JP2793812B2 - イブプロフェンの製造方法 - Google Patents

イブプロフェンの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はイブプロフェン(ibuprofen)又はその塩或
いはエステルの製造方法、特に主としてR配置を有する
該化合物の製造に関する。
〔従来の技術〕
多くの生物学的活性化合物が立体異性体の混合物とし
て存在することは公知である。現在までこれらの混合物
はそのまゝで農業及び製薬用途にしばしば用いられてい
る。通常、所望の生物学的活性は主として1つの立体異
性体にあるので、2種の立体異性体の混合物の場合に
は、混合物の力価は半分位に低下される。しかし、立体
異性体の混合物が使用し続けられている主要な理由は立
体異性体の分離の費用が可能な活性増加の潜在的利益を
越えるためである。一方、現代の薬理学者達は、明らか
に、1種又は2種以上の立体異性体が不純物と見做され
ねばならない混合物の他の意味、すなわち所望の治療効
果を持たないかも知れないこと及び毒性を含む他の望ま
しくない生理的作用をもつことさえあり得ることに気付
きはじめている。
適当な非官能性脂肪族側鎖を有する芳香族炭化水素、
1−イソブチル−4−(1′−メチルオクチル)ベンゼ
ンの微生物学的酸化によるイブプロフェンのR−対掌体
の立体選択的製造がT.スガイ及びK.モリ(T.Sugai and
K.Mori)〔Agric.Biol.Chem.,48(1984)2501〕によっ
て記載されている。
治療上不活性な異性体R−イブプロフェンはラセミ体
よりも胃腸の副作用が少ないと期待される。抗炎症作用
は肝臓中で治療上活性なS異性体へ転化することによっ
て保持される〔A.J.ハット及びJ.カルドウェル(A.J.Hu
tt and J.Caldwell)、J.Pharm.Pharmacol.,35(1983)
693〕。
〔発明が解決しようとする課題〕
従って、R−イブプロフェンの製造のための経済的に
魅力的な収量を生ずる工業的規模の方法に対する要望は
依然として存する。本発明の目的はかかる方法を提供す
ることである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、今回、広範囲にわたる研究及び実験の
結果として、好ましくは随意に置換され又は枝分かれし
ているアルキル基を有するイブプロフェンエステルを、
R−異性体に富んだイブプロフェンが生成するような期
間の間、イブプロフェンエステルを立体選択的に加水分
解させる能力を有する微生物又はそれから誘導される物
質の作用にかけることからなるR−異性体に富んだイブ
プロフェンの製造のための改良された合成法を開発し
た。残留イブプロフェンエステルと得られたR−異性体
に富んだイブプロフェンとを互いに分離した後、イブプ
ロフェンをR−異性体に富むことを失わせずにその塩又
はエステルに変えることができる。
R−異性体に“富んだ”とは、主としてR−異性体、
すなわち50重量%を越えるR−異性体を含むことを意味
する。
有利にはイブプロフェンの直鎖アルキルエステルが用
いられ、好ましくはアルキル基は1−5個の炭素原子を
含み、より好ましくはアルキル基はメチル、エチル又は
プロピルである。
1つの好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、
イブプロフェンが少なくとも80重量%、より好ましくは
少なくとも90重量%のR−配置で生成するような微生物
又はそれから誘導される物質を使用して実施される。
本発明のもう1つの目的は本発明の方法で有利に用い
ることができる酵素を提供することである。
本発明のもう1つの目的は、本発明に従って主として
R−イブプロフェンを製造する方法からなり、かつその
後で、残留イブプロフェンエステルをイブプロフェンか
ら分離し、S−異性体に富んでいる該残留イブプロフェ
ンエステルを加水分解し、かつ所望ならば、S−異性体
配置を失うことなく(製剤学上受容可能な)塩又はエス
テルに変えることができる、好ましくは少なくとも80
%、より好ましくは少なくとも90%をS−配置として有
するS−配置に富んだイブプロフェンの製造方法を提供
することである。
“立体選択的に加水分解する能力を有する微生物”と
いう用語は細菌、酵母又は真菌のような微生物を意味す
る。適当な細菌は例えばバチルス(Bacillus)属、スタ
フィロコッカス(Staphylococcus)属及びアセトバクテ
ル(Acetobacter)属の細菌である。
これらから誘導される変異株をも用いることができ
る。
新規の遺伝物質の導入によってイブプロフェンエステ
ルをイブプロフェンへ立体選択的に加水分解する能力を
得ている微生物を使用することもできる。
このことは、スクリーニングした微生物のいずれかか
ら選択的加水分解の原因になる蛋白質、エステラーゼ酵
素、をコードするクローニングされた遺伝子を単離した
後、別の微生物、特にエシエリキアコリ(Esherichia c
oli)へ転移させることによって達成される。形質転換
され得る他の微生物はサッカロミセス(Saccharomyce
s)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ク
ルイベロミセス(Kluyveromyces)属、バチルス(Bacil
lus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、エシエリ
キア(Escherichia)属、プソイドモナス(Pseudomona
s)属及びストレプトミセス(Streptomyces)属の微生
物である。クローニングされた遺伝子は酢酸β−ナフチ
ル、ナプロキセンエステル又は好ましくはイブプロフェ
ンエステルのエステルを加水分解し得る酵素をコードす
る能力によって選択される。別法では、クローニングさ
れた遺伝子は、既に選択されたエステラーゼをコードす
る遺伝子又はエステラーゼのNH2末端配列から設計され
た合成オリゴヌクレオチドとのクロスハイブリダイゼー
ションによって選択される。
微生物は例えばポリマーゲル上に有利に固定化させる
ことができる。このことは生細胞、休止細胞及び(又
は)死菌細胞を使用して遂行し得るが、別法ではより高
い特異的活性が所要の場合に或る程度精製することがで
きるエステラーゼ酵素の使用で遂行し得る。
従って、“微生物又はそれから誘導される物質”とい
う用語は微生物、死菌細胞、生細胞又は休止細胞或いは
その抽出物、随意に濃縮又は精製された抽出物を意味す
る。細胞又は死菌細胞から誘導又は単離された細胞の加
水分解物又は酵素(調製物)は適当な条件下でイブプロ
フェンエステルのR−異性体を加水分解し得ることが発
見され、該酵素は本発明のもう1つの面を形成する。例
えば、該微生物から細胞内又は細胞外酵素を得ることが
できる。微生物又はそれから誘導される物質は数回使用
され得るし、少なくとも2週間活性であることができ
る。
エステルのイブプロフェンのR−異性体への加水分解
は適当な緩衝剤中並びに生理的食塩水中で起こる。誘導
された細胞は、貯蔵後、イブプロフェンエステルをイブ
プロフェンのR−異性体へ直接加水分解する能力をもつ
ことが見いだされた。
本発明に使用され得るバチルス種の培養菌には、バチ
ルスセレウス(Bacillus cereus)、好ましくはバチル
スセレウス種(この試料は受託番号9139でATCCに寄託さ
れている)、バチルスセレウスNap1−1(この種の試料
は受託番号338.87でCBSに寄託されている)、バチルス
セレウスNap2−1(この種の試料は受託番号339.87でCB
Sに寄託されている)及びバチルス属の種(Bacillus sp
ecies)Nap4M(この種の試料は受託番号342.87でCBSに
寄託されている)の培養菌が含まれる。本発明に使用さ
れ得るスタフィロコッカス属の種の培養菌には、スタフ
ィロコッカスアウレウスNap2−5(この種の試料は受託
番号340.87でCBSに寄託されている)及びスタフィロコ
ッカスアウレウスNap3−8(この種の試料は受託番号34
1.87でCBSに寄託されている)の培養菌が含まれる。本
発明に使用され得るアセトバクテル属の種の培養菌には
アセトバクテル・キシリヌムL・パリッシュ(Acetobac
ter xylinum L.Parish)(この種の試料は受託番号343.
87でCBSに寄託されている)の培養菌が含まれる。
本発明の好ましい実施態様によれば、イブプロフェン
エステルを少なくとも80重量%の−配置を有するイブ
プロフェンへ加水分解する能力を有する微生物を約0.5
〜10日間培養することができる。次に、細胞を液体栄養
培地中に懸濁させ、イブプロフェンエステルを細胞の作
用にかける。別法では、細胞を殺し、例えば溶菌培地中
に懸濁し、次にイブプロフェンエステルを溶解された細
胞から放出される物質の作用にかける。
約0.5〜10日間の上記培養後、細胞を培地から単離し
た後に細胞を液体栄養培地又は溶菌培地中に懸濁させ
る。
イブプロフェンエステルの選択的加水分解に用いられ
る微生物を増殖させるためには、有機栄養源(例えば酵
母エキス、麦芽エキス、ペプトン、肉エキス等)及び無
機栄養源(例えば燐酸塩、マグネシウム、カリウム、亜
鉛、鉄及び痕跡量の他金属)を与える物質と共に資化性
炭素源(例えばブドウ糖、乳酸塩、蔗糖等)、窒素源
(例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化ア
ンモニウム等)を含む通常の培地を用いることができ
る。
随意に1種以上の成分で強化されたJap培地を適当な
培地として用いることができる。下記の組成のJap培地
を用いることができる。大豆粉(30g/)、硝酸ナトリ
ウム(7.5g/)、硫酸第一鉄・7H2O(0.28g/)、ク
エン酸ナトリウム(6g/)及び果糖(12.5g/)、pH
を7.2に調節。この培地は使用前に例えば120℃に於て20
分間滅菌しなければならない。
もう1つの好ましい培地は、随意に1種以上の成分で
強化されるTSB培地2xである。60g/トリプチケース大
豆肉汁を含む培地〔オキソイド(Oxoid )〕を用いる
ことができる。この培地は、使用前に、例えば120℃に
於て20分間滅菌しなければならない。もう1つの好まし
い培地は随意に1種以上の成分で強化された2xTYである
トリプトン〔ディフコ(Difco )〕30g/、酵母エキ
ス〔ディフコ(Difco )〕20g/、NaCl 3g/、(N
H42HPO4 1g/及び(NH42SO4 1g/からなりpH6.8
の培地を用いることができる。この培地は使用前に110
℃に於て30分間滅菌しなければならない。より好ましい
培地は随意に1種以上の成分で強化される脱脂乳培地で
ある。下記組成の脱脂乳培地を用いることができる。脱
脂粉乳からの10%脱脂乳。このものは使用前に例えば11
0℃に於て30分間滅菌しなければならない。
脱脂乳培地の強化は例えば0.5%乳酸塩又はPSIII塩又
はこれらの組み合わせであることができる。下記組成の
PSIII塩培地を用いることができる。燐酸2水素カリウ
ム(2.1g/)、燐酸1水素アンモニウム(1.0g/、硫
酸アンモニウム(0.9g/)、塩化カリウム(0.2g/
)、クエン酸ナトリウム(0.29g/)、硫酸カルシウ
ム・2H2O(0.005g/)、硫酸マグネシウム(0.2g/
)、硫酸第一鉄アンモニウム・6H2O(2.5mg/)、硫
酸亜鉛・7H2O(0.5mg/)、塩化マンガン・4H2O(0.3m
g/)、硫酸銅・5H2O(0.15mg/)、塩化コバルト・6
H2O(0.15mg/)、オルト硼酸(0.05mg/)、モリブ
デン酸ナトリウム・2H2O(0.055mg/)及びヨウ化カリ
ウム(0.1mg/)、pHを6.8に調節。このPSIII塩培地
は、使用前に例えば120℃に於て20分間滅菌しなければ
ならない。
微生物の増殖中、好ましくは0〜45℃の温度及び3.5
〜9のpHが保たれる。より好ましくは微生物は20〜37℃
の温度及び5〜9のpHで増殖される。
微生物の増殖中に必要な好気条件は、酸素の供給が微
生物の代謝要求を満足するのに十分であることを条件と
して、十分に確立された方法のいずれかによって与えら
れる。このことは、酸素を相応しくは空気の形で供給し
かつ随意に同時に反応液体を振盪又は撹拌することによ
って最も都合よく達成される。イブプロフェンエステル
のイブプロフェンへの加水分解中、微生物は上記通常培
地を用いる増殖期であることができ、あるいは酵素の分
解を抑制する任意の系(培地又は緩衝液)中に保存され
ることができる。
イブプロフェンエステルのイブプロフェンへの加水分
解中、所要時有機栄養源(例えば酵母エキス、麦芽エキ
ス、ペプトン、肉エキス等)及び所要時無機栄養源(例
えば燐酸塩マグネシウム、カリウム、亜鉛、鉄及び痕跡
量の他の金属)を与える物質と共に、所要時資化性炭素
源(例えばブドウ糖、乳酸塩、蔗糖等)、所要時窒素源
(例えば硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化ア
ンモニウム等)を含む通常の培地を用いることができ
る。
好ましくは、イブプロフェンエステルのイブプロフェ
ンへの加水分解中、随意に1種以上の成分で強化された
Jap培地(上文参照)を用いることができる。更に好ま
しくは随意に1種以上の成分で強化された脱脂乳培地
(上文参照)を用いることができる。
微生物は、例えば資化性炭素源の排除により、或いは
窒素源の排除によって非増殖期に保たれることができ
る。この加水分解期中、好ましくは0〜45℃の温度及び
3.5〜9のpHが保たれる。
加水分解期中において微生物は温度20〜30℃、pH5〜
8に保持されることが好ましい。この加水分解期中に必
要な好気条件は、酸素の供給が、微生物の代謝要求を満
たすのに十分であることを条件として、十分に確立され
た方法のいずれかによって与えられる。このことは、相
応しくは空気の形で酸素を供給し、かつ随意に、同時に
反応液体を振盪又は撹拌することによって最も都合よく
達成される。休止細胞によるイブプロフェンエステルの
イブプロフェンへの転化中、細胞加水分解物又は細胞か
ら誘導される酵素調製物(通常緩衝された水溶液)を用
いることができる。この酵素による転化中、水溶液は好
ましくは20〜40℃の温度及び7.0〜9.5のpHに保たれる。
より好ましくは、NaOH又はNH4OHのような塩基の添加に
よってpHは7.0〜9.5に保たれる。上記の通り微生物又は
微生物から誘導された物質によって生成したイブプロフ
ェンは該生成物のためのそれ自体公知の方法のいずれか
によって回収及び精製され得る。
微生物は寒天斜面上で保存、或いは50%グリセリン中
で凍結、又は凍結乾燥されることができる。所要なら
ば、十分に確立された方法のいずれかによってこれら微
生物の予備培養を行うことができ、例えば微生物をブイ
ヨン中又はBHI中で、回転振盪機上30℃に於て24時間イ
ンキュベートすることができる。下記組成:ラブ・レム
コL29(Lab Lemco L29)〔肉エキス、オキソイド(Oxoi
d )〕(9g/)、バクトペプトン(Bactopepton)(1
0g/)及び塩化ナトリウム(5g/)、pHを7.6に調節
のブイヨン培地を用いることができる。この培地は使用
前に例えば120℃に於て20分間、滅菌しなければならな
い。
pHを7.0に調節した0.037g BHI〔オキソイド(Oxoid
)〕を含むBHI(ブレーンハートインフュージョン)
培地を用いることができる。この培地は使用前に例えば
120℃に於て20分間滅菌しなければならない。
下記組成:バクトペプトン20g/、酵母エキス10g/
、ブドウ糖20g/のYEPD培地を用いることができる。
この培地は使用前に例えば110℃に於て30分間滅菌しな
ければならない。
本発明のもう1つの面は製剤学上受容可能な担体と共
に本発明によって得られたイブプロフェンを含む製剤組
成物を提供する。
〔実施例〕
以下、実施例によって本発明をさらに説明するがこれ
らの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
例1 下記第1表に挙げた微生物を25mlのBHI培地中で増殖
させ、100mlのフラスコ中で回転振盪機上30℃に於て24
時間保った。十分に増殖後、培養物を10%脱脂乳培地25
mlで10倍希釈し、イブプロフェンのR/Sメチルエステル
〔2−(4−イソブチル−1−フェニル)プロピオン酸
メチル〕20μを添加した。この培養物を再び24時間イ
ンキュベートした。
このインキュベーション期間後、培養物をH3PO4でpH
2.0の酸性にし、ジクロロメタンで抽出した。抽出物中
に存在するイブプロフェンを次に、その対掌体純度を測
定するためにナフタリン−メチルアミド誘導体に変え
た。
抽出物3mlに、ジメチルホルムアミド中に溶解したヨ
ウ化2−ブロモ−1−メチルピリジンの溶液(50mg/m
l)200μ及びCH2Cl2中に溶解した1−ナフタレン−メ
チルアミンの溶液(100mg/ml)200μを添加し、22℃
に於て5分間反応させた。反応混合物をN2下で60℃に於
て乾燥した。残留物をイソオクタン/CH2Cl2(2:1 v/v)
3mlに溶解し、1N H2SO4 2mlを添加した後抽出した。
有機層をキラル(Chiral)DNBPG(ジニトロベンゾイ
ルフェニルグリシン)カラムを用い、イソオクタン/イ
ソプロピルアルコール/メタノール(97/2/1 v/v)で溶
出するHPLCで分析した。
第1表に結果を示す。
例2 第2表に挙げた微生物を例1記載のようにして増殖さ
せた。例1記載のイブプロフェンのメチルエステルの代
わりにR/Sエチルエステル20μを添加した。
24時間のインキュベーション後、培養物を例1記載の
ように酸性にし、抽出しかつ生成したイブプロフェンを
誘導体にした。
下記第2表に結果を示す。
例3 R−イブプロフェンメチルエステルの対掌体特異的加水
分解の原因になる遺伝子の分子クローニング スタフィロコッカスアウレウスNap2−5(CBS340.8
7)の染色体DNA断片を含むプラスミド、pIBU1、を下記
のようにして構成させることができる。一般的クローニ
ング技術を用いるため、T.マナティス(T.Manatis)ら
のハンドブック(1982)、モレキュラークローニング
(Molecular Cloning)、コールドスプリング、ハーバ
ーラボラトリー(Cold Spring,Harbour Laboratory)を
参考文献として用いることができる。DNA修飾酵素を商
業的供給業者から得ることができ、かつメーカーの指示
に従って用いることができる。部分的にSau3Aで消化し
たスタフィロコッカスアウレウスNap2−5の全DNA(例
えば1〜5kbのサイズ分画)を、適当なクローニングベ
クター、例えばBc11で消化されたpUN121中に結合させる
ことができる〔ニルソン(Nilsson)ら、1983、ヌクレ
イックアシズ(Nucleic Acids)Res.11,p8019〕。このD
NA混合物をスタフィロコッカスアウレウスNap2−5の遺
伝子ライブラリーをつくるために、エシエリキアコリDH
I(ATCC33849)中へ形質転換させることができる。アン
ピシリン及びテトラサイクリン耐性表現型を有する形質
転換体を貯蔵しかつJ.P.ゲルゲン(J.P.Gergen)ら〔ヌ
クレイックアシズ研究(Nucleic Acids Res.)7、p.21
15、1979〕に従ってレプリカ−平板培養(replica−pla
ted)した。複製コロニー(replicated colonies)を本
質的に下記組成:低融点アガロース0.5%、0.5M燐酸カ
リウム(pH7.5)、酢酸β−ナフチル〔シグマ(Sigma)
から入手〕0.5mg/及びファスト・ブルー(fast−blu
e)〔シグマ(Sigma)から入手〕0.5mg/mlの軟質寒天重
層によってスクリーニングすることができる。数分以内
にエステラーゼ又はリパーゼ活性を有するコロニーは紫
色に着色する。選択されたコロニーを2xYT培地(バクト
トリプトン16g/、酵母エキス10g/、NaCl 5g/)で
一夜増殖させ、次にこれらコロニーの例1の方法(BHI
−培地の代りに2xYT培地を用いる)によるR−イブプロ
フェンメチルエステルを転化させる能力について試験し
得る。この試験によって、R−イブプロフェンに対して
特異的なエステラーゼをコードする遺伝子を担持する組
換えプラスミドを有するコロニーを単離することができ
る。
別法では、陽性コロニーが検出されない場合、遺伝子
ライブラリーを、エステラーゼのNH2末端アミノ酸配列
から設計されるオリゴヌクレオチドによるハイブリダイ
ゼーションによって、或いはエステラーゼに対する抗体
による免疫学的スクリーニングによって、スクリーニン
グすることができる。R−イブプロフェンエステラーゼ
をコードするプラスミドはpIBU-1と呼ばれる。次にエス
テラーゼ遺伝子を、エステラーゼの表現レベルを増強さ
せるために、適当な宿主中へ再クローニングさせること
ができる。このことは、Sau3AによるpIBU-1の部分的消
化とそれに続くSau3A断片含有エステラーゼのpUB110のB
AM M1部位中への結合によって達成される。組換えプラ
スミドはバチルス ズブチリス1A40〔バチルス ストッ
クセンター(Bacillus Stock Center)B.G.S.C.1A40〕
〔S.チャン及びS.N.コーエン(S.Chang and S.N.Cohe
n),Mol.Gen.Genet.168,p.111,1979〕又はバチルス・ズ
ブチリス1S−54〔バチルス ストック センターB.G.S.
C.1S−53〕(Rec.DNA Bull.4,p.1,1981)中へ形質転換
させることができる。ネオマイシン耐性形質転換体を、
例1の方法によるそのR−イブプロフェンメチルエステ
ル加水分解能について試験することができる。グラム陽
性菌であるスタフィロコッカス アウレウスから生ずる
遺伝子がグラム陽性バチルス・ズブチリス中で十分に表
現させることは公知である〔ジーン(Gene)48、p.93、
1986〕ので、エステラーゼをコードするプラスミドのマ
ルチコピー(multi−copy)特性はバチルス・ズブチリ
ス1A−40及びバチルス・ズブチリス1S−53中に於けるエ
ステラーゼの高度産生へ導くことが期待され得る。結
局、エステラーゼ遺伝子の強いバチルス プロモーター
への融合によって生産性を改良することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:445) (C12P 41/00 C12R 1:02) (C12P 41/00 C12R 1:07) (C12N 1/20 C12R 1:085) (C12N 1/20 C12R 1:445) (C12N 1/20 C12R 1:02) (C12N 1/20 C12R 1:07) (72)発明者 マウロ アッティリオ ベルトラ オランダ国 2624ペーイェー デルフト アー ヴァン シェルテマプレイン 91 (72)発明者 マリー ヨーセ デ スメット オランダ国 2803エーカー ハウダフル ーンホーヴェンウェッヒ 383 (72)発明者 アーサー フリートリッヒ マルクス オランダ国 2614ヘーエム デルフトエ フエル ナイチンゲールラーン 12 (72)発明者 ガレス トーマス フィリップス 英国 ケント シッティングボーン ザ フィンチェス 5 (56)参考文献 欧州公開195717(EP,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12P 41/00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イブプロフェンのエステルを、バチルス
    属、スタフィロコッカス属又はアセトバクテル属に属す
    る微生物又は該微生物由来の物質の作用にかけることを
    特徴とするR異性体に富んだイブプロフェンの製造方
    法。
  2. 【請求項2】主としてS配置を有する残留エステルから
    主としてR配置のイブプロフェンを分離する請求項
    (1)記載の方法。
  3. 【請求項3】主としてR配置のイブプロフェンを、それ
    自体公知の方法で、主としてR配置を有するイブプロフ
    ェンの塩又はエステルに変える請求項(2)記載の方
    法。
  4. 【請求項4】主としてS配置を有する残留エステルを加
    水分解してイブプロフェンを生成させかつ随意に、得ら
    れたイブプロフェンをそれ自体公知の方法でイブプロフ
    ェンの塩又はエステルに変える請求項(2)又は(3)
    記載の方法。
  5. 【請求項5】イブプロフェンのエステルがアルキルエス
    テルである前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】アルキル基が随意に置換され又は枝分かれ
    している請求項(5)記載の方法。
  7. 【請求項7】エステルがメチルエステル又はエチルエス
    テルである請求項(5)記載の方法。
  8. 【請求項8】イブプロフェンの少なくとも80重量%がR
    配置で生成される前記請求項のいずれか1項に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】微生物を固定された形で、生細胞、死菌細
    胞又は休止細胞として用いる前記請求項のいずれか1項
    に記載の方法。
  10. 【請求項10】イブプロフェンエステルを立体選択的に
    イブプロフェンに変える能力を有する物質が微生物から
    放出され、かつそのまゝで又は固定された形で用いられ
    る前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】用いられる微生物が、バチルスセレウス
    (Bacillus cereus)、好ましくはバチルスセレウス(A
    TCC 9139)、バチルスセレウス(Nap1−1(CBS338.8
    7)、バチルスセレウスNap2−1(CBS339.87)、バチル
    ス属の種(Bacillus species)4M(CBS342.87);スタ
    フィロコッカス・アウレウス、好ましくはスタフィロコ
    ッカスアウレウスNap2−5(CBS340.87)及びスタフィ
    ロコッカス・アウレウスNap3−8(CBS341.87);又は
    アセトバクテル・キシリヌム・パリッシュ(Acetobacte
    r Xylium L.Parish)(CBS343.87)である請求項(1)
    記載の方法。
  12. 【請求項12】バチルスセレウスNap1−1(CBS338.8
    7)、バチルスセレウス(Nap2−1(CBS339.87)、バチ
    ルス属の種Nap4M(CBS342.87)、スタフィロコッカス
    アウレウスNap2−5(CBS340.87)、スタフィロコッカ
    ス アウレウスNap3−8(CBS341.87)、アセトバクテ
    ル・キシリヌムL.パリッシュ(CBS343.87)或いはそれ
    らの突然変異株及び変異株からなる群から選ばれる、イ
    ブプロフェンのエステルからR異性体に富んだイブプロ
    フェンを産生することができる微生物。
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