JP2011505799A - エノエートレダクターゼを用いるα−およびβ−デヒドロアミノ酸の酵素的還元法 - Google Patents

エノエートレダクターゼを用いるα−およびβ−デヒドロアミノ酸の酵素的還元法 Download PDF

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Abstract

本発明は、一般式(1)または(2)のα-デヒドロアミノ酸から一般式(3)または(4)のアミノ酸[式中、R1およびR2は、独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、場合により置換されてもよい炭素環もしくは複素環式の芳香族もしくは非芳香族基、アルキルアリール基、またはカルボキシル基(-COOR)であり、R3はH、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、BOC、またはAllocであり、RはH、C1-C6アルキル、またはアリールである]を調製する方法であって、式(1)または(2)の化合物をレダクターゼの存在下で還元することによる上記方法に関する。
Figure 2011505799

【選択図】なし

Description

本発明は、一般式(1)および(2)のα-およびβ-デヒドロアミノ酸の酵素的還元法に関する。
本発明の課題は、一般式(3)および(4)の化合物を酵素的に調製する方法、特に化学収率が高くかつ立体選択性が非常によい方法を提供することである。
上記の課題は、一般式(1)および(2)のα-デヒドロアミノ酸を還元するためにレダクターゼYqjM、OPR1、OPR3およびそれらの機能的等価物を用いることにより達成された。
本発明は、一般式(1)または(2)のα-デヒドロアミノ酸から一般式(3)または(4)のアミノ酸を酵素的に調製する方法であって、
Figure 2011505799
[式中、
R1、R2は、それぞれ独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、場合により置換されてもよい炭素環もしくは複素環式の芳香族もしくは非芳香族基、またはアルキルアリール基、またはカルボキシル基(-COOR)であり、
R3は、H、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、BOC、またはAllocであり、
Rは、H、C1-C6アルキル、またはアリールである]
式(1)または(2)の化合物を、
(i) 配列番号1、2、3、4、5、6のポリペプチド配列の少なくとも1つを含むか、または
(ii) 配列番号1、2、3、4、5、6と80%以上の配列同一性を示す、機能的に等価なポリペプチド配列を有する、
レダクターゼの存在下で還元することによる上記方法に関する。
本発明の方法は、基本的には、精製されたもしくは富化された酵素そのものを用いて実施することができ、また、その酵素を天然でもしくは組換えにより発現する微生物またはそれから得られる細胞ホモジネートを用いても実施することができる。
特に明記しない限り、次の意味を有する:
- C1-C6-アルキル、特にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル、および1回以上分岐する類似基、例えばi-プロピル、i-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、i-ペンチルまたはネオペンチル、特に上記のC1-C4-アルキル基が好ましい;
- C2-C6-アルケニル、特に炭素原子数2〜6の上記アルキル基のモノ不飽和類似基、特に対応するC2-C4-アルケニル基が好ましい;
- 炭素環もしくは複素環式の芳香族もしくは非芳香族環、特に3〜12個の炭素原子および場合によりN、S、O(特にNまたはO)のような1〜4個のヘテロ原子を有する、場合により縮合した環。その例として以下が挙げられる:シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、これらのモノまたはポリ不飽和の類似環、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル;フェニルおよびナフチル;ならびにO、NおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和もしくは不飽和複素環式基(ここで、該複素環はさらなる複素環または炭素環に縮合してもよい)。特に、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、クマロン、インドールおよびキノリンから誘導される複素環式基が挙げられる。これらの環式基のみならず、上記のアルキルおよびアルケニル基もまた、場合により1回以上(例えば1、2または3回)置換されてもよい。適当な置換基の例として、ハロゲン、特にF、Cl、Br;-OH、-SH、-NO2、-NH3、-SO3H、C1-C4-アルキルおよびC2-C4-アルケニル、C1-C4-アルコキシ;およびヒドロキシ-C1-C4-アルキルが挙げられ、ここで、アルキルおよびアルケニル基は先に定義したとおりであり、アルコキシ基は先に定義した対応するアルキル基から誘導される;
- BOCはtert-ブトキシカルボニル(保護)基である;
- Allocはアリルオキシカルボニル(保護)基である。
上に記載した環式基は、炭素環すなわち炭素原子のみで構成される環であってもよいし、複素環すなわちO、S、Nのようなヘテロ原子を含む環であってもよい。必要に応じて、これらの炭素環または複素環はさらに置換されてもよい。
デヒドロアラニンおよびデヒドロアスパラギン酸塩の酵素的還元は本発明の特に有利な実施形態である。
本発明の方法に適するレダクターゼ(エノエートレダクターゼと呼ぶこともある)は、配列番号1、2もしくは3に示されるポリペプチド配列を有するか、または配列番号1、2、3、4、5もしくは6と80%以上の配列同一性、例えば90%以上、または95%以上、特に97%以上、98%以上もしくは99%以上の配列同一性を示すポリペプチド配列を有する。
配列番号1に示されるポリペプチドは、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のYqjMとして知られる(UniprotKB/Swissprot entry P54550)。
配列番号2に示されるポリペプチドは、トマトOPR1遺伝子によりコードされる(UniprotKB/Swissprot entry Q9XG54)。
配列番号3に示されるポリペプチドは、トマトOYPR3遺伝子によりコードされる(UniprotKB/Swissprot entry Q9FEW9)。
配列番号4に示されるポリペプチドは、ビール酵母(Saccharomyces carlsbergensis) OYE1として知られる(Genbank Q02899)。
配列番号5に示されるポリペプチドは、パン酵母由来のOYE2遺伝子(Saccharomyces cerevisiae遺伝子座YHR179W)によりコードされる(Genbank Q03558)。
配列番号6に示されるポリペプチドは、パン酵母由来のOYE3遺伝子(Saccharomyces cerevisiae遺伝子座YPL171C)によりコードされる(Genbank P 41816)。
配列同一性は、本明細書に記載した目的のために、ウィスコンシン大学のジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group:GCG)の「GAP」コンピュータプログラムにより確定されるものとし、GCGが推奨する標準パラメーターを用いてバージョン10.3を利用するものとする。
そのようなレダクターゼは、配列番号1、2、3、4、5、6から出発して、当業者に知られた標的またはランダム突然変異誘発法により取得することが可能である。しかし、これに代わる別法として、上記のモデル反応を触媒するレダクターゼであって、そのアミノ酸配列が配列番号1、2、3、4、5、6に対して必要な配列同一性をすでに有するか、または突然変異誘発法により得られるレダクターゼについて微生物、好ましくは以下の属の微生物をスクリーニングすることも可能である:アリシェワネラ属(Alishewanella)、アルテロコッカス属(Alterococcus)、アクアモナス属(Aquamonas)、アラニコラ属(Aranicola)、アルセノフォヌス属(Arsenophonus)、アゾチビルガ属(Azotivirga)、ブレネリア属(Brenneria)、ブフネラ属(Buchnera)(アブラムシP-細胞内共生細菌)、ブドビシア属(Budvicia)、ブティアウクセラ属(Buttiauxella)、カンジダツス・フロモバクター(Candidatus Phlomobacter)、セデセア属(Cedecea)、シトロバクター属(Citrobacter)、ディケヤ属(Dickeya)、エドワージエラ属(Edwardsiella)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、エシェリキア属(Escherichia)、エウィンゲラ属(Ewingella)、グリモンテラ属(Grimontella)、ハフニア属(Hafnia)、クレブシェラ属(Klebsiella)、クライベラ属(Kluyvera)、レクレルシア属(Leclercia)、レミノレラ属(Leminorella)、モエレラ属(Moellerella)、モルガネラ属(Morganella)、オブサムバクテリウム属(Obesumbacterium)、パントエア属(Pantoea)、ペクトバクテリウム属(Pectobacterium)、フォトラブダス属(Photorhabdus)、プレジオモナス属(Plesiomonas)、プラジア属(Pragia)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、ラーネラ属(Rahnella)、ラオウルテラ属(Raoultella)、サルモネラ属(Salmonella)、サムソニア属(Samsonia)、セラチア属(Serratia)、シゲラ属(Shigella)、ソダリス属(Sodalis)、テイタメラ属(Tatumella)、トラブルシエラ属(Trabulsiella)、ウィグルスウォーチア属(Wigglesworthia)、ゼノラブダス属(Xenorhabdus)、エルシニア属(Yersinia)、ヨケネラ属(Yokenella)またはザイモモナス属(Zymomonas)。
レダクターゼは、精製されたもしくは部分的に精製された形で、あるいは微生物そのものの形でさえも、利用することができる。デヒドロゲナーゼを微生物から回収して精製する方法は当業者によく知られている。
レダクターゼによるエナンチオ選択的還元は、適当な補因子(補基質ともいう)の存在下で行うことが好ましい。ケトンの還元に通常用いられる補因子はNADHおよび/またはNADPHである。レダクターゼはさらに、補因子をもともと含む細胞系として利用することができ、また、別のレドックスメディエーターを添加することも可能である(K. Drauz and H. Waldmann, 「Enzyme Catalysis in Organic Synthesis (有機合成における酵素触媒作用)」 2002, 第III巻, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheim中のA. Schmidt, F. HollmannおよびB. Buehlerによる「Oxidation of Alcohols(アルコールの酸化)」)。
レダクターゼによるエナンチオ選択的還元は、還元反応中に酸化された補因子を再生する適当な還元剤の存在下で行うことがさらに好ましい。適当な還元剤の例は、糖類(特にヘキソース類、例えばグルコース、マンノース、フルクトース)、および/または被酸化性アルコール類(特にエタノール、プロパノール、イソプロパノール)、ならびにギ酸、亜リン酸または分子状水素である。かかる還元剤を酸化し、それに伴って、補酵素を再生するために、第2のデヒドロゲナーゼを添加することが可能であり、例えば、還元剤としてグルコースを用いる場合にはグルコースデヒドロゲナーゼを、また、還元剤としてギ酸を用いる場合にはギ酸デヒドロゲナーゼを添加する。この第2のデヒドロゲナーゼは遊離もしくは固定化酵素として、または遊離もしくは固定化細胞の形で利用することができる。その調製は別々に行ってもよいし、(組換え)レダクターゼ菌株における共発現により行ってもよい。
本発明の方法の好ましい実施形態は、第2のデヒドロゲナーゼ、特に好ましくはグルコースデヒドロゲナーゼを用いる酵素系により補因子を再生するものである。
さらに、還元を促進するさらなる添加剤、例えば金属塩またはEDTAのようなキレート剤など、を加えることが好都合でありうる。
本発明に従って用いられるレダクターゼは、遊離の形態または固定化された形態で利用することができる。固定化酵素とは、不活性担体に固定された酵素を意味する。適当な担体材料とそこに固定化される酵素は、EP-A-1149849、EP-A-1 069 183およびDE-A 100193773、ならびにそれらに引用された参考文献中に開示されている。これらの刊行物のこの点に関する開示内容は、それを参照することによりそのまま本明細書中に組み入れるものとする。適当な担体材料としては、例えば、粘土、粘土鉱物、例えばカオリナイト、珪藻土、パーライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、アニオン交換体、合成ポリマー、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、およびポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)が挙げられる。担体に結合された酵素を調製するために、通常、担体材料は微細な粒子状のものを利用し、特に多孔質のものが好ましい。担体材料の粒子サイズは通常5mm以下、特に2mm以下(粒度曲線)である。同様に、全細胞型触媒としてデヒドロゲナーゼを用いる場合には、遊離の形態または固定化された形態を選択することが可能である。担体材料の例はアルギン酸カルシウムおよびカラギーナンである。酵素のみならず細胞もまた、グルタルアルデヒド(架橋してCLEAをもたらす)を用いて直接架橋させることができる。同様のさらなる固定化方法は、例えば、K. Drauz and H. Waldmann, 「Enzyme Catalysis in Organic Synthesis (有機合成における酵素触媒作用)」 2002, 第III巻, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheim中のJ. LalondeおよびA. Margolinによる「Immobilization of Enzymes(酵素の固定化)」に記載されている。
前記反応は水性もしくは非水性の反応媒体中で、または2相系もしくは(マイクロ)エマルション中で行うことができる。水性の反応媒体としては、通常pH4〜8、好ましくはpH5〜8の緩衝溶液が好ましい。水性溶媒は、水のほかに、少なくとも1種のアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール)またはジメチルスルホキシドをさらに含んでもよい。
非水性の反応媒体とは、液状反応媒体の全重量に対して水を1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満しか含まない反応媒体のことである。上記反応は特に有機溶媒中で実施することができる。
適当な有機溶媒としては、例えば、以下が挙げられる:脂肪族炭化水素(好ましくは、炭素原子数5〜8)、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン;ハロゲン化脂肪族炭化水素(好ましくは、炭素原子数1または2)、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン;芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン;脂肪族非環状および環状エーテル類またはアルコール類(好ましくは、炭素原子数4〜8)、例えば、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン;エステル類、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル;ケトン類、例えば、メチルイソブチルケトン、ジオキサン;またはこれらの混合物。上記のエーテル類、とりわけテトラヒドロフランを用いることが特に好ましい。
レダクターゼを用いる還元は、例えば、水性有機性の反応媒体(任意の混合比、例えば1:99〜99:1または10:90〜90:10の水/イソプロパノールなど)中で、または水性の反応媒体中で実施することができる。
基質(1)または(2)は、酵素的還元反応において、好ましくは0.1g/l〜500g/l、特に好ましくは1g/l〜50g/lの濃度で用いられ、連続的または不連続的に供給することができる。
基質(1)または(2)は、E/Z混合物として用いても、あるいは異性体として純粋な形態で用いてもよい。
酵素的還元は通常、用いるレダクターゼの失活温度より低く、−10℃より高い反応温度で行われる。好ましくは0〜100℃、特に15〜60℃、とりわけ20〜40℃の範囲の温度で、例えば約30℃で実施される。
実施可能な手順は、例えば、基質(1)または(2)を、レダクターゼ、溶媒、適切な場合には補酵素、適切な場合には補酵素を再生するための第2のデヒドロゲナーゼおよび/またはさらなる還元剤と共に、例えば撹拌または振とうにより、十分に混合することである。しかし、反応器(例えばカラム)内にレダクターゼを固定化し、基質と適切な場合には補酵素および/または補基質を含む混合物をその反応器に通すことも可能である。そのために、希望する転化率が得られるまで混合物を反応器に通して循環させてもよい。
還元反応は通常、混合物中に存在する基質に基づいて、転化率が70%以上、好ましくは85%以上、特に95%以上になるまで実施される。反応の進行、すなわち二重結合の逐次還元は、ここではガスクロマトグラフィーまたは高圧液体クロマトグラフィーなどの慣用方法により、モニターすることが可能である。
具体的に開示された酵素の「機能的等価物」または類似体とは、本発明においては、開示された酵素と相違するものの、依然として基質特異性などの所望の生物学的活性を備えているポリペプチドのことである。したがって、「機能的等価物」とは、例えば、モデル反応を触媒しかつ配列番号1、2または3に示されるアミノ酸配列の1つを含む酵素の活性の少なくとも20%、好ましくは50%、さらに好ましくは75%、特に好ましくは90%を保持する酵素を意味する。機能的等価物は、さらに好ましくはpH4〜10で安定しており、有利にはpH5〜8の範囲に至適pHを、また、20〜80℃の範囲に至適温度を有するものである。
「機能的等価物」はまた、本発明によれば、特に、上記アミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置に、具体的に挙げたアミノ酸以外のアミノ酸を有するが、それでもなお上記生物学的活性の1つを保持する変異体をも意味する。したがって、「機能的等価物」は1個以上のアミノ酸の付加、置換、欠失および/または逆位により得られる変異体を含み、かかる改変は、それらが本発明に従う特性プロファイルを有する変異体をもたらす限り、いずれの配列位置に存在してもよい。機能的等価物はまた、特に、変異型ポリペプチドと非変異型ポリペプチドとの間で反応性パターンが質的に一致する(すなわち、例えば、同じ基質が異なる速度で転化される)場合にも存在する。
適当なアミノ酸置換の例は以下の表に見出すことができる:
Figure 2011505799
上記意味での「機能的等価物」はまた、記載したポリペプチドの「前駆体」でもあり、また、「機能的誘導体」でもある。
これに関連して、「前駆体」とは、当該ポリペプチドの天然または合成の前駆体であり、所望の生物学的活性を備えていてもいなくてもよい。
同様に、本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」は、公知の技法を用いて、アミノ酸側鎖の官能基上に調製されるか、N-またはC-末端において調製される。そうした誘導体には、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニアとの反応または第1級もしくは第2級アミンとの反応により得られるカルボン酸基のアミド、アシル基との反応により調製される遊離アミノ基のN-アシル誘導体、またはアシル基との反応により調製される遊離ヒドロキシ基のO-アシル誘導体が含まれる。
タンパク質のグリコシル化が起こりうる場合には、本発明の「機能的等価物」は、脱グリコシル化またはグリコシル化形態の上記タイプのタンパク質、およびグリコシル化パターンを変えることにより得られる修飾形態の上記タイプのタンパク質を包含する。
「機能的等価物」には、当然のことながら、他の生物から得られるポリペプチドおよび天然に存在する変異体も含まれる。例えば、配列の比較により相同配列領域の範囲を確定することが可能であり、また、本発明の特定の要件に基づいて等価な酵素を確認することが可能である。
同様に、「機能的等価物」には、本発明のポリペプチドの断片(好ましくは、個々のドメインまたは配列モチーフ)であって、例えば、所望の生物学的機能を有するものが含まれる。
「機能的等価物」はさらに、上記のポリペプチド配列またはそれらに由来する機能的等価物の1つと、そのN-またはC-末端に機能的に(すなわち、融合タンパク質の各成分を相互に機能的に損なうことなく)連結された、前記配列とは機能的に異なる、少なくとも1つのさらなる異種配列と、を含む融合タンパク質である。そのような異種配列の非限定的な例として、例えば、シグナルペプチドまたは酵素がある。
本発明のタンパク質の相同体は、変異体(例えば、トランケート型変異体)のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより同定することができる。例えば、タンパク質変異体の多様化ライブラリーは、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的ライゲーションなどによって、核酸レベルでコンビナトリアル変異導入を行うことにより作製可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的相同体のライブラリーを作製するために使用できる方法は数多く存在する。縮重遺伝子配列の化学合成を自動DNA合成装置で実施し、次にその合成遺伝子を適当な発現ベクターにライゲーションすることが可能である。縮重遺伝子のセットを用いると、所望の潜在的タンパク質配列のセットをコードする全ての配列を1つの混合物中に提供できるようになる。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当業者に知られている(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al., (1984) Science 198:1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
点突然変異またはトランケーションにより作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする技法、ならびに所定の性質を示す遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングする技法は、いくつかが従来知られている。これらの技法を、本発明の相同体のコンビナトリアル変異導入により作製された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適合させることができる。ハイスループット解析の対象となる大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も一般的に用いられる技法は、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクターにクローニングし、得られたベクターライブラリーにより適当な細胞を形質転換し、希望する活性の検出が遺伝子(その産物が検出される)をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させることを包含する。再帰的アンサンブル変異導入法(recursive ensemble mutagenesis:REM)はライブラリー中の機能的変異体の頻度を高める技法であるが、この技法をスクリーニング試験と組み合わせて用いて相同体を同定することができる(Arkin and Yourvan (1992) PNAS 89:7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
本発明はさらに、本発明に従うレダクターゼ活性を示す酵素をコードする核酸配列(一本鎖または二本鎖のDNAおよびRNA配列、例えばcDNA、mRNAなど)に関する。例えば、配列番号1、2もしくは3に示されるアミノ酸配列またはその特徴的な部分配列をコードする核酸配列が好ましいものである。
本明細書に記載される全ての核酸配列は、ヌクレオチド構成単位からの化学合成により、例えば二重らせんの個々の重複する相補的核酸構成単位の断片縮合などによって、それ自体公知の方法で調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホルアミダイト法により公知の方法で行うことができる(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press New York, 896-897頁)。合成オリゴヌクレオチドの付加およびDNAポリメラーゼのKlenow断片を用いるギャップのフィルイン、ならびに一般的なクローニング法は、Sambrook et al. (1989), Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される。
本発明の酵素的還元法を実施するためのさらなる実施形態:
本発明の方法では、pHをpH4〜12、好ましくはpH4.5〜9、特に好ましくはpH5〜8の範囲に保持することが有利である。少なくとも98%eeが達成される。
本発明の方法のために、レダクターゼをコードする核酸、核酸構築物またはベクターを含む増殖中の細胞を用いることが可能である。休止中の細胞または破壊された細胞を用いることも可能である。破壊された細胞とは、例えば溶媒処理により透過性にされた細胞、または酵素処理、機械的処理(例えば、フレンチプレスまたは超音波処理)もしくはその他の方法により崩壊された細胞を意味する。このようにして得られる粗抽出物が本発明の方法にとって特に好適である。さらに、精製済みの酵素や部分精製した酵素を本方法のために用いてもよい。同様に、固定化した微生物または酵素も適しており、前記反応において有利に使用することができる。
本発明の方法はバッチ方式、半バッチ方式、または連続方式で実施することができる。
本方法は、例えばBiotechnology, 第3巻, 第2版, Rehmら編 (1993)、特に第II章に記載されているようなバイオリアクターで実施することが有利である。
本発明の方法で調製された生成物は、当業者によく知られている方法で反応媒体から単離し、所望により、精製することができる。かかる方法として、蒸留法、クロマトグラフィー法、抽出法、および結晶化法が挙げられる。こうした方法を必要に応じていくつか組み合わせることによって、生成物を相当に高いレベルにまで精製することが可能である。
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を制限することを意図したものではない。これに関連して添付の図面を参照されたい。
不斉バイオ還元に関する一般的プロトコール
基質の不斉バイオ還元は、次の一般的プロトコールに従って、単離酵素YqjM、OPR1、OPR3およびZymomonas mobilis(アルコール発酵菌)レダクターゼを用いて行った。
Trisバッファー50mM pH7.5 (0.8ml)中の基質(5mM)の溶液に、補因子NADHまたはNADPH (15mM)と共に酵素調製物(100〜200μg)を添加し、振とう(140rpm)しながら30℃で反応を行った。48時間後、この反応混合物を酢酸エチルで抽出し、GCにより反応生成物を分析した。
補因子循環系を採用した場合には、以下の手順を選択した:
NADH/FDH系
Trisバッファー50mM pH7.5 (0.8ml)中の基質(5mM)、酸化型補因子NAD+ (100μM)、ギ酸アンモニウム(20mM)の混合物に、酵素(100〜200μg)を加えてからFDH (10u)を添加し、この反応を30℃(140rpm)で48時間実施した。
NADH/GDH
Trisバッファー50mM pH7.5 (0.8ml)中の基質(5mM)、酸化型補因子NAD+ (100μM)、グルコース(20mM)の混合物に、酵素(100〜200μg)を加えてから(D)-GDH (10u)を添加し、この反応を30℃(140rpm)で48時間実施した。
NADPH/G6PDH
Trisバッファー50mM pH7.5 (0.8ml)中の基質(5mM)、酸化型補因子NADP+ (10μM)、グルコース-6-リン酸(20mM)の混合物に、酵素(100〜200μg)を加えてからG6PDH (10u)を添加し、この反応を30℃(140rpm)で48時間実施した。
ADH
OPR1のアリコートを、基質2-アセトアミドアクリル酸メチル(5mM)、補基質2-プロパノール(3〜60mM、0.6〜12モル当量)および酸化型補因子NAD+ (100μM)を含むTris-HCl緩衝溶液(0.8ml、50mM、pH7.5)に添加した。ADH-A(約2〜3U)を添加し、この混合物を120rpm、30℃で42時間撹拌した。生成物を酢酸エチル(2×0.5ml)により抽出し、有機相を合わせてNa2SO4で乾燥させ、得られたサンプルをアキラルGCにより分析した。
ADH-Aは大腸菌BL21 (DE3) (ベクターpETv22b)内で発現させた。65℃で20分間の熱ショック後、それ以上精製することなくADH溶液を用いた。
単離酵素のアリコートを、基質2-アセトアミドアクリル酸メチル(5mM)および補因子NADHまたはNADPH (10mM)を含むTris-HCl緩衝溶液(0.8ml、50mM、pH7.5)に添加した。この反応混合物を120rpm、30℃で64時間撹拌した。生成物を酢酸エチル(2×0.5ml)により抽出し、有機相を合わせてNa2SO4で乾燥させ、得られたサンプルをアキラルGCにより分析した。
この生成物を、別個に合成した真正標準物質と、GC-MSおよびアキラルGCへの同時注入により比較することで同定した。転化率は、6%シアノプロピルフェニル相キャピラリーカラム(Varian CP-1301、30m、0.25mm、0.25μm)を用いて、検出器温度240℃、インジェクター温度250℃、分割比30:1で決定した。2-アセトアミドアクリル酸メチルおよびN-アセチル-アラニンメチルエステルのための温度プログラム:120℃で2分、毎分10℃で160℃へ、毎分30℃で200℃へ、2分間持続。保持時間:4.89分および5.12分。
エナンチオマー過剰率は改良型シクロデキストリンキャピラリーカラム(Chiraldex(登録商標)B-TA、40m、0.25mm)を用いて決定した。検出器温度200℃、インジェクター温度180℃、分割比20:1。温度プログラム:130℃で5分、毎分2℃で135℃へ、毎分15℃で180℃へ、2分間持続。保持時間:(R/S)-および(S/R)-それぞれ5.18分および5.35分。絶対配置は「S」であり、これは真正サンプルとの比較により確認された。
Figure 2011505799
GC-FID分析は、キャリアーガス(14.5psi)としてH2を用いるVarian 3800ガスクロマトグラフを使って行った。
Figure 2011505799

Claims (10)

  1. 一般式(1)または(2)のα-デヒドロアミノ酸から一般式(3)または(4)のアミノ酸を酵素的に調製する方法であって、
    Figure 2011505799
    [式中、
    R1、R2は、それぞれ独立して、H、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、場合により置換されてもよい炭素環もしくは複素環式の芳香族もしくは非芳香族基、アルキルアリール基、またはカルボキシル基(-COOR)であり、
    R3は、H、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、BOC、またはAllocであり、
    Rは、H、C1-C6アルキル、またはアリールである]
    式(1)または(2)の化合物を、
    (i) 配列番号1、2、3、4、5、6のポリペプチド配列の少なくとも1つを含む、または
    (ii) 配列番号1、2、3、4、5、6と80%以上の配列同一性を示す、機能的に等価なポリペプチド配列を有する、
    レダクターゼの存在下で還元することによる上記方法。
  2. 補因子としてNADPHまたはNADHを用いて前記還元を実施する、請求項1に記載の方法。
  3. 用いる補因子を酵素的に再生する、請求項2に記載の方法。
  4. 補因子をグルコースデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼまたは第2級アルコールにより再生する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記還元を水性、水性-アルコール性、またはアルコール性の反応媒体中で実施する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記レダクターゼが固定化された状態で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記酵素が枯草菌(Bacillus subtilis)およびプチトマト(Lycopersicum esculentum)由来のレダクターゼの中から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. R1がH、R2がH、R3がアセチルである式(1)の化合物を反応させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記反応を0〜45℃の範囲の温度および/または6〜8の範囲のpHで実施する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 活性薬剤の化学的または酵素的合成のための中間体としての、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により調製された式(3)または(4)の化合物の使用。
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