JP4636240B2 - R−t−b系焼結磁石製造用原料粉体 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類元素(R)、Fe又はFe及びCoを主体とする少なくとも1種以上の遷移金属元素(T)及びホウ素(B)を主成分とするR−T−B系焼結磁石に関し、特に含有する酸素量の低いR−T−B系焼結磁石に好適な原料粉体に関するものである。
希土類磁石の中でもR−T−B系焼結磁石は、磁気特性に優れていること、主成分であるNdが資源的に豊富で比較的安価であることから、種々の用途に使用されている。R−T−B系焼結磁石を高性能化するためには、磁石の酸素量を低下させることが必要である。しかし、磁石の酸素量を低下させると焼結工程において異常粒成長が起こりやすく、角形比の悪い磁石となる。磁石の酸素が形成している酸化物が結晶粒の成長を抑制していたためである。そこで、特許文献1、特許文献2等において、Zr、Nb又はHfといった元素を添加することにより、焼結過程における結晶粒の異常成長を抑制している。
特開2000−234151号公報 特開2002−75717号公報
特許文献1等に開示された技術により、焼結過程における結晶粒の異常成長という課題は克服されつつあるが、磁石の酸素量を低下することにより、新たな課題が提起されてきた。低酸素量のR−T−B系焼結磁石を製造する場合、原料合金を例えばストリップキャスト法で作製した後に、粉砕(粗粉砕、微粉砕)、磁場中成形を経て焼結に至る間、酸素量が制御された雰囲気で工程が進められる。粉砕で得られた原料合金粉末の酸素量が低いと、磁場中成形を行うための金型に充填する際の充填性が悪い。そのために、金型へ充填される原料合金粉末の量にばらつきがある。金型へ充填される原料合金粉末の量が所定量よりも少ない場合には、原料合金粉末の分布が不均一になることがある。そうすると、成形体にクラックが発生することがあった。金型へ充填される原料合金粉末の量を均一にするためには原料合金粉末の金型への充填作業を慎重に行えばよいが、生産性を劣化させてしまう。また、低酸素の原料合金粉末は活性度が高いために金型への付着が顕著であり、この付着が原因となり、成形体に割れ、欠け等の成形不良が発生する。したがって、低酸素量のR−T−B系焼結磁石は、製造歩留まりが低いという問題があった。この問題は、高磁気特性を得るために、酸素量を低減すればするほど顕著になるため、低酸素化によるR−T−B系焼結磁石の高磁気特性化にとって大きな障害となる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、高い生産性及び製造歩留まりで低酸素量のR−T−B系焼結磁石を製造する方法を提供することを目的とする。
低酸素量の原料合金粉末を金型中にばらつきなく均一に充填するために、流動性に優れる顆粒を用いることを検討した。ただし、単に原料合金粉末を顆粒にしただけでは、金型への付着を防止することは困難である。そこで本発明者等は、原料合金粉末を顆粒化するための付着剤として有機液体を用いることを検討した。その結果、R−T−B系焼結磁石の原料である原料合金粉末を有機液体で顆粒化することができるとともに、この顆粒は原料合金粉末自体の酸素量は低いものの、有機液体が潤滑剤の働きをすることにより、金型への付着という問題も解消された。本発明は以上の検討に基づいてなされたものであり、R−T−B系焼結磁石(ただし、Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを主体とする少なくとも1種以上の遷移金属元素)の製造に用いられる原料粉体であって、原料粉体は、原料粉体を構成する合金粒子が有機液体で付着された顆粒の形態を有し、かつ合金粒子の酸素量が2500ppm以下であるとともに、上記の有機液体は、トルエン、エタノール、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ターピネオール、オクタノールから選択される1種又は2種であることを特徴とするR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体である。
本発明において、合金粒子は、R:25〜35wt%、B:0.5〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02〜0.5wt%、Zr:0.03〜0.3wt%、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有することが好ましい。この合金粒子を用いて製造されるR−T−B系焼結磁石は、Zrを含むことにより、焼結時の異常粒成長を抑制することができる。したがって、酸素量が2000ppm以下、さらには1500ppm以下という低酸素量のR−T−B系焼結磁石として高い磁気特性を得ることができる。
ところで、顆粒形成に必要な湿分を付与するための量だけ有機液体を添加すると、少なからずとも磁気特性を害することになる。もちろん、顆粒形成後のいずれかの段階で有機液体を除去する工程を設けることにより、磁気特性の問題を解消することはできるが、製造コストの観点からすると、この有機液体の除去工程が簡易であることが望まれる。この要求を満足させるべく、有機液体を用いて顆粒を一旦作製した後に、顆粒の形態維持に必要な量を残してその他の有機液体を除去することが有効である。すなわち、顆粒形成後に除去の容易な液体と、この液体よりも除去の難しい有機液体を用いて顆粒を作製すれば、その後除去の容易な有機液体のみを優先的に顆粒から除去できる一方、除去の難しい有機液体を顆粒に残留させることができるのである。
したがって、本発明の顆粒は、第1の有機液体と第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い液成分で付着していることが好ましい。第1の有機液体と第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い液成分を用いて顆粒を作製しているので、所定の減圧雰囲気もしくは加熱下(減圧下での加熱含む)に当該顆粒を晒すことにより、液成分を第1の有機液体よりも優先的に顆粒から除去することが可能となる。また、液成分の飽和蒸気圧を選択することにより、低度の減圧雰囲気で液成分を容易に除去することができるとともに、第1の有機液体を顆粒に残留させることができる。
ここで、液成分は水等の液体であってもかまわないが、合金粒子の酸化を防止するために有機液体(第2の有機液体)であることが本発明にとって好ましい。この場合、合金粒子に対して、第1の有機液体を6wt%以下(ただし、0を含まず)、第2の有機液体を15wt%以下(ただし、0を含まず)添加することが好ましい。第1の有機液体は合金粒子を顆粒の形態に維持するに足りる量だけ存在していればよく、一方で第2の有機液体は顆粒作製のための湿分を確保することを意図している。第1の有機液体及び第2の有機液体により構成された顆粒から、第2の有機液体を除去するためには、前述したように、減圧雰囲気もしくは加熱下(減圧下での加熱含む)に当該顆粒を晒せばよい。減圧の程度は、使用されている第1の有機液体、第2の有機液体を構成する具体的な組成物によって適宜定めればよい。
本発明における第1の有機液体は、20℃における飽和蒸気圧が75mmHg(10kPa)以下、20℃における表面張力が20dyn/cm以上、20℃における粘度が0.35cp以上の特性を備えることが好ましい。作製された顆粒の形態を維持するために、これら物性を具備することが望まれる。
以上説明したように、本発明によれば、有機液体を用いて2500ppm以下という低酸素量の原料粉体を顆粒化することにより、低酸素量のR−T−B系焼結磁石を製造する過程の磁場中成形において、金型への充填量のばらつきを低減するとともに、金型への付着の問題を解消できる。したがって、低酸素量のR−T−B系焼結磁石を生産性よく、かつ高い歩留まりで製造することができる。
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明は、有機液体により合金粒子を付着させることにより顆粒を構成する。有機液体が合金粒子間に存在することにより、液体架橋が生じ合金粒子同士を付着させているものと解される。有機液体による付着力は、従来のPVA等のバインダによる付着力に比べて極めて弱い。したがって、本発明により得られる顆粒は、磁場中成形時に印加される磁場によって容易に崩壊し合金粒子に分離する。そのため、高い配高度を得ることができる。これまで、バインダを用いることが顆粒作製の前提として考えられてきたが、本発明のように有機液体を用いた場合でも、流動性の高い顆粒が得られることを見出した価値は大きい。しかも、有機液体が顆粒に存在しているため、金型への顆粒の付着も防止される。加えて、この顆粒は、磁場印加により崩壊するため、磁場中成形を行うR−T−B系焼結磁石にとって好適である。さらに、有機液体は、従来のバインダであるPVA等の樹脂に比べて、成形体からの除去が極めて容易であり、従来の顆粒技術を用いた場合には必須とされていた脱バインダ工程を省くことが可能であり、工程的な利点をも含んでいる。
本発明の原料粉体は、有機液体による顆粒であって、顆粒を構成する合金粒子の酸素量が2500ppm以下である。合金粒子の段階で2500ppmを超える酸素量を有していると、R−T−B系焼結磁石の酸素量を2500ppm以下にすることが困難である。合金粒子の酸素量は、2000ppm以下、さらには1500ppm以下とすることが好ましい。
本発明の顆粒を構成する合金粒子は、R:25〜35wt%、B:0.5〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02〜0.5wt%、Zr:0.03〜0.3wt%、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有することが好ましい。
ここで、Rは、Yを含む希土類元素(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Yb及びLu)の1種又は2種以上である。希土類元素の量が25wt%未満であると、希土類永久磁石の主相となるR2141相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、希土類元素が35wt%を超えると主相であるR2141相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。また希土類元素が酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なR−rich相が減少し、保磁力の低下を招くため、希土類元素の量は25〜35wt%とする。好ましい希土類元素Rの量は28〜33wt%、さらに好ましい希土類元素Rの量は29〜32wt%である。
Ndは資源的に豊富で比較的安価であることから、希土類元素Rとしての主成分をNdとすることが好ましい。またDyは異方性磁界が大きく、保磁力を向上させる上で有効である。よって、希土類元素RとしてNd及びDyを選択し、Nd及びDyの合計を25〜33wt%とすることが好ましい。そして、この範囲において、Dyの量は0.1〜8wt%が好ましい。Dyは、残留磁束密度及び保磁力のいずれを重視するかによって上記範囲内においてその量を定めることが好ましい。つまり、高い残留磁束密度を得たい場合にはDy量を0.1〜3.5wt%とし、高い保磁力を得たい場合にはDy量を3.5〜8wt%とすることが好ましい。
また、本発明における合金粒子は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。ただし、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、上限を4.5wt%とする。好ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに好ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明における合金粒子は、Al及びCuの1種又は2種を0.02〜0.5wt%の範囲で含有することができる。この範囲でAl及びCuの1種又は2種を含有させることにより、得られるR−T−B系焼結磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Alを添加する場合において、好ましいAlの量は0.03〜0.3wt%、さらに好ましいAlの量は0.05〜0.25wt%である。また、Cuを添加する場合において、好ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含まず)、さらに好ましいCuの量は0.03〜0.08wt%である。
本発明による合金粒子は、Zrを0.03〜0.3wt%含有することが好ましい。ZrはR−T−B系焼結磁石の磁気特性向上を図るために酸素含有量を低減する際に、焼結過程での結晶粒の異常成長を抑制する効果を発揮し、焼結体の組織を均一かつ微細にする。したがって、Zrは酸素量が低い場合にその効果が顕著になる。Zrの好ましい量は0.05〜0.26wt%、さらに好ましい量は0.1〜0.23wt%である。
本発明による合金粒子は、Coを2wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1wt%、さらに望ましくは0.3〜0.7wt%含有する。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
本発明は有機液体を用いて合金粒子を付着させる。このような液体(本発明では有機液体)による付着力は、液体架橋力と称されている。なおここで、有機液体は、一般に有機溶媒と呼ばれている物質を包含するが、本発明では溶媒として機能しないことから有機液体と呼んでいる。
本発明で用いる有機液体としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物エステル系(グリコールエステル系を含む)化合物、ケトン系化合物、脂肪酸系化合物、テルペン系化合物の1種又は2種から選択することができる。このような有機液体の具体例を挙げると、炭化水素系化合物としては、トルエン、キシレン、アルコール系化合物としては、エタノール、イソブチルアルコール、エーテル系化合物としては、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、ケトン系化合物としては、アセトン(ジメチルケトン)、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、テルペン系化合物としては、ピネン、ターピネオール等がある
有機液体を用いて作製された顆粒は、有機液体が、少なくとも合金粒子同士の接点に存在し、その液体架橋力によって合金粒子同士が付着している。このとき、合金粒子同士の接点には、液体中に、合金粒子同士を付着させるためのバインダ等の固体成分を実質的に含まない。ただし、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上のために潤滑剤を添加した場合、この潤滑剤の固体成分が液体中に存在することを許容するものとする。また、顆粒の表面にも有機液体が存在し、潤滑剤の役割を果たすことができる。
有機液体を用いて作製された顆粒は、所定の工程までその形状を維持している必要がある。一旦作製された顆粒がその形状を維持できなくなると、顆粒から脱落した微細な合金粒子が顆粒の周囲に付着した形態を成し、この形態の顆粒は流動性を低下させる。したがって、本発明に用いる有機液体としては、容易に揮発しないことが好ましい。そこで本発明では、20℃における飽和蒸気圧が75mmHg(10kPa)以下の有機液体を用いることが好ましい。より好ましい20℃における飽和蒸気圧は20mmHg以下、さらに好ましい20℃における飽和蒸気圧は5mmHg以下である。
また、本発明に用いる有機液体は、室温では気化しないよう、沸点が50℃以上、より好ましくは100℃以上であるのが好ましい。
本発明に用いる有機液体はまた、顆粒を維持するために十分な付着力を合金粒子間に付与する必要がある。そのために、有機液体の表面張力、粘度を特定することが本発明では好ましい。好ましい有機液体の表面張力は、20℃において20dyn/cm以上である。より好ましい20℃における表面張力は25dyn/cm以上、さらに好ましい20℃における表面張力は30dyn/cm以上である。また、好ましい有機液体の粘度は、20℃において0.35cp以上である。より好ましい20℃における粘度は1cp以上、さらに好ましい20℃における粘度は2cp以上である。
さらに、微粉砕粉末の酸化を防止するため、本発明に用いる有機液体は、酸素濃度が低く、また水への溶解度(水溶性)が低いものであるのが好ましい。表1に、上記に例示した有機液体の物性等を示した。なお、表1において、トルエン、エタノール、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ターピネオール、オクタノール以外の有機液体は参考例である。
Figure 0004636240
合金粒子に対する有機液体の量は特に制限されないが、有機液体の量が少なすぎると、合金粒子同士に液体架橋を生じさせるに足る液量を確保することができないために、顆粒化が困難である。一方、有機液体の量が多すぎると、得られた顆粒をそのまま磁場中成形する場合に液体が過剰に存在して成形を阻害するおそれがある。以上より、合金粒子に対する有機液体の量は1.5〜12wt%とすることを推奨する。より好ましい有機液体の量は1.5〜8wt%、さらに好ましい有機液体の量は2〜6wt%である。なお、有機液体の量が多い場合は、磁場中成形までにその一部を除去すればよいので、量が少ない場合に比べると本質的な問題とは言えない。なお、添加量の好ましい範囲は、有機液体の種類によって変わり、例えばターピネオールなら2〜6wt%、エタノールなら2〜12wt%である。
前述したように本発明は、第1の有機液体と、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い液成分を用いて顆粒を作製することもできる。この液成分は、有機液体(第2の有機液体)であることが好ましいが、たとえば水等の有機液体以外の液体を用いてもよい。水(20℃における飽和蒸気圧=17.5mmHg)は合金粒子を酸化するおそれがあるが、添加する量が少ないこと、さらに、合金粒子を酸化する恐れの少ない純水等を用いることができることから、本発明では有機液体以外の液成分を許容する。
表1に各種有機液体の飽和蒸気圧を示しており、この値を基準として第1の有機液体、第2の有機液体を選定すればよい。例えば、第1の有機液体としては、ターピネオール、カルビトール、セロソルブ、ブチルセロソルブを用いることができる。また、第2の有機液体としては、トルエン、エタノール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンを用いることができる。ただし、これはあくまで例示であって、本発明の範囲を確定するものではない。例えば、第1の有機液体として例示されたもののなかで、第1の有機液体、第2の有機液体を構成することもできるし、第2の有機液体として例示されたもののなかで、第1の有機液体、第2の有機液体を構成することもできる。
合金粒子に対する第1の有機液体の量は6wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。第1の有機液体がないと液体架橋による顆粒形成が容易でなくなり、一方6wt%添加すれば形成される顆粒の形態維持に十分であり、それを超える添加は磁気特性を低下させる要因となる。そこで第1の有機液体の量は6wt%以下(ただし、0を含まず)とするのが好ましい。また、第2の有機液体の量は15wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。第2の有機液体がないと顆粒作製に必要な湿分を微粉砕粉末に対して与えることが難しく、15wt%を超えると湿分が多くなりすぎて、第2の有機液体除去に工数がかかることになる。そこで第2の有機液体の量は、15wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。
以上の本発明による原料粉体を用いたR−T−B系焼結磁石の製造方法をその工程順に詳説する。
原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板又は薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
R−T−B系焼結磁石を得る場合、R214B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を本発明に適用することもできる。
原料合金の酸素量は、通常300ppm以下であり、この段階の酸素量は低い。ところが、以降の粉砕工程、磁場中成形工程において酸素量が増大する。したがって、本発明では、この工程における酸素量の増大を抑えるため、焼結に供されるまでの工程では、その雰囲気(合金が直接触れる雰囲気)の酸素量を200ppm以下、好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下とする。
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。この水素放出処理は、R−T−B系焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
混合法による場合、2種の合金の混合のタイミングは限定されるものではないが、微粉砕工程において低R合金及び高R合金を別々に粉砕した場合には、微粉砕された低R合金粉末及び高R合金粉末を窒素雰囲気中で混合する。低R合金粉末及び高R合金粉末の混合比率は、重量比で80:20〜97:3程度とすればよい。低R合金及び高R合金を一緒に粉砕する場合の混合比率も同様である。なお、成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01〜0.3wt%程度添加することができる。
以上で得られた微粉砕粉末(合金粒子)を造粒して顆粒を作製する。
微粉砕粉末と有機液体とを用いて顆粒を作製する方法は、従来公知の造粒法を適用すればよい。適用できる造粒方法としては、転動造粒法、振動造粒法、混合造粒法、流動造粒法、解砕造粒法、圧縮成形造粒法、押出造粒法、噴霧造粒法が掲げられる。微粉砕粉末と有機液体は、造粒法に応じて当該造粒法適用の前に混合、混練される場合と、造粒法適用時に混合、混練される場合がある。
第1の有機液体と、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い液成分(第2の有機液体)を用いて顆粒を作製した場合には、顆粒を構成する液成分(第2の有機液体)を除去する。有機液体は、従来のPVA等のバインダに比べると磁気特性に与える影響は極めて小さく、かつ後述する焼結工程において容易に除去される。しかし、添加された全てを除去することが困難である一方、顆粒作製のために添加される量は、実際に顆粒の形態を維持するために最小限必要な量よりも多い。つまり、顆粒作製時には第1の有機液体に加えて液成分(第2の有機液体)を添加することにより合金粒子全体に顆粒作製に足りる湿分を与える。このために添加される第1の有機液体及び液成分(第2の有機液体)の量は、顆粒を構成するために最低限必要な湿分よりも多い。そこで本発明では、顆粒作製に必要な量を第1の有機液体と液成分(第2の有機液体)の合計として添加し、顆粒を作製した後に、液成分(第2の有機液体)を除去して顆粒に残量する有機液体(第1の有機液体)を制御しようというものである。
液成分(第2の有機液体)の除去を行う具体的な手段は特に限定されないが、減圧雰囲気に顆粒を晒して揮発させることが簡易かつ効果的である。本発明では、液成分(第2の有機液体)の飽和蒸気圧が第1の有機液体よりも高いため、減圧雰囲気の圧力を調整することにより、液成分(第2の有機液体)のみを除去することができる。減圧雰囲気は室温であってもよいが、加熱された減圧雰囲気とすることもできる。また、大気圧での加熱によっても液成分(第2の有機液体)の除去を行うことができる。
減圧雰囲気の圧力は、第1の有機液体の飽和蒸気圧、液成分(第2の有機液体)の飽和蒸気圧に応じて定める必要があるが、高すぎると液成分(第2の有機液体)の揮発が十分に進まない。一方、圧力が低すぎると有機液体の揮発が急激であるため顆粒に残留する有機液体の制御するのが難しくなる。そこで本発明は、減圧雰囲気の圧力を101〜10-2Torrの範囲とすることが好ましい。ただし、加熱された減圧雰囲気の場合は、7×102〜10-1Torrの範囲で足りる。
加熱温度が高すぎると顆粒を構成する合金粒子に酸化が生じ磁気特性の劣化を招くおそれがある。したがって加熱する場合には、加熱温度を40〜80℃とすることが好ましい。
以上のようにして液成分(第2の有機液体)が除去された顆粒に第1の有機液体が残留していないと顆粒の形態を維持することができない。一方、顆粒に残留する第1の有機液体の量が多すぎると磁気特性向上の効果を享受することができない。そこで本発明では、顆粒に残留する第1の有機液体の量は6wt%以下(ただし、0を含まず)の範囲とすることが好ましい。より好ましい顆粒に残留する第1の有機液体の量は0.1〜4wt%、さらに好ましい顆粒に残留する第1の有機液体の量は0.2〜3wt%である。この程度の量が残留していれば、次工程である磁場中成形時の金型への付着を防止することができる。
以上のようにして得られた顆粒は磁場中成形に供される。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3t/cm2の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増又は漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
印加する磁場は、12〜20kOe程度とすればよい。この程度の磁場を印加することにより、顆粒は崩壊して合金粒子に分解される。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
ここで、上記のようにして磁場中成形するに際し、成形体が形成された状態での有機液体の残留量は、45vol%以下(10wt%以下)であるのが好ましい。R−T−B系焼結磁石の製造工程における成形体密度は、55〜60%であり、残留する有機液体は成形体の空隙部分にのみ実質的に存在し得るからである。有機液体の残留量が45vol%程度より多くなると、成形時に、有機液体は金型キャビティ内で成形圧力によって圧縮され、これによって成形体がうまく成形できなくなる。より具体的には、成形圧力から解放された液体が元の容積に戻ろうとするため、成形体に割れが生じることがある。ここで、残留量は、顆粒を形成する粉の重量に対し、顆粒中に存在する有機液体の重量濃度(wt%)で規定される。残留量を正確に計測するには、顆粒から有機液体のみを揮発させ、その重量変化を測定する。このとき、顆粒の酸化による重量変動の影響を避けるため、容器内に顆粒を入れ、これを高真空にする、あるいは真空や不活性雰囲気下で加熱し、有機液体を揮発させて、そのときの重量変化を計測するのが好ましい。
次いで、成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行なう場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
以上のようにして得られるR−T−B系焼結磁石は、R:25〜35wt%、B:0.5〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02〜0.5wt%、Zr:0.03〜0.3wt%、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有することが好ましい。この組成を有するR−T−B系焼結磁石は、酸素量が低い場合であっても、結晶粒の異常成長が抑制される。
また本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが好ましい。
本発明のR−T−B系焼結磁石は、その酸素量を2500ppm以下とする。酸素量が多いと非磁性成分である酸化物相が増大して、磁気特性を低下させる。そこで本発明では、焼結体中に含まれる酸素量を、2500ppm以下、望ましくは2000ppm以下、さらに望ましくは1500ppm以下とする。ただし、単純に酸素量を低下させたのでは、粒成長抑制効果を有していた酸化物相が減少し、焼結時に十分な密度上昇を得る過程で粒成長が容易に起こる。そこで、本発明ではZrを所定量添加することを推奨する。
<第1実験例>
ストリップキャスト法により、23.2wt%Nd−5.75wt%Dy−0.55wt%Pr−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−0.23wt%Zr−1wt%B−Bal.Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行う水素粉砕処理を行った。なお、この水素粉砕処理の工程から後述する焼結の工程までは、酸素量が200ppm以下の雰囲気下で工程が実施された。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行う程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5μmの微粉砕粉末を得た。
以上の微粉砕粉末に対して、実験例1〜7の有機液体として、ターピネオール、エタノール、メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、酢酸エチルを、それぞれ添加した後に、乳鉢で十分に混練した。各有機液体は、微粉砕粉末100gに対し2gを添加した。なお、酢酸エチルを添加した実験例7は、参考例である。
この混練物から以下のようにして顆粒を作製した。所定の間隔を隔てて、50メッシュの篩(第1篩)と83メッシュの篩(第2篩)を上下方向に配置した。なお、第1篩が上側に位置している。第1篩の上に、得られた混練物を載せた後に、第1篩及び第2篩をともに所定時間振動させた。振動終了後に、第2篩上に残存した顆粒を採取した。この顆粒は、第1篩及び第2篩の目開き寸法より、180〜300μmの粒径を有していることになる。
顆粒化がなされたものについて、以下の方法に基づいて顆粒の安息角を測定した。その結果を表2に合わせて示す。なお、表2には、比較例1として、顆粒化する前の微粉砕粉末の安息角を、また比較例2として、バインダとしてポリスチレンを含むスラリをスプレードライして得た顆粒の安息角を、それぞれ示した。また、図1は、実験例1〜7の顆粒及び比較例1の微粉砕粉末(生材)の外観のSEM写真を示す。
安息角測定方法:60mmφの円のテーブルの上に、一定高さからふるいを通して少しずつ顆粒を落下させた。顆粒の山が崩壊する直前で顆粒の供給を停止した。円テーブルの上にできた顆粒の山の底角を測定した。円テーブルを120°ずつ回転し、計3箇所について角度を測定し、その平均を安息角とした。
Figure 0004636240
得られた顆粒を磁場中成形した。具体的には、15kOeの磁場中で1.4t/cm2の圧力で成形を行い、成形体を得た。図2は、このようにして得た成形体のSEM写真であり、(a)は実施例1の成形体のSEM写真、(b)は比較例1の成形体のSEM写真である。
図2(a)に示すように、有機液体を用いて顆粒化された顆粒から形成された成形体は、微粉砕粉末を顆粒化することなく形成した成形体(図2(b)参照)と比較して、空孔が少なく、緻密なものとなっている。
得られた成形体を真空中及びAr雰囲気中で1080℃まで昇温し4時間保持して焼結を行った。次いで得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
得られたR−T−B系焼結磁石の磁気特性を測定した結果を表2に示す。なお、表2には微粉砕粉末を顆粒化することなく上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られたR−T−B系焼結磁石(比較例1)、バインダとしてポリスチレンを含むスラリをスプレードライして得られた顆粒を上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られたR−T−B系焼結磁石(比較例2)の磁気特性も合わせて示している。なお、比較例2は脱バインダ処理を行っていない。
表2に示すように、微粉砕粉末の安息角が64°であるのに対して、有機液体を用いて顆粒化することにより安息角を50°以下とし流動性を向上することができる。また、有機液体を用いた顆粒から作製されたR−T−B系焼結磁石は、微粉砕粉末を磁場中成形して得られたR−T−B系焼結磁石(比較例1)と同等の磁気特性を備えることがわかる。特に、PVA等のバインダを用いた顆粒からR−T−B系焼結磁石を作製する場合、比較例2を見ればわかるように、脱バインダ処理を行わなければ磁気特性の低下が著しく、製造工程を簡略化しつつ高い磁気特性を得ることができる本発明の効果は顕著である。
次に、有機液体としてターピネオールを用いて、その残留量が及ぼす影響を確認した。その結果を表3及び図3に示す。ここで図3の(a)は残留量0.5wt%、(b)は残留量1wt%、(c)は残留量2.5wt%の顆粒の断面のSEM写真である。
なお、顆粒の残留量の調整はターピネオールを6.5wt%添加した後、10-3Torrの減圧雰囲気に顆粒を晒す時間を調整することで制御した。
Figure 0004636240
表3及び図3に示すように、有機液体であるターピネオールの残留量が多くなるほど、安息角が小さくなり、流動性が向上することがわかる。しかし、有機液体としてのターピネオールの残留量が多すぎると、磁気特性の低下が顕著になる。以上の結果より、有機液体の残留量は、0〜6wt%とすることが望ましく、より望ましくは0〜5wt%、さらに望ましくは0〜2.5wt%とする(0を含まず)。
また、表3に示すように、R−T−B系焼結磁石における有機液体の残留量が多くなると、磁気特性が低下する傾向があった。これは液体による架橋効果が増え、磁場配向しにくくなったためと考えられる。
さらに、有機液体の残留量が減ると安息角が増加する傾向も確認できる。これは、有機液体の残留量が少なくなると微粉砕粉末の接合力が弱くなり、その結果微粉の付着が発生したためと考えられる。
流動性の良い顆粒を用いるメリットとして、狭間口の金型への粉体充填性の容易さが挙げられる。それを確認するためにフィーダテストを行った。通常の量産工程において金型へ粉体を供給するためにフィーダという装置が使用される。このフィーダは、金型の上で水平方向に往復運動をする箱であり、箱の下部には供給孔が空けられている。箱の中には一定量の粉がためられており、この箱が往復運動すると、箱下部の供給孔から金型内部に粉が落ちる仕組みになっている。流動性の良い粉ほど、一定回数の往復運動で多くの粉が落ちることになる。そこで、金型キャビティに見立てた3mm×20mmの空隙を設け、この上で、実験例1のターピネオールを用いて形成した顆粒、実施例2のエタノールを用いて形成した顆粒、比較例1の微粉砕粉末、をそれぞれ往復運動させた。往復運動のスピードは0.4m/sとし、5往復で上記隙間に落下した粉の重量を測定した。この5往復を1回の測定対象とし、15回の測定を繰り返した。測定結果を図4に示すが、顆粒を用いることにより、金型キャビティへの充填性を向上できることが確認された。また、実験例1と実験例2の顆粒のデータの比較から、安息角が小さいほど、金型キャビティへの充填性が向上することも確認された。
<第2実験例>
ストリップキャスト法により、23.2wt%Nd−5.75wt%Dy−0.55wt%Pr−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−0.23wt%Zr−1wt%B−Bal.Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行なう水素粉砕処理を行なった。なお、この水素粉砕処理の工程から後述する焼結の工程までは、酸素量が200ppm以下の雰囲気下で工程が実施された。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行なう程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5μmの微粉砕粉末を得た。
以上の微粉砕粉末に対して、第1の有機液体(ターピネオール)、第2の有機液体(トルエン)を表4に示す量を添加した後に、乳鉢で十分に混練した。この混練物から以下のようにして顆粒を作製した。所定の間隔を隔てて、50メッシュの篩(第1篩)と83メッシュの篩(第2篩)を上下方向に配置した。なお、第1篩が上側に位置している。第1篩の上に、得られた混練物を載せた後に、第1篩及び第2篩をともに所定時間振動させた。振動終了後に、第2篩上に残存した顆粒を採取した。この顆粒は、第1篩及び第2篩の目開き寸法より、180〜300μmの粒径を有していることになる。これら顆粒を1Torrの雰囲気に10〜120分間保持した。その後、以下の方法に基づいて顆粒の安息角を測定した。その結果を表4に合わせて示す。なお、表4には顆粒化する前の微粉砕粉末の安息角も合わせて示している。
安息角測定方法:60mmφの円のテーブルの上に、一定高さからふるいを通して少しずつ顆粒を落下させた。顆粒の山が崩壊する直前で顆粒の供給を停止した。円テーブルの上にできた顆粒の山の底角を測定した。円テーブルを120°ずつ回転し、計3箇所について角度を測定し、その平均を安息角とした。
Figure 0004636240
得られた顆粒を磁場中成形した。具体的には、15kOeの磁場中で1.4t/cm2の圧力で成形を行い、成形体を得た。
得られた成形体を真空中及びAr雰囲気中で1080℃まで昇温し4時間保持して焼結を行った。次いで得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
得られたR−T−B系焼結磁石の磁気特性を測定した結果を表4に示す。なお、表4には微粉砕粉末を顆粒化することなく上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られたR−T−B系焼結磁石の磁気特性も合わせて示している(表4の最下段)。
表4に示すように、微粉砕粉末の安息角が64°であるのに対して、有機液体を用いて顆粒化することにより安息角を50°以下とし流動性を向上することができる。また、有機液体を用いた顆粒から作製されたR−T−B系焼結磁石は、微粉砕粉末を磁場中成形して得られたR−T−B系焼結磁石と同等の磁気特性を備えることがわかる。なお、減圧雰囲気に晒した後のターピネオール、トルエンの残留量を確認したところ、ターピネオールは添加した量がほとんどそのまま残存し、トルエンは全て揮発していた。
表5に示す有機液体(第1の有機液体、第2の有機液体)を用いた以外は、上記と同様にしてR−T−B系焼結磁石を得て、上記と同様にして安息角、磁気特性を評価した。その結果を表5に示す。
Figure 0004636240
ストリップキャスト法により、23.2wt%Nd−5.75wt%Dy−0.55wt%Pr−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−0.23wt%Zr−1wt%B−Bal.Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行なう水素粉砕処理を行なった。なお、この水素粉砕処理の工程から後述する焼結の工程までは、酸素量が200ppm以下の雰囲気下で工程が実施された。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行なう程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が5μmの微粉砕粉末を得た。
以上の微粉砕粉末に対して、表6に示すように第1の有機液体、第2の有機液体を表6に示す量を添加した後に、乳鉢で十分に混練した。この混練物から以下のようにして顆粒を作製した。所定の間隔を隔てて、50メッシュの篩(第1篩)と83メッシュの篩(第2篩)を上下方向に配置した。なお、第1篩が上側に位置している。第1篩の上に、得られた混練物を載せた後に、第1篩及び第2篩をともに所定時間振動させた。振動終了後に、第2篩上に残存した顆粒を採取した。この顆粒は、第1篩及び第2篩の目開き寸法より、180〜300μmの粒径を有していることになる。これら顆粒を1Torrの雰囲気に10〜120分間保持した。その後、以下の方法に基づいて顆粒の安息角を測定した。その結果を表6に合わせて示す。なお、表6には顆粒化する前の微粉砕粉末の安息角も合わせて示している。
Figure 0004636240
次工程である磁場中成形に先立って、金型への充填重量のばらつきを前述したフィーダを用いて評価した。評価は以下に従って行った。金型キャビティの間口を5mm×15mmとして、この上をフィーダを往復運動させてすり切り充填を行った。粉末は10g程度金型に充填されるように、深さ方向を調節した。往復運動のスピードは0.4m/sとして粉体を充填した。使用した粉体は顆粒化されていない微粉砕粉末及び有機液体を用いた顆粒である。すり切り充填をするのに、顆粒化していない微粉砕粉末は50往復、顆粒は7往復を要した。これを50ショット行い、重量の標準偏差σを平均重量で割ったσ/ave.を求めた。また、縦軸に各ショットでの充填重量を平均重量で割った値(%)をとった測定結果を図5に示す。これより微粉砕粉末はすり切り充填でも重量が安定しない、すなわち流動性が悪いためキャビティ内で密度のばらつきがあることがわかり、結果クラックが発生していると考えられるが、顆粒ではそのようなばらつきは無くなっていることが確認できる。
得られた顆粒を磁場中成形した。具体的には、15kOeの磁場中で1.4t/cm2の圧力で成形を行い、成形体を得た。この際、成形体のクラック有無、金型への粉体の付着及び成形体の割れ・欠けを判定した。その結果を、表6に示す。表6に示すように、本発明による顆粒を用いることにより、成形工程での不具合を低減できることがわかる。なお、表6の◎等の内訳は以下の通りである。
◎:クラック、金型付着、割れ・欠けの発生が、全数の3%未満
○:クラック、金型付着、割れ・欠けの発生が、全数の3〜15%
×:クラック、金型付着、割れ・欠けの発生が、全数の15%超
得られた成形体を真空中及びAr雰囲気中で1080℃まで昇温し4時間保持して焼結を行った。次いで得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
得られたR−T−B系焼結磁石の磁気特性を測定した結果を表6に示す。また、得られたR−T−B系焼結磁石の酸素量を測定し、その結果を表6に併せて示す。なお、表6には微粉砕粉末を顆粒化することなく上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られたR−T−B系焼結磁石の磁気特性、酸素量も併せても合わせて示している。
第1実験例における顆粒、及び比較例1の微粉砕粉末(生材)の外観のSEM写真である。 第1実験例における成形体のSEM写真である。 第1実験例における、(a)は残留量0.5wt%、(b)は残留量1wt%、(c)は残留量2.5wt%の顆粒の断面のSEM写真である。 第1実験例におけるフィーダテストの結果を示すグラフである。 実施例1における充填重量ばらつきの試験結果を示すグラフである。

Claims (6)

  1. R−T−B系焼結磁石(ただし、Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを主体とする少なくとも1種以上の遷移金属元素)の製造に用いられる原料粉体であって、
    前記原料粉体は、前記原料粉体を構成する合金粒子が有機液体で付着された顆粒の形態を有し、かつ前記合金粒子の酸素量が2500ppm以下であるとともに、
    前記有機液体は、トルエン、エタノール、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ターピネオール、オクタノールから選択される1種又は2種であることを特徴とするR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体。
  2. 前記合金粒子は、R:25〜35wt%、B:0.5〜4.5wt%、Al及びCuの1種又は2種:0.02〜0.5wt%、Zr:0.03〜0.3wt%、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有することを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体。
  3. 前記合金粒子の酸素量が2000ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体。
  4. 前記顆粒は、第1の有機液体と前記第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い液成分で付着していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体。
  5. 前記液成分は、前記第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い第2の有機液体であることを特徴とする請求項4に記載のR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体。
  6. 前記合金粒子に対して、前記第1の有機液体の存在量が6wt%以下(ただし、0を含まず)、前記第2の有機液体の存在量が15wt%以下(ただし、0を含まず)であることを特徴とする請求項5に記載のR−T−B系焼結磁石製造用原料粉体。
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