JP4636590B2 - D−β−ヒドロキシアミノ酸の製造方法 - Google Patents
D−β−ヒドロキシアミノ酸の製造方法 Download PDFInfo
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Description
〔1〕 下記(a)から(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質、該蛋白質を発現する微生物または形質転換株、およびそれらの処理物からなる群から選択される少なくとも1つの酵素活性物質を、式1(式中Rは置換されても良いシクロヘキシル基、フェニル基、アルキル基、アリル基を表す)
(a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド
〔2〕 〔1〕におけるRが置換されてもよいシクロヘキシル基であることを特徴とする、〔1〕に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
〔3〕 下記(a)から(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質、、該蛋白質を発現する微生物または形質転換株、およびそれらの処理物からなる群から選択される少なくとも1つの酵素活性物質を、式3(式中Rは置換されても良いシクロヘキシル基、フェニル基、アルキル基、アリル基を表す)
(a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド
〔4〕 〔3〕におけるRが置換されてもよいシクロヘキシル基であることを特徴とする、〔3〕に記載のD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
〔5〕 〔1〕または〔3〕に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、原料DL-β−ヒドロキシアミノ酸の反応液における濃度が30g/L以上であることを特徴とする、〔1〕または〔3〕に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
〔6〕 〔1〕または〔3〕に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、原料DL-β−ヒドロキシアミノ酸の濃度が50g/L以上である事を特徴とする、〔1〕または〔3〕に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
〔7〕 〔1〕または〔3〕に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、原料DL-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはDL-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の濃度が50g/L以上であることを特徴とする方法。
〔8〕 〔2〕または〔4〕に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、更に付加的に以下の工程を含む方法。
(1)反応終了後に反応液のpHを10以上にすることによりD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を溶解する工程、
(2)不溶物を分離する工程、および
(3)反応液のpHを2−9.5に調整することによって析出するD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を回収する工程
〔9〕 〔2〕または〔4〕に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、更に付加的に以下の工程を含む方法。
(1)反応終了後に反応液のpHを1.5以下にすることによりD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を溶解する工程、
(2)不溶物を分離する工程、および
(3)pHを2−9.5に調整することにより析出するD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を回収する工程
DL-スレオ-フェニルセリン、
DL-エリスロ−フェニルセリン、および
DL-チエニルセリンなど
しかし、L-スレオニン、L-アロ-スレオニンに対するL-フェニルセリンアルドラーゼの酵素活性は低い。更にL-フェニルセリンアルドラーゼは、L-セリンに対してはほとんど活性を示さない。つまりL-フェニルセリンアルドラーゼには、芳香族アミノ酸にしか高い酵素作用は認められない。したがって、芳香環を有しないL-ACHPに対してL-フェニルセリンアルドラーゼが高い酵素活性を有することは、予想できない結果であった。
また、本発明に用いるL-フェニルセリンアルドラーゼは、3-フェニルセリンのL−スレオ体とL−エリスロ体を良好な基質とするEC 4.1.2.26に分類される酵素である。一方、L-アロスレオニンアルドラーゼは、EC 2.1.2.1に分類され、L-アロスレオニンに最も強く作用する。したがって両者は生化学的にも酵素分類上も全く異なる酵素である。
また本発明によれば、多量の原料を用いて、目的とする化合物を効率的に得ることができる。より具体的には、本発明に基づいて、たとえばD-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸を、実用的な添加量のラセミ体から、簡便、かつ経済的に、工業的に製造することが可能となった。すなわち、本発明における酵素活性物質は、多量の基質、並びに基質から生成する反応生成物による阻害作用を受けにくい。そのため、より多くの原料を用いて、目的とする化合物を効率的に得ることが可能となった。
本発明においては、原料の少なくとも一部が反応液中に溶解していれば、必要な反応は進行する。溶解した原料中のD体とL体のうち、L体は酵素活性物質によって対応するアルデヒドとグリシンに分解される。その結果、反応液に溶解した原料の濃度は低下し、新たに原料が溶解し、そのうちのL体が順次分解されてゆく。一方で飽和状態に達したD体は結晶化してゆく。結果として反応系内のL体が順次消費されるため、溶解度が低い原料であっても、目的とするD体を効率的に得ることができる。たとえば、本発明において原料として用いられるDL-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸、あるいはDL-スレオ−2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸は、通常の条件では、反応液を構成する溶媒中にはわずかしか溶解しない。しかし上記のようなメカニズムにより、本発明によって、目的とするD体を効率的に回収することができる。
(([D-エリスロ体の濃度]-[L-エリスロ体の濃度])
/([D-エリスロ体の濃度]+[L-エリスロ体の濃度])) x 100
同様に、D−スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の場合、e.e.は次の式で求められる数値を意味する。
(([D-スレオ体の濃度]-[L-スレオ体の濃度])
/([D-スレオ体の濃度]+[L-スレオ体の濃度])) x 100
反応後に残存するD-β-ヒドロキシアミノ酸は、可溶化、遠心分離や濾過などによる分離、有機溶媒による抽出、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、吸着剤による吸着、凝集剤、脱水剤による脱水もしくは凝集、晶析、蒸留、などを適宜組み合わせることにより精製することができる。D-β-ヒドロキシアミノ酸は、アルカリ性化、もしくは、酸性化により可溶化することができる。
(1) 作用
L-フェニルセリンに作用し、ベンズアルデヒドとグリシンを生成する。
(2) 基質特異性
(a) L-スレオ-フェニルセリン、およびL-エリスロ-フェニルセリンに共に作用するが、D-スレオ-フェニルセリン、およびD-エリスロ−フェニルセリンには実質的に作用しない。
(b)DL-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸のうち、L-エリスロ体には作用するが、D-エリスロ体には実質的に作用しない。
(3) 分子量
ゲル濾過における分子量が190,000-210,000、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が35,000。
活性測定法:
20 mM DL-スレオ-フェニルセリン、200 mM TAPS-NaOH緩衝液(pH8.5)、20μM ピリドキサール-5'-リン酸(以下、PLPと省略する)および酵素を含む0.5 mLの反応液中で、30℃、10分間反応を行い、1 N HClを0.5 mL添加することによって反応を停止する。生成したベンズアルデヒドを次の方法によって定量する。1.0 mLの反応終了液に0.15 mLの0.1% 2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを含む2N塩酸溶液を加え、素早く攪拌し、30℃、20分静置する。更に、3 mLのエタノールを加え、素早く攪拌した後、0.85 mLの3 N NaOHを加え、10分間静置する。その溶液の475 nmにおける吸光度を測定する。酵素活性は、30℃において1分間に1 μmolのベンズアルデヒドの生成を触媒する酵素量を1ユニット(U)とした。
(a) L-スレオ-フェニルセリンまたはL-エリスロ-フェニルセリンに対する活性を100とするとき、D-スレオ-フェニルセリンおよびD-エリスロ−フェニルセリンに対する活性は確認できない。
(b)DL-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸のうち、L-エリスロ体に対する活性を100とするとき、D-エリスロ体に対する作用は確認できない。
還元剤:2-メルカプトエタノール等
プロテアーゼ阻害剤:フェニルメタンフルホニルフルオリド、ペプスタチンA、ロイペプチン、および金属キレーター等
PLP
目的とする酵素は、こうして得られた無細胞抽出液から、たとえば以下のような各種の蛋白質の分画方法、およびクロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより精製することができる。
蛋白質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)
陽イオン交換、陰イオン交換、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィー
キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィー
より具体的には、たとえば、以下の各工程にしたがって、無細胞抽出液から目的とする酵素を電気泳動的に単一バンドにまで精製することができる。各工程の詳細な条件は、たとえば実施例に記載したとおりとすることができる。
40−60%硫安分割;
DEAE−セルロースイオン交換クロマトグラフィー;
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー;
DEAE−セルロース陰イオン交換クロマトグラフィー(2回目)
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー;(2回目)
MonoQ陰イオン交換クロマトグラフィー;
(a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド
あるいは、PCRによって得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株のライブラリーをスクリーニングすることによって目的のDNAを得ることができる。ライブラリーには、染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用することができる。スクリーニングには、コロニーハイブリダイゼーション、あるいはプラークハイブリダイゼーションを利用することができる。
なお本発明のポリヌクレオチドには、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得られたDNAが含まれる。
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属等宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属等宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属等宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属等宿主ベクター系の開発されているカビ
本発明において、酵素活性物質としては、配列番号:2に記載の蛋白質、またはそのホモログを機能的に発現する形質転換体並びにその処理物を用いることができる。例えば、pKK-PSA1、またはpSE-PSA1により形質転換された大腸菌は、本発明における形質転換体として好ましい。
界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物;
凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体;
ガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液;
無細胞抽出液を部分精製したもの;
精製された酵素;
形質転換体あるいは酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物;
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
シュードモナス・プチダ・バイオバーA 24−1株を1.0%ペプトン、0.2%リン酸1水素2カリウム、0.2%リン酸2水素1カリウム、0.2%塩化ナトリウム、0.01%硫酸マグネシウム・7水和物、0.01%酵母エキスを含むpH7.2のペプトン培地に植菌し、30℃、12時間振盪培養した。同ペプトン培地に0.2%DL-スレオ-フェニルセリンを含む培地に植菌し、更に30℃、24時間振盪培養し、遠心分離により菌体を得た。
参考例1により調製した菌289gを、0.1M TES−NaOH緩衝液(pH7.2)、2mM エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、0.02% 2−メルカプトエタノールを含む菌体破砕液に懸濁し、超音波により菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心分離し、その上清画分を10mM TES−NaOH緩衝液(pH7.2)、1mM EDTA、0.01%2−メルカプトエタノール、50μM PLPを含む緩衝液1に透析し、無細胞抽出液とした。
無細胞抽出液に40%飽和まで硫安を添加し、遠心分離により沈殿を除去した。その上清に60%飽和まで硫安を添加し、遠心分離の沈殿画分として本酵素を回収した。
精製酵素をゲル電気泳動に供した結果、Native−ポリアクリルアミド、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドいずれの条件においても単一バンドを示した。
〔表1〕
L-フェニルセリンアルドラーゼの精製
==================================================================
ステップ 総蛋白質 総活性 比活性 収率
(mg) (U) (U/mg) (倍)
==================================================================
無細胞抽出液 38100 25500 0.669 1
40-60%硫安画分 24200 25400 1.05 1.57
DEAE-セルロース(1回目) 8670 21300 2.46 3.67
ハイドロキシアパタイト(1回目) 803 8190 10.2 15.2
DEAE-セルロース(2回目) 98.7 4690 47.5 71.0
ハイドロキシアパタイト(2回目) 29.2 2180 74.7 112
MonoQ 8.8 2730 310 464
==================================================================
精製酵素を、TSKゲルG3000SWカラム(東ソー製)を用い、10mM TES−NaOH緩衝液(pH7.2)、0.01% 2−メルカプトエタノール及び0.1M塩化カリウムを含む溶離液でゲル濾過を行った結果、分子量は約210,000であった。同緩衝液を用い、セファデックスG−200を用いてゲル濾過を行った結果、分子量は約190,000であった。
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりサブユニットの分子量を測定した結果、約35,000であった。これらの結果より、本酵素は、同一サブユニットの6量体と予想された。
L-フェニルセリンアルドラーゼを、酢酸ナトリウム緩衝液、TES−NaOH緩衝液、トリス-塩酸緩衝液、TAPS−NaOH緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液を用いて活性測定を行い、DL-スレオ-フェニルセリンに対する分解活性を測定し、図1に示した。
最適pHは、TAPS−NaOH緩衝液(pH8.5)で得られた。
参考例2により精製したL-フェニルセリンアルドラーゼを用い、標準活性測定条件において基質を変えて活性を測定した。
DL-スレオ-β-フェニルセリンに対する活性を100とした相対活性で表し、表2に示した。
L-フェニルセリンアルドラーゼの基質特異性
==============================================
基質 相対活性
==============================================
DL-スレオ-β-フェニルセリン 100
DL-エリスロ-β-フェニルセリン 130
L-スレオニン 2.1
D-スレオニン 0
L-アロ-スレオニン 8
D-アロ-スレオニン 0
L-セリン 0
D-セリン 0
DL-β-チエニルセリン 170
DL-β-ヒドロキシノルバリン 0
L-フェニル乳酸 0
DL-β-ヒドロキシフェニルエチルアミン 0
==============================================
標準活性測定条件において、基質DL-スレオ-β-フェニルセリン及びPLPを除く反応液に酵素とカチオンを添加し、30℃、10分間インキュベート後、DL-スレオ-β-フェニルセリン及びPLPを添加して活性を測定した。カチオンを添加しない条件で活性測定した場合の活性値を100とした相対活性で表し、表3に示した。
L-フェニルセリンアルドラーゼ活性に及ぼすカチオンの影響
===================================
化合物 濃度 相対活性
(mM) (%)
===================================
無添加 - 100
塩化カリウム 50 94
塩化アンモニウム 50 92
塩化ナトリウム 50 88
硫酸アルミニウム 0.1 92
塩化バリウム 0.1 90
塩化マンガン 0.1 92
硫酸銅 0.1 89
硫酸ニッケル 0.1 91
塩化コバルト 0.1 98
塩化マグネシウム 0.1 98
硫酸鉄(II) 0.1 91
塩化亜鉛 0.1 92
===================================
シュードモナス・プチダ・バイオバーA 24−1株を1.5%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウムを含む培地で培養し、菌体を調製した。菌体からの染色体DNAの精製は、Biochem. Biophys. Acta., 72, 619 (1963)に記載の方法により行った。
参考例2で得られた精製酵素をトリプシン消化して得られたペプチドのアミノ酸配列(配列番号:3及び4)を元に、プライマー12及びPrimerCを合成した。
配列番号:3
Gln-Ala-Gly-Pro-Tyr-Gly-Thr-Asp-Glu-Leu
配列番号:4
Phe-Gly-Phe-Tyr-His-Asp-Arg-Trp
配列番号:5 プライマー12
GGGAATTCAGGCGGGCCCGTATGGCACCGACCGACGA
配列番号:6 プライマーC
AAGCCGAAGATAGTGCTGGGCGACCCCTAGGGG
コア配列の塩基配列を元に、プローブU2及びプローブCの3つのオリゴヌクレオチドを合成した。これらの合成DNAをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った。
配列番号8: プローブU2
TGATGACCGTCGACGGCCCG
配列番号9: プローブC
CGGCCTTCAGCAGCGCATCGA
該L-フェニルセリンアルドラーゼの高発現株を構築した。まず、pPSA2の挿入DNA断片の塩基配列をもとに、該L-フェニルセリンアルドラーゼ遺伝子のORFの上流部位及び下流部位に対応するそれぞれのオリゴヌクレオチドPrimer PSA-ECO及びPrimer PSA-HINを合成した。
配列番号:10 プライマー PSA−ECO
GGGAATTCGACCATCAGGCGAGCGTCAA
配列番号:11 プライマー PSA−HIN
GGAAGCTTCCAGAGCGAGCACAGCCGCCAC
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号中央第6(郵便番号305-8566)
(b)寄託日:平成16年4月13日
(c)受託番号:FERM P-20054
実施例4で得られたプラスミドpKK-PSA1で形質転換された大腸菌JM109株を、アンピシリン(50 mg/L)を含む液体LB培地(バクト−トリプトン10/L、バクト−酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L、pH7.2)に植菌し、30℃で終夜培養した後、アンピシリン(50 mg/L)を含む2×YT培地(バクト−トリプトン20g/L、バクト−酵母エキス10g/L、塩化ナトリウム10g/L、pH7.2)に植菌し、30℃で培養した後、0.1 mM IPTGにより誘導を4時間行い、遠心分離により集菌体を得た。集菌後、0.02% 2-メルカプトエタノール、2 mM EDTA、20 μM ピリドキサール-5'-リン酸を含む100 mM TES−NaOH緩衝液(pH7.2)に懸濁し、密閉式超音波破砕装置UCD-200TM(コスモバイオ製)を用いて3分間処理することで、菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心分離し、その上清を無細胞抽出液としてL-フェニルセリンアルドラーゼ活性を測定した結果、20.0U/mgの比活性を有することが確認できた。
実施例5で得られた無細胞抽出液を用いて、DL-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸に対する活性を測定した結果、6.26U/mgの活性を有し、DL-スレオ-フェニルセリンに対する活性を100%として31.3%の相対活性を有することを見出した。
実施例6により得られたプラスミドpKK-PSA1を有する大腸菌JM109株を用いてD-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸の合成を行った。
〔表4〕
=========================================================
基質 D-エリスロ体
DL-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル- 光学純度
3-ヒドロキシプロピオン酸
=========================================================
1% 99%e.e
5% 99%e.e
10% 99%e.e
15% 99%e.e
=========================================================
実施例7において基質15%で反応した反応終了液に硫酸を添加し、反応終了液のpHを0.5まで低下させることにより反応液中に残存するD-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸を溶解させた。遠心分離により菌体等の不要物を分離し、得られた上清に水酸化ナトリウムを添加して約pH6に中和することにより、D-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸を結晶化させ、濾過により結晶を得た。結晶の純度は約96%、光学純度は>99%eeであった。
実施例7において基質15%で反応した反応終了液に水酸化ナトリウムを添加し、反応終了液のpHを12まで上げることにより反応液中に残存するD-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸を溶解させた。遠心分離により菌体等の不要物を分離し、得られた上清に硫酸を添加して約pH6に中和することにより、D-エリスロ-2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸を結晶化させ、濾過により結晶を得た。結晶の光学純度は>99%eeであった。
マロン酸23.9gにトルエン58.1g加え、65℃まで昇温し、ピリジン27.1g、ピペリジン0.54gを滴下した。さらにシクロヘキシルアルデヒド30.0gを滴下後、10時間反応させた。反応終了後冷却し、3M水酸化ナトリウム水溶液93.3gを加え攪拌後、上層のトルエン相を除去した。下層にt-ブチルメチルエーテル55.5g、濃塩酸55.8gを加え、攪拌後下層を除去した。上層のt-ブチルメチルエーテル相に水24.8g及び濃塩酸0.29gを加え、攪拌後下層を除去した。上層のt-ブチルメチルエーテル相を減圧濃縮し、3−シクロヘキシル−2−プロペン酸33.0gを得た。
タングステン酸ナトリウム2水和物4.3gに水64.4gを加え溶解させ、40℃に加温した。これに3−シクロヘキシル−2−プロペン酸20g及びメタノール15.8gを加え、さらに30%過酸化水素水29.4gを滴下した。25%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、反応液のpHを4.5〜5.0の範囲にコントロールしながら40℃にて20時間反応させた。反応終了後10℃以下まで冷却し、35%重亜硫酸ナトリウム及び25%水酸化ナトリウム水溶液をpH4.0〜6.0に保ちながら滴下し、過酸化水素を分解した。減圧条件下にてメタノールを留去した後、濃塩酸を用いてpHを2.0〜3.0に調整した。t−ブチルメチルエーテル676gを加え30分以上攪拌した後、30分以上静置した。下層を分液した後、上層をろ過した。このろ液を減圧下で濃縮することで淡黄色油状の3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸16.2gを得た。
3−シクロヘキシル−2,3−エポキシプロピオン酸10.0gに水21.0g及び25%水酸化ナトリウム水溶液9.4gを加え溶解させ、40−55℃に昇温した。ベンジルアミン18.9gを滴下し、90℃で10時間反応させた。反応後30℃以下まで冷却した後、濃塩酸17.1g、水61.1g、t−ブチルメチルエーテル9.9gの混合液に反応液を滴下した。滴化後25%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを3.5に調整し、30分攪拌した。析出した結晶をろ過し、結晶をアセトン、水で洗浄し、50℃で減圧下乾燥することで2-ベンジルアミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸13.9gを得た。
2-ベンジルアミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸13.0gにメタノール62.8g、水39.4g、25%水酸化ナトリウム水溶液7.5g及び触媒として50%含水水酸化パラジウム(活性炭担持物)0.7gを加え、水素ガスで500KPaまで加圧し、50℃で4時間反応を行った。反応後12%水酸化ナトリウム水溶液7.7gを加えて30分攪拌後、濾過することで触媒を除去した。ろ液を減圧濃縮し、メタノール、トルエンを除去し、濃塩酸にてpHを5.8に調整した。析出した結晶を濾過し、水で洗浄後、減圧下乾燥することで2-アミノ-3-シクロヘキシル-3-ヒドロキシプロピオン酸7.9gを得た。
Claims (9)
- 下記(a)から(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされるL−フェニルセリンアルドラーゼ活性を有する蛋白質を高発現する形質転換株および/またはその処理物を、式1(式中Rは置換されても良いシクロヘキシル基、フェニル基、アルキル基、アリル基を表す)
で表されるDL-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸に作用させ、そして残存する式2で表されるD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸を回収する工程を含む、D-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸を製造する方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド - 請求項1におけるRが置換されてもよいシクロヘキシル基であることを特徴とする、請求項1に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
- 下記(a)から(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによりコードされるL−フェニルセリンアルドラーゼ活性を有する蛋白質を高発現する形質転換株および/またはその処理物を、式3(式中Rは置換されても良いシクロヘキシル基、フェニル基、アルキル基、アリル基を表す)
で表されるDL-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸に作用させ、そして残存する式4で表されるD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を回収する工程を含む、D-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を製造する方法。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド;および
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド
- 請求項3におけるRが置換されてもよいシクロヘキシル基であることを特徴とする、請求項3に記載のD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
- 請求項1または請求項3に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、原料DL-β−ヒドロキシアミノ酸の反応液における濃度が30g/L以上であることを特徴とする、請求項1または請求項3に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
- 請求項1または請求項3に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、原料DL-β−ヒドロキシアミノ酸の濃度が50g/L以上である事を特徴とする、請求項1または請求項3に記載のD-β-ヒドロキシアミノ酸の製造方法。
- 請求項1または請求項3に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、原料DL-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはDL-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の濃度が50g/L以上であることを特徴とする方法。
- 請求項2または請求項4に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、更に付加的に以下の工程を含む方法。
(1)反応終了後に反応液のpHを10以上にすることによりD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を溶解する工程、
(2)不溶物を分離する工程、および
(3)反応液のpHを2−9.5に調整することによって析出するD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を回収する工程 - 請求項2または請求項4に記載のD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸の製造において、更に付加的に以下の工程を含む方法。
(1)反応終了後に反応液のpHを1.5以下にすることによりD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を溶解する工程、
(2)不溶物を分離する工程、および
(3)pHを2−9.5に調整することにより析出するD-エリスロ-β-ヒドロキシアミノ酸、またはD-スレオ-β-ヒドロキシアミノ酸を回収する工程
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