JP4526157B2 - D−アミノアシラーゼ、およびそれをコードする遺伝子 - Google Patents
D−アミノアシラーゼ、およびそれをコードする遺伝子 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、D−アミノアシラーゼ、それをコードする遺伝子、そして該D-アミノアシラーゼを用いたD-アミノ酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素は高い触媒機能をもつだけでなく、基質特異性、反応特異性とともに、立体特異性を示す。酵素の立体特異性は、いくつかの例外はあるものの、ほとんど絶対的といえる。
さて、近年における研究の精密化に伴い、医薬品、農薬、飼料、香料などの分野で光学活性体を扱うことの重要性が増している。光学異性体は生理活性をまったく異にする場合があるため、それらを特異的に得るための技術は重要である。たとえばサリドマイドは、D(R)体は催奇性を持たないが、L(S)体には強い催奇形成がある。そのラセミ体を実用に供したことが、サリドマイドによる薬害事件を引き起こす原因となった。更に対掌体の一方のみが有効な生理活性を示す場合、両者の共存によって、もう一方の異性体が単に活性を持たないという問題のみならず、有効な対掌体に対して競合阻害をもたらす。その結果、ラセミ体の生物活性が有効な対掌体に対して1/2以下に激減してしまうこともある。従って、光学的に純粋な対掌体をいかにして入手(合成または分割)するかは、産業上重要な課題となっている。
この課題に対して、ラセミ体を合成した上で、それを効果的に光学分割する手法が広く用いられている。しかし合成後の分割による手法では、常に目的としない対掌体を副生成物として合成することになるので、原料の有効利用という点では問題を残す。たとえ回収された副生成物を原料として再生するとしても、常に一定量の副生成物の合成を繰り返すことには変わりは無い。したがって、副生成物や多量の廃液を生じない酵素法による光学分割が注目されている。酵素法による光学分割は、酵素の特異性を利用して、必要な対掌体を特異的に生成させる方法である。不要な対掌体の合成を低く抑えることができるので、光学的な純度に優れた生成物を容易に得ることができる。また、原料の有効利用の点でも有利である。
【0003】
一般にL-アミノ酸は、調味料や食品・飼料の添加物、医薬用輸液などに広く、かつ多量に用いられておりその利用価値は非常に高い。L-アミノ酸は、主に微生物を用いた直接発酵法により生産されている。その他、N-アシル-DL-アミノ酸をL-アミノアシラーゼによって加水分解し、L-アミノ酸を生産する光学分割法も知られており、発酵法では製造が困難なL-アミノ酸の工業的生産に古くから利用されている。
L-アミノアシラーゼは動物、植物、微生物に広く分布しており、今日までに様々な生物に由来するL-アミノアシラーゼが精製され、酵素化学的性質が明らかにされている。また、生体内では多くのタンパク質のN-末端アミノ酸はN-アセチル化されていると考えられている。L-アミノアシラーゼはタンパク質の分解によって生じたN-アセチル-アミノ酸をアミノ酸に再生する機能をもつと考えられている。また、L-アミノアシラーゼの中でもN-アシル-L-グルタミン酸に作用するアシラーゼはアルギニンの生合成に関与していると考えられている(Fruh,H.,Leisinger,T.:J.Gen.,125,pp1(1981))。
【0004】
一方、D-アミノ酸は非タンパク性アミノ酸であるため長い間興味の対象外であった。天然では、D-アミノ酸の存在は小さな環状ペプチドまたは細菌細胞壁のペプチドグリカン、ペプチド系抗生物質に限られていた。しかしながら、神経ペプチドの構成成分、歯のエナメル質、目の水晶体や脳のタンパク質中に結合型として存在することが明らかにされ、D-アミノ酸の生理的意義の解明、酵素法によるD-アミノ酸の合成法などが研究されている。
DL-アミノ酸の分割は、現在、物理化学的、化学的、あるいは酵素的方法で行われている。これらの方法の中では、酵素的方法が最も簡便である。酵素的方法の一つとして、L-アミノアシラーゼを固定化したバイオリアクターを用いて、N-アセチル-DL-メチオニンから、L-メチオニンを連続生産する方法が工業化されている。また、D-アミノ酸を生産する方法の一つにヒダントイナーゼを用いる方法がある。この方法はアルデヒド類似物から安価に合成されるD,L-5位置換ヒダントインを出発物質として、D-特異的なヒダントイナーゼによるD-カルバミル誘導体化、それに続くD-アミノ酸カルバミラーゼによる2段階の酵素的方法で行われている。
【0005】
あるいは、この方法とは別にD-アミノアシラーゼを用いて、このN-アセチル-DL-アミノ酸を加水分解し、D-アミノ酸を生産する方法も知られている(Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,44,pplO89(1980)、Tsai,Y.C.,Lin,C.S.,Tseng,T.H.,Lee,H.and Wang,Y.J.Enzyme Microb.Technol.,14,pp384(1992))。
ところでD-トリプトファンは、医薬品原料などとして重要なD-アミノ酸の一つである。D-トリプトファンは、N-アセチル-DL-トリプトファンの脱アセチル化によって得ることができる。しかしこの反応を立体特異的に効率良く触媒することができるD-アミノアシラーゼは知られていない。
【0006】
D-アミノアシラーゼは、1952年にkamedaらが土壌から分離したシュードモナス(Pseudomonas)sp.KT83に存在することが初めて報告された(Kameda,Y.,Toyoura,H.,Kimura,Y.and Yasuda,Y.:Nature,170, pp888 (1952))。この酵素はD-型のフェニルアラニンやチロシン、アラニンのN-ベンゾイル誘導体を加水分解した。その後も、以下の微生物に由来するD-アミノアシラーゼが報告されている。
シュードモナス(Pseudomonas)属
Kubo,K.,Ishikura,T.and Fukagawa,Y.: J.Antibiot. ,43, pp550 (1980) 、
Kubo,K.,Ishikura,T.and Fukagawa,Y.:J.Antibiot.,43,pp556(1980)、
Kameda,Y.,Hase,T. , Kanatomo,S.and Kita,Y. : Chem.Pharm.Bull.,26,pp2698(1978)、
Kubo,K.,Ishikura,T.and Fukagawa,Y. : J.Antibiot., 43, pp543 (1980))、
ストレプトマイセス(Streptomyces)属
Sugie,M.and Suzuki,H. : Argric.Biol.Chem. ,42 , ppl07 (1978)、
Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,44,pplO89(1980))、
アルカリジェネス(Alcaligenes)属
Tsai,Y.C.,Tseng,C.P.,Hsiao,K.M.and Chen,L.Y., Appl.Environ.Microbiol. ,54, pp984(1988)、
Yang,Y.B., Hsiao,K.M.,Li,H.,Yano,Y.,Tsugita,A.end Tsai,Y.C.:Biosci.Biotech. Biochem.,56, ppl392(1992)、
Yang,Y.B., Lin,C.S.,Tseng,C.P.,Wang,Y.J.and Tsai,Y.C. : Appl.Environ.Microbiol. ,57, pp2767(1991)、
Tsai,Y.C., Lin,C.S., Tseng,T.H.,Lee,H.and Wang,Microb.Technol.,14,pp384(1992)、
Moriguchi,M.and Ideta,K.: Appl.Environ.Microbiol. , 54,pp2767(1988)、
Sakai,K.,Imamura,K.,Sonoda,Y.,Kido,H.and Moriguchi,M.: FEBS,289,pp44(1991)、
Sakai,K.,Obata,T.,Ideta,K.and Moriguchi,M.:J.Ferment.Bioeng.,71,pp79(1991)、
Sakai,K., Oshima,K.and Moriguchi,M. : Appl.Environ.Microbiol. 57,pp2540(1991)、
Moriguchi,M.,Sakai,K.,Katsuno,Y. , Maki,T.and Wakayama,M. Biosci.Biotech.Biochem.,57, ppll45(1993))、
Wakayama,M. ,Ashika,T. ,Miyamoto,Y. , Yoshikawa,T. ,Sonoda,Y. , Sakai,K.end Moriguchi,M. : J.Biochem.118 pp204 (1995))、
Moriguchi,M. , Sakai,K. , Miyamoto,Y.and Wakayama,M. : Biosci.Biotech.Biochem. ,57, ppl149(1993))
【0007】
また、TsaiらやMoriguchiらは、アルカリジェネス(Alcaligenes)属とシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌由来のD-アミノアシラーゼの性質を明らかにし、さらに酵素タンパクのアミノ酸配列や遺伝子の配列も明らかにしている。Moriguchiらは、誘導物質をかえることによって、アルカリジェネス(Alcaligenes)属とシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌に由来する三種のD-アミノアシラーゼ類を見いだしている(Wakayama,M.,Katsuno,Y.,Hayashi,S.,Miyamoto,Y.,Sakai,K.and Moriguchi,M. : Biosci.Biotech.Biochem. , 59,pp2115(1995))。
【0008】
さらに、Moriguchiらはアルカリジェネス(Alcaligenes)属のこれらのD-アミノアシラーゼ類の遺伝子配列を決定し、バシルス・ステレオサーモフィラス(Bacillus stereothermophilus)や人、ブタに由来するL-アミノアシラーゼと比較している。その結果、これらのD-アミノアシラーゼ類はL-アミノアシラーゼとは類似性が低いことを報告している(Wakayama,M.,Katsuno,Y.,Hayashi,S.,Miyamoto,Y.,Sakai,K.and Moriguchi,M.:Biosci.Biotech.Biochem.,59,pp2115(1995))。
【0009】
一方、放線菌では、Sugieら(Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,42,pplO7(1978)、Sugie,M.and Suzuki,H.:Argric.Biol.Chem.,44,pplO89(1980))がストレプトマイセス(Streptomyces)属にD-アミノアシラーゼを見いだし報告しているが、酵素は未精製でありその性質は解明されていない。
【0010】
これら公知のD-アミノアシラーゼは、いずれもN-アセチル-D-トリプトファンに対する活性が低く、D-トリプトファンの合成に用いることはできない。以上のような背景から、N-アセチル-DL-トリプトファンを基質としてD-トリプトファンを立体特異的に生成することができるD-アミノアシラーゼと、それをコードする遺伝子の単離が望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、N-アセチル-DL-トリプトファンを基質としてD-トリプトファンを立体特異的に生成することができるD-アミノアシラーゼと、それをコードする遺伝子の提供を課題とする。更に本発明は、これらのD-アミノアシラーゼやその遺伝子の用途の提供を課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、さまざまな生物種のD-アミノアシラーゼについて、その単離と基質特異性の確認を繰り返した。その結果、ヒポミセス(Hypomyces)属に属するある種のかびが、N-アセチル-D-アミノ酸からD-アミノ酸を生産する能力、即ち、D-アミノアシラーゼ活性を有することを見出した。次いで、本発明者らは、硫安塩析や種々のクロマトグラフィーを行うことにより、D-アミノアシラーゼ活性が検出されたかびから、D-アミノアシラーゼを分離し、精製することに成功した。また本発明者らは、精製したD-アミノアシラーゼにつき、その基質特異性や温度安定性などの種々の理化学的性質を明らかにし、かび由来のD-アミノアシラーゼを適当な条件下でN-アセチル-D-アミノ酸に作用させることにより、効率的にD-アミノ酸を製造することが可能であることを見出した。特に本発明者らが見出したD-アミノアシラーゼには、N-アセチル-D-トリプトファンに対する高い酵素活性が認められ、産業上の有用性に優れる酵素であることが確認された。
【0013】
更に本発明者らは、このD-アミノアシラーゼと、それをコードする遺伝子を単離し、その構造を明らかにすることによって本発明を完成した。これまでに構造を明らかにされたD-アミノアシラーゼは、N-アセチル-D-トリプトファンに対する活性が低く、D-トリプトファンの合成に用いることができない。すなわち本発明は、以下のポリヌクレオチド、それによってコードされるタンパク質、並びにこのタンパク質によるD−アミノ酸の合成方法に関する。
【0014】
〔1〕 下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド。
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔2〕 下記(c)または(d)に記載のポリヌクレオチド。
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、下記i)およびii)に記載の理化学的性質を有するD−アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、下記i)およびii)に記載の理化学的性質を有するD−アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
i)作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
ii)基質特異性:N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニン、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-ロイシン、N-アセチル-D-メチオニンに作用し、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-メチオニンに作用しない。
〔3〕〔1〕に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
〔4〕〔2〕に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
〔5〕〔1〕に記載のいずれかのポリヌクレオチドが挿入されたベクター。
〔6〕〔2〕に記載のいずれかのポリヌクレオチドが挿入されたベクター。
〔7〕〔1〕若しくは〔2〕に記載のいずれかのポリヌクレオチド、および/または〔5〕若しくは〔6〕に記載のベクターを発現可能に保持する形質転換体。
〔8〕形質転換体が大腸菌由来である、〔7〕に記載の形質転換体。
〔9〕〔7〕に記載の形質転換体を培養し、発現産物を回収する工程を含む、〔3〕、または〔4〕に記載のタンパク質を製造する方法。
〔10〕形質転換体が大腸菌由来である、〔9〕に記載の方法。
〔11〕配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド、またはその相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するポリヌクレオチド。
〔12〕〔11〕に記載のポリヌクレオチドを含む〔1〕または〔2〕に記載のポリヌクレオチド合成用プライマー。
〔13〕〔11〕に記載のポリヌクレオチドを含む〔1〕または〔2〕に記載のポリヌクレオチド検出用プローブ。
〔14〕〔3〕若しくは〔4〕に記載のタンパク質、および/または〔7〕若しくは〔8〕に記載の形質転換体を、下記式(I)
【化2】
(式中、R1、R2は、同一または異なっていてもよい、水素原子または置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。ただし、R2は水素原子ではない。また、XはH、NH4、金属原子)で表されるN-アシル-DL-アミノ酸、またはその塩に作用させることを特徴とする、D-アミノ酸の製造方法。
〔15〕式(I)においてR1、R2が、同一または異なっていてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリル基、もしくはアラルキル基またはそれらの誘導体である、〔14〕に記載のD-アミノ酸の製造方法。
〔16〕R2がメチル基、クロロメチル基、フェニル基またはアミノメチル基であり、R1がインドリル基(N-アシル-DL-トリプトファン)、ベンジル基(N-アシル-DL-フェニルアラニン)、チオメチルエチル基(N-アシル-DL-メチオニン)、イソプロピル基(N-アシル-DL-バリン)、または2-メチル-プロピル基(N-アシル-DL-ロイシン)である、〔15〕に記載のD-アミノ酸の製造方法。
【0015】
なお、本発明において、「D-アミノアシラーゼ」とは、N-アシル-D-アミノ酸に作用して、有機酸およびD-アミノ酸の生成を触媒する酵素をさす。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は、D-アミノアシラーゼをコードするポリヌクレオチドおよびそのホモログに関する。本発明のD-アミノアシラーゼをコードするポリヌクレオチドは、たとえば配列番号:1に示す塩基配列を含む。配列番号:1に示す塩基配列は、配列番号:2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしており、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、本発明によるD-アミノアシラーゼの好ましい態様を構成する。ところでアミノ酸をコードするコドンは単一ではなく、縮重によって複数のコドンが対応することは周知の事項である。したがって、配列番号:2に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列には、配列番号:1に示す塩基配列のみならず、異なるコドンに基づくあらゆる塩基配列が含まれる。
【0017】
本発明のD-アミノアシラーゼをコードするポリヌクレオチドのホモログとは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列、あるいは配列番号:2に記載のアミノ酸配列に1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、N-アシル-D-アミノ酸に作用し、D-アミノ酸を生じる酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む。当業者であれば、配列番号:1記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487(1982) , Methods in Enzymol.100,pp.448(1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200(1991)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりポリヌクレオチドのホモログを得ることが可能である。あるいは、配列番号:1の塩基配列がHypomyces mycophilus IFO6785株に由来するものであるのに対して、この他の種から本発明の開示に基づいて得ることができる機能的に同等な酵素活性を持つタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本発明におけるホモログを構成する。これらのホモログは、天然に存在するホモログと言うことができる。
本発明のポリヌクレオチドは、DNA、あるいはRNAであることができ、その構造は1本鎖であっても良いし相補鎖との2本鎖を構成したものであることもできる。本発明のポリヌクレオチドの長さは制限されない。更に本発明のポリヌクレオチドは、天然の、あるいは人工的なヌクレオチド誘導体で構成されたものであっても良い。また各種の標識やタグによって修飾されたものであることもできる。加えて、本発明のポリヌクレオチドには、ゲノムやcDNAに由来するもの、また人工的に合成されたポリヌクレオチド等が含まれる。
【0018】
本発明のポリヌクレオチドのホモログは、配列番号:1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズでき、かつ、N-アシル-D-アミノ酸に作用し、D-アミノ酸を生じる酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドも含む。ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号:1に記載中の任意の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、たとえば40、60または100個の連続した配列を一つ、または複数選択したDNAをプローブDNAとし、たとえば ECL direct nucleic acid labeling and detection system (Amersham Pharmaica Biotech社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(wash:42℃、0.5x SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするDNAを指す。
【0019】
さらに、本発明のポリヌクレオチドのホモログは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%または90%、より好ましくは95%以上のホモロジーを有するタンパク質をコードするDNAを含む。タンパク質のホモロジー検索は、たとえば DNA Databank of JAPAN(DDBJ)を対象に、FASTA programや BLAST programなどを用いて行うことができる。
【0020】
本発明は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有し、かつ、N-アシル-D-アミノ酸に作用し、D-アミノ酸を生じる酵素活性を有するD-アミノアシラーゼ、及びそのホモログを含む。配列番号:2に示すアミノ酸配列を含むタンパク質は、本発明によるD-アミノアシラーゼの好ましい態様を構成する。
【0021】
本発明のD-アミノアシラーゼのホモログとは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を含む。当業者であれば、配列番号:1記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487(1982) , Methods in Enzymol.100,pp.448(1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200(1991) )などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することによりD-アミノアシラーゼのホモログをコードするポリヌクレオチドを得ることができる。そのD-アミノアシラーゼのホモログをコードするポリヌクレオチドを宿主に導入して発現させることにより、配列番号:2に記載のD-アミノアシラーゼのホモログを得ることが可能である。
【0022】
さらに、本発明のD-アミノアシラーゼのホモログとは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%または90%、より好ましくは95%以上のホモロジーを有するタンパク質をいう。タンパク質のホモロジー検索は、たとえばDNA Databank of JAPAN(DDBJ)を対象に、FASTA programやBLAST programなどを用いて行うことができる。
【0023】
本発明のD-アミノアシラーゼをコードするポリヌクレオチドは、たとえば、以下のような方法によって単離することができる。すなわち、D-アミノアシラーゼ産生能を有するかびのゲノムライブラリーやcDNAライブラリーを、配列番号:1に示す塩基配列から選択された塩基配列を含むDNAをプローブとしてスクリーニングすることにより、本発明のポリヌクレオチドを単離することができる。配列番号:1に示す塩基配列がHypomyces mycophilusIFO6785株に由来するものなので、この菌株から調製したライブラリーを用いて本発明のポリヌクレオチドを単離することができる。また近縁のかびや、あるいは他種のかびに由来するライブラリーを利用することによって、本発明におけるホモログを単離することもできる。
【0024】
かびのゲノムライブラリーは、公知の方法によって得ることができる。すなわち、まずかびの培養物を集めて、これを物理的に、あるいは酵素的に破壊する。具体的には、たとえば菌体の凍結等により細胞壁を破壊することができる。更に核分画を集めて、フェノール/クロロホルム等で核酸を抽出し、制限酵素等でランダムに切断する。ランダムに切断されたゲノムの断片を、適当なクローニングベクターに挿入すればゲノムライブラリーを得ることができる。
【0025】
一方cDNAライブラリーは、以下のようにして得ることができる。たとえば凍結菌体から、QuickPrep mRNA Purification Kit(Amersham Pharmacia Biotech製)を用いて、プロトコルに従い、mRNAを抽出し、精製する。得られたmRNAを鋳型として、Gubler and Hoffmanらの方法(Gene 25,263-269(1983))に基づいて、cDNAライブラリーを合成する。すなわちOligo(dT)プライマーにより、逆転写酵素を用いてcDNAが合成される。これを適当なプラスミドに挿入することにより、cDNAライブラリーとすることができる。
【0026】
これらのライブラリーに対して、好ましくは先に述べたようなストリンジェントな条件下でプローブをハイブリダイズさせる。ポジティブクローンを集めてその塩基配列を確認し、本発明によるポリヌクレオチドであることが確認される。単離されたポリヌクレオチドがタンパク質翻訳領域の全長を含まない場合には、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics 120, 621-623(1988))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33,HBJ出版局)などにより本発明のDNAを得ることも可能である。
【0027】
更に、配列番号:1または配列番号:25に示す塩基配列に基づいて設定されたプライマーを用い、PCR法を利用して本発明のポリヌクレオチドを得ることもできる。すなわち、先に述べたゲノムライブラリーやcDNAライブラリーを鋳型として、PCR法を行い、目的とする長さの断片を回収する。これを適当なクローニングベクターに挿入してクローニングすることにより、本発明のポリヌクレオチドを単離することができる。プライマーとしてディジェネレーティブ・プライマーを用いることによって、配列番号:1のみならず、この塩基配列と相同性の高いホモログを合成することもできる。与えられた塩基配列に基づいて、その配列を増幅することができるプライマーやホモログを増幅しうるディジェネレーティブ・プライマーを設計することは、当業者が日常的に行っていることである。なお本発明のポリヌクレオチドは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。
【0028】
このようにして単離された、本発明によるD-アミノアシラーゼをコードするポリヌクレオチドを公知の発現ベクターに挿入することにより、D-アミノアシラーゼ発現ベクターが提供される。また、この発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養することにより、本発明のD-アミノアシラーゼを組み換え体から得ることができる。
本発明においてD-アミノアシラーゼを発現させるために、形質転換の対象となる微生物は、D-アミノアシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターにより形質転換され、D-アミノアシラーゼ活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。利用可能な微生物としては、たとえば以下のような微生物を示すことができる。
【0029】
エシェリヒア(Escherichia)属
バチルス(Bacillus)属
シュードモナス(Pseudomonas)属
セラチア(Serratia)属
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属
ストレプトコッカス(Streptococcus)属
ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
ロドコッカス(Rhodococcus)属
ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
サッカロマイセス(Saccharomyces)属
クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
ヤロウイア(Yarrowia)属
トリコスポロン(Trichosporon)属
ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
ハンゼヌラ(Hansenula)属
ピキア(Pichia)属
キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
ノイロスポラ(Neurospora)属
アスペルギルス(Aspergillus)属
セファロスポリウム(Cephalosporium)属
トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
【0030】
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレキュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laboratories)。微生物中などにおいて、本発明のD-アミノアシラーゼ遺伝子を発現させるためには、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中にこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを本発明のDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはターミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを用いる必要がある。これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネータ−などに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng. 43, 75-102(1990)、Yeast 8, 423-488(1992)、などに詳細に記述されている。
【0031】
例えばエシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc(lac、trpの融合)、λファージPL、PRなどに由来するプロモーターなどが利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを用いることができる。
【0032】
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどが利用可能であり、染色体にインテグレートすることもできる。また、プロモーター、ターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ)、npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミラーゼ)などが利用できる。
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター、ターミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子などが利用できる。
【0033】
ブレビバクテリウム属特に、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281(1985))などのプラスミドベクターが利用可能である。プロモーター、ターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175(1984)などのプラスミドベクターが利用可能である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett. 26, 239(1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94(1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
【0034】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol. 137, 614(1979))などが利用可能であり、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である(J. Gen. Microbiol. 138,1003(1992))。
【0035】
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories(1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486 (Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene 103,97-99(1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150(1995) )が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53(1997))
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
【0036】
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390(1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)及びサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol. Cell. Biol. 6, 80(1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J. 6, 729(1987))。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。
【0037】
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zygosaccharomyces rouxii)由来のpSB3(Nucleic Acids Res. 13, 4267(1985))などに由来するプラスミドベクターが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来PHO5プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロウキシ由来GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri.Biol. Chem. 54, 2521(1990))などが利用可能である。
ハンゼヌラ(Hansenula)属においては、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ハンゼヌラ・ポリモルファ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443(1991))。また、メタノールなどで誘導されるAOX(アルコールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーターなどが利用可能である。
【0038】
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子(PARS1、PARS2)などを利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 3376(1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能な AOXなど強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res. 15, 3859(1987))。
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ウチルス(Candida utilis)などにおいて宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem. 51, 51, 1587(1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターは強力なプロモーターが開発されている(特開平08-173170)。
【0039】
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリジー(Aspergillus oryzae)などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology 7, 283-287(1989))。
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnology 7, 596-603(1989))。
【0040】
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を用いた昆虫(Nature 315, 592-594(1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。
【0041】
本発明のD-アミノアシラーゼをコードするポリヌクレオチドで形質転換された宿主微生物は、公知の情報に従って培養され、その培養物から本発明によるD-アミノアシラーゼを回収することができる。培地としては炭素源、窒素源、無機物およびその他の栄養素を適量含有する培地ならば、合成培地または天然培地のいずれでも使用可能であり、液体培地または固体培地を使用することができる。
具体的には、炭素源として、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜、廃糖蜜などの糖類、麦、とうもろこしなどの天然炭水化物、グリセロール、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸、グルコン酸、ピルビン酸、クエン酸などの脂肪酸類、ノルマルパラフィンなどの炭化水素類、グリシン、グルタミン、アスパラギンなどのアミノ酸類等の一般的な炭素源より使用するかびの資化性を考慮して、適宜一種または二種以上選択して使用する。窒素源としては、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、大豆加水分解物、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物などの有機窒素化合物、アンモニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化ナトリウムなどのアンモニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、尿素などの無機窒素化合物より使用かびの資化性を考慮して、適宜一種または二種以上選択して使用する。
さらに、無機塩として微量のマグネシウム、マンガン、カリウム、カルシウム、ナトリウム、銅、亜鉛などのリン酸塩、塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩等より適宜一種または二種以上を選択して使用することができる。また、必要に応じて植物油、界面活性剤、シリコンなどの消泡剤を添加してもよい。
培養は前記培地成分を含有する液体培地中で振とう培養、通気攪拌培養、連続培養、流加培養などの通常の培養方法を用いて行うことができる。
培養条件は、培養の種類、培養方法により適宜選択すればよく、該菌株が増殖し、D-アミノアシラーゼを産生できる条件であれば特に制限はない。通常は、培養開始時のpHを4から10、好ましくは6から8に調節し、15から50℃、好ましくは25から35℃の温度条件下で培養することが望ましい。
【0042】
十分に菌体が増殖した後に、あるいは増殖過程において、形質転換体の外来遺伝子の発現を誘導する条件を与える。たとえばlacプロモーターに対しては、IPTGを与えることにより、その下流に連結されている外来遺伝子の発現が誘導される。あるいは温度感受性プロモーターであれば、発現に必要な温度条件で培養を行う。
先に報告されたD-アミノアシラーゼ産生細菌をD-アミノ酸の合成に利用した場合には、酵素の誘導に必要な成分がしばしば反応生成物の生成を妨げる既に述べた。これに対して、遺伝子組み換え体をD-アミノ酸の合成に用いた場合には、遺伝子の発現に必要な誘導剤や温度制御などは、多くの場合反応生成物の精製を妨げない。
【0043】
培養時間は、十分量のD-アミノアシラーゼ活性を有する菌体が得られれば特に制限はなく、通常は1日から14日、このましくは1日から3日培養する。遺伝子発現に伴ってに生産蓄積された本発明のD-アミノアシラーゼは、次のような方法で採取、分取することができる。
【0044】
D-アミノアシラーゼが菌体内に蓄積される場合には、培養終了後、菌体をろ過、遠心分離等の方法で集め、緩衝液、生理食塩水等で菌体を洗浄後、例えば、凍結融解処理、超音波処理、加圧処理、浸透圧差処理、磨砕処理などの物理手段、もしくはリゾチームなどの細胞壁溶解酵素処理のような生化学的処理もしくは界面活性剤との接触処理などの化学的処理を単独または組み合わせて行うことにより菌体を破砕し、D-アミノアシラーゼを抽出することができる。こうして得られた粗D-アミノアシラーゼは、塩析、有機溶媒などによる分別沈殿、塩析クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、色素クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーなどの各種クロマトグラフィーをオープンカラム、中圧クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって行う分離および等電点電気泳動、native-電気泳動などの電気泳動法による分離等の手段を単独もしくは組み合わせて用いることにより精製することができる。
【0045】
具体的には、例えば、ろ過や遠心分離で集めた菌体を凍結、粉砕処理後緩衝液に懸濁し、Dyno Millを用いて磨砕処理し、D-アミノアシラーゼ抽出液を得て、その後、硫安を用いた塩析処理、DEAE-Sepharose FF イオン交換クロマトグラフィー、Phenyl-Sepharose FF 疎水クロマトグラフィー、Superdex200 ゲルろ過クロマトグラフィー、Mono Q イオン交換クロマトグラフィーを行い、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動的に単一のバンドに精製することができる。
【0046】
このようにして精製された配列番号:2に示すアミノ酸配列からなる本発明のD-アミノアシラーゼは、下記の(a)から(f)の理化学的性質を有する。
(a)作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる。
(b)分子量:SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が約64000Daであり、Superdex200 Hi-Load 6/16(Amersham Pharmacia Biotech社製)ゲルろ過クロマトグラフィーによる分子量が約56000Daを示す。
(c)基質特異性:N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニン、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-ロイシン、N-アセチル-D-メチオニンに作用し、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-メチオニンに作用しない。
(d)温度安定性:pH9.5で30分間熱処理した場合、45℃では安定であり、60℃以上では失活する。
(e)至適温度:pH7.5で反応させる場合、温度約45℃において作用が至適である。
(f)安定化剤:還元剤によって、その活性が安定に保持され、さらにICH3CONH2で活性化される。
【0047】
本発明によるD-アミノアシラーゼの基質特異性は、次のようにして確認することができる。たとえば、1μlの酵素液と20mMの基質(各種N-アセチル-D-アミノ酸)を含む50mM Tris-Cl(pH 7.5)緩衝液(全量1.0ml)中で、30℃、20分間で反応させる。この反応によって生成するアミノ酸の量を測定することにより、各基質に対する酵素活性を比較することができる。アミノ酸は、TNBS法やHPLC法によって測定される。酵素活性の比較のためには、たとえばD-トリプトファンをスタンダードとして定量し、30℃において1分間に1μmolのD-トリプトファン を生成する酵素量を1単位(unitもしくはU)として、酵素間、あるいは基質間の反応性を比較することができる。
このような解析結果によれば、配列番号:2に示すアミノ酸配列からなる本発明のD-アミノアシラーゼは、特に次の基質に対して特に良く作用することが確認された。
N-アセチル-D-フェニルアラニン
N-クロロアセチル-D-フェニルアラニン
また以下の基質に対しても高い活性が確認された。
N-アセチル-D-トリプトファン
N-アセチル-D-メチオニン
N-アセチル-D-ロイシン
更に、次の基質に対しても活性が見られた。
N-アセチル-D-バリン
一方、以下の化合物に対しては実質的に作用しないことが確認された。本発明において実質的に作用しないとは、上記反応条件で検出可能なL-アミノ酸が生成されないことを意味する。
N-アセチル-L-フェニルアラニン
N-アセチル-L-トリプトファン
N-アセチル-L-メチオニン
N-アセチル-L-バリン
N-アセチル-L-ロイシン
【0048】
本発明のD-アミノアシラーゼは、種々のN-アシル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる性質を有するため、本発明のD-アミノアシラーゼを用いてD-アミノ酸を工業的に有利に製造することが可能である。例えば、本発明のD-アミノアシラーゼをD体とL体の混合物であるN-アシル-DL-アミノ酸に作用させて、D-アミノ酸を特異的に製造することができる。
【0049】
適用可能なN-アシル-DL-アミノ酸としては特に制限されず、広い範囲の化合物から選択できる。代表的なN-アシル-DL-アミノ酸は、式(1)
【0050】
【化3】
(式中、R1、R2は、同一または異なる、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリル基、またはアラルキル基を示し、これらの基はさらに置換基を有していてもよい)で表すことができる。好ましいR2にはメチル基、クロロメチル基、フェニル基、アミノメチル基が挙げられ、また好ましいR1にはインドリル基(N-アシル-DL-トリプトファン)、ベンジル基(N-アシル-DL-フェニルアラニン)、チオメチルエチル基(N-アシル-DL-メチオニン)、イソプロピル基(N-アシル-DL-バリン)、2-メチル-プロピル基(N-アシル-DL-ロイシン)が挙げられる。
さらに、好ましいN-アシル-DL-アミノ酸としてはN-アセチル-DL-アミノ酸が挙げられ、例えば、N-アセチル-DL-メチオニン、N-アセチル-DL-バリン、N-アセチル-DL-トリプトファン、N-アセチル-DL-アスパラギン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-アラニン、N-アセチル-DL-ロイシンが例示される。
【0051】
本発明においてD-アミノ酸の製造に用いられるD-アミノアシラーゼとしては、精製酵素の他、部分精製酵素も含まれる。また、本発明においては、これら酵素タンパク質を用いるだけでなく、D-アミノアシラーゼ産生能を有する形質転換体自体を用いることも可能である。すなわち、D-アミノアシラーゼ産生能を有する形質転換体を直接N-アセチル-DL-アミノ酸に作用させて、D-アミノ酸を製造することも可能である。
【0052】
D-アミノアシラーゼ、またはD-アミノアシラーゼ産生能を有する形質転換体をN-アシル-D-アミノ酸に作用させる際には、D-アミノアシラーゼの活性や安定性、D-アミノアシラーゼ産生能を有するかびの反応性にとって好ましい条件を選択する。本発明によるD-アミノアシラーゼは、Zn2+、Ni2+、あるいはCo2+等の2価金属イオンにより阻害を受ける場合がある。これらの金属イオンによる活性阻害を防ぐために、反応液にEDTAなどのキレート剤を添加することができる。
反応の基質であるN-アセチル-DL-アミノ酸の濃度に特に制限はないが、通常0.1〜30%程度の濃度が用いられる。使用するD-アミノアシラーゼの量は大量に使用すれば反応が速く進む場合が多いが、通常は1U〜1000U/ml程度用いられる。反応温度はD-アミノアシラーゼがその活性を発現できる温度に維持することが好ましく、特に30から50℃に維持することが好ましい。また反応pHも、D-アミノアシラーゼがその活性を発現できるpHに維持することが好ましくpH4〜10で行われる。また、攪拌下、あるいは静置下で行うことができる。
【0053】
一般に酵素や微生物は、固定化することによって安定化される。固定化する方法としては、ポリアクリルアミドゲル法、含硫多糖ゲル法(カラギーナンゲル法)、アルギン酸ゲル法、寒天ゲル法などの公知の方法を用いることができる。固定化した酵素や微生物による反応時間は、D-アミノアシラーゼの量と基質量に左右される。当業者は、経験的にこれらの条件を最も理想的な条件に最適化することができる。通常は10〜100時間の反応により、目的とする反応生成物を効率良く得ることができる。
【0054】
反応液から反応により生じたD-アミノ酸は、例えば、濃縮、等電点沈殿などによる直接結晶法やイオン交換樹脂処理、膜分離などの公知の方法により回収することができる。例えばN-アセチル-DL-トリプトファンを基質としてD-トリプトファンを生成した場合、反応液を強酸性陽イオン交換樹脂に通し、D-トリプトファンを吸着させ、該樹脂を水洗後、0.5Nアンモニア水で溶出させることによって、反応液からD-トリプトファンを採取する。溶出液を濃縮して得た粗D-トリプトファン結晶粉末を少量の50%熱エタノール水に溶解し、活性炭処理して脱色し、冷却後、精D-トリプトファンの結晶を得ることができる。
また、D-バリンの場合には、反応終了後、遠心分離して除菌などした後に6規定塩酸でpH1とする。次いで、析出したN-アセチル-L-バリンを遠心分離で除去し、上清を活性炭処理した後、再びpHを7.0としH+型強酸性陽イオン交換体(アンバーライトIR-120B)に加え、5%アンモニア水溶液で脱着する。さらに、脱着物を80℃で減圧乾燥することで得ることができる。
【0055】
【実施例】
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1](Hypomyces mycophilusIFO6785株からのmRNAの抽出)
ヒポミセス ミコフィラス(Hypomyces mycophilus)IFO 6785株は、50mlのYM培地(0.3%酵母エキス(極東製薬工業株式会社製)、0.3%麦芽エキス(極東製薬工業株式会社製)、0.5%ポリペプトン(日本製薬株式会社製)、2.0%グルコース(和光純薬株式会社製)、pH6.0)を500mL容量のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブで滅菌後、D-アミノアシラーゼ生産培地として使用した。培養は、プレート(YM寒天培地(0.3%酵母エキス、0.3%麦芽エキス、0.5%ポリペプトン、2.0%グルコース(和光純薬株式会社製)、1.5%寒天(和光純薬株式会社製)、pH6.0)に平面培養した菌体から、滅菌サージカルナイフで5mL画程度に切り出したものを植菌し、回転振とう培養器で、25℃、145rpm.、96時間培養した。
培養終了後、すぐにNo.5Aろ紙(東洋濾紙株式会社製)を用いた吸引ろ過により集菌し、集菌体をポリ袋に移し、液体窒素に浸すことにより、凍結した。この凍結菌体から、QuickPrep mRNA Purification Kit(Amersham Pharmacia Biotech製)を用いて、プロトコルに従い、mRNAの抽出、精製を行なった。
【0056】
[実施例2](cDNAライブラリーの作成)
Gubler and Hoffmanらの方法(Gene 25,263-269(1983))に基づいて、cDNAライブラリーを合成した。3.0μgの mRNA、配列番号:2に記載のOligo(dT)18リンカープライマー(含NotIサイト)、5-methyl dCTP、RAV-2 Reverse Transcriptase(TaKaRa製)及びSuperScript II Reverse Transcriptase(GIBCO BRL製)を用いて、1st strand、2nd strandを合成した。2nd strand合成後、Klenowフラグメントにより末端平滑化処理を行ない、BamHI(BglII)-SmaIアダプター(TaKaRa製)をライゲーションした。制限酵素NotIで処理した後、SUPREC-02(TaKaRa製)を用いて低分子量DNAを除去して、cDNAインサートを調製した。cDNAインサートは、pAP3neo(BglII-NotI切断)ベクターとライゲーションを行なった。得られたプラスミドは、TE bufferに溶解し、使用時まで-20℃で保存した。
【0057】
[実施例3](cDNAライブラリーからの目的遺伝子の5’末端、3’末端領域のスクリーニング
DAACFL35、DAACFL42のアミノ酸配列を元にそれぞれセンスプライマー、アンチセンスプライマーを計4種類合成した。DAACFL35、DAACFL42のアミノ酸配列は、後に述べるようにHypomyces mycophilus IFO 6785株から精製したD-アミノアシラーゼの部分アミノ酸配列として同定された配列である。それぞれの塩基配列を配列番号:3(35F1)、配列番号:4(35F2)、配列番号:5(42R1)、配列番号:6(42R2)に示した。
まず、35F1プライマーを10pmol、42R1プライマーを100pmol、dNTP10pmol、cDNAライブラリー1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、変性(94℃、30秒)、アニール(55℃、60秒)、伸長(72℃、2分)を30サイクル、GeneAmp PCR System 9600(パーキンエルマー製)を用いて 1st PCRを行なった。
続いて、35F2プライマーを100pmol、42R2プライマーを100pmol、dNTP 10pmol、1st PCR反応液 0.1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、同プログラムにて、2nd PCRを行なった。PCR反応液の一部をアガロース電気泳動により解析した結果、特異的と思われるバンドが検出できた。
【0058】
ヒポミセス ミコフィラス(Hypomyces mycophilus)IFO 6785株のD-アミノアシラーゼの精製と部分アミノ酸配列の決定は、以下の操作に基づいて行った。
Hypomyces mycophilus IFO 6785株を、20Lの液体培地(0.3% 酵母エキス(極東製薬工業株式会社製)、0.3% 麦芽エキス(極東製薬工業株式会社製)、1.0% ポリペプトン(和光純薬工業株式会社製)、2.0% Glucose(和光純薬工業株式会社製)、シリコンFS028 0.01%、pH 6.0)を30L容量のジャーファーメンター、25℃、200rpm.、1v.v.m.、無加圧、44時間培養した。
培養終了後、培養液をすぐ氷水で冷却した後、No.5Aろ紙(東洋濾紙株式会社製)を用いた吸引ろ過により集菌し、集菌体を生理食塩水で洗浄した後、再度吸引ろ過により集菌した。集菌体は使用時まで、-90℃まで保存した。
凍結菌体は、100g程度をチャック付きビニル袋で二重にくるみ、アルミバット上で木槌で粉砕した。粉砕菌体は1μM ロイペプチン、1μM ペプスタチンA、1mM PMSF、0.01% 2-MEを含む50mM Tris・Cl(pH 9.0)に加え、菌体懸濁液を調製しDyno mill type KDL(Wiley A. Bachofen, Based, Switzerland)によって、0.2-0.5mm ガラスビーズを用い、連続的に磨砕処理をおこなった。
【0059】
粗酵素液を8000rpm(6000 x g)、4℃で30分間、遠心分離(日立工機製、20PR-52D、RPR-9ローター)することにより未破砕菌体、細胞のデブリを沈降させた。この上清液のタンパク質濃度を測定したところ、総タンパク質量が61500mgであったので、1/10量 のプロタミン硫酸塩を3% プロタミン硫酸塩溶液(菌体破砕時に使用した緩衝液)として、低温攪拌下、滴下し添加し、滴下終了後2時間攪拌した。6000rpm(3000 x g)、4℃で20分間、遠心分離(日立工機製、20PR-52D、RPR-9ローター)することによりミクロゾーム、核酸を沈降させた。
【0060】
上清液は、77%飽和濃度の硫酸アンモニウム、0.1mM PMSF、0.1μM ロイペプチン、0.1μM ペプスタチンA、0.01% 2-MEを含む50mM Tris・Cl(pH 9.0)17Lに対し、一晩攪拌下逆透析を行った。これだけではD-アミノアシラーゼは完全に塩析されないので、低温攪拌下、直接硫酸アンモニウムを過剰量加え、完全に塩析させた。沈殿を、10000rpm(16000 x g)、4℃で20分間、遠心分離(株式会社トミー精工製、RS-20BH、BH-9ローター)することにより回収し、回収沈殿を、少量 の0.1mM PMSF、0.1μM ロイペプチン、0.1μM ペプスタチンA、0.01% 2-MEを含む10mM Tris・Cl(pH 9.0)に懸濁し、懸濁液を同緩衝液 10Lに対し、4時間透析を行い、その後、透析外液を交換し、再度、同緩衝液 10Lに対し、一晩透析を行った。
透析後の酵素は陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製できる。すなわち、あらかじめ0.01% 2-MEを含む10mM Tris・Cl(pH 9.0)で平衡化させたDEAE-Sepahrose FF を詰めたXK50カラム(いずれもAmersham Pharmacia Biotech社 製、φ5.0 x 25cm、500ml)に吸着させた。同カラムの3倍量の緩衝液で洗浄後、同カラムの7倍量の緩衝液を用い、緩衝液中のNaCl濃度を0Mから0.5Mまで直線的 にあげていくことで溶出させた。各フラクションのタンパク質量は280nmの吸光度を測定することで、概算した。
【0061】
本発明のD-アミノアシラーゼは、0.20から0.25MのNaClを含む緩衝液によって溶出された。アシラーゼ活性を有する画分は、UF膜(Amicon製、YM-10 φ76mm)を用いて5倍濃縮後、70%飽和濃度になるように硫酸アンモニウムを加え、一晩 沈殿を形成させた後、12000rpm(18000 x g)、4℃で10分間、遠心分離(日立工機製、HIMAC CR26H、RR18Aローター)することにより沈殿を回収した。回収沈殿は、10mlの0.01% 2-ME、0.3M Na2SO4を含む200mM KPB(pH 8.5)に懸濁し、同緩衝液2Lに対し一晩透析を行い、その後透析外液を交換し、再度、同緩衝液 2Lに対し、4時間透析を行った。
陰イオン交換クロマトグラフィーで精製された酵素は、さらに疎水クロマトグラフィーによって精製できる。すなわち、あらかじめ0.01% 2-ME、0.3M Na2SO4を含む200mM KPB(pH 8.5)で平衡化させたPhenyl-Sepahrose Hi-Load HP2.6/10カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製、φ2.6 x 10cm、50ml)に吸着させ、カラムの4倍量の緩衝液で洗浄後、同カラムの14倍量の緩衝液を用い、緩衝液中のNa2SO4濃度を0.3Mから0Mまで直線的に下げて溶出した。すなわち、上記の緩衝液をA緩衝液、0.01% 2-MEを含む10mM KPB(pH 8.5)をB緩衝液とし、B緩衝液濃度を0から100%まで直線的にあげていくことで溶出させた。各フラクションのタンパク質量は280nmの吸光度を測定することで、概算した。D-アミノアシラーゼ活性は、先にしめした実施例と同様におこなった。
【0062】
アシラーゼ活性を有する画分は、70%飽和濃度になるように硫酸アンモニウムを加え、2時間ゆるやかに攪拌し、沈殿を形成させた後、12000rpm(18000 x g)、4℃で10分間、遠心分離(日立工機製、HIMAC CR26H、RR18Aローター)することにより沈殿を回収した。回収した沈殿は、およそ3mlの0.01% 2-ME、0.3M NaClを含む10mM Tris・Cl(pH 9.5)に溶解させた。
疎水クロマトグラフィーで精製された酵素は、さらにゲルろ過クロマトグラフィーによって精製できる。すなわち、あらかじめ0.01% 2-ME、0.3M NaClを含む10mM Tris・Cl(pH 9.5)の緩衝液で平衡化させたSuperdex200 Hi-Load 1.6/60カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製、φ1.6 x 60cm、120ml)に供し、240mlの同緩衝液を流速1ml/minで溶出させた。各フラクションのタンパク質量は280nmの吸光度を測定することで、概算した。
【0063】
D-アミノアシラーゼ活性を有する画分は、UF膜(Amicon製、YM-10、φ43mm) を用いて濃縮後、0.01% 2-MEを含む10mM Tris・Cl(pH 9.5)で希釈し、再度濃縮した。同様の操作を2度おこない、サンプルの脱塩をおこなった。
ゲルろ過で精製された酵素は、さらに陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製できる。すなわち、あらかじめ0.01% 2-MEを含む10mM Tris・Cl(pH 9.0)で平衡化させたMono Q HR 5/5カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製、φ0.5 x 5cm、1.0ml)に吸着させた。同カラムの3倍量の緩衝液で洗浄後、同カラムの21倍量の緩衝液を用い、緩衝液中のNaCl濃度を0Mから0.6Mまで直線的にあげていくことで溶出させた。各フラクションのタンパク質量は280nmの吸光度を測定することで、概算した。タンパク質を含む分画をプールして、精製D-アミノアシラーゼとした。
【0064】
1nmolの精製D-アミノアシラーゼを含む酵素溶液を、限外ろ過で濃縮し、50μlまで濃縮後、150μlの8M ureaを含む50mM Tris・Cl(pH 9.0)緩衝液を加えた。酵素溶液は、そのまま37℃、1時間保ったのち、50mM Tris・Cl(pH 9.0)緩衝液 を200μl加え、Lysyl endo peptidase を5pmol量加え、30℃で一晩消化した。消化サンプルは、ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(カラム:TSK gel ODS-120T(φ4.6x250mm)(東ソー製)、溶離液:bufferA 0.1% TFA、バッファーB 0.095% TFAを含む80% CH3CN、検出214nm、流速 1.0ml/min、プログラムドグラジエント溶出)によって、分離溶出させ、回収した。
分取サンプルは、遠心エヴァポレーター(UNISCIENCE製、UNIVAP)により濃縮した後、プロテインシーケンサー(A477、Applied Biosystems社製)によりアミノ酸配列を決定した。決定した5つの部分アミノ酸配列のうちの2つが、DAACFL35(GFILSPGFIDMHAHSDLYLLSHPTH/配列番号:26)、DAACFL42(VLADEYPQAFYAPHAYSRGF/配列番号:27)である。
【0065】
[実施例4](PCR産物のダイレクトシーケンス)
実施例3で得られたDNA断片を、フェノール/クロロホルム抽出後、エタノール沈殿として回収し、アガロース電気泳動を行ない、目的とするバンドの部分を切出し、SUPREC-01(TaKaRa製)により精製した後、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reactioin Kit、ABI377シークエンサー(Applied Biosystems)を用いたダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定した。プライマーには、PCR反応に用いたプライマーを使用した。決定された塩基配列を配列番号:7に示した。
【0066】
[実施例5](cDNAライブラリーからの目的遺伝子の3’末端領域のスクリーニング)
実施例4で得られた配列を元に、プライマーF56(配列番号:8)、F241(配列番号:9)を、またベクタープライマーとして、pAP3R1(配列番号:10)、T3(配列番号:11)を合成し、Nested-PCRによるスクリーニングを試みた。
まず、pAP3R1プライマー、F56プライマーを各10pmol、dNTP 10pmol、cDNAライブラリー 1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、変性(94℃、30秒)、アニール(55℃、30秒)、伸長(72℃、60秒)を30サイクル、Thermal Cycler SP(TaKaRa製)を用いて 1st PCRを行なった。
続いて、T3プライマー、F241プライマーを各 10pmol、dNTP 10pmol、1st PCR反応液 1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、同プログラムにて、2nd PCRを行なった。PCR反応液の一部をアガロース電気泳動により解析した結果、特異的と思われる約 1.3kbpのバンドが検出できた。
実施例4に従って、プライマーウォーキング法によるダイレクトシークエンスにより塩基配列の解析を行なった。解析された塩基配列を配列番号:12に示した。プライマーには F241、F3(配列番号:13)、F4(配列番号:14)を用いた。
【0067】
[実施例6](cDNAライブラリーからの目的遺伝子の 5’末端領域のスクリーニング)
実施例4で得られた配列を元に、プライマー R130(配列番号:15)、R96(配列番号:16)、R47(配列番号:17)を、またベクタープライマーとして、pAP3F2(配列番号:18)、pAP3F1(配列番号:19)を合成し、Nested-PCRによるスクリーニングを試みた。
まず、pAP3F2プライマー、R130プライマーを各 10pmol、dNTP 10pmol、cDNAライブラリー 1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、変性(94℃、30秒)、アニール(55℃、30秒)、伸長(72℃、60秒)を30サイクル、Thermal Cycler SP(TaKaRa製)を用いて 1st PCRを行なった。続いて、pAP3F1プライマー、R96プライマーを各 10pmol、dNTP 10pmol、1st PCR反応液 1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、同プログラムにて、2nd PCRを行なった。さらに、pAP3F1プライマー、R47プライマーを各 10pmol、dNTP 10pmol、2nd PCR反応液 1μL、ExTaq 2U(TaKaRa製)、ExTaq用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、同プログラムにて、3rd PCRを行なった。
PCR反応液の一部をアガロース電気泳動により解析した結果、特異的と思われる約 400bpのバンドが検出できた。
実施例4に従って、ダイレクトシークエンスにより塩基配列の解析を行なった。プライマーは R47を用いた。その結果、増幅したDNAは、目的遺伝子由来であり、翻訳開始コドンを含むことが配列であることがわかった。解析された塩基配列を配列番号:20に示した。
【0068】
[実施例7](cDNAライブラリーからの目的遺伝子の PCRスクリーニング)
目的遺伝子の 5’側および 3’側のPCRスクリーニング(それぞれ実施例5、6)より得られた塩基配列を元に、プライマー Acy5’-1(配列番号:21)、Acy5’-2(配列番号:22)、Acy3’-1(配列番号:23) Acy3’-2(配列番号:24)を合成し、Nested-PCRによるスクリーニングを試みた。
まず、Acy5’-1プライマー、Acy3’-1プライマーを各 10pmol、dNTP 10pmol、cDNAライブラリー 1μL、Pyrobest 2U(TaKaRa製)、Pyrobest用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、変性(94℃、30秒)、アニール(55℃、30秒)、伸長(72℃、90秒)を30サイクル、Thermal Cycler SP(TaKaRa製)を用いて 1st PCRを行なった。続いて、Acy5’-2プライマー、Acy3’-2プライマーを各 10pmol、dNTP 10pmol、1st PCR反応液 1μL、Pyrobest 2U(TaKaRa製)、Pyrobest用緩衝液(TaKaRa製)を含む 50μLの反応液を用い、同プログラムにて、2nd PCRを行なった。
PCR反応液の一部をアガロース電気泳動により解析した結果、特異的と思われるバンドが検出できた。実施例4に従って、増幅断片の精製を行ない、HindIIIを用いて消化後、pUC118 HindIII/BAP(TaKaRa製)と、TaKaRa Ligation Kit ver.II(TaKaRa製)を用いてサブクローニングを行ない、大腸菌JM109株を形質転換した。
形質転換株をアンピシリン(50μg/mL)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド(50μg/mL)、イソプロピルチオ-β-D-ガラクトピラノシド(以下、IPTGと称す)を含むLB培地(1% バクトトリプトン、0.5% バクト-酵母エキス、1% 塩化ナトリウム、以下、LB培地と称す)プレート上で生育させた。
生育の認められた白色コロニーを液体 LB培地上で培養し、プラスミドを調製し、Single Primer Extension法により挿入塩基配列の解析を行なった。解析された塩基配列を配列番号:25に示した。この塩基配列より、目的とするcDNAの5’側配列および3’側配列が認められ、さらにORF検索により、D-アミノアシラーゼの配列を決定した。決定したDNA配列は配列番号:1に、コードするタンパク質の配列は配列番号:2に示した。これらの解析、検索は、GenetyxATSQ、およびGenetyx(ともにソフトウェア開発株式会社製)ソフトを用いて行なった。
【0069】
[実施例8](形質転換株での遺伝子発現)
実施例7で得られた形質転換株をアンピシリン(50μg/mL)を含む液体 LB培地上で終夜 26℃振盪培養し、0.1mM IPTGを加えた後、さらに 4時間、30℃で振盪培養を行なった。培養後に菌体を遠心分離により集菌し、生理食塩水で培地成分を洗浄し、1% N-アセチル-D-トリプトファン、0.01% 2-メルカプトエタノールを含む、50mMトリス 塩酸緩衝液(pH 7.5)に懸濁し、全量 1mLの反応液として 30℃、6hr振盪反応を行なった。なお、コントロールとしては大腸菌 JM109株を使用した。
反応終了後、遠心分離により除菌を行ない、反応上清に対し、生成したアミノ酸の量を、ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(カラム:Wakosil II 5C18(φ4.6x250mm)(和光純薬株式会社製)、溶離液:CH3CN / 50mM KH2PO4・H3PO4(pH2.5)=2:8、検出 A280nm、流速 1.0mL/min、カラム温度 40℃)によって、定量した。保持時間は、D-トリプトファンが 3.3分、N-アセチル-D-トリプトファンが 8.5分であった。
形質転換株では反応液上清中に 0.15g/Lの D-トリプトファンが認められたが、コントロールでは D-トリプトファンの蓄積は認められなかった。
【0070】
【発明の効果】
本発明により、糸状菌であるHypomyces mycophilusに由来するD-アミノアシラーゼと、それをコードする遺伝子の構造が明らかにされた。決定された遺伝子の塩基配列を用いて、本発明によるD-アミノアシラーゼを遺伝子組み換え体として大量に、そして安価に製造することができる。
本発明のD-アミノアシラーゼは、N-アセチル-D-トリプトファンに対する活性が高く、D-トリプトファンを効率良く生成することができる。N-アセチル-D-トリプトファンに対する高い活性を持つD-アミノアシラーゼはこれまでに知られていない。本発明のD-アミノアシラーゼによって合成することができるD-トリプトファンは、医薬品原料などとして有用な化合物である。
【0071】
【配列表】
Claims (16)
- 下記(a)または(b)に記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。 - 下記(c)または(d)に記載のポリヌクレオチド。
(c)配列番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、下記i)およびii)に記載の理化学的性質を有するD−アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、下記i)およびii)に記載の理化学的性質を有するD−アミノアシラーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
i)作用:N-アセチル-D-アミノ酸に作用して、D-アミノ酸を生じる;
ii)基質特異性:N-アセチル-D-トリプトファン、N-アセチル-D-フェニルアラニン、N-アセチル-D-バリン、N-アセチル-D-ロイシン、N-アセチル-D-メチオニンに作用し、N-アセチル-L-トリプトファン、N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-L-バリン、N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-L-メチオニンに作用しない。 - 請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
- 請求項2に記載のいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質。
- 請求項1に記載のいずれかのポリヌクレオチドが挿入されたベクター。
- 請求項2に記載のいずれかのポリヌクレオチドが挿入されたベクター。
- 請求項1若しくは請求項2に記載のいずれかのポリヌクレオチド、および/または請求項5若しくは請求項6に記載のベクターを発現可能に保持する形質転換体。
- 形質転換体が大腸菌由来である、請求項7に記載の形質転換体。
- 請求項7に記載の形質転換体を培養し、発現産物を回収する工程を含む、請求項3、または請求項4に記載のタンパク質を製造する方法。
- 形質転換体が大腸菌由来である、請求項9に記載の方法。
- 配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖の連続した少なくとも20ヌクレオチドの鎖長を有するポリヌクレオチド。
- 配列番号:1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖とハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド合成用プライマー。
- 請求項11に記載のポリヌクレオチドを含む請求項1または請求項2に記載のポリヌクレオチド検出用プローブ。
- 式(I)においてR1、R2が、同一または異なっていてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリル基、もしくはアラルキル基またはそれらの誘導体である、請求項14に記載のD-アミノ酸の製造方法。
- R2がメチル基、クロロメチル基、フェニル基またはアミノメチル基であり、R1がインドリル基(N-アシル-DL-トリプトファン)、ベンジル基(N-アシル-DL-フェニルアラニン)、チオメチルエチル基(N-アシル-DL-メチオニン)、イソプロピル基(N-アシル-DL-バリン)、または2-メチル-プロピル基(N-アシル-DL-ロイシン)である、請求項15に記載のD-アミノ酸の製造方法。
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