JP5030067B2 - 新規アルカンポリオール脱水素酵素 - Google Patents

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Description

本発明は、新規アルカンポリオール脱水素酵素及びその利用方法に主に関する。
キラル化合物は、異性体によって生理活性が大きく異なる。そのため、特に医薬分野や農芸化学分野等において、キラル化合物の分析や開発、製造は必須のものとなっている。
キラル化合物の生産においては、光学的に活性な合成ユニットを出発原料として目的物に変換する方法が一般的である。キラル化合物の出発原料のうち、特に光学活性アルコールは、利用価値の高い化合物として着目されている。
光学活性アルコールの製造では、微生物や酵素を用いる方法が、高い立体特異性や温和な反応条件などから有望視され、これまでにも、高い立体選択性を有する酵素を用いて、光学活性アルコールを製造する方法が幾つか報告されてきた。
例えば、特許文献1には、ピキア・アンガスタ由来の(R)−2,3−ブタンジオール
脱水素酵素を用いて、(R)−2,3−ブタンジオールを製造する方法が記載されている。
また、特許文献2には、ピキア・オフナエンシス由来のR体特異的アルコール脱水素酵素を用いて、(R)-1,3-ブタンジオールを製造する方法が記載されている。
特開2002−125686号公報 特開2005−218349号公報
本発明は、新規アルカンポリオール脱水素酵素を提供すること及び当該酵素の利用方法を提供することを主な目的とする。
本発明の目的の一つは、当該酵素を利用した光学活性のアルコールの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的の一つは、当該酵素を利用したケトンの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的の一つは、当該酵素を利用したグリセロールを原料とする有用物質の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成することを主な目的として、アルカンポリオールに活性を有するタンパク質について、鋭意検討を行った。
その結果、ピキア・オフナエンシス(Pichia ofunaensis、旧名ハンゼヌラ・オフナエ
ンシスHansenula ofunaensis)由来のタンパク質が、アルカンポリオールに対し、優れた活性を有することを見出し、更に鋭意検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のタンパク質、ヌクレオチド、形質転換体、及び製造方法に関する。
項1:下記(1)〜(3)のいずれかに記載されるタンパク質:
(1)配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されているアミノ酸配列を有し、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質;
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列によって表され、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質。
好ましくは、アルカンポリオール脱水素酵素である項1に記載のタンパク質。
特に長鎖アルカンポリオール脱水素酵素である項1に記載のタンパク質。または、グリセロール脱水素酵素である項1に記載のタンパク質。
好ましくは、アルカンポリオール脱水素酵素活性が、炭素数5以上のアルカンポリオール脱水素酵素活性である項1に記載のタンパク質。
また、好ましくは、アルカンポリオール脱水素酵素活性が、隣接する水酸基を有するアルカンポリオール脱水素酵素活性である項1に記載のタンパク質。
項2:下記(a)〜(e)のいずれかに記載されるポリヌクレオチド:
(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換されているアミノ酸配列を有し、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(c)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(d)配列表の配列番号2に記載される塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(e)配列表の配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド。
好ましくは、アルカンポリオール脱水素酵素活性が、炭素数5以上のアルカンポリオール脱水素酵素活性である項1に記載のポリヌクレオチド。
項3:項2に記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクターを含む形質転換体。
項4:項3に記載の形質転換体を培養し、発現産物を回収する工程を含む項1に記載のタンパク質の製造方法。
項5:項1に記載のタンパク質をケトンに作用させる工程を有するアルコールの製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質をケトンに作用させて還元する工程、及び生成するアルコールを分離する工程を有する項5に記載の製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質を炭素数5以上のポリケトンに作用させて還元する工程、及び、生成したアルコールを分離する工程を有する項5に記載の製造方法。
項6:項1に記載のタンパク質をアルコールに作用させる工程を有するケトンの製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質をアルカンポリオールに作用させて酸化する工程、及び、生成するケトンを分離する工程を有する項6に記載の製造方法。
項7:項1に記載のタンパク質をプロキラルなケトンに作用させる工程を有する光学活性アルコールの製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質をプロキラルなケトンに作用させて還元する工程、及び、生成した光学活性アルコールを分離する工程を有する項7に記載の製造方法。
項8:項1に記載のタンパク質をラセミ体アルコールに作用させる工程、及び、生成するケトン体を分離する工程を有する光学活性アルコールの製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質をラセミ体アルコールに作用させてR配置のヒドロキシル基を有するアルコールを酸化する工程、及び、生成するケトンを分離する工程を有する項8に記載の製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質をラセミ体アルコールに作用させてR配置のヒドロキシル基を有するアルコールを酸化する工程、及び、S配置のヒドロキシル基を有する光学活性アルコールを単離する工程を有する項8に記載の製造方法。
項9:グリセロールに、項1に記載のタンパク質を作用させる工程を有するジヒドロキシアセトン又はその誘導体の製造方法。
好ましくは、項1に記載のタンパク質をグリセロールに作用させて酸化する工程、及び生成するジヒドロキシアセトンを単離する工程を有する項9に記載の製造方法。
項10:ケトンを還元してアルコールを製造するための項1に記載のタンパク質の使用。
好ましくは、プロキラルケトンを還元して光学活性アルコールを製造するための項10に記載の使用。
好ましくは、炭素数5以上のポリケトンを還元してアルコールを製造するための項10に記載の使用。
項11:アルカンポリオールを酸化してケトンを製造するための項1に記載のタンパク質の使用。
好ましくは、炭素数5以上のアルカンポリオールを酸化してケトンを製造するための項11に記載の使用。
項12:ラセミ体アルコールにおけるR配置のヒドロキシル基を有するアルコールを酸化して光学活性アルコールを製造するための請求項1に記載のタンパク質の使用。
好ましくは、ラセミ体アルコールにおけるR配置のヒドロキシル基を有するアルコールを酸化して生成するケトンを分離してS配置のヒドロキシル基を有するアルコールを製造するための項12に記載の使用。
項13:グリセロールを酸化してジヒドロキシアセトンを製造するための項1に記載のタンパク質の使用。
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
1.タンパク質
本発明は、下記(1)〜(3)のいずれかに記載されるタンパク質を提供する:
(1)配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換の少なくとも1つがなされているアミノ酸配列を有し、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質;
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列によって表され、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質。
配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における、アミノ酸残基の欠失、付加、挿入若しくは置換は、例えば、配列表の配列番号2で表される塩基配列を基に、部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res., 10,pp.6487 (1982) , Methods in Enzymol.,100,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) ,PCR A Practical Approach, IRL Press pp.200 (1991) )などの方法により、行うことができる。
配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列との80%以上の同一性を有するアミノ酸配列には、少なくとも80%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列が含まれる。
なお、本明細書において、80%以上の同一性とは、例えば、BLASTプログラム(J. Mol.Biol., 215, 403-410.(1990))を用いて計算した値を表す。
アミノ酸配列の同一性に関する検索は、例えばSWISS-PROT, PIR, DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベースや DDBJ、EMBL、あるいはGene-Bank(NCBI)などのDNA配列に関するデータベース、DNA配列を元にした予想アミノ酸配列に関するデータベースなどを対象に、BLAST, FASTAなどのプログラムを利用して行うことができる。
本明細書において、アルカンポリオール脱水素酵素活性とは、少なくとも下記(i)及び(ii)の性質を有していることをさす。
(i)作用:
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを補酵素として、ケトンを還元し、対応するアルコールを生成する。酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを補酵素としてアルコールを酸化し、対応するケトンを生成する。
(ii)基質特異性:
酸化反応の補酵素として酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを利用する。還元反応の補酵素として還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを利用する。
隣接する2以上の水酸基を有するアルカンポリオールを特異的に酸化し、対応するケトンを製造する。
また、以下の性質を有する場合を含む。
長鎖アルカンポリオールの(R)配置の水酸基を優先的に酸化し、対応するケトンを製造する。例えば、1,2-オクタンジオールの(R)配置の水酸基を優先的に酸化し、1-
ヒドロキシ-2-オクタノンを生成する。
また、隣接する2以上のカルボニル基を有するケトンを還元し、対応するアルコールを生成する。例えば、2,3-ペンタンジオン、2,3-へキサンジオン、3,4-へキサンジオンのような隣接するカルボニル基を有する長鎖ケトンを還元し、対応するアルコールを生成する。
ここで、本発明の作用及び特異性は、以下のような測定方法により、確認することができる。
還元活性
100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)中に、種々の濃度の基質、0.2mMNADH、及び酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの減少に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量と定義する。
酸化活性
100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)中に、種々の濃度の基質、2mMNAD+、及び酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義する。
上記のような性質を有することにより、本発明のタンパク質は、アルカンポリオール脱水素酵素として有用である。
特に、本発明のタンパク質は、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールのような、長鎖のアルカンポリオールに対して優れた脱水素活性を有する。
なお、本明細書において、長鎖のアルカンポリオールとは、炭素数5以上、特に6以上、更には7以上であり、特に5〜100、好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20の炭素数を有するアルコールであって、2以上の水酸基を有するアルコールを指す。
このような性質から、本発明のタンパク質は、特に長鎖アルカンポリオール脱水素酵素として有用である。
また、本発明の蛋白質は、隣接する2つの炭素原子にそれぞれ一つずつ水酸基を有するアルコール、即ちアルカン隣接ジオールに対して、優れた酸化活性(脱水素活性)を有する。
なお、本明細書においてアルカン隣接ジオールとは、隣接する炭素原子にそれぞれ存在する水酸基、即ち隣接する水酸基を有するアルコールを指す。アルカン隣接ジオールには、隣接する水酸基以外に1又は複数の水酸基を有するアルコールも含まれる。アルカン隣接ジオールは、換言すると、隣接する2つの水酸基を備えたアルカンポリオールともいえる。
アルカン隣接ジオールとしては、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の1位と2位の炭素原子に水酸基を有するアルカノール、また、1,2,4-ブタントリオールなどの1位と2位の炭素原子に水酸基を有し、さらに4位にも水酸基を有するアルカノールなどが挙げられる。
このような性質から、本発明のタンパク質は、隣接する水酸基を有するアルコールの脱水素酵素、換言するとアルカン隣接ジオール脱水素酵素などとしても有用である。
また、本発明のタンパク質は、特にグリセロールに対して優れた酸化活性を有しており、グリセロール脱水素酵素としても有用である。
また、本発明のタンパク質は、ジヒドロキシアセトン、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、ア
セトール、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンのようなケトンに対し、優れた還元活性を有し、特に炭素数5以上、更には6以上のケトンに対し、優れた活性を有する。
特に、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン等の隣接するカルボニル基を有するケトンに対して優れた還元活性を有する。
また特に長鎖ケトンに対する活性が優れている。なお、本明細書において長鎖のケトンとは、炭素数5以上、特に6以上、更には7以上であり、特に5〜100、好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20の炭素数を有するケトンを指す。
また特に本発明のタンパク質は、R配置の水酸基に対し、特異性を有する。特に、長鎖アルカンポリオールにおけるR配置の水酸基に対し、高い特異性を有する。
例えば、(R,S)-長鎖アルカン隣接ジオールに本発明のタンパク質を作用させる場合、(R)-長鎖アルカン隣接ジオールのみを選択的に酸化する。当該酸化により生成するケトンを分離することにより、(S)-長鎖アルカン隣接ジオールのみを高い光学純度で得ることができる。
分子量
本発明のタンパク質の分子量は、常法に従って、測定することができ、例えば、SDS−PAGEや、ゲルろ過クロマトグラフィーなどの方法で測定することができる。
例えば、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の場合、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で測定されるサブユニットの分子量は、39,000程度である。
また、ゲルろ過クロマトグラフィーで測定する場合、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質の分子量は58,000程度である。
タンパク質の製造方法
上記のような性質を有するタンパク質としては、例えば、メタノール資化性酵母ピキア・オフナエンシス(Pichia ofunaensis、旧名ハンゼヌラ・オフナエンシスHansenula ofunaensis)由来のタンパク質を挙げることができる。
ピキア・オフナエンシスとしては、例えば、ピキア・オフナエンシスCBS8129や、ピキ
ア・オフナエンシスAKU4328などを挙げることができる。
尚、ここで、ピキア・オフナエンシスとは、元々メタノール資化性酵母として単離されたもので、新種の菌としてハンゼヌラ・オフナエンシスと命名された菌株が再分類されて、ピキア・オフナエンシスとされたものである。当該微生物は、本件の基礎出願の日後に、更に再分類され、生物名が「ピキア・オフナエンシス(Pichia ofunaensis)」から「チゴアスカス・オフナエンシス(Zygoascus ofunaensis)」に修正されている。但し、本明細書では、基礎出願時点の名称を用いて、本菌株を記述している。
当該微生物は、YM培地(グルコース10g/L、ペプトン5g/L、酵母エキス3g/L、麦芽エキス3g/L、pH6.0)等の酵母の培養に用いられる一般的な培地で培養される。
当該微生物による本発明のタンパク質の生産は、炭素源としてグリセロールを利用することにより誘導することができる。例えば、基本培地A(塩化アンモニウム5g/L、リン酸2水素1カリウム1g/L、リン酸1水素2カリウム1g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.5g/L、塩化鉄(III)・6水和物30mg/L、塩化カルシウム・2水和物10mg/L、硫酸マンガン(II)・5水和物10mg/L、硫酸亜鉛・7水和物10mg/L、チアミン塩酸塩2mg/L及びビオチン20μg/L)に1%グルコースを添加した培地で前培養を行い、基本培地に1%グリセロールを含む誘導培地で本培養を行うことにより、本タンパク質の生産量を増やすことができる。このように、本発明のタンパク質の生産は、グリセロールを含む培地で好適に行われる。
十分に増殖させた後に菌体を回収し、緩衝液中で破砕して細胞抽出液とする。
細胞抽出液から、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)や、陽イオン交換、陰イオン交換、ゲルろ過又は疎水性クロマトグラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせることにより精製することができる。
例えば、細胞抽出液を、DEAE−セルロース陰イオン交換クロマトグラフィー、40%硫安分画、ブチル−トヨパール疎水クロマトグラフィー、スーパーデックス200ゲル濾過クロマトグラフィー等を経て電気泳動的に単一バンドにまで精製することで、精製タンパク質を得ることができる。
本発明のタンパク質は、上記方法で得られた精製タンパク質のアミノ酸配列を解析し、当該配列を基にプライマーを作成し、遺伝子のクローニングを行って、形質転換体により産生させることにより、得ることもできる。
例えば、上記方法によって得られた精製酵素を用いて、N末端アミノ酸配列、及びV8プロテアーゼによる部分消化を行って、内部配列の一部を解析する。解析されたアミノ酸配列を用いて、PCR用のプライマーを合成する;当該プライマーを用いて、ピキア・オフナエンシス由来の染色体DNAを鋳型としたPCRを行い、コア領域の増幅を行って、その塩基配列を解析し、コア配列を得る;
コア配列の5’−及び3’−周辺領域の塩基配列を、染色体DNAを制限酵素により消化した後、解析する。すなわち、5’−及び3’−周辺領域の塩基配列を、5’−及び/または3’−周辺領域をPCR法によりクローニングする当業者に周知の方法、例えば、TAKARA LA PCR in vitro Cloning Kit (タカラバイオ製)の方法を用いて決定する。より詳しくは、染色体DNAを制限酵素により消化した断片に、その制限酵素切断末端を持つプライマーカセットを連結したものを鋳型とし、コア領域に含まれる塩基配列から作成したプライマーおよびプライマーカセット内の配列からなるプライマーを用いてPCRを行い、(必要によりさらに内側のプライマーセットにより再度PCRを行い)、得られた断片を解析することにより5’−及び/または3’−側の塩基配列を得る方法である。;
得られた配列をコア領域の配列とアッセンブルして、酵素の全塩基配列を決定する;
決定した塩基配列を基に、酵素のオープンリーディングフレーム(ORF)のみを特異的に増幅可能なプライマーを合成し、大腸菌における発現ベクターpSE420D (特開2000-189170号公報参照)に挿入し、発現プラスミドpSE-HOGを構築する;
当該発現プラスミドを大腸菌に導入し、得られる形質転換体を適当な培地で培養し、発現産物を回収することにより、本発明のタンパク質を得ることができる。
また、本発明のタンパク質は、配列表の配列番号1のアミノ酸配列に基づき、適当なプライマーを作成し、遺伝子のクローニングを行って、形質転換体により産生させることもできる。
また、本発明のタンパク質は、配列表の配列番号1のアミノ酸配列の一部又は全部を、常法に従い、ペプチドシンセサイザー等を用いて化学的に合成することにより、得ることもできる。
2.ポリヌクレオチド
本発明は、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを提供する。
(a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(b)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸残基が欠失、付加、挿入若しくは置換の少なくとも1つがなされているアミノ酸配列からなり、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(c)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、アルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(d)配列表の配列番号2に記載される塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(e)配列表の配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつアルカンポリオール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド。
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号2に
記載中の任意の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば40、60または100個の連続した配列を一つまたは複数選択したDNAをプローブDNAとし、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system (Amersham Biosciences社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、wash:42℃、0.5x SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。
より具体的な「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1% SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC 、0.1% SDSの条件であり、さらに好ましくは、65℃、0.1×SSCおよび0.1% SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
本発明においてポリヌクレオチドには、DNAやRNA等の天然のポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体を含む人工的な分子も含まれる。またDNA−RNAのキメラ分子であることもできる。
本発明のポリヌクレオチドとしては、例えば、ピキア・オフナエンシスに由来するポリヌクレオチドが挙げられる。ピキア・オフナエンシスとしては、例えば、ピキア・オフナエンシスCBS8129や、ピキア・オフナエンシスAKU4328などが挙げられる。
尚、上述のように、ピキア・オフナエンシスについては、本件基礎出願の日後、再分類が行われている。配列表の配列番号1及び配列番号2に示す配列は、ピキア・オフナエンシス由来の酵素に関する情報(アクセッション番号AB257138)として日本DNAデータバンク(DDBJ)にエントリーされ、平成18年4月14日に公開された。しかし、その後、Taxonomyを管理するGenBankでの 記載が修正になり、当該エントリーの生物名は、2007年1月に「organism="Pichia ofunaensis"」から「/note="synonym: Pichia ofunaensis"/organism="Zygoascus ofunaensis"」へ修正が行われた。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2に記載の塩基配列に基づきPCR用のプライマーを設計し、例えば、ピキア・オフナエンシス由来の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行うことにより、得ることができる。
また、本発明のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号2で表される塩基配列の全部又は一部を、ホスファイト トリエステル法 (Nature, 310,105 (1984))等の常法に従って、或いはDNA シンセサイザー等を用いて、合成する方法により取得することもできる。
本発明のポリヌクレオチドを、発現ベクターに導入し、形質転換体を作成して発現産物を回収することにより、上記本発明のタンパク質を大量に安定して取得することが可能である。
3.形質転換体
本発明は、上記ポリヌクレオチドを含有する組み換えベクターを含む形質転換体を提供する。
上記2.に記載した本発明のポリヌクレオチドを、発現ベクターに挿入して組み換えベクターを作成し、当該組み換えベクターを適当な宿主に組み込むことにより、本発明の形質転換体を得ることができる。
発現ベクター及び宿主の種類は、本発明のポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現することができるものであれば特に制限はない。
利用可能な宿主としては、例えば以下のような微生物を示すことができる。
・エシェリヒア(Escherichia)属
・バチルス(Bacillus)属
・シュードモナス(Pseudomonas)属
・セラチア(Serratia)属
・ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属
・コリネバクテリウム(Corynebacterium)属
・ストレプトコッカス(Streptococcus)属
・ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系の開発されている細菌
・ロドコッカス(Rhodococcus)属
・ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター系の開発されている放線菌
・サッカロマイセス(Saccharomyces)属
・クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
・シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属
・チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属
・ヤロウイア(Yarrowia)属
・トリコスポロン(Trichosporon)属
・ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属
・ピキア(Pichia)属
・キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母
・ノイロスポラ(Neurospora)属
・アスペルギルス(Aspergillus)属
・セファロスポリウム(Cephalosporium)属
・トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビ
また、発現ベクターの種類は、宿主との組合せ等を考慮し、公知のものから適宜選択することができる。
組換えベクターの構築は、慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratories)。
微生物中などにおいて、本発明のタンパク質を発現させるためには、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクター中にこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのため、適当なプロモーターやターミネーターを組み込むことができる。このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主として利用する微生物中において機能することが知られているプロモーター、ターミネーターを適宜用いることができる。
利用可能なベクター、プロモーター及びターミネータ−に関しては、「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng., 43, 75-102 (1990)、Yeast, 8, 423-488 (1992)、などに記載されているものを挙げることができる。
例えばエシェリヒア属、特に大腸菌エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、PRなどに由来するプロモーターなどが利用できる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを用いることができる。
これらの中で、市販のpSE420(Invitrogen製)のマルチクローニングサイトを一部改変した共発現用ベクターpSE420D(特開2000-189170号公報に記載)が好適に利用できる。
バチルス属においては、ベクターとしてpUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなど
が利用可能であり、染色体にインテグレートすることもできる。また、プロモーター及び/又はターミネーターとしてapr(アルカリプロテアーゼ遺伝子)、npr(中性プロテアーゼ遺伝子)、amy(α−アミラーゼ遺伝子)などが利用できる。
シュードモナス属においては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia、現在名 Burkholderia cepacia)などで宿主ベクター系が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター及び/又はターミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973号公報)遺伝子などが利用できる。
ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、pAJ43(Gene, 39, 281 (1985))などのプラスミドベクターが利用可能である。プロモーター及び/又はターミネーターとしては、大腸菌で使用されているプロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能である。
コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen. Genet., 196, 175 (1984))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属においては、pHV1301(FEMS Microbiol. Lett., 26, 239 (1985)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol., 50, 94 (1985))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
ラクトバチルス(Lactobacillus)属においては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J. Bacteriol., 137, 614 (1979))などが利用可能であり、プロモーターとして
大腸菌で利用されているものが利用可能である。
ロドコッカス(Rhodococcus)属においては、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能である (J. Gen. Microbiol., 138,1003 (1992) )。
ストレプトマイセス(Streptomyces)属においては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Streptomyces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486 (Mol. Gen. Genet., 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gene, 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene, 165,149-150 (1995) )が使用できる。また、ストレプトマイセス・バージニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11, 46-53 (1997) )。
サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在するリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグレーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
クライベロマイセス属、特にクライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)においては、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラスミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol., 145, 382-390 (1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミド
、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えにより染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミド(EP 537456など)などが利用可能である。また、ADH、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが利用可能である。
シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、シゾサッカロマイセス・
ポンベ由来のARS (自律複製に関与する遺伝子)およびサッカロマイセス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マーカーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol. Cell. Biol., 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用できる(EMBO J., 6, 729 (1987))。
チゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)においては、チゴサッカロマイセス・ロ
ウキシ(Zygosaccharomyces rouxii)由来のpSB3(Nucleic Acids Res., 13, 4267 (1985)
)などに由来するプラスミドベクターが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ由来PHO5 プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem., 54, 2521 (1990))などが利用可能である。
ピキア(Pichia)属においては、ピキア・アンガスタ(旧名:ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha))において宿主ベクター系が開発されている。ベクターとしては、ピキア・アンガスタ由来自律複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であるが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーインテグレーションが有効である(Yeast, 7, 431-443 (1991))。また、メタノールなどで誘導されるAOX(アルコールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモーターなどが利用可能である。また、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製に関与する遺伝子 (PARS1、 PARS2)などを利用した宿主ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol., 5, 3376 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能なAOXなど強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids Res,. 15, 3859 (1987))。
キャンディダ(Candida)属においては、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ・トロピカリス(Candida
tropicalis)、キャンディダ・ウチルス(Candida utilis)などにおいて宿主ベクター系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおいてはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニングされ(Agri. Biol. Chem., 51, 1587 (1987))、これを利用したベクターが開発されている。また、キャンディダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイプのベクターは強力なプロモーターが開発されている(特開平 08-173170)。
アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) などがカビの中で最もよく研
究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trends in Biotechnology, 7, 283-287 (1989))。
トリコデルマ(Trichoderma)属においては、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnology, 7, 596-603 (1989))。
また、微生物以外に、植物、動物などの異種タンパク質を発現させる系を利用することもできる。例えば、植物細胞や動物細胞などを宿主として利用することもできる。
上記のように、発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養して、発現産物を回収することにより、本発明のタンパク質を取得することができる。
発現産物を回収する方法は、公知の方法に従って行うことができる。
例えば、宿主が菌体外にタンパク質を分泌する場合は、培養物を遠心分離し、培養上清を得、得られた培養上清を粗タンパク質溶液として得ることができる。
また、菌体外に分泌されない場合には、超音波破砕などによって菌体を破砕し、遠心分離を行って、粗タンパク質溶液を得ることができる。
粗タンパク質溶液から、タンパク質の単離精製を行う方法も、常法に従って行うことができる。
具体的には、硫酸アンモニウムを用いた塩析、電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、透析法、疎水クロマトグラフィー、又はこれらの組合せ等を用いることができる。
4.アルコールの製造方法
本発明によれば、本発明のタンパク質を、ケトンに作用させて、アルコールを製造する方法が提供される。
本発明のタンパク質、換言するとアルカンポリオール脱水素酵素は、ケトンに対して高い還元活性を有する。このような性質から、本発明の酵素をケトンに作用させた場合には、対応したアルコールが生成する。
ケトンの種類は、本発明のタンパク質の活性が奏される範囲内であれば特に限定されないが、本発明のタンパク質は、特に長鎖のケトンに対して、高い還元活性を有する。
長鎖のケトンとしては、炭素数5以上100以下、特に6以上100以下、好ましくは5〜30、より好ましくは5〜20の炭素数を有するケトンを挙げることができる。
ケトンは、低級アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、アミノ基などで置換されているものであっても良い。
また、本発明の酵素は、隣接するカルボニル基を有するケトンに対して、特に高い還元活性を有する。なお、本明細書において隣接するカルボニル基を有するケトンとは、隣接する炭素原子にそれぞれ存在するカルボニル基、即ち隣接カルボニル基を有するケトンを指す。隣接するカルボニル基を有するケトンは、隣接カルボニル基以外に1又は複数のカルボニル基や水酸基を有するものであってもよい。
隣接するカルボニル基を有するケトンとしては、例えば2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンなどのアルカノンなどを挙げることができる。
隣接するカルボニル基を有するケトンは、還元されて光学活性アルコールになるもの、即ち、プロキラルなケトンに該当するものが多く含まれるが、本発明の酵素はプロキラルなケトンに作用してR体のアルコールを優先的に生成する。
例えば、プロキラルなケトンとして2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンなどに、本発明のタンパク質を作用させる場合、対応する(R)-2,3-ペンタンジオール、(R)-2,3-ヘキサンジオール、(R)-3,4-ヘキサンジオールなどを合成できる。
本発明のタンパク質をケトンに作用させる方法は特に限定されず、発現産物の形で作用させてもよい。例えば、本発明のタンパク質を発現する形質転換体、具体的には、本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換させた形質転換体をケトンに作用させてもよい。
形質転換体は、本発明のタンパク質を機能的に発現させるものであればよく、例えば、配列番号1に記載のタンパク質を発現する形質転換体、例えば、pSE-HOGで形質転換された大腸菌を作用させてもよい。
また、形質転換体は、本発明の酵素に加えて、NADHを再生する酵素、例えばグルコース脱水素酵素もしくはギ酸脱水素酵素を共発現するものであってもよい。
また、形質転換体は、適当な処理を加えたものであってもよい。形質転換体の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したもの、精製酵素、形質転換体や酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物などが含まれる。
また、本発明のタンパク質を生産する菌体をケトンに作用させてもよい。
本発明のタンパク質を反応させる工程は、水または有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒中で行うことできる。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-へキサンなどを挙げることができる。
また、上記工程は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
また、上記工程の反応温度は5〜50℃、好ましくは5〜35℃で行うことができる。pHは通常4〜8、好ましくは5〜7である。
基質濃度は、0.01〜90%、好ましくは0.1〜30%で行うことができる。また、酵素濃度は
通常0.01〜10 unit/ml、好ましくは0.1〜5 unit/ml程度である。
基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。
反応系には必要に応じて補酵素NADHを0.1〜20mM程度、好ましくは、1〜10mM程度添加できる。
上記反応に付随してNADHから生成するNADは、微生物の持つNAD還元能(解糖系、メチロトローフのC1化合物資化経路など)を用いて、NADHに再生することができる。
例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などを含む微生物、その処理物、ならびに部分精製もしくは精製酵素を用いてNADHの再生を行うことができる。
これらのNADH再生に必要な反応を構成する成分は、本発明によるアルコールの製造のための反応系に添加したりすることができる。
本方法において、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換した微生物の生菌体を、アルコールの製造方法に利用する場合には、NADH再生のための付加的な反応系を不要とできる場合がある。すなわち、NADH再生活性の高い微生物を宿主として用いることにより、形質転換体を用いた還元反応において、NADH再生用の酵素を添加することなく効率的な反応が行うことができる。
さらに、NADH再生に利用可能なグルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などの遺伝子を、本発明のアルカンポリオール脱水素酵素をコードするDNAと同時に宿主に導入することによって、より効率的なNADH再生酵素とNAD依存性R体特異的アルコール脱水素酵素の発現、還元反応を行うことも可能である。これらの2つもしくはそれ以上の遺伝子の宿主への導入には、不和合性を避けるために複製起源のことなる複数のベクターに別々に遺伝子を導入した組換えベクターにより宿主を形質転換する方法や、単一のベクターに両遺伝子を導入する方法、両方、もしくは、片方の遺伝子を染色体中に導入する方法などを利用することができる。
単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター、ターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
例えば、NADH再生用酵素として、バシラス(Bacillus)属、シュードモナス (Pseudomonas)属、サーモプラズマ(Thermoplasma)属などに由来するグルコース脱水素酵素が利用可能であり、具体的には、バシラス・サブチリス由来のグルコース脱水素酵素の遺伝子を導入した組換えベクターなどが好適に利用される。また、NADH再生用酵素としてマイコバクテリウム属に由来するギ酸脱水素酵素を利用可能であり、具体的には、マイコバクテリウム・バッカエ由来のギ酸脱水素酵素の遺伝子を導入した組換えベクターなどが好適に利用される。
アルコールの精製は、常法に従って行うことができる。例えば、菌体、タンパク質の遠心分離、膜処理などによる分離、溶媒抽出、蒸留、晶析などを1以上組み合わせることにより行うことができる。
5.ケトンの製造方法
本発明によれば、本発明のタンパク質を、アルコールに作用させて、ケトンを製造する方法が提供される。
一般的にケトンは反応性が高いため、種々の化合物の中間体として用いられる。特に、プロキラルなケトンは、光学活性アルコールの原料等として用いることができ、一般にラセミアルコールよりも高価である。本発明の方法を用いれば、プロキラルなケトン体を安価なアルコールから製造することができる。
アルコールの種類は特に限定されないが、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。本発明のタンパク質を、それらのアルコールに作用させると、対応するケトンとして、アセトール、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、アセトインが得られる。
特に、本発明の方法は、R配置の水酸基を有するアルコールから優先的にケトンを製造する方法として利用できる。また特に、本発明の方法は、隣接する2以上の水酸基を有するアルコールから優先的にケトンを製造する方法として利用できる。
アルコールに、本発明のタンパク質を作用させると、S体と比較してR体のアルコールが優先的に脱水素されて対応するケトン体となる。分離したケトンを還元することにより、R体のアルコールのみを選択的に取得することが可能になる。
例えば、ラセミアルコールに、本発明のタンパク質を作用させると、S体と比較してR体のアルコールが優先的に脱水素されて対応するケトンとなる。生成したケトンは、R体のアルコールを還元により生成するプロキラルなケトンとなり得る。即ち、本発明のケトンの製造方法は、プロキラルなケトンの製造方法としても有用である。
本発明のタンパク質をアルコールに作用させる方法は特に限定されず、発現産物の形で作用させてもよい。例えば、本発明のタンパク質を発現する形質転換体、具体的には、本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換させた形質転換体をケトンに作用させてもよい。より具体的な例を挙げれば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を発現する形質転換体、例えば、pSE-HOGで形質転換された大腸菌を作用させてもよい。
形質転換体は、本発明のタンパク質を機能的に発現させるものであればよく、また、形質転換体は、本発明のタンパク質に加えて、NADを再生する酵素、例えば乳酸脱水素酵素を共発現するものであってもよい。
また、形質転換体は、適当な処理を加えたものであってもよい。形質転換体の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したもの、精製酵素、形質転換体や酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物などが含まれる。また、本発明のタンパク質を生産する菌体をケトンに作用させてもよい。
上記本発明のタンパク質を作用させる工程は、水または有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒中で行うことできる。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-へキサンなどを挙げることができる。
また、上記工程は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
また、上記工程の反応温度は5〜50℃、好ましくは5〜35℃で行うことができる。pHは通常7〜9、好ましくは8〜9程度である。
基質濃度は、0.01〜90%、好ましくは0.1〜30%で行うことができる。また、酵素濃度は
通常0.01〜10 unit/ml、好ましくは0.1〜5 unit/ml程度である。
基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。
反応系には必要に応じて補酵素NADを0.1〜20mM程度、好ましくは、1〜10mM程度添加できる。
上記酸化反応に付随して生成するNADHは、微生物の有するNADHからNAD+を再生する能力によりNAD+を再生することができる。
また、乳酸脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、NADH脱水素酵素、NADHオキシダーゼなどのNADHをNAD+に酸化する活性を有する酵素もしくは、これら酵素を含有する微生物、もしくは、その処理物を反応系に添加することにより、NAD+を再生することもできる。
また、これらのNADHからNADを生成する酵素を本発明の酵素と同時に発現する形質転換体を調製することにより、効率的にNAD再生反応と立体選択的な酸化反応を行うこともできる。
本発明の方法には、生成するケトンを精製する工程を適宜加えることもできる。
ケトンの精製は、常法に従って行うことができ、例えば、遠心分離、膜処理などによる分離、溶媒抽出、蒸留、晶析などを適当に組み合わせることにより行うことができる。
6.光学活性アルコールの製造方法
本発明のタンパク質、換言するとアルカンポリオール脱水素酵素は、隣接する水酸基を有するアルコールに対して、特に高い酸化活性を示す。隣接する水酸基を有するアルコールには、光学活性アルコールに該当するものが多く含まれるが、本発明のタンパク質は特にR配置の水酸基に対し、優先的に反応する。
また、本発明の酵素は、隣接するカルボニル基を有するケトンに対して、特に高い還元活性を有する。隣接するカルボニル基を有するケトンは、還元されて光学活性アルコールになるもの、即ち、プロキラルなケトンに該当するものが多く含まれるが、本発明の酵素はプロキラルなケトンに作用してR体のアルコールを優先的に生成する。
従って、本発明のアルカンポリオール脱水素酵素は、光学活性アルコールの製造方法において、有用に利用できる。
(6−1).プロキラルなケトンの還元
本発明によれば、本発明のタンパク質をプロキラルなケトンに作用させる工程を有する光学活性アルコールの製造方法が提供される。
プロキラルなケトンとしては、2-ペンタノン、3-ヘキサノン、3-ヒドロキシ-2-ブタノ
ン、アセトール、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンなどを挙げることができる。
また、プロキラルなケトンには、以下の一般式で表されるものが含まれる:
R―C(=O)−R
ケトン体は、低級アルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、アルコキシ基で置換されても良い。尚、本明細書では、ケトンをケトン体とも称する。
このうち、特に隣接するカルボニル基を有するもの、例えば2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンに対し、優れた活性を有する。
プロキラルなケトンに、本発明の酵素を作用させた場合には、それぞれの基質に対応した光学活性アルコールが生成する。
例えば、プロキラルなケトンとして2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンなどに、本発明のタンパク質を作用させる場合、対応する(R)-2,3-ペンタンジオール、(R)-2,3-ヘキサンジオール、(R)-3,4-ヘキサンジオールなどを合成できる。
本発明のタンパク質をケトンに作用させる方法は特に限定されず、発現産物の形で作用させてもよい。例えば、本発明のタンパク質を発現する形質転換体、具体的には、本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換させた形質転換体をケトンに作用させてもよい。
形質転換体は、本発明のタンパク質を機能的に発現させるものであればよく、例えば、配列番号1に記載のタンパク質を発現する形質転換体、例えば、pSE-HOGで形質転換された大腸菌を作用させてもよい。
また、形質転換体は、本発明の酵素に加えて、NADHを再生する酵素、例えばグルコース脱水素酵素もしくはギ酸脱水素酵素を共発現するものであってもよい。
また、形質転換体は、適当な処理を加えたものであってもよい。形質転換体の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したもの、精製酵素、形質転換体や酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物などが含まれる。
また、本発明のタンパク質を生産する菌体をケトンに作用させてもよい。
本発明のタンパク質を反応させる工程は、水または有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒中で行うことできる。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-へキサンなどを挙げることができる。
また、上記工程は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
また、上記工程の反応温度は5〜50℃、好ましくは5〜35℃で行うことができる。pHは通常5〜8、好ましくは6〜7である。
基質濃度は、0.01〜90%、好ましくは0.1〜30%で行うことができる。また、酵素濃度は
通常0.01〜10 unit/ml、好ましくは0.1〜5 unit/ml程度である。
基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。
反応系には必要に応じて補酵素NADHを0.1〜20mM程度、好ましくは、1〜10mM程度添加できる。
上記反応に付随してNADHから生成するNADは、微生物の持つNAD還元能(解糖系、メチロトローフのC1化合物資化経路など)を用いて、NADHに再生することができる。
例えば、グルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などを含む微生物、その処理物、ならびに部分精製もしくは精製酵素を用いてNADHの再生を行うことができる。
これらのNADH再生に必要な反応を構成する成分は、本発明による光学活性アルコールの製造のための反応系に添加したりすることができる。
本方法において、本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクターで形質転換した微生物の生菌体を、前記光学活性アルコールの製造方法に利用する場合には、NADH再生のための付加的な反応系を不要とできる場合がある。すなわち、NADH再生活性の高い微生物を宿主として用いることにより、形質転換体を用いた還元反応において、NADH再生用の酵素を添加することなく効率的な反応が行える。
さらに、NADH再生に利用可能なグルコース脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などの遺伝子を、本発明のNAD依存性R体特異的アルコール脱水素酵素をコードするDNAと同時に宿主に導入することによって、より効率的なNADH再生酵素とNAD依存性R体特異的アルコール脱水素酵素の発現、還元反応を行うことも可能である。これらの2つもしくはそれ以上の遺伝子の宿主への導入には、不和合性を避けるために複製起源のことなる複数のベクターに別々に遺伝子を導入した組換えベクターにより宿主を形質転換する方法や、単一のベクターに両遺伝子を導入する方法、両方、もしくは、片方の遺伝子を染色体中に導入する方法などを利用することができる。
単一のベクター中に複数の遺伝子を導入する場合には、プロモーター、ターミネーターなど発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラクトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペロンとして発現させることも可能である。
例えば、NADH再生用酵素として、バシラス(Bacillus)属、シュードモナス (Pseudomonas)属、サーモプラズマ(Thermoplasma)属などに由来するグルコース脱水素酵素が利用可能であり、具体的には、バシラス・サブチリス由来のグルコース脱水素酵素の遺伝子を導入した組換えベクターなどが好適に利用される。また、NADH再生用酵素としてマイコバクテリウム属に由来するギ酸脱水素酵素を利用可能であり、具体的には、マイコバクテリウム・バッカエ由来のギ酸脱水素酵素の遺伝子を導入した組換えベクターなどが好適に利用される。
(6−2)ラセミ体アルコールの立体選択的酸化による方法
本発明によれば、本発明のタンパク質を、ラセミ体アルコールに作用させて、立体的酸化により、光学活性アルコールを製造する方法が提供される。
ラセミ体アルコールとしては、隣接する水酸基を有するアルカンジオール、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどのラセミ体を挙げることができる。
このうち、特に長鎖アルカンジオール、例えば1,2−オクタンジオールに対し、優れた活性と立体選択性を有する。
ラセミ体アルコールに、本発明のタンパク質を作用させた場合には、S体と比較してR体のアルコールが特異的に脱水素されて対応するケトン体となる。当該ケトン体を分離することにより、S体のアルコールを選択的に取得することができる。また、分離したケトンを還元することにより、R体のみを選択的に取得することもできる。
例えば、(R,S)−1、2−オクタンジオールに、本発明のタンパク質又は形質転換体を作用させた場合、(R)−1、2−オクタンジオールのみが選択的に酸化されて、1−ヒドロキシ−2−オクタノンとなる。1−ヒドロキシ−2−オクタノンを分離することにより、(S)−1、2―オクタンジオールを高い純度で製造することができる。
本発明のタンパク質をラセミ体アルコールに作用させる方法は特に限定されず、発現産物の形で作用させてもよい。例えば、本発明のタンパク質を発現する形質転換体、具体的には、本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換させた形質転換体をケトンに作用させてもよい。より具体的な例を挙げれば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質を発現する形質転換体、例えば、pSE-HOGで形質転換された大腸菌を作用させてもよい。
形質転換体は、本発明のタンパク質を機能的に発現させるものであればよく、また、形質転換体は、本発明のタンパク質に加えて、NADを再生する酵素、例えば乳酸脱水素酵素を共発現するものであってもよい。
また、形質転換体は、適当な処理を加えたものであってもよい。形質転換体の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したもの、精製酵素、形質転換体や酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物などが含まれる。また、本発明のタンパク質を生産する菌体をケトンに作用させてもよい。
上記本発明のタンパク質を反応させる工程は、水または有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-へキサンなどを挙げることができる。
また、上記工程は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
また、上記工程の反応温度は5〜50℃、好ましくは5〜35℃で行うことができる。pHは通常7〜9、好ましくは8〜9程度である。
基質濃度は、0.01〜90%、好ましくは0.1〜30%で行うことができる。また、酵素濃度は
通常0.01〜10 unit/ml、好ましくは0.1〜5 unit/ml程度である。
基質は反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。
反応系には必要に応じて補酵素NADを0.1〜20mM程度、好ましくは、1〜10mM程度添加できる。
上記酸化反応に付随して生成するNADHは、微生物の有するNADHからNAD+を再生する能力によりNAD+を再生することができる。
また、乳酸脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、NADH脱水素酵素、NADHオキシダーゼなどのNADHをNAD+に酸化する活性を有する酵素もしくは、これら酵素を含有する微生物、もしくは、その処理物を反応系に添加することにより、NAD+を再生することもできる。
また、これらのNADHからNADを生成する酵素を本発明の酵素と同時に発現する形質転換体を調製することにより、効率的にNAD再生反応と立体選択的な酸化反応を行うこともできる。
6−3)光学活性アルコールの精製
上記(6−1)又は(6−2)に記載の方法には、光学活性アルコールの精製工程を適宜含めることができる。
光学活性アルコールの精製は、菌体、タンパク質の遠心分離、膜処理などによる分離、溶媒抽出、蒸留、晶析などを適当に組み合わせることにより行うことができる。
例えば、形質転換体を含む反応液を遠心分離し、微生物菌体を除いた後、限外濾過膜により菌体残渣、タンパク質を除去し、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、ヘキサン、ベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルターシャリーブチルエーテル、ブタノールなどで抽出し、これを減圧濃縮することにより、もしくは、直接蒸留することにより、光学活性アルコールとして、採取することができる。
さらに反応生成物の純度を上げるには、精密蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを行うことにより、さらに高度に精製することができる。
尚、本発明の方法により得られる光学活性なアルコールの光学純度は、好ましくは80%ee以上、さらに好ましくは90%ee以上、特に好ましくは98%ee以上である。
ここで、光学純度とは、下記の方法により求めた数値を意味する。
光学純度=(R−S/R+S)または(S−R/R+S)×100(%)
(R、Sはそれぞれ試料中にしめる右形および左形鏡像体の割合を示す。)
7.グリセロールからの有用物質の製造方法
本発明のタンパク質、換言するとアルカンポリオール脱水素酵素は、グリセロールの脱水素酵素としても優れている。
本発明のグリセロール脱水素酵素は、例えば、ピキア・オフナエンシス(Pichia ofunaensis、旧名ハンゼヌラ・オフナエンシスHansenula ofunaensis)においてグリセロールにより誘導される。微生物のグリセロール資化の第一反応はグリセロールキナーゼによるリン酸化がほとんどであり、グリセロール脱水素酵素による酸化を用いている例は極めて珍しい。この特徴により、ピキア・オフナエンシス(Pichia ofunaensis、旧名ハンゼヌラ・オフナエンシスHansenula ofunaensis)等に由来する本酵素は、極めて高いグリセロール脱水素能を有する。
グリセロールは、安価で入手容易な材料として広く利用されている。このように安価なグリセロールを基質として生育し、しかも酸化によりグリセロール資化を行うピキア・オフナエンシス由来の本発明のグリセロール脱水素酵素を用いれば、グリセロールから誘導可能な付加価値の高い物質を、効率よく安価に生産し得る。
また、本発明のグリセロール脱水素酵素は、グリセロール又はその誘導体を基質とする酵素測定法等において測定用酵素や測定キットの構成成分として利用することもできる。
例えば血清脂質中のトリアシルグリセロールを加水分解し、生成するグリセロール量を本発明のグリセロール脱水素酵素により測定することができ、トリアシルグリセロール定量用酵素として用いることができる。
また、例えば、グリセロール−3−リン酸を基質としてアルカリフォスファターゼを作用させ、遊離するグリセロール量を本発明のグリセロール脱水素酵素により測定することができ、アルカリフォスファターゼ活性測定用酵素として利用することもできる。
本発明によれば、グリセロールに、本発明のタンパク質を作用させる工程を有する、ジヒドロキシアセトン又はその誘導体の製造方法を提供する。
本発明のタンパク質をグリセロールに作用させる方法は特に限定されず、発現産物の形で作用させてもよい。例えば、本発明のタンパク質を発現する形質転換体、具体的には、本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換させた形質転換体を、グリセロールに作用させてもよい。
形質転換体は、本発明のタンパク質を機能的に発現させるものであればよく、例えば、配列番号1に記載のタンパク質を発現する形質転換体、例えば、pSE-HOGで形質転換された大腸菌を作用させてもよい。
また、形質転換体は、本発明のタンパク質に加えて、NADを再生する酵素、例えば乳酸脱水素酵素、グルコース脱水素酵素もしくはギ酸脱水素酵素を共発現するものであってもよい。
また、形質転換体は、適当な処理を加えたものであってもよい。形質転換体の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、凍結乾燥やスプレードライなどにより調製した乾燥菌体、あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したもの、精製酵素、形質転換体や酵素を固定化した固定化酵素、固定化微生物などが含まれる。
また、本発明のタンパク質を生産する菌体をグリセロールに作用させてもよい。
上記本発明のタンパク質を作用させる工程は、水または有機溶媒若しくはこれらの混合溶媒中で行うことできる。有機溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n-へキサンなどを挙げることができる。
また、上記工程は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
また、上記工程の反応温度は5〜50℃、好ましくは5〜35℃で行うことができる。pHは通常7〜9、好ましくは8〜9程度である。
基質濃度は、0.01〜90%、好ましくは0.1〜30%で行うことができる。また、酵素濃度は
通常0.01〜10 unit/ml、好ましくは0.1〜5 unit/ml程度である。
グリセロールは反応開始時に一括して添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添加することが望ましい。
反応系には必要に応じて補酵素NADを0.1〜20mM程度、好ましくは、1〜10mM程度添加できる。
本発明のタンパク質は、グリセロールに対し、優れた酸化活性を有しており、対応するジヒドロキシアセトンを効率良く生成する。
ジヒドロキシアセトンは皮膚がんの危険性により紫外線による日焼けが好ましくない白色人種等を中心とし、日焼けの替わりに皮膚を健康的な色に染める皮膚着色用化粧品に汎用されている化合物であり、安全性も米国FDAにより認められている。
ジヒドロキシアセトンは、安価なグリセロールに本発明のグリセロール脱水素酵素を作用させたときに得られる唯一の反応産物であるため、本発明により、有用なジヒドロキシアセトンを安価に大量に提供できる。
また、ジヒドロキシアセトンは、更に公知の反応を行って、他の物質に誘導することもできる。
ジヒドロキシアセトンから誘導される物質には、例えば、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒド3−リン酸、更にはTCAサイクルにおけるコハク酸、フマル酸、リ
ンゴ酸、更にはアスパラギン酸などが含まれる。
本発明のタンパク質によれば、グリセロールの酸化が効率よく進行するため、ジヒドロキシアセトン又はその誘導体を、安価に効率よく生産することが可能になる。
本発明は、優れたアルカンポリオール脱水素活性を有するタンパク質、及びその利用方法を提供する。
本発明のタンパク質は、優れたアルカンポリオール脱水素活性を有する。
特に、長鎖のアルカンポリオールに対して、優れた酸化活性を有する。特に隣接する水酸基を有するアルコールに対し、優れた脱水素活性を有する。
特に、本発明のタンパク質は、R配置の水酸基を優先的に酸化し、高い基質特異性を有する。また、本発明のタンパク質は、特にグリセロールに対し、高い酸化活性を有する。
また、本発明のタンパク質は、ケトン、特に長鎖のアルカノンに対して、優れた還元活性を示す。特に隣接するカルボニル基を有するケトンに対して、優れた活性を有する。
このような優れたタンパク質を利用することにより、キラル化合物の出発原料等として有用な光学活性アルコールを安価に効率よく製造することができる。
また本発明のタンパク質を利用することにより、ケトン体を効率よく製造することができる。特にキラル化合物の生産に有用なプロキラルなケトン体を製造しえる。
また本発明のタンパク質を利用することにより、安価なグリセロールから付加価値の高い物質を効率よく製造することができる。
また、本発明によれば、当該タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。また本発明によれば、上記タンパク質を発現する形質転換体が提供される。本発明のポリヌクレオチド及び形質転換体を用いることにより、上記優れた特性を有するタンパク質を、大量に取得することが可能になる。
このように、本発明は、高付加価値の物質の生産に有用な新規酵素及びその利用方法を提供するものである。
(A)ピキア・オフナエンシス由来のアルカンポリオール脱水素酵素遺伝子を導入した発現プラスミド(pSE-HOG)の構築図を示す図面である。プラスミドのマップ中で、P(trc) はtrcプロモーターを、T(rrnB)はrrnBT1T2ターミネーターを、ampはアンピシリン抵抗性を示すβ−ラクターゼ遺伝子を、oriはプラスミドの複製起源を、ropはROP−protein遺伝子を、laqIqはラクトースリプレッサーを示す。The gene of glycerol dehydrogenaseは本発明のアルカンポリオール脱水素酵素遺伝子を示す。 (B)pSE-HOGを含む大腸菌HB101株を、ラセミ体1,2-オクタンジオールに作用させて、1,2-オクタンジオールのR体及びS体を、FID検出器を搭載したガスクロマトグラフによって測定した結果を示す図面である。図1Bの左半分は反応前の検出結果、図1Bの右半分は反応後24時間の検出結果を示す。横軸は保持時間を示す。
以下、本発明を実施例や比較例等を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
アルカンポリオール脱水素酵素の製造
1−1:ピキア・オフナエンシスの培養
ピキア・オフナエンシスAKU4328(京都大学から分譲)を、1%グルコースを含む基本培地A−5mL10本に植菌し、30℃で対数中期まで培養した。得られた菌を1%グリセロールを含む基本培地A−500mL10本に植菌し、30℃で対数中期まで培養した。培養液を遠心分離し、酵素精製用菌体として利用した。
1−2:アルカンポリオール脱水素酵素の精製
精製工程は断りの無い限り、すべて4℃で行った。上記1−1により調製した菌体(湿菌体重量として20g)を、緩衝液A(100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)及び1mMジチオスレイトール(以下、DTTと略す))に懸濁し、100mlのガラスビーズ
と混合し、Bead-Beater(Biospec社製、Bartlesville, USA)により破砕した。
菌体破砕液を9,000 × gで30分間遠心分離し、その上清として細胞抽出液を得た。
細胞抽出液を予め緩衝液Aで平衡化したDEAE−セルロースカラム(直径4.0×3.5cm、和光純薬工業株式会社製、大阪)に吸着させ、緩衝液Aに0−1M塩化カリウムの勾配をかけ、流速1ml/分でタンパク質を溶出した。
活性画分を回収し、40%硫安飽和の緩衝液Aに透析し、同緩衝液で平衡化したブチル−トヨパール650Sカラム(1.5×10cm、東ソー製,東京)に吸着させた。カラムを同緩衝液で洗浄した後、40−0%硫安飽和の勾配溶出を行った。
得られた活性画分を回収し、0.1M塩化カリウムを含む緩衝液Aで透析した。
予め0.1M塩化カリウムを含む緩衝液Aで平衡化したスーパーデックス200HR16/60カラム(アマシャム・バイオサイエンス製、東京)にかけ、流速0.5ml/分で0.1M塩化カリウムを含む緩衝液Aで溶出させた。
精製工程の概要を表1に示す。また、得られたタンパク質の酵素活性を合わせて表1に示す。
Figure 0005030067
酵素活性は100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)中に、100mMのグリセロール、2mMNAD+、及び酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定して調べた。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義した。
1−3:分子量測定
精製されたタンパク質(以下、「アルカンポリオール脱水素酵素」とも称する)のサブユニットの分子量を12.5%ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で求めた結果、約39,000であった。
また、精製されたアルカンポリオール脱水素酵素の前記スーパーデックス200HR16/60カラムによるゲルろ過クロマトグラフィーでの溶出時間と、GEヘルスケア社製標準タンパク質、フォスフォリラーゼb(分子量97,000)、牛血清アルブミン(分子量66,000)、オブアルブミン(分子量45,000)、カルボニックアンヒドラーゼ(分子量30,000)、トリプシンインヒビター(分子量21,000)の溶出時間から求めた精製されたアルカンポリオール脱水素酵素の分子量は約58,000であった。
当該分子量は、精製酵素を球形と想定して計算したもので、理論的にはサブユニットの分子量の整数倍となると考えられた。しかし、結果において、その比が約1.5となることは本タンパク質が水溶液中において球形ではないことを意味し、多くのタンパク質とは異なる立体配置を持つことが示唆された。
アミノ酸配列及び塩基配列の解析
2−1.N末端及び内部アミノ酸配列の解析
実施例1で得られた精製酵素のN末端及びV8プロテアーゼによる消化を受けたペプチド断片について、プロテインシーケンサー(ABI Prism 310 genetic analyzer、アプライド・バイオシステムズ社製)と反応液キット(Dye-teminator cycle sequencing kit)を用いてアミノ酸配列を決定した。
その結果、精製酵素のN末端アミノ酸配列は
MKGLLYYKTGDIRYSEDVEE(配列番号3)
と決定された。
更に、実施例1で得られた精製酵素をSDS-PAGEを行い、スタッキングゲル中で1/20量のV8プロテアーゼにより室温で1時間部分消化した。電気泳動により部分消化産物であるペプチド断片を分離後、PVDF(ポリビニリデンジフルオリド)膜にブロッティングし、それらのペプチド断片のアミノ酸配列の解析を行った結果、
ILSSHDVKIR(配列番号4)、
ATTHLSDA(配列番号5)、及び
LKALLPENGGFDA(配列番号6)
と決定され、このことにより、精製酵素の3つの内部アミノ酸配列が決定された。
2−2:ピキア・オフナエンシスからの染色体DNAの精製
ピキア・オフナエンシスAKU4328を1%メタノールを含む基本培地Aで培養した。染
色体DNAの精製は、Meth. Cell Biol,. 29, 39-44 (1975) に記載の方法により行った。
2−3:アルカンポリオール脱水素酵素をコードする遺伝子のコア領域のクローニング 上記2−1で得られたアミノ酸配列を元に、下記に示すプライマー1及び2を合成した。
プライマー1
5'-TAYTAYAARACNGGNGAYAT-3'(配列番号7)
プライマー2
5'-GCRTCRAANCCNCCRTTYTC-3'(配列番号8)
プライマー1は、N末端配列MKGLLYYKTGDIRYSEDVEEにおいて6番目のYから12番目のIに対応する。
プライマー2は、内部アミノ酸配列LKALLPENGGFDAにおいて7番目のEから13番目のAに対応する。
これらのプライマーを用い、上記2−2で得られた染色体DNAを鋳型として以下の条件でPCRを行った。染色体DNA50ng、各プライマー25pmol、dNTP各20nmol、EXTaqDNAポリメラーゼ(タカラバイオ製)1.25U、ExTaq用緩衝液を含む50μLの反応液を用い、94℃10分の熱処理後、94℃1分、56℃1分、72℃1分を30サイクル行い、最後に72℃10分保持した。
PCR産物をアガロース電気泳動により分離精製後、pCR2.1-TOPO (Invitrogen製)に挿入し、挿入DNA断片の塩基配列を解析した。得られたコア領域は、766 bpからなる配列であった。
2−4:アルカンポリオール脱水素酵素をコードする遺伝子のコア領域の5’−隣接領域のクローニング
遺伝子コア領域の5'-隣接領域のクローニングは、TAKARA LA PCR in vitro Cloning Kit (タカラバイオ製)を用いて行った。
PCRは以下の条件で行った。
ライゲーションされたDNA0.5μg、各プライマー25pmol、dNTP各20nmol、LA TaqDNA ポリメラーゼ(タカラバイオ製)5U、LA Taq用緩衝液を含む50μLの反応液を用い、94℃30秒、55℃30秒、72℃4分を30サイクル行った。
プライマーとしては、次のプライマーS1を用いた:
プライマーS1
5’-ATCACCAGGTTTCACCCTAGTGAC-3’(配列番号9)。
2−5:アルカンポリオール脱水素酵素をコードする遺伝子のコア領域の3’−隣接領域のクローニング
コア領域の3’-隣接領域のクローニングは、5’−隣接領域と同様に、TAKARA LA PCR in vitro Cloning Kit (タカラバイオ製)を用いて行った。
PCRは以下の条件で行った。
ライゲーションされたDNA0.5μg、各プライマー25pmol、dNTP各20nmol、LA TaqDNA ポリメラーゼ(タカラバイオ製)5U、LA Taq用緩衝液を含む50μLの反応液を用い、94℃30秒、55℃30秒、72℃4分を30サイクル行った。
プライマーとしては、次のプライマーS2を用いた:
プライマーS2 5'-GGAATGCGCGAAGTTTAAACCAGG -3'(配列番号10)。
2−6:アルカンポリオール脱水素酵素をコードする遺伝子の全オープンリーディングフレーム(ORF)解析
上記2−4及び2−5で得られた塩基配列と上記2−3で得られたコア領域の塩基配列をアッセンブルした結果、アルカンポリオール脱水素酵素の全オープンリーディングフレーム(ORF)が明らかになった。
得られたORFの塩基配列を、配列表の配列番号2に示す。
ORFは1,131塩基からなり、376アミノ酸からなる分子量40,232のポリペプチドをコードしていた。
アルカンポリオール脱水素酵素遺伝子を含む形質転換体
3−1:発現プラスミドpSE-HOGの構築
PCRプライマーとして、HOG-ATG1及びHOG-TAG1を合成し、下記の条件でPCRを行った。
HOG-ATG1の配列を以下に示す。
5´-GGAATTCTATAATGAAAGGATTGCTCTATT-3´(配列番号11)
また、HOG-TAG1の配列を以下に示す。
5´-GGACTAGTCTACACTTCATCAGGAGTAACA-3´(配列番号12)
染色体DNA50ng、各プライマー25pmol、dNTP各20nmol、EXTaq(タカラバイオ製)1.25U、ExTaq用緩衝液を含む50μLの反応液を用い、94℃10分の熱処理後、94℃1分、58℃1分、72℃1分を30サイクル行った。
得られた増幅DNA断片をEco RI とSpe Iで処理し、あらかじめEco RI とSpe Iで処理したpSE420DのtrcプロモーターとrrnBターミネーターの間に挿入し、発現ベクターpSE-HOGを構築した(図1A参照)。
pSE-HOGの大腸菌HB101への導入はジェネトロニックス社エレクトロセル600により添付の取り扱い説明書に基づいて行った。
3−2:大腸菌HB101株によるアルカンポリオール脱水素酵素の製造
pSE-HOGを含有する大腸菌HB101株を、アンピシリンを含むLB培地で培養し600nmにおける吸光度が0.5の時、0.1 mM IPTGを添加し6時間後、遠心分離により集菌した。
得られた菌体を菌体破砕液(100mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)に懸濁し、ミニビードビーター(バイオスペックプロダクツ社製)により菌体を破砕後、16,000xgで10分間遠心分離して得られた上清を細胞抽出液とした。
大腸菌HB101株によって得られたアルカンポリオール脱水素酵素の量は、可溶性タンパク質の約8.2%であった。
アルカンポリオール脱水素酵素の特性
4−1:活性測定試験
実施例1で得られたアルカンポリオール脱水素酵素を用いて、以下の方法で酵素活性を測定した。
酸化活性
100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)中に、表2に記載の濃度の基質、2mMNAD+、及び酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義する。
還元活性
100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)中に、表3に記載の濃度の基質、0.2mMNADH、及び酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの減少に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量と定義する。
酸化活性の測定結果を表2に示す。また還元活性の測定結果を表3に示す。
Figure 0005030067
Figure 0005030067
4−2.活性測定結果
(酸化活性)
表2に示されるように、精製酵素は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、n-ヘキサノール、ベンジルアルコール等の一級アルコールに対して、酸化活性は示さなかった。
イソプロパノール、2-ブタノールには弱い活性が見られた。また、2-へプタノールと2-オクタノールなどのヒドロキシル基が一つの2級アルコールには活性が見られなかった。
一方、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオールなどのジオールをよく酸化した。しかし、1,3-ブタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-へキサンジオールなどのジオールには弱い活性しかみられなかった。
これらの結果から、精製酵素は、隣接する2つのヒドロキシル基を有するアルコールに対し、特に高い活性を有することがわかった。
(還元活性)
表3に示されるように、精製酵素は、ジヒドロキシアセトン、3-ヒドロキシ-2-ブタノ
ン、アセトール、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオンに対し、高い還元活性を有することがわかった。
4−3:アルカンポリオール脱水素酵素の基質特異性
実施例1で得られた精製酵素及び実施例3で得られた形質転換体(E. coli HB101 (pSE-HOG))を用いて、本発明のタンパク質の基質特異性を調べた。比較のため、本酵素遺伝子を挿入していないプラスミド(pSE420D)を用いる以外は、E. coli HB101 (pSE-HOG)と同様に作成した形質転換体(E. coli HB101 (pSE420D))を用いた試験も行った。
測定は、上記4−1の活性測定試験と同様の方法で行った。
結果を表4に示す。
Figure 0005030067
表4に示されるように、精製酵素及びE. coli HB101 (pSE-HOG)は、(R、S)-1,2-オクタンジオールに対し、優れた脱水素活性を示した。一方、E. coli HB101 (pSE420D)では、活性は見られなかった。
また精製酵素とE. coli HB101 (pSE-HOG)からの菌体抽出液は(R、S)-1,2-オクタンジオールに対し酸化活性を示したが、(S)-1,2-オクタンジオールには活性を示さなかった。このことから、精製酵素とE. coli HB101 (pSE-HOG)は (R)-1,2-オクタンジオールのみを酸化すること、つまりR配置のヒドロキシル基を優先的に酸化することが確認された。
また、精製酵素及びE. coli HB101 (pSE-HOG)は、1,2-プロパンジオールや2,3-ブタンジオールにおいても、高い脱水素活性を有することが確認できた。但し、R配置だけでなく、S配置のヒドロキシル基を有する1,2-プロパンジオールや2,3-ブタンジオールに対する活性も有意に認められた。このことから炭素数が多いほど、アルカンポリオールのR配置に対する特異性が高くなることがわかった。
また、精製酵素及びE. coli HB101 (pSE-HOG)は、(R)-1,2,4-ブタントリオールに対して有意な活性を示すことと(S)-1,2,4-ブタントリオールに対して活性を示さないことが確認できた。このことから、3以上の水酸基を有するポリオールに対しても活性を示すこと、また(R)配置のヒドロキシル基を優先的に酸化することが確認できた。
4−4.アルカンポリオール脱水素酵素の他の特性
実施例1で得られた精製酵素について、更に以下の性質を確認した。
(1)比活性
精製タンパク質1mg当たり60U 以上程度の(R)-1,2-オクタンジオール脱水素酵素活性を有していた。
当該活性は、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)中に、5mMの(R)-1,2-オクタンジオール、2mMNAD+、及び酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定して求めた。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義する。
(2)至適pH
グリセロール酸化反応における至適pHは約9、ジヒドロキシアセトン還元反応の至適pHは約6であった。
ここで、グリセロール酸化反応の至適pHは、100mMのさまざまなpHの緩衝液中に、500mMのグリセロール、1mMNAD+、及び精製酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定して求めた。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義した。
緩衝液としては、NH4Cl-NH4OH(pH8-11)、K2HPO4-KH2PO4 (pH6-8),Tris-HCl (pH7.2-9.0), Tris-maleate (pH4.7-9.4)を用いた。
また、ジヒドロキシアセトン還元反応の至適pHは、100mMのさまざまなpHの緩衝液中に1.3mMのジヒドロキシアセトン、0.1mMのNADH, 及び精製酵素を含む反応液を25℃で反応させ、NADHの減少に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定して求めた。1Uは、1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量と定義した。緩衝液としては、例えば、NH4Cl-NH4OH(pH8-11)、K2HPO4-KH2PO4 (pH6-8),Tris-HCl (pH7.2-9.0), Tris-maleate (pH4.7-9.4)を用いた。
(3)至適温度
ジヒドロキシアセトン還元反応における至適温度は40℃程度であった。
ここで、ジヒドロキシアセトン還元反応の至適温度は、100mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)、1.3 mM ジヒドロキシアセトン、0.1mM NADH、及び精製酵素を含む反応液を5℃から65℃で反応させ、NADHの生成あるいは消失に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定することにより求めた。1Uは、1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量と定義した。
光学活性アルコールの製造
実施例3と同様な方法でpSE-HOGを含む大腸菌HB101株を得た。
最終濃度100 mM KPB buffer (pH7.0)60ml中に、乾燥菌体重量に換算し600mgの菌、1,2-オクタンジオールのラセミ体(R:S=52:48)を、最終濃度50mMになるように加え、500-ml三角フラスコ中、150rpmで24時間振とうして、30℃で反応させた。
反応液を9,000×gで30分間、4℃で遠心した後、上澄み液を回収し、反応産物を測定した。
1,2-オクタンジオールの測定を、FID検出器を搭載したガスクロマトグラフ(島津製作所製GC2010)によって定量して行った。キャリアガスとしてはヘリウムを用いた(線速度 45.5 cm/sec)。FIDのためのメイクアップガスとしては窒素(流量, 30 ml/min)を用いた。上澄み液0.5μlをカラムChirasil-DEX CB (Chrompack社製、Middelburg, Netherlands)に注入した。
カラム温度は1分間110℃に保温し、その後1分間に4℃ずつ160℃まで温度が上がるようにセットした。注入口と検出器の温度はそれぞれ、250℃と275℃とした。GC-MS分析はMStation JMS mass-selective detector (JEOL社製、東京)を搭載したHP 5890 series IIガスクロマトグラフ(Hewlett Packard社製、Polo, USA)検出器はイオン化エネルギー70eVで操作した。
測定結果を図1Bに示す。
図1Bの左半分は反応前の検出結果、図1Bの右半分は反応時間が24時間の検出結果を示す。
図1Bの横軸は、保持時間を示す。
図1B右図に示されるように、E. coli HB101 (pSE-HOG)による菌体反応後の反応産物において、(R)-1,2-オクタンジオールは確認されず、別の反応産物が確認された。
基質の保持時間は、(S)-1,2-オクタンジオールが10.6分、 (R)-1,2-オクタンジオール、10.8分、反応産物, 5.9分であった。
菌体反応後に検出された反応産物(Unknown Product)をEI マススペクトラムで確認したところ、 major ions (m/z); 144 (1.15%, M+), 113 (100%), 85 (38.2%)となり、1-ヒドロキシ-2-オクタノンであることがわかった。
このことから、E. coli HB101 (pSE-HOG)による菌体反応により、ヒドロキシル基の鏡
像選択的酸化が起こり、(R)-1,2-オクタンジオールが1-ヒドロキシ-2-オクタノンに酸化されたことが確認された。
最終的に24時間反応により(R)-1,2-オクタンジオールが除かれ、(S)-1,2-オクタンジオール(24 mM, >99.9% e.e.)が得られた。
ケトンの製造
ピキア・オフナエンシスAKU4328を塩化アンモニウム4g/L、リン酸2水素1カリウム1g/L、リン酸1水素2カリウム1g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.5g/L、酵母エキス1g/Lに1%グルコースを添加した培地で前培養を行い、基本培地に1%グリセロールを含む誘導培地で本培養を開始後10時間で集菌した。グリセロールに対する比活性が3.6U/mg(蛋白)であったことから、上記実施例1で得られた精製酵素と同じタンパク質を7%発現していることが確認できた。
このようにして得られた菌を2mg/ml、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-プロパンジオールをそれぞれ10%含む100 mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)を坂口フラスコに入れ、30℃で150rpmで20時間往復振とうした。次いで遠心分離を行い、得られた上清についてHPLCにより分析した。
その結果、それぞれのアルコールに対応するケトンである、アセトイン、1-ヒドロキシ-2-ブタノン、アセトールが2%、1.5%、2.0%生成した。
また、1,2-プロパンジオールからのアセトールの反応について、pH を常時8にコントロールして、同じ条件で2週間反応させたところ、理論収率である5%のアセトールが生成した。
酵素活性の測定は100mM塩化アンモニウム・アンモニウムバッファー(pH 9.0)、100mMグリセロール、2.0 mMNAD+、酵素溶液を含む反応液で25℃において反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定した。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義する。
HPLC分析にはL-7100(日立製作所)を使用し、カラムにShodex KS-801(島津製作所)、検出器に屈折計(L-3350;日立製作所)を用いた。
反応液をカラムに注入した後、純水を用い0.8 ml/minで60℃で溶出した。保持時間は2,3-ブタンジオール、12.54分; 1,2-ブタンジオール、15.07分; 1,2-プロパンジオール,12.86分; アセトイン、15.01分; 1-ヒドロキシ-2-ブタノン、19.06分; アセトール,16.18分であった。
グリセロール脱水素酵素によるジヒドロキシアセトンの製造
(7−1)精製酵素によるジヒドロキシアセトンの製造
5 ml の100 mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)中にNADを1 μmol、グリセロール50 μmol、実施例1で得られた精製酵素2 units、ピルビン酸ナトリウム50 μmol、ブタ心臓乳酸脱水素酵素(東洋紡)4 unitsを加え、35℃で30 ml容三角フラスコにおいて150 rpmの回転振とうにより12時間反応を行った。
その結果ジヒドロキシアセトン25 μmolの生成が確認できた。
ジヒドロキシアセトン及びグリセロールの定量はHPLC(島津製作所LC-6A)を使用して行った。カラムはShimpak KS-801(島津製作所)を用いた。検出器には屈折計TOYO-SODA RI-8を用いた。反応液をカラムに注入した後、純水を用い0.8 ml/minで溶出した。ジヒドロキシアセトンは15.33分、グリセロールは12.04分に溶出された。
(7−2)酵素を生産する菌体を用いたジヒドロキシアセトンの製造
ピキア・オフナエンシスAKU4328を塩化アンモニウム4g/L、リン酸2水素1カリウム1g/L、リン酸1水素2カリウム1g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.5g/L、酵母エキス1g/Lに1%グルコースを添加した培地で前培養を行い、基本培地に1%グリセロールを含む誘導培地で本培養を開始後10時間で集菌した。
グリセロールに対する比活性は3.6U/mg(蛋白)であり、菌体湿重量1kg当たり、グリセロール脱水素活性にして130万Uを得ることができた。
このようにして得られた菌を2mg/ml、グリセロールを10%含む100 mMリン酸カリウムバッファー(pH8.0)を坂口フラスコに入れ、30℃で150rpmで1時間往復振とうした。次いで遠心分離を行い、得られた上清についてHPLCにより分析した。
その結果、ジヒドロキシアセトンが2%生成した。
この時の活性は 100mM塩化アンモニウム・アンモニウムバッファー(pH 9.0)、100
mMグリセロール、2.0mMNAD+、酵素溶液を含む反応液で25℃で反応させ、NADHの生成に伴う340nmの吸光度(分子吸光係数6,220M-1・cm-1)の変化を測定した。1Uは、1分間に1μmolのNADHの生成を触媒する酵素量と定義する。
HPLC分析にはL-7100(日立製作所)を使用し、カラムにShodex KS-801(島津製作所)、検出器に屈折計(L-3350;日立製作所)を用いた。

Claims (13)

  1. 配列表の配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
  2. 下記(a)又は(d)に記載されるポリヌクレオチド:
    (a)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (d)配列表の配列番号2に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド。
  3. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクターを含む形質転換体。
  4. 請求項3に記載の形質転換体を培養し、発現産物を回収する工程を含む、請求項1に記載のタンパク質の製造方法。
  5. 請求項1に記載のタンパク質を、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール又は1,2−オクタンジオールであって、R配置の水酸基を有するアルコールに作用させる工程を有するケトンの製造方法。
  6. 請求項1に記載のタンパク質を(R)−1,2−オクタンジオールに作用させる工程を有する1−ヒドロキシ−2−オクタノンの製造方法。
  7. 請求項1に記載のタンパク質を1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール又は1,2−オクタンジオールのラセミ体に作用させる工程、及び、R体のアルコールが脱水素されて生成するケトンを分離する工程を有する光学活性アルコールの製造方法。
  8. 請求項1に記載のタンパク質を1,2−オクタンジオールのラセミ体に作用させる工程、及び、生成する1−ヒドロキシ−2−オクタノンを分離する工程を有する光学活性アルコールの製造方法。
  9. グリセロールに、請求項1に記載のタンパク質を作用させる工程を有するジヒドロキシアセトン又はその誘導体の製造方法。
  10. 1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール又は1,2−オクタンジオールであって、R配置の水酸基を有するアルコールを酸化してケトンを製造するための請求項1に記載のタンパク質の使用。
  11. (R)−1,2−オクタンジオールを酸化して1−ヒドロキシ−2−オクタノンを製造するための請求項1に記載のタンパク質の使用。
  12. 1,2−オクタンジオールのラセミ体における(R)−1,2−オクタンジオールを酸化して光学活性アルコールを製造するための請求項1に記載のタンパク質の使用。
  13. グリセロールを酸化してジヒドロキシアセトンを製造するための請求項1に記載のタンパク質の使用。
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