JP4938270B2 - ニトリルヒドラターゼ、およびアミドの製造方法 - Google Patents
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Description
ロドコッカス(Rhodococcus)属(特許文献1/特公平3-54558号公報)
ロドコッカス(Rhodococcus)属(特許文献2/特開平2-119778号公報)
シュードモナス(Pseudomonas)属(特許文献3/特開平3-251184号公報)
ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)(特許文献4/欧州特許公開455646号公報)
反応を氷点から15℃の低温で行う(特許文献9/特公昭56-38118号)
複数の供給口から低濃度の基質を連続的に供給する(特許文献10/特公昭57-1234号)
微生物またはその処理物を有機溶媒で処理する(特許文献11/特開平5-308980号)
高級不飽和脂肪酸存在下で反応を行う(特許文献12/特開平7-265090号)
菌体をグルタルアルデヒド等で架橋処理する(特許文献13/特開平7-265091号、特許文献14/同8-154691号)
ニトリル化合物中の青酸濃度を化学的方法により低減させた後、ニトリル化合物にニトリルヒドラターゼを作用させる(特許文献15/特開平11-123098号公報参照)
亜硫酸イオン、酸性亜硫酸イオン、または亜ジチオン酸イオンを存在させることで酵素活性を長期に安定させる(特許文献16/特開平8-89267号公報参照)
アルデヒドを添加する(特許文献17/特開平4-222591号公報参照)
〔1〕下記の理化学的性質を有するニトリルヒドラターゼ;
[1]分子量:
ゲルろ過法による分子量が約138,000、
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、分子量27kDaおよび33kDaの2つのサブユニットに分離される、
[2]作用:
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
[3]至適pH;
pH7.0〜9.0でニトリル基の水和作用が至適である、
[4]至適温度;
40〜45℃でニトリル基の水和作用が最大活性を示す、
[5]pH安定性;
pH4−9が安定領域である、および
[6]温度安定性;
50℃で15分間の熱処理をして65%以上の残存活性を示す。
〔2〕更に次の理化学的性質を有する〔1〕に記載のニトリルヒドラターゼ;
[7]シアン耐性:
シアン5mMで30分間処理し98%以上の残存活性を示す、または
シアン10mMで30分間処理し15%以上の残存活性を示す。
〔3〕ゴルドニア属に由来する〔1〕に記載のニトリルヒドラターゼ。
〔4〕受託番号FERM P-20640として寄託されたゴルドニアsp. BR-1株に由来する〔1〕に記載のニトリルヒドラターゼ。
〔5〕受託番号FERM P-20640として寄託されたゴルドニアsp. BR-1株を培養、培養物からニトリルヒドラターゼを回収する工程を含む、〔1〕に記載のニトリルヒドラターゼの製造方法。
〔6〕以下の(A)〜(E)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによってコードされるαサブユニット、および(a)〜(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによってコードされるβサブユニットからなり、以下の理化学的性質1)を有する蛋白質複合体;
1)作用
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする;
αサブユニット;
(A)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(B)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(E)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
βサブユニット:
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔7〕αサブユニットが配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む〔6〕に記載の蛋白質複合体。
〔8〕βサブユニットが配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む〔6〕に記載の蛋白質複合体。
〔9〕〔6〕に記載の蛋白質複合体を構成するαサブユニットをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(A)〜(E)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;
(A)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(B)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(E)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔10〕〔6〕に記載の蛋白質複合体を構成するβサブユニットをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔11〕〔9〕、または〔10〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質。
〔12〕〔9〕および〔10〕に記載のポリヌクレオチドのいずれか、または両方が挿入された組換えベクター。
〔13〕〔9〕および〔10〕に記載のポリヌクレオチドのいずれか、または両方が挿入された組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
〔14〕宿主が微生物である〔13〕に記載の形質転換体。
〔15〕〔14〕に記載の形質転換体を培養し、培養物からニトリルヒドラターゼ、またはニトリルヒドラターゼのサブユニット蛋白質を回収する工程を含む、ニトリルヒドラターゼ、またはニトリルヒドラターゼのサブユニット蛋白質の製造方法。
〔16〕〔1〕に記載のニトリルヒドラターゼ、当該ニトリルヒドラターゼを産生する微生物、〔6〕に記載の蛋白質複合体、〔13〕に記載の形質転換体、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質とニトリル化合物とを接触させ、生成するアミドを回収する工程を含む、アミドの製造方法。
〔17〕下記の理化学的性質を有するニトリルヒドラターゼ;
(1)分子量:
ゲルろ過法による分子量が約136,000、
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、分子量26kDaおよび36kDaの2つのサブユニットに分離される、
(2)作用:
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
(3)至適pH:
pH8.0〜9.0でニトリル基の水和作用が至適である、
(4)至適温度:
40〜45℃でニトリル基の水和作用が最大活性を示す、
(5)pH安定性:
pH4−9が安定領域である、および
(6)温度安定性:
50℃で15分間の熱処理をして65%以上の残存活性を示す。
〔18〕更に次の理化学的性質を有する〔17〕に記載のニトリルヒドラターゼ;
(7)有機溶媒耐性:
メタノール、エタノール、およびn-ヘキサンからなる群から選択されたいずれかの有機溶媒を20%含む水溶液で10分間処理して70%の残存活性を示す。
〔19〕ロドコッカス属に由来する〔17〕に記載のニトリルヒドラターゼ。
〔20〕受託番号FERM P-20642として寄託されたロドコッカス sp. Adp12株に由来する〔17〕に記載のニトリルヒドラターゼ。
〔21〕受託番号FERM P-20642として寄託されたロドコッカス sp. Adp12株を培養する工程を含む、〔17〕に記載のニトリルヒドラターゼの製造方法。
〔22〕以下の[A]〜[E]のいずれかに記載のポリヌクレオチドによってコードされるαサブユニット、および[a]〜[e]のいずれかに記載のポリヌクレオチドによってコードされるβサブユニットからなり、以下の理化学的性質1)を有する蛋白質複合体;
1)作用;
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
αサブユニット:
[A]配列番号:5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
[B]配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[C]配列番号:6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[D]配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
[E]配列番号:6に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
βサブユニット:
[a]配列番号:7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
[b]配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[c]配列番号:8に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[d]配列番号:7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
[e]配列番号:8に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔23〕αサブユニットが配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含む〔22〕に記載の蛋白質複合体。
〔24〕βサブユニットが配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む〔22〕に記載の蛋白質複合体。
〔25〕〔22〕に記載の蛋白質複合体を構成するαサブユニットをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(A)〜(E)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;
(A)配列番号:5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(B)配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号:6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(E)配列番号:6に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔26〕〔22〕に記載の蛋白質複合体を構成するβサブユニットをコードするポリヌクレオチドであって、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;
(a)配列番号:7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:8に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号:8に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
〔27〕〔25〕、または〔26〕に記載のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質。
〔28〕〔25〕および〔26〕に記載のポリヌクレオチドのいずれか、または両方が挿入された組換えベクター。
〔29〕〔25〕および〔26〕に記載のポリヌクレオチドのいずれか、または両方が挿入された組換えベクターにより形質転換された形質転換体。
〔30〕宿主が微生物である〔29〕に記載の形質転換体。
〔31〕〔30〕に記載の形質転換体を培養し、ニトリルヒドラターゼ、またはニトリルヒドラターゼのサブユニット蛋白質を回収する工程を含む、ニトリルヒドラターゼ、またはニトリルヒドラターゼのサブユニット蛋白質の製造方法。
〔32〕〔17〕に記載のニトリルヒドラターゼ、当該ニトリルヒドラターゼを産生する微生物、〔22〕に記載の蛋白質複合体、〔29〕に記載の形質転換体、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質とニトリル化合物とを接触させ、生成するアミドを回収する工程を含む、アミドの製造方法。
本発明のヒドラターゼは、シアンやアルデヒドの存在下であっても、酵素活性を維持する。そのため、アルデヒドと青酸から生成するα−ヒドロキシニトリルを基質として利用することができる。したがって、本発明のニトリルヒドラターゼは、α−ヒドロキシニトリルを原料とするアミドの製造方法に有用である。
この測定方法に基づいて、ニトリルヒドラターゼ1Uは標準反応液組成において20℃で1分間に1μmolのニコチンアミドを生成する酵素量、1 Uは標準反応液組成において20℃で1分間に1μmolのHMBAmを生成する酵素量と定義した。
具体的には、たとえば実施例に示すような操作により、酵素活性の測定が可能である。また、蛋白質の定量は、バイオラッド製蛋白質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
(1)分子量:
ゲルろ過法による分子量が約136,000、
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、分子量26kDaおよび36kDaの2つのサブユニットに分離される、
(2)作用:
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
(3)至適pH:
pH8.0〜9.0でニトリル基の水和作用が至適である、
(4)至適温度:
40〜45℃でニトリル基の水和作用が最大活性を示す、
(5)pH安定性:
pH4−9が安定領域である、および
(6)温度安定性:
50℃で15分間の熱処理をして65%以上の残存活性を示す。
好ましい態様において、本発明のニトリルヒドラターゼは、前記性状(1)-(6)に加え、更に次の性状(7)を有する。
(7)有機溶媒耐性:
メタノール、エタノール、およびn-ヘキサンからなる群から選択されたいずれかの有機溶媒を20%含む水溶液で10分間処理して70%の残存活性を示す。
[1]分子量:
ゲルろ過法による分子量が約138,000、
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、分子量27kDaおよび33kDaの2つのサブユニットに分離される、
[2]作用:
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
[3]至適pH;
pH7.0〜9.0でニトリル基の水和作用が至適である、
[4]至適温度;
40〜45℃でニトリル基の水和作用が最大活性を示す、
[5]pH安定性;
pH4−9が安定領域である、および
[6]温度安定性;
50℃で15分間の熱処理をして65%以上の残存活性を示す。
好ましい態様において、本発明のニトリルヒドラターゼは、前記性状[1]-[6]に加え、更に次の性状[7]を有する。
[7]シアン耐性:
シアン5mMで30分間処理し98%以上の残存活性を示す、または
シアン10mMで30分間処理し15%以上の残存活性を示す。
好ましい態様において、本発明のニトリルヒドラターゼは、シアン5mMで30分間処理し98%以上の残存活性を示し、かつシアン10mMで30分間処理し15%以上の残存活性を示す。
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号中央第6(郵便番号305-8566)
(b)寄託日 平成17年8月25日
(c)受託番号 FERM P-20640
(a)寄託機関の名称・あて名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号中央第6(郵便番号305-8566)
(b)寄託日 平成17年8月25日
(c)受託番号 FERM P-20642
菌種 GeneBank Accession No. 相同性(identity)
Rhodococcus sp. AN-22 AB087282 100 % (500/500)
Rhodococcus sp. T104 AY286493 99.2% (491/500)
Rhodococcus rhodochrous X80624 98.4% (479/487)
Rhodococcus rhodochrous X70295 98.1% (471/480)
Rhodococcus sp. AJ007002 98.1% (475/484)
これらの知見に基づいて、本発明のニトリルヒドラターゼを遺伝子工学的に得ることができる。すなわち本発明は、ニトリルヒドラターゼ活性を有する以下の蛋白質複合体を提供する。
1)作用
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする;
本発明の蛋白質複合体を構成するαサブユニットをコードする遺伝子には、以下の(A)〜(E)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを用いることができる。本発明において、(A)〜(E)のいずれかに記載のポリヌクレオチドは、本発明のニトリルヒドラターゼのαサブユニットの発現に有用である。
(A)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(B)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(E)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
1)作用;
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
本発明の蛋白質複合体を構成するαサブユニットをコードする遺伝子には、以下の[A]〜[E]のいずれかに記載のポリヌクレオチドを用いることができる。本発明において、[A]〜[E]のいずれかに記載のポリヌクレオチドは、本発明のニトリルヒドラターゼのαサブユニットの発現に有用である。
[A]配列番号:5に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
[B]配列番号:6に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[C]配列番号:6に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[D]配列番号:5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
[E]配列番号:6に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
[a]配列番号:7に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
[b]配列番号:8に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[c]配列番号:8に記載のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
[d]配列番号:7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
[e]配列番号:8に記載のアミノ酸配列と70%以上の相同性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。
αサブユニット βサブユニット
ゴルドニアBR-1 874−1545 170−874
(配列番号:17) (配列番号:1) (配列番号:3)
ロドコッカスadp12 825−1421 121−825
(配列番号:18) (配列番号:5) (配列番号:7)
より具体的な「ストリンジェントな条件」とは、65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件である。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお本発明のポリヌクレオチドは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。このようにして単離されたポリヌクレオチドは、本発明に含まれる。
アミノ酸配列のホモロジーは、FASTA programやBLAST programなどのホモロジー検索用のプログラムによって決定することができる。更に、上記データベースをこれらのプログラムを用いて検索するサービスも、インターネット上で提供されている。
αサブユニット βサブユニット
ゴルドニアBR-1 配列番号:2 配列番号:4
ロドコッカスadp12 配列番号:6 配列番号:8
一般にタンパク質の機能の維持のためには、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸であることが好ましい。このようなアミノ酸残基の置換は、保存的置換と呼ばれている。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有する。また、非荷電性アミノ酸としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが挙げられる。また、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。これらの各グループ内のアミノ酸置換は許容される。
i)ニトリルヒドラターゼ活性を有する、
ii)シアン耐性と有機溶媒耐性のいずれか、または両方を有する
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239 (1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である (J. Gen. Microbiol. 138,1003 (1992) )。
本発明における酵素活性物質とは、本発明のニトリルヒドラターゼの酵素活性を維持しているあらゆる物質を含む。したがって、酵素の精製度や、溶解状態とは無関係に、目的とする酵素活性を維持している限り、酵素活性物質に含まれる。
水に溶解しにくい有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-ヘキサン、イソオクタンなどを用いることができる。あるいは、エタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の有機溶媒と水性媒体との混合系中で行うこともできる。
式中、Rは、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換の飽和または不飽和の複素環基を表す。これらのニトリル化合物を用いることにより、対応するアミドを製造することができる。
複素環基としては、異種原子として窒素、酸素、硫黄の少なくとも一種を含むものが挙げられる。また、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アリール基、アリールオキシ基、塩素、臭素等のハロゲン、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、チオール基などが挙げられる。
飽和モノニトリル類;
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、カプロニトリル等
飽和ジニトリル類;
マロニトリル、サクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル等
α−アミノニトリル類;
α−アミノプロピオニトリル、α−アミノメチルチオブチロニトリル、α−アミノブチロニトリル、アミノアセトニトリル等
カルボキシル基を有するニトリル類;
シアノ酢酸等
β−アミノニトリル類;
アミノ−3−プロピオニトリル等
不飽和ニトリル類;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化アリル、クロトンニトリル等
芳香族ニトリル類;
ベンゾニトリル、o-、m-およびp-クロロベンゾニトリル、o-、m-およびp-フルオロベンゾニトリル、o-、m-およびp-ニトロベンゾニトリル、p-アミノベンゾニトリル、4-シアノフェノール、o-、m-およびp-トルニトリル、2,4-ジクロロベンゾニトリル、2,6-ジクロロベンゾニトリル、2,6-ジフルオロベンゾニトリル、アニソニトリル、α-ナフトニトリル、β-ナフトニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、テレフタロニトリル、シアン化ベンジル、フェニルアセトニトリル等
α−ヒドロキシニトリル類
なお本発明において、水和とはニトリル基に水分子が付加する反応を言う。水和に対して加水分解は、ニトリル基に置換基が結合している化合物において、この置換基が加水分解によって切断される反応を言う。これらの反応は、いずれも本発明のアミドの製造方法に含まれる。
(式中、Rは置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換の飽和または不飽和複素環基を表す。)
より具体的には、本発明によって、たとえば先に例示したニトリル化合物を原料として、次のようなアミド化合物を製造することができる。
アセトアミド、プロピオアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、バレルアミド、イソバレルアミド、カプロアミド等
マロアミド、サクシノアミド、グルタルアミド、アジポアミド等
α−アミノプロピオアミド、α−アミノメチルチオブチルアミド、α−アミノブチルアミド、アミノアセトアミド等
アミノ−3−プロピオアミド等
アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド等
ベンゾアミド、o-、m-およびp-クロロベンゾアミド、o-、m-およびp-フルオロベンゾアミド、o-、m-およびp-ニトロベンゾアミド、p-アミノベンゾアミド、o-、m-およびp-トルアミド、2,4-ジクロロベンゾアミド、2,6-ジクロロベンゾアミド、2,6-ジフルオロベンゾアミド、アニソアミド、α-ナフトアミド、β-ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、フェニルアセトアミド等
ニトリルヒドラターゼ(ゴルドニアBR-1およびロドコッカスadp12)
(1)有機溶媒耐性、シアナイドイオン耐性を示すニトリルヒドラターゼのスクリーニング
クロトンニトリル、アジポニトリル、シアノ酢酸を用いた集積培養から得られたニトリルヒドラターゼ生成菌と、研究室保存のニトリルヒドラターゼ生成菌を用い、有機溶媒耐性およびシアナイドイオン耐性を示すニトリルヒドラターゼをスクリーニングした。
500mL容の振とうフラスコに40mLの培地を入れ、ニトリルヒドラターゼ生成菌を28℃で3日間培養した。培養菌体は0.85%(v/v)塩化ナトリウム溶液に懸濁し、休止菌体とした。培養に用いた培地の組成(1Lあたり)を以下に示す。
グルコース5g、
ポリペプトン5g、
酵母エキス5g、
硫酸鉄・5水和物10mg、
塩化コバルト10mg、
クロトンアミド5g
(pH7.0)
培養液5mLから得られた休止菌体を、20%(v/v)アセトンあるいは10mMのシアン化カリウムを含む1mLの50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に入れた。アセトン耐性を評価する場合には20℃で10分間処理し、シアナイドイオン耐性の評価では30℃で30分間処理した。その後、0.5Mの3-シアノピリジン溶液を1mL添加し、残存するニトリルヒドラターゼ活性を10分間の反応で測定した。アセトンを用いた場合には、2N塩酸(0.1mL)を添加して反応を停止した。シアナイドイオン耐性評価においては、メタノール(2mL)を添加して反応を停止させた。
反応停止後の反応液に含まれるアミド(ニコチンアミド)をHPLCで分析した。HPLCの条件を次に示す。
カラム:Waters Spherisorb S5ODS2(4.6×150mm)
移動相:10mMリン酸緩衝液(pH2.8)/アセトニトリル=9:1
検出:230nm
流速:1mL/min.
ロドコッカスadp12は20%(v/v)の処理によっても51%の残存活性を示した。また、ゴルドニアBR-1は10mMシアナイドイオン存在下でも活性をほぼ維持しおり、残存活性は91%であった。
ロドコッカスadp12の最適培養条件:
ロドコッカスadp12を、下記の組成(1Lあたり)の最適培地で、28℃で3日間振とう培養した。
グルコース10g、
コーン・スティープ・リカー10g、
酵母エキス1g、
メタクリルアミド5g、
リン酸ニ水素カリウム1g、
硫酸マグネシウム七水和物0.5g、
塩化コバルト六水和物20mg
(pH7.0)
アセトン、トルエン、メタノール、エタノール、DMSO、酢酸エチル、n-ヘキサンを10-40%(v/v)添加し、ロドコッカスadp12の休止菌体を用いて20℃、10分間処理による有機溶媒耐性を評価した(図1)。メタノール、酢酸エチル、n-ヘキサンで優れた耐性を示した。そこで、これらの溶媒を20%とした条件で時間にともなう残存活性を測定した(図2)。20時間を経過しても完全に活性を失うことなく、強い有機溶媒耐性を示した。休止菌体の代わりに無細胞抽出液を用いて種々の有機溶媒耐性を評価した結果、休止菌体を用いた場合と同様に耐性が認められた(図3)。
ゴルドニアBR-1の最適培養条件:
ゴルドニアBR-1を、下記の組成(1Lあたり)の最適培地で、28℃で3日間振とう培養した。
グルコース5g、
ポリペプトン5g、
酵母エキス5g、
メタクリルアミド5g、
塩化コバルト六水和物20mg
(pH7.0)
無細胞抽出液を用いて種々のシアナイドイオン濃度で処理して残存活性を測定した(図4)。比較としてロドコッカス・ロドクロウスJ1と比較した。ゴルドニアBR-1では、15mMのシアナイドイオン存在下86%の残存活性を示したが、工業用触媒として利用されているロドコッカスロドクロウスJ1では5mMでも完全に活性は失われた。
酵素活性測定法
250mMの3-シアノピリジン、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を含む2mlの液系を用い、酵素反応を20℃で10分間行った。3N塩酸を0.1ml添加して反応を停止させた。反応液をHPLC分析し、酵素1ユニットは1分間に1μmolのニコチンアミドを生成する酵素量と定義した。タンパク質濃度はBradfordの方法で定量した。
酵素精製用の基本緩衝液として44mMのn-酪酸を含むリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いた(以下、標準緩衝液と記す)。培養液480mlから得た菌体を100mM標準緩衝液に懸濁し、超音波破砕した。遠心分離で得られた上清を無細胞抽出液とし、これを30−60%飽和濃度で硫安分画した。回収された硫安分画を、次の各種クロマトグラフィーにより精製した。精製の結果を表1にまとめた。
i.DEAE-セファセル(0.3M塩化カリウムを含む50mM標準緩衝液で溶出)、
ii.フェニルセファロース(硫安を含まない50mM標準緩衝液で溶出)、および
iii.ブチルトヨパール(15%飽和濃度の硫安を含む50mM標準緩衝液で溶出)
==========================================================
タンパク質 酵素活性 比活性
ステップ (mg) (U) (U/mg)
----------------------------------------------------------
無細胞抽出液 381 949 2.49
硫安分画 180 739 4.11
DEAEセファセル 38.9 573 14.7
フェニルセファロースCL-4B 3.22 199 62
ブチルトヨパール650M 1.45 147 102
==========================================================
精製酵素の分子量は136kDaで、αおよびβ-サブユニットの分子量はそれぞれ26kDa、36kDaと算出され、α2β2の構造から成る。熱安定性については、40℃で15分間の処理では活性を維持しており、50℃で76%、60℃の処理では7%の活性が残存していた。最適pHは8.0−9.0であった。
アセトニトリル 116%、
アクリロニトリル 484%、
クロトンニトリル 70%、
ベンゾニトリル 304%、
マンデロニトリル 58%
培養液960mlから得た菌体を100mM標準緩衝液に懸濁し、超音波破砕した。遠心分離で得られた上清を無細胞抽出液とし、これを30−60%飽和濃度で硫安分画した。回収された硫安分画を、次の各種クロマトグラフィーにより精製した。精製の結果を表2にまとめた。
i.DEAE-セファセル(0.3M塩化カリウムを含む50mM標準緩衝液で溶出)、
ii.フェニルセファロース(5%飽和濃度で硫安を含む50mM標準緩衝液で溶出)、および
iii.ブチルトヨパール(20%飽和濃度の硫安を含む50mM標準緩衝液で溶出)
========================================================
タンパク質 酵素活性 比活性
ステップ (mg) (U) (U/mg)
--------------------------------------------------------
無細胞抽出液 830 19000 22.9
硫安分画 463 18200 39.2
DEAEセファセル 118 18000 152
フェニルセファロースCL-4B 46.6 10400 224
ブチルトヨパール650M 37.1 8190 220
=======================================================
精製酵素の分子量は138kDAで、αおよびβ-サブユニットの分子量はそれぞれ27kDa、33kDaと算出され、α2β2の構造から成る。熱安定性については、30℃で15分間の処理では活性を維持しており、40℃で91%、50℃で76%、60℃の処理では7%の活性が残存していた。最大活性が見られるpHは8.0で、その80%以上の活性が認められるpH範囲は7.0−9.0であった。
アセトニトリル 56%
アクリロニトリル 341%
メタクリルニトリル 397%
クロトンニトリル 132%
ベンゾニトリル 189%
マンデロニトリル 61%
(1)ゴルドニアBR-1ニトリルヒドラターゼ遺伝子のクローニング
ニトリルヒドラターゼ遺伝子の簡便な解析法として、Precigouらが遺伝子増幅用の汎用型PCRプライマーを報告している(FEMS Microbiology Letters 204, 144-161, 2001)が、Gordonia BR-1では遺伝子増幅は認められない。そこで、精製酵素のN末端アミノ酸配列に基づいて遺伝子クローニングを行った。
αサブユニット:TDIIPTQEEIAARVKALESMLIEQN(配列番号:9)
βサブユニット:MNGVFDLGGTDGMGAVNPPAHE(配列番号:10)
ゴルドニアBR-1を次の組成を有する培地(pH7.0)を用いて28℃で1日間培養し、菌体から染色体DNAを調製した。
肉エキス 5g/L、
ポリペプトン 5g/L、
塩化ナトリウム 2g/L、および
酵母エキス 0.5g/L
ニトリルヒドラターゼはβ、αサブユニットの順に遺伝子がコードされているため、βサブユニットのN末端アミノ酸配列からセンスプライマーをデザインし、αサブユニットのN末端アミノ酸配列からアンチセンスプライマーを合成した。
センスプライマー配列:ATGAAYGGNGTNTTYYT(配列番号:11)
アンチセンスプライマー配列:GCDATYTCYTCYTGNGTNGG(配列番号:12)
(Y=C+T、N=A+C+G+T、D=A+G+T)
ロドコッカスabp12のニトリルヒドラターゼ遺伝子についても、Precigouらの汎用型PCRプライマーを用いた遺伝子領域の増幅は認められず、ゴルドニアBR-1での場合と同様に精製酵素のN末端アミノ酸配列に基づいて遺伝子クローニングを行った。
ロドコッカスabp12から精製したニトリルヒドラターゼのαおよびβサブユニットのN末端アミノ酸配列を得た。
αサブユニット:SNRPKTSEEITARVKALERSI(配列番号:13)
βサブユニット:MNGLYDLGGMDGLGPVN(配列番号:14)
ロドコッカスabp12の染色体DNAはゴルドニアBR-1と同じ方法で調製し、PCR用プライマーの塩基配列を以下に示した。
センスプライマー配列:GAYYTNGGNGGNATGGAYGG(配列番号:15)
アンチセンスプライマー配列:ACNCKNGCNGTDATYTCYTC(配列番号:16)
(Y=C+T、N=A+C+G+T、D=A+G+T、K=G+T)
ゴルドニアBR-1およびロドコッカスabp12のαサブユニット、およびβサブユニットのアミノ酸配列と、既知のニトリルヒドラターゼを構成するαサブユニットおよびβサブユニットとの相同性を解析した。結果を表3(Gordonia BR-1)および表4(Rhodococcus adp12)に示す。
ゴルドニアBR-1では、ロドコッカス属の1株とのみαサブユニットで93%の相同性が認められたが、他の微生物酵素との相同性は60−70%台にとどまった。ロドコッカスad12の酵素でも極めて高い相同性を示すニトリルヒドラターゼは認められなかった。そこで次に、αおよびβサブユニットそれぞれについて分子進化系統樹を作成した(図5)。分子進化系統樹の解釈には主観的な見解が伴いがちであるが、αおよびβサブユニットいずれに関する図を見ても、ゴルドニアBR-1とロドコッカスabp12のニトリルヒドラターゼはこれまでに工業用触媒として注目されてきた酵素との強い相関性は見られず、有機溶媒耐性やシアナイドイオン耐性がこれに反映していると推定される。
Gordonia BR-1のαサブユニットおよびβサブユニットの相同性解析
====================================================
相同性(Identity ;%)
微生物 ----------------------
β-subunit α-subunit
----------------------------------------------------
Rhodococcus sp. 68 93
Pseudonocardia thermophila JCM3095 54 76
Rhodococcus sp. Cr4 42 67
Comamonas testosteroni 5-MGAM-4D 38 65
Agrobacterium tumefaciens d3 38 62
Bacillus sp. BR449 36 65
Bacillus sp. RAPc8 36 65
Pseudomonas putida 5B 34 66
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
Rhodococcus rhodochrous J1 - LMW 43 66
Rhodococcus rhodochrous J1 - HMW 32 53
====================================================
Rhodococcus adp12のαサブユニットおよびβサブユニットの相同性解析
====================================================
相同性(Identity ;%)
微生物 ----------------------
β-subunit α-subunit
----------------------------------------------------
Rhodococcus sp. 60 77
Pseudonocardia thermophila JCM3095 56 75
Rhodococcus sp. Cr4 46 67
Comamonas testosteroni 5-MGAM-4D 42 64
Agrobacterium tumefaciens d3 42 61
Bacillus sp. BR449 40 59
Bacillus sp. RAPc8 40 59
Pseudomonas putida 5B 38 64
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
Rhodococcus rhodochrous J1 - LMW 46 67
Rhodococcus rhodochrous J1 - HMW 29 53
====================================================
Claims (15)
- 下記の理化学的性質を有するゴルドニア属に由来するニトリルヒドラターゼ;
[1]分子量:
ゲルろ過法による分子量が138,000、
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、分子量27kDaおよび33kDaの2つのサブユニットに分離される、
[2]作用:
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする、
[3]至適pH;
pH7.0〜9.0でニトリル基の水和作用が至適である、
[4]至適温度;
40〜45℃でニトリル基の水和作用が最大活性を示す、
[5]pH安定性;
pH4−9が安定領域である、および
[6]温度安定性;
pH8.0において50℃で15分間の熱処理をして65%以上の残存ニトリルヒドラターゼ活性を示す。 - 更に次の理化学的性質を有する請求項1に記載のニトリルヒドラターゼ;
[7]シアン耐性:
pH7.0においてシアン10mMで30分間30℃で処理し15%以上の残存ニトリルヒドラターゼ活性を示す。 - 受託番号FERM P-20640として寄託されたゴルドニアsp. BR-1株に由来する請求項1に記載のニトリルヒドラターゼ。
- 受託番号FERM P-20640として寄託されたゴルドニアsp. BR-1株を培養、培養物からニトリルヒドラターゼを回収する工程を含む、請求項1に記載のニトリルヒドラターゼの製造方法。
- 以下の(A)〜(E)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによってコードされるαサブユニット、および(a)〜(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドによってコードされるβサブユニットからなり、以下の理化学的性質1)を有する蛋白質複合体;
1)作用
ニトリル化合物のニトリル基に作用し、ニトリル基を水和してアミド基にする;
pH7.0においてシアン10mMで30分間30℃で処理し15%以上の残存ニトリルヒドラターゼ活性を示す;
αサブユニット;
(A)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(B)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(C)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1〜15個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(D)配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(E)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
βサブユニット:
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1〜15個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - αサブユニットが配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む請求項5に記載の蛋白質複合体。
- βサブユニットが配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む請求項5に記載の蛋白質複合体。
- 請求項5に記載の蛋白質複合体を構成するαサブユニットをコードするポリヌクレオチドであって、配列番号:4に記載のアミノ酸配列からなるβサブユニットとニトリルヒドラターゼ活性を有する複合体を形成し、該複合体をpH7.0においてシアン10mMで30分間30℃で処理したとき15%以上の残存ニトリルヒドラターゼ活性を示すものである、以下の(A)〜(C)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;
(A)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(B)配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、および
(C)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1〜15個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - 請求項5に記載の蛋白質複合体を構成するβサブユニットをコードするポリヌクレオチドであって、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるαサブユニットとニトリルヒドラターゼ活性を有する複合体を形成し、該複合体をpH7.0においてシアン10mMで30分間30℃で処理したとき15%以上の残存ニトリルヒドラターゼ活性を示すものである、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチド;
(a)配列番号:3に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:4に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:4に記載のアミノ酸配列において、1〜15個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸からなる蛋白質をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドと65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、および
(e)配列番号:4に記載のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド。 - 請求項8、または請求項9に記載のポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質。
- 請求項8および請求項9に記載のポリヌクレオチドのいずれか、または両方が挿入された組換えベクター。
- 請求項8および請求項9に記載のポリヌクレオチドのいずれか、または両方が挿入された組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
- 宿主が微生物である請求項12に記載の形質転換体。
- 請求項13に記載の形質転換体を培養し、培養物からニトリルヒドラターゼ、またはニトリルヒドラターゼのサブユニット蛋白質を回収する工程を含む、ニトリルヒドラターゼ、またはニトリルヒドラターゼのサブユニット蛋白質の製造方法。
- 請求項1に記載のニトリルヒドラターゼ、当該ニトリルヒドラターゼを産生する微生物、請求項5に記載の蛋白質複合体、請求項12に記載の形質転換体、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質とニトリル化合物とを接触させ、生成するアミドを回収する工程を含む、アミドの製造方法。
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