JP4645081B2 - シラン化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なシラン化合物に関する。
シラン化合物は電子材料のポッティング剤、コーティング剤、接着剤の界面接着力向上剤等に用いられている。中でも分子中に窒素原子を含有するシラン化合物は、接着剤組成物に添加した場合、界面接着力向上には有効であるが、その一方で接着剤組成物の保存安定性を低下させる傾向にある。
このような状況のなか、分子中に窒素原子を含有するシラン化合物であるN−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランを、弾性接着剤等に用いられるポリオルガノシロキサン組成物に含有させた場合、界面接着強度が向上するだけでなく、保存安定性も向上する旨が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。これは、N−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランがポリオルガノシロキサン組成物を製造又は密閉保存する際に発生するアルコールを捕捉する特性を有することを利用したものである。
特開昭62-62863号公報 特開平08-41345号公報
しかしながら、本発明者らが特許文献1、2に記載のN−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランを始めとする従来のシラン化合物を詳細に検討したところ、特に特許文献1又は2に記載のN−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランは易分解性化合物であることを見出した。そのため、特許文献1又は2に記載のN−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランを接着剤組成物に添加すると、該組成物の保存安定性は十分でないことが明らかになった。
特にこのシラン化合物を一液性のエポキシ系接着剤やアクリレート系接着剤に添加した場合、これらの接着剤を長期間保存した後に用いると、N−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランの分解が進行し、捕捉されないアルコールが残存するため、十分な界面接着強度が得られない傾向にあることを見出した。
そこで本発明は、接着剤組成物に添加することにより、その接着剤組成物に対して、長期間保存後も十分強固な界面接着強度を付与できるシラン化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、従来のシラン化合物よりも置換基の分子サイズが大きなシラン化合物を接着剤組成物に含有させると、その接着剤組成物の界面接着強度及び保存安定性を改良できる傾向にあることを見出した。それと同時に、シラン化合物の置換基の分子サイズを大きくしすぎると、界面接着強度が低下する傾向にあることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づいて、更に詳細に検討したところ、窒素原子に結合した置換シリル基を有するシラン化合物において、置換シリル基の置換基が、接着剤組成物の長期間保存後の界面接着強度に大きな影響を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の新規なシラン化合物は、下記一般式(1)又は(2)で示されることを特徴とする。
式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。
このような構造を有するシラン化合物において、窒素原子に結合するシリコン原子の置換基であるRが炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基であり、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基であるため、このシラン化合物を接着剤組成物に添加することにより、その接着剤組成物に対して、長期間保存後も十分強固な界面接着強度を得ることができる。
この理由は定かではないが、窒素原子に結合するシリコン原子の置換基の構造や極性が、窒素原子を含有するシラン化合物の特性に影響しているものと考えられる。ただし、要因はこれに限定されない。
上記のシラン化合物において、R、R、R、R、R及びRが、シクロアルキル基の炭素数が4〜8であり、置換フェニル基の置換基が1価の有機基又はハロゲン原子であることが好ましい。
また上記シラン化合物は、Rが炭素数2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、又はフェニル基であり、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、R、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であることがより好ましく、Rがイソプロピル基、t−ブチル基又はフェニル基であり、R、R及びRがエチル基であることが更に好ましい。
一般式(1)又は(2)のR、R、R、R、R及びRがこれらの置換基であれば、接着剤組成物に添加した際にはその接着剤組成物に対して、長期間保存後も一層強固な界面接着強度を得ることができる。
本発明によれば、接着剤組成物に添加することにより、その接着剤組成物に対して、長期間保存後も十分強固な界面接着強度を付与できるシラン化合物を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を示して更に詳細に説明する。
本発明のシラン化合物は、下記一般式(1)及び(2)で表される構造を有していればいかなる化合物でもよい。
式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。
このような構造であると、接着剤組成物の長期間保存後の界面接着強度及び保存安定性に優れる。
すなわち、上記一般式(1)及び(2)において、窒素原子に結合するシリコン原子の置換基であるR、R及びRの嵩高さが大きくなるほど、このシラン化合物を接着剤組成物に含有させた場合に、その接着剤組成物の保存安定性が向上する。一方、上記R、R及びRがすべて嵩高さの小さいメチル基である場合は、このシラン化合物を接着剤組成物に含有させた場合に、その接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
従って、本実施形態において、保存安定性向上の観点からは、上記R、R及びRのうち、Rが炭素数2以上のアルキル基、炭素数4以上のシクロアルキル基又はフェニル基であるシラン化合物を採用する。
また、窒素原子に結合するシリコン原子の置換基であるR、R及びRは嵩高さが小さくなるほどシラン化合物を接着剤組成物に含有させた場合に、その接着剤組成物の界面接着強度が向上する傾向にある。一方、上記R、R及びRの嵩高さが大きくなるほど、このシラン化合物を接着剤組成物に含有させた場合に、その接着剤組成物の界面接着強度が低下する傾向にある。
従って、本実施形態において、界面接着強度向上の観点からは、上記R、R及びRのうち、Rは炭素数12以下のアルキル基、炭素数8以下のシクロアルキル基又はフェニル基であり、R及びRはそれぞれ独立に炭素数12以下のアルキル基、炭素数8以下のシクロアルキル基又はフェニル基であるシラン化合物を採用する。
これらを総合的に勘案すると、接着剤組成物に添加した際の高い界面接着強度と、保存安定性とを両立できるシラン化合物として、上記一般式(1)及び(2)の構造を有する化合物となる。
ここで、上記R、R、R、R、R及びRにおいて、上記シクロアルキル基は、炭素数が4〜8のものであることが好ましく、上記置換フェニル基の置換基は、1価の有機基又はハロゲン原子であることが好ましい。
また、上記式(1)及び(2)において、上記Rが炭素数2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基又はフェニル基であり、上記R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフェニル基であり、上記R、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であることがより好ましい。
更に、上記式(1)及び(2)において、上記Rがイソプロピル基、t−ブチル基又はフェニル基であり、上記R、R及びRがそれぞれ独立にエチル基であることが特に好ましい。
上記一般式(1)又は(2)のR、R、R、R、R及びRがこれらの置換基であれば、接着剤組成物に添加した際にはその接着剤組成物に対して、長期間保存後も一層強固な界面接着強度を得ることができる。
上記式(1)又は(2)で表されるシラン化合物の具体的な構造としては、下記表1〜8に示す、下記一般式(1−1)〜(1−50)及び(2−1)〜(2−50)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。なお、式(1−1)〜(1−50)及び(2−1)〜(2−50)中、Meはメチル基、Etはエチル基、Proはn−プロピル基、Buはn−ブチル基、Phはフェニル基をそれぞれ意味する。
次に本発明に係る新規シラン化合物の合成法に係る好適な実施形態について説明する。
本発明に係るシラン化合物の合成法については特に限定されず、通常公知の有機化学反応が好ましく使用できる。本発明において好ましく使用可能な合成方法の具体例としては、第一級アミノ基を有するシリルエーテル化合物とアルキル(フェニル)シリルハライドとのカップリング反応(以下、単に「反応」という。)が例示される。この合成法により、脱ハロゲン化水素が起こり、アミノ基を有するシリルエーテル化合物におけるアミノ基の水素原子をアルキル(フェニル)シリル基で置換したシラン化合物を得ることができる。
第一級アミノ基を有するシリルエーテル化合物としては、下記一般式(3)及び(4)に示す構造を有するものが挙げられる。
式(3)及び(4)中、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。
上述のR、R及びRにおいて、上記シクロアルキル基は、炭素数が4〜8のものであることが好ましく、上記置換フェニル基の置換基は、1価の有機基又はハロゲン原子であることが好ましい。
また、上記式(3)及び(4)において、上述のR、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であることがより好ましく、すべてがエチル基であることが特に好ましい。
アルキル(フェニル)シリルハライドとしては、下記一般式(5)に示す構造を有するものが挙げられる。
式(5)中、Rは炭素数2〜12の直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖アルキル基若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基を示し、Xはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を示す。
上記R、R及びRにおいて、上記シクロアルキル基は、炭素数が4〜8のものであることが好ましく、上記置換フェニル基の置換基は、1価の有機基又はハロゲン原子であることが好ましい。
また、上記式(5)において、上記Rが炭素数2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基又はフェニル基であり、上記R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、上記Rがイソプロピル基、t−ブチル基又はフェニル基であることがより好ましい。
また、原料のコストや入手の容易性を勘案すると、上記式(5)において、Xが塩素であるアルキル(フェニル)シリルクロライドを用いることが好ましい。上述のシリルエーテル化合物及びアルキル(フェニル)シリルハライドはそれぞれ一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本反応で使用する第一級アミノ基を有するシリルエーテル化合物とアルキル(フェニル)シリルハライドの反応比率は、第一級アミノ基を有するシリルエーテル化合物のアミノ基1モル当量に対して、アルキル(フェニル)シリルハライドのハロゲン原子が0.1〜10モル当量の範囲が好ましく、0.7〜1.5モル当量の範囲がより好ましく、0.8〜1.3モル当量の範囲が更に好ましい。アルキル(フェニル)シリルハライドのハロゲン原子が0.1モル当量未満、または10モル当量を超える場合、シラン化合物の合成自体は可能であるが、未反応のまま回収される原料の量が多くなり、反応効率が十分ではない。
また、本反応に塩基性化合物を添加することが好ましい。これにより本反応の際に発生する酸を捕捉することができるため、比較的温和な条件で反応を促進することができる。この塩基性化合物としては特に限定されず、通常公知のものを用いることができるが、具体的にはピリジン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド等のアミン系塩基、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物、苛性カリウム、苛性ソーダ等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機金属化合物、臭化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム等のグリニアル反応剤等が挙げられる。
本発明で塩基性化合物を使用する場合、その量は第一級アミノ基を有するシリルエーテル化合物のアミノ基1モル当量に対して、塩基性化合物が0.1〜1000モル当量の範囲が好ましく、0.5〜5モル当量の範囲がより好ましく、0.7〜2モル当量の範囲が更に好ましい。塩基性化合物が0.1モル当量未満の場合、実質的な添加効果が発現されない傾向にあり、1000モル当量を超えてもシラン化合物の合成自体は可能であるが、回収される塩基性化合物の量が多くなり、反応効率が十分ではない。ただし、塩基性化合物が反応温度で液体であり、溶媒として使用する場合には1000モル当量を超えて使用してもなんら問題はない。
本反応では、溶媒を用いないで行うことも可能であるが、反応液の流動性を保つために、溶媒を用いて行うこともできる。溶媒を用いる場合、反応を阻害したり、副反応を進行させたりする溶媒以外であれば、特に限定されず用いることができる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等が好ましく用いられる。これらの溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いることができる。
また、これらの溶媒はあらかじめ脱水処理されているものが好ましい。水分を多量に含む溶媒は副反応が進行する傾向にある。
本反応に溶媒を用いる場合、溶媒の添加量はアミノ基を有するシリルエーテル化合物とアルキル(フェニル)シリルハライドの合計100質量部に対して、5〜10000質量部とすることが好ましく、20〜10000質量部とすることがより好ましく、50〜5000質量部とすることが更に好ましい。この配合量が5質量部未満では、実質的な溶媒の添加効果が観察されない傾向にあり、10000質量部を超えると反応速度が遅くなり、反応効率が低下する傾向にある。
本反応は加圧、減圧または大気圧のいずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性から、大気圧雰囲気下で行うことが好ましい。また、アルキル(フェニル)シリルハライドは反応性に優れることから、シリルエーテル化合物を撹拌しながら、シリルエーテル化合物中に少しずつ滴下することが好ましい。
更にアルキル(フェニル)シリルハライドを滴下する際には、乾燥気体の充填下や、乾燥気流下で行うと水分由来の副反応が抑えられるため好ましく、乾燥させた窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で行うことがより好ましく、乾燥窒素、乾燥アルゴン雰囲気下で行うことが更に好ましい。本反応を行う際に水分や酸素が混入すると、反応性の高いシリルエーテル化合物、アルキル(フェニル)シリルクロライド等は、副反応を引き起こす傾向にあり、所望のシラン化合物の収率が低下する傾向にある。
また、反応温度は−100℃から溶媒還流温度または200℃の範囲で行えるが、好ましくは−30℃〜150℃の範囲であり、0℃〜100℃が特に好ましい。この反応温度が−100℃未満では反応速度が遅くなり、所望のシラン化合物の収率が低下する傾向にある。また、200℃以上では副生成物が生じ、所望のシラン化合物の収率が低下する傾向にある。反応温度が0℃〜100℃の範囲であれば水での加熱または冷却が可能であり、危険が少なく、汎用の設備で合成でき、エネルギー消費量が低減できる傾向にある。
更に反応時間は5分〜7日とすることが好ましく、1時間〜6日がより好ましく、1時間〜5日が更に好ましい。この反応時間が、5分未満であると反応は十分には進行せず、所望のシラン化合物の収率が低下する傾向にある。また、7日を超えても所望のシラン化合物の収率は向上しない傾向にある。
また、本反応系内には、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩等の触媒を添加しても良い。触媒を添加することによって、反応速度を高めたり、所望のシラン化合物の収率を高めることができる。
本反応における反応の進行具合および反応の終点は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄相クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル、及び赤外吸収スペクトル等によって確認することができる。
反応終了後は、反応液をろ過、精製して、目的のシラン化合物が得られる。
本発明のカップリング反応によって得られるシラン化合物を精製する方法は特に限定されないが例えば、蒸留、再結晶、再沈殿、減圧蒸留、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ等の物性に合わせた方法で適宜行うことができる。
この中でも、蒸留及び再結晶を行うことが好ましい。副成する酸性化合物や、塩基性化合物を用いた場合の塩類、必要に応じて用いた溶媒を除去することができ、所望のシラン化合物を純度よく得ることができる。
本反応によって得られるシラン化合物を特定するための分析手段は特に限定されないが例えば、赤外吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、質量スペクトル(MS)、元素分析、X線結晶解析等の手段により、官能基や水素原子の結合位置、分子量、化学組成等を確認することができる。
こうして得られるシラン化合物は、以下のような特性を有する。例えば、安定性については、密栓をして冷暗所で保存することが望ましい。また、用途については、他のシリコン系化合物との相溶性に優れるため、シランカップリング剤として用いることができ、また、アルコールとの相溶性にも優れるため、アルコール捕捉剤としての用途にも用いることができる。
具体的には、本発明のシラン化合物は、一液性の接着剤組成物の構成材料として好適に用いることができる。また、熱硬化性組成物あるいは光硬化性組成物を構成する反応性化合物として応用することができる。さらには、塗料、電気・電子材料、半導体材料、光学材料、光ファイバー、光導波路、単層および多層配線板材料、レジスト、ドライフィルムレジスト等、多種多様な用途に応用することができる。
以下、本発明を実施例に従い更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1:N−トリ(イソプロピル)シリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランの合成例]
30mLのガラス製反応容器に乾燥窒素を充填し、ここにアミノ基を有するシリルエーテル化合物であるγ−アミノプロピルトリエトキシシラン1.00g(チッソ社製、商品名:サイラエースS330)と、塩基性化合物であるトリエチルアミン0.492g(和光純薬工業社製)と、溶媒である脱水ヘキサン10mL(和光純薬工業社製)とを加えて、均一になるまで撹拌して混合液を得た。次に、得られた混合液に、アルキル(フェニル)シリルハライドであるトリイソプロピルシリルクロライド0.824g(チッソ社製)を10分間かけて滴下し、25℃で48時間撹拌して反応を終了した。その後、析出したトリエチルアミン塩酸塩をガラスフィルターでろ別し、ヘキサンを留去した。次に、減圧蒸留を行い、下記式(6)で表されるN−トリ(イソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:180℃/67Pa)0.99gを得た。(収率55%)
なお、得られたN−トリ(イソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの赤外線吸収スペクトルを図1に、NMRスペクトルを図2にそれぞれ示す。
[実施例2:N−(ジフェニルイソプロピル)シリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランの合成例]
トリイソプロピルシリルクロライドに代えて、ジフェニルイソプロピルシリルクロライド1.23g(塩化イソプロピルマグネシウムとジクロロジフェニルシランからの合成品:第4版実験化学講座24 有機合成VI 145頁参照。)を用いた以外は合成例1と同様にして反応を行い、下記式(7)で表されるN−(ジフェニルイソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:250℃/80Pa)(シラン化合物B)1.12gを得た。(収率53%)
なお、得られたN−(ジフェニルイソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの赤外線吸収スペクトルを図3に、NMRスペクトルを図4にそれぞれ示す。
N−トリ(イソプロピル)シリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランの赤外吸収スペクトルを示す図である。 N−トリ(イソプロピル)シリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランのH−NMRスペクトルを示す図である。 N−(ジフェニルイソプロピル)シリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランの赤外吸収スペクトルを示す図である。 N−(ジフェニルイソプロピル)シリル―γ―アミノプロピルトリエトキシシランのH−NMRスペクトルを示す図である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)又は(2)で示されることを特徴とするシラン化合物。
    [式(1)及び(2)中、Rは炭素数3〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
  2. 前記Rが炭素数3〜12の分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基であることを特徴とする請求項1記載のシラン化合物。
  3. 前記R、R、R、R、R及びRにおいて、前記シクロアルキル基の炭素数が4〜8であることを特徴とする請求項1記載のシラン化合物。
  4. 前記Rが炭素数3〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、又はフェニル基であり、前記R及びRがそれぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基又はフェニル基であり、前記R、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であることを特徴とする請求項1記載のシラン化合物。
  5. 前記Rがイソプロピル基、t−ブチル基又はフェニル基であり、前記R、R及びRがエチル基であることを特徴とする請求項4記載のシラン化合物。
  6. 下記一般式(1)又は(2)で示されるシラン化合物を含有してなる一液性のエポキシ系接着剤。
    [式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
  7. 下記一般式(1)又は(2)で示されるシラン化合物を含有してなるアクリレート系接着剤。
    [式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
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