JP3370356B2 - D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の製造法 - Google Patents
D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の製造法Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】ラセミ−エリスロ−β−ヒドロキ
シアミノ酸を、L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸
を特異的にグリシンと対応するアルデヒド誘導体に分解
する能力を有する酵素、同酵素を産生する微生物あるい
はその菌体処理物でもって処理することにより、医薬
や、医薬・農薬等の中間体として有用なことが知られて
いるD−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を製造する
方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、D−エリスロ−β−ヒドロキシア
ミノ酸の合成は、以下の方法により行われていた。即
ち、必要に応じて保護基を導入したアルデヒド誘導体と
グリシンを強アルカリ存在下で縮合させることによりラ
セミ−スレオ/エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸誘導
体を得た後、スレオ/エリスロ体の相互分離処理を行
う。得られたラセミ−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ
酸誘導体の保護基を除去し、アミノ基部分に置換基を導
入した後、キニン、ブルシン等の光学分割剤を用いて光
学分割を行い、最後にアミノ基部分の置換基を除去する
というものである。 【0003】 【発明が解決しようとする問題点】アルデヒド誘導体と
グリシンを縮合してβ−ヒドロキシアミノ酸を合成する
と、反応の立体選択性が低いために、スレオ/エリス
ロ,D/Lの組合せで4種類の異性体が不可避的に生成
する。D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の合成に
当たっては、これらの異性体を分離するための繁雑な工
程を必要とし、工業的製造法を開発する上で大きな問題
となっていた。特に、従来のD/L体の光学分割法は、
使用する光学分割剤が高価であるだけでなく、工程及び
その制御が複雑で収率も低いという問題があった。さら
に、これらの操作で得られる不要の異性体を再度利用す
るためには、別途ラセミ化したり、分解したりする必要
があり、工程をさらに複雑にする原因となっていた。 【0004】 【問題点を解決するための手段】本発明者らは、D−エ
リスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の合成方法に関し鋭意
検討を行った結果、L−アロスレオニンアルドラーゼ
が、意外にもL−アロスレオニンのみでなく種々のβ−
ヒドロキシアミノ酸のL−エリスロ体に広く作用し、グ
リシンと対応するアルデヒド化合物に分解することを見
出し、本発明を完成した。これにより、ラセミ−エリス
ロ−β−ヒドロキシアミノ酸からの効率的なD−エリス
ロ−β−ヒドロキシアミノ酸の製造が可能になるのみな
らず、分解物は、原料として再度ラセミ体の合成に利用
できる。さらに、遺伝子操作によってL−アロスレオニ
ンアルドラーゼの生産性を大幅に向上せしめた組換え体
を用いると、目的とするD−エリスロ−β−ヒドロキシ
アミノ酸を分解する酵素が菌体中に含まれる場合でも、
それらの酵素を除去することなく反応に用いることが出
来る。また、このような組換え体を用いると、L−エリ
スロ体の分解に多量の酵素を必要とするような反応性の
低いβ−ヒドロキシアミノ酸に対しても効率よく反応を
行うことが出来るため、広範囲のD−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸の合成が可能である。本発明は、一般
式(I) 【0005】 【化2】 (式中、Rは、置換又は非置換の脂肪族基、脂環式基、
芳香族基又は複素環式基を表す。)で表わされるラセミ
−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸に、L−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応す
るアルデヒドに分解する酵素である、アルカリゲネス
属、シュードモナス属、アリスロバクター属、キサント
モナス属、バチルス属、エシェリヒア属に属する微生
物、あるいは、これらの微生物より得られたL−アロス
レオニンアルドラーゼの合成に関与する遺伝子を担うD
NAとベクターDNAとを結合せしめてなる組換え体D
NAを保有せしめた形質転換体よりなる群より選ばれた
少なくとも1種の微生物が産生するL−アロスレオニン
アルドラーゼ、同酵素を産生する微生物菌体あるいは菌
体処理物を作用させることを特徴とするD−エリスロ−
β−ヒドロキシアミノ酸の製造法に関する。 【0006】本発明で用いられる原料ラセミ−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸は、上記式(I)におけるR
が、置換又は非置換の脂肪族基、脂環式基、芳香族基又
は複素環式基を表す。具体的には、アルキル基、アルケ
ニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化
水素基又は複素環式炭化水素基より選ばれた置換基であ
る化合物であり、置換基に含まれる水素のうち1個又は
複数個が同一又は相異なるアルキル基、アルケニル基、
アルキニル基、アルコキシル基、アルキレン基、脂環式
炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ニト
ロ基、又はハロゲン基で置換されていてもよい。置換基
の炭素数が直鎖脂肪族基の場合は好ましくは20以下、
特に好ましくは10以下であり、その他の置換基の場合
は好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である
化合物を用いると良好な結果を得ることができる。 【0007】本発明においては、D−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸以外の異性体、すなわち、L−エリス
ロ−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応
するアルデヒドに分解することから、こうして得られた
グリシンと対応するアルデヒドはそれを再度合成に使用
できる。本発明においては、上記酵素又はその同等物
は、スレオ体の存在下で反応せしめ、反応後にスレオ/
エリスロ分離を行い、D−エリスロ体を得ることも可能
である。 【0008】本発明においては、前記したように、L−
エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を分解する酵素を用
いることがあげられるが、このような酵素としては、L
−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的に分解す
るものであれば、いずれも使用できる。このような酵素
として特に好ましいものとしては、L−エリスロ−β−
ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応するアル
デヒドに分解する能力を有するものがあげられる。さら
にまた一般式(I)に示すような広範囲のβ−ヒドロキ
シアミノ酸に作用するものがあげられる。このような酵
素として特に好ましいものは、L−アロスレオニンアル
ドラーゼがあげられる。L−アロスレオニンアルドラー
ゼとしては、特公昭63−54359号に記載されたも
のの他、その遺伝子を操作して得られたものなどをあげ
ることができる。これらL−アロスレオニンアルドラー
ゼは、予想外にも種々のβ−ヒドロキシアミノ酸のL−
エリスロ体に特異的に作用しこれをグリシンと対応する
アルデヒドに分解せしめるという優れた特性を有してい
る。 【0009】本発明で用いられるL−アロスレオニンア
ルドラーゼは、L−アロスレオニンアルドラーゼ生産菌
あるいはその変異株などから得ることが出来る。L−ア
ロスレオニンアルドラーゼ生産菌としては、例えば、バ
チルス(Bacillus)DK−39(微工研菌寄6202
号)、アルカリゲネス・ハエカリス(Alcaligenes faeca
lis)IFO12669、シュードモナス(Pseudomonas)
DK−2(微工研菌寄6200号)、アリスロバクター
(Arthrobacter)DK−19(微工研菌寄6201号)、
キサントモナス・オリゼー(Xanthomonas oryzae)IAM
1657などが知られている。これらのL−アロスレオ
ニンアルドラーゼ生産菌から得られたL−アロスレオニ
ンアルドラーゼの合成に関与する遺伝子を担うDNA
を、遺伝子組換えの手法を用いて導入して作成された組
換え体は、より好適に本発明に用いることが出来る。こ
のような組換え体の作成は、特開平3−139283号
記載のD−スレオニンアルドラーゼ高生産株の作成と同
様の方法で行うことが出来る。すなわち、L−アロスレ
オニンアルドラーゼ生産菌から染色体DNAを抽出し、
制限酵素でDNAを部分分解し、精製後、適当なベクタ
ーDNAに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細
胞に移入し、遺伝子ライブラリーを作成する。そこか
ら、L−アロスレオニンアルドラーゼの合成に関与する
遺伝子を保有する株を、培養細胞のL−アロスレオニン
アルドラーゼ活性を調べることにより選択し、その細胞
株から組換えDNAを抽出し、適当な制限酵素でベクタ
ーDNAから目的のDNAを切り出す。得られたDNA
断片の解析を行い、L−アロスレオニンアルドラーゼの
合成に不必要な部分を欠失させ、小型化し、再度適当な
ベクターDNAに組み込み、宿主細胞に導入することに
より、目的の株を得ることが出来る。このような遺伝子
を導入して利用しうる微生物としては、例えばエシェリ
ヒア(Escherichia) 属細菌、バチルス(Bacillus)属細
菌、キサントモナス(Xanthomonas) 属細菌、アセトバク
ター(Acetobacter) 属細菌、シュードモナス(Pseudomon
as) 属細菌、グルコノバクター(Gluconobacter) 属細
菌、アゾトバクター(Azotobacter) 属細菌、リゾビウム
(Rhizobium) 属細菌、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属
細菌、クレブシェラ(Klebsiella)属細菌、サルモネラ(S
almonella)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌などの原
核微生物や酵母などの下等真核生物などを用いることが
できる。 【0010】このような組換え体のうち、特にL−アロ
スレオニンアルドラーゼを高度に生産する能力を有して
いる組換え体の例としては、キサントモナス属細菌に属
するものがあげられる。キサントモナス・オリゼー(Xan
thomonas oryzae)IAM1657の染色体DNAから単
離したL−アロスレオニンアルドラーゼの合成に関与す
る遺伝子を担うDNAとプラスミドpBR328を連結
した組換えプラスミドpLA556を、キサントモナス
・シトリー(Xanthomonas citri) IFO3311に導入
して得られた形質転換体キサントモナス・シトリーIF
O3311(pLA556)は、L−アロスレオニンア
ルドラーゼを高度に生産する能力を有しており特に好適
なものである。 【0011】本発明に用いる微生物は常法に従って培養
することができる。培養に用いられる培地は微生物の生
育に必要な炭素源、窒素源、無機物質等を含む通常の培
地である。ここで用いられる炭素源としては、グルコー
ス、ガラクトース、可溶性デンプンなどがあげられ、窒
素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝
酸アンモニウム、ペプトン、肉エキス、イーストエキ
ス、コーンスティプリカー、大豆粉、綿実カスなどがあ
げられる。また、塩化ナトリウム、カリウム塩、カルシ
ウム塩、アンモニウム塩、燐酸塩などの他、亜鉛、マグ
ネシウム、鉄、マンガンなどの無機物も使用できる。更
に、ビタミン、アミノ酸等の有機微量栄養素を添加する
と望ましい結果が得られる場合が多い。培養は、好気的
条件下でpH4から10、温度20から50℃の任意の
範囲に制御して1〜10日間培養を行えばよい。組換え
体を用いる場合、使用する菌株に応じて、アンピシリ
ン、クロラムフェニコール等の抗生物質を培養液に添加
してもよい。 【0012】酵素反応にあたっては、菌体の培養液、培
養液から分離した菌体、凍結乾燥などによる乾燥菌体、
菌体破砕液、粗酵素抽出液、精製酵素、さらには、上記
の処理物および固定化物、その他何れも使用できるが、
使用する酵素液あるいは菌体に目的とするD−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸を分解するような活性が含ま
れている場合には、効率的な合成を行うために、その活
性を除去してから反応に用いるのが好ましい。これらの
分解活性を除去する方法としては、酵素液のアセトン分
画・カラムクロマト分画などによる方法が好ましいが、
それに限定されることなく、分解活性を選択的に除去出
来る方法であればいずれも用いることが出来る。また、
遺伝子操作によってL−アロスレオニンアルドラーゼの
生産性を大幅に向上せしめた組換え体であれば、これら
の分解活性を除去することなく反応に用いることができ
る。 【0013】酵素反応を実施する方法は、水性媒体中に
て基質であるラセミ−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ
酸を、上に記した微生物の培養液、菌体、菌体処理物、
酵素、あるいはこれらを通常の方法で固定化したものと
接触させれば良い。かかる反応時の水性媒体としては、
例えば、水、緩衝液、含水有機溶媒等が使用できる。反
応における酵素、微生物菌体あるいは菌体処理物等の濃
度は、L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を完全に
分解できるならば特に制限はないが、L−アロスレオニ
ンアルドラーゼ活性(1UはL−アロスレオニンから1
分間に1μmoleのグリシンを生成するのに必要な酵
素量を表わす)が、0.1U/ml以上であることが望
ましい。特に、1U/ml以上であれば反応を速やかに
終了させることが出来る。 【0014】基質であるラセミ−エリスロ−β−ヒドロ
キシアミノ酸の濃度は、反応を著しく阻害しない程度で
あればよく1mMから100mMが好ましく、基質の供
給は、一括、連続、分割の何れの手段でも実施できる。
反応温度は、10から55℃がよく、20から40℃が
より好適である。反応時のpHは5から10、好ましく
は6から8である。ピリドキサール−5’−リン酸を反
応系に10nM〜10mM、好ましくは1μmM〜10
0μMの濃度で添加することにより好ましい結果が得ら
れる。反応形式はバッチ方式、連続方式の何れでもよい
が、かくして、反応は0.5から50時間程度で終了す
る。反応終了後、反応液は遠心分離や限外濾過等により
除菌・除タンパクし、まず有機溶媒抽出等により生成ア
ルデヒドを分離する。抽出には、アルデヒドの溶解性が
高く、D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸及びグリ
シンがほとんど不溶である溶媒であれば使用することが
できるが、エーテルを使用すると良好な結果が得られ
る。 【0015】溶媒相からは減圧濃縮等によりアルデヒド
を回収することが出来る。水相からのD−エリスロ−β
−ヒドロキシアミノ酸とグリシンの単離回収は、通常の
イオン交換樹脂を用いたクロマト分離によって行うこと
が出来る。すなわち、水相を陽イオン交換樹脂を充填し
たカラムに通液、水洗後、希アンモニア水等により溶出
を行う。 【0016】純度が低い場合には、さらに晶析・水再結
晶を行うことにより精製度を高めることが出来る。上記
反応生成物の単離精製法は、一つの代表的な方法を例示
したものであり、本発明においてはそれに限定されるこ
となく各種の分離精製法が適用できる。このような方法
の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール
系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶
媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチル
エチルケトン等のケトン溶媒、ジメチルスルホキシド等
のスルホキシド類溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド
等のアミド溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶
媒、エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン
等のエーテル系溶媒、メチレンクロライド等のハロゲン
化炭化水素溶媒及びそれらの混合溶媒あるいはそれらの
水性溶媒などを用いた溶媒抽出などの分離法、カラムク
ロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、高速液体
クロマトグラフィー、再結晶化法などの方法をあげるこ
とができる。 【0017】本発明の方法によると、 (1)L−アロスレオニンアルドラーゼは、広い範囲の
L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸に作用してこれ
を分解することができるので、様々なラセミ−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸からのD−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸の合成が可能である。 (2)L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸は合成原
料であるグリシンとアルデヒドに分解されるため、それ
らは反応液から回収して再度ラセミ−スレオ/エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸合成にリサイクル使用するこ
とが出来る。 (3)従って、ラセミ化の必要はなく、目的物が高収率
で得られるので、工程が複雑で高価な光学分割剤を用い
る必要がある従来の光学分割法に比べ、大幅に工程を単
純化出来る。 (4)遺伝子組換えによりL−アロスレオニンアルドラ
ーゼの生産性が大幅に向上した菌株を用いれば、目的と
するD−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を分解する
酵素が菌体中に含まれる場合でもそれらの酵素を除去す
ることなく反応に用いることが出来、また、L−エリス
ロ体の分解に多量の酵素を必要とするような反応性の低
いβ−ヒドロキシアミノ酸に対しても効率よく反応を行
うことが出来るため、D−エリスロ−β−ヒドロキシア
ミノ酸類の製造に幅広く利用することができる。 【0018】 【実施例】次に、実施例により本発明の方法を更に詳し
く説明するが、本発明は実施例により限定されるもので
はない。例中%は重量%を示す。 実施例1 ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、塩化ナト
リウム0.5%からなるpH7.5の培地を調製し、5
リットルの培養槽にその3リットルを添加し、120℃
で15分間加熱殺菌した。その培地にバチルスDK−3
9(微工研菌寄6202号)を接種し、pH7.5に保
ちながら30℃で20時間通気及び撹拌をしつつ培養し
た。培養終了後、培養液から菌体を遠心分離で集菌、水
洗後、0.01mMピリドキサ−ル−5’−リン酸を含
むpH7.5の0.2M HEPES(N-2-Hydroxyeth
ylpiperazine-N'-2-ethanesulfonic acid)緩衝液500
mlに懸濁し、この菌体懸濁液を20kHz、3分間の
超音波破砕処理を4回行い、破砕液の懸濁物質を遠心分
離で除去して粗酵素液を調製した。次に、この粗酵素液
を陰イオン交換樹脂DEAE−Cellulofine
A−500(生化学工業(株)製)を充填したカラム
(2.6mmφ×100mm)に通液、上記緩衝液で洗
浄後、塩化ナトリウム直線グラジェントにより溶出・分
画し、L−アロスレオニンアルドラーゼ活性を有する画
分(粗精製酵素液)100mlを得た。得られた粗精製
酵素液のL−アロスレオニンアルドラーゼ活性(1Uは
L−アロスレオニンから1分間に1μmoleのグリシ
ンを生成するのに必要な酵素量を表わす)測定したとこ
ろ、0.26U/mlであった。得られた粗精製酵素液
にD,L−エリスロ−フェニルセリン(D体とL体の等
量混合物)100mgを加え、30℃で10時間反応さ
せた。反応終了後、反応液のフェニルセリン異性体及び
グリシンを、o−フタルアルデヒドとN−アセチル−L
−システィンにより誘導体化し、ODSカラムを用いて
HPLCにより定量した。また、ベンズアルデヒドは、
2,4−ジニトロフェニルヒドラジンと反応させ、OD
Sカラムを用いてHPLCにより定量した。 D−エリスロ−フェニルセリン: 2.70mM(残存
率97.8%) L−エリスロ−フェニルセリン: 0 mM(残存
率0 %) グリシン : 2.76mM ベンズアルデヒド : 2.69mM 反応液に1N塩酸を10ml加えた後、遠心分離で不溶
物を除去した。この遠心上清に200mlのエチルエー
テルを加え、撹拌・静置し、エーテル相を分離、減圧乾
固を行い、27mgのベンズアルデヒドを得た。水相
を、強酸性陽イオン交換樹脂DOWEX 50W×8を
充填したカラム(10mmφ×100mm)に通液、脱
イオン水による十分な洗浄後、0.5Nのアンモニア水
で吸着物質を溶出させ、フェニルセリン画分とグリシン
画分に分けて採取した。両画分を減圧乾固したところ、
それぞれ47mg、19mgの結晶を得た。フェニルセ
リン画分より得られた結晶の異性体分析(o−フタルア
ルデヒドとN−アセチル−L−システィンによる誘導体
化後、ODSカラムでHPLC分析)を行ったところ、
残存フェニルセリンは全てD−エリスロ体であった。 【0019】実施例2 実施例1と同様の方法で、アリスロバクターDK−19
(微工研菌寄6201号)、シュードモナスDK−2
(微工研菌寄6200号)、アルカリゲネス・ハエカリ
スIFO12669及びキサントモナス・オリゼーIA
M1657をそれぞれ培養し、その粗精製酵素液を調製
した。得られた粗精製酵素液を用い、実施例1と同様に
反応を行った。反応液の異性体分析により求めた各異性
体の残存率を表1に示す。 【0020】 【表1】 【0021】実施例3 キサントモナス・オリゼーからL−アロスレオニンアル
ドラーゼ合成に関与する遺伝子を担うDNAを単離し、
キサントモナス・シトリーに導入して、L−アロスレオ
ニンアルドラーゼを高度に生産する能力を有する組換え
体を作製した例を以下に示す。 (1)染色体DNAの調製及び組換え体DNAの作成 常法に従い、キサントモナス・オリゼーIAM1657
の染色体DNAを調製した。得られた染色体DNA12
0μgをBamHI14単位/1.2ml、37℃、2
時間の条件で部分消化した。反応後、超遠心機を用いた
蔗糖密度勾配により分子量分画し、5〜10kbのDN
A断片を含む画分を組換えDNAの作成に供した。プラ
スミドDNApBR322 1μgを、BamHI12
単位/14μl、37℃、18時間の条件で消化した。
アルカリフォスファターゼ処理を行った後、先に作成し
た染色体DNAのBamHI部分消化物と混合し、T4
DNAリガーゼを加えラリゲーション反応を行った。得
られた反応混合物を形質転換に供した。 【0022】(2)形質転換及び遺伝子ライブラリーの
作成 得られた組換え体DNAを、常法に従い、大腸菌C60
0株のCompetent cellに形質転換し、ア
ンピシリン耐性でテトラサイクリン耐性を喪失したコロ
ニーを、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒
天培地にピックアップし、5000クローンからなる遺
伝子ライブラリーを構築した。 【0023】(3)L−アロスレオニンアルドラーゼ遺
伝子のクローニング及び小型化 遺伝子ライブラリーに保存した形質転換体を、100μ
g/mlのアンピシリンを含む5mlのLB液体培地で
37℃、一晩培養し、集菌、凍結乾燥した。50mMの
L−アロスレオニンを含む反応液(0.01mMPL
P、0.2Mトリス;pH7.0)を1ml添加し、均
一に懸濁して18時間、30℃で反応させた。反応液の
アミノ酸分析をTLCを用いて行い、グリシン合成活性
が増強されたクローンをL−アロスレオニンアルドラー
ゼ遺伝子を持つ形質転換体として選択した。L−アロス
レオニンアルドラーゼ活性を獲得した形質転換体からプ
ラスミドを抽出し、BamHIで切断後、アガロース・
ゲル電気泳動で分析し、プラスミドに約10kbの挿入
断片があることを確認した。種々の欠失解析によって、
L−アロスレオニンアルドラーゼ生産に係わる遺伝子が
約5kbのEcoRI/XhoI断片に含まれているこ
とが明らかになり、この断片を持つ組換えプラスミドp
LA220を作成した。このプラスミドの詳細な解析か
ら、約3kbのBglII/XhoI断片にL−アロスレ
オニンアルドラーゼ生産に係わる遺伝子がコードされて
いた。4μgのプラスミドpLA220を24単位のB
glII、ついでXhoIで完全消化し、アガロース・ゲ
ル電気泳動で分離し、L−アロスレオニンアルドラーゼ
生産に係わる遺伝子を含む約3kbの目的のBglII/
XhoI断片を含むゲルを切り出し、常法に従い、ゲル
内部からDNA断片を抽出・回収した。プラスミドDN
A pBR328 1μgを12単位のBamHI、次
いでSalIで順次切断し、フォスファターゼで処理を
した後、L−アロスレオニンアルドラーゼ生産に係わる
遺伝子断片と混合し、T4DNAリガーゼで連結した。
この組換えプラスミドをpLA556と命名し、常法に
従い、大腸菌C600株のCompetent cel
lに形質転換し、アンピシリンに耐性でテトラサイクリ
ン耐性を喪失したクローンを1株選択し、そのクローン
がL−アロスレオニンアルドラーゼ活性を獲得している
ことを確認した。 【0024】(4)キサントモナス属細菌の形質転換 宿主菌、キサントモナス・シトリ−IFO3311を5
0mlのLB培地に接種し、37℃で2時間45分培養
した。集菌後、直ちに10mlのCompetent調
製用緩衝液(50mMCaCl2 、10mMRbC
l2 、0.1M MOPS;pH6.5)に懸濁し、氷
中30分間静置した。遠心によって上澄みを除去後2.
5mlの同一緩衝液に再懸濁し、氷中で30分間以上静
置した。1μgのpLA556を含む微量遠心チューブ
に100μlの形質転換用緩衝液(10%ポリエチレン
グリコール(分子量1000)、1mMEDTA、1m
M MOPS;pH7.2)、200μlのCompe
tent cellを採取し、混合後氷中に30分間静
置した。37℃の水浴で2分間加温した後、0.8ml
のLB培地を添加し、37℃で1時間培養した。50μ
g/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に
0.1mlずつ培養液を塗布し、一昼夜37℃で培養し
た。得られたクロラムフェニコール耐性株が目的のプラ
スミドを保持し、L−アロスレオニンアルドラーゼ活性
を有していることを確認し、この形質転換体をキサント
モナス・シトリーIFO3311(pLA556)と名
付けた。 【0025】実施例4 実施例3で得られた組換え体を、培地にクロラムフェニ
コールを50μg/mlの濃度で添加した以外は実施例
1と同様の方法で培養し、凍結乾燥菌体を得た。菌体重
量当りのL−アロスレオニンアルドラーゼ活性を測定
し、遺伝子供与菌、宿主菌、ベクタープラスミドのみを
導入した菌株の活性と比較した結果を表2に示す。 【0026】 【表2】【0027】実施例5 キサントモナス・シトリーIFO3311(pLA55
6)を、培地にクロラムフェニコールを50μg/ml
の濃度で添加して培養し、得られた培養液の60分の1
量を破砕・粗精製せずにそのまま洗浄・凍結乾燥して1
00mlの懸濁液(0.20U/ml)として反応に用
いる以外は、全て実施例1と同様の方法で行った。反応
終了後、反応液中のフェニルセリン異性体、グリシン、
ベンズアルデヒドを前出の方法で定量し、次の値を得
た。 D−エリスロ−フェニルセリン: 2.73mM(残存
率98.9%) L−エリスロ−フェニルセリン: 0 mM(残存
率0 %) グリシン : 2.75mM ベンズアルデヒド : 2.60mM 各成分を反応液より分画・精製したところ、ベンズアル
デヒド25mg、フェニルセリンの結晶45mg、グリ
シンの結晶18mgを得た。フェニルセリン画分より得
た結晶の異性体分析を行ったところ、残存フェニルセリ
ンは全てD−エリスロ体であった。 【0028】実施例6 一般式(I)におけるRがそれぞれ、エチル基、オクチ
ル基、アリル基、シクロヘキシル基、5−ヒドロキシ−
2−ニトロフェニル基及びイミダゾリル基であるβ−ヒ
ドロキシアミノ酸のD,L−エリスロ体の等量混合物を
基質に用い、実施例1ないし2で得た粗精製酵素液又は
実施例3で得た菌体懸濁液を実施例1と同様の方法で反
応させた。反応液の異性体分析により求めた各異性体の
残存率を表3、表4に示す。 【0029】 【表3】【表4】【0030】 【発明の効果】本発明によれば、光学分割のための置換
基の導入や除去が不要であり、高価な光学分割剤を用い
る必要もなく、生成するグリシンとアルデヒド誘導体を
原料合成にリサイクル使用することが可能で、繁雑なラ
セミ化を行う必要がないため、従来の方法に比べて極め
て有利な方法である。特に遺伝子組換えによりL−アロ
スレオニンアルドラーゼの生産性が大幅に向上した菌体
を用いることにより、さらに広範囲のラセミ−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸から、D−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸を簡単かつ経済的に製造することが出
来るので工業的製造法として適している。
シアミノ酸を、L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸
を特異的にグリシンと対応するアルデヒド誘導体に分解
する能力を有する酵素、同酵素を産生する微生物あるい
はその菌体処理物でもって処理することにより、医薬
や、医薬・農薬等の中間体として有用なことが知られて
いるD−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を製造する
方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、D−エリスロ−β−ヒドロキシア
ミノ酸の合成は、以下の方法により行われていた。即
ち、必要に応じて保護基を導入したアルデヒド誘導体と
グリシンを強アルカリ存在下で縮合させることによりラ
セミ−スレオ/エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸誘導
体を得た後、スレオ/エリスロ体の相互分離処理を行
う。得られたラセミ−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ
酸誘導体の保護基を除去し、アミノ基部分に置換基を導
入した後、キニン、ブルシン等の光学分割剤を用いて光
学分割を行い、最後にアミノ基部分の置換基を除去する
というものである。 【0003】 【発明が解決しようとする問題点】アルデヒド誘導体と
グリシンを縮合してβ−ヒドロキシアミノ酸を合成する
と、反応の立体選択性が低いために、スレオ/エリス
ロ,D/Lの組合せで4種類の異性体が不可避的に生成
する。D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の合成に
当たっては、これらの異性体を分離するための繁雑な工
程を必要とし、工業的製造法を開発する上で大きな問題
となっていた。特に、従来のD/L体の光学分割法は、
使用する光学分割剤が高価であるだけでなく、工程及び
その制御が複雑で収率も低いという問題があった。さら
に、これらの操作で得られる不要の異性体を再度利用す
るためには、別途ラセミ化したり、分解したりする必要
があり、工程をさらに複雑にする原因となっていた。 【0004】 【問題点を解決するための手段】本発明者らは、D−エ
リスロ−β−ヒドロキシアミノ酸の合成方法に関し鋭意
検討を行った結果、L−アロスレオニンアルドラーゼ
が、意外にもL−アロスレオニンのみでなく種々のβ−
ヒドロキシアミノ酸のL−エリスロ体に広く作用し、グ
リシンと対応するアルデヒド化合物に分解することを見
出し、本発明を完成した。これにより、ラセミ−エリス
ロ−β−ヒドロキシアミノ酸からの効率的なD−エリス
ロ−β−ヒドロキシアミノ酸の製造が可能になるのみな
らず、分解物は、原料として再度ラセミ体の合成に利用
できる。さらに、遺伝子操作によってL−アロスレオニ
ンアルドラーゼの生産性を大幅に向上せしめた組換え体
を用いると、目的とするD−エリスロ−β−ヒドロキシ
アミノ酸を分解する酵素が菌体中に含まれる場合でも、
それらの酵素を除去することなく反応に用いることが出
来る。また、このような組換え体を用いると、L−エリ
スロ体の分解に多量の酵素を必要とするような反応性の
低いβ−ヒドロキシアミノ酸に対しても効率よく反応を
行うことが出来るため、広範囲のD−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸の合成が可能である。本発明は、一般
式(I) 【0005】 【化2】 (式中、Rは、置換又は非置換の脂肪族基、脂環式基、
芳香族基又は複素環式基を表す。)で表わされるラセミ
−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸に、L−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応す
るアルデヒドに分解する酵素である、アルカリゲネス
属、シュードモナス属、アリスロバクター属、キサント
モナス属、バチルス属、エシェリヒア属に属する微生
物、あるいは、これらの微生物より得られたL−アロス
レオニンアルドラーゼの合成に関与する遺伝子を担うD
NAとベクターDNAとを結合せしめてなる組換え体D
NAを保有せしめた形質転換体よりなる群より選ばれた
少なくとも1種の微生物が産生するL−アロスレオニン
アルドラーゼ、同酵素を産生する微生物菌体あるいは菌
体処理物を作用させることを特徴とするD−エリスロ−
β−ヒドロキシアミノ酸の製造法に関する。 【0006】本発明で用いられる原料ラセミ−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸は、上記式(I)におけるR
が、置換又は非置換の脂肪族基、脂環式基、芳香族基又
は複素環式基を表す。具体的には、アルキル基、アルケ
ニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化
水素基又は複素環式炭化水素基より選ばれた置換基であ
る化合物であり、置換基に含まれる水素のうち1個又は
複数個が同一又は相異なるアルキル基、アルケニル基、
アルキニル基、アルコキシル基、アルキレン基、脂環式
炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヒドロキシル基、ニト
ロ基、又はハロゲン基で置換されていてもよい。置換基
の炭素数が直鎖脂肪族基の場合は好ましくは20以下、
特に好ましくは10以下であり、その他の置換基の場合
は好ましくは30以下、特に好ましくは20以下である
化合物を用いると良好な結果を得ることができる。 【0007】本発明においては、D−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸以外の異性体、すなわち、L−エリス
ロ−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応
するアルデヒドに分解することから、こうして得られた
グリシンと対応するアルデヒドはそれを再度合成に使用
できる。本発明においては、上記酵素又はその同等物
は、スレオ体の存在下で反応せしめ、反応後にスレオ/
エリスロ分離を行い、D−エリスロ体を得ることも可能
である。 【0008】本発明においては、前記したように、L−
エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を分解する酵素を用
いることがあげられるが、このような酵素としては、L
−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的に分解す
るものであれば、いずれも使用できる。このような酵素
として特に好ましいものとしては、L−エリスロ−β−
ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応するアル
デヒドに分解する能力を有するものがあげられる。さら
にまた一般式(I)に示すような広範囲のβ−ヒドロキ
シアミノ酸に作用するものがあげられる。このような酵
素として特に好ましいものは、L−アロスレオニンアル
ドラーゼがあげられる。L−アロスレオニンアルドラー
ゼとしては、特公昭63−54359号に記載されたも
のの他、その遺伝子を操作して得られたものなどをあげ
ることができる。これらL−アロスレオニンアルドラー
ゼは、予想外にも種々のβ−ヒドロキシアミノ酸のL−
エリスロ体に特異的に作用しこれをグリシンと対応する
アルデヒドに分解せしめるという優れた特性を有してい
る。 【0009】本発明で用いられるL−アロスレオニンア
ルドラーゼは、L−アロスレオニンアルドラーゼ生産菌
あるいはその変異株などから得ることが出来る。L−ア
ロスレオニンアルドラーゼ生産菌としては、例えば、バ
チルス(Bacillus)DK−39(微工研菌寄6202
号)、アルカリゲネス・ハエカリス(Alcaligenes faeca
lis)IFO12669、シュードモナス(Pseudomonas)
DK−2(微工研菌寄6200号)、アリスロバクター
(Arthrobacter)DK−19(微工研菌寄6201号)、
キサントモナス・オリゼー(Xanthomonas oryzae)IAM
1657などが知られている。これらのL−アロスレオ
ニンアルドラーゼ生産菌から得られたL−アロスレオニ
ンアルドラーゼの合成に関与する遺伝子を担うDNA
を、遺伝子組換えの手法を用いて導入して作成された組
換え体は、より好適に本発明に用いることが出来る。こ
のような組換え体の作成は、特開平3−139283号
記載のD−スレオニンアルドラーゼ高生産株の作成と同
様の方法で行うことが出来る。すなわち、L−アロスレ
オニンアルドラーゼ生産菌から染色体DNAを抽出し、
制限酵素でDNAを部分分解し、精製後、適当なベクタ
ーDNAに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細
胞に移入し、遺伝子ライブラリーを作成する。そこか
ら、L−アロスレオニンアルドラーゼの合成に関与する
遺伝子を保有する株を、培養細胞のL−アロスレオニン
アルドラーゼ活性を調べることにより選択し、その細胞
株から組換えDNAを抽出し、適当な制限酵素でベクタ
ーDNAから目的のDNAを切り出す。得られたDNA
断片の解析を行い、L−アロスレオニンアルドラーゼの
合成に不必要な部分を欠失させ、小型化し、再度適当な
ベクターDNAに組み込み、宿主細胞に導入することに
より、目的の株を得ることが出来る。このような遺伝子
を導入して利用しうる微生物としては、例えばエシェリ
ヒア(Escherichia) 属細菌、バチルス(Bacillus)属細
菌、キサントモナス(Xanthomonas) 属細菌、アセトバク
ター(Acetobacter) 属細菌、シュードモナス(Pseudomon
as) 属細菌、グルコノバクター(Gluconobacter) 属細
菌、アゾトバクター(Azotobacter) 属細菌、リゾビウム
(Rhizobium) 属細菌、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属
細菌、クレブシェラ(Klebsiella)属細菌、サルモネラ(S
almonella)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌などの原
核微生物や酵母などの下等真核生物などを用いることが
できる。 【0010】このような組換え体のうち、特にL−アロ
スレオニンアルドラーゼを高度に生産する能力を有して
いる組換え体の例としては、キサントモナス属細菌に属
するものがあげられる。キサントモナス・オリゼー(Xan
thomonas oryzae)IAM1657の染色体DNAから単
離したL−アロスレオニンアルドラーゼの合成に関与す
る遺伝子を担うDNAとプラスミドpBR328を連結
した組換えプラスミドpLA556を、キサントモナス
・シトリー(Xanthomonas citri) IFO3311に導入
して得られた形質転換体キサントモナス・シトリーIF
O3311(pLA556)は、L−アロスレオニンア
ルドラーゼを高度に生産する能力を有しており特に好適
なものである。 【0011】本発明に用いる微生物は常法に従って培養
することができる。培養に用いられる培地は微生物の生
育に必要な炭素源、窒素源、無機物質等を含む通常の培
地である。ここで用いられる炭素源としては、グルコー
ス、ガラクトース、可溶性デンプンなどがあげられ、窒
素源としては塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝
酸アンモニウム、ペプトン、肉エキス、イーストエキ
ス、コーンスティプリカー、大豆粉、綿実カスなどがあ
げられる。また、塩化ナトリウム、カリウム塩、カルシ
ウム塩、アンモニウム塩、燐酸塩などの他、亜鉛、マグ
ネシウム、鉄、マンガンなどの無機物も使用できる。更
に、ビタミン、アミノ酸等の有機微量栄養素を添加する
と望ましい結果が得られる場合が多い。培養は、好気的
条件下でpH4から10、温度20から50℃の任意の
範囲に制御して1〜10日間培養を行えばよい。組換え
体を用いる場合、使用する菌株に応じて、アンピシリ
ン、クロラムフェニコール等の抗生物質を培養液に添加
してもよい。 【0012】酵素反応にあたっては、菌体の培養液、培
養液から分離した菌体、凍結乾燥などによる乾燥菌体、
菌体破砕液、粗酵素抽出液、精製酵素、さらには、上記
の処理物および固定化物、その他何れも使用できるが、
使用する酵素液あるいは菌体に目的とするD−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸を分解するような活性が含ま
れている場合には、効率的な合成を行うために、その活
性を除去してから反応に用いるのが好ましい。これらの
分解活性を除去する方法としては、酵素液のアセトン分
画・カラムクロマト分画などによる方法が好ましいが、
それに限定されることなく、分解活性を選択的に除去出
来る方法であればいずれも用いることが出来る。また、
遺伝子操作によってL−アロスレオニンアルドラーゼの
生産性を大幅に向上せしめた組換え体であれば、これら
の分解活性を除去することなく反応に用いることができ
る。 【0013】酵素反応を実施する方法は、水性媒体中に
て基質であるラセミ−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ
酸を、上に記した微生物の培養液、菌体、菌体処理物、
酵素、あるいはこれらを通常の方法で固定化したものと
接触させれば良い。かかる反応時の水性媒体としては、
例えば、水、緩衝液、含水有機溶媒等が使用できる。反
応における酵素、微生物菌体あるいは菌体処理物等の濃
度は、L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を完全に
分解できるならば特に制限はないが、L−アロスレオニ
ンアルドラーゼ活性(1UはL−アロスレオニンから1
分間に1μmoleのグリシンを生成するのに必要な酵
素量を表わす)が、0.1U/ml以上であることが望
ましい。特に、1U/ml以上であれば反応を速やかに
終了させることが出来る。 【0014】基質であるラセミ−エリスロ−β−ヒドロ
キシアミノ酸の濃度は、反応を著しく阻害しない程度で
あればよく1mMから100mMが好ましく、基質の供
給は、一括、連続、分割の何れの手段でも実施できる。
反応温度は、10から55℃がよく、20から40℃が
より好適である。反応時のpHは5から10、好ましく
は6から8である。ピリドキサール−5’−リン酸を反
応系に10nM〜10mM、好ましくは1μmM〜10
0μMの濃度で添加することにより好ましい結果が得ら
れる。反応形式はバッチ方式、連続方式の何れでもよい
が、かくして、反応は0.5から50時間程度で終了す
る。反応終了後、反応液は遠心分離や限外濾過等により
除菌・除タンパクし、まず有機溶媒抽出等により生成ア
ルデヒドを分離する。抽出には、アルデヒドの溶解性が
高く、D−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸及びグリ
シンがほとんど不溶である溶媒であれば使用することが
できるが、エーテルを使用すると良好な結果が得られ
る。 【0015】溶媒相からは減圧濃縮等によりアルデヒド
を回収することが出来る。水相からのD−エリスロ−β
−ヒドロキシアミノ酸とグリシンの単離回収は、通常の
イオン交換樹脂を用いたクロマト分離によって行うこと
が出来る。すなわち、水相を陽イオン交換樹脂を充填し
たカラムに通液、水洗後、希アンモニア水等により溶出
を行う。 【0016】純度が低い場合には、さらに晶析・水再結
晶を行うことにより精製度を高めることが出来る。上記
反応生成物の単離精製法は、一つの代表的な方法を例示
したものであり、本発明においてはそれに限定されるこ
となく各種の分離精製法が適用できる。このような方法
の例としては、メタノール、エタノール等のアルコール
系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶
媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチル
エチルケトン等のケトン溶媒、ジメチルスルホキシド等
のスルホキシド類溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド
等のアミド溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶
媒、エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン
等のエーテル系溶媒、メチレンクロライド等のハロゲン
化炭化水素溶媒及びそれらの混合溶媒あるいはそれらの
水性溶媒などを用いた溶媒抽出などの分離法、カラムク
ロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、高速液体
クロマトグラフィー、再結晶化法などの方法をあげるこ
とができる。 【0017】本発明の方法によると、 (1)L−アロスレオニンアルドラーゼは、広い範囲の
L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸に作用してこれ
を分解することができるので、様々なラセミ−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸からのD−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸の合成が可能である。 (2)L−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸は合成原
料であるグリシンとアルデヒドに分解されるため、それ
らは反応液から回収して再度ラセミ−スレオ/エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸合成にリサイクル使用するこ
とが出来る。 (3)従って、ラセミ化の必要はなく、目的物が高収率
で得られるので、工程が複雑で高価な光学分割剤を用い
る必要がある従来の光学分割法に比べ、大幅に工程を単
純化出来る。 (4)遺伝子組換えによりL−アロスレオニンアルドラ
ーゼの生産性が大幅に向上した菌株を用いれば、目的と
するD−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸を分解する
酵素が菌体中に含まれる場合でもそれらの酵素を除去す
ることなく反応に用いることが出来、また、L−エリス
ロ体の分解に多量の酵素を必要とするような反応性の低
いβ−ヒドロキシアミノ酸に対しても効率よく反応を行
うことが出来るため、D−エリスロ−β−ヒドロキシア
ミノ酸類の製造に幅広く利用することができる。 【0018】 【実施例】次に、実施例により本発明の方法を更に詳し
く説明するが、本発明は実施例により限定されるもので
はない。例中%は重量%を示す。 実施例1 ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.5%、塩化ナト
リウム0.5%からなるpH7.5の培地を調製し、5
リットルの培養槽にその3リットルを添加し、120℃
で15分間加熱殺菌した。その培地にバチルスDK−3
9(微工研菌寄6202号)を接種し、pH7.5に保
ちながら30℃で20時間通気及び撹拌をしつつ培養し
た。培養終了後、培養液から菌体を遠心分離で集菌、水
洗後、0.01mMピリドキサ−ル−5’−リン酸を含
むpH7.5の0.2M HEPES(N-2-Hydroxyeth
ylpiperazine-N'-2-ethanesulfonic acid)緩衝液500
mlに懸濁し、この菌体懸濁液を20kHz、3分間の
超音波破砕処理を4回行い、破砕液の懸濁物質を遠心分
離で除去して粗酵素液を調製した。次に、この粗酵素液
を陰イオン交換樹脂DEAE−Cellulofine
A−500(生化学工業(株)製)を充填したカラム
(2.6mmφ×100mm)に通液、上記緩衝液で洗
浄後、塩化ナトリウム直線グラジェントにより溶出・分
画し、L−アロスレオニンアルドラーゼ活性を有する画
分(粗精製酵素液)100mlを得た。得られた粗精製
酵素液のL−アロスレオニンアルドラーゼ活性(1Uは
L−アロスレオニンから1分間に1μmoleのグリシ
ンを生成するのに必要な酵素量を表わす)測定したとこ
ろ、0.26U/mlであった。得られた粗精製酵素液
にD,L−エリスロ−フェニルセリン(D体とL体の等
量混合物)100mgを加え、30℃で10時間反応さ
せた。反応終了後、反応液のフェニルセリン異性体及び
グリシンを、o−フタルアルデヒドとN−アセチル−L
−システィンにより誘導体化し、ODSカラムを用いて
HPLCにより定量した。また、ベンズアルデヒドは、
2,4−ジニトロフェニルヒドラジンと反応させ、OD
Sカラムを用いてHPLCにより定量した。 D−エリスロ−フェニルセリン: 2.70mM(残存
率97.8%) L−エリスロ−フェニルセリン: 0 mM(残存
率0 %) グリシン : 2.76mM ベンズアルデヒド : 2.69mM 反応液に1N塩酸を10ml加えた後、遠心分離で不溶
物を除去した。この遠心上清に200mlのエチルエー
テルを加え、撹拌・静置し、エーテル相を分離、減圧乾
固を行い、27mgのベンズアルデヒドを得た。水相
を、強酸性陽イオン交換樹脂DOWEX 50W×8を
充填したカラム(10mmφ×100mm)に通液、脱
イオン水による十分な洗浄後、0.5Nのアンモニア水
で吸着物質を溶出させ、フェニルセリン画分とグリシン
画分に分けて採取した。両画分を減圧乾固したところ、
それぞれ47mg、19mgの結晶を得た。フェニルセ
リン画分より得られた結晶の異性体分析(o−フタルア
ルデヒドとN−アセチル−L−システィンによる誘導体
化後、ODSカラムでHPLC分析)を行ったところ、
残存フェニルセリンは全てD−エリスロ体であった。 【0019】実施例2 実施例1と同様の方法で、アリスロバクターDK−19
(微工研菌寄6201号)、シュードモナスDK−2
(微工研菌寄6200号)、アルカリゲネス・ハエカリ
スIFO12669及びキサントモナス・オリゼーIA
M1657をそれぞれ培養し、その粗精製酵素液を調製
した。得られた粗精製酵素液を用い、実施例1と同様に
反応を行った。反応液の異性体分析により求めた各異性
体の残存率を表1に示す。 【0020】 【表1】 【0021】実施例3 キサントモナス・オリゼーからL−アロスレオニンアル
ドラーゼ合成に関与する遺伝子を担うDNAを単離し、
キサントモナス・シトリーに導入して、L−アロスレオ
ニンアルドラーゼを高度に生産する能力を有する組換え
体を作製した例を以下に示す。 (1)染色体DNAの調製及び組換え体DNAの作成 常法に従い、キサントモナス・オリゼーIAM1657
の染色体DNAを調製した。得られた染色体DNA12
0μgをBamHI14単位/1.2ml、37℃、2
時間の条件で部分消化した。反応後、超遠心機を用いた
蔗糖密度勾配により分子量分画し、5〜10kbのDN
A断片を含む画分を組換えDNAの作成に供した。プラ
スミドDNApBR322 1μgを、BamHI12
単位/14μl、37℃、18時間の条件で消化した。
アルカリフォスファターゼ処理を行った後、先に作成し
た染色体DNAのBamHI部分消化物と混合し、T4
DNAリガーゼを加えラリゲーション反応を行った。得
られた反応混合物を形質転換に供した。 【0022】(2)形質転換及び遺伝子ライブラリーの
作成 得られた組換え体DNAを、常法に従い、大腸菌C60
0株のCompetent cellに形質転換し、ア
ンピシリン耐性でテトラサイクリン耐性を喪失したコロ
ニーを、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒
天培地にピックアップし、5000クローンからなる遺
伝子ライブラリーを構築した。 【0023】(3)L−アロスレオニンアルドラーゼ遺
伝子のクローニング及び小型化 遺伝子ライブラリーに保存した形質転換体を、100μ
g/mlのアンピシリンを含む5mlのLB液体培地で
37℃、一晩培養し、集菌、凍結乾燥した。50mMの
L−アロスレオニンを含む反応液(0.01mMPL
P、0.2Mトリス;pH7.0)を1ml添加し、均
一に懸濁して18時間、30℃で反応させた。反応液の
アミノ酸分析をTLCを用いて行い、グリシン合成活性
が増強されたクローンをL−アロスレオニンアルドラー
ゼ遺伝子を持つ形質転換体として選択した。L−アロス
レオニンアルドラーゼ活性を獲得した形質転換体からプ
ラスミドを抽出し、BamHIで切断後、アガロース・
ゲル電気泳動で分析し、プラスミドに約10kbの挿入
断片があることを確認した。種々の欠失解析によって、
L−アロスレオニンアルドラーゼ生産に係わる遺伝子が
約5kbのEcoRI/XhoI断片に含まれているこ
とが明らかになり、この断片を持つ組換えプラスミドp
LA220を作成した。このプラスミドの詳細な解析か
ら、約3kbのBglII/XhoI断片にL−アロスレ
オニンアルドラーゼ生産に係わる遺伝子がコードされて
いた。4μgのプラスミドpLA220を24単位のB
glII、ついでXhoIで完全消化し、アガロース・ゲ
ル電気泳動で分離し、L−アロスレオニンアルドラーゼ
生産に係わる遺伝子を含む約3kbの目的のBglII/
XhoI断片を含むゲルを切り出し、常法に従い、ゲル
内部からDNA断片を抽出・回収した。プラスミドDN
A pBR328 1μgを12単位のBamHI、次
いでSalIで順次切断し、フォスファターゼで処理を
した後、L−アロスレオニンアルドラーゼ生産に係わる
遺伝子断片と混合し、T4DNAリガーゼで連結した。
この組換えプラスミドをpLA556と命名し、常法に
従い、大腸菌C600株のCompetent cel
lに形質転換し、アンピシリンに耐性でテトラサイクリ
ン耐性を喪失したクローンを1株選択し、そのクローン
がL−アロスレオニンアルドラーゼ活性を獲得している
ことを確認した。 【0024】(4)キサントモナス属細菌の形質転換 宿主菌、キサントモナス・シトリ−IFO3311を5
0mlのLB培地に接種し、37℃で2時間45分培養
した。集菌後、直ちに10mlのCompetent調
製用緩衝液(50mMCaCl2 、10mMRbC
l2 、0.1M MOPS;pH6.5)に懸濁し、氷
中30分間静置した。遠心によって上澄みを除去後2.
5mlの同一緩衝液に再懸濁し、氷中で30分間以上静
置した。1μgのpLA556を含む微量遠心チューブ
に100μlの形質転換用緩衝液(10%ポリエチレン
グリコール(分子量1000)、1mMEDTA、1m
M MOPS;pH7.2)、200μlのCompe
tent cellを採取し、混合後氷中に30分間静
置した。37℃の水浴で2分間加温した後、0.8ml
のLB培地を添加し、37℃で1時間培養した。50μ
g/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に
0.1mlずつ培養液を塗布し、一昼夜37℃で培養し
た。得られたクロラムフェニコール耐性株が目的のプラ
スミドを保持し、L−アロスレオニンアルドラーゼ活性
を有していることを確認し、この形質転換体をキサント
モナス・シトリーIFO3311(pLA556)と名
付けた。 【0025】実施例4 実施例3で得られた組換え体を、培地にクロラムフェニ
コールを50μg/mlの濃度で添加した以外は実施例
1と同様の方法で培養し、凍結乾燥菌体を得た。菌体重
量当りのL−アロスレオニンアルドラーゼ活性を測定
し、遺伝子供与菌、宿主菌、ベクタープラスミドのみを
導入した菌株の活性と比較した結果を表2に示す。 【0026】 【表2】【0027】実施例5 キサントモナス・シトリーIFO3311(pLA55
6)を、培地にクロラムフェニコールを50μg/ml
の濃度で添加して培養し、得られた培養液の60分の1
量を破砕・粗精製せずにそのまま洗浄・凍結乾燥して1
00mlの懸濁液(0.20U/ml)として反応に用
いる以外は、全て実施例1と同様の方法で行った。反応
終了後、反応液中のフェニルセリン異性体、グリシン、
ベンズアルデヒドを前出の方法で定量し、次の値を得
た。 D−エリスロ−フェニルセリン: 2.73mM(残存
率98.9%) L−エリスロ−フェニルセリン: 0 mM(残存
率0 %) グリシン : 2.75mM ベンズアルデヒド : 2.60mM 各成分を反応液より分画・精製したところ、ベンズアル
デヒド25mg、フェニルセリンの結晶45mg、グリ
シンの結晶18mgを得た。フェニルセリン画分より得
た結晶の異性体分析を行ったところ、残存フェニルセリ
ンは全てD−エリスロ体であった。 【0028】実施例6 一般式(I)におけるRがそれぞれ、エチル基、オクチ
ル基、アリル基、シクロヘキシル基、5−ヒドロキシ−
2−ニトロフェニル基及びイミダゾリル基であるβ−ヒ
ドロキシアミノ酸のD,L−エリスロ体の等量混合物を
基質に用い、実施例1ないし2で得た粗精製酵素液又は
実施例3で得た菌体懸濁液を実施例1と同様の方法で反
応させた。反応液の異性体分析により求めた各異性体の
残存率を表3、表4に示す。 【0029】 【表3】【表4】【0030】 【発明の効果】本発明によれば、光学分割のための置換
基の導入や除去が不要であり、高価な光学分割剤を用い
る必要もなく、生成するグリシンとアルデヒド誘導体を
原料合成にリサイクル使用することが可能で、繁雑なラ
セミ化を行う必要がないため、従来の方法に比べて極め
て有利な方法である。特に遺伝子組換えによりL−アロ
スレオニンアルドラーゼの生産性が大幅に向上した菌体
を用いることにより、さらに広範囲のラセミ−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸から、D−エリスロ−β−ヒ
ドロキシアミノ酸を簡単かつ経済的に製造することが出
来るので工業的製造法として適している。
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
C12R 1:07) C12R 1:06
(C12P 41/00 1:38
C12R 1:06) C12R 1:05
(C12P 41/00 1:64
C12R 1:38) C12N 15/00 A
(C12P 41/00
C12R 1:05)
(C12P 41/00
C12R 1:64)
(56)参考文献 特開 昭58−116691(JP,A)
特開 昭58−116681(JP,A)
欧州特許出願公開507153(EP,A
1)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
BIOSIS(DIALOG)
EUROPAT(QUESTEL)
WPI/L(DIALOG)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (式中、Rは、置換又は非置換の脂肪族基、脂環式基、
芳香族基又は複素環式基を表す。)で表わされるラセミ
−エリスロ−β−ヒドロキシアミノ酸に、L−エリスロ
−β−ヒドロキシアミノ酸を特異的にグリシンと対応す
るアルデヒドに分解する酵素である、アルカリゲネス
属、シュードモナス属、アリスロバクター属、キサント
モナス属、バチルス属、エシェリヒア属に属する微生
物、あるいは、これらの微生物より得られたL−アロス
レオニンアルドラーゼの合成に関与する遺伝子を担うD
NAとベクターDNAとを結合せしめてなる組換え体D
NAを保有せしめた形質転換体よりなる群より選ばれた
少なくとも1種の微生物が産生するL−アロスレオニン
アルドラーゼ、同酵素を産生する微生物菌体あるいは菌
体処理物を作用させることを特徴とするD−エリスロ−
β−ヒドロキシアミノ酸の製造法。
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---|---|---|---|
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