JP5705410B2 - シトロネラールの酵素的調製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、α,β−不飽和アルデヒドから式の光学活性飽和アルデヒドまたはアルコールを調製する酵素的方法に関し、特にシトロネラールを調製する方法に関する。
(R)−(+)シトロネラールは、例えば、メントールの調製において用いられる重要な化学中間体である。
シトラールから始まる、(R)−(+)シトロネラールを調製する化学的方法では、工業的合成において高コストとなる非常に複雑な方法(酸素と水を排除する)が必要とされる。
本発明は、シトラールのエナンチオ選択的還元によるシトロネラールの製造方法を提供することを目的とし、該方法は、最大のエナンチオマー純度を持つ、高い化学収率のシトロネラールを供給する。
本発明は、エノエートレダクターゼ存在下での還元により、式(1)のα,β−不飽和アルデヒドから式(2)の光学活性飽和アルデヒドまたはアルコール
Figure 0005705410
(RおよびRは、互いに独立して、H、または分岐状および非分岐状のC−C−アルキルであり、Rは、H、または分岐状および非分岐状のC−C−アルキルもしくはアルケニルである。)
を調製する方法であって、エノエートレダクターゼが、
(i)配列番号1または2のポリペプチド配列を有し、あるいは
(ii)配列番号1または2の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチド配列を有する、
上記方法に関する。
本発明の方法は、式(1)のα,β−不飽和アルデヒド(RおよびRは、互いに独立して、H、または分岐状および非分岐状のC−C−アルキルであり、Rは、H、または分岐状および非分岐状のC−C−アルキルもしくはアルケニルである。)を用いて行うことができる。また、アルキル基およびアルケニル基は、一置換または多置換されていてもよい。
本発明の方法において、特に好適な基質は、式(1)に示され、RがHであり、RがCHであり、およびRが−CH−CH−CH=(CHである上記α,β−不飽和アルデヒド(シス型またはトランス型シトラール)、およびRがCHであり、RがHであり、およびRがCHである上記α,β−不飽和アルデヒド(2−メチル−ペント−2−エン−1−アール)である。
本発明で用いられるエノエートレダクターゼは、カルボニル官能基に対してα,β位の二重結合に加えて、たまにはある程度カルボニル官能基自体も還元し、この場合、それに対応するアルコールが生じる。
本発明の方法に好適なエノエートレダクターゼは、NADPH依存性反応で2−メチル−ペント−2−エン−1−アールを還元し、(S)−2−メチル−ペンタン−1−アールを生じることができる酵素である。以下、この反応をモデル反応ともいう。
さらに、本発明の方法に好適なエノエートレダクターゼは、配列番号1または2のポリペプチド配列、または配列番号1または2の配列に対して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも97%、98%または99%の同一性を有するポリペプチド配列を有する。
配列番号1を有するポリペプチドは、パン酵母由来のOYE2遺伝子(Saccharomyces cerevisiae遺伝子座YHR179W)である。
配列番号2を有するポリペプチドは、パン酵母由来のOYE3遺伝子(Saccharomyces cerevisiae遺伝子座YPL171C)である。
本明細書に記載された目的において、配列同一性は、ウイスコンシン大学のGenetics Computer Group (GCG)の「GAP」コンピュータープログラムによって決定されるものであり、GCGによって推奨されるスタンダードパラメーターを用いたVersion 10.3を使用することを意図する。
上記のようなエノエートレダクターゼは、配列番号1または2から始めて、当業者に公知の特異的突然変異法またはランダム突然変異法によって得ることができる。あるいは、上記モデル反応を触媒するエノエートレダクターゼであって、かつそのアミノ酸配列が、配列番号1または2に対して上記の求められる配列同一性をすでに有しているか、もしくは突然変異法で得られるエノエートレダクターゼについて、微生物をスクリーニングしてもよく、好ましい微生物は、Alishewanella属、Alterococcus属、Aquamonas属、Aranicola属、Arsenophonus属、Azotivirga属、Brenneria属、Buchnera属(aphid P-endosymbionts)、Budvicia属、Buttiauxella属、Candidatus Phlomobacter属、Cedecea属、Citrobacter属、Dickeya属、Edwardsiella属、Enterobacter属、Erwinia属、Escherichia属、Ewingella属、Grimontella属、Hafnia属、Klebsiella属、Kluyvera属、Leclercia属、Leminorella属、Moellerella属、Morganella属、Obesumbacterium属、Pantoea属、Pectobacterium属、Photorhabdus属、Plesiomonas属、Pragia属、Proteus属、Providencia属、Rahnella属、Raoultella属、Salmonella属、Samsonia属、Serratia属、Shigella属、Sodalis属、Tatumella属、Trabulsiella属、Wigglesworthia属、Xenorhabdus属、Yersinia属、およびYokenella属である。
エノエートレダクターゼは、精製された形で、または部分的に精製された形で、あるいは微生物自体の形で用いることができる。微生物からデヒドロゲナーゼを回収し精製する方法は、当業者に十分に知られている。
上記エノエートレダクターゼを用いたエナンチオ選択的還元は、好ましくは適切な補因子(補助基質ともいう)の存在下で行う。ケトンを還元するために通常用いられる補因子は、NADHおよび/またはNADPHである。さらに、補因子を本質的に含む細胞系としてエノエートレダクターゼを用いること、または代替のレドックスメディエーターを加えることが可能である(A. Schmidt, F. Hollmann and B. Buhler "Oxidation of Alcohols" in K. Drauz und H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002, Vol. III, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheim)。
さらに好ましくは、エナンチオ選択的還元は、還元の過程で酸化された補因子を再生する適切な還元剤の存在下でエノエートレダクターゼを用いて行う。適切な還元剤の例は、糖、特にヘキソース、例えばグルコース、マンノース、フルクトースであり、および/または酸化可能なアルコール、特にエタノール、プロパノールまたはイソプロパノールであり、及びギ酸塩、亜リン酸塩、または水素分子である。還元剤を酸化するため、それに関連して、補酵素を再生するため、第2のデヒドロゲナーゼ(例えば、用いる還元剤がグルコースの場合、グルコースデヒドロゲナーゼ、または用いる還元剤がギ酸塩の場合、ギ酸デヒドロゲナーゼ)を添加してもよい。第2のデヒドロゲナーゼは、遊離型または固定化酵素として、あるいは遊離型または固定化細胞の形で用いることができる。その調製は、別々に行ってもよいし、(組換え)レダクターゼの菌株での共発現により行ってもよい。
本発明の方法の好ましい実施形態は、酵素系により補因子を再生することであり、ここで第2のデヒドロゲナーゼ、特に好ましくはグルコースデヒドロゲナーゼが用いられる。
さらに本発明は、シトロネラールを調製するためのエノエートレダクターゼの使用に関する。
本実施形態に用いられる好ましい補因子は、それぞれ、NADおよびNADPであり、適切な補助基質(酸化剤)で再び再生することができる。ここで用いることができる好ましい補助基質はアセトンであり、アセトンは、すでに存在するADHおよび/または追加して用いられるデヒドロゲナーゼとともに、補因子を再生し、その工程でイソプロパノールに還元される。
「エナンチオ選択性」とは、本発明の目的において、以下の公知の方法で計算されるS−エナンチオマーのエナンチオマー過剰率、つまりee(%):
ee(%)=S-エナンチオマー−R-エナンチオマー/(S-エナンチオマー−R-エナンチオマー)×100
が、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に少なくとも95%、および特に少なくとも97%であることを意味する。
本発明において使用されるエノエートレダクターゼは、遊離型または固定化された形で用いることができる。固定化酵素は、不活性な支持体に固定された酵素を意味する。好適な支持体材料およびそれに固定化される酵素は、EP-A-1149849、EP-A-1069183、DE-A 100193773、およびそこで引用されている文献に開示されている。これに関し、これらの刊行物の開示はそのまま参照される。好適な支持体材料の例は、粘土、粘土鉱物(例えばカオリナイト、珪藻土、パーライト、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム)、セルロース粉末、陰イオン交換体材料、合成ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、ならびにポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン)である。支持体材料は、担持された酵素を調製するために細かく分割された、好ましくは多孔性である微粒子の形で通常用いられる。支持体材料の粒径は、通常5mm以下、特に2mm以下(シーブグレード)である。同様に、全細胞触媒(whole cell catalyst)としてデヒドロゲナーゼを用いる場合も、遊離型または固定化された形態を選択できる。支持体材料の例は、アルギン酸カルシウムおよびカラギーナンである。細胞と同様、酵素もグルタールアルデヒドで直接架橋し得る(架橋してCLEAを生ずる)。これに対応する固定化方法および他の固定化方法は、例えば、J. Lalonde and A. Margolin “Immobilization of Enzymes” in K. Drauz and H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002, Vol. III, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheimに記載されている。
上記反応は、水性もしくは非水性反応媒体中、または2相系もしくは(マイクロ)エマルジョンで行うことができる。水性反応媒体は、好ましくは、通常pH4〜8、好ましくはpH5〜8の緩衝液である。水性溶媒は、水のほかに、少なくとも1種類のアルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノール、またはジメチルスルホキシドをさらに含んでいてもよい。
非水性反応媒体は、反応媒体の全質量に基づいて、1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の水を含む反応媒体を意味する。反応は、好ましくは有機溶媒中で行う。
適切な溶媒の例は、好ましくは5〜8炭素原子を有する、脂肪族炭化水素、例えばペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、へプタン、オクタンまたはシクロオクタン、好ましくは1つまたは2つの炭素原子を有する、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンまたはテトラクロロエタン、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン(類)、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン、好ましくは4〜8炭素原子を有する、脂肪族非環状および環状エーテルまたはアルコール、例えばジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、またはエステル、例えばエチルアセテートまたはn-ブチルアセテート、またはケトン、例えばメチルイソブチルケトンまたはジオキサン、またはそれらの混合物である。特に好ましくは、上記エーテル、特にテトロヒドロフランを用いる。
エノエートレダクターゼによる還元は、水性−有機の反応媒体、特に水性の反応媒体中で行うことが好ましい。
基質(1)は、好ましくは0.1g/l〜500g/l、特に好ましくは1g/l〜50g/lの濃度で酵素還元に用い、その後、連続的にまたはバッチ式で供給してもよい。
酵素還元は通常、用いるレダクターゼの失活温度よりも低く、−10℃よりも高い反応温度で行う。該温度は、具体的には、好ましくは0〜100℃、特に15〜60℃、特に20〜40℃の範囲であり、例えば約30℃である。
手順としては、例えば、基質(1)と、エノエートレダクターゼ、溶媒、適切であれば補酵素(適切であれば該補酵素を再生するための第2のデヒドロゲナーゼと共に)、および/またはさらに還元剤を最初に導入し、該混合物を、例えば攪拌または振とうにより混合することができる。しかし、例えばカラムなどの反応器にレダクターゼを固定化し、その反応器に、基質と、適切であれば補酵素および/または補助基質を含む混合物を通すことも可能である。このため、混合物を、所望の変換が達成されるまで反応器に循環させることができる。
上記工程において、カルボニル官能基に対してα,β位の二重結合が単結合に還元される;たまに、カルボニル官能基自体がアルコール官能基に還元される。該還元は通常、混合物中に存在する基質に基づいて少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも85%、特に少なくとも95%変換するまで行われる。反応の進行、すなわち二重結合の連続的な還元は、ガスクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーなどの常法により、その場でモニタリングすることができる。
本発明の目的において、具体的に開示された酵素の「機能的同等物」すなわちアナログは、それらとは異なるポリペプチドであって、さらに、例えば基質特異性などの所望の生物学的活性を有するポリペプチドである。従って、例えば「機能的同等物」とは、上記モデル反応を触媒し、かつ配列番号1または2として挙げられたアミノ酸配列のいずれかを含む酵素の少なくとも20%、好ましくは50%、特に好ましくは75%、極めて好ましくは90%の活性を有する酵素を意味する。さらに、機能的同等物は、好ましくはpH4〜10で安定であり、有利には、至適pHが5〜8であり、至適温度が20〜80℃の範囲である。
本発明における「機能的同等物」は、特に、上記生物学的活性のうちの1つを有しているが、上記アミノ酸配列の少なくとも1箇所に、具体的に記載されたアミノ酸以外のアミノ酸を有する突然変異体も意味する。従って「機能的同等物」は、1つ以上のアミノ酸の付加、置換、欠失および/または逆位によって得られる突然変異体を含み、本発明の特性プロフィールを有する突然変異体がもたらされる限り、該改変は、配列のどの位置で生じてもよい。また、突然変異体と非改変ポリペプチドの反応性パターンが質的に一致すれば、すなわち、例えば同じ基質が異なる速度で反応しても、機能的同等物が具体的に存在する。
適切なアミノ酸置換の例を以下の表に挙げる。
Figure 0005705410
上記の意味の「機能的同等物」は、記載されたポリペプチドの「前駆体」でもあり、「機能的誘導体」でもある。
これに関連して「前駆体」は、所望の生物学的活性を有するか、または有しない、ポリペプチドの天然または合成の前駆体である。
同様に、本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」は、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸の側鎖またはそのN末端側もしくはC末端側の終端に調製することができる。この種の誘導体は、例えばカルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド(該アミドはアンモニアまたは第1もしくは第2アミンとの反応によって得られる);遊離アミノ基のN−アシル誘導体(該誘導体はアシル基との反応によって調製される);または遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体(該誘導体はアシル基との反応によって調製される)を含む。
タンパク質のグリコシル化が可能な場合、本発明の「機能的同等物」は、脱グリコシル化またはグリコシル化された形、およびグリコシル化のパターンを変えることによって得ることができる改変された形の上記タイプのタンパク質を含む。
当然ながら「機能的同等物」は、他の生物から得られるポリペプチドも含み、天然に生じた変異体も含む。例えば、相同配列領域の範囲は、配列比較により定めることができ、同等な酵素を、本発明の具体的なガイドラインに基づいて決定することができる。
また「機能的同等物」は、本発明のポリペプチドの断片、好ましくは個々のドメインまたは配列モチーフを含み、該断片は、例えば所望の生物学的機能を有する。
さらに「機能的同等物」は、上記ポリペプチド配列またはそれに由来する機能的同等物のいずれか、およびそれらとは機能的に異なる異種配列であって、かつN末端またはC末端に機能的に結合した(すなわち、融合タンパク質部分のいかなる実質的な相互的機能障害がない)少なくとも1つの上記異種配列を含む、融合タンパク質である。このような異種配列の限定されない例は、例えばシグナルペプチドまたは酵素である。
本発明のタンパク質のホモログは、例えばトランケーション変異体などの突然変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより、同定することができる。例えば、タンパク質変異体の多様化ライブラリーは、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発により、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物を酵素的にライゲーションすることにより、作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なホモログのライブラリーを調製するのに使用できる方法が数多くある。縮重遺伝子配列は、DNA合成機で化学的に合成することができ、次に、その合成遺伝子を、適切な発現ベクターにライゲーションすることができる。遺伝子の縮重セットを用いることにより、所望の潜在的なタンパク質配列のセットをコードする混合物中の配列をすべて提供することができるようになる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当業者に公知である(例えばNarang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al., (1984) Science 198:1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
点突然変異またはトランケーションにより調製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするための技術、および選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーをスクリーニングするための技術が、いくつか先行技術で知られている。これらの技術を、本発明のホモログのコンビナトリアル突然変異誘発により作製された遺伝子ライブラリーを迅速にスクリーニングするために適合させることができる。ハイスループット分析される大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最もよく用いられる技術には、複製可能な発現ベクターに遺伝子ライブラリーをクローニングし、得られたベクターライブラリーを用いて適切な細胞に形質転換し、所望の活性の検出により、その検出された遺伝子産物の遺伝子をコードするベクターの単離が容易になる条件下でコンビナトリアル遺伝子を発現させることが含まれる。再帰的アンサンブル突然変異誘発(Recursive ensemble mutagenesis:REM)、すなわち、ライブラリー中の機能的突然変異体の頻度を増加させる技術を、ホモログを同定するためにスクリーニングテストと組合せて用いてもよい(Arkin and Yourvan (1992) PNAS 89:7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
さらに本発明は、本発明のレダクターゼ活性を有する酵素をコードする核酸配列(例えばcDNAおよびmRNAなどの1本鎖および2本鎖DNAおよびRNA配列)に関する。好ましくは、例えば配列番号1または2のアミノ酸配列、またはその特徴のある部分の配列をコードする核酸配列である。
本明細書に記載されたすべての核酸配列は、ヌクレオチド・ビルディング・ブロックからの化学的合成によるそれ自体公知の方法で、例えば、二重らせんの個々の重複する相補的な核酸ビルディング・ブロックのフラグメント縮合により、調製することができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、公知の方法で、即ちホスホアミダイト法を用いて化学的に合成することができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, pages 896-897)。DNAポリメラーゼのクレノウ断片とライゲーション反応を用いた、合成オリゴヌクレオチドの組立て、ギャップの穴埋め、また一般的なクローニング方法が、Sambrook et al. (1989), Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
<本発明の酵素的還元方法を行うさらなる実施形態>
エノエートレダクターゼは、本発明の方法において、遊離型または固定化酵素として用いることができる。
本発明の方法は、有利には、0〜95℃、好ましくは10〜85℃、特に好ましくは15〜75℃の温度で行う。
本発明の方法において、pHは、有利には、pH4〜12、好ましくはpH4.5〜9、特に好ましくはpH5〜8に維持される。
本発明の方法において、エナンチオマー的に純粋なまたはキラルな生成物(2)は、エナンチオマー富化を示すエナンチオマーを意味する。好ましくは、該方法において少なくとも70%ee、好ましくは少なくとも80%ee、特に好ましくは少なくとも90%ee、極めて好ましくは少なくとも98%eeのエナンチオマー純度が達成される。
本発明の方法において、本発明の核酸、核酸構築物またはベクターを含む増殖細胞を用いることが可能である。静止細胞または破壊細胞を用いることも可能である。破壊細胞とは、例えば溶媒で処理することにより透過性になった細胞、または、例えば酵素で処理することにより、機械的処理(例えばフレンチプレスまたは超音波処理)により、あるいは他の方法により破壊された細胞を意味する。該方法で得られた粗抽出物は、本発明の方法に有利に適している。本方法において、精製された酵素または部分的に精製された酵素を使用することも可能である。同様に、本反応に有利に適用することができる固定化された微生物または酵素も適している。
本発明の方法は、バッチ式、セミバッチ式、または連続的に実施することができる。
本方法は、例えばBiotechnology, volume 3, 2nd edition, Rehm et al. Eds., (1993)、特にchapter IIに記載されたバイオリアクターで有利に行うことができる。
以下の実施例により本発明を説明するが、本実施例は本発明を限定するものではない。これに関し、添付された図が参照される。
<実験セクション>
Saccharomyces cerevisiaeを用いた2−メチル−ペント−2−エン−1−アールの生体内変換
邪魔板を備えた500mlのエルレンマイヤーフラスコで生体内変換を行った。該フラスコのいずれにも126mlの変換溶液を入れた。これらには、いずれにも21gのD−グルコースを加えた。所望のpH(6〜8.5)に調整した。フラスコあたりの基質量を、2−メチルペント−2−エン−1−アール200mgとした。本実験を、21gのパン酵母を添加することにより開始し、その反応混合物を所望の温度(28〜37℃)のインキュベーターに入れた(240rpmで攪拌した)。6、12、18、24、36、48時間後にサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
最も高い変換率(40〜70%)は、pH7.5〜8.5の間で達成された。pH=8.5、T=37℃での光学純度は、66.6%の変換でee=92.1であった。
Saccharomyces cerevisiaeを用いたシトラールの生体内変換
邪魔板を備えた500mlのエルレンマイヤーフラスコで生体内変換を行った。該フラスコのいずれにも126mlの変換溶液を入れた。これらには、いずれにも21gのD−グルコースを加えた。所望のpH(6〜8.5)に調整した。フラスコあたりの基質量をシトラール210mgとした(シトラールは70:30のシス/トランス混合物であった)。本実験を、21gのパン酵母を添加することにより開始し、その反応混合物を所望の温度(28〜37℃)のインキュベーターに入れた(240rpmで攪拌した)。6、12、18、24、36、48時間後にサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
(R)−(+)シトロネラールに加えて、ネロールおよびゲラニオールと、(R)−(+)−β−シトロネロールも得られた。
変換溶液
53.4gのNaHPO、21gのD−グルコースおよび126mlの蒸留水(pHは6〜8.5に調整)

Claims (7)

  1. エノエートレダクターゼ存在下での還元により、式(1)のα,β−不飽和アルデヒドから、式(2)の光学活性飽和アルデヒドまたはアルコール
    Figure 0005705410

    (RおよびRは、互いに独立して、H、または分岐状および非分岐状のC−C−アルキルであり、Rは、H、または分岐状および非分岐状のC−C−アルキルもしくはアルケニルである。)を調製する方法であって、エノエートレダクターゼが、
    (i)配列番号1または2のポリペプチド配列を有し、あるいは
    (ii)配列番号1または2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチド配列を有し、かつ式(1)の化合物から式(2)の化合物へ変換する活性を有する、
    上記方法。
  2. 還元を、補因子としてNADPHを用いて行う、請求項1に記載の方法。
  3. 用いられる補因子を酵素的に再生する、請求項1に記載の方法。
  4. 補因子をグルコースデヒドロゲナーゼによって再生する、請求項1に記載の方法。
  5. 還元を水系で行う、請求項1に記載の方法。
  6. エノエートレダクターゼが固定化された形で存在する、請求項1に記載の方法。
  7. シトラールから(R)−(+)シトロネラールを調製する方法におけるエノエートレダクターゼの使用であって、エノエートレダクターゼが、
    (i)配列番号1または2のポリペプチド配列を有し、あるいは
    (ii)配列番号1または2の配列に対して少なくとも90%の同一性を有するポリペプチド配列を有し、かつ式(1)の化合物から式(2)の化合物へ変換する活性を有する、
    上記使用。
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