支持膜式固体酸化物形燃料電池(単電池)の態様例を説明する図
【図3】支持膜式固体酸化物形燃料電池(単電池)を組み込んだSOFCスタックの構成例を示す図
【図4】図3中X−X線断面図
【図5】電解質膜とセパレータ間でのシール状態を示す図
【図6】本発明の構成態様を説明する図
【図7】本発明の構成態様を説明する図
【図8】本発明の構成態様を説明する図
【図9】本発明の構成態様を説明する図
【図10】実施例における接合強度試験の状況を模式的に示した図
Claims (17)
- 金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面と同じ面積の電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の平板状の空気極を積層して構成された単電池における前記電解質膜の周縁上面に、空気極の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池であって、
前記燃料極上面に電解質膜及び空気極を積層した時点での前記燃料極の還元処理後、前記燃料極及び電解質膜の側周面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けしてなることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。 - 金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面より小さい面積で且つ燃料極の周縁上面が露出するように配置した電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の平板状の空気極を積層して構成された単電池における電解質膜の外周前記燃料極の周縁上面に、前記電解質膜の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池であって、
前記燃料極上面に電解質膜及び空気極を積層した時点での前記燃料極の還元処理後、前記燃料極の周縁上面の前記露出面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けしてなることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。 - 金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面より小さい面積で且つ燃料極の周縁上面が露出するように配置した電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の平板状の空気極を積層して構成された単電池における電解質膜の外周前記燃料極の周縁上面に、前記電解質膜の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置してなる低温作動の固体酸化物形燃料電池であって、
前記燃料極上面に電解質膜及び空気極を積層した時点での前記燃料極の還元処理後、前記燃料極の周縁上面の当該露出面及び燃料極の側周面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けしてなることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。 - 請求項2または3に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池において、前記燃料極の周縁上面の露出面が、燃料極上面への電解質膜のスラリーコーティング時に当該周縁上面をマスキングすることにより形成された露出面であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池において、前記金属を含むセラミック材料で構成された燃料極における該金属が、Ni、Cu、Fe及びRuから選ばれた少なくとも1種の金属であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池において、前記金属を含むセラミック材料で構成された燃料極が、Niとイットリア安定化ジルコニアの混合物の焼結体であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池において、前記金属ろう材が、Ag、Cu、Ti、Ni、Au、Al及びPdから選ばれた少なくとも1種の金属を含む金属ろう材であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池。
- 燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層した単電池を含む固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面と同じ面積の電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の空気極を積層した後、前記燃料極を還元処理し、次いで前記電解質膜の周縁上面に、空気極の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置した後、前記燃料極及び電解質膜の側周面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層した単電池を含む固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面より小さい面積で且つ燃料極の周縁上面が露出するように配置した電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の空気極を積層した後、前記燃料極を還元処理し、次いで前記燃料極の周縁上面に、電解質膜の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置した後、前記燃料極の周縁上面の前記露出面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 燃料極上に順次電解質膜及び空気極を積層した単電池を含む固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面より小さい面積で且つ燃料極の周縁上面が露出するように配置した電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の空気極を積層した後、前記燃料極を還元処理し、次いで前記燃料極の周縁上面に、電解質膜の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置した後、前記燃料極の周縁上面の前記露出面及び燃料極の側周面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 請求項9または10に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記燃料極の周縁上面の露出面を、燃料極上面への電解質膜のスラリーコーティング時に当該周縁上面をマスキングすることにより形成することを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
- 金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面と同じ面積の電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の空気極を積層した後、燃料極上面全面に形成された電解質膜のうち、燃料極上面の周縁部の電解質膜を除去して燃料極を露出させ、次いで前記燃料極を還元処理した後、前記燃料極の周縁上面に、電解質膜の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置し、次いで前記燃料極の周縁上面の前記露出面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
- 金属を含むセラミック材料で構成された平板状の燃料極上に順次、当該燃料極上面と同じ面積の電解質膜及び当該電解質膜より小さい面積の空気極を積層した後、燃料極上面全面に形成された電解質膜のうち、燃料極上面の周縁部の電解質膜を除去して燃料極を露出させ、次いで前記燃料極を還元処理した後、前記燃料極の周縁上面に、電解質膜の外周より大きい開口を有し且つ前記単電池を保持するための耐熱合金製セパレータを配置し、次いで前記燃料極の周縁上面の前記露出面及び燃料極の側周面と前記セパレータの下面との間を金属ろう材でろう付けすることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
- 請求項12または13に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記燃料極上の電解質膜のうちの周縁部の除去を、当該周縁部の研磨により行うことを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
- 請求項8〜14のいずれか1項に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記金属を含むセラミック材料で構成された燃料極における該金属が、Ni、Cu、Fe、Ru及びPdから選ばれた少なくとも1種の金属であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
- 請求項8〜14のいずれか1項に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記金属を含むセラミック材料で構成された燃料極が、Niとイットリア安定化ジルコニアの混合物の焼結体であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
- 請求項8〜16のいずれか1項に記載の低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法において、前記金属ろう材が、Ag、Cu、Ti、Ni、Au、Al及びPdから選ばれた少なくとも1種の金属を含む金属ろう材であることを特徴とする低温作動固体酸化物形燃料電池の製造方法。
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