JP2006174726A - 微生物の培養方法及び光学活性カルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 酸素及び/又はスーパーオキシドとの接触により失活しやすい酵素をコードする遺伝子を、酸素消費能及び/又はスーパーオキシド除去能を有する宿主微生物で発現させた組換え微生物が植菌された培養液に酸素を供給しながら培養し、該微生物の培養終了時の培養液の溶存酸素濃度が、0.5ppm以下になるように酸素供給量を調節し、菌体又は菌体を含む培養液を回収する。
【選択図】 なし
Description
Rohdich, F. et. al.(2001) J. Biol. Chem., Vol.276, p.5779 Bader, J. et. al. (1980) Arch. Microbiol., Vol.127, p.279
(1) 酸素及び/又はスーパーオキシドとの接触により失活しやすい酵素をコードする遺伝子を、酸素消費能及び/又はスーパーオキシド除去能を有する宿主微生物で発現させた組換え微生物の菌体又は菌体を含む培養液の調製方法であって、該微生物が植菌された培養液に酸素を供給しながら培養し、該微生物の培養終了時の培養液の溶存酸素濃度が、0.5ppm以下になるように酸素供給量を調節し、菌体又は菌体を含む培養液を回収することを特徴とする組換え微生物の菌体又は菌体を含む培養液の調製方法。
(3) 酵素が、鉄−硫黄クラスターを有する酵素である(1)又は(2)に記載の調
製方法。
(4) 酵素が、エノエートレダクターゼである(1)〜(3)のいずれかに記載の調製方法。
(5) 酵素が、下記一般式(I)
ていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を示す)。
本発明においては、酸素及び/又はスーパーオキシドとの接触により失活しやすい酵素
をコードする遺伝子が、酸素消費能及び/又はスーパーオキシド除去能を有する宿主微生物で発現された組換え微生物を、酸素を供給しながら培養し、該微生物の培養終了時の培養液の溶存酸素濃度が、0.5ppm以下になるように酸素供給量を調節し、菌体又は菌体を含む培養液を回収する。
酸素やスーパーオキシドとの接触により失活しやすい酵素とは、酸素及び/又はスーパーオキシドとの接触により直接的又は間接的に活性が低下する酵素であり、例えば、鉄−硫黄クラスターを含む酵素、-SH基を含む酵素、反応中間体がスーパーオキシド等との接触により非酵素的に酸化され副産物が生じやすい酵素等が挙げられる。
ートレダクターゼはサブユニットあたり1つのFAD(flavin adenine dinucleotide)
と1つの[4Fe−4S]クラスターを有し、還元状態で酸素と接触すると急激に失活することが知られている(Eur. J. Biochem., vol. 97, p.103-112 (1979))。このような
鉄−硫黄クラスターを有する酵素は、鉄−硫黄クラスターがスーパーオキシドにより酸化されて崩壊することで活性を失うと考えられている(Adv. Microb. Physiol., vol.46, p.111-153 (2002))。また、エノエートレダクターゼのように鉄−硫黄クラスターに加え
てFADを有する酵素は、還元状態で酸素と接触すると電子伝達により自身でスーパーオキシドを発生してしまうため、酸素存在下で失活しやすいと考えられる(J. Biol. Chem., vol.277, p.42563-42571 (2002))。
エノエートレダクターゼとしては、下記一般式(I)
ゼ(一般式(I)、及び(II)中、R1は、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、ヒド
ロキシ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を示す)を好ましく用いることができる。
上記アルキル基、アリール基及びアルコキシ基は置換されていてもよい。置換基としては、反応に悪影響を与えない基であれば特に限定はないが、具体的には、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基及びヒドロキシル基等が挙げられる。
前記一般式(I)及び(II)において、R1、R2及びR3はハロゲン原子であって
もよいが、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
ンジル基又はフェニル基であり、より好ましくは炭素数1〜4の置換されていてもよいアルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基である。
また、R2及びR3として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜4の置換されていてもよいアルキル基、炭素数1〜4の置換されていてもよいアルコキシ基、ベンジル基又はフェニル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜4の置換されていてもよいアルキル基である。
上記一般式(I)で表される化合物は、欧州特許第906901号明細書、欧州特許第937710号明細書、仏国特許発明第2772027号明細書、第4版実験化学講座(19巻、p62、1992年)等に記載されているような公知の方法に準じて又はそれらの組み合わせにより、容易に合成することができる。
上記一般式(II)で表される化合物としては、具体的には、(S)−2−ヒドロキシメチル酪酸、(S)−2−ヒドロキシメチル吉草酸、(S)−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸、(S)−2−ヒドロキシメチルヘプタン酸、(S)−2−ヒドロキシメチルオクタン酸、(S)−2−ヒドロキシメチル−3−フェニルプロピオン酸、(R)−2−メチル酪酸、(R)−2−メチル吉草酸、(R)−2−メチルヘキサン酸、(R)−2−メチルヘプタン酸、(R)−2−メチルオクタン酸等が挙げられる。
また、本発明においては、これらのホモログであって、前記の酵素活性を有するものを用いてもよい。ホモログとは、例えば、前記活性を害さない範囲内において配列番号2に記載のアミノ酸配列に一個若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここで数個とは、具体的には20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
また、ホモログは、配列番号1の塩基配列を有するDNA又はその相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、エノエートレダクターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、プローブDNAを用いて、ストリンジェントな条件下で、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を行うことにより得られるDNAを意味し、「ストリンジェントな条件」としては、例えば、コロニーハイブリダイゼーション法及びプラークハイブリダイゼーション法においては、コロニーあるいはプラーク由来のDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2×SSC溶液(1×SSCの組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄する条件を挙げることができる。
当業者であれば、配列番号1に記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. vol. 10, p6487 (1982), Methods in Enzymol., vol. 100, p.448(1983), Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、PCR: A Practical Approach, IRL Press, p.200(1991))等を用いて適宜置換、欠失、挿入及び/又は付加変異を導入することにより、本発明の製造法に用いることのできるエノエートレダクターゼをコードするDNAを得ることが可能である。
各ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
本発明の酸素やスーパーオキシドとの接触により失活しやすい酵素をコードする遺伝子を発現させるための形質転換の対象となる宿主微生物としては、宿主自体が好気条件で生育可能であり、酸素消費能及びスーパーオキシド除去能があり、該酵素に悪影響を与えないものであれば限定されることはない。
ここで、酸素消費能とは、微生物の有する好気的呼吸などの機能により酸素分子を消費する能力であり、スーパーオキシド除去能とは、スーパーオキシドジスムターゼなどによりスーパーオキシドをより無害な化合物に変換する能力である。これにより、酸素やスーパーオキシドと本発明の酵素との接触を阻害することができる。
宿主自体が好気条件で生育可能であり、酸素消費能及びスーパーオキシド除去能があり、該酵素に悪影響を与えない宿主微生物として、具体的には以下に示すような微生物を挙げることができる。
ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などに属す
る宿主ベクター系の確立されている放線菌。
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピキア(Pichia)属、キャ
ンディダ(Candida)属などに属する宿主ベクター系の確立されている酵母。
ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリ
ウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などに属する宿主ベクター
系の確立されているカビ。
(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属であり、特に好ましくは、エシェリヒア(Escherichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属である。
形質転換細胞作製のための手順、宿主に適合した組換えベクターの構築及び宿主の培養方法は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、「モレキュラークローニング第2版」、Cold Spring Harbor
Laboratory Press(1989年)、参照)。
エシェリヒア属、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとしては、pBR、pUC系プラスミドなどが挙げられ、プロモーターとしては、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc(lac、trpの融合)、λファージPL、PRなどに由来するプロモーターなどが挙げられる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、又はrrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどが挙げられる。
シュードモナス属においては、ベクターとしては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで確立されている一般的な宿主ベクター系や、トルエン化合物の分解に関与するプラスミド、TOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240(Gene,vol. 26,p273-82(1983))を挙げることができる。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、ベクターとしては、pCS11(特開昭57−183799号公報)、pCB101(Mol.Gen.Genet.vol. 196,p175(1984))などのプラスミドベクターが挙げられる。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、ベクターとしては、Mol.Cell.Biol.vol. 6,p80(1986)に記載のシゾサッカロマイセス・ポンベ由来のプラスミドベクターを挙げることができる。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
niger)、アスペルギルス・オリジー(Aspergillus oryzae)などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外
プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology vol. 7,p283-287(1989))。
また、上記以外でも、各種微生物に応じた宿主ベクター系が確立されており、それらを適宜使用することができる。また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が確立されており、特に蚕を用いた昆虫などの動物中(Nature vol. 315, p592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系、及び大腸菌無細胞抽出液や小麦胚芽などの無細胞タンパク質合成系を用いた系が確立されており、好適に利用できる。
形質転換細胞の作製方法としては、具体的には、微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中に、エノエートレダクターゼをコードするDNAを組み込み、構築された発現ベクターを該微生物中に導入するか、もしくは、直接宿主ゲノム中にエノエートレダクターゼをコードするDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。
本発明に使用される培地の炭素源は特に限定されるものではないが、グルコースやグリセロールが好適である。培地の窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素等を単独又は混合して用いることができる。
無機塩としては、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸マグネシウム等が用いられる。その他、鉄、亜鉛、コバルト、銅などの各種金属塩を微量加えることも効果的である。この他に、菌の生育に必要であれば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、各種ビタミン等の栄養素を培地に添加してもよい。
また、ベクターの保持等に必要であればアンピシリン、カナマイシン等の抗生物質や特定のアミノ酸等を加える場合もある。
培養液中の炭素源の濃度は、0.05〜20%w/vが用いられ、培養開始時から全量添加しても培養中分割してもよい。培養期間は培養条件にもよるが通常8時間〜10日間、好ましくは1〜3日間であるが、酵素活性量をモニターしながら十分量の活性が発現されているタイミングで培養を終了するのが最も好ましい。
例えば、エイブル社製、型式BMJの1Lジャーファーメンターでエノエートレダクターゼを発現させたE.coli JM109株を培養する場合は、培養温度28〜40℃、空気の場合、通気量0.5〜2vvm(酸素として0.1〜0.5vvm相当量が通気されていればよい)、攪拌数200〜800rpmで培養を行い、培養開始後15〜40時間で菌体を回収するのが好ましいが、使用する発酵槽、菌体の種類によってはこの限りではない。
また、菌体増殖過程における遅滞期から対数増殖期初期にかけては酸素の消費が少なく、溶存酸素濃度が高くなることがあるが、対数増殖期に溶存酸素濃度を0.5ppm以下に保持すれば酵素活性量には大きな影響が無い場合が多い。
本発明の製造方法においては、前記一般式(I)で表されるα,β-不飽和カルボン酸に、上記に記載の培養方法により得られた培養液、該培養液から回収した組換え微生物の菌体、及び/又は、該菌体処理物を作用させ、前記一般式(II)で表される光学活性カルボン酸を生成させる。
が好ましい。添加濃度は、0.001mM〜100mM、好ましくは0.01〜10mMである。これらの補酵素を添加する場合には、NADHから生成するNAD+をNADH
への再生させることが生産効率向上のため好ましく、再生方法としては、(i)宿主微生
物自体のNAD+還元能を利用する方法、(ii)NAD+からNADHを生成する能力を有する微生物やその調製物、あるいは、グルコース脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などのNADHの再生に利用可能な酵素(再生酵素)を反応系内に添加する方法、又は(iii
)形質転換細胞を作製するに当たり、NADHの再生に利用可能な酵素である上記再生酵素類の遺伝子をエノエートレダクターゼをコードするDNAと同時に宿主に導入する方法、が挙げられる。
パノール、ギ酸などを添加することが好ましい。
また、上記(ii)の方法においては、上記再生酵素類を含む微生物、該微生物菌体をアセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、物理的又は酵素的に破砕したもの等の菌体調製物、該酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出したもの、さらには、これらをポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したもの等を用いてもよく、また市販の再生酵素を用いても良い。この場合、上記再生酵素の使用量としては、具体的には、本発明のエノエートレダクターゼに比較して、酵素活性で0.01〜100倍、好ましくは0.5〜20倍程度となるよう添加する。また、上記再生酵素の基質となる化合物、例えば、グルコース脱水素酵素を利用する場合のグルコース、ギ酸脱水素酵素を利用する場合のギ酸、アルコール脱水素酵素を利用する場合のエタノールもしくはイソプロパノールなどの添加も必要となるが、その添加量としては、反応原料である2−ヒドロキシメチル桂皮酸誘導体に対して、0.1〜20倍モル当量、好ましくは1〜5倍モル当量添加する。
上記再生酵素類のDNAを染色体に組み込む方法、単一のベクター中に両DNAを導入し、宿主を形質転換する方法、及び両DNAをそれぞれ別個にベクターに導入した後に宿主を形質転換する方法を用いることができるが、両DNAをそれぞれ別個にベクターに導入した後に宿主を形質転換する方法の場合、両ベクター同士の不和合性を考慮してベクターを選択する必要がある。単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター及びターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
本発明製造法において反応基質となる上記一般式(I)で表される化合物は、通常、基質濃度が0.01〜90%w/v、好ましくは0.1〜30%w/vの範囲で用いることができる。反応基質は、反応開始時に一括して添加しても良いが、酵素の基質阻害があった場合の影響を減らすという点や生成物の蓄積濃度を向上させるという観点からすると、連続的もしくは間欠的に添加することが望ましい。
本発明の方法は例えば、4〜60℃、好ましくは10〜45℃の反応温度で、pH3〜11、好ましくはpH5〜8で行うことができる。また、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。また、エノエートレダクターゼの酸素による失活を防ぐため、反応液中に亜硫酸ナトリウムを添加したり、反応液を窒素やアルゴンガス等でシールすることにより、酸素の除去を行うことも効果的である。しかし、反応時には宿主微生物の酸素消費能やスーパーオキシド除去能により、特に嫌気的雰囲気を必要としない場合もある。
ンなどの有機溶媒による抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、晶析等のなどを適宜組み合わせることにより精製を行うことができる。
ムーレラ サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)由来のエノエー
トレダクターゼ(Accession No. CAA76082、配列番号2)をコードするDNA配列(Accession No. Y16136 REGION:47..2050、配列番号1)を元に配列番号3及び4に記載のプライマーを合成した。これらのプライマーを各15pmol、dNTP各10nmol、ムーレラ サーモオートトロフィカDSM1974のゲノムDNA 25ng 、KOD−plus−用10×緩衝液(東洋紡績社製)5μL、KOD −plus− 1ユニット(東洋紡績社製)を含む50μLの反応液を用い、変性(94℃、15秒)、アニール(57℃、30秒)、伸長(68℃、2分)を30サイクルで、PTC−200(MJ Research社製)を用いてPCR反応を行った。PCR反応液の一部をアガロースゲル電気泳動により解析した結果、DNA鎖長約2kbの位置に、ムーレラ サーモオートトロフィカ由来のエノエートレダクターゼ遺伝子と思われるバンドが検出できた。
バチルス サチルス(Bacillus subtilis)由来のグルコース脱水素酵素(Accession No. AAA22463、配列番号6)をコードするDNA配列(Accession No. M12276、配列番号
5)を元に配列番号7及び8に記載のプライマーを合成した。これらのプライマーを各15pmol、dNTP各10nmol、バチルス サチルス W168のゲノムDNA 25ng 、KOD −plus−用10×緩衝液(東洋紡績社製)5μL、KOD −plus− 1ユニット(東洋紡績社製)を含む50μLの反応液を用い、変性(94℃、15秒)、アニール(57℃、30秒)、伸長(68℃、2分)を30サイクルで、PTC−200(MJ Research社製)を用いてPCR反応を行った。PCR反応液の一部をアガロースゲル電気泳動により解析した結果、DNA鎖長約0.8kbの位置に、バチルス サチルス由来のグルコース脱水素酵素遺伝子と思われるバンドが検出できた。
製したDNA断片を制限酵素EcoRIとXbaIで消化し、アガロースゲル電気泳動を行い、目的とするバンドの部分を切り出し、Qiagen Gel Extraction kit(Qiagen社製)により精製後回収した。得られたDNA断片を、EcoRI、及びXbaIで消化したpMW218(ニッポンジーン社製)に、Ligation high(東洋紡績社製)を用いてライゲーションし、大腸菌JM109株を熱ショック法により形質転換した。形質転換細胞をカナマイシン(20μg/mL)を含むLB寒天培地上で生育させ、コロニーダイレクトPCRを行い、挿入断片のサイズを確認した。目的とするDNA断片が挿入されていると考えられる形質転換細胞を20μg/mLのカナマイシンを含むLB培地で培養し、QIAPrepSpin Mini Prep kit(Qiagen社製)を用いてプラスミドを精製し、pMWBsGDHとした。プラスミドに挿入したDNAの塩基配列をダイターミネーター法により解析したところ、挿入されたDNA断片は、配列番号5の塩基配列と一致した。
得られたpMWBsGDHにより実施例(1)のエノエートレダクターゼ発現大腸菌JM109株を熱ショック法により形質転換した。本形質転換細胞をE.coli JM109 pKKMtER1,pMWBsGDHと呼ぶ。
E.coli JM109 pKKMtER1,pMWBsGDHをアンピシリン 50μg/mL及びカナマイシン 20μg/mLを含むLB培地30ml(50mlのPP製チューブに入れる)で30℃、20時間振盪培養した。リン酸水素二カリウム 5g/L、リン酸二水素カリウム 4g/L、硫酸アンモニウム 1g/L、硫酸マグネシウム・7水和物 0.1g/L、酵母エキス 5g/L、粉末コーンスティープリカー 5g/L、グリセロール 100g/L、アンピシリン 50mg/L、カナマイシン 20mg/L、微量元素ミックス(硫酸鉄(II)・7水和物 28g/L、硫酸亜鉛・7水和物 2.8g/L、硝酸コバルト(II)・6水和物 2.4g/L、モリブデン酸ナトリウム・2水和物 2g/L、塩化カルシウム 0.76g/L、硫酸銅(II)・5水和物 2g/L、ホウ酸 0.5g/L) 3ml/L、アデカノール 0.1ml/Lからなる培地500mlを1Lのジャーファーメンタ−(エイブル社製、型式BMJ)に作製し、前述の培養液を全量添加した。培養中は通気1vvm、攪拌600pm、温度30℃に調整し、pH及びDOをモニターした。pHは28%アンモニア水にてpH7に調整した。培養中、適時培養液をサンプリングしてOD610と活性を測定した。
(SUPELCO社製、30m×0.25mmID(内径)、キャピラリー内側塗布物の膜厚:0.25μm film)
キャリア:He 1.5ml/min、 split 1/50
カラム温度:120℃
注入温度:250℃
検出:FID 250℃
GC:島津GC−14A(島津製作所社製)
上記(3)と同様の条件にてE.coli JM109 pKKMtER1,pMWBsGDHを培養し、培養開始22時間後に培養を終了し、遠心により集菌を行った。得られた菌体は湿菌体重 31g/Lであった。
上記菌体50g/L、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)、200mM グルコース、10g/L チグリン酸からなる反応液50mlを調製し、100mlのガラス容器中、エイブル社製、型式BMJの培養装置にて37℃に温調、300rpmで攪拌を行いながら還元反応を行った。反応中、適時反応液をサンプリングした。サンプリングした反応液200μLに6N HCl 10μLを添加し、500μL 酢酸エチルにて抽出後、酢酸エチル層をGCで分析した。GC条件は実施例(3)と同様である。結果を図3に示す。30時間の反応終了後、得られた(R)−2−メチル酪酸は9.43g/Lで、転換率99%以上、光学純度99%以上であった。
Claims (6)
- 酸素及び/又はスーパーオキシドとの接触により失活しやすい酵素をコードする遺伝子を、酸素消費能及び/又はスーパーオキシド除去能を有する宿主微生物で発現させた組換え微生物の菌体又は菌体を含む培養液の調製方法であって、該微生物が植菌された培養液に酸素を供給しながら培養し、該微生物の培養終了時の培養液の溶存酸素濃度が0.5ppm以下になるように酸素供給量を調節し、菌体又は菌体を含む培養液を回収することを特徴とする組換え微生物の菌体又は菌体を含む培養液の調製方法。
- 組換え微生物が、大腸菌である請求項1に記載の調製方法。
- 酵素が、鉄−硫黄クラスターを有する酵素である請求項1又は2に記載の調製方法。
- 酵素が、エノエートレダクターゼである請求項1〜3のいずれかに記載の調製方法。
- 酵素が、下記一般式(I)
下記一般式(II)
アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基を示す)。 - 一般式(I)で表されるα,β-不飽和カルボン酸に、請求項5に記載の調製方法により得られた培養液、該培養液から回収した組換え微生物の菌体、及び/又は、該菌体処理物を作用させ、一般式(II)で表される光学活性カルボン酸を生成させることを特徴とする光学活性カルボン酸の製造方法。
Priority Applications (1)
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