JP4643210B2 - インパクトレンチ - Google Patents
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Description
(1)特許文献1には、トルクレンチの締付力が設定値に達したことを作動油の圧力により開放されるリリーフバルブにより検知し、リリーフバルブを通過する作動油の圧力をピストンに作用させ、ピストンの背部に配設したロッドを介して、パイロットバルブを操作し、空気モータへの高圧空気の供給を遮断するようにしたトルクレンチのシャットオフ機構が記載されている。
(2)特許文献2には、ねじ継手締め付け用の自動動力遮断手段を備え、空圧式モータ、油圧式インパルス発生器、慣性アクチュエータなどを含む起動手段を初期締め付け段階の間、二次慣性部材を介して低速度で駆動させるようにしたインパルス工具が記載されている。
インパクトレンチに適用される回転打撃機構としては、アンビルシャフトの外周と回転するライナの内周部に瞬間的に1回転に1度オイル密閉塞が形成され、その1面をブレード面で受けてトルクを発生させるようにしたブレードタイプのものと、オイル密封が安価にできるピストンタイプのものとがある。以上のような回転打撃機構を備えたオイルパルスレンチなどを含むインパクトレンチに関連して、例えば以下のような技術のものが知られている。
(3)特許文献3には、モータのロータ軸に連結された回転円筒体の円形内周面にその内周面から内方に突出する突出部を設け、ハンマの先端部が出力軸の基部から半径方向に出没自在となるように嵌合させると共に、出力軸の基部とハンマの肩部との間にスプリングを介設し、突出したハンマの先端部に突出部が衝突して出力軸を回転させるようにしたインパクトレンチが記載されている。
(4)特許文献4には、回転ハンマの内周面に設けたカム摺動面の中心を回転軸芯から偏心させてカム摺動面を形成し、回転ハンマ内に同軸芯上に回転自在に設けているアンビル上のアンビル片の先端カムがカム摺動面に摺動しながらカム通過溝に近づくに従って徐々にその傾き角度を大きくさせてアンビル片と回転ハンマの打撃突起との打撃接触幅を増大させるようにしたインパクトレンチが記載されている。
(5)特許文献5にはライナの1回転につき1打撃する以下のような構成の油圧式トルクレンチが記載されている。すなわち、この油圧式トルクレンチは、ロータにて回転されるライナに繭形をしたライナ室を形成し、ライナの内周面に4つのシール面を設け、この内、2つのシール面をライナの内周面とライナの長軸線との交点上に直線形状に形成し、他の2つのシール面を打撃トルク発生時の2つの高圧室容積が同じ容積となるようにライナ室を区画すると共に、ライナの中心軸と平行又は中心軸と垂直な面内に、かつ2つのシール面が互いに180°回転非対称になるように形成し、主軸に打撃トルク発生時直線形状に形成した2つのシール面に摺接する2枚の羽根を配設すると共に、主軸の外周面に打撃トルク発生時他の2つのシール面に摺接する2つのシール面を形成し、これにより、ライナの1回転につき1回の打撃トルクを発生させる構造になっている。
(6)特許文献6にはライナの内周に2箇所の突起部が対向して形成されアンビルシャフトがその軸心と垂直方向に2つのピストンがそれぞれ対向して形成され、前記ピストンの外側にローラがライナ内壁面にコロガリ接触可能に配設されたインパクトレンチが記載されている。そのピストンのアンビルシャフト中心部に各ピストンをライナ内壁面に向かって張り出す略楕円形のカムがライナと同時回転可能に配設されている。こうして、カムの動きに連動して1回転に1回オイル密封可能にする逆止弁によりオイルパルスを発生させる構造になっている。
(1)特許文献1に記載のインパクトレンチ(トルクコントロールトレンチ)では、パイロットバルブを介してシャットオフ機構が作動されるのでその動作しきい値の調整や設定が困難である。このため、インパクトレンチに装着されるボルトナットなどの形態や操作状況に応じて、シャットオフ機構の動作条件を適正に設定して作動させることができない場合があるという課題があった。また、装置構成が複雑となるパイロットバルブなどを必要とするために、コスト面やメンテナンス面で不利になりやすいという課題があった。
(2)特許文献2に記載のインパクトレンチ(トルクインパルス工具)では、二次慣性部材を介したシャットオフ構造はボルト締付作業においてボルトが着座するまでのフリーランニングが長い時、初打撃に二次慣性部材が働いてトルク感知のばらつきを生じる。このばらつきを補正するために二段階の二次慣性部材を組み込むなど、その構造を複雑化せざるを得ず経済的に不利である。また、シャットオフ機構を必要としない作業を行なう際には、常時シャットオフ機構が働くためにかえってトルクレンチの操作性が悪くなる場合があるという課題があった。
(3)特許文献3に記載のインパクトレンチでは、ロータと直結した略円筒状のライナに突出部を内径側に向かって隆起させ、突出部を打撃するハンマを反対側に押し出す機構となっている。これは構造上ハンマを長手方向にして打撃部を中央に前後にハンマを押し出すためのカムの役目を持たせて1回転に1打撃の機能を持たせている。このようなインパクトレンチでは、精密なカム機構を必要とするために複数の打撃構造を組み合わせて偶力を発生させる場合には、その構造が複雑化、大型化して偶力打撃による効果を充分に発揮させることができない。また、この打撃機構の配置に対称性がないことに加えて金属のハンマと金属のライナとが直接機械的に叩き合う構造のため無負荷回転や打撃時のバランスが悪く振動が大きいという課題があった。さらに、ライナ内にオイルを充填してこのオイルを密封してオイルパルスを発生させるようなオイルパルス式のインパクトレンチではないために、締付け作業時のトルク精度にバラツキが多いという課題があった。
(4)特許文献4に記載のカム機構により被打撃部を進退させるようにしたインパクトレンチでは、衝撃力がカム部材に直接負荷されるために長期にわたる耐久性やメンテナンス性に欠けると共に、これらを高強度材で構成してなる装置が複雑となって部品加工工程や組み立て工程が複雑化してコスト高となり易く、オイルパルス構造にまで発展できないという課題があった。
(5)特許文献5に記載のオイルパルスレンチでは、主軸に一対の羽根を回転軸芯に対称に配設しながら、ライナの1回転につき1回の打撃トルクを発生させる構造であるが、打撃トルク発生時に必要なオイル密閉室の形成において、繭状の室全周の囲い面をシールする必要があり、全面摺動しながら形成する5面で囲まれた繭形状を全面シールするための加工精度が必要で、この精度によるオイルの密閉如何でパルス性能が左右される構造となっている。また、性能アップを図るべく、ライナの1回転につき1回の打撃トルクを発生させるようにするには、主軸のシール突起部を軸線から外した非対称形状にし、相手側のライナの内周面のシール突起部も同様に軸線上から外し、非対称形状にする等して、1回転に1打撃するための精密加工技術を要し、高コストとなる繭状の密閉室形成に伴って製造やメンテナンスに課題があった。
(6)特許文献6に記載のオイルパルスレンチでは、アンビルシャフトの軸心と垂直方向に同一断面上で対向して一対のピストン及びローラがロータ軸に連結された回転円筒体の内周に突出する同一断面上で対向して一対の突出部により偶力で回転トルクを発生させる。半回転毎に偶力トルクを発生させると、その打撃時に充分な回転スピードが得られないままオイルの圧縮工程に入るため打撃力が不足してこれを防ぐ工夫が必要となる。すなわち、ピストン内部の被圧縮油を1回転に1回だけ打撃時と同期して密封する逆止弁構造を持ったカムが内在するため、密封室の面積が極端に狭くなってオイルの早期劣化やメンテナンスに問題があった。又、この逆止弁構造における一対のピストンは、構造的にどうしても無駄な往復運動を1回転に1回行わざるを得なくなる。さらに、このような逆止弁構造を付加するため、油槽調整用のリリーフバルブが作れない。さらに中心部のみ発生する高圧油からトルク発信信号を取り出すことが不可能なため、シャットオフ機構付きの製品に適用する場合は、複雑な構造を取らざるを得ないという欠点があった。
(2)本発明のインパクトレンチは、前記(1)において、前記回転打撃機構が、前記ライナ内側に前記ライナと同軸に回転自在に配置されたアンビルシャフトと、前記アンビルシャフトの回転軸に直交して前記アンビルシャフトに設けられたシリンダと、前記シリンダに嵌合してスライド自在に取り付けられたピストンと、前記シリンダ内と前記アンビルシャフト外側とを連通するオイル通路と、前記ピストンの先側に把持され前記ライナの内壁面に弾性手段を介して圧着して転動されるローラ状やボール状の転動部材と、回転される前記ライナの内壁面に隆起して形成され前記転動部材を打撃する突設部と、を有することを特徴とする。
(3)本発明のインパクトレンチは、前記(2)において、前記ライナのオイルを前記ピストンの基部が嵌合された前記シリンダ内に導入する逆止弁が前記オイル通路に設けられていることを特徴とする。
(4)本発明のインパクトレンチは、前記(2)又は(3)において、前記回転打撃機構が同軸に複数段連結され、前記ライナの突設部及び前記ピストン、前記転動部材の対が互いに回転対称状に配置されていることを特徴とする。
(5)本発明のインパクトレンチは、前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記空気モータを駆動した空気を前記回転打撃機構に形成された排気通路に供給して前記回転打撃機構を冷却することを特徴とする。
(2)本発明によれば、ライナに充填されたオイルがオイル通路を介してピストンを保持するシリンダ内に流入可能に配設することができるので、突設部(打撃部)が転動部材(被打撃部)に圧着又は打撃する際の打撃トルクの伝達性や各部材間の潤滑性、静粛性に優れている。さらに、単純な構造でオイルパルスなどを発生させる回転打撃機構(オイルパルス発生機構)を構成でき、長期にわたる耐久性やメンテナンス性、経済性にも優れている。
(3)本発明によれば、ライナの内壁面の内側に隆起した突設部が前記ピストンに把持された転動部材に圧着(又は打撃)される時にピストンが嵌合したシリンダ内部のオイルが逆止弁によって、密閉状態に保持され、転動部材及びピストンの没入が阻止されて転動部材を効果的に圧着できる。また転動部材が前記ライナの突設部を越えて回転した後は、逆止弁を介してシリンダ内部にアンビルシャフト外周のオイルが供給されて転動部材の先側を伸張させた状態で回転させることができる。こうして、転動部材と突設部との圧着又は衝突時点で被圧着部となる転動部材を確実に支持してこの打撃力を効果的にアンビルシャフトに伝達することができる。
(4)本発明によれば、回転打撃機構を回転対称状に複数配置して、アンビルシャフトの回転軸に偶力モーメントを負荷し、1回転に1打撃させるためのカム機構などの複雑な構造を要することなく実現できるため、打撃効率を高め小型化を容易にできると共に、回転部分による振動や騒音などを少なくして安定した打撃状態を維持させることができる。
(5)本発明によれば、発生トルクの精度に大きな影響を及ぼす回転打撃機構の温度上昇を防いで安定した打撃性能を確保できる。これによって、従来のブレードタイプのオイルパルス構造において、回転シール部に打撃時に発生する高圧油が作用し回転抵抗と同時に発熱し、オイルの熱膨張によるロック現象や温度変化によるオイル特性の変化に伴う出力精度のバラツキや乱れなどによって使用条件が制限されるような問題を解決することができる。
以下、本発明の実施例についてより具体的に説明する。図1は本発明の実施例1に係るインパクトレンチの正面断面図であり、図2は同インパクトレンチの側面図である。図1及び図2において、10は実施例1のインパクトレンチ、11はインパクトレンチ10の本体ケーシング、12はボルトナットなどがその先部に嵌合して装着されるソケット、13はソケット12に打撃力を負荷しながら回転駆動させるためのインパクトレンチ10の回転打撃機構、14は回転打撃機構13に回転駆動力を付与するための空気モータ、15はインパクトレンチ10の把持部を兼ねた空気モータ14に圧縮空気を供給するための給気部、1は回転打撃機構13における作動用オイルに連通された減圧装置、2は減圧装置1により減圧されたオイルの油圧力により駆動され空気モータ14の軸芯位置に配置された駆動ロッド、3は駆動ロッド2に連動して空気モータ14への高圧空気の供給を遮断するシャットオフバルブ、4は駆動ロッド2の後端にコイルばねなどの弾性部材5を調整自在に配置して所定の押圧力を付加するための圧力設定手段、6は減圧装置1、駆動ロッド2、圧力設定手段4などを含むシャットオフ機構を経由して高圧空気を空気モータ14に供給するトルクコントロール回路とシャットオフ機構を迂回させて高圧空気を空気モータ14に供給する非トルクコントロール回路とに切り換えるための切換レバー7を備えた回路切換バルブである。
図10は本発明の実施例2に係るインパクトレンチの回転打撃機構を示す正面断面図である。図10において、20はオイルパルスレンチとは異なるクッションクラッチ式のインパクトレンチに適用される回転打撃機構、21は空気モータ14に接続されて回転されるライナ、22はライナ21の潤滑油室23内に回転自在に配置されたアンビルシャフト、24はアンビルシャフト22の回転軸に直交して形成されたシリンダ、25はシリンダ24にその底部の弾性部材26を介して嵌合挿入されて回転軸と垂直方向に付勢されスライド自在に取り付けられたピストン、27はピストン25の先側に把持されライナ21の内壁面に圧着してコロガリ転動されるローラ状やボール状の転動部材、28はシリンダ24内と潤滑油室23とをそれぞれ連通する潤滑オイル及びエア通路、29はライナ21の内壁面に山形状に隆起して突設されピストン25に把持された転動部材27を打撃してアンビルシャフト22に回転打撃による衝撃力を負荷するための突設部である。
1a ボール弁
1b コイルバネ
1c 弁座
1d 油室
1e 減圧ボックス
1f オリフィス
2 駆動ロッド
2a ピストン
3 シャットオフバルブ
4 圧力設定手段
4a 弁部
4b 弁座部
4c 弾性部材受部
5 弾性部材
6 回路切換バルブ
7 切換レバー
10 インパクトレンチ
11 本体ケーシング
12 ソケット
13 回転打撃機構
13a ライナ
13b、13b' 油室
13c アンビルシャフト
13d、13d' シリンダ
13e ローラ圧着部
13f 逆止弁
13f' 逆止弁
13g、13g' 突設部
13h コイルバネ(付勢手段)
13i、13i' ローラ(転動部材)
13j、13j' ピストン
13k、13k' 油室
13l リリーフバルブ
13m ロックスクリュー
14 空気モータ
14a 駆動軸
14b ロータ支持部
14c 空気室
14d ロータ部
15 給気部
15a 給気レバー
15b エアホース連結部
16a 排気通路
16b 排気口
16c 排気通路
16d 大気排出部
17 ボール状弁体
18 キャップ部
20 回転打撃機構
21 ライナ
22 アンビルシャフト
23 潤滑油室
24 シリンダ
25 ピストン
26 弾性部材(付勢手段)
27 転動部材
28 潤滑オイル及びエア通路
29 突設部
Claims (5)
- 空気モータで駆動される円筒状のライナの回転によりボルトナットなどの取付部材が取り付けられるアンビルシャフトに間欠的な打撃力を付加する回転打撃機構を備えたインパクトレンチにおいて、
前記ライナ内の作動用オイルに連通され打撃時に発生する油圧を所定値に調整させる減圧装置と、前記減圧装置を通過したオイルの油圧力によりその軸方向に駆動される駆動ロッドと、前記駆動ロッドに連動して前記空気モータへの高圧空気の供給を遮断するシャットオフバルブと、前記駆動ロッドの後端に弾性部材を調整自在に配置して所定の押圧力を付加する圧力設定手段と、を備えた空気モータのシャットオフ機構を有し、
さらに、前記シャットオフ機構を経由して高圧空気を前記空気モータに供給するトルクコントロール回路と前記シャットオフ機構を迂回させて高圧空気を前記空気モータに供給する非トルクコントロール回路とに切り換える回路切換バルブを備えたことを特徴とするインパクトレンチ。 - 前記回転打撃機構が、前記ライナ内側に前記ライナと同軸に回転自在に配置されたアンビルシャフトと、前記アンビルシャフトの回転軸に直交して前記アンビルシャフトに設けられたシリンダと、前記シリンダに嵌合してスライド自在に取り付けられたピストンと、前記シリンダ内と前記アンビルシャフト外側とを連通するオイル通路と、前記ピストンの先側に把持され前記ライナの内壁面に弾性手段を介して圧着して転動されるローラ状やボール状の転動部材と、回転される前記ライナの内壁面に隆起して形成され前記転動部材を打撃する突設部と、を有することを特徴とする請求項1記載のインパクトレンチ。
- 前記ライナのオイルを前記ピストンの基部が嵌合された前記シリンダ内に導入する逆止弁が前記オイル通路に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のインパクトレンチ。
- 前記回転打撃機構が同軸に複数段連結され、前記ライナの突設部及び前記ピストン、前記転動部材の対が互いに回転対称状に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のインパクトレンチ。
- 前記空気モータを駆動した空気を前記回転打撃機構に形成された排気通路に供給して前記回転打撃機構を冷却することを特徴とする請求項1〜4の内いずれか1項に記載のインパクトレンチ。
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