JP4502295B2 - 耐熱性d−アミノアシラーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なD-アミノアシラーゼ、および該アミノアシラーゼを用いたD-アミノ酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素は高い触媒機能をもつだけでなく、基質特異性、反応特異性とともに、立体特異性を示す。酵素の立体特異性は、いくつかの例外はあるものの、ほとんど絶対的といえる。
近年における研究の精密化に伴い、医薬品、農薬、飼料、香料などの分野で光学活性体を扱うことの重要性が増している。これは光学異性体が生理活性をまったく異にする場合があるためで、たとえば、サリドマイドは、D(R)体は催奇性をもたないが、L(S)体には強い催奇形成があり、ラセミ体を実用に供したことが薬害事件を引き起こす原因となった。さらに、対掌体の一方が有効な生理活性を示す場合、もう一方の異性体が単に全く活性を示さないだけでなく、有効な対掌体に対して競合阻害をもたらす結果、ラセミ体の生物活性が有効な対掌体に対して1/2以下に激減してしまうこともある。従って、光学的に純粋な対掌体をいかにして入手(合成または分割)するかは、産業上重要な課題となっている。この目的に対して、ラセミ体を合成した上で、それを効果的に光学分割する手法が広く用いられており、副生成物や多量の廃液を生じない酵素法による光学分割が注目されている。
【0003】
一般にL-アミノ酸は、調味料や食品・飼料の添加物、医薬用輸液などに広く、かつ多量に用いられておりその利用価値は非常に高い。L-アミノ酸は主に微生物を用いた直接発酵法により生産されているが、N-アシル-DL-アミノ酸をL-アミノアシラーゼによって加水分解し、L-アミノ酸を生産する光学分割法も知られており、発酵法では製造が困難なL-アミノ酸の工業的生産に古くから利用されている。このL-アミノアシラーゼは動物、植物、微生物に広く分布しており、今日までに様々な生物に由来するL-アミノアシラーゼが精製され、酵素化学的性質が明らかにされている。また、生体内では多くのタンパク質のN-末端アミノ酸はN-アセチル化されていると考えられている。L-アミノアシラーゼはタンパク質の分解によって生じたN-アセチル-アミノ酸をアミノ酸に再生する機能をもつと考えられている。また、L-アミノアシラ−ゼの中でもN-アシル-L-グルタミン酸に作用するアシラーゼはアルギニンの生合成に関与していると考えられている(Fruh, H., Leisinger, T.: J. Gen., 125, pp1 (1981))。
【0004】
一方、D-アミノ酸は非タンパク性アミノ酸であるため長い間興味の対象外であった。天然では、D-アミノ酸の存在は小さな環状ペプチドまたは細菌細胞壁のペプチドグリカン、ペプチド系抗生物質に限られていた。しかしながら、神経ペプチドの構成成分、歯のエナメル質、目の水晶体や脳のタンパク質中に結合型として存在することが明らかにされ、D-アミノ酸の生理的意義の解明、酵素法によるD-アミノ酸の合成法などが研究されている。
【0005】
DL-アミノ酸の分割は、現在、物理化学的、化学的、酵素的方法で行われているが酵素的方法が最も簡便であり、酵素法の一つにL-アミノアシラーゼを固定化したバイオリアクターを用いてN-アセチル-DL-メチオニンから、L-メチオニンを連続生産する方法が工業化されている。D-アミノ酸を生産する方法の一つにヒダントイナーゼを用いる方法がある。この方法はアルデヒド類似物から安価に合成されるD,L-5位置換ヒダントインを出発物質として、D-特異的なヒダントイナーゼによるD-カルバミル誘導体化、それに続くD-アミノ酸カルバミラーゼによる2段階の酵素的方法で行われている。また、この方法とは別にD-アミノアシラーゼを用いて、このN-アセチル-DL-アミノ酸を加水分解し、D-アミノ酸を生産する方法も知られている(Sugie, M. and Suzuki, H.: Argric. Biol. Chem., 44, pp1O89 (1980)、Tsai, Y.C., Lin, C.S., Tseng, T.H., Lee, H. and Wang, Y.J.: Enzyme Microb. Technol., 14, pp384 (1992))。このようにD-アミノアシラーゼはD-アミノ酸の生産において重要ではあるが、その生理学的意義や構造的機能などはいまだ解明されていない。
【0006】
D-アミノアシラーゼは、1952年にKamedaらが土壌から分離したシュードモナス(Pseudomonas)sp.KT83に存在することが初めて報告された(Kameda, Y., Toyoura, H., Kimura, Y. and Yasuda, Y.: Nature, 170, pp888 (1952))。この酵素はD-型のフェニルアラニンやチロシン、アラニンのN-ベンゾイル誘導体を加水分解した。その後は、シュードモナス(Pseudomonas)属(Kubo, K., Ishikura, T. and Fukagawa, Y.: J. Antibiot., 43, pp550 (1980)、Kubo, K., Ishikura, T. and Fukagawa, Y.: J. Antibiot., 43, pp556 (1980)、Kameda, Y., Hase, T., Kanatomo, S. and Kita, Y.: Chem. Pharm. Bull., 26, pp2698 (1978)、Kubo, K., Ishikura, T. and Fukagawa, Y.: J. Antibiot., 43, pp543 (1980))、ストレプトマイセス(Streptomyces)属(Sugie, M. and Suzuki, H.: Argric. Biol. Chem., 42, pp1O7 (1978)、Sugie, M. and Suzuki, H.: Argric. Biol. Chem., 44, pp1O89 (1980))、アルカリジェネス(Alcaligenes)属(Tsai, Y.C., Tseng, C.P., Hsiao, K.M. and Chen, L.Y.: Appl. Environ. Microbiol., 54, pp984 (1988)、Yang, Y.B., Hsiao, K.M., Li, H., Yano, Y., Tsugita, A. and Tsai, Y.C.: Biosci. Biotech. Biochem., 56, pp1392 (1992)、Yang, Y.B., Lin, C.S., Tseng, C.P., Wang, Y.J. and Tsai, Y.C.: Appl. Environ. Microbiol., 57, pp2767 (1991)、Tsai, Y.C., Lin, C.S., Tseng, T.H., Lee, H. and Wang,: Microb. Technol., 14, pp384 (1992)、Moriguchi, M. and Ideta, K.: Appl. Environ. Microbiol., 54, pp2767 (1988)、Sakai, K., Imamura, K., Sonoda, Y., Kido, H. and Moriguchi, M.: FEBS, 289, pp44 (1991)、Sakai, K., Obata, T., Ideta, K. and Moriguchi, M.: J. Ferment. Bioeng., 71, pp79 (1991)、Sakai, K., Oshima, K. and Moriguchi, M.: Appl. Environ. Microbiol. 57, pp2540 (1991)、Moriguchi, M., Sakai, K., Katsuno, Y., Maki, T. and Wakayama, M.: Biosci. Biotech. Biochem., 57, pp1145 (1993))、Wakayama, M., Ashika, T., Miyamoto, Y., Yoshikawa, T., Sonoda, Y., Sakai, K. and Moriguchi, M.: J. Biochem. 118, pp204 (1995))、Moriguchi, M., Sakai, K., Miyamoto, Y. and Wakayama, M.: Biosci. Biotech. Biochem., 57, pp1149 (1993))、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属(特願平9-206288)、セベキア(SeBekia)属(特願平10-089246)、かび(特願平10-228636)由来のD-アミノアシラーゼが報告されている。
【0007】
また、TsaiらやMoriguchiらは、アルカリジェネス(Alcaligenes)属とシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌由来のD-アミノアシラーゼの性質を明らかにし、さらに酵素タンパクのアミノ酸配列や遺伝子の配列も明らかにしている。Moriguchiらは、アルカリジェネス (Alcaligenes)属とシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌において、誘導物質をかえることによって三種のD-アミノアシラーゼ類を見だしている(Wakayama, M., Katsuno, Y. ,Hayashi, S., Miyamoto, Y., Sakai, K. and Moriguchi, M.: Biosci. Biotech. Biochem., 59, pp2115 (1995))。
さらに、Moriguchiらはアルカリジェネス(Alcaligenes)属のこれらのD-アミノアシラ−ゼ類の遺伝子配列を決定し、バシルス・ステレオサーモフィラス(Bacillus stereothermophilus)や人、ブタに由来するL-アミノアシラーゼと比較している。その結果、これらのD-アミノアシラーゼ類はL-アミノアシラーゼとは類似性が低いことを報告している(Wakayama, M., Katsuno, Y., Hayashi, S., Miyamoto, Y., Sakai, K. and Moriguchi, M.: Biosci. Biotech. Biochem., 59, pp2115 (1995))。
一方、放線菌ではSugieら(Sugie, M. and Suzuki, H.: Argric. Biol. Chem., 42, pp1O7 (1978)、Sugie, M. and Suzuki, H.: Argric. Biol. Chem., 44, pp1O89 (1980))がストレプトマイセス(Streptomyces)属にD-アミノアシラーゼを見いだし報告しているが、酵素は未精製であり十分にその性質は解明されていない。
【0008】
そして、以上に記載した従来知られている全てのD-アミノアシラーゼの温度安定性は50℃以下、至適温度は50℃以下であり、それ以上の耐熱性を示すD-アミノアシラーゼは知られていなかった。耐熱性のあるD-アミノアシラーゼを用いると耐熱性に応じて酵素の耐久性が向上して、経済的に有利であり、また、D-アミノ酸製造に応用する場合、反応温度を高く設定出来るので、溶解度から原料等の濃度を高くすることが可能になり、同様に経済的なメリットがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性のあるD-アミノアシラーゼを単離することを課題とする。また、本発明は、該耐熱性D-アミノアシラーゼを用いたD-アミノ酸の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、種々の精製方法を組み合わせることにより、ストレプトマイセズ(Streptomyces)属に属する微生物から耐熱性D-アミノアシラーゼを精製することに成功した。さらに本発明者等は、精製した耐熱性D-アミノアシラーゼが工業的なD-アミノ酸の製造に有用であることを見いだした。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の耐熱性D-アミノアシラーゼおよびその利用等に関する。
〔1〕 下記の理化学的性質を有する耐熱性D-アミノアシラーゼ。
(a) 作用:N-アシル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b) 温度安定性:pH7.5で60分間熱処理した場合、55℃で安定であり70℃以上では失活する。
(c) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度60℃付近において作用が至適である。
〔2〕 下記の理化学的性質をさらに有する、〔1〕に記載の耐熱性D-アミノアシラーゼ。
(d) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40000ダルトンを示す。
(e) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニンに良く作用し、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-L-フェニルアラニンには実質的に作用しない。
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約7.0において作用が至適である。
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+で著しく活性が阻害される。
〔3〕 Streptomyces属に属する微生物に由来する、〔1〕または〔2〕に記載の耐熱性D-アミノアシラーゼ。
〔4〕 受託番号 FERM P-17963 として寄託された Streptomyces thermonitrificans CS5-9に由来する耐熱性D-アミノアシラーゼ。。
〔5〕 受託番号 FERM P-17963 として寄託された Streptomyces thermonitrificans CS5-9。
〔6〕 〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の耐熱性D-アミノアシラーゼをコードするDNA。
〔7〕 〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の耐熱性D-アミノアシラーゼを産生する微生物を培養し、該微生物またはその培養上清を回収する工程を含む、該D-アミノアシラーゼの製造方法。
〔8〕 〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の耐熱性D-アミノアシラーゼをN-アシル-DL-アミノ酸に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
〔9〕 〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の耐熱性D-アミノアシラーゼを産生する微生物またはその処理物をN-アシル-DL-アミノ酸に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
〔10〕 N-アシル-DL-アミノ酸がN-アセチル-DL-メチオニン、 N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、 N-アセチル-DL-アスパラギン、 N-アセチル-DL-フェニルアラニン、 N-アセチル-DL-アラニン、またはN-アセチル-DL-ロイシンである、〔8〕または〔9〕に記載の方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、耐熱性のD-アミノアシラーゼに関する。本発明においてD-アミノアシラーゼとは、N-アシル-D-アミノ酸に作用して、有機酸およびD-アミノ酸の生成を触媒する酵素を指す。本発明のD-アミノアシラーゼは以下の(a)〜(c)の理化学的性質を有する。
(a) 作用:N-アシル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる、
(b) 温度安定性:pH7.5で60分間熱処理した場合、55℃で安定であり70℃以上では失活する、
(c) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度60℃付近において作用が至適である、
【0013】
なお、本発明のD-アミノアシラーゼは、好ましくは以下の(d)〜(g)の理化学的性質をさらに有する。
(d) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40000ダルトンを示す、
(e) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニンに良く作用し、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-D-フェニルアラニンには実質的に作用しない、
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約7.0において作用が至適である、
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+で著しく活性が阻害される。
【0014】
本発明においてD-アミノアシラーゼの活性は次のようにして確認することができる。たとえば、100μlの酵素液と20mMの基質(例えば各種N-アシル-D-アミノ酸)を含む50mM Tris-Cl(pH 7.5)緩衝液(全量500μl)中で、30℃、60分間で反応させる。この反応によって生成するアミノ酸の量を測定することにより、各基質に対する酵素活性を比較することができる。アミノ酸は、TNBS法またはHPLC法によって測定される。酵素活性は、実施例に記載したように、D-メチオニンの生成をスタンダードとして定量し、30℃において1分間に1μmolのD-メチオニンを生成する酵素量を1単位(unitもしくはU)と定義される。D-メチオニン以外の基質についても、同様に30℃において1分間に生成するD-アミノ酸量により定量化することができる。この活性により、酵素間、あるいは基質間の反応性を比較することができる。
【0015】
このような解析結果によれば、Streptomyces属に属する微生物に由来する実施例に記載のD-アミノアシラーゼは、特に次の基質に対して特に良く作用することが確認された(表2を参照)。
N-アセチル-D-メチオニン
N-アセチル-D-トリプトファン
N-アセチル-D-フェニルアラニン
また以下の基質に対しても作用が確認された。
N-アセチル-D-バリン
N-アセチル-D-アラニン
N-アセチル-D-ロイシン
一方、以下の化合物に対しては実質的に作用しないことが確認された。
N-アセチル-L-メチオニン
N-アセチル-L-バリン
N-アセチル-L-フェニルアラニン
【0016】
このように本発明は、N-アシル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を産生する耐熱性D-アミノアシラーゼを提供する。本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、pH7.5で60分間熱処理した場合、55℃で安定であり70℃以上では失活する。「安定」とは活性が保持されることを指し、比較的安定である場合も含まれる。具体的には、処理前の活性に比べ、少なくとも20%、好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上の活性が保持されれば安定と言うことができる。また「失活」とは、活性が著しく低下または完全に消失することを指す。具体的には、処理前の活性に比べ、10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下に活性が低下する場合、失活と言うことができる。活性は上記のようにして算出することができる。
また、本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、pH7.5で反応させる場合、温度60℃付近において作用が至適である。本発明において「60℃付近」とは、55℃〜65℃、好ましくは57℃〜63℃、より好ましくは58℃〜62℃を指す。
【0017】
さらに、本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、好ましくはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40000ダルトンを示す。本発明において「約40000ダルトン」とは、35000〜45000ダルトン、好ましくは37000〜43000ダルトン、より好ましくは38000〜42000ダルトンを指す。また、本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、好ましくはN-アセチル-D-メチオニン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニンに良く作用し、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-L-フェニルアラニンには実質的に作用しない。ここで「良く作用する」とは、作用を示す基質のうち、平均的またはそれ以上の作用を示すものを言う。また、「実質的に作用しない」とは、上記反応条件で検出可能なL-アミノ酸が生成されないか、または上記のように算出した活性が、L体に対応するD-アミノ酸の生成活性を100とした時に10以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下であることを意味する。
【0018】
また本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、30℃で60分反応させる場合、pH約7.0において作用が至適である。本発明において「約pH約7.0」とは、6〜8、好ましくは6.3〜7.7℃、より好ましくは6.5〜7.5であることを指す。また、1mMのCo2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+で著しく活性が阻害される。活性の促進は有意であればよい。また「著しく活性が阻害される」とは、活性が著しく低下または完全に消失することを指す。具体的には、1mMのCu2+非存在下の場合と比べ、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは3%未満に活性が低下する場合、「著しく活性が阻害される」と言うことができる。
活性は上記のようにして測定および算出することができる。
【0019】
本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼの由来に特に制限はない。好ましくは、本発明のD-アミノアシラーゼは微生物に由来するものである。本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼを調製するための微生物としては、例えば55℃以上の温度でも増殖し得る微生物、高温菌、好熱菌等が挙げられる。高温菌(好熱菌)としては、バシルス(Bacillus)属の細菌(B. thermophilus, B. megaterium, B. coagulans, B. stearothermophilus等)、クロストリジウム(Clostridium)属の細菌(C. kluyveri等)、デサルフォトマキュラム(Desulfotomaculum)属の細菌などの他、サーマス(Thermus)属の細菌(T. flavus, T. thermophilus, T. aguaticus, T. celer等)、メタン細菌(Methanobacterium属、Methanococcus属、Methanosarcina属等)、乳酸菌(Lactobacillus lactis, L. acidphilus, L. bulgaricus, L. delbrueckii等)、水素細菌、光合成細菌等が挙げられる。また、超好熱菌であるパイロコッカス・フリサス(Pyrococcus furisus)、パイロコッカスエス ピー(Pyrococcus sp.)、およびエアロパイラム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)等も挙げられる。
【0020】
本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、好ましくはストレプトマイセズ(Streptomyces)属に属する微生物に由来するD-アミノアシラーゼである。ストレプトマイセズ(Streptomyces)属に属する微生物としては、ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans)が好ましい。このような微生物としては、たとえばFERM P-17963として寄託された菌株CS5-9が挙げられる。
【0021】
微生物が産生するD-アミノアシラーゼは、微生物を培養し、その培養物または培養上清を回収することにより得ることができる。得られる酵素溶液は、公知の方法によりさらに精製することができる。培地としては炭素源、窒素源、無機物およびその他の栄養素を適量含有する培地ならば、合成培地または天然培地のいずれでも使用可能であり、液体培地または固体培地を使用することができる。
【0022】
具体的には、炭素源として、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜、廃糖蜜などの糖類、麦、とうもろこしなどの天然炭水化物、グリセロール、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸、グルコン酸、ピルビン酸、クエン酸などの脂肪酸類、ノルマルパラフィンなどの炭化水素類、グリシン、グルタミン、アスパラギンなどのアミノ酸類等の一般的な炭素源より使用する微生物の資化性を考慮して、適宜一種または二種以上選択して使用する。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、大豆加水分解物、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物などの有機窒素化合物、アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、尿素などの無機窒素化合物より使用する微生物の資化性を考慮して、適宜一種または二種以上選択して使用する。
さらに、無機塩として微量のマグネシウム、マンガン、カリウム、カルシウム、ナトリウム、銅、亜鉛などのリン酸塩、塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩等より適宜一種または二種以上を選択して使用することができる。また、必要に応じて植物油、界面活性剤、シリコンなどの消泡剤を添加してもよい。
【0023】
培養は前記培地成分を含有する液体培地中で振とう培養、通気攪拌培養、連続培養、流加培養などの通常の培養方法を用いて行うことができる。
培養条件は、培養の種類、培養方法により適宜選択すればよく、使用する微生物が増殖し、D-アミノアシラーゼを産生できる条件であれば特に制限はない。通常は、培養開始時のpHを4から10、好ましくは6から8に調節する。温度は微生物の生育に適した温度を適宜選択する。
培養時間は、十分量のD-アミノアシラーゼ活性を有する微生物が得られれば特に制限はなく、通常は1日から14日、このましくは1日から3日培養する。遺伝子発現に伴って生産蓄積された本発明のD-アミノアシラーゼは、次のような方法で採取、分取することができる。
【0024】
D-アミノアシラーゼが微生物体内に蓄積される場合には、培養終了後、微生物をろ過、遠心分離等の方法で集め、緩衝液、生理食塩水等で菌体を洗浄後、例えば、凍結融解処理、超音波処理、加圧処理、浸透圧差処理、磨砕処理などの物理手段、もしくはリゾチームなどの細胞壁溶解酵素処理のような生化学的処理もしくは界面活性剤との接触処理などの化学的処理を単独または組み合わせて行うことにより微生物を破砕し、D-アミノアシラーゼを抽出することができる。こうして得られた粗D-アミノアシラーゼは、塩析、有機溶媒などによる分別沈殿、塩析クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、色素クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーをオープンカラム、中圧クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって行う分離および等電点電気泳動、native-電気泳動などの電気泳動法による分離等の手段を単独もしくは組み合わせて用いることにより精製することができる。
【0025】
具体的には、例えば実施例に記載の精製法により調製することが可能である。すなわち、例えば231液体培地(0.1%酵母エキス、0.1%肉エキス、1.0%マルトース、0.2%N.Z.アミンtypeA、pH7.0)などの培地を用いて振とう培養を行い、遠心分離により集菌する。得られた菌体を、ソニケーターで超音波破砕し、遠心分離を行い上清を回収してD-アミノアシラーゼの粗酵素液を得る。その後、硫安を用いた塩析処理、ゲルろ過による脱塩、Butyl-Toyopearl 650M疎水的クロマトグラフィー、DEAE-Toyopearl 650Mイオン交換クロマトグラフィー、Sephacryl S200ゲルろ過クロマトグラフィー、Mono Q イオン交換クロマトグラフィーを行い、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動的に単一のバンドに精製することができる。
【0026】
本発明のD-アミノアシラーゼを利用して、これをコードするDNAを単離することができる。本発明のD-アミノアシラーゼをコードするDNAは、たとえば、以下のような方法によって単離することができる。
すなわち本発明の酵素を精製後、N末端アミノ酸配列を解析し、さらに、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼなどの酵素により切断後、逆相液体クロマトグラフィーなどによりペプチド断片を精製後プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列を解析することにより複数のアミノ酸配列を決めることができる。決定したアミノ酸配列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型とし、アミノ酸配列から設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことにより本発明のD-アミノアシラーゼをコードするDNAの一部を得ることができる。
さらに、得られたDNA断片をプローブとして、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、本発明のD-アミノアシラーゼをコードするDNAを得ることができる。
【0027】
また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33, HBJ出版局)などにより本発明のD-アミノアシラーゼをコードするDNAを得ることも可能である。
なお本発明のD-アミノアシラーゼをコードするDNAは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。
【0028】
このようにして単離された、本発明によるD-アミノアシラーゼをコードするDNAを公知の発現ベクターに挿入することにより、D-アミノアシラーゼ発現ベクターが提供される。また、この発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養することにより、本発明のD-アミノアシラーゼを組み換え体として得ることができる。
【0029】
本発明のD-アミノアシラーゼを発現させるために、形質転換の対象となる微生物は、このD-アミノアシラーゼをコードするDNAを含む組み換えベクターにより形質転換され、D-アミノアシラーゼ活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。利用可能な微生物としては、たとえば以下のような微生物を示すことができる。
エシェリヒア(Escherichia)属
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ハンゼヌラ(Hansenula)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
【0030】
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories、1989年)。微生物中などにおいて、本発明のD-アミノアシラーゼをコードするDNAを発現させるためには、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中にこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターをD-アミノアシラーゼをコードするDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを用いる必要がある。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネータ−などに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-488 (1992) などに詳細に記述されている。
【0031】
例えばエシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β-ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、PRなどに由来するプロモーターなどが利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを用いることができる。
【0032】
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどが利用可能であり、染色体にインテグレートすることもできる。また、プロモーター、ターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、 npr(中性プロテアーゼ)、amy(α-アミラーゼ)などが利用できる。
【0033】
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター、ターミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子などが利用できる。
【0034】
ブレビバクテリウム属特に、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))などのプラスミドベクターが利用可能である。プロモーター、ターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
【0035】
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984)などのプラスミドベクターが利用可能である。
【0036】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239 (1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
【0037】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol. 137, 614 (1979))などが利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
【0038】
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である (J.
Gen. Microbiol. 138,1003 (1992) )
【0039】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486 (Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1995) )が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53 (1997) )。
【0040】
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
【0041】
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390 (1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
【0042】
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)及びサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
【0043】
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zygosaccharomyces rouxii)由来の pSB3(Nucleic Acids Res. 13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクターが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来 PHO5 プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 2521 (1990))などが利用可能である。
【0044】
ハンゼヌラ(Hansenula)属においては、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ハンゼヌラ・ポリモルファ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、 HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導される AOX(アルコールオキシダーゼ)、 FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーターなどが利用可能である。
【0045】
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子 (PARS1、 PARS2)などを利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能な AOX など強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res. 15, 3859 (1987))。
【0046】
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス (Candida utilis) などにおいて宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem. 51, 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターは強力なプロモーターが開発されている(特開平 08-173170)。
【0047】
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) 、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (1989))。
【0048】
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnology 7, 596-603 (1989))。
【0049】
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。
【0050】
本発明においてD-アミノアシラーゼを産生する微生物には、D-アミノアシラーゼの生産能を有する各種菌株、突然変異株、変種、遺伝子操作技術の利用により作成された本発明のD-アミノアシラーゼの生産能を獲得した形質転換株などが含まれる。形質転換体において、外来遺伝子を発現を誘導できるようにした場合には、十分に菌体が増殖した後に、あるいは増殖過程において、形質転換体の外来遺伝子の発現を誘導する条件を与える。たとえばlacプロモーターに対しては、IPTGを与えることにより、その下流に連結されている外来遺伝子の発現が誘導される。あるいは温度感受性プロモーターであれば、発現に必要な温度条件で培養を行う。
【0051】
D-アミノアシラーゼ産生菌(D-アミノアシラーゼ発現ベクターによって形質転換した生物を含む)の培養およびD-アミノアシラーゼの精製は上記と同様に行うことができる。得られたD-アミノアシラーゼはD-アミノ酸の製造のために利用することができる。また、培養物は、そのまま、あるいは菌体を破砕した粗精製物としてD-アミノ酸の製造のために利用することができる。すなわち、液体培地または平板培地上にて培養した菌体を採取し、必要に応じて、固定化菌体、粗酵素、固定化酵素等の菌体処理物を調製する。これを、原料であるN-アシル-DL-アミノ酸に接触させることによりD-アミノ酸の生成反応系を構成することができる。N-アシル-DL-アミノ酸は、適当な溶媒に溶解させてもよい。反応は、リン酸緩衝液等の緩衝能を有する水性媒体、水性媒体にメタノール、エタノール、アセトン等の水に溶けやすい有機溶媒を1から100%混合させた混合媒体中、水性媒体と水に溶解しにくい非水混和性溶媒、例えば、n-ヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、ヘキサン、トルエン、クロロホルム等との2相系中で行うことができる。2相系では、D-アミノアシラーゼまたは菌体や菌体処理物は、そのまま、あるいは水や緩衝液の溶液として供給される。この他、N-アシル-DL-アミノ酸を水、緩衝液またはエタノール等の水溶性溶媒に溶解させて反応系に供給することもできる。この場合は、D-アミノアシラーゼ、あるいは菌体や菌体処理物とともに単一相の反応系を構成することになる。その他、本発明の反応は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。なお、酵素と反応溶液の接触形態はこれらの具体例に限定されるものではない。反応溶液とは、基質を酵素活性の発現に望ましい環境を与える適当な溶媒に溶解したものである。
【0052】
本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼは、従来より高温度域で種々のN-アシル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる性質を有するため、原料、基質の溶解性が上がり、仕込み濃度を高く設定出来ることから、本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼを用いてD-アミノ酸を工業的に有利に製造することが可能である。例えば、本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼをD体とL体の混合物であるN-アセチル-DL-アミノ酸に作用させて、D-アミノ酸を特異的に製造することができる。
【0053】
適用可能なN-アシル-DL-アミノ酸としては特に制限されず、広い範囲の化合物から選択できる。代表的なN-アシル-DL-アミノ酸は、式(1)
【化1】
(式中、R1、R2は、同一または異なっていてもよい、水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。好ましくは、R1、R2は、同一または異なる、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリル基、またはアラルキル基、あるいはそれらの誘導体を示し、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。ただし、R2は水素原子ではない。また、XはH、NH4、または金属原子)で表すことができる。
好ましいR2にはメチル基、クロロメチル基、フェニル基、アミノメチル基が挙げられ、また好ましいR1にはチオメチルエチル基(N-アシル-DL-メチオニン)、イソプロピル基(N-アシル-DL-バリン)、インドリル基(N-アシル-DL-トリプトファン)、カルバモイルメチル基(N-アシル-DL-アスパラギン)、ベンジル基(N-アシル-DL-フェニルアラニン)、メチル基(N-アシル-DL-アラニン)、2-メチル-プロピル基(N-アシル-DL-ロイシン)が挙げられる。
【0054】
本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼに作用させる基質としては、特にN-アセチル-DL-アミノ酸が好ましく、例えば、N-アセチル-DL-メチオニン、N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、N-アセチル-DL-アスパラギン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-アラニン、およびN-アセチル-DL-ロイシンが例示される。
【0055】
本発明においてD-アミノ酸の製造に用いられるD-アミノアシラーゼとしては、精製酵素の他、部分精製酵素も含まれる。また、D-アミノアシラーゼを公知の方法により不溶性の担体に固定化したものが含まれる。また、本発明においては、これら酵素蛋白質を用いるだけでなく、D-アミノアシラーゼ産生能を有する微生物を用いることも可能である。すなわち、D-アミノアシラーゼ産生能を有する微生物を直接N-アセチル-DL-アミノ酸に作用させて、D-アミノ酸を製造することも可能である。また、該微生物の処理物にN-アセチル-DL-アミノ酸に作用させて、D-アミノ酸を製造することも可能である。処理物とは、凍結融解処理、超音波処理、加圧処理、浸透圧差処理、磨砕処理などの物理処理、リゾチームなどの細胞壁溶解酵素処理のような生化学的処理、もしくは界面活性剤、トルエン、キシレン、またはアセトンなどの有機溶媒との接触処理などの化学的処理等を行った産物を指す。このような処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したものなどは処理物に含まれる。
【0056】
本発明のD-アミノアシラーゼ、D-アミノアシラーゼ産生能を有する微生物、またはその処理物等をN-アシル-D-アミノ酸に作用させる際には、D-アミノアシラーゼの活性や安定性、D-アミノアシラーゼ産生能を有する微生物の反応性にとって好ましい条件を選択する。本発明によるD-アミノアシラーゼは、Zn2+、Ni2+、Co2+あるいはCu2+等の2価金属イオンにより活性が促進または阻害を受ける場合がある。2価金属イオンにより活性が阻害される場合は、反応液にEDTAなどのキレート剤を添加することができる。
反応の基質であるN-アシル-DL-アミノ酸の濃度に特に制限はないが、通常0.1〜50%程度の濃度が用いられる。基質は必ずしも反応媒体中で完全に溶解しなくてもよい。また、基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。使用するD-アミノアシラーゼの量は大量に使用すれば反応が速く進む場合が多いが、通常は1U〜1000U/ml程度用いられる。反応温度は酵素の耐熱性に応じて設定すれば良いが、通常5〜70℃の範囲であることが多い。また、反応pHも酵素が作用する範囲であれば良いが、通常は4〜10で行われる。反応は、攪拌下あるいは静置下で行うことができる。
一般に酵素や微生物は、固定化することによって安定化される。固定化する方法としては、ポリアクリルアミドゲル法、含硫多糖ゲル法(カラギーナンゲル法)、アルギン酸ゲル法、キチン法、セルロース法、寒天ゲル法などの公知の方法を用いることができる。また、グルタルアルデヒド等により架橋処理したものを含む。固定化した酵素や微生物による反応時間は、D-アミノアシラーゼの量と基質量に左右される。当業者は、経験的にこれらの条件を最も理想的な条件に最適化することができる。通常は1〜100時間の反応により、目的とする反応生成物を効率良く得ることができる。
【0057】
反応により生じたD-アミノ酸の反応液からの回収は、例えば、濃縮、等電点沈殿などによる直接結晶法やイオン交換樹脂処理、膜分離などの公知の方法により行うことができる。例えば N-アセチル-DL-トリプトファンを基質にして D-トリプトファンを生成した場合、反応液からD-トリプトファンを採取するには、反応液を強酸性陽イオン交換樹脂に通し、 D-トリプトファンを吸着させ、該樹脂を水洗後、0.5Nアンモニア水で溶出させる。溶出液を濃縮して得た粗D-トリプトファン結晶粉末を少量の50%熱エタノール水に溶解し、活性炭処理して脱色し、冷却後、精D-トリプトファンの結晶を得ることができる。また、D-バリンの場合には、反応終了後、遠心分離して除菌などした後に6規定塩酸でpH1とする。次いで、析出したN-アセチル-L-バリンを遠心分離で除去し、上清を活性炭処理した後、再びpHを7.0としH+型強酸性陽イオン交換体(アンバーライトIR-120B)に加え、5%アンモニア水溶液で脱着する。さらに、脱着物を80℃で減圧乾燥することで得ることができる。
【0058】
【実施例】
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
(1)菌株の同定
静岡県内の土壌から分離したCS5-9菌株の特性は下記の通りであった。気中菌糸の色は灰色、基生菌糸の色は無色、拡散メラニン色素は無し、胞子連鎖形態はspiral、担胞子体は通常、straightであり、ごく希にグルコースが入ったISP培地でspiralになる場合が観察された。D-グルコース、D-フラクトース、シュークロースとイノシトールは利用出来るが、L-アラビノース、D-キシロース、D-マンニトール、ラフィノース、ラムノースでは生育出来ない。細胞壁の脂肪酸組成はLL-diaminopimelic acidが主である。また、PCRによるダイレクトシークエンシングで16S rRNAの塩基配列の相同性を見たところ、Streptomyces thermonitrificans DSM 40579 (ISP 5579)と100%であったので、ISP (International Streptomyces Project) criteriaとBergey's manual of Systematic Bacteriology (Volume 4) 1989 からCS5-9株はStreptomyces thermonitrificansに属すると同定した。
【0059】
この菌株は、「Streptomyces thermonitrificans CS5-9」として下記の通り寄託機関に寄託した。
(イ)寄託機関の名称・あて名
名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番1号(郵便番号305-0046)
(ロ)寄託日(原寄託日) 平成12年7月11日
(ハ)寄託番号 FERM P-17963
【0060】
(2)菌株および培養
ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans )CS5-9株によるD-アミノアシラーゼ生産のための培地は、120mlの231液体培地(0.1%酵母エキス(オリエンタル酵母社製)、0.1%肉エキス、1.0%マルトース、0.2%N.Z.アミンtypeA、pH7.0)を500ml容の坂口フラスコに分注し、スピードクレーブで滅菌することにより調製した。培養は、振とう培養器で50℃、42時間、115spm.で行った。なお、前培養としては、同組成の液体培地5mlを試験管に分注し、スピードクレーブで滅菌後、スラント(TSB寒天培地(0.4%ポリペプトン、0.05%グルコース、0.5%NaCl、0.25%K2HPO4 、2%寒天、pH7.3))より1白金耳量植菌し、50℃で24時間振とう培養した。
培養後、8000rpm(12500×g)で10分間、4℃で遠心分離(日立工機製、himac SCR 20B、RPR10-2ローター)を行い集菌した。集菌体を50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、再び同ローターにより4000rpm(3130×g)で10分間、4℃で遠心分離を行い使用する菌体を得た。得られた菌体は-20℃で保存した。
【0061】
(3)D-アミノアシラーゼの活性測定方法
上記の方法で得た菌体を、ソニケーター(Kubota, Insonataor 201M)で50mMのリン酸緩衝液 (pH7.0)緩衝液中で190Wで15分間、超音波破砕した。超音波破砕後、日立工機製冷却遠心機(RPR20-2 ローター)で17500rpm(39000×g)で15分間、4℃で遠心分離を行い上清を得た。これをD-アミノアシラーゼの粗酵素液とした。
酵素反応は、20mMのN-アセチル-D-メチオニン(Sigma社製)、50mMのリン酸緩衝液 (pH7.0) 、1mMのCoCl2、100μlの酵素液を含む全量500μlの反応系で、30℃、一定時間行った。反応の停止は、TsaiらによるTCA反応停止溶液(0.11Mトリクロロ酢酸と0.22M酢酸ナトリウム、0.33M酢酸からなる)を0.5ml添加、或いは98℃、3分間の加熱処理によって行った。
酵素活性の測定は、TNBS法(Tokuyama, S., Hatano, K. and Takahashi, T.: Biosci. Biotech. Biochem., 58, pp24(1994))に従って行った。即ち、アミノ酸を含むサンプルを0.5mlの(C)液(0.1M Na2B4O7)に加え、1.0mlとして、これに20mlの0.11M TNBS溶液を加えて素早く攪拌した。5分後に、420nmにおける吸光度を測定した。
なお、D-メチオニンを、L-メチオニンをスタンダードとして比色定量し、30℃において1分間に1μmolのD-メチオニンを生成する酵素量を1単位(unit)とした。
また、タンパク量の定量はLowry法にしたがい、BSA(Bovine Serum Albumin、Sigma社製)を標準とした。即ち、測定前に、(A)液(2% Na2CO3(0.1N NaOH中))と(B)液(0.5% CuSO4・5H2O(1% クエン酸ナトリウム中))を50:1の割合で混合したアルカリ性銅溶液を調製し、タンパク試料(タンパク質5〜50μg)に上記のアルカリ性銅溶液1mlを加え、室温で20分間放置した後、蒸留水で2倍に希釈したフェノール試薬(酸濃度1N)を0.1ml加え、30分間室温で放置した。反応後、750nmにおける吸光度を測定した。
【0062】
[実施例2] ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans)由来の耐熱性D-アミノアシラーゼの精製
1. 菌体の培養
ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans )CS5-9株によるD-アミノアシラーゼ生産のための培地は、120mlの231液体培地(0.1%酵母エキス(オリエンタル酵母社製)、0.1%肉エキス、1.0%マルトース、0.2%N.Z.アミンtypeA、pH7.0)を500ml容の坂口フラスコに分注し、スピードクレーブで滅菌することにより調製した。培養は、振とう培養器で50℃、42時間、115spm.で行った。なお、前培養としては、同組成の液体培地5mlを試験管に分注し、スピードクレーブで滅菌後、スラント(TSB寒天培地(0.4%ポリペプトン、0.05%グルコース、0.5%NaCl、0.25%K2HPO4 、2%寒天、pH7.3))より1白金耳量植菌し、50℃で24時間振とう培養した。
培養後、8000rpm(12500×g)で10分間、4℃で遠心分離(日立工機製、himac SCR 20B、RPR10-2ローター)を行い集菌した。集菌体を50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、再び同ローターにより4000rpm(3130×g)で10分間、4℃で遠心分離を行い使用する菌体を得た。得られた菌体は-20℃で保存した。
【0063】
2. D-アミノアシラーゼの精製
精製操作は、特に断りのない限り4℃で行った。緩衝液は50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を用いた。
2-1. 粗酵素液の調製
湿菌体980gを3倍量の50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、190Wで25分超音波処理した。遠心分離(himac SCR20B HITACHI RPR10-2ローター、8,000rpm (12,500×g)、15min、4℃)し、粗酵素液(2.35L)を得た。
【0064】
2-2. Butyl-Toyopearl 650 M カラムクロマトグラフィー
粗酵素液に30%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、0℃、1時間静置後、遠心分離 (17,500rpm×30分)した。上清をあらかじめ30% 飽和硫酸アンモニウムを含む緩衝液で平衡化しておいたButyl-Toyopearl 650Mカラム(200ml) に吸着させ、1000mlの同緩衝液で洗浄した。1000mlの30%飽和〜0%硫酸アンモニウムの直線濃度勾配で溶出し、活性画分(100ml)を得た。活性画分に60%飽和となるよう硫酸アンモニウムを加え、0℃、1時間静置後、遠心分離 (17,500rpm×30分)した。沈殿を緩衝液で洗浄後、緩衝液(30ml)で溶解した。 Butyl-Toyopearl 650M カラムクロマトグラフィーを行った結果、本酵素は30%飽和濃度の硫酸アンモニウムで吸着し素通り画分および洗浄画分に本酵素活性は認められず、溶出画分に本酵素活性が認められた(図1)。
【0065】
2-3. SephadexG-25脱塩ゲルろ過
上記の濃縮液(30ml)をあらかじめ50mMのNaClを含む緩衝液300mlで平衡化したSephadexG-25(100ml)でゲルろ過し、脱塩を行った。
【0066】
2-4. Butyl-Toyopearl 650M カラムクロマトグラフィー
上記の脱塩後の活性画分(90ml)に30%飽和となるように硫酸アンモニウムを加え、あらかじめ30% 飽和硫酸アンモニウムを含む緩衝液で平衡化しておいたButyl-Toyopearl 650Mカラム(50ml)に吸着させ、250mlの同緩衝液で洗浄した。250mlの30%飽和〜0%硫酸アンモニウムの直線濃度勾配で溶出し、活性画分 (72ml)を得た。活性画分に60%飽和となるよう硫酸アンモニウムを加え、0℃、1時間静置後、遠心分離 (17,500rpm×30分)した。沈殿を緩衝液で洗浄後、緩衝液(20ml)で溶解した。この結果を図2に表した。
【0067】
2-5. DEAE-Toyopearl カラムクロマトグラフィー
脱塩後の画分(35ml)をあらかじめ緩衝液で平衡化しておいたDEAE-Toyopearl 650Mカラム(50ml)に吸着させ、200mlの同緩衝液で洗浄した250mlの0〜0.5M NaClの直線濃度勾配で溶出し、本酵素は0.20M付近の塩化ナトリウムで溶出したことが確認され、活性画分 (5.0ml)を得た。この結果を図3に表した。
【0068】
2-6. HiPrep 16/60 Sephacryl S200 HRカラムクロマトグラフィー
本クロマトグラフィーは室温で行った。上記の得られた活性画分(4.9ml)をあらかじめ0.15MのNaClを含む緩衝液で平衡化したHiPrep 16/60 Sephacryl S200 HRに供し、同緩衝液で0.5ml / min.で溶出させ1.0mlずつ分画した。活性画分(3ml)得た。HiPrep 16/60 Sephacryl S200カラムクロマトグラフィー(FPLC)を行ったところ、48ml〜52mlにかけて活性画分を得た。本酵素活性のピークは溶出量50.5mlであった。(図4)
これらの精製過程をまとめて表1に示した。本酵素は980gの湿菌体から各種クロマトグラフィーにより収率0.16%で107倍にまで精製された。その比活性は384mU/mgであった。
【0069】
【表1】
【0070】
3. SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
分離ゲル溶液
・30% Acrylamide mix. 6ml
・H2O 1.3ml
・0.75M Tris-HCl (pH8.8) 7.5ml
・10% SDS 150μl
・TEMED 12μl
上記のように調製した分離ゲル溶液に25% APSを50μl加えて撹拌し、ゲル板に上から3cmくらいのところまで流し込み、静かにH2Oを重層した。10〜20分してゲルが固まったら重層したH2Oを捨てた。
濃縮ゲル溶液
・30% Acrylamide mix. 0.75ml
・H2O 2.9ml
・0.75M Tris-HCl (pH8.8) 3.75ml
・10% SDS 75μl
・TEMED 6μl
上記のように調製した濃縮ゲル溶液に25% APSを25μl加えて撹拌し、ゲル板いっぱいまで流し込み、コームを差し込んだ。約20〜60分くらいでゲルが固化した。適当に希釈または濃縮したサンプル溶液に、等量のサンプル処理液(0.125M Tris-HCl (pH6.8), 10% 2-メルカプトエタノール, 4% SDS, 10% スクロース, 0.004%ブロモフェノールブルー)を加え 100℃、3分間 沸騰水中で処理し、その20μlをゲルにアプライした。泳動用緩衝液はトリス-グリシン緩衝液(25mM Tris-HCl (pH8.4), 192mM グリシン, 0.1% SDS)を用い、定電流 30mAで泳動した。泳動後、ゲルを0.25% クマシーブリリアントブルー R-250 溶液を用いて1時間染色した後、脱色液(メタノール:酢酸:水(25:7.5:67.5)混液)で脱色した。
各種クロマトグラフィー後の活性画分でSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行ったところゲルろ過活性画分において分子量4万のほぼ単一なバンドにまで精製されたことが確認された。
精製過程において本酵素は収率0.2%で精製倍率107倍でSDS-PAGEにおいて単一のバンドを示すまでに精製された。
【0071】
[実施例3] ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans)由来の耐熱性D-アミノアシラーゼの性質
1.分子量の測定
分子量の測定は、(1)ゲル濾過法と(2)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)法によって測定した。
(1) ゲル濾過法(図5)
「Superose 12 HR 10/30」(harmacia社製)カラムを使用した。分子量マーカーには、「Gel Filtration Standard」(Bio-Rad社製);チログロブリン(670K)、ガンマグロブリン(158K)、オバルブミン(44K)、ミオグロビン(17K)、ビタミンB-12(1.35K)を用いた。流速は0.25ml/分で行った。この結果、本酵素の分子量はゲル濾過法で約40000と推定された
(2) SDS-PAGE法(図6)
前述の方法にしたがい、Mini-PROTEAN II泳動装置(Bio-Rad社製)を用いて、定電流30mAで電気泳動した。タンパク質分子量マーカーにはホスホリラーゼB(97K)、血清アルブミン(66.1K)、オボアルブミン(45K)、カルボニックアンヒドラーゼ(31K)を用いた。泳動後、クーマシブルリアントブルーで染色し、脱色液I(100ml酢酸、300mlメタノール、700ml純水)と脱色液II(75ml酢酸、50mlメタノール、875ml純水)によって脱色した後、分子量マーカーと比較した。この結果、分子量が約40000と推定された。
以上より、ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans)由来の耐熱性D-アミノアシラーゼは分子量が約40000の単量体であると推定した。本酵素の分子量は、アルカリジェネス(Alcaligenes)属のD-アミノアシラーゼ(MI-4株;51000、A-6株;52000、DA1株;55000、DA181株;58000)より小さく、従来報告のあったストレプトマイセス(Streptomyces)属のD-アミノアシラーゼ(S. olivaceus;45000)とも異なる値であった。
【0072】
2.基質特異性
本酵素の基質特異性は、N-アセチル-D-メチオニンに対する酵素活性を100%として比較した。比較した基質は、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-フェニルアラニン、N-アセチル-D-ロイシン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-アスパラギン、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-バリンを用いた。酵素活性は、100μlの酵素液と20mMの各基質および1mM塩化コバルトを含む50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液 400μlを加えた標準反応液中(全量500μl)で30℃、60分で行った。本酵素のD-メチオニン、D-ロイシン、D-アラニン、D-バリン、D-トリプトファン、D-アスパラギン、D-フェニルアラニンのN-アセチル体に対する基質特異性を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
本酵素は、N-アセチル-D-フェニルアラニン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-メチオニンに良く作用し、N-アセチル-D-ロイシン、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-アラニンに対しても活性を示した。また、本酵素はN-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-L-バリンには作用しなかった。
【0075】
3.酵素の性質
(1) 酵素の熱安定性
酵素液を30℃〜70℃で30分処理して、すぐに氷冷した。処理後の酵素は、50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量500μl)で30℃、60分で酵素反応を行った。本酵素の熱安定性を図7に示す。本酵素は55℃までは比較的安定だが、60℃で残存活性が20%程度になり、70℃以上では失活した。
【0076】
(2) 至適反応温度
酵素反応系の温度のみを30℃〜70℃の各段階にかえて、50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量500μl)で15分で酵素反応を行った。本酵素の至適反応温度を図8に示す。本酵素の至適温度は60℃付近であると推定された。
【0077】
(3) 至適反応pH
酵素反応系のpHのみをpH5.0〜pH10.0の各pHにかえて30℃、60分で酵素反応を行った。緩衝液として、pH5.0〜7.0では50mMのBis-Tris-HCl緩衝液、pH7.5〜10.0では50mMのTris-HCl緩衝液を用いた。本酵素の至適pHを図9に示す。本酵素の至適pHはpH7.0付近であると推定された。
【0078】
(4) pH安定性
酵素溶液に20倍量のpH3-11の緩衝液を加え、4℃で20時間インキュベート後、pH7.5、30℃、60分で酵素反応を行った。pH5.0および3.5では50mM citrate-NaOH、pH4.0〜5.0では50mM acetate-NaOH、pH5.0〜7.0では50mM Bis-Tris-HCl、pH7.0〜10.0では50mM Tris-HCl、pH10.0〜11.0では50mM Borate-NaOH緩衝液を用いた。pH7.0付近で安定であった。(図10)
【0079】
(5) 各種金属塩および各試薬の影響
酵素反応系に、1mMの濃度になるように各種の金属塩および各種の酵素阻害剤を添加して酵素反応を行った。酵素反応は50mMのTris/HCl(pH7.5)緩衝液中(全量500μl)で行った。金属塩の添加では、酵素以外の標準反応組成液に各金属塩またはEDTAを1mM添加したものを30℃で5分間あらかじめ加温し、酵素液を加えて30℃、60分反応させた。酵素阻害剤の添加では、基質以外の標準反応液をあらかじめ5分加温し、各阻害剤を1mM添加した後に基質を加え、酵素反応を30℃、100分間行った。相対活性は無添加のものを100%として算出した。各種の金属塩と各試薬が本酵素活性に及ぼす影響を表3と表4に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
本酵素は、1mMのCo2+で活性が著しく促進されたが、Cu2+で著しく阻害された。本酵素はSH試薬であるPCMB(p-chloromerucuribenzoic acid)やN-エチルマレイドによって阻害された。また、金属キレート剤であるEDTAによっても阻害された。
【0082】
【発明の効果】
本発明により、 ストレプトマイセズ・サーモニトリフィカンス(Streptomyces thermonitrificans )由来の耐熱性D-アミノアシラーゼ、およびこれを用いたD-アミノ酸の製造方法が提供された。本発明の耐熱性D-アミノアシラーゼを用いれば、N-アセチル-DL-アミノ酸(例えば、N-アセチル-DL-メチオニン、N-アセチル-DL-バリン、N-アセチル-DL-トリプトファン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-アラニンおよびN-アセチル-DL-ロイシンなど)から、対応するD-アミノ酸を簡便かつ効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Butyl-Toyopearlカラムクロマトグラフィーによる本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す図である。三角は吸光度(280nm)、直線は硫安濃度(%飽和)を表す。活性画分を矢印で示した(画分番号25-35)。
ゲル体積:180ml
樹脂:TK Butyl Toyopearl 650M
平衡化および洗浄:30%飽和硫安 50mMリン酸緩衝液 800ml
溶出:30%-0%飽和硫安の直線濃度勾配 800ml で溶出、1フラクションに20mlずつ分取
【図2】 Butyl-Toyopearlカラムクロマトグラフィー(2回目)による本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す図である。三角は吸光度(280nm)、直線は硫安濃度(%飽和)を表す。活性画分を矢印で示した(画分番号20-41)。
ゲル体積:50ml
樹脂:TK Butyl Toyopearl 650M
平衡化および洗浄:30%飽和硫安 50mMリン酸緩衝液 800ml
溶出:30%-0%飽和硫安の直線濃度勾配 800ml で溶出、1フラクションに20mlずつ分取
【図3】 DEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィーによる本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す図である。三角は吸光度(280nm)、丸は活性(mU/ml)、直線はNaCl濃度を表す。
ゲル体積:50ml
平衡化および洗浄:50mMリン酸緩衝液 250ml
溶出:0M-0.5M NaCl直線濃度勾配 250ml で溶出、1フラクションに5mlずつ分取
【図4】 HiPrep 16/60 Sephacryl S200 HRを用いたゲル濾過による本発明のD-アミノアシラーゼの精製を示す図である。三角は吸光度(280nm)、丸は活性(mU/ml)を表す。
ゲル体積:320ml
平衡化および洗浄:0.15M NaClの 50mMリン酸緩衝液 640ml
溶出:同上緩衝液、流速0.5ml/min
【図5】ゲル濾過による本発明のD-アミノアシラーゼの分子量の測定結果を示す図である。図中のAはガンマグロブリン (158000)、Bはオバルブリン(44000)、Cはミオグロビン(17000)、DはビタミンB-12(13500)を示す。丸は本発明のD-アミノアシラーゼの溶出位置と分子量を示す。
【図6】 SDS-PAGE法による本発明のD-アミノアシラーゼの分子量の測定結果を示す図である。分子量マーカーとして、ホスホリラーゼB(97.4K)、血清アルブミン(66.1K)、オボアルブミン(45K)、およびカルボニックアンヒドラーゼ(31K)を用いた。分離ゲル濃度は10%とした。M:分子量マーカー、1:粗酵素液、2:Butyl Toyopearlクロマトグラフィー(1回目)、3:DEAE Toyopearlクロマトグラフィー、4:hiprep 10/60 Sephacryl S200ゲルろ過、5:MonoQ HR 5/5。
【図7】本発明のD-アミノアシラーゼの熱安定性を示す図である。基質であるN-アセチル-D-メチオニン以外の標準反応混合液を30分間各処理温度にて加温したのち、0℃に急冷した。その後、N-アセチル-D-メチオニンを加え、60分間酵素反応を行った。残存活性は、無処理を100%として算出した。
【図8】本発明のD-アミノアシラーゼの至適反応温度を示す図である。酵素反応を行う前に、あらかじめ酵素液以外の標準反応混合液を30℃に加温しておき、酵素反応時間は15分で測定した。
【図9】本発明のD-アミノアシラーゼの至適反応pHを示す図である。図中の三角は 50mM Bis-Tris-HCl緩衝液(pH5.0〜7.0)を、丸は50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5〜10.0)を用いた。
【図10】本発明のD-アミノアシラーゼのpH安定性を示す図である。酵素を各pH下に4℃で20時間放置し、その後30℃、pH7.5の標準反応液組成で60分間反応させ活性を測定した。残存活性は、pH7.0を100%として算出した。緩衝液としては、白三角は citrate-NaOH(pH3.0, 3.5)、黒三角は acetate-NaOH(pH4.0〜5.0)、白四角は Bis-Tris-HCl(pH5.0〜7.0)、黒四角は Tris-HCl(pH7.0〜10.0)、白丸は Borate-NaOH(pH10.0〜11.0)をそれぞれ50mMで使用した。
Claims (7)
- Streptomyces thermonitrificansに由来するD-アミノアシラーゼであって、下記の理化学的性質を有する耐熱性D-アミノアシラーゼ。
(a) 作用:N-アシル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b) 温度安定性:pH7.5で60分間熱処理した場合、55℃で安定であり70℃以上では失活する。
(c) 至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度60℃付近において作用が至適である。
(d) 分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約40000ダルトンを示す。
(e) 基質特異性:N-アセチル-D-メチオニン、N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニンに良く作用し、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-アラニンおよびN-アセチル-D-ロイシンに作用し、N-アセチル-L-メチオニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-L-フェニルアラニンには実質的に作用しない。
(f) 至適pH:30℃で60分反応させる場合、pH約7.0において作用が至適である。
(g) 金属イオンの影響:1mMのCo2+で活性が促進されるが、1mMのCu2+で著しく活性が阻害される。 - 受託番号 FERM P-17963 として寄託された Streptomyces thermonitrificans CS5-9に由来する、請求項1に記載の耐熱性D-アミノアシラーゼ。
- 受託番号 FERM P-17963 として寄託された Streptomyces thermonitrificans CS5-9。
- 請求項1または2に記載の耐熱性D-アミノアシラーゼを産生する微生物を培養し、該微生物またはその培養上清を回収する工程を含む、該D-アミノアシラーゼの製造方法。
- 請求項1または2に記載の耐熱性D-アミノアシラーゼをN-アシル-DL-アミノ酸に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
- 請求項1または2に記載の耐熱性D-アミノアシラーゼを産生する微生物またはその処理物をN-アシル-DL-アミノ酸に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
- N-アシル-DL-アミノ酸がN-アセチル-DL-メチオニン、 N-アセチル-DL-バリン、 N-アセチル-DL-トリプトファン、 N-アセチル-DL-アスパラギン、 N-アセチル-DL-フェニルアラニン、 N-アセチル-DL-アラニン、またはN-アセチル-DL-ロイシンである、請求項5または請求項6に記載の方法。
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