以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、本発明は、特に車庫入れ駐車のアプリケーションに対して有用であるので、以下では、車庫入れ駐車を題材にして説明する。
図1は、本発明による駐車空間検出装置に関連する駐車支援装置10の一実施例を示すシステム構成図である。図1に示す如く、駐車支援装置10は、電子制御ユニット12(以下、「駐車支援ECU12」と称す)を中心に構成されている。駐車支援ECU12は、図示しないバスを介して互いに接続されたCPU、ROM、及びRAM等からなるマイクロコンピュータとして構成されている。ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
駐車支援ECU12には、CAN(Controller Area Network)や高速通信バス等の適切なバスを介して、ステアリングホイール(図示せず)の舵角を検出する舵角センサ16、及び、車両の速度を検出する車速センサ18が接続されている。車速センサ18は、各輪に配設され、車輪速に応じた周期でパルス信号を発生する車輪速センサであってよい。
駐車支援ECU12には、音波(例えば超音波)や電波(例えばミリ波)、光波(例えばレーザー)等を用いて障害物との距離を検出する測距センサ70が接続されている。測距センサ70は、例えばレーザーレーダ、ミリ波レーダ、超音波レーダのほかステレオビジョンなど距離が検出できるものであればよい。測距センサ70は、車両前部の左右両側に設定される。
測距センサ70は、図2に示すように、車幅方向を中心とした所定方向に音波等を発射し、その反射波を受信することで、車両側方にある障害物との距離を検出する。測距センサ70は、例えば車両前部のバンパ付近に搭載され、例えば車両横方向に対して17度〜20度の斜め前方に向けて音波等を発射するものであってよい。
図3は、測距センサ70を備える車両(自車)が図2の障害物(車両T)のそばを走行した際に得られる車両Tに係る点列を示す概略図である。測距センサ70は、図3に示すように、障害物の反射部(音波等の反射点の集合)を点列で出力するものあってよく、出力データは、出力周期毎にメモリ72(例えばEEPROM)に随時記憶されてよい。
駐車支援ECU12には、リバースシフトスイッチ50及び駐車スイッチ52が接続されている。リバースシフトスイッチ50は、シフトレバーが後退位置(リバース)に操作された場合にオン信号を出力し、それ以外の場合にオフ状態を維持する。また、駐車スイッチ52は、車室内に設けられ、ユーザによる操作が可能となっている。駐車スイッチ52は、常態でオフ状態に維持されており、ユーザの操作によりオン状態となる。
駐車支援ECU12は、図1に示したように、フラグ設定部12A、障害物の形状を推定する形状推定部13、及び駐車支援部12Dと、を備える。形状推定部13は、放物線近似部13B及び楕円近似部13Cを備える。
フラグ設定部12Aは、駐車スイッチ52がオンにされた場合に起動されてよい。フラグ設定部12Aは、測距センサ70の検出結果(点列)に基づいて、障害物の検出状態を表すフラグを設定する。具体的には、フラグ設定部12Aは、点列の長さが所定基準長さL1(本例では1m)以上となった段階で、障害物が暫定的に検出されたことを意味するフラグ(以下、「暫定フラグ」を設定する。フラグ設定部12Aは、所定基準長さL1以上の点列が検出され、且つ、その後50cm以上点列が存在しなくなった段階で、障害物の検出が完了したことを意味するフラグ(以下、「完了フラグ」を設定する。また、フラグ設定部12Aは、所定基準長さL1以上の点列が検出され、且つ、その後50cm以上点列の無い区間が検出される前に、リバースシフトスイッチ50がオンにされた場合に、不完全完了フラグを設定する。尚、以下の説明において、完了フラグとは、この不完全完了フラグを含むものとする。
図4は、放物線近似部13Bにより実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。図5は、図4における放物線近似処理の説明図であり、図6は、図4における回転補正処理の説明図である。図4に示す処理ルーチンは、駐車スイッチ52がオンにされた場合に起動され、以下の説明からも明らかなように、暫定フラグが設定される毎(即ち、障害物の一部が検出される毎)に、繰り返し実行される。
ステップ100では、新たな暫定フラグが立てられたか否かが判断される。新たな暫定フラグが立てられた場合には、ステップ110に進み、それ以外の場合には、そのまま今回の処理ルーチンは終了する。
ステップ110では、暫定フラグの設定に関連した測距センサ70の検出結果(点列データ)がメモリ72から読み出される。即ち、所定基準長さL1(本例では1m)分の点列データがメモリ72から読み出される。
ステップ120では、メモリ72から読み出された点列データに対して、前処理として、放物線近似処理が実行される。
ここで、図5を参照して、放物線近似処理の詳細を説明する。図5には、ワールド座標系(X’,Z’)に変換された点列データ(一例として、7点の点C1〜C7)が示されており、また、各点C1〜C7が検出された時の測距センサ70の位置S1〜S7(以下、ソナー位置S1〜S7という)が示されている。
放物線近似部13Bは、先ず、図5に示すように、放物線座標系(X,Z)を定義する。放物線座標は、車両の進行方向をX軸として、それに直交する方向をZ軸とする。原点は、近似に用いる点列データの全点のうちの中心の点(本例の場合、点C4)に設定する。なお、車両の進行方向は、暫定フラグ設定時の車両の向き(後述の偏向角α)に基づいて決定されてよい。次いで、放物線近似部13Bは、上述の如く設定した放物線座標系で、点列データに対して最小二乗法等により曲線近似(2次曲線)を行う。即ち、点列データに最も適合するa*x2+b*z+c=0における係数a,b,cを算出する(但し、*は、乗算を表す。)。次いで、放物線近似部13Bは、得られた放物線上に、点列データの各点C1〜C7が乗るように、点列データを補正する。例えば、図5に示すように、点C6については、点C6とソナー位置S6とを結んだ直線R6と、放物線との交点C6’、C6”(通常、2点となる。)を求め、ソナー位置C6から近いほうの交点C6’へと、点C6を補正する。このようにして、全点C1〜C7に対して補正が実行される。尚、補正は、放物線に対して法線方向に投影することで実現されてもよい。このようにして、得られる点列データ(C1’〜C7’)を、便宜上、「放物線近似データ」と称する。
図4に戻る。ステップ130では、放物線近似処理の結果、フィット率が所定基準値以上であったか否かが判定される。フィット率とは、演算された近似曲線(放物線)に対する当該近似に用いた各点列の適合度である。フィット率が所定基準値以上であった場合、即ち、放物線近似が成功した場合には、ステップ140に進み、放物線近似が失敗に終わった場合には、ステップ150に進む。
ステップ140では、上記のステップ130で実行された放物線近似処理結果を用いて、回転補正処理が実行される。即ち、放物線近似部13Bは、上記のステップ130で得られた放物線近似データを用いて、回転補正処理を実行する。
ここで、図6を参照して、回転補正処理の詳細を説明する。図6には、ワールド座標系で、放物線近似データ(C1’〜C7’)及びソナー位置S1〜S7が示されている。放物線近似部13Bは、図6に示すように、放物線近似データの端から3点毎に、3点の情報を用いて、当該3点の中央の点の回転補正を行う。例えば、3点C1’〜C3’の情報を用いて、点C2’の回転補正を行う。この際、例えば点C2’の回転補正の回転角度θは、θ=Arcsin((d3−d1)/δL)により求めてよい。また、例えば点C2’の回転補正の回転半径は、点C2’とソナー位置S2との距離d2であってよく、点C2’の回転補正の回転中心は、ソナー位置S2であってよい。次に、放物線近似部13Bは、次の3点C2’〜C4’の情報を用いて、点C3’の回転補正を行い、以下同様に順次回転補正を行っていく。これにより、回転補正された点列データ(P1〜P5)が得られる。
ステップ150では、上記ステップ110でメモリ72から読み出された点列データを用いて、回転補正処理が実行される。即ち、放物線近似部13Bは、上記のステップ130で得られた放物線近似データを用いず、補正前の点列データ(但し、ノイズ除去等の基本的な前処理は受けていてもよい。)を用いて、回転補正処理を実行する。回転補正処理の方法は、図6を参照して説明した方法と同一であってよい。
ステップ160では、回転補正処理により得られた点列データ(P1〜P5)に基づいて、障害物の始点及び終点の座標が算出される。障害物の始点の座標は、ワールド座標系において、点列データP1〜P5のうち自車の進行方向で手前側の最も端の点(本例では、P2)の座標とされる。障害物の終点の座標は、障害物の始点とは異なり、暫定フラグの設定時点では対応する点列データが存在しないので、障害物の始点に対して自車の進行方向に沿って所定距離(例えば、1.7m)オフセットした座標とされる。
ステップ170では、上記のステップ160で得られた障害物の始点及び終点の座標が出力される。
このように本実施例によれば、暫定フラグが設定された段階では、比較的少ない点列データしか得られないにも拘らず、放物線近似を用いることで、精度良く障害物の形状(本例では、障害物の始点及び終点)を推定することができる。
図7は、楕円近似部13Cにより実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。図8は、図7における楕円近似処理の説明図である。図7に示す処理ルーチンは、駐車スイッチ52がオンにされた場合に起動され、新たな暫定フラグが設定される毎に、繰り返し実行される。
ステップ200では、既に設定された暫定フラグの後に、完了フラグが設定されたか否かが判断される。完了フラグが立てられた場合には、ステップ210に進み、それ以外の場合には、そのまま今回の処理ルーチンは終了する。
ステップ210では、完了フラグの設定に関連した測距センサ70の検出結果(点列データ)がメモリ72から読み出される。即ち、1mよりも長い長さ分(典型的には、1.5m以上)の点列データがメモリ72から読み出される。
ステップ220では、メモリ72から読み出された点列データに対して、前処理として、楕円近似処理が実行される。
ここで、図8を参照して、楕円近似処理の詳細を説明する。図8には、ワールド座標系(実座標系)に変換された点列データ(一例として、12点の点C1〜C12)が示されており、また、各点C1〜C12が検出された時の測距センサ70の位置S1〜S12(ソナー位置S1〜S12)が示されている。
楕円近似部13Cは、先ず、点列データに対して楕円近似を行う。具体的には、楕円の一般式、d*x2+e*x*z+f*z2+g*x+h*z+f=0における係数d,e,f,g,h,fを、例えばRANSAC(RAndom SAmple Consensus)により算出する。尚、図示の例では、12点からなる点列データであるので全点C1〜C12が用いられてよいが、入力点数によっては処理時間が膨大にかかるため、入力点数の低減(例えば最大20点)が実行されてよい。次いで、楕円近似部13Cは、得られた楕円上に、点列データの各点C1〜C12が乗るように、点列データを補正する。具体的には、上述の放物線近似の場合と同様、対応するソナー位置と点列データの点とを直線で結び、直線と楕円の交点(通常、2点)を求め、この交点うち近いほうの交点へと、点列データの点を補正する。例えば、図6に示すように、点C3については、点C3とソナー位置S3とを結んだ直線R3と、楕円との交点D3、D3”を求め、ソナー位置C3から近いほうの交点D3へと、点C3を補正する。このようにして、全点に対して補正が実行される。この際、端から3点までの点C1〜C3の何れに対しても、上述のような交点が存在しない場合には、フィット率が悪いことが明らかなので、点列データの補正は実行しないこととしてよい。
このようにして、得られる点列データを、便宜上、「楕円近似データ」と称する。楕円近似データは、最も端の点C1に対して交点がある場合には、D1〜D12を含み、次の点C2から交点がある場合には、D2〜D12を含み、次の点C3から交点がある場合には、D3〜D12を含むことになる。尚、端の点で交点が存在しない場合がある理由としては、上述の如く車両バンパ等に取り付けられた測距センサ70が斜め前方に検出波を発しており、それ故に、障害物に近づく際には障害物の側面に対する距離データが含まれうるからである。
図7に戻る。ステップ230では、楕円近似処理の結果、フィット率が所定基準値以上であったか否かが判定される。尚、上述の如く、端から3点までの点C1〜C3の何れに対しても、上述のような交点が存在しない場合には、本判定処理において否定判定がなされることになる。
ステップ240では、上記のステップ230で実行された楕円近似処理結果を用いて、回転補正処理が実行される。即ち、楕円近似部13Cは、上記のステップ230で得られた楕円近似データを用いて、回転補正処理を実行する。回転補正処理の方法は、用いるデータが異なる以外は、図6を参照して説明した方法と同一であってよい。
ステップ250では、上記ステップ210でメモリ72から読み出された点列データを用いて、回転補正処理が実行される。即ち、楕円近似部13Cは、上記のステップ230で得られた楕円近似データを用いず、補正前の点列データを用いて、回転補正処理を実行する。回転補正処理の方法は、用いるデータが異なる以外は、図6を参照して説明した方法と同一であってよい。
ステップ260では、回転補正処理により得られた点列データに基づいて、障害物の始点及び終点の座標が算出される。障害物の始点の座標は、回転補正された点列データのうち、自車の進行方向で手前側の最も端の点の座標とされる。一方、障害物の終点の座標は、上記のステップ250を経由した場合、即ち楕円近似処理による補正が実行されていない場合には、障害物の始点に対して自車の進行方向に沿って奥側に所定距離(例えば、1.7m)オフセットした座標とされる。一方、上記のステップ240を経由した場合、即ち楕円近似処理による補正が実行された場合には、検出最終点(上記の例では、C12に対応する補正後の点)から、自車の進行方向に沿って所定距離(例えば、0.5m)手前側にオフセットした座標とされる。このとき、障害物の始点と終点との距離が、障害物の一般的な幅(例えば、1.7m)未満となる場合には、障害物の終点の座標は、障害物の始点に対して自車の進行方向に沿って所定距離(例えば、1.7m)奥側にオフセットした座標とされる。
ステップ270では、上記のステップ260で得られた障害物の始点及び終点の座標が出力される。
このように本実施例によれば、完了フラグが設定された段階では、比較的多い点列データが得られることに着目して、楕円近似を用いることで、精度良く障害物の形状(本例では、障害物の始点及び終点)を推定することができる。
図9は、駐車支援部12Dにより実現される主要処理の流れを示すフローチャートである。図9に示す処理ルーチンは、駐車スイッチ52がオンにされた場合に起動される。
ステップ300では、暫定フラグが設定されたか否かが判定される。暫定フラグが設定された場合のみ、ステップ310に進む。
ステップ310では、放物線近似部13Bにより上述の如く生成・出力される障害物の始点及び終点の情報が、所定のメモリから読み出される(又は放物線近似部13Bから取得される)。
ステップ320では、放物線近似部13Bからの障害物の始点及び終点の情報に基づいて、駐車初期位置案内処理が実行される。駐車初期位置案内処理は、例えば、以下の手順で実行されてよい。
駐車支援部12Dは、先ず、今回の暫定フラグの設定以前に、所定距離(例えば2.5m)以上点列が検出されない区間があったか否かを判断する。即ち、今回検出された障害物の手前側に、駐車可能な駐車空間が存在するか否かを判断する。駐車可能な駐車空間が存在しないと判断した場合には、図示していないが、駐車初期位置案内を実行せずにそのまま終了する(即ち、今回の暫定フラグ設定時に関わる駐車支援を実行しない)。
一方、駐車可能な駐車空間が存在すると判断した場合には、駐車支援部12Dは、先ず、例えばポーンという音声をスピーカー24(図1参照)を介して出力すると共に、駐車初期位置へと車両を案内するための操舵指示を行う。尚、ポーンという音声は、左右に存在するスピーカー24のうち、駐車空間の存在する側のスピーカー24から出力することとしてもよい。これにより、運転者は、駐車空間の存在する側を聴覚を介して理解することができる。次いで、駐車支援部12Dは、放物線近似部13Bから得た障害物の始点及び終点の情報に基づいて、案内対象の駐車空間への駐車に適した駐車初期位置を算出する。駐車初期位置の演算方法は、多種多様でありえるが、例えば、障害物の始点に対して所定の相対位置に、目標駐車位置(例えば駐車空間内における車両後軸中心の位置)を決定し、車両の最大旋回曲率等を考慮して、決定した目標駐車位置への駐車が可能な駐車初期位置を演算・決定する。尚、駐車空間への支援が可能な駐車初期位置は、一点ではなく範囲を有するものであるため、許容される位置範囲で規定されるものであってもよい。次いで、駐車支援部12Dは、舵角センサ16及び車速センサ18の各出力信号に基づいて、所定区間における、所定の基準方向に対する車両の向きの変化量(以下、この変化量を「偏向角α」という)を演算して、その後の車両の移動軌跡を推定する。尚、偏向角αは、時計回り方向を正とし、反時計回り方向を負として定義される。ここで、偏向角αは、一般的に、車両の微小移動距離をdsとし、γを路面曲率(車両の旋回半径Rの逆数に相当)とすると、数1の式により算出することができる。この数1の式は、βm(本例ではβ=7)手前の位置から現地点に至るまでの車両の向きの変化として、偏向角αを求めるものである。
駐車支援部12Dは、数1の式を変形した以下の数2の式に基づいて、所定の移動距離(本例では、0.5m)毎の微小偏向角α
iを算出すると共に、算出した各微小偏向角α
1〜kを総和して偏向角αを算出する。
この際、所定の移動距離(本例では、0.5m)は、車速センサ18の出力信号(車輪速パルス)を時間積分することによって監視される。また、路面曲率γは、舵角センサ16から得られる舵角Haに基づいて決定され、例えばγ=Ha/L・ηにより演算される(Lはホイールベース長、ηは車両のオーバーオールギア比(車輪の転舵角に対する舵角Haの比)である)。尚、微小偏向角α
iは、微小移動距離0.01m毎に得られる路面曲率γに当該微小移動距離0.01を乗算し、これらの乗算値を移動距離0.5m分積算することによって算出されてもよい。尚、路面曲率γと舵角Haとの関係は、予め車両毎に取得された相関データに基づいて作成されたマップとして、駐車支援ECU12のROMに格納されていてよい。尚、偏向角αは、上述の暫定フラグの設定前から常時演算されていてよく、この場合、得られた偏向角αは、上述の自車の進行方向を推定するのに利用されてよい。
駐車支援部12Dは、上述の如く推定される現在の車両位置と、駐車初期位置との関係に基づいて、駐車初期位置へと車両を案内するための操舵指示を行う。例えば、駐車支援部12Dは、スピーカー24やディスプレイ22(図1参照)を介して、適宜、「もう少し駐車空間の近くから開始してください」、「もう少し駐車空間から離れて開始してください」、又は、「もう少し車両の傾きを大きくしてください」といった趣旨のメッセージを表示及び/又は音声により出力してよい。駐車支援部12Dは、車両の現在の位置が駐車初期位置に対応した場合に、ピンポーンと鳴る音声をスピーカー24を介して出力すると共に、「シフトレバーをRに入れると、後退時の支援を開始できます」といった趣旨のメッセージを表示及び/又は音声により出力して、駐車初期位置案内を終了する。
ステップ330では、上述の駐車初期位置案内の開始後、完了フラグが設定されたか否かが判定される。完了フラグが設定された場合には、ステップ340に進み、それ以外の場合には、上述の駐車初期位置案内を継続する。
ステップ340では、楕円近似部13Cにより上述の如く生成・出力される障害物の始点及び終点の情報が、所定のメモリから読み出される(又は楕円近似部13Cから取得される)。
ステップ350では、駐車初期位置から駐車空間への後退走行時の支援条件が成立したか否かが判定される。この支援条件は、例えば、駐車スイッチ52がオンであり、且つ、リバースシフトスイッチ50がオンになった場合に、成立するものであってよい。駐車初期位置から駐車空間への後退走行時の支援条件が成立した場合には、ステップ360に進み、それ以外の場合には、ステップ355に進む。
ステップ355では、現在、駐車初期位置案内中であるか否かが判定される。駐車初期位置案内中である場合には、ステップ350に戻る。この場合、上述の如く決定した駐車初期位置は、楕円近似部13Cからの障害物の始点及び終点の情報に基づいて補正されてもよく、当該補正された駐車初期位置に基づいて、上述の駐車初期位置案内が継続されてよい。一方、駐車初期位置案内中でない場合には、今回設定された暫定フラグに係る障害物手前の駐車空間に対する処理が終了される。このような場合とは、例えば運転者が、案内した駐車空間以外の駐車位置を希望しているために上述の駐車初期位置案内に最初から応答しない場合や、途中で気が変わって駐車初期位置案内に応答しなくなった場合等が、主として想定される。尚、駐車初期位置案内に応答しているかは、駐車初期位置案内を開始した後の操舵態様に基づいて判断することができる。
ステップ320では、楕円近似部13Cからの障害物の始点及び終点の情報に基づいて、駐車初期位置から駐車空間への後退走行時の駐車支援が開始される。後退走行時の駐車支援は、以下のような手順で実行されてよい。
先ず、駐車初期位置に車両が停止している状態において、駐車支援部12Dは、車室内に設けられたディスプレイ22上に、車両後方の所定角度領域における風景を撮影するバックモニタカメラ20の撮像画像(実画像)を表示させる。このとき、ディスプレイ22上には、図10(車庫入れ駐車用の画面)にて点線で示すように、撮像画像上に目標駐車枠が重畳表示される。目標駐車枠は、実際の駐車枠や車両の外形を模した図形であってよく、例えば、その位置及び向きがユーザにより視認可能である形態を有する。
ここで、ディスプレイ22上に表示される目標駐車枠の初期表示位置は、楕円近似部13Cからの障害物の始点及び終点の情報に基づいて算出される。この目標駐車枠の位置は、そのまま、ユーザによる最終的な確定スイッチの操作等により確定されてよい。或いは、目標駐車枠の位置等は、図10に示すように、目標駐車枠を上下左右方向の並進移動及び回転移動させるためのタッチスイッチ等により、確定スイッチの操作前に調整が可能とされてもよい。
駐車支援部12Dは、目標駐車枠の位置が確定されると、目標駐車枠の位置に基づいて目標駐車位置を決定し、決定した目標駐車位置へと車両を後退させるのに適した目標移動軌跡を演算する。この際、目標移動軌跡は、駐車空間に隣接する障害物の端点情報に基づいて、障害物に車両が干渉しないように生成される。この場合、障害物の端点情報としては、放物線近似による障害物の端点情報が用いられてよいが、より信頼性の高い楕円近似による障害物の端点情報が用いられてよい。
駐車支援部12Dは、車両の後方移動が開始されると、自動誘導制御中、車速センサ18の出力信号から演算した車両移動量と舵角センサ16から得られる舵角位置を用いて自車の車両位置を推定し、推定した車両位置の目標移動軌跡からの偏差に応じた目標舵角を演算し、当該目標舵角を操舵制御ECU30に送信する。操舵制御ECU30は、当該目標舵角を実現するようにモータ32を制御する。尚、モータ32は、ステアリングコラムやステアリングギアボックスに設けられ、その回転角によりステアリングシャフトを回転させるものであってよい。駐車支援部12Dは、最終的に車両が駐車空間内の目標駐車位置に適切に導かされた際に、運転者に車両の停止を要求し(若しくは、自動制動手段により車両を自動的に停止させ)、駐車支援制御が完了する。
このように本実施例によれば、障害物の一部(即ち約第1基準長さL1分の部位)が検出された段階から、放物線近似により得られた障害物の端点情報を用いて目標駐車位置(及び駐車初期位置)が決定されるので、例えば障害物の全体を検出した段階(完了フラグが設定された段階)で初めて目標駐車位置及びそれに基づく駐車初期位置を決定する構成に比べて、駐車支援(駐車初期位置案内)の開始時期を早めることができる。これは、特に、障害物を通り過ぎた直後からハンドルを切り始めないと適切な駐車初期位置に至ることが困難な車庫入れ駐車時に有効となる。また、かかる駐車初期位置案内を行わない構成であっても、本実施例によれば、障害物の一部(即ち約第1基準長さL1分の部位)しか検出できないような走行経路で駐車初期位置に到達した場合であっても、目標駐車位置を決定することができる。これは、特に、障害物の手前からハンドルを切り始める傾向の高い車庫入れ駐車時(それ故に駐車初期位置に至る過程で障害物の全体を検出しきれない場合が多い車庫入れ駐車時)に有効となる。
また、本実施例によれば、障害物の一部(即ち約第1基準長さL1分の部位)が検出された段階から、放物線近似を用いることで、直線近似を行う場合に比べて精度の良い障害物の端点情報を得ることができる。これにより、上述の如く早期に駐車支援(駐車初期位置案内)を開始できると共に、当該駐車支援の精度・信頼性(駐車空間の推定精度)を高めることができる。また、同様に、完了フラグが設定された段階からは、楕円近似により精度の良い障害物の端点情報を得ることができ、精度の高い駐車支援を実現することができる。例えば、上述の如く、精度の良い障害物の端点情報を用いて目標駐車枠の初期表示位置が決定されるので、ユーザがタッチスイッチを何回も操作して目標駐車枠の位置調整を行なう必要がなくなり、目標駐車位置を設定するのに要する時間を大幅に短縮することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、可能な限り早い段階から駐車初期位置案内を開始できるように、暫定フラグの設定時点で、第1基準長さL1分の点列データに基づいて障害物の端点情報を生成しているが、例えば上記のステップ130にてフィット率が良好でないと判定された場合には、完了フラグが設定されるまでに得られる新たな点列データを用いて、同様の放物線近似による障害物の端点情報を生成してもよい。
また、上述の実施例では、点列データの信頼性の観点から可能な限り直近の点列データを利用すべく、完了フラグの設定時点(即ち、不完全完了フラグを除いて、一の障害物に係る点列を取得し終えた時点)で、楕円近似による障害物の端点情報を生成しているが、暫定フラグ設定後から完了フラグ設定前まで間に、楕円近似による障害物の端点情報を生成することとしてもよい。
また、上述の実施例では、障害物の手前側の駐車空間に対する初期位置案内を行う際に、当該障害物の始点の位置情報を用いているが、当該駐車空間の手前側で他の障害物が検出されている場合には、当該他の障害物の終点の位置情報を併せて用いて、目標駐車位置及びそれに基づく駐車初期位置を決定してもよい。この場合、他の障害物の終点の位置情報としては、当該他の障害物に対して完了フラグが設定された時点で得られる楕円近似による端点情報が用いられてよい。
また、上述の実施例では、障害物の手前側の駐車空間に対して初期位置案内を行っているが、障害物の奥側の駐車空間に対して駐車初期位置案内を行うこととしてもよい。この場合、例えば完了フラグが設定された後、例えば2.0m以上点列が検出されない場合に、当該完了フラグに係る障害物の奥側に、駐車可能な駐車空間が存在すると判断して、駐車初期位置案内を開始してよい。この場合、目標駐車位置及びそれに基づく駐車初期位置は、完了フラグが設定された時点で得られる楕円近似による障害物の終点の位置情報を用いて、算出されてよい。
また、上述の実施例では、点列の長さに基づいて放物線近似と楕円近似とを使い分けているが、本発明はこれに限定されることは無く、実質的には等価であるが、点列の分布態様(外形ないし形状)に基づいて放物線近似と楕円近似とを使い分けることとしてもよい。例えば、自車の進行方向に沿った点列の分布範囲が所定基準範囲内であるときは、放物線近似を行い、点列の分布範囲が所定基準範囲を超えて広く分布しているときは、楕円近似を行うこととしてよい。
また、上述の実施例では、駐車スイッチ52がオンにされた場合に各種アプリケーション(例えば形状推定部13の処理等)が起動されているが、本発明はこれに限定されることは無く、例えば駐車スイッチ52がオンにされていない場合でも、車速が所定値以下となった場合、ナビゲーション装置の地図データから車両位置が駐車場内にあると判断された場合等に起動されてもよい。この場合、駐車スイッチ52が存在しない構成も考えられる。
また、上述の実施例では、障害物の形状として、目標駐車位置等を決定する際の好適なパラメータとなる障害物の端点(始点及び終点)を推定しているが、本発明はこれに限定されることは無く、障害物の形状として、障害物の向き(障害物の前面の方向)や輪郭形状を推定することとしてもよい。また、障害物の始点及び終点についても、必ずしも自車の進行方向に沿った始点及び終点である必要はなく、例えば実際の駐車枠線(入口側の線)の方向が画像認識等により検出されている場合には、当該駐車枠線の方向に沿った障害物の始点及び終点が導出されてもよい。
また、上述の実施例では、説明の都合上、障害物は車両を想定しているが、障害物としては、自転車、二輪車、壁、2つ以上のパイロン等のあらゆる有体物が想定可能である。
また、上述の実施例では、車速センサ18及び舵角センサ16により、車両の位置等に関する情報を取得・導出しているが、それに代えて又は加えてヨーレートセンサやジャイロセンサ、方位計、GPS測位結果等を用いてもよい。