JP4645072B2 - エンプラ系熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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種々検討されてきた中の一つにオレフィン系重合体の添加による改質技術がある。
例えば、エチレン−プロピレン共重合体やエチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体に代表されるエチレン−α−オレフィン系共重合体は、比重が小さく、良好なゴム的性質を有し、耐水性にも優れることから、それらをエンプラ系熱可塑性エラストマーに配合してエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物を得、軽量化とともにエンプラ系熱可塑性エラストマーの耐水性などの物性を改善しようとすることが検討されている。
上記欠点を解決するために、極性官能基を有するビニル単量体を用いてグラフト変性したエチレン−α−オレフィン系共重合体を、エンプラ系熱可塑性エラストマーに配合する方法が提案された。
例えば、無水マレイン酸のような酸無水物基やグリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するビニル単量体を用いてグラフト変性したエチレン−プロピレン系共重合体を配合する方法(例えば、特許文献1参照)、2−ヒドロキシエチルメタクリレートのような水酸基を有するビニル単量体を用いてグラフト変性したエチレン−プロピレン系共重合体を配合する方法(例えば、特許文献2参照)が開示された。
また、前記グラフト変性がラジカル反応を利用して行われるので、架橋反応、減成反応、ビニル単量体の単独重合などの副反応を伴ったり、未反応のビニル単量体が残存し易い。そのため、変性時にエチレン−α−オレフィン系共重合体の物性が損なわれたりする。したがって、再現性がよく物性が一定の範囲にあるグラフト変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を工業的に生産するのは難しく、安定な供給源として根本的な問題があった。
本発明の目的は、エンプラ系熱可塑性エラストマーと水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体とからなる、相溶性、耐水性に優れたエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物を提供することである。
本発明のエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物は、A成分のエンプラ系熱可塑性エラストマー50〜99重量%、好ましくは55〜95重量%とB成分の水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体1〜50重量%、好ましくは5〜45重量%からなる。
エンプラ系熱可塑性エラストマー組成物中のエンプラ系熱可塑性エラストマーの割合が50重量量%未満の場合、すなわち水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体の配合量が50重量%を超える場合、エンプラ系熱可塑性エラストマーの耐摩耗性や機械的強度などが損なわれるおそれがある。一方、エンプラ系熱可塑性エラストマーの割合が99重量%を越える場合、つまり水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体の配合量が1重量%未満の場合、エンプラ系熱可塑性エラストマーの相溶性、耐水性が十分に改良されないおそれがある。
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
プロピレンを含む単量体混合物を共重合したエチレン−α−オレフィン系共重合体からは水酸基を効率よく導入した水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体が得られ、これを配合したエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物において、相溶性、耐水性の改良効果が高まる。
これら非共役ジエンの中で好ましいのは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,9−デカジエンであり、特に好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
エチレン−α−オレフィン系共重合体の代表例として、市販されている商品としては、JSR(株)製のJSR−EP、三井化学(株)製の三井EPT、住友化学工業(株)製のエスプレン、(株)デュポン・ダウ・エラストマーズ製のノーデルなどが挙げられる。
上述のヒドロペルオキシ基含有過酸化物は、純品形態の他にトルエン、クメン、水などの溶媒や、シリカなどの不活性固体で希釈した状態で使用することができる。
このラジカル発生剤としては、好ましいのは10時間半減期温度が135℃以下および1分間半減期温度が195℃以下のラジカル発生剤、より好ましくは10時間半減期温度が30〜130℃および1分間半減期温度が90〜190℃のラジカル発生剤である。
好ましい有機過酸化物としては、例えばジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t-ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、ベンゾイルペルオキシド、4−メチルベンゾイルペルオキシド、ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネートが挙げられる。
なお、ここでラジカル発生官能基とは、例えば、ラジカル発生剤が有機過酸化物の場合にはペルオキシ結合を示し、またアゾ化合物の場合にはアゾ結合を示す。
これらの中で、加熱処理する方法が好ましい。特に、エチレン−α−オレフィン系共重合体にヒドロペルオキシ基含有過酸化物、またはヒドロペルオキシ基含有過酸化物および該ヒドロペルオキシ基含有過酸化物の10時間半減期温度以下の10時間半減期温度を有するラジカル発生剤を組合せ添加し、加熱処理する方法は、エチレン−α−オレフィン系共重合体への水酸基の導入効率が高くなり、この水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体をエンプラ系熱可塑性エラストマーに配合すると相溶性、耐水性に優れたエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物が得られるので好ましい。
これらの中では、経済性、均一混合性、および溶媒への水酸基導入反応などの溶媒が関与する副反応を回避できる点から、混練して混合物を調製する方法が好ましい。
また、混練装置を利用する場合には、混練する手段と加熱する手段とを組み合わせることもできる。なお、その際、加熱する時期としては混練と加熱を同時に行なう場合や、混練後に加熱する場合など、適宜行うことが可能である。また、混練時に十分なせん断熱が発生する場合は、その熱を加熱手段として利用することもできる。
加熱時の温度がヒドロペルオキシ基含有過酸化物の10時間半減期温度より低い場合には、ヒドロペルオキシ基含有過酸化物の分解速度が遅いため、水酸基の導入効率が低くなるおそれがあり、一方、加熱時の温度がヒドロペルオキシ基含有過酸化物の1分間半減期温度を越える場合にはヒドロペルオキシ基含有過酸化物が急激に分解するため、同様に水酸基の導入効率が低くなるおそれがある。
何れの場合にも、得られた水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体をエンプラ系熱可塑性エラストマーに配合しても相溶性、耐水性の改良効果が小さくなる。
好ましい温度範囲は、ラジカル発生剤の10時間半減期温度からヒドロペルオキシ基含有過酸化物の1分間半減期温度よりも10℃低い温度の間である。
加熱時の温度が、ラジカル発生剤の10時間半減期温度より低いときにはラジカル発生剤のラジカル発生速度が遅いため、エチレン−α−オレフィン系共重合体への水酸基の導入効率が低くなるおそれがあり、また、ヒドロペルオキシ基含有過酸化物の1分間半減期温度を越える場合にはラジカル発生剤が急激に分解するため、同様に水酸基の導入効率が低くなるおそれがある。何れの場合にも、得られた水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体をエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物に配合しても相溶性、耐水性の改良効果が小さくなる。
上記無機充填剤としては、粉粒状、平板状、鱗片状、針状、球状、中空状、繊維状などのいずれの充填剤も使用できる。具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、珪藻土、タルク、アルミナ、珪砂、ガラス粉、酸化鉄、金属粉、グラファイト、炭化珪素、窒化珪素、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボンブラックなどの粉粒状充填剤;雲母、ガラス板、セリサイト、パイロフィライト、アルミフレーク、黒鉛などの平板状もしくは鱗板状充填剤;シラスバルーン、金属バルーン、ガラスバルーン、軽石などの中空状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ウィスカー、金属繊維、シリコーンカーバイト繊維、アスベスト、ウオストナイトなどの繊維状充填剤などの例を挙げることができる。
有機充填剤としては木粉などが挙げられる。
核剤としては、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩;メチレンビス(2,4−ジ−t-ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩;タルク、フタロシニン誘導体などが挙げられる。
CHP:クメンヒドロペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルH−80、純度:80%、10時間半減期温度:158℃、1分間半減期温度:254℃)
TBHP:t−ブチルヒドロペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルH−69、純度:69%、10時間半減期温度:167℃、1分間半減期温度:261℃)
HC:1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサC、純度:70%、10時間半減期温度:91℃、1分間半減期温度:154℃)
TPU:ポリウレタン系熱可塑性エラストマー((株)クラレ製、商品名:クラミロンU9180)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(1)ムーニー粘度:JIS K 6300−1によりムーニー粘度(ML1+4、100℃)を求めた。
次に、そのキシレン溶液を多量のメタノール中に入れてポリマーを再沈殿させた。再沈殿したポリマーを再び熱キシレン中に溶解後、多量のメタノール中に投じて再沈殿させた。再沈殿ポリマーを乾燥した後、フィルム化して、赤外吸収スペクトル(IR)を測定した。水酸基がエステル化されたことに由来する1740cm−1の吸収強度を定量することにより、ポリマーに対する水酸基導入量(mol/kg)を求めた。
200℃に予熱した加圧型ニーダー(モリヤマ(株)、容量3.5リットル)にEPDM100部を入れた後、混練しながらCHP3.8部を添加し、樹脂温度が180℃に達するまで混練を継続した。次いで、混練物をシリンダー温度180℃に設定された押出機に供給した。押出物を水で冷却しペレット化した後、乾燥することにより水酸基変性エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(以下、変性EPDM−1と略記)を製造した。
次に、上記変性EPDM−1について、ムーニー粘度および水酸基導入量を求めた。その結果を表1に示す。
参考例1においてCHP3.8部の代わりにTBHP2.6部を使用した他は、参考例1に準じて実施し、水酸基変性エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(以下、変性EPDM−2と略記)を製造し、ムーニー粘度および水酸基導入量を測定した。その結果を表1に示す。
参考例1においてCHP3.8部の代わりにCHP1.9部を使用した他は、参考例1に準じて実施し、水酸基変性エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(以下、変性EPDM−3と略記)を製造し、ムーニー粘度および水酸基導入量を測定した。その結果を表1に示す。
150℃に予熱した加圧型ニーダー(モリヤマ(株)、容量3.5リットル)にEPDM100部を入れた後、混練しながらCHP3.8部とHC0.5部(CHPに対するHCの添加モル比はラジカル発生官能基基準で0.13)を添加し、樹脂温度が150℃に達するまで混練を継続した。次いで、混練物をシリンダー温度180℃に設定された押出機に供給した。押出物を水で冷却しペレット化した後、乾燥することにより水酸基変性エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(以下、変性EPDM−4と略記)を製造し、ムーニー粘度および水酸基導入量を測定した。その結果を表1に示す。
参考例4においてCHP3.8部の代わりに水酸基を有するビニル系単量体であるHEMAをCHPと同じ添加モルに相当する2.6部使用した他は参考例4に準じて実施し、水酸基変性エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(以下、変性EPDM−Cと略記)を製造し、ムーニー粘度および水酸基導入量を測定した。その結果を表1に示す。
なお、水酸基導入量は、アセチル化処理工程は省略し、HEMAグラフトに由来する1725cm−1(IR)の吸収強度を定量することにより求めた。
表1の結果より、ビニル単量体(HEMA)を使用する方法は、架橋反応などの副反応が起こるため、ムーニー粘度が上昇し、水酸基の導入効率が低いことが明らかとなった。
TPU70部および参考例1で得た変性EPDM−1(30部)をバンバリーミキサーを用いて、回転数100rpm、170℃の条件で10分間混練した。混練物を180℃でプレス成形して平板状の試験片(2mm厚)を作成し、分散粒子径、引張強度および引張強度保持率に関する物性評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例1において水酸基変性エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体の種類と配合量を表2の通りに代えた他は、実施例1に準じて実施し、分散粒子径、引張強度および引張強度保持率に関する物性評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例1において変性EPDM−1の代わりに未変性のエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体(EPDM)を使用した他は、実施例1に準じて実施し、分散粒子径、引張強度および引張強度保持率に関する物性評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例1において変性EPDM−1の代わりに参考例5で得た変性EPDM−Cを使用した他は、実施例1に準じて実施し、分散粒子径、引張強度および引張強度保持率に関する物性評価を行った。その結果を表2に示す。
表1に示したように、本発明の組成物に配合される水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体は、変性に使用した原料のエチレン−α−オレフィン系共重合体とムーニー粘度がほとんど変わらないことがわかる。すなわち、原料のエチレン−α−オレフィン系共重合体の物性を保持した水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体である。
一方、比較例2の組成物に配合されるビニル単量体を使用して変性したエチレン−α−オレフィン系共重合体は、原料のエチレン−α−オレフィン系共重合体に比べムーニー粘度が著しく上昇していることがわかる。すなわち、架橋反応により原料のエチレン−α−オレフィン系共重合体の物性が損なわれていることがわかる。従って、表2に示した実施例5と比較例2との比較から明らかなように、水酸基導入量が同じである水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体を同量配合しても、本発明の組成物の方が相溶性、耐水性が優れることがわかった。
Claims (4)
- エンプラ系熱可塑性エラストマー(A)50〜99重量%と、ヒドロペルオキシ基含有過酸化物を用いてエチレン−α−オレフィン系共重合体を変性した水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体(B)1〜50重量%とからなるエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物。
- 水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体(B)が、エチレン−α−オレフィン系共重合体100重量部に対してヒドロペルオキシ基含有過酸化物を0.1〜20重量部の割合で用いて、該ヒドロペルオキシ基含有過酸化物の10時間半減期温度から1分間半減期温度の間で加熱して得られる水酸基変性エチレン−α−オレフィン系重合体である請求項1に記載のエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物。
- 水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体(B)が、エチレン−α−オレフィン系共重合体100重量部に対してヒドロペルオキシ基含有過酸化物を0.1〜20重量部の割合で用い、さらにラジカル発生官能基の基準で該ヒドロペルオキシ基含有過酸化物のヒドロペルオキシ基1モルに対して該ヒドロペルオキシ基含有過酸化物より低い10時間半減期温度を有するラジカル発生剤を0.001〜1モルの範囲で用いて、該ラジカル発生剤の10時間半減期温度から該ヒドロペルオキシ基含有過酸化物の1分間半減期温度の間で加熱して得られる水酸基変性エチレン−α−オレフィン系重合体である請求項1に記載のエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物。
- 水酸基変性エチレン−α−オレフィン系共重合体(B)が1kgあたり0.001〜1モルの水酸基を有し、かつそのムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10〜250である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンプラ系熱可塑性エラストマー組成物。
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