JP2006246815A - L−フェニルセリン脱水素酵素の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 医薬などの合成原料として利用価値のある光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸を効率よく製造するために有用なL−フェニルセリン脱水素酵素を提供することを課題とする。
【解決手段】 ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを補酵素として、L−スレオ及びエリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に良く作用し、β−位の水酸基を酸化することによって光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸を生成するL−フェニルセリン脱水素酵素活性を有するタンパク質。
【選択図】 なし

Description

本発明は、シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)由来の新規なL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸におけるβ位水酸基酸化活性を有するタンパク質、該タンパク質をコードするポリヌクレオチド、該タンパク質の製造方法、及びこれらタンパク質等を利用した化合物の製造方法に関する。
アミノ酸を基質として脱水素反応を触媒する脱水素酵素としては、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、「NAD+」と略す)又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、「NADP+」と略す)を補酵素としてアミノ基に作用しケト酸を生成させる酵素と、それ以外の官能基又は結合に作用する酵素に大別される。後者に分類される酵素のうち、β位に水酸基を有する化合物を基質とし、そのβ位の水酸基に作用してアミノケトン類を生成させる酵素がある。より具体的には、β−ヒドロキシ−α−アミノ酸、例えばβ−フェニルセリン、セリン、スレオニン等のβ位の水酸基を酸化することによって、引き続いて起こる自発的な脱炭酸反応の結果、アミノケトン類を生じさせる酵素がある。このような酵素は医薬、農薬等の合成原料として利用価値のある光学活性β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の酵素法による合成に有用な酵素である。
従来、NAD+もしくはNADP+依存性であり、D−β−フェニルセリンに作用し、β位の水酸基の酸化を触媒する酵素としては、Pseudomonas syringae由来のD−フェニルセリン脱水素酵素(非特許文献1、非特許文献4)、Pseudomonas cruciviae由来のD−スレオニン脱水素酵素(非特許文献2)が報告されているが、何れもD体特異的に作用する酵素であり、L体には不活性であると報告されている。一方、Escherichia coli K−12由来としてはL−スレオニン脱水素酵素(非特許文献3)が報告されている。しかし、このL−スレオニン脱水素酵素は、L−スレオニンに対する活性を100%とすると、DL−スレオ−β−フェニルセリンを基質とした場合には3%と極めて低い活性を有するのみであり、またエリスロ−β−フェニルセリンに対する作用は報告されていない。
このように、L−スレオニンよりもL−β−フェニルセリンに対して良く作用し、β位の水酸基の酸化を触媒する酵素は、今までに報告されていない。
J.Biochem., 114. 930−935, 1993 Appl. Environ. Microbiol., 59(9), 2963-2968, 1993 J. Biol. Chem., 256(4), 1809−1815, 1981 Biosci.Biotech.Biochem.,57,1969−1970,1993
本発明は、L−β−フェニルセリンに対して高い活性を有するL−フェニルセリン脱水素活性を有するタンパク質及び該タンパク質をコードしたポリヌクレオチドを提供することを課題とする。また本発明は、該タンパク質をコードしたポリヌクレオチドを有する組換え体を提供することを課題とする。さらに本発明の課題は、新規なL−フェニルセリン脱水素酵素による光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の酵素的な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、すでにシュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)由来のD−スレオ−β−フェニルセリンのβ−水酸基の酸化を触媒し、アミノケトンを生成させるD−フェニルセリン脱水素酵素を単離し(非特許文献1)、本酵素の諸性質(非特許文献1)、さらに該酵素をコードする塩基配列を同定している。さらに、このD−フェニルセリン脱水素酵素遺伝子周辺の塩基配列の解析を進めたところ、該酵素遺伝子の近傍に新たなORF(以下、ORF2と省略する)を見出した。このORF2は、NAD+存在下でDL−スレオ−β−フェニルセリンを脱水素し得る酵素をコードしていた。そこで、さらに詳細に検討すべく、該遺伝子産物である酵素タンパク質を精製し、諸性質等を解析した。該酵素は至適pHがpH9.5から11.0であり、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動(以下SDS-PAGEと省略する)によるサブユニットの分子量が約27,000、ゲル濾過による分子量が約98,000の酵素であった。また、NAD+を補酵素としてL−スレオニンよりもL−β−フェニルセリンに対して高い活性を有するL−フェニルセリン脱水素酵素であることを同定し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下に示す通りである。
1. 下記(1)および(2)に示す理化学的性質を有するタンパク質。
(1)作用
酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補酵素としてL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用し、β位の水酸基を酸化する
(2)基質特異性
L−β−フェニルセリンに対して、L−スレオニンよりも高い活性を有する
2. さらに下記(3)および(4)に示す理化学的性質を有する、上記1に記載のタンパク質。
(3)至適pH
至適pHがpH9.5から11.0である
(4)分子量
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動による分子量が約27,000
3. シュードモナス属に属する微生物に由来する、上記1に記載のタンパク質。
4. シュードモナス属に属する微生物が、シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)である、上記3に記載のタンパク質。
5. 下記(a)から(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドであり、下記(1)および(2)により特徴付けられたL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸におけるβ位水酸基の酸化活性を有するタンパク質をコードした、ポリヌクレオチド。
(a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなるポリヌクレオチド
(d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド。
(1)作用; 酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補酵素としてL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用し、β位の水酸基を酸化する
(2)基質特異性; L−β−フェニルセリンに対して、L−スレオニンよりも高い活性を有する
6. 上記5に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
7. 上記5に記載のポリヌクレオチドを保持したベクター。
8. 上記5に記載のポリヌクレオチド、または上記7に記載のベクターを保持する形質転換体。
9. 上記8に記載の形質転換体を培養し、発現産物を回収する工程を含む、上記1または上記6に記載のタンパク質の製造方法。
10. シュードモナス属に属し、上記1または上記6記載のタンパク質を産生する微生物を培養する工程を含む、上記1または上記6記載のタンパク質の製造方法。
11. シュードモナス属に属する微生物が、シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)である、上記10記載の方法。
12. 上記1ならびに上記6記載のタンパク質、これらいずれかを産生する微生物、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の存在下でDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用させ、D−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸を回収する工程を含む、光学活性なβ−ヒドロキシα−アミノ酸の製造方法。
13. DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、下記一般式1または式2で表されるDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸(式1,2中、Rは置換されてもよいアルキル基又はアリール基を表す)である、上記12に記載の方法。
Figure 2006246815
14. DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、DL−スレオ−β−フェニルセリンであり、光学活性なβ−ヒドロキシα−アミノ酸がD−スレオ−β−フェニルセリンである、上記12に記載の方法。
15. DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、DL−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンであり、光学活性なβ−ヒドロキシα−アミノ酸がD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンである、上記12に記載の方法。
16. 上記1ならびに上記6に記載のタンパク質、それらを産生する微生物、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の存在下でL−又はDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用させ、生成するアミノケトン類を回収する工程を含むアミノケトン類の製造方法。
17. アミノケトン類が、下記一般式3で表されるアミノケトン類(式中Rは、置換されてもよいアルキル基又はアリール基を表す)である、上記16記載の方法。
Figure 2006246815
18. L−又はDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、L−又はDL−スレオ−β−フェニルセリンであり、アミノケトン類が2−アミノアセトフェノンである、上記16に記載の方法。
本発明により提供された酵素タンパク質は、L−スレオニンよりもL−β−フェニルセリンに対して高い活性をもってβ位の水酸基の酸化を触媒する。したがって、本発明の酵素タンパク質、およびこれをコードしたポリヌクレオチド等を利用すれば、DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸を原料としたD−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の生物学的な製造や、L−またはDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸を原料としてアミノケトン類の生物学的な製造を行うことが可能となる。したがって、医薬などの合成原料として利用価値のある光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸を効率よく製造することが可能となる。
本発明は、L−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸脱水素活性を有するタンパク質を提供する。本発明のタンパク質は少なくとも以下の(1)から(2)の理化学的性質を有する。
(1)作用
NAD+又はNADP+を補酵素としてL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用し、β位の水酸基を酸化する。
(2)基質特異性
L−β−フェニルセリンに対して、L−スレオニンよりも高い活性を有する。
本発明のタンパク質が有するL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に対する脱水素活性の確認は例えば次の通り行うことができる。200 mM グリシン−KCl−KOH緩衝液(pH10.5)、2.5 mM NAD+、10 mM L−スレオ−β−フェニルセリンまたは20 mM DL−スレオ−β−フェニルセリン及び酵素を合む反応液中30℃で反応させ、NADHの増加にともなう340 nmの吸光度の増加を測定する。本明細書において、1単位( U)は1分間に1 μmolのNADHの増加を触媒する酵素量とする。また、タンパク質の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
上記確認方法は、上記理化学的性質(1)の確認方法としても利用することができる。また、理化学的性質(2)における基質特異性は、上記確認方法において基質としてL−β−フェニルセリンまたはL−スレオニンを用い、それぞれ測定する。測定結果が、L−スレオニンに比してL−β−フェニルセリンにおいて吸光度の増加率が高い場合に上記理化学的性質(2)を備えていると確認することができる。
なお、本発明のL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸脱水素活性を有するタンパク質は上述の通り、L-β−フェニルセリンに対して高い活性を有することから、以下、本明細書において本発明のタンパク質を「L-フェニルセリン脱水素酵素」と便宜的に呼ぶ場合がある。
また本発明のタンパク質は、好ましくは付加的に、次の(3)から(4)の理化学的性質を備える。
(3)至適pH
pH9.5から11.0である。
(4)分子量
SDS-PAGEによる分子量が約27,000。
上記理化学的性質(3)の確認は、後述する実施例を参照して行うことができる。すなわち、上記β−ヒドロキシ−α−アミノ酸脱水素活性の確認方法における緩衝液として様々なpHの緩衝液を準備し、これら緩衝液でのL−β―ヒドロキシ−α−アミノ酸におけるβ位水酸基の酸化反応を実行させ、各pHにおける酸化作用を測定することにより、至適pHを確認することができる。
さらに本発明のタンパク質は、その他の性質として次の(5)から(7)の理化学的性質を備えていてもよい。
(5)安定pH範囲
pH6−11.0の範囲で比較的安定である。
(6)作用適温の範囲
35℃から45℃の範囲が作用に適する。
(7)温度安定性
55℃まで比較的安定である。
「安定pH範囲」とは酵素活性を安定に保持することができるpH範囲を指す。安定pH範囲の確認は一例としては実施例に示す方法で実行することができる。作用適温範囲とは、本タンパク質を用いて酵素反応を実行させる際の適切な温度範囲を指す。また、温度安定性は、本タンパク質の酵素活性を安定に保持し得る温度条件を指す。これら「安定pH範囲」、「作用適温範囲」および「温度安定性」の確認はそれぞれ例えば実施例に示す方法で実行することができる。
上記理化学的性質を有するタンパク質の好適な例として、配列番号2記載のアミノ酸配列からなるタンパク質を挙げることができる。また、本発明のタンパク質はこれに限定されず、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、上記理化学的性質(1)および(2)、好ましくは(1)〜(4)、さらに好ましくは(1)〜(7)を備えたタンパク質が含まれる。
こうした配列番号2に記載のアミノ酸配列と類似のアミノ酸配列を有するタンパク質は、タンパク質のホモロジー検索によりその候補を得ることができる。ホモロジー検索には、例えばPIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベースやDDBJ、EMBL、あるいはGene-BankなどのDNA配列に関するデータベース、DNA配列を元にした予想アミノ酸配列に関するデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのプログラムを利用して行うことができる。本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素のアミノ酸配列のホモロジー検索を行った結果、最も高いホモロジーを有する酵素はRhodopseudomonas palustris CGA009由来の3−オキソアシル−アシルキャリアタンパク質還元酵素であり、45%のホモロジーを有していた。本発明のβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸脱水素活性を有するタンパク質のホモログとは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは70%以上のホモロジーを有するタンパク質をいう。
一方、タンパク質においてアミノ酸残基の置換を人為的に行い配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のホモログを作出する場合には、特に、側鎖の化学的性質が類似したアミノ酸による置換、いわゆる保存的なアミノ酸置換を行うことが好ましい。アミノ酸は、それらの側鎖の化学的性質に従い、例えば、次のように分類される:(1)中性疎水性側鎖(アラニン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、ロイシン);(2)中性極性側鎖(アスパラギン、グリシン、グルタミン、システイン、セリン、チロシン、トレオニン);(3)塩基性側鎖(アルギニン、ヒスチジン、リシン);(4)酸性側鎖(アスパラギン酸、グルタミン酸);(5)脂肪族側鎖(アラニン、イソロイシン、グリシン、バリン、ロイシン);(6)脂肪族水酸基側鎖(セリン、トレオニン);(7)アミン含有側鎖(アスパラギン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、リシン);(8)芳香族側鎖(チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン);(9)硫黄含有側鎖(システイン、メチオニン)。
また、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質のホモログは、後述する配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドのホモログに基づいて得ることもできる。こうした配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドのホモログについては、後に詳述する。
本発明のL−フェニルセリン脱水素活性を有するタンパク質を自然界から単離する際の由来は、は問わないが、一例を示せば、シュードモナス属に属する細菌の培養物より得ることができる。シュードモナス属細菌としては、シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)が特に本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素の産生能に優れた微生物として好適に挙げることができる。
シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)は、細菌の培養に用いられる一般的な培地で培養することができる。本酵素を誘導することができる誘導物質を培地に添加することがより好ましいが、例えば、1.0%ペプトン、0.2%リン酸1水素2カリウム、0.2%リン酸2水素1カリウム、0.2%塩化ナトリウム、0.01%硫酸マグネシウム・7水和物、0.01%酵母エキスを含むpH7.2のペプトン培地が好適に利用される。
また、本発明のタンパク質は、後述する本発明の活性を有するタンパク質をコードしたポリヌクレオチドが導入された形質転換微生物を用いて人為的に合成して得ることもできる。形質転換大腸菌は、一般的に大腸菌の培養に用いられる培地で培養することができ、公知の方法によって発現誘導することによって高発現させることができる。例えば、該酵素遺伝子を含む大腸菌を2×YT培地(2.0%バクト−トリプトン、1.0%バクト−酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、pH7.2)中で培養し、イソプロピル−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)によって発現誘導させ、十分に増殖させた後に菌体を回収し、2−メルカプトエタノール等の還元剤やフェニルメタンフルホニルフルオリド、ペプスタチンA、ロイペプチン、金属キレーターなどのプロテアーゼ阻害剤、PLPなどを加えた緩衝液中で破砕して無細胞抽出液とする。無細胞抽出液から、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)や、陽イオン交換、陰イオン交換、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより精製することができる。例えば、無細胞抽出液を、0−50%硫安分画、Q−Sepharoseイオン交換クロマトグラフィー、Phenyl−Sepharose疎水的相互作用クロマトグラフィーを行うことにより、電気泳動的に単一バンドにまで精製することができる。
本発明は、L−フェニルセリン脱水素酵素をコードしたポリヌクレオチドに関する。本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドは、好適な一例として配列番号:1に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドを挙げることができる。また、本発明は、上記L−フェニルセリン脱水素活性を有するタンパク質をコードした配列番号1記載の塩基配列のホモログも包含する。上記「ポリヌクレオチド」は、自然界に存在するDNAおよびRNA等から構成されたポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体から構成される人工的な分子も含まれる。また本発明のポリヌクレオチドは、DNA-RNAのキメラ分子であることもできる。また、本発明のポリヌクレオチドは、L−フェニルセリン脱水素酵素をコードするコード鎖のみからなる一本鎖であっても、該コード鎖とその相補鎖とからなる二本鎖構造を持つものであってもよい。
配列番号1記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドのホモログの一態様は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に1もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、上記理化学的性質を備えたタンパク質をコードしたポリヌクレオチドである。備えるべき理化学的性質は、少なくとも上記理化学的性質(1)、(2)であり、好ましくは性質(1)から(4)であり、より好ましくは上記性質(1)から(7)である。
上記ホモログは配列番号1記載のポリヌクレオチドをもとに人為的に作製することができる。例えば、部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487 (1982), Methods in Enzymol.100,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200 (1991) )などを用いて配列番号:1記載のDNA配列を変異させ、L−フェニルセリン脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドのホモログを得ることができる。
上記ホモログの第二の態様は、配列番号:1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるポリヌクレオチドであって、かつ、上記理化学的性質を有するタンパク質をコードしたポリヌクレオチドである。本発明において、上記理化学的性質は、第一の態様と同様に、少なくとも上記理化学的性質(1)、(2)であり、好ましくは性質(1)から(4)であり、より好ましくは上記性質(1)から(7)である。
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号:1に記載中の任意の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば40、60または100個の連続した配列を有するポリヌクレオチドをプローブとし、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、wash:42℃、0.5×SSCを含むprimary wash buffer)においてハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。より具体的な「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、さらに好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としてはこれら温度、塩濃度に加えプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間を含む複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed.」(Cold Spring Harbor Press(1989)、特にSection9.47-9.58)、「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley&Sons(1987-1997)、特にSection6.3-6.4)、「DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.」(Oxford University(1995)、特にSection2.10)等を参照することができる。
上記ホモログの第三の態様は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上、好ましくは少なくとも70%以上、より好ましくは90%以上のホモロジーを有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。本発明において、ホモロジーは、Lipman-Pearson法(Science(1985)227:1435-41)によるプログラムを用いて計算した値を表す。
上記本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドは、例えば、以下のような方法によって単離することができる。配列番号:1に記載の塩基配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより本発明のDNAを得ることができる。さらに、得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。
また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより本発明のポリヌクレオチドを得ることも可能である。
なお本発明のポリヌクレオチドには、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得られたDNAが含まれる。
本発明はまた上記L−フェニルセリン脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドを発現ベクターに挿入したL−フェニルセリン脱水素酵素発現ベクターが提供される。
微生物菌体内などにおいて、本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素遺伝子を発現させるためには、まず微生物中で安定に存在するプラスミドベクターまたはファージベクターへ本発明のポリヌクレオチドを導入する。また発現ベクターからのL−フェニルセリン脱水素酵素の発現を可能にするためにベクターには、本発明のポリヌクレオチドが挿入される5'-側上流にプロモーターが備えられ、3'-側下流にはターミネーターが備えられていることが好ましい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能するプロモーター、ターミネーターが選択される。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーター等に関しては、例えば「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488 (1992)、等に詳細に記載されている。その一部を以下に説明するがこれらに限定するものではない。
エシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、例えばpBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、PR等に由来するプロモーター等が利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーター等を用いることができる。
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミド等が利用可能であり、染色体にインテグレートさせることも可能である。また、プロモーターまたはターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、 npr(中性プロテアーゼ)、またはamy(α−アミラーゼ)等が利用できる。
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)等の宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010等に由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240等が利用可能である。プロモーターまたはターミネーターとしては、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子等が利用できる。
ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))等のプラスミドベクターが利用可能である。プロモーターまたはターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984)等のプラスミドベクターが利用可能である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239 (1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))等がプラスミドベクターとして利用可能である。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol. 137, 614 (1979))等が利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクター等が利用可能である (J. Gen. Microbiol. 138,1003 (1992) )。
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486 (Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1995) )等が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53 (1997) )。
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミド等が利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)等のプロモーターおよびターミネーターが利用可能である。
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390 (1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNA等との相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGK等に由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)、およびサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクター等が利用可能である(Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zygosaccharomyces rouxii)由来の pSB3(Nucleic Acids Res. 13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクター等が利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来 PHO5 プロモーター、およびチゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 2521 (1990))等が利用可能である。
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・アンガスタ(Pichia angusta、旧名:ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ピキア・アンガスタ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導されるAOX(アルコールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーター等が利用可能である。また、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子 (PARS1、PARS2)等を利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能なAOXなど強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res. 15, 3859 (1987))。
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス (Candida utilis) 等において宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem. 51, 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターの強力なプロモーターが開発されている(特開平08-173170)。
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) 等がカビの中で最もよく研究されており、プラスミド、および染色体へのインテグレーションの利用が可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーター等が利用できる(Biotechnology 7, 596-603 (1989))。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))、菜種、トウモロコシ、またはジャガイモ等の植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており好適に利用できる。
また、この発現ベクターを用いて、本発明のタンパク質を得るためには、それに先立って上記発現ベクターで宿主を形質転換し、形質転換体を得る。宿主微生物はL−フェニルセリン脱水素酵素活性を発現することができる生物であれば特に制限はないが、一般的には、上述の通り発現ベクターに応じて選択される。利用可能な微生物としては、例えば以下のような微生物を示すことができる。
エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属等宿主ベクター系の開発されている放線菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属等宿主ベクター系の開発されている酵母、ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属等宿主ベクター系の開発されているカビなどである。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主が存在し、発現ベクター系に対応して、これら宿主も好適に利用することができる。
ここで本発明のタンパク質を発現し得る具体的な形質転換体として、配列番号:2に記載のタンパク質を機能的に発現する形質転換体、例えば、実施例に示すプラスミドpSUPSDT3により形質転換された大腸菌を挙げることができる。プラスミドpSUPSDT3は以下の通り、寄託されている。該プラスミドに挿入された本発明のタンパク質をコードしたDNAは、本発明において好適に利用することができる。
寄託機関の名称・宛名
名称:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
(旧名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所)
宛名:茨城県つくば市東1丁目1番3号中央第6(郵便番号305−8566)
受託日 平成16年11月5日
受託番号 FERM P-20287
上記形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。
例えば、ベクターへの本発明のポリヌクレオチドの導入は、制限酵素サイトを利用したリガーゼ反応により行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons(1987) Section 11.4-11.11; Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Press(1989) Section 5.61-5.63)。また、使用する宿主のコドン使用頻度を考慮し、必要に応じ本発明のポリヌクレオチド配列の改変を行い、発現効率の高いベクターを設計するようにしてもよい(Grantham et al., Nucleic Acids Res (1981) 9:r43-74)。
各細胞株に適した発現ベクターの導入法も種々存在し、当業者であれば、各選択した宿主細胞に好適な導入法を選択することができる。例えば、原核細胞については、カルシウム処理、エレクトポレーションによる形質転換等が知られている。また、植物細胞については、アグロバクテリウムを用いた方法が公知であり、哺乳動物細胞についてはリン酸カルシウム沈降法を例示することができる。本発明は、特にこれらの方法に限定されるわけではなく、選択した宿主に応じ、その他公知の核マイクロインジェクション、プロトプラスト融合、DEAE-デキストラン法、細胞融合、電気パルス穿孔法、リポフェクタミン法(GIBCO BRL)、FuGENE6試薬(Boehringer-Mannheim)を用いた方法をはじめとする種々の公知の方法により発現ベクターの導入を行うことができる。
上記本発明の形質転換体は本発明のL−フェニルセリン脱水素活性を有するタンパク質の製造材料として、あるいは、後述する光学活性β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造用材料として利用することができる。
本発明は、上記本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素を利用した光学活性β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造方法に関する。より具体的には、酵素分子、あるいは該酵素を発現する微生物、あるいはそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質を、DL−スレオ又はDL−エリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用させ、L−スレオ又はL−エリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸のみを選択的に分解し、残存するD−スレオ又はD−エリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸を回収することにより製造する方法を提供する。
酵素活性物質は、L−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用してβ位の水酸基を酸化し得る活性を保持し得るものを意味し、精製された酵素は当然のことながら、酵素を分泌する微生物、酵素が細胞内タンパク質として発現される場合には界面活性剤、アセトンあるいはトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物もしくはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した菌体破砕物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、または無細胞抽出液もしくはそれを部分精製したものなどが含まれる。通常の酵素精製法による、L−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸脱水素酵素自体の粗精製物や精製物であっても差し支えない。また微生物菌体や精製したL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸脱水素酵素を不溶性の担体や水溶性の担体分子に結合したもの、酵素分子を包括固定することによって得られる固定化酵素等も本発明の酵素活性物質に含まれる。
上記酵素活性物質を反応溶液と接触させることにより、目的とする酵素反応を行わせて、光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造を行う。なお、酵素と反応溶液の接触形態はこれらの具体例に限定されるものではない。反応溶液は、基質や酵素反応に必要な補酵素NAD+を酵素活性の発現に望ましい環境を与える適当な溶媒に溶解したものである。
本発明による光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造方法において原料となるDL−スレオ又はエリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸としては、次のものを好適に用いることができる。
DL−スレオ又はエリスロ−β−フェニルセリン、
DL−スレオ又はエリスロ−β−チエニルセリン、
DL−スレオ又はエリスロ−β−(2’−クロロフェニル)セリン、
DL−スレオ又はエリスロ−β−(3’−クロロフェニル)セリン、
DL−スレオ又はエリスロ−β−(4’−クロロフェニル)セリン、
DL−スレオ又はエリスロ−2−アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸、
DL−スレオ又はエリスロ−β−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)セリン、
DL−スレオ又はエリスロ−β−(3’,4’−ジメトキシフェニル)セリン、
DL−スレオ又はエリスロ−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)セリン、
DL−スレオ又はエリスロ−β−(4’−ベンジルオキシフェニル)セリンなど
このようなDL−スレオ又はエリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸は、例えば、Chemistry of Amino Acids(J. P. Greenstein, and M. Winitz, Vol. 1−3, Wiley, New York, 1961)に記載の方法によって合成することができる。
上記酸化反応に付随してNAD(P)+から生成するNAD(P)HをNAD(P)+へ再生する手段は、微生物のもつNAD(P)H酸化能を用いることができる。これらNAD(P)H酸化能は、反応系を十分な通気(酸素供給)条件下に置くことによって、微生物のもつ電子伝達鎖におけるNAD(P)H酸化能を利用することが可能である。また、NAD(P)HからNAD(P)+を生成する能力を有する微生物やその処理物、あるいは酵素を反応系に添加することによっても行うことができる。たとえば、NADHオキシダーゼ、NADHデヒドロゲナーゼ、FMNレダクターゼ、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素等)、アルコール脱水素酵素、ジアホラーゼ等を含む微生物、その処理物、ならびに部分精製もしくは精製酵素を用いてNAD(P)+の再生を行うことができる。
NADHオキシダーゼとしては、Lactobacillus sanfranciscensis由来の酵素(Adv. Synth.Catal., 345, 707−712, 2003)、Lactobacillus brevis由来の酵素(特開2003−116585)、Streptococcus faecalis由来の酵素(Eur. J. Biochem. 156, 149-155, 1986)等が利用可能である。
NADHデヒドロゲナーゼとしては、Pediococcus halophilus由来の酵素(Agri. Biol. Chem., 51, 507−514, 1987)等が利用可能である。
FMNレダクターゼとしては、Photobacterium fischerei由来の酵素(J. Org. Chem., 50, 5387−5389, 1985)等が利用可能である。
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ジアホラーゼ、メチレンブルー等は、J. Am. Chem. Soc., 107, 6999−7008, (1985)に記載の方法を参照すること等により利用可能である。
これら以外にも、Bacillus sp. DSM 406由来のビオロゲン依存性NAD(P)Hオキシドレダクターゼ(Appl.Microbiol.Biotechnol. 26, 263-267, 1987)を利用することも可能である。 さらに、rabbit muscle由来のL−乳酸脱水素酵素(Sigma製)、Bovine liver由来のL−グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma製)、Clostridium kluyveri由来のジアホラーゼ(オリエンタル酵母製)等の市販で入手可能な酵素を利用することも可能である。
また、酵素的なNAD(P)+再生法以外にも、FMNのようなリボフラビン誘導体等を用いた非酵素的な酸化による手法(J. Am. Chem. Soc., 107, 6999−7008, 1985)も利用可能である。
これらのNAD(P)+再生に必要な反応を構成する成分は、本発明による光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造のための反応系に成分そのものを直接添加してもよく、また、固定化した成分として添加してもよく、さらにはNAD(P)+/NAD(P)Hの交換が可能な膜を反応系内に入れてもよい。
また、本発明のDNAを含む組み換えベクターで形質転換した微生物の生菌体を前記光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造方法に利用する場合には、NAD(P)+再生のための付加的な反応系を不要とできる場合がある。すなわち、NAD(P)+再生活性の高い微生物を用いることにより、形質転換体を用いた酸化反応において、NAD(P)+再生用の酵素を添加することなく効率的な反応が行える。
さらに、上記したようなNAD+再生に利用可能な各種酵素遺伝子を、本発明のNAD+依存性L−フェニルセリン脱水素酵素をコードするDNAと同時に宿主に導入することによって、より効率的なNAD+再生酵素とNAD+依存性L−フェニルセリン脱水素酵素の発現及び酸化反応を行うことも可能である。これらの2つもしくはそれ以上の遺伝子の宿主への導入には、不和合性を避けるために複製起源のことなる複数のベクターに別々に遺伝子を導入した組み換えベクターで宿主を形質転換する方法や、単一のベクターに両遺伝子を搭載させる方法、一方、もしくは、両方の遺伝子を染色体中に組み込む方法などを利用することができる。単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター、ターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
本発明のL−フェニルセリン脱水素酵素、L−フェニルセリン脱水素酵素産生能を有する形質転換体、又はその処理物をDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用させる際には、L−フェニルセリン脱水素酵素の活性や安定性、L−フェニルセリン脱水素酵素産生能を有する形質転換株の反応性にとって好ましい条件を選択することができる。
反応の基質であるDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の濃度は、特に制限はないが、通常0.1〜30%程度、好ましくは0.5〜20%、より好ましくは1〜15%とすることができる。本発明における酵素反応、又は菌体反応において基質として用いられている「DL−スレオ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸」は、D−スレオ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸、及びL−スレオ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の混合物である。この混合物中のD体とL体の比率は、D体:L体=10〜90:90〜10であり、好ましくは、D体:L体=25〜75:75〜25、より好ましくはD体:L体=50:50である。
同様に、基質として用いられる「DL−エリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸」は、D−エリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸、及びL−エリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の混合物である。この混合物中のD体とL体の比率は、D体:L体=10〜90:90〜10であり、好ましくは、D体:L体=25〜75:75〜25、より好ましくはD体:L体=50:50である。
なお、本発明における「%」は、いずれも「重量/容量(w/v)」を意味するものとし、%e.e.は、D−スレオ−β−ヒドロキシアミノ酸の場合、(([D−スレオ体の濃度]-[L−スレオ体の濃度])/([D−スレオ体の濃度]+[L−スレオ体の濃度])) x100で表される数値を意味する。同様に、D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の場合、(([D−エリスロ体の濃度]-[L−エリスロ体の濃度])/([D−エリスロ体の濃度]+[L−エリスロ体の濃度])) x 100で表される数値を意味する。
また、基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中に連続的、もしくは間欠的に添加することも可能である。
使用するL−フェニルセリン脱水素酵素の量は、通常は0.01〜10000 U/mL、好ましくは0.1〜1000 U/mL、より好ましくは1〜500 U/mL程度用いることができる。反応温度は本発明の酵素がその活性を発現でき、反応できる温度であれば良く、通常5〜60℃、好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃で行うことができる。また反応pHも、本発明の酵素がその活性を発現でき、反応できるpHであればよく、通常はpH6〜12、好ましくは、pH7〜11.5、より好ましくはpH8〜11で行うことができる。
反応系には必要に応じて補酵素NAD+もしくはNADHが0.001mM−100mM、好ましくは、0.01−10mM添加される。また、反応は攪拌下、あるいは静置下で行うことができる。この場合、反応の進行に伴って生成するNADHをNAD+へ再生するためには、上記したようなNAD+再生用酵素を利用することができる。特にNAD+再生のために共物質を反応系に添加する場合、たとえば、乳酸脱水素酵素を利用する場合のピルビン酸、アルコール脱水素酵素を利用する場合のケトン類、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを利用する場合のα−ケトグルタル酸等を反応系に添加する場合は、これらの化合物は、基質に対してモル比で0.1−20、好ましくは1−5倍過剰に添加することができる。一方、乳酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ等の、NAD+再生用の酵素は、本発明のNAD+依存性L−フェニルセリン脱水素酵素に比較して酵素活性で0.1−100倍、好ましくは0.5−20倍程度添加することができる。
本発明の光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造は、水中もしくは水に溶解しにくい有機溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n−ヘキサン、メチルイソブチルケトン、メチルターシャリーブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの有機溶媒中、もしくは、水性媒体との2相系、もしくは水に溶解する有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシドなどとの混合系により行うことができる。本発明の反応は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
反応により生成した光学活性β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の精製は、アルカリ性化、もしくは、酸性化による生成物の可溶化、遠心分離や濾過などによる分離、有機溶媒による抽出、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、吸着剤による吸着、凝集剤、脱水剤による脱水もしくは凝集、晶析、蒸留、などを適宜組み合わせることにより行うことができる。
たとえば、D−スレオ−β−フェニルセリン及びD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンでは、微生物菌体を含む反応液を遠心分離や膜濾過等によって微生物菌体を除去、タンパク質を除去した後、水溶液中から、濃縮、等電点沈殿などによる晶析法やイオン交換樹脂処理、膜分離等の公知の方法によりD−スレオ−β−フェニルセリン及びD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンを精製することができる。
本発明は上述した酵素活性物質を利用したアミノケトン類の製造方法にも関する。またアミノケトン類の製造方法において原料となるDLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸としては、以下に示すものを好適に用いることができる
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−フェニルセリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−チエニルセリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(2’−クロロフェニル)セリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(3’−クロロフェニル)セリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(4’−クロロフェニル)セリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−2−アミノ−3−シクロヘキシル−3−ヒドロキシプロピオン酸、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(3’,4’−メチレンジオキシフェニル)セリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(3’,4’−ジメトキシフェニル)セリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(3’,4’−ジヒドロキシフェニル)セリン、
DLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−(4’−ベンジルオキシフェニル)セリンなど。
このようなDLもしくはL−スレオ又はエリスロ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸は、例えば、Chemistry of Amino Acids(J. P. Greenstein, and M. Winitz, Vol. 1−3, Wiley, New York, 1961)に記載の方法によって合成することができる。
本発明によるアミノケトン類の製造において好適な反応の条件としては上記で述べた光学活性なβ−ヒドロキシ−α−アミノ酸の製造方法の条件を用いることができる。
反応により生成したアミノケトン類の精製は、遠心分離や濾過などによる分離、有機溶媒による抽出、イオン交換クロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィー、吸着剤による吸着、凝集剤、脱水剤による脱水もしくは凝集、晶析、蒸留、などを適宜組み合わせることにより行うことができる。 たとえば、2−アミノアセトフェノンでは、微生物菌体を含む反応液を遠心分離や膜濾過等によって微生物菌体を除去、タンパク質を除去した後、水溶液中から晶析法やイオン交換樹脂処理、膜分離等の公知の方法により2−アミノアセトフェノンを精製することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1] シュードモナス・シリンジエ NK−15株の培養
シュードモナス・シリンジエ NK−15株(Pseudomonas syringae NK-15)を1.0%ポリペプトン、0.2%リン酸1水素2カリウム、0.2%リン酸2水素1カリウム、0.2%塩化ナトリウム、0.01%硫酸マグネシウム・7水和物、0.01%酵母エキス、0.5%DL−スレオ−β−フェニルセリンを含むpH7.2のポリペプトン培地で30℃、24時間振盪培養し、遠心分離により菌体を得た。
[実施例2] ORF2の取得
実施例1で得られたシュードモナス・シリンジエ NK−15株からゲノムDNAを抽出し、このゲノムDNAを用いて逆PCRを実施した。逆PCRはGenetics 120, 621-623 (1988)に記載の方法に従い、下記のPSDH-CL3およびNL2のプライマーセットを用いて行った。逆PCRにより、ORF2の塩基配列を見出した。
・ PSDH-CL3(配列番号:5): TGGGCCGGGGAACGCGCGCAACGCTTCTGCCAACG
・ PSDH-NL2(配列番号:6): ACGGTGCAACGGGTGCTGCCCGAAGTTCGC
[実施例3] ORF2の塩基配列の決定
実施例2で得た増幅DNA(ORF2)の塩基配列を決定した。DNA塩基配列の決定には、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS ready Reaction Kit(パーキンエルマー社製)を用いてPCRを行い、DNAシーケンサーABI PRISMTM 310(パーキンエルマー社製)により行った。決定した全塩基配列中、認められたORFのうち、ORF2の塩基配列及びこの塩基配列から推定されるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:1及び2に示した。
[実施例4] ORF2遺伝子産物発現プラスミドpSUPSDT3の構築
先ずシュードモナス・シリンジエ NK−15株のゲノムDNAからPCRによりORF2断片を増幅した。ORF2の塩基配列をもとに、その上流部位及び下流部位に対応するそれぞれのオリゴヌクレオチドプライマーPSPSD2−A1とPSPSD2−T1を合成した。
・PSPSD2−A1(配列番号:3):GACGAATTCTATCATGAGTTTTCCAGTTTGTCTCGTC
・PSPSD2−T1(配列番号:4):GCGAAGCTTCTAGATTATGTGTTAAGCAGCAGCCCG
シュードモナス・シリンジエ NK−15株のゲノムDNAを鋳型として各50 pmolのプライマーセットを用いて、10 nmolのdNTP、ExTaq DNAポリメラーゼ用緩衝液(タカラバイオ製)、3 mMのMgCl2、2.5 UのExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製)を含む50 μLの反応液を用い、変性(95℃、45秒)、アニ−ル(50℃、30秒)、伸張(72℃、1分)を30サイクル、DNA Thermal Cycler(パーキンエルマー社製)を用いてPCRを行った。
増幅したORF2 DNA断片をEcoRI及びHindIIIで2重消化し、同様に2重消化したpSE420DにライゲーションしてpSUPSDT3を得た。プラスミド構築の過程を図1に示した。該ORF2を含むプラスミドpSUPSDT3は「FERM-P-20287」(独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター)として寄託されている。
[実施例5] ORF2遺伝子産物の活性確認
実施例4で得られたプラスミドpSUPSDT3を大腸菌DH10B株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体をアンピシリン(50 mg/L)を含む液体LB培地(1.0%バクト−トリプトン、0.5%バクト−酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、pH7.2)に植菌し、30℃で終夜培養した後、0.1 mM IPTGにより発現誘導を4時間行い、遠心分離により集菌体を得た。集菌後、0.02% 2-メルカプトエタノールを含む50 mM リン酸緩衝液(pH8.0)に懸濁し、密閉式超音波破砕装置UCD-200TM(コスモバイオ製)を用いて3分間処理することで、菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心分離し、その上清を無細胞抽出液としてORF2遺伝子産物のフェニルセリン脱水素酵素活性を測定した。
酵素活性の測定は、次の通り行った。200 mM グリシン−KCl−KOH緩衝液(pH10.5)、2.5 mM NAD+、20 mM DL−スレオ−β−フェニルセリンを含む反応液に上記ORF2産物を加え、30℃で反応させ、NADHの増加にともなう340 nmの吸光度の増加を測定した。測定結果は単位( U)で表し、1単位(U)は1分間に1 μmolのNADHの増加を触媒する酵素量とした。酵素の定量は、Bovine Plasma Albuminを標準タンパク質として、バイオラッド製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行った。ORF2産物の酵素活性を測定した結果、0.16 U/mgの比活性を有することが確認できた。
[実施例6] 大腸菌DH10B(pSUPSDT3)の培養菌体の調製
上記実施例5で得られた形質転換体を、アンピシリン(50 mg/L)を含む1.2 Lの2×YT培地(2.0%バクト−トリプトン、1.0%バクト−酵母エキス、1.0%塩化ナトリウム、pH7.2)に植菌した後30℃で培養した。目的遺伝子の発現誘導は0.1 mM IPTGを添加することによって行った。培養後、遠心分離により集菌体を得た。得た集菌体は、0.02%2−メルカプトエタノールを含む10 mMリン酸緩衝液(pH8.0)で洗浄し、再度遠心分離によって洗浄菌体を得た。
[実施例7] L−フェニルセリン脱水素酵素の精製
実施例6により調製した形質転換体の菌体18gを緩衝液(0.1 M リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、2.0 mM PMSF、0.02% 2−メルカプトエタノールを含む)に懸濁し、ガラスビーズを用いて菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心分離し、その上清画分を無細胞抽出液とした。
無細胞抽出液から酵素精製を行った。精製の工程の概略および各精製工程における収率を表1に示す。先ず、無細胞抽出液に50%飽和まで硫安を添加し、遠心分離により上清画分を除去し、得られた沈殿画分を回収した。沈殿画分を0.01% 2−メルカプトエタノールを含む10 mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)(緩衝液1)に溶解し、さらに0.1 mM PMSFを含む同緩衝液に透析後、緩衝液1で平衡化したQ−Sepharoseカラム(2.6 x 35 cm、アマシャム製)に本酵素を吸着させた。同緩衝液で洗浄後、緩衝液1を用いて0 Mから0.5 M 塩化ナトリウムまでグラジエント溶出した結果、本酵素は、0.25 M 塩化ナトリウムを添加した上記緩衝液1で溶出した。活性画分を集め、20%飽和硫安を含む緩衝液1(緩衝液2)に対して透析した。
次に、緩衝液2で平衡化したPhenyl−Sepharoseカラム(2.6 x 10 cm、アマシャム製)に酵素を吸着させた。同緩衝液で洗浄後、緩衝液1を用いて20%飽和から0%硫安までグラジエント溶出した結果、0%硫安の緩衝液1で溶出した活性画分を回収し、濃縮後、緩衝液1に透析した。
精製酵素をゲル電気泳動に供した結果、Native−ポリアクリルアミド、SDS−ポリアクリルアミドいずれの条件においても単一バンドを示した。
Figure 2006246815
[実施例8] L−フェニルセリン脱水素酵素の分子量
精製酵素を、TSKゲルG3000SWカラム(東ソー製)を用い、10mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、0.15M塩化カリウムを含む溶離液でゲル濾過を行った結果、分子量は約98,000であった。
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりサブユニットの分子量を測定した結果、約27,000であった。これらの結果より、本酵素は、同一サブユニットの4量体と予想された。
[実施例9] L−フェニルセリン脱水素酵素に対するpHの影響
フェニルセリン脱水素酵素の至適pHを測定するために、さまざまなpHを有する緩衝液を準備した(リン酸カリウム緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、グリシン−KCl−KOH緩衝液、リン酸1水素2ナトリウム−NaOH緩衝液)。これら緩衝液を用いて、精製酵素のDL−スレオ−β−フェニルセリンに対する脱水素活性を測定した(図2左グラフ)。本酵素はpH9.5からpH11.5の範囲で80%以上の活性を示した。
また、pH5.0から12.0までに種々のpHに調整された広域緩衝液(2.73 mL/L-85%リン酸、2.40g/L-酢酸、2.47 g/L-ホウ酸;NaOHで所定のpHに調整)中で精製酵素を30℃、30分間インキュベーションし、その後、DL−スレオ−β−フェニルセリンに対する脱水素酵素活性を測定した(図2右グラフ)。脱水素酵素活性を測定は実施例5に示す方法で行った。具体的には、200 mM グリシン−KCl−KOH緩衝液(pH10.5)、2.5 mM NAD+、20 mM DL−スレオ−β−フェニルセリンを含む反応液に上記種々のpHでインキュベーションした後の酵素を加え、30℃で反応させ、NADHの増加にともなう340 nmの吸光度の増加を測定した。本酵素は、pH6.0から11.0で80%以上の残存活性を示した。
[実施例10] L−フェニルセリン脱水素酵素に対する温度の影響
リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を用いて異なる温度条件(20℃から55℃)で酵素反応を実行させ、DL−スレオ−β−フェニルセリンに対する脱水素活性を測定した(図3左グラフ)。本酵素の最適温度は40℃であり、35℃から45℃の範囲で80%以上の活性を示した。
また、酵素をリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)中で20℃から65℃で10分間インキュベーションし、インキュベーション後の酵素を用いて、DL−スレオ−フェニルセリンに対する酵素活性を測定した(図3右グラフ)。酵素活性の測定条件は実施例5と同じ条件で行った。本酵素は55℃まで80%以上の残存活性を示した。
[実施例11] L−フェニルセリン脱水素酵素の基質特異性
実施例8により精製したフェニルセリン脱水素酵素を用い、実施例5等に示す標準活性測定条件において基質を変えて活性を測定した。フェニルセリン脱水素酵素の基質特異性を表2に示した。DL−スレオ−β−フェニルセリンに対する活性を100とした相対活性として示す。
Figure 2006246815
[実施例12] L−フェニルセリン脱水素酵素の活性に及ぼす添加剤の影響
実施例5等に示す標準酵素活性測定条件において、基質DL−スレオ−β−フェニルセリンを除く反応液に酵素と添加剤を添加し、30℃、30分間インキュベート後、DL−スレオ−β−フェニルセリンを添加して活性を測定した。L−フェニルセリン脱水素酵素に及ぼす添加剤の影響を表3に示す。添加剤を含まない条件で活性測定した場合の活性値を100とした場合の相対活性として表した。
Figure 2006246815
[実施例13] 大腸菌DH10B (pSUPSDT3)を用いたD−スレオ−β−フェニルセリンの合成
実施例5により得られたプラスミドpSUPSDT3を有する大腸菌DH10B株を用いてD−スレオ−β−フェニルセリンの合成を行った。
200 mM グリシン−KCl−KOH緩衝液(pH9.0)、50 mM DL−スレオ−β−フェニルセリンおよび菌体を含む3 mLの反応液を、攪拌下、30℃で6日間反応させた。反応終了後、残存したD−スレオ−β−フェニルセリンの定量、及び光学純度を次のようにして分析した。
反応終了液を1 N HClで希釈し、遠心分離上清を中和後、CHIRALPAK WH(ダイセル化学工業株式会社製)を用いて以下の条件により分析した。D−スレオ体は、24分に、L−スレオ体は、40分に溶出した。
<分析条件>
カラム:CHIRALPAK WH(φ4.6 x 250 mm)(ダイセル化学工業(株)製)
溶離液:0.25 mM 硫酸銅水溶液
検出:Abs.254 nm
流速:1.0 mL/min
カラム温度:40℃
結果を表4に示した。不要な異性体(L体)の分解により、残存したD−スレオ−β−フェニルセリンが100%e.e.の光学純度、24.8%の収率で得られることが確認できた。
[実施例14] 大腸菌DH10B (pSUPSDT3)を用いたD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンの合成
実施例5により得られたプラスミドpSUPSDT3を有する大腸菌DH10B株を用いてD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンの合成を行った。200 mM グリシン−KCl−KOH緩衝液(pH9.0)、50 mM DL−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンおよび菌体を含む3 mLの反応液を、攪拌下、30℃で6日間反応させた。反応終了後、残存したD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンの定量、及び光学純度を次のようにして分析した。
反応終了液を1 N HClで希釈し、遠心分離上清を中和後、CHIRALPAK WH(ダイセル化学工業株式会社製)を用いて実施例14に記載の方法により分析した。D−スレオ体は、24分に、L−スレオ体は、43分に溶出した。
大腸菌DH10B株(pSUPSDT3)を用いたD−スレオ−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸の合成結果を表4に示した。不要な異性体の分解により、残存したD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンが100%e.e.の光学純度、26.7%の収率で得られることが確認できた。
Figure 2006246815
L−β−フェニルセリン脱水素酵素をコードしたDNAを保持したベクター(pSUPSDT3)の構築工程を示す模式図である。 L−β−フェニルセリン脱水素酵素の反応時pH依存性(左)とpH安定性(右)を示すグラフである。 L−β−フェニルセリン脱水素酵素の温度依存性(左)と温度安定性(右)をを示すグラフである。

Claims (18)

  1. 下記(1)および(2)に示す理化学的性質を有するタンパク質。
    (1)作用
    酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補酵素としてL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用し、β位の水酸基を酸化する
    (2)基質特異性
    L−β−フェニルセリンに対して、L−スレオニンよりも高い活性を有する
  2. さらに下記(3)および(4)に示す理化学的性質を有する、請求項1に記載のタンパク質。
    (3)至適pH
    至適pHがpH9.5から11.0である
    (4)分子量
    ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動による分子量が約27,000
  3. シュードモナス属に属する微生物に由来する、請求項1に記載のタンパク質。
  4. シュードモナス属に属する微生物が、シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)である、請求項3に記載のタンパク質。
  5. 下記(a)から(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドであり、下記(1)および(2)により特徴付けられたL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸におけるβ位水酸基の酸化活性を有するタンパク質をコードした、ポリヌクレオチド。
    (a)配列番号:1に記載された塩基配列を含むポリヌクレオチド
    (b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
    (c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなるポリヌクレオチド
    (d)配列番号:1に記載された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
    (e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と50%以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド
    (1)作用; 酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を補酵素としてL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用し、β位の水酸基を酸化する
    (2)基質特異性; L−β−フェニルセリンに対して、L−スレオニンよりも高い活性を有する
  6. 請求項5に記載のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
  7. 請求項5に記載のポリヌクレオチドを保持したベクター。
  8. 請求項5に記載のポリヌクレオチド、または請求項7に記載のベクターを保持する形質転換体。
  9. 請求項8に記載の形質転換体を培養し、発現産物を回収する工程を含む、請求項1または請求項6に記載のタンパク質の製造方法。
  10. シュードモナス属に属し、請求項1または請求項6記載のタンパク質を産生する微生物を培養する工程を含む、請求項1または請求項6記載のタンパク質の製造方法。
  11. シュードモナス属に属する微生物が、シュードモナス・シリンジエ(Pseudomonas syringae)である、請求項10記載の方法。
  12. 請求項1ならびに請求項6記載のタンパク質、これらいずれかを産生する微生物、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の存在下でDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用させ、D−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸を回収する工程を含む、光学活性なβ−ヒドロキシα−アミノ酸の製造方法。
  13. DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、下記一般式1または式2で表されるDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸(式1,2中、Rは置換されてもよいアルキル基又はアリール基を表す)である、請求項12に記載の方法。
    Figure 2006246815
  14. DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、DL−スレオ−β−フェニルセリンであり、光学活性なβ−ヒドロキシα−アミノ酸がD−スレオ−β−フェニルセリンである、請求項12に記載の方法。
  15. DL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、DL−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンであり、光学活性なβ−ヒドロキシα−アミノ酸がD−スレオ−β−(3,4−メチレンジオキシフェニル)セリンである、請求項12に記載の方法。
  16. 請求項1ならびに請求項6に記載のタンパク質、それらを産生する微生物、およびそれらの処理物からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物質を、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドもしくは酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の存在下でL−又はDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸に作用させ、生成するアミノケトン類を回収する工程を含むアミノケトン類の製造方法。
  17. アミノケトン類が、下記一般式3で表されるアミノケトン類(式中Rは、置換されてもよいアルキル基又はアリール基を表す)である、請求項16記載の方法。
    Figure 2006246815
  18. L−又はDL−β−ヒドロキシ−α−アミノ酸が、L−又はDL−スレオ−β−フェニルセリンであり、アミノケトン類が2−アミノアセトフェノンである、請求項16に記載の方法。
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