JP4638011B2 - 防災受信盤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル内等の悪環境の空間内の火災を監視する光学式火災検知器の状態を監視する防災監視システムの防災受信盤に関し、特に、火災検知器に設けている透光性窓の汚損度合いを監視する機能を備えた防災監視システムの防災受信盤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばトンネル内の壁面や天井にはトンネル内の火災を検出する火災検知器が複数一定間隔で設置され、各火災検知器はトンネル長手方向の両側区域、少なくとも隣接して配置される火災検知器までの区域の火災を検出している。このような火災検知器としては、炎からの光や放射熱を受ける受光素子を用いて火災を検出し、防災受信盤へ火災信号を送出する。
【0003】
火災の検出の方法としては、特定の波長帯域の受光エネルギーの出力レベルが閾値以上かを検出する方法や、複数の波長帯域の受光エネルギーの出力レベルの比較で火災判断する2波長式、3波長式などがある。火災検知器は設置位置に対して左右両側の火災を検出するために、左右別々の受光素子で火災を検出するようにしている。
【0004】
このような火災検知器は、車が頻繁に通るトンネル内に設置されるものであるから、受光素子が壊れたり汚れないように筐体内に納め、受光素子の前面に光を入射させる透光性窓を設けている。しかし、トンネル内では、車両から排出される煤煙、粉塵、土砂、凍結防止剤等の化学物質等の汚れの原因となる汚損原因物質が浮遊していることから、これらの物質が気流に乗って火災検知器に付着すると、受光素子の受光出力が低下する。
【0005】
そこで、火災検知器の透光性窓の外部に試験光源を設け、例えば1日に1回といった定期試験時に発光させ、透光性窓内部の受光素子で受光させることで、透光性窓の汚損度合い、例えば減光率を検出して、汚れがあるレベル、例えば減光率75%に達すると汚損予告を出力し、また火災検出能力が補完できないレベル、例えば減光率85%に達すると汚損警報を出力している。
【0006】
施設管理者は、防災受信盤で汚損予告が出力されると、1〜2週間後の近い内にいずれ汚損警報が出されることが判るので、火災検知器の透光性窓を清掃するために清掃事業者等に対する手配などを準備し、汚損警報が出力されたら適切な時期に清掃の指示を出すようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トンネル内に設置している火災検知器が汚れる度合いは、設置場所や季節により異なるため、汚損予告が出力されてから汚損警報が出力されるまでの期間がまちまちであり、汚損警告までの期間が長すぎた場合には不必要に汚損予告が出されたこととなり、清掃回数が多くなる。
【0008】
また汚損の進行が激しい場所に設置された火災検知器の場合には、次の日の定期試験までの間に減光率が85%に達し、汚損予告が出力されずに汚損警報が出力されてしまい、清掃作業が行われるまで汚損した火災検知器では火災監視ができないという問題点があった。
【0009】
本発明は、汚損予告から汚損警報までの期間的なばらつきを少なくしてトンネル内に設置している火災検知器が清掃管理を行い易くしたトンネル防災システムの防災受信盤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。
【0011】
本発明は、外部に引き出された伝送路に光学式火災検知器を複数接続した防災受信盤であって、光学式火災検知器から送信される汚損アナログ値信号が所定の予告判定レベルを越えた場合に汚損予告を出力し、汚損予告の出力後に、汚損アナログ値信号が予告判定レベルより高い所定の警報判定レベルを越えた場合に汚損警報を出力する汚損判定部と、汚損判定部の予告判定レベルを必要に応じて調整する判定レベル調整部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで判定レベル調整部は、汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間に基づいて予告判定レベルを自動調整する。例えば、判定レベル調整部は、汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間が短い場合は、予告判定レベルを低下させ、逆に汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間が長い場合は、予告判定レベルを増加させる。
【0013】
また判定レベル調整部は、汚損判定処理中の光学式火災感知器の予告判定レベルを自動調整する場合に、周辺に設置された光学式火災感知器の予告判定レベルを同様に調整する。
【0014】
また本発明は、火災検知器側に汚損判定部を設けている場合にも適用できる。
即ち、本発明は、汚損アナログ値信号が所定の予告判定レベルを越えた場合に汚損予告を出力し、汚損予告の出力後に汚損アナログ値信号が予告判定レベルより高い所定の警報判定レベルを越えた場合に汚損警報を出力する汚損判定部とを備えた複数の光学式火災検知器を、外部に引き出した信号線に接続した防災受信盤であって、汚損判定部の予告判定レベルを必要に応じて調整する判定レベル調整部を備えたことを特徴とする。この場合の判定レベル調整部の詳細は、前述した受信機側で汚損を判定する場合と同じになる。
【0015】
【発明の実施の形態】
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明によるトンネル用の防災監視システムの概略構成の説明図である。図1において、監視室などに設置された防災受信盤1からはトンネル4側に対し伝送路2が引き出されており、この伝送路2に対し本発明の火災検知器3をトンネル4の長手方向の一定間隔Lごとに設置している。
【0017】
火災検知器3はトンネル4の車道のトンネル壁面4aもしくは天井面に設置され、各火災検知器3はトンネル長手方向に沿った両側の区画を監視している。このため、ある区画で車両事故などにより火災が発生して火源Fが発生すると、この区画は両側に位置する火災検知器3が重複して監視しており、火源Fの両側にある2台の火災検知器3が火災を検出して防災受信盤1に火災検出信号を送る。
【0018】
これを受けて防災受信盤1では火災検知器の火災検出信号から火災の発生した区画を判定し、例えばトンネル4の天井面側に設置している水噴霧設備の水噴霧ヘッドを火災の発生した区間について水噴霧自動弁を起動制御して消火用水を散布する。
【0019】
図2は図1の防災監視システムの詳細構成のブロック図である。図2において、防災受信盤1には主制御部5が設けられ、主制御部5に対しては伝送制御部6が設けられている。伝送制御部6からはトンネル4に対し伝送路2が引き出され、トンネル4内に設置した複数の火災検知器3を接続している。またトンネル4内の伝送路2の途中には中継増幅盤7が設けられ、防災受信盤1と火災検知器3との間の伝送信号の中継増幅を行っている。
【0020】
防災受信盤1の主制御部5に対しては、バスを介して操作表示制御部8が設けられ、この操作表示制御部8に対しては表示部9、操作部10及び音響部11を接続している。更に主制御部5に対してはバスを介してプリンタ14が設けられ、防災受信盤1の監視制御に必要な各種のデータをプリントアウトできるようにしている。
【0021】
また、主制御部5に対しては、通信制御部15を介して外部のCRT16が接続されており、防災受信盤1の監視制御に必要な各種の受信情報をCRT16上に表示できるようにしている。
【0022】
主制御部5は、火災検知器3側で例えば1日1回行われる定期試験で検出された透光性窓の汚損度合いを示すアナログ値信号を履歴データとしてメモリに記憶するようにしている。
【0023】
主制御部5には、汚損判定部12と判定レベル調整部13の機能が設けられる。汚損判定部12は、1日1回の定期試験により火災検知器3から送信される汚損アナログ値信号が所定の予告判定レベル、例えば減光率で75%を越えていた場合に汚損予告(プリアラーム)を出力する。また汚損判定部12は、汚損予告の出力後に、汚損アナログ値信号が予告判定レベルより高い所定の警報判定レベル、例えば減光率85%を越えていた場合に汚損警報を出力する。
【0024】
判定レベル調整部13は、汚損判定部12で使用する予告判定レベルを必要に応じて調整する。判定レベル調整部13は、例えば火災検知器3のトンネル内の設置位置および又は季節(月でもよい)に応じた予告判定レベルを予めメモリに記憶しており、設置位置及び季節に基づき対応する予告判定レベルをメモリから読み出して設定する。このため予告判定レベルは、火災感知器3毎に管理され、調整される。
【0025】
図3は、判定レベル調整部13により調整される予告判定レベルの説明図である。図3において、横軸はトンネルにおける火災検知器の設置位置であり、検知器番号[x]=1〜49の49台を設置した場合である。また縦軸は汚損度であり、火災検知器に設けている投光窓の減光率を0%〜100%で表している。
【0026】
まず汚損警報判定レベル100は、全ての火災検知器に対し減光率85%の汚損度として設定されている。これに対し汚損予告レベルは、夏用汚損予告レベル200と冬用汚損予告レベル300の2種類を準備している。
【0027】
この実施形態では、夏用汚損予告レベル200は70〜80%の範囲に設定しており、冬用汚損予告レベル300は60〜77%の範囲に設定しており、夏に対し冬の方が汚損が早いものと見做して高め目に設定している。これにより夏と冬の汚損予告レベル200,300から汚損警報レベル100に到達するまでの日数についてトンネル全体でのばらつきを少なくしている。
【0028】
また夏用及び冬用汚損予告レベル200,300の両方につき、トンネルの出入口に向う程、汚損予告レベルが低くなるように設定している。即ち、7〜43番の火災検知器の汚損予告レベル200,300は、夏用80%、冬用77%と同じ値であるが、出入口に向かう6〜1番及び44〜49番の火災検知器の汚損予告レベルは、夏用は例えば79,78,77,75,73,70%とし、冬用は75,74,72,69,66,60%としている。
【0029】
これはトンネル出入口ほど汚損の度合が強いことから、汚損予告レベルを低めに設定し、汚損警報レベル100に到達するまでの日数ついてトンネル全体でのばらつきを少なくしている。
【0030】
更に、判定レベル調整部13は、汚損予告の出力から汚損警報の出力までの期間に基づいて予告判定レベルを自動調整する機能を備える。この自動調整は、汚損予告の出力から汚損警報の出力までの日数が例えば3日未満と短い場合は、予告判定レベルを低下させ、汚損予告の出力から汚損警報の出力までの日数が例えば10日を越えて長い場合は、予告判定レベルを増加させ、これによりばらつきを3〜10日の範囲に抑える。この汚損予告レベルの自動調整は、後の説明で詳細に説明する。
【0031】
このように本発明にあっては、汚損予告の判定レベルを固定せず、トンネル内の設置場所や季節に応じて動的に変更可能とすることで、汚損予告を早すぎたり遅すぎだりしない適切なタイミングで出力でき、汚損に対する清掃管理がより行い易くなる。
【0032】
図4はトンネル内の火災を検出する火災検知器の正面図である。図4において、本発明の火災検知器3はカバー3aと本体3bで構成され、カバー3aの左右に形成された傾斜面のそれぞれに透光性窓18a,18bを配置し、透光性窓18a,18bの内部のそれぞれに2波長式の検知センサを内蔵している。 透光性窓18a,18bの上部には試験光源収納部19が設けられ、その下面左右位置に後の説明で明らかにする試験光源を設けている。本体3bに対しカバー3aは、3か所に設けた取付ネジ22により固定される。また火災検知器3に対する信号ケーブル21は防水コネクタ20により接続されている。
【0033】
このような本発明の火災検知器3は、別途準備された収納ボックスに取り付けられ、収納ボックスのフロントパネルから透光性窓18a,18b及び試験光源収納部19の部分をボックス前面に突出した度合いで、収納ボックスによりトンネル壁面に取り付けられる。
【0034】
図5は本発明の火災検知器3の内部構造の断面図である。図5において、火災検知器3はカバー3aと本体3bで構成され、内部にモールドカバー23を設けて仕切っている。本体3bに設けた防水コネクタ20のレセプタクル側からの信号線25は、モールドカバー23の下部に取り付けた避雷基板24にコネクタ接続される。
【0035】
モールドカバー23とカバー3aで形成される空間内には主回路基板26が固定されている。この主回路基板26にはカバー3aの傾斜面に配置している透光性窓18a,18bに相対して、センサ部28a,28bをほぼ45°の傾斜角をもって配置している。
【0036】
センサ部28a,28bのそれぞれには第1検知センサ29と第2検知センサ30が設けられており、この実施形態にあっては、これら第1検知センサ19及び第2検知センサ30のそれぞれの受光検知出力に基づいて火災による炎とそれ以外のノイズ放射源を識別する2波長方式により火災による炎を監視している。
【0037】
カバー3aから張り出された試験光源収納部19の下面両側には試験光源用窓31a,31bが設けられ、内蔵した試験光源の発光による試験光を対応した透光性窓18a,18bを介してセンサ部28a,28bの第1及び第2の検知センサ29,30に照射することで、透光性窓18a,18bの汚損度合いの検出を含む機能試験を判断できるようにしている。
【0038】
ここで第1検知センサ29は、有炎燃焼時にCO2 の共鳴放射による波長帯域である概ね4.5μmを中心波長とした狭帯域バンドパスフィルタ特性による放射光を検出する。これに対し第2検知センサ30は、概ね5.0〜7.0μmの帯域バンドパスフィルタ特性で得られた放射光の検出特性をもつ。
【0039】
具体的には火災検知器3の透光性窓18a,18bにサファイヤガラスを使用することで、7.0μmの波長を超える光をカットするハイカット特性を設定し、これによって透光性窓18a,18bを通った光を波長7.0μm以下として、第1及び第2検知センサ29,30に入射している。
【0040】
また第1検知センサ29自体の検出窓には中心波長4.5μmの狭帯域バンドパスフィルタ特性を構成する光学波長フィルタが設けられている。また第2検知センサ30の検出窓には波長5.0μm以上の光透過する広帯域バンドパスフィルタ特性を持つ光学波長フィルタが設けられている。
【0041】
したがって第1検知センサ29は、中心波長4.5μmの有炎燃焼時に発生するCO2 の共鳴放射による概ね4.5μmの狭帯域の光を検出する。これに対し第2検知センサ30は概ね5.0〜7.0μmのバンドパスフィルタとしての波長帯域の光を検出する。
【0042】
その結果、燃焼炎のスペクトル特性に対しノイズ放射源としての太陽光、トンネル内を走行する車両のエンジン加熱で生ずる300℃の低温放射体のスペクトル、更に人体のスペクトルに対し、正確に火災による炎を識別して検出できる。具体的には、燃焼炎とそれ以外のノイズ放射源である太陽光、車両のエンジンなどの低温放射体、人体等について、実験により第1検知センサ29と第2検知センサ30の各検出出力の相対比を求め、燃焼炎とノイズ放射源が識別可能な相対比の閾値を設定し、閾値を越えるような放射源を検出した場合に火災による炎と判断することで、ノイズ放射源と火災による炎を正確に識別することができる。
【0043】
このような第1検知センサ29と第2検知センサ30に対し、試験光源からの試験光による透光性窓18a,18bの汚損度合いの検出は、第1検知センサ29からの受光検知信号を用いて行う。したがって、この実施形態にあっては、第1検知センサ29が試験光検出用検知センサとなる。
【0044】
尚、試験光源からの試験光は、火災による炎と判断される擬似火災光であることから、試験時に試験光が第1検知センサ29の第2検知センサ30に対し照射されることで、機能が正常であれば火災による炎と判断されることになるため、火災検知器全体としての機能試験が行われることになる。
【0045】
図6は本発明による火災検知器の回路ブロック図である。図6において、火災検知器3には信号処理部32が設けられ、信号処理部32に対し右側検知部33aと左側検知部33bを設けている。右側検知部33aにはセンサ部28aが設けられ、透光性窓18aを介して所定の監視区域からの光を入射して監視している。センサ部28aからの受光検知信号は、増幅部34aで増幅された後、A/D変換器35aでデジタルデータに変換され、信号処理部32に取り込まれている。
【0046】
また右側検知部33aには試験光源制御部37aが設けられ、防災受信盤1から右側試験コマンドを受信した際に試験光源制御部37aを動作し、例えば白熱ランプを使用した試験光源36aを燃焼炎のちらつきとほぼ同様の例えば2Hzの周波数で点滅または明滅して生成した試験光を試験光源用窓31aを介して投光し、この試験光を透光性窓18aを介してセンサ部28aで受光するようにしている。
【0047】
このような右側検知部33aの構成は左側検知部33bについても同様であり、センサ部28b、増幅部34b、A/D変換器35b、試験光源36b及び試験光源制御部37bを備えている。
【0048】
信号処理部32は伝送制御部38を介して防災受信盤1と接続される。伝送制御部38に対しては、アドレス設定部39によって火災検知器3に固有なアドレスが設定されている。防災受信盤1は例えば一定の時間間隔で順番に火災検知器のアドレスを指定して検出データの応答要求のコマンド送信を行っており、伝送制御部38はコマンド信号のアドレスから自己アドレスの一致を判別すると、受信したコマンドデータを信号処理部32に引き渡す。
【0049】
信号処理部32は受信コマンドに従って例えば火災や試験に伴うデータを伝送制御部38を介して防災受信盤1側に送るようになる。また信号処理部32にはEEPROMなどの不揮発メモリを使用した記憶部40が設けられており、火災検知器3の火災監視に必要な初期値データや試験時に得られた透光性窓18a,18bの汚損度合いを示すアナログ値データなどを記憶できるようにしている。
【0050】
信号処理部32には火災判定部41及び試験処理部42の機能が設けられる。
火災判定部41は、センサ部28aから出力される受光検知信号に基づいて火災の判定を行う。具体的には、図5に示した第1検知センサ29と第2検知センサ30の受光検知信号の相対比に基づいた火災判定を行う。
【0051】
試験処理部42は、防災受信盤1から試験実行コマンドを受信した際に動作し、例えば右側検知部33aに対する右側試験実行コマンドの受信を例にとると、試験光源制御部37aを動作して試験光源36aを例えば2Hzで2秒間に亘りパルス駆動し、この試験光源36aの制御で生成された試験光を試験光源用窓31aを介して投光し、透光性窓18aを通してセンサ部28aで検出し、第1の検知センサ29の受光検知信号を増幅部34aで増幅した後、A/D変換器35aで取り込む。この受光検知信号は、試験光の変化に同期した2Hzで変化する信号であり、0Vを中心に受光強度に応じた正負の振幅変化をもっている。
【0052】
この試験光の受光により得られた受光検知信号に基づき、試験処理部42は透光性窓の汚損度合いを検出し、この透光性窓の汚損度合いを示すアナログ値信号を伝送制御部38により防災受信盤1に送信する。また試験処理部42は、試験動作で得られた透光性窓の汚損度合いを示すアナログ値信号を記憶部40に記憶する。
【0053】
試験処理部42は、透光性窓の汚損度合いを示すアナログ値データとして、透光性窓18a,18bの汚れ具合による試験光の減光を表す減光率を算出する。この減光率を算出するため、例えば設置前の透光性窓に汚れのない度合いで検出した試験光の受光検知信号の振幅を初期値として記憶部40に記憶している。
【0054】
したがって、トンネル設置後の試験時にあっては、試験動作により得られた受光検知信号の振幅検出値と、記憶部40に記憶している受光検知信号の振幅初期値とにより、
減光率=100−(振幅検出値/振幅初期値)×100 [%]
として汚損度合いを示す減光率を算出する。また汚損度合いを表すパラメータとしては、減光率以外に透過率を
透過率=(振幅検出値/振幅初期値)×100 [%]
として算出してもよい。実際の汚損度合いの監視にあっては、減光率が汚れの度合いに比例関係にあることから、減光率の算出が望ましい。
【0055】
尚、試験処理部42で透光性窓18a,18bの汚損度合いを求める際には、増幅部34a,34bの感度はその時点の補償された感度ではなく、記憶部40に記憶している受光検知信号の振幅初期値を検出した時と同じ感度(初期感度)に戻した度合いで試験動作を行わせることになる。
【0056】
図7は図6の火災検知器3における火災検知器処理の概略フローチャートである。この火災検知器3の処理動作は、ステップS1で火災監視処理を行い、この状態でステップS2で防災受信盤1からの試験指令があるか否かチェックし、もし試験指令があれば、ステップS3の試験処理に進む。
【0057】
この試験処理は、本発明で対象としている透光性窓18a,18bの汚損度合いの算出を含む機能試験と同時に、算出された汚損度合いに基づいて感度の低下を補償するように増幅部34a,34bの感度切換えを行う汚損補償処理が含まれる。
【0058】
図8は図7のステップS3の火災検知器における試験処理の詳細を示したフローチャートである。通常、防災受信盤1は例えば1日に1回の予め定められた時間の定期試験の再に火災検知器3側に対し検知器アドレスを順番に指定しながら試験実行コマンドを送信する。この試験実行コマンドは右側試験実行コマンド及び左側試験実行コマンドの順番に送られる。
【0059】
図8において、ステップS1で防災受信盤1からの右側試験コマンドを受信すると、ステップS2で信号処理部32が試験処理部42を起動する試験モードを設定し、続いてステップS3で右側検知部33aの増幅部34aの感度を初期状態(振幅初期値を記憶した状態)に戻す感度補償のリセットを行うよう感度切換制御信号を出力する。
【0060】
次にステップS4で試験光源制御部37aを起動して試験光源36aを例えば2Hzで明滅する右側試験光源の点滅制御を行い、試験光を生成する。この状態でセンサ部28aは試験光を透光性窓18aを通して受光しており、増幅部34aから得られた受光検知信号をA/D変換器35aで取り込んで受光データを読み込む。
【0061】
受光データの読込みが済んだならば、ステップS6で右側試験光源の消灯制御を行う。続いてステップS7で、ステップS5で読み込んだ受光データから算出した振幅検出データと記憶部40に記憶している振幅初期値データとに基づき、汚損状態を示すアナログ値データとして例えば減光率を算出し、ステップS8で算出した減光率を記憶部40に順次記憶する。
【0062】
続いてステップS9で、算出した減光率を伝送制御部38を介して防災受信盤1に送信する。この一連の試験処理が済むと、ステップS10で算出した減光率に基づいた感度補償処理を行うことで、右側検知部33aの試験処理を終了する。
【0063】
感度補償としては、例えば算出した減光率に基づいて火災検知器として感度の低下を検出した際に、感度切換制御信号により増幅部34aの増幅度を増加し、感度切換えする処理を行う。尚、減光率が感度の切換えを必要としない範囲の場合には、試験前の感度に戻すよう感度切換制御信号を出力する。
【0064】
続いてステップS11で左側試験処理を行う。この左側試験処理は、ステップS1〜S10の右側試験処理と同じ処理を繰り返すことから、その内容は省略している。このようにして右側検知部33a及び左側検知部33bの試験によって各透光性窓18a,18bの汚損度を示す減光率が防災受信盤1側に送られ、且つ火災検知器自身で記憶されることになる。
【0065】
尚、試験光の発光により正常に火災判断がなされた場合には、火災信号も防災受信盤に対し減光率と一緒に、または別のタイミングで送られることになる。
【0066】
図9は、図6の火災検知器3を対象とした図2の防災受信盤1に設けている主制御部5による定期試験処理のフローチャートである。この定期試験処理は、例えばタイマ監視などにより1日1回、予め決められた時刻に起動する。
【0067】
まずステップS1で感知器アドレスとなる感知器番号XをX=1に初期化した後、ステップS2で感知器番号Xの火災検知器に右側試験実行コマンドを送信する。この右側試験実行コマンドを送信すると感知器番号Xの火災検知器で図8に示したように試験動作が行われ、汚損度合いを示すアナログ値データとして減光率を送信してくる。
【0068】
このためステップS3で感知器番号Xの検知器からの減光率の受信の有無をチェックしており、減光率を受信すると、ステップS4で感知器番号Xのアドレスに記憶する。続いてステップS5で汚損アナログ値として受信した減光率に対する汚損判定処理を実行する。この汚損判定処理の詳細は図10のフローチャートに示す。
【0069】
続いてステップS6で感知器番号Xへ左側試験実行コマンドを送信する。これに続くステップS7〜ステップS9は、ステップS3〜S5の右側試験実行コマンドの送信の場合と同じであり、ステップS9の汚損判定処理は同じく図10のフローチャートに従う。ステップS7〜S9の左側試験実行コマンドに伴う処理が終了すると、ステップS10で全検知器の試験終了の有無をチェックし、終了していなければ感知器番号Xを1つアップして再びステップS2に戻り、全検知器の試験が終了していれば一連の試験処理を終了する。
【0070】
図10は、図9のステップS5及びステップS9で実行される汚損判定処理の詳細を示したフローチャートである。この汚損判定処理は、図2の主制御部5に汚損判定部12により実行されるものであり、同時に判定レベル調整部13において汚損予告レベルの自動調整が行われる。
【0071】
ここで図10の汚損判定処理で使用される各火災検知器ごとのパラメータをまとめると、図11の検知器データ構造に示すようになる。この検知器データ構造は各火災検知器1台ごとに管理されており、検知器番号[x]、汚損アナログ値a[x]、予告処理動作フラグf[x]、汚損予告から汚損警報までの日数をカウントする日数カウントd[x]、及び判定レベル調整部13により調整されるトンネル設置位置[x]と季節「m」で決められる変数としての汚損予告レベルL[x]「m」で構成される。
【0072】
図10において、まずステップS1でそれまでの感知器試験で受信した現在処理対象となっている感知器番号xに対する汚損アナログ値a[x]を取得する。続いてステップS2で清掃判定を行う。この清掃判定は汚損アナログ値a[x]が清掃判定レベルとなる減光率30%未満か否かチェックする。
【0073】
減光率30%未満であれば透光性窓の汚れは清掃状態にあるものと判断し、ステップS3で予告処理動作フラグf[x]をリセットし、図9のメインルーチンにリターンする。
【0074】
ステップS2で汚損アナログ値a[x]が汚損判定レベル30%以上であった場合には、汚損警報判定レベルとして設定した減光率85%と比較する。85%以下であればステップS5に進み、汚損予告レベルL[x]「m」と比較する。汚損予告判定レベルを越えていなければ図9のメインルーチンにリターンする。
【0075】
汚損予告判定レベルを越えていた場合にはステップS6に進み、予告処理動作フラグf[x]が1にセットされているか否かチェックする。初回はフラグf[x]は0にリセットされていることから、ステップS7に進み、予告処理動作フラグf[x]を1にセットし、また日数カウントd[x]を1にセットする。そしてステップS9で汚損予告の出力処理を行う。
【0076】
このようにして一度汚損予告が出力されると、火災検知器の清掃を行わない限り、それ以降の定期試験の際にはステップS1,S2,S4〜S6の処理となり、ステップS6で予告処理動作フラグf[x]が1にセットされていることからステップS8に進み、定期試験ごとに日数カウントd[x]を1つアップする。
【0077】
汚損予告から或る日数を経過すると、ステップS4で汚損アナログ値が汚れ警報判定レベルとなる減光率85%を上回る。この場合にはステップS10に進み、このときの日数カウントd[x]が3日未満か否かチェックし、3日以上であれば、ステップS11で10日を越えているか否かチェックし、10日以内であればステップS14で汚れ警報の出力処理を行う。
【0078】
ステップS10で日数カウントd[x]が3日未満と短かった場合、例えば1日もしくは2日であった場合には、ステップS12に進み、汚損予告判定レベルL[x]「m」を予め定めた一定量、例えば減光率で1%だけ低下させる調整処理を行う。この場合の汚損予告判定レベルの低下調整は、現在処理中の火災検知器のみならず、その周辺に位置する複数の火災検知器について行うようにしても良い。
【0079】
またステップS11で日数カウントd[x]が10日を越えていた場合には、ステップS13に進み、汚損予告判定レベルL[x]「m」を例えば減光率で1%増加させる増加調整処理を行う。この場合にも現在処理中の火災検知器のみならず、その周辺の複数の火災検知器について汚損予告判定レベルの増加調整処理を行うようにしても良い。
【0080】
もちろん、ステップS12及びステップS13における汚損予告レベルの低下調整及び増加調整にあっては、調整後の汚損予告判定レベルの下限と上限を決めており、この下限または上限に達した場合には調整は行わないようにする。
【0081】
なお、上記の実施形態は、図2のように防災受信盤1側に汚損予告及び汚損警報を出すための汚損判定部12を設けた場合を例にとっているが、本発明の他の実施形態として、図6の火災検知器3の信号処理部32に汚損判定部12を設けるようにしても良い。
【0082】
このように火災検知器3側に汚損判定部12を設けた場合には、防災受信盤1に設けている判定レベル調整部13で火災検知器3からの汚損予告信号及び汚損警報信号を受信して、図10の汚損判定処理における汚損予告レベルの自動調整と同様、汚損予告出力から汚損警報出力までの日数に基づいた汚損予告レベルの自動調整を行えば良い。
【0083】
また図3に示したトンネル内の設置位置及び季節に基づいて決められる汚損予告レベルL[x][m]についても、防災受信盤1から対応する各火災検知器を指定して、汚損予告レベルを連想して遠隔設定することになる。
【0084】
また上記の実施形態は2つの検知センサで2波長帯域を監視して火災を判断する2波長方式の火災検知器を使用した場合を例にとっているが、本発明はこれに限定されず、1つの波長帯域を検知センサで監視する1波長方式や3波長以上の波長帯域を監視して火災を判断する火災検知器を使用した場合についても同様に適用できる。
【0085】
また上記の実施形態にあっては、火災検知器を設置して火災を監視する空間としてトンネルについてのみ説明したが、他の悪環境の空間、例えばゴミピット等のプラントや工場、金属、石炭、石油などの採掘孔などにおける火災監視にも適用できる。
【0086】
更に上記の実施形態では、試験処理の中で検出された透光性窓の汚損度合いを示すアナログ値信号を防災受信盤に送信しているが、試験処理以外で防災受信盤から火災検知器に対し透光性窓の汚損アナログ値信号を返信させる制御コマンドを送って汚損アナログ値信号を得るようにしても良い。更にまた、本発明はその目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、また実施形態に示した数値による限定は受けない。
【0087】
【発明の効果】
以上説明してきたように本発明によれば、火災検知器についての汚損予告の判定レベルを固定せず、例えばトンネル内の設置場所や季節に応じて動的に変更可能とすることで、汚損予告が早すぎたり遅すぎたりしない適切なタイミングで出力でき、汚損に対する清掃を含む維持管理をより行い易くすることができる。
【0088】
また汚損予告から汚損警報までの期間に基づき、期間が短すぎる場合は汚損予告レベルを上げ、期間が長すぎる場合には汚損予告レベルを下げるといった自動調整を行うことで、トンネルに設置している複数の火災検知器における汚損予告から汚損警報までの期間的なばらつきを小さくし、不必要に汚損予告が出力されたり、汚損予告が出力されずに汚損警報が出力されてしまうような問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシステム構成の概略ブロック図
【図2】図1のシステム構成の詳細ブロック図
【図3】図2の判定レベル調整部により設定する位置と季節に応じた予告判定レベルの説明図
【図4】本発明による火災検知器の正面図
【図5】本発明による火災検知器の内部構造の断面図
【図6】本発明による火災検知器の回路ブロック図
【図7】図6の火災検知器の処理動作のフローチャート
【図8】図7の試験処理の詳細を示したフローチャート
【図9】図2の防災受信盤の定期試験処理のフローチャート
【図10】図9の汚損判定処理の詳細を示したフローチャート
【図11】図9の汚損判定処理で使用する検知器データ構造の説明図
【符号の説明】
1:防災受信盤
2:伝送路
3:火災検知器
3a:カバー
3b:本体
4:トンネル
4a:トンネル壁面
5:主制御部
6:伝送制御部
7:中継増幅盤
8:操作汚損表示制御部
9:表示部
10:操作部
11:音響部
12:汚損判定部
13:判定レベル調整部
14:プリンタ
15:通信制御部
16:CRT
18a,18b:透光性窓
19:試験光源収納部
20:防水コネクタ
21:信号ケーブル
22:取付ネジ
23:モールドカバー
24:避雷基板
25:信号線
26:主回路基板
28a,28b:センサ部
29:第1検出センサ
30:第2検出センサ
31a,31b:試験光源用窓
32:信号処理部
33a:右側検知部
33b:左側検知部
34a,34b:増幅部
35a,35b:A/D変換器
36a,36b:試験光源
37a,37b:試験光源制御部
38:伝送制御部
39:アドレス設定部
40:記憶部
41:火災判定部
42:試験処理部
Claims (4)
- 外部に引き出された伝送路に光学式火災検知器を複数接続した防災受信盤に於いて、
前記光学式火災検知器から送信される汚損アナログ値信号が所定の予告判定レベルを越えた場合に汚損予告を出力し、汚損予告の出力後に汚損アナログ値信号が前記予告判定レベルより高い所定の警報判定レベルを越えた場合に汚損警報を出力する汚損判定部と、
汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間に基づいて前記予告判定レベルを自動調整する判定レベル調整部と、
を備えたことを特徴とする防災受信盤。 - 汚損アナログ値信号が所定の予告判定レベルを越えた場合に汚損予告を出力し、汚損予告の出力後に汚損アナログ値信号が前記予告判定レベルより高い所定の警報判定レベルを越えた場合に汚損警報を出力する汚損判定部を備えた複数の光学式火災検知器を外部に引き出した信号線に接続した防災受信盤に於いて、
汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間に基づいて前記予告判定レベルを自動調整する判定レベル調整部を備えたことを特徴とする防災受信盤。 - 請求項1又は2記載の防災受信盤に於いて、前記判定レベル調整部は、汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間が短い場合は、前記予告判定レベルを低下させ、汚損予告を出力してから汚損警報を出力するまでの期間が長い場合は、前記予告判定レベルを増加させることを特徴とする防災受信盤。
- 請求項1又は2記載の防災受信盤に於いて、前記判定レベル調整部は、汚損判定処理中の光学式火災感知器の前記予告判定レベルを自動調整する場合に、周辺に位置する光学式火災感知器の前記予告判定レベルを同様に調整することを特徴とする防災受信盤。
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