JP4272312B2 - 新規ニトリラーゼ、および2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、飼料への添加物等として有用な2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の製造に有用なニトリラーゼと、その製造方法、並びに用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(以下HMBAと省略する)は、家畜飼料への添加剤として注目されている。HMBAは家畜体内で代謝されてメチオニンを生成する。メチオニンが固体であるのに対して、HMBAが液体であることから扱いやすく、今後普及が期待されている。HMBAは、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルの加水分解によって得ることができる。しかし加水分解を化学的に行うには強酸性条件を要求し、廃液の中和のために大量の塩の生成を伴うことが問題であった。そこで、微生物発酵やニトリラーゼを用いた酵素的加水分解反応が注目された。
【0003】
これまでに、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを加水分解してHMBAを生成しうる微生物として、次のようなものが報告されている。
・特開平4−40898号公報:
カセオバクター属、シュードモナス属、アルカリゲネス属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、ノカルディア属、ロドコッカス属、およびアースロバクター属の微生物
・WO96/09403:
アルカリゲネス属、ロドコッカス、およびゴルドナ属の微生物
・特開平8−173175号公報:
パントエア属、ミクロコッカス属、バクテリヂウム属、バチラス属、アクチノマヅラ属、キタサトスボラ属、ビリメリア属、アクロモバクター属、ベイジェリンキア属、セルロモナス属 、クレブシェラ属、アクチノボリスボラ属、アクチノシンネマ属、アクチノプラネス属、アミコラタ属、サッカロポリプポラ属、ストレプトマイセス属、ノカルヂオイデス属、プロビデンシア属、ミクロバクテリウム属、ロドバクター属、およびロドスピリリウム属の微生物
・WO97/32030:
バリオボラクス属、およびアースロバクター属の微生物
・WO98/18941:
Alcaligenesfaecalis ATCC 8750の遺伝子を発現させた大腸菌
【0004】
Rhodococcus属の微生物においては、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブ チロニトリルを加水分解してHMBAを生成することはRhodococcus sp.でのみ知られている。しかしその蓄積濃度は低く、特開平4-40898号公報でRhodococcus sp.SK92株が94mMのHMBAを蓄積し、またWO96/09403のRhodococcus sp.HT-29-7が 100mMのHMBAを蓄積しているに過ぎない。更に、Rhodococcus rhodochrous種の菌体およびニトリラーゼが2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを加水分解してHMBAを生成することは知られていない。
【0005】
微生物発酵によるHMBAの製造には、微生物自身の生育に必要な培地成分が必要であり、また一般にわずかな条件の変化によって収率が大きく変動するデリケートな反応であることが多く、反応条件の制御が容易なニトリラーゼによる方法が望まれた。特にRhodococcus属の微生物は一般に細胞が物理的に強いといわれており、微生物発酵においては扱いやすい細胞である。しかし公知のRhodococcus属の微生物には、HMBAを高濃度に蓄積することができるものは知られていない。
【0006】
一方、ニトリラーゼとしては次のような報告がある。
・Eur.J.Biochem.,182,349-356(1989):
Rhodococcus rhodochrous J1由来 のニトリラーゼ
・J.Bacteriol.,172,4807-4815(1990):
Rhodococcus rhodochrousK22由来の酵素
・Eur.J.Biochem, 194, 765-772 (1990):
AlcaligenesfaecalisJM3由来の酵素
・特開平4-341185:
Alcaligenes faecalis ATCC8750由来の酵素
これらの酵素に関しては、HMBAの産生量が知られていないか、或いは低いので、商業的に利用するには改善の余地を残していた。公知のニトリラーゼはアンモニアに対する感受性が比較的高い。4-メチルチオブチロニトリルの加水分解には必ずアンモニアの生成を伴うことから、アンモニア感受性を持つニトリラーゼを用いる限り、HMBA産生量は制限されてしまう。したがって、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを効率的に加水分解してHMBAを生成し、しかも反応を制御しやすい微生物細胞、あるいはニトリラーゼの提供が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アンモニア耐性を備え、HMBA産生能に優れた新規なニトリラーゼと、このニトリラーゼを利用したHMBAの製造方法の提供を課題とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決することができる新たなニトリラーゼを産生する微生物を求めて、土壌よりニトリル分解菌を多数分離した。その中から特に分解能力の高い菌株としてB24−1株を選択した。この菌株は次のような微生物学的特徴を備えていることから、バージェイの細菌分類書(Bergey's manual of determinative bacteriology、ninth edition,1994) に基づいてRhodococcus属に属する菌株であると同定した。
コロニーの色:salmon red RAL3022
好気性のグラム陽性の桿菌
細胞壁組成にメソジアミノピメリン酸を含む
ミコール酸組成がC40-48
脂肪酸組成にtuberculostearic acidの含量が高い
【0009】
また本菌株よりDNAを抽出し、16S rRNAに対応する16S rDNAの塩基をPCR法によって増幅して、最初の500塩基の相同性を既知のRhodococcus属各種の Type strain と比較したところ、Rhodococcus rhrochrous DSM43241と99.8%の相同性が見られたところから、最終的に本菌をRhodococcus rhrochrousと同定した。
【0010】
本発明者らは、この細菌が2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを効率的に加水分解してHMBAを生成する能力を備えていることを見出した。そしてこの微生物がRhodococcus rhodochrousであり、高いHMBA生産能を実現するアンモニア耐性を備えた新規なニトリラーゼを生産することを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下のニトリラーゼとその製造方法、並びにこのニトリラーゼを用いたHMBAの製造方法に関する。
〔1〕ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)に由来し、下記の理化学的性質を有するニトリラーゼ。
(a)作用:ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基をカルボン酸基とアンモニアに加水分解する反応を触媒する。
(b)分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40kDaであり、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量が約400kDaを示す。
(c)基質特異性: 脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、複素環ニトリルに作用する。
(d)温度安定性:pH 6.5で15分間熱処理した場合、40℃までは安定であったが、50 ℃で約40%の失活が認められ、60℃以上では完全に失活する。
(e)至適温度:pH 6.5で反応させる場合、温度約50℃において作用が至適である。
(f)安定化剤:1 mMジチオスレイトール、1 mMメルカプトエタノールによって、その活性が安定に保持され、さらにこれらによって活性化される。
(g)阻害剤:Hg++、Cu++、およびp-chloromercuribenzoateにより失活する
(h)アンモニア耐性:1.5M 硫酸アンモニウムに対しても阻害を受けない。
〔2〕300mM以上の2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を蓄積する能力を有する〔1〕に記載のニトリラーゼ。
〔3〕微生物がロドコッカス・ロドクラウスB24−1である〔1〕に記載のニトリラーゼ。
〔4〕FERM P-17515として寄託されたロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)B24−1。
〔5〕〔4〕に記載のロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)を培養して、その培養物から〔3〕に記載のニトリラーゼを採取することを特徴とするニトリラーゼの製造方法。
〔6〕ロドコッカス・ロドクラウスB24−1の菌体を2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルに作用させ、生成した2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を採取することを特徴とする4-メチルチオ-2-ヒドロキシ酪酸の製造方法。
〔7〕〔1〕、〔2〕、および〔3〕のいずれかに記載のニトリラーゼを4-メチルチオブチロニトリルに作用させ、生成した2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を採取することを特徴とする2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のニトリラーゼは、前記のような理化学的性質によって特徴付けられる。特に本発明のニトリラーゼがアンモニア耐性を備えていることは、HMBAの生成反応において重要な特徴である。2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルの加水分解に伴い、反応系にはアンモニウムイオンが蓄積する。公知のニトリラーゼはアンモニアに対する感受性が高い。したがって反応の進行に伴い加水分解活性がしだいに低下するために、HMBAの生成量が低い水準にとどまっていた。これに対して本発明のニトリラーゼは、その高いアンモニア耐性によりHMBAの生成を長期にわたって維持できることから、最終的には300mMを越えるHMBAを反応系に蓄積することができる。
【0012】
本発明において、ニトリラーゼ活性は2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルから2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸の生成、或いは3-シアノピリジンからニコチン酸の生成によって確認することができる。このとき、1分間に1mMのニコチン酸を生成するのに必要な酵素の量を1Uとする。またアンモニア耐性は、1.5Mのアンモニウムイオン存在下で、不存在下におけるニトリラーゼ活性の少なくとも90%以上の活性を維持するとき、この酵素はアンモニア耐性を持つと定義される。
【0013】
本発明のニトリラーゼは、土壌細菌であるRhodococcus rhodochrousの培養物より得ることができる。本発明のニトリラーゼを生産するための特に望ましい菌株は、FERM P-17515として寄託されたRhodococcus rhodochrousB24−1株である。Rhodococcus rhodochrousの培養には、公知の培地を利用することができる。本発明に使用される微生物の培地としては、細菌が通常資化し得るグルコース、グリセロール、フルクトース等の炭素源、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等の窒素源、硫酸マグネシウム等の無機栄養素や金属を含有する培地を利用することができる。これらの培地には、酵母エキスや肉エキス等の天然有機窒素源を添加することにより細菌の生育が改善される。
ニトリラーゼの誘導源として、微生物に適したアセトニトリル、イソバレロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物を用いることができる。培養条件は微生物が生育する条件であれば特に制限されない。培養条件を具体的に示せば、たとえばpH2〜12とし温度は5〜60℃の範囲とすることができる。更に好ましくは好気性条件下でpH4〜10、温度20〜40℃の範囲で培養日数は数時間から10日ほどの範囲でニトリラーゼ活性が最大となるまで培養することにより、効率的にニトリラーゼを生成させることができる。
【0014】
十分に増殖させた後に菌体を回収し、2-メルカプトエタノール(2-mercaptoethanol)等の還元剤や、フェニルメタンスルホニルフルオリド(phenylmethansulfonyl fluoride;PMFS)のようなプロテアーゼ阻害剤を加えた緩衝液中で破砕して無細胞抽出液とする。無細胞抽出液から、蛋白質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)や、陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより精製する事ができる。たとえば、フェニル−トヨパールを用いた疎水クロマトグラフィー、Q−セファロースを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、ブチル−トヨパール疎水クロマトグラフィー、ブルー−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、スーパーデックス200を用いたゲルろ過等を経て電気泳動的にほぼ単一バンドにまで精製することができる。
【0015】
本発明のニトリラーゼをコードするDNAは、たとえば、以下のような方法によって単離することができる。
すなわち本発明の酵素を精製後、N末端アミノ酸配列を解析し、さらに、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼなどの酵素により切断後、逆相液体クロマトグラフィーなどによりペプチド断片を精製後プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列を解析することにより複数のアミノ酸配列を決めることができる。
決定したアミノ酸配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型とし、アミノ酸配列から設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことにより本発明のDNAの一部を得ることができる。
さらに、得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明のDNAを得ることができる。
【0016】
また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより本発明のDNAを得ることも可能である。
【0017】
なお本発明のDNAは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。
【0018】
このようにして単離された、本発明によるニトリラーゼをコードするDNAを公知の発現ベクターに挿入することにより、ニトリラーゼ発現ベクターが提供される。また、この発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養することにより、本発明のニトリラーゼを組み換え体として得ることができる。
【0019】
本発明のニトリラーゼを発現させるために、形質転換の対象となる微生物は、このニトリラーゼをコードするDNAを含む組み換えベクターにより形質転換され、ニトリラーゼ活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。利用可能な微生物としては、たとえば以下のような微生物を示すことができる。
エシェリヒア(Escherichia)属
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ハンゼヌラ(Hansenula)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
【0020】
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。微生物中などにおいて、本発明のNADHを電子供与体とするカルボニル還元酵素遺伝子を発現させるためには、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中にこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを本発明のDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを用いる必要がある。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネータ−などに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488 (1992)、などに詳細に記述されている。
【0021】
例えばエシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、 trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、PRなどに由来するプロモーターなどが利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを用いることができる。
【0022】
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどが利用可能であり、染色体にインテグレートすることもできる。また、プロモーター、ターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、 npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミラーゼ)などが利用できる。
【0023】
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター、ターミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子などが利用できる。
【0024】
ブレビバクテリウム属特に、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))などのプラスミドベクターが利用可能である。プロモーター、ターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
【0025】
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984)などのプラスミドベクターが利用可能である。
【0026】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239 (1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
【0027】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol. 137, 614 (1979))などが利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
【0028】
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である (J. Gen. Microbiol. 138,1003 (1992) )
【0029】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486 (Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1995) )が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53 (1997) )。
【0030】
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
【0031】
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390 (1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
【0032】
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)及びサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
【0033】
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zygosaccharomyces rouxii)由来の pSB3(Nucleic Acids Res. 13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクターが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来 PHO5 プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 2521 (1990))などが利用可能である。
【0034】
ハンゼヌラ(Hansenula)属においては、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ハンゼヌラ・ポリモルファ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、 HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導される AOX(アルコールオキシダーゼ)、 FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーターなどが利用可能である。
【0035】
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子 (PARS1、 PARS2)などを利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能な AOX など強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res. 15, 3859 (1987))。
【0036】
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス (Candida utilis) などにおいて宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem. 51, 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターは強力なプロモーターが開発されている(特開平 08-173170)。
【0037】
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
【0038】
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnology 7, 596-603 (1989))。
【0039】
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。
【0040】
ニトリラーゼ産生菌(ニトリラーゼ発現ベクターによって形質転換した生物を含む)の培養物は、そのまま、あるいは菌体を破砕した粗精製物としてHMBAの製造のために利用することができる。すなわち、液体培地または平板培地上にて培養した菌体を採取し、必要に応じて、固定化菌体、粗酵素、固定化酵素等の菌体処理物を調製する。これを、原料である2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルに接触させることによりHMBAの生成反応系を構成することができる。2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルは、適当な溶媒に溶解される。溶媒としてはn-ヘキサン、酢酸エチル等のような非水混和性溶媒を挙げることができる。この場合、ニトリラーゼは水や緩衝液の溶液として供給され、反応系は2相系となる。この他、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルを水、緩衝液またはエタノール等の水溶性有機溶媒に溶解させて反応系に供給することもできる。この場合は、ニトリラーゼ、あるいは菌体や菌体処理物とともに単一相の反応系を構成することになる。その他、本発明の反応は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
【0041】
反応条件としては、菌体使用量0.01〜70重量%、基質である2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリル濃度0.1〜80重量%を示すことができる。基質は必ずしも反応媒体中で完全に溶解しなくてもよい。また、基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。反応温度は反応が進行する温度であればよいが、1〜60℃、好ましくは5〜40℃とする。反応系のpHは、3〜12、好ましくは6〜10で5分から100時間程度、反応させればよい。このような条件で、ニトリラーゼの作用により2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルはHMBAに変換され、反応系に蓄積される。生成物であるHMBAは、濃縮、イオン交換、電気透析、抽出、晶析等の公知の方法を利用して回収し精製される。本発明によって得ることができるHMBAは、家畜飼料への添加剤として利用される。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
[実施例1]微生物の単離
各種ニトリルを含有した培地で集積培養して土壌より分離した、ニトリル分解菌の中から特に分解能力の高い菌株としてB24−1株を選択した。この菌株は次のような微生物学的特徴を備えていることから、バージェイの細菌分類書(Bergey's manual of determinative bacteriology、ninth edition,1994) に基づいてRhodococcus属に属する菌株であると同定した。
コロニーの色:salmon red RAL3022
好気性のグラム陽性の桿菌
細胞壁組成にメソジアミノピメリン酸を含む
ミコール酸組成がC40-48
脂肪酸組成にtuberculostearic acidの含量が高い
【0043】
また本菌株よりDNAを抽出し、16S rRNAに対応する16S rDNAの塩基をPCR法によって増幅して、最初の500塩基の相同性を既知のRhodococcus属各種の Type strain と比較したところ、Rhodococcus rhrochrous DSM43241と99.8%の相同性が見られたところから、最終的に本菌をRhodococcus rhrochrousと同定した。B24−1株のその他の生化学的性状を表1にまとめた。
【0044】
【表1】
【0045】
Rhodococcus rhrochrousB24−1株を、以下のとおり工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した。
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:(郵便番号305−8566)
日本国茨城県つくは市東1丁目1番3号
(b)寄託日(原寄託日) 平成11年8月12日
(c)寄託番号 FERM P-17515
【0046】
[実施例2]微生物の培養とニトリラーゼの精製
下記の培地条件で培養した菌体を超音波処理により破砕し、遠心分離(12000x g, 30分間)によりその上清液を得た。これに硫酸アンモニウムを30%飽和になるように添加し、遠心分離して上清液を回収した。上清液に硫酸アンモニウムを60%飽和になるように添加して数時間放置して遠心分離し、沈殿画分を得た。この沈殿を1 mMジチオスレイトールを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)に懸濁し、同緩衝液に対して十分に透析した。透析後に酵素液を遠心分離して、生じた沈殿を除去した。この酵素液を同緩衝液で十分に平衡化したDEAE-Sephacelカラム(3 x 25 cm)に適用した。十分に同じ緩衝液で洗浄した後、0.1MのKClを含む同緩衝液1Lと0.2 M KClを含む同緩衝液1Lで洗浄したあと、0.3 MKClを含む同緩衝液1Lで本発明のニトリラーゼを溶出させた。
3-シアノピリジンを0.8%、pH6。5のン酸カリウム緩衝液中で20℃で反応させ、生成するニコチン酸を定量した。
【0047】
この活性画分に20%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加した。1mMジチオスレイトールと20%飽和硫酸アンモニウムを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)で十分に平衡化させたフェニルセファロールCL6Bカラムに、この酵素液を適用した。ニトリラーゼは同カラムに吸着され、1mMジチオスレイトールを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH 7.5)で十分洗浄した後、これに30%(v/v)エチレングライコールを添加した緩衝液で同カラムを洗浄した。次に50%(v/v)エチレングライコールを添加した緩衝液を流すことにより、ニトリラーゼの溶出が認められた。活性画分をSDS-ゲル電気泳動を行うと単一バンドが認められ、単一標品に精製されたことが確認された。精製酵素の比活性は、20℃で蛋白1 mg当たり、1分間に4.7 マイクロモルの2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルを相当する酸に加水分解した。粗酵素液に対して、比活性は5.3倍上がり回収率は12.3%であった。
【0048】
ニトリラーゼの性質
1.基質特異性
0.1 M リン酸緩衝液(pH 6.5)に終濃度25mMのニトリル化合物、および酵素5Uを加え、1.0mlになるように混合して20℃で反応を行わせ、生成するカルボン酸を定量することで活性を求めた。
本ニトリラーゼは3−シアノピリジンに対する活性を100%とすると、脂肪族ニトリルのアクロニトリルに対して56%、芳香族ニトリルのベンゾニトリルに対して85%、4−シアノピリジンに対して212%の活性があった(表2)。
【0049】
【表2】
なお、表中の「*」は、基質の可溶性を高めるため終濃度10%のメタノールを添加したものを示す。
【0050】
2.分子量の測定
分子量の測定は定法により、SDS−PAGE法、ゲルろ過によって測定した。 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40kDaであり、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量が約400kDaを示した。
【0051】
3.酵素の性質
(1)酵素の温度安定性
酵素液を10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃で15分間処理して、直ぐに氷冷した。処理後の酵素は0.1 M リン酸緩衝液(pH 6.5)に4-メチルチオブチロニトリルを溶解させた1%(v/v)溶液を40mlに、蛋白質として650mgの酵素を添加して、全体として50mlとして20℃で反応させた。10℃、20℃、30℃、40℃では相対残存活性は100%であったが、50℃では40%の失活が認められ、60℃以上では完全に失活した。
(2)至適反応温度
酵素反応系の温度のみを20℃〜70℃の各段階にかえて、(1)と同様に酵素反応を行った。
【0052】
【表3】
(3)安定化剤
酵素反応系に1mMジチオスレイトール、1mMメルカプトエタノールを添加して(1)と同様に酵素反応を行った。その活性が安定に保持され、さらにこれらによって活性化された。
(4)阻害剤
酵素反応系に各種阻害剤0.1mMを加え、(1)と同様に酵素反応を行った。Hg++、Cu++およびp-chloromercuribenzoateによって失活した。
(5)アンモニア耐性
Rhodococcus rhrochrous B24-1、Rhodococcus rhrochrous J1、Rhodococcus rhrochrous K22の3種のニトリラーゼの活性を同じユニット数(2ユニット)になるように希釈した0.1M KPB(pH6.5)の菌体懸濁液(0.2ml)を調製する。これに種々のアンモニウム塩濃度(1.7ml)を添加し、20分間放置する。これにHMBNを終濃度20mMになるように添加して反応を開始し、HMBNの減少の度合いを経時的に測定して、ニトリラーゼの活性を測った。
その結果、3種の菌株についてほぼ同様の傾向が見られた。即ち、B24-1は、高濃度アンモニウム塩の存在下においても、そのニトリラーゼ活性はほとんど阻害を受けなかったが、J1やK22は高濃度アンモニウム塩に感受性であった(表4)。
【0053】
【表4】
【0054】
[実施例3]ニトリラーゼを用いた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルからのHMBA生成
0.1 M リン酸緩衝液(pH 6.5)に2- ヒドロキシ -4-メチルチオブチロニトリルを溶解させた1%(v/v)溶液を40mlに、細胞破砕によって得られた粗酵素液(蛋白質として650mg)10mlを添加して、全体として50mlとして20℃で反応させた。
その結果、ほぼ定量的に2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸が生じた。
【0055】
[実施例4]菌体を用いた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルからのHMBA生成
(A)培養
Rhodococcus rhrochrous B24-1を下記の条件で培養した。
(1)培地組成(単位:wt%)
フルクトース 1.0%
カザミノ酸 1.3%
酵母エキス 0.1 %
L−グルタミン酸ナトリウム 1.0%
硫酸マグネシウム7水塩 0.05%
リン酸一カリウム 0.2%
イソバレロニトリル 0.25%
pH 7.7
(2)培養条件
斜面培地から1白金耳の菌体を採り、上記液体培地40mlを入れて滅菌した坂口フラスコに植菌し、28℃で4日間、好気条件下で振盪培養した。このとき、培養1日目、2日目、3日目に0.55%のイソバレロニトリルを経時的に添加することにより、高い活性菌を調製することができた。
【0056】
(B)反応
培養終了後、液体培地から菌体を遠心分離により集菌して、1gの湿菌体を25gの反応液(0.05Mリン酸緩衝液(pH6.5)、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリル(0.2wt%)、NaCl (0.34wt%))に懸濁させて、200ml容ビーカーに入れて攪拌しながら、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルを途中添加しつつ、20℃で43時間反応させた。反応終了後、反応液中の2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸濃度は315mM(45g/L)であった。2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸は、高速液体クロマトグラフィー法(カラム:Sperisorb S5ODS2(4.6×150mm)、移動相:0.1%(V/V)リン酸(pH 4.6):アセトニトリル=9:1、流速:1.0ml/min.、検出:210nm、カラム温度:40℃)により、定量した。
2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸は、以下の操作により精製した。まず、反応液を陰イオン交換樹脂DOWEX 1x2(OH- form)のカラム(18 x 205 mm)に適用した。このカラムを蒸留水で十分に洗浄した後、0.01N 酢酸で300mlで洗浄した。さらに同液で溶出を続けると2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸が溶出し始めた。生成物を溶出画分を集め、濃縮乾固させて酢酸を除き、更にデシケーターで水分を除去した。回収した反応生成物は、NMR分析により2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸であることを確認した。
以上のとおり、本発明によるニトリラーゼは、300mMを越えるHMBAを生成する、きわめて加水分解活性の高い酵素であることが明らかである。そしてこの高い酵素活性は、これまでに報告されたことの無い、高度なアンモニア耐性に基づくものであることが推測された。
【0057】
【発明の効果】
本発明によって、HMBAの製造に有用なアンモニア耐性を持つニトリラーゼが提供された。本発明のニトリラーゼ、あるいはニトリラーゼ産生微生物を利用して2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルから簡便に2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸(HMBA)を製造することが可能になった。
Claims (6)
- ロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)に由来し、下記の理化学的性質を有するニトリラーゼ。
(a)作用:ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基をカルボン酸基とアンモニアに加水分解する反応を触媒する。
(b)分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40kDaであり、ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量が約400kDaを示す。
(c)基質特異性: 脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、複素環ニトリルに作用する。
(d)温度安定性:pH 6.5で15分間熱処理した場合、40℃までは安定であったが、50 ℃で約40%の失活が認められ、60℃以上では完全に失活する。
(e)至適温度:pH 6.5で反応させる場合、温度約50℃において作用が至適である。
(f)安定化剤:1 mMジチオスレイトール、1 mMメルカプトエタノールによって、その活性が安定に保持され、さらにこれらによって活性化される。
(g)阻害剤:Hg++、Cu++、およびパラクロロ水銀安息香酸塩 (p-chloromercuribenzoate)により失活する
(h)アンモニア耐性:1.5M 硫酸アンモニウムに対しても阻害を受けない。 - 微生物がFERM P-17515 として寄託されたロドコッカス・ロドクラウスB24−1である請求項1に記載のニトリラーゼ。
- FERM P-17515として寄託されたロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)B24−1。
- 請求項3に記載のロドコッカス・ロドクラウス(Rhodococcus rhodochrous)を培養して、その培養物から請求項2に記載のニトリラーゼを採取することを特徴とするニトリラーゼの製造方法。
- FERM P-17515 として寄託されたロドコッカス・ロドクラウスB24−1の菌体を2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリルに作用させ、生成した2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を採取することを特徴とする2- ヒドロキシ -4- メチルチオ酪酸の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載のニトリラーゼを2- ヒドロキシ -4-メチルチオブチロニトリルに作用させ、生成した2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸を採取することを特徴とする2-ヒドロキシ-4-メチルチオ酪酸の製造方法。
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