JP2007227466A - 希土類焼結磁石の製造方法、顆粒の製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】優れた流動性を有する顆粒を用い、成形体の寸法精度の向上及び成形体の強度向上を通じて生産性の向上を図ることができる希土類焼結磁石の製造方法を提供する。
【解決手段】所定組成の原料合金粉末、金属粉末から構成される強度向上助剤及び有機液体を含む組成物を混合して顆粒を得る工程と、この顆粒を加圧成形して成形体を得る工程と、成形体を焼結する工程と、を備えるようにした。金属粉末から構成される強度向上助剤を所定のタイミングで添加して得られた顆粒を成形すると、成形体強度が向上する。
【選択図】図2

Description

本発明は、顆粒の製造方法に関し、特に原料粉体を顆粒化することにより希土類焼結磁石を得る方法に関するものである。
希土類焼結磁石を製造する際、焼結に供する原料粉を微細化することにより飽和磁束密度及び保磁力等の磁気特性を確保している。ところが、以下の理由により原料粉の微細化は成形体の寸法精度、生産性を阻害する要因となる。
原料粉末は磁場中での加圧成形により成形体を構成する。この磁場中成形において、静磁場又はパルス磁場を印加して原料粉末の粒子を配向させる。この磁場中成形時、原料粉末が微細であるほどその流動性が悪く、金型への充填性が問題となる。粉末の金型への充填性が劣ると、金型へ粉末を十分に充填することができないために成形体の寸法精度が得られない、あるいは金型への充填自体に時間がかかって生産性を阻害するという問題がある。特に薄肉形状や複雑形状の成形体を精度よくかつ効率的に作製することは困難である。
原料粉末の流動性向上の手段の一つとして原料粉末の顆粒化が試みられている。例えば、特開平8−107034号公報(特許文献1)および特開平8−88111号公報(特許文献2)は希土類金属粉末にバインダを添加したスラリをスプレードライすることにより顆粒化する提案を行っている。
また、特公平7−6025号公報(特許文献3)は、希土類金属粉末に磁界を印加して顆粒化する提案を行っている。
特開平8−107034号公報 特開平8−88111号公報 特公平7−6025号公報
特許文献3によれば、加圧体作製時の磁界印加工程及び顆粒を金型に充填後、磁気特性を向上させるための交流磁界印加工程を要する。また、磁界を印加した顆粒であるため残留磁化による流動性の低下が懸念される。
特許文献1及び2によれば、顆粒を作製することにより流動性を向上することはできる。しかし、合金粒子同士を例えばPVA(ポリビニルアルコール)といったバインダで付着しているため、合金粒子同士の付着力が比較的強い。このように付着力の強い顆粒を磁場中成形に供しても、各合金粒子を配向させることは容易ではない。したがって、得られる希土類焼結磁石は配向度が低く磁気特性、特に残留磁束密度(Br)が低いものとなる。また、バインダに含まれる炭素が磁気特性低下の要因となることから、このバインダを除去する工程が必要となる。
また、原料粉末は磁場中で加圧成形されるが、得られる成形体が所定の強度を備えている必要がある。優れた流動性を有する顆粒を用いたとしても、その後のハンドリングにおいて成形体に割れやクラックが生じたのでは最終的に製品歩留まりを向上させることができないからである。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、優れた流動性を有する顆粒を用い、成形体の寸法精度の向上及び成形体の強度向上を通じて生産性の向上を図ることができる希土類焼結磁石の製造方法を提供することを目的とする。
上述したように、従来のバインダを用いる顆粒化技術では、バインダを溶解する溶媒として、また、合金粒子を分散する分散媒として、所謂有機溶媒を所定量含むスラリを作製していた。本発明者らは、この有機溶媒に着目した。その結果、有機溶媒(以下、有機液体)のみで顆粒を作製することができ、この顆粒は金型充填時の流動性に優れること、さらに有機液体のみで作製されたこの顆粒は合金粒子同士の付着力が比較的弱いため、磁場中成形時に印加される磁場により合金粒子に分離して、良好な配向状態を実現できることを確認した。そして、金属粉末から構成される強度向上助剤を所定のタイミングで添加して得られた顆粒を成形すると、成形体強度が向上することを確認した。すなわち、本発明では所定組成の原料合金粉末、金属粉末から構成される強度向上助剤及び有機液体を含む組成物を混合して顆粒を得る工程と、この顆粒を加圧成形して成形体を得る工程と、成形体を焼結する工程と、を備えることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法である。
一般に希土類焼結磁石は原料合金を粗粉砕及び微粉砕した後に成形に供される。本発明ではこの成形工程に先立ち顆粒を作製するが、顆粒が得られる前のタイミング、例えば微粉砕後に強度向上助剤を添加することができる。
強度向上助剤は遷移金属元素の1種又は2種以上であることが好ましい。なかでも、Co、Niのうち少なくともいずれかを選択することが好ましい。遷移金属元素以外の元素としては、Zn、Al、Snの1種又は2種以上を強度向上助剤として用いることができる。
強度向上助剤の添加量は原料合金粉末に対し0.05〜0.8wt%とすることが好ましい。
原料合金粉末に対し、金属粉末から構成される強度向上助剤及び有機液体を添加、混合して顆粒とすることにより、成形体の強度が向上し、具体的には0.50MPa以上の抗折強度を得ることができる。なお、本願における抗折強度は、日本工業規格JIS R 1601に準じて行った抗折強度試験結果での値である。
本発明において、原料合金粉末の組成はR14B相(Rは希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素、TはFe又はFe及びCoを含む遷移金属元素から選択される1種又は2種以上の元素)を含むものとすることが望ましい。
また本発明は、所定組成の原料合金粉末に対し、金属粉末から構成される強度向上助剤及び有機液体を添加、混合して顆粒とすることを特徴とする顆粒の製造方法としても捉えることができる。
本発明によれば、有機液体を用いて原料合金粉末を顆粒化するに際し、強度向上助剤として機能する金属粉末を添加することにより、希土類焼結磁石を製造する過程の磁場中成形において、金型への充填量のばらつきを低減するとともに、金型への付着の問題を解消でき、かつ成形体強度を向上させることができる。したがって、希土類焼結磁石を生産性よく、かつ高い歩留まりで製造することができる。
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の顆粒を模式的に示す図である。図1に示すように、顆粒10は合金粒子1と、合金粒子1間に点在する強度向上助剤2を含む。この顆粒10において、合金粒子1は図示しない有機液体により互いに付着されているとともに、合金粒子1と強度向上助剤2は有機液体により互いに付着されている。このような液体(本発明では有機液体)による付着力は、液体架橋力と称されている。なおここで、有機液体は、一般に有機溶媒と呼ばれている物質を包含するが、本発明では溶媒として機能しないことから有機液体と呼んでいる。
有機液体による付着力、つまり液体架橋力は、従来のPVA等のバインダによる付着力に比べて極めて弱い。したがって、本発明により得られる顆粒10は、磁場中成形時に印加される磁場によって容易に崩壊し合金粒子1に分離する。そのため、高い配向度を得ることができる。これまで、PVA等のバインダを用いることが顆粒作製の前提として考えられてきたが、本発明のように有機液体を用いた場合でも、流動性の高い顆粒10が得られることを見出した価値は大きい。しかも、有機液体が顆粒10に存在しているため、金型への顆粒10の付着も防止される。加えて、この顆粒10は、磁場印加により崩壊するため、磁場中成形を行う希土類焼結磁石にとって好適である。さらに、有機液体は、従来のバインダであるPVA等の樹脂に比べて、成形体からの除去が極めて容易であり、従来の顆粒技術を用いた場合には必須とされていた脱バインダ工程を省くことが可能であり、工程的な利点をも含んでいる。
有機液体を用いて合金粒子1を顆粒化して成形すると、微粉末を用いて作製した成形体、つまり顆粒化せずに作製した成形体よりも成形体強度が向上する。これは、上述した液体架橋によるものと考えられるが、有機液体の量が多すぎると成形不良や磁気特性の劣化につながる。このため、添加できる有機液体の量には制限がある。
そこで、本発明では、有機液体を用いて原料合金粉末を構成する合金粒子1を顆粒化するに際し、有機液体の量を増加させるのではなく、所定組成の金属粉末から構成される強度向上助剤2を添加することで、成形体強度を向上させる。これにより、微粉末を用いて顆粒化せずに作製した成形体に比べて成形体の強度が40%以上向上する。ここで、強度向上助剤2の添加量が少量であるにも拘わらず成形体強度が向上するということは、その効果に顕著性がある。また強度向上助剤2の添加量は少量ですむために、磁気特性の劣化を最小限に抑えることができる。
強度向上助剤2としては遷移金属元素の1種又は2種以上、特にCo粉末、Ni粉末が好ましく、Co粉末が特に好ましい。これらの金属元素を選択することにより、成形体強度及び所望の磁気特性を兼備することができる。
なお、Al、Zn、Snは遷移金属元素ではないが、これらを添加した場合にも成形体の強度向上という効果が期待できる。
成形体強度及び所望の磁気特性を兼備できるという観点から、遷移金属元素の1種又は2種以上、特にCo粉末、Ni粉末が好ましく、Co粉末が特に好ましい。
強度向上助剤2の添加量は、原料合金粉末に対し、0.05〜0.8wt%とすることが好ましい。強度向上助剤2の添加量が増加するにつれて成形体の強度は向上するが、その添加量が0.8wt%を超えると、特に原料合金粉末の組成に含まれない元素を強度向上助剤2として選択すると、磁気特性、特に保磁力の低下が見逃せなくなる。添加量が0.05wt%未満では、添加金属粉末を添加することによる成形体強度の向上という効果を十分に享受することができない。
但し、強度向上助剤2の添加量は、強度向上助剤2の種類に応じて設定する必要があるため、各強度向上助剤2として好適な金属粉末について、好ましい添加量、より好ましい添加量を表1に示しておく。
Figure 2007227466
強度向上助剤2の平均粒径は特に限定されるものではないが、1〜15μm程度とすることができる。但し、原料合金粉末を微粉砕した後の粒径に応じて適宜設定する必要があり、例えば、原料合金微粉末の平均粒径が1〜6μmであれば、添加金属粉末の平均粒径も同レベルとすることが好ましい。
強度向上助剤2の好ましい平均粒径は1〜12μm、より好ましくは1〜10μmである。上述した通り、強度向上助剤2の添加量は原料合金粉末に対し0.05〜0.8wt%と、微量であるため、強度向上助剤2を合金粒子1間に効率よく点在させるには、強度向上助剤2のサイズは微細である方が好ましい。
なお、強度向上助剤2の形状も特に限定されるものではない。
強度向上助剤2は焼結後には原料合金粉末に合金化して取り込まれるが、本発明が推奨する範囲内での添加量であれば希土類焼結磁石の磁気特性と成形体強度を兼備することができる。なお、強度向上助剤2の添加タイミングは後述する。
以下、図2を用いて希土類焼結磁石の製造工程順に、本発明を詳説する。図2に示すように、本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、原料合金作製工程(S101)、粗粉砕工程(S103)、微粉砕工程(S105)、有機液体顆粒作製工程(S107)、磁場中成形工程(S109)、焼結工程(S111)、時効処理工程(S113)を含むことができる。ここで、有機液体顆粒作製工程(S107)ならびに、有機液体顆粒作製前または有機液体顆粒作製時に上述した添加金属粉末を原料合金粉末に添加することが本発明の特徴的部分である。
<原料合金作製工程(S101)>
原料合金作製工程(S101)では、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により原料合金を作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化性雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板又は薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
R−T−B系焼結磁石を得る場合、R14B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法を本発明に適用することもできる。
なお、原料合金の酸素量は、通常、300ppm以下であり、この段階の酸素量は低い。ところが、以降の粉砕工程、磁場中成形工程において酸素量が増大する。したがって、本発明では、この工程における酸素量の増大を抑えるため、焼結に供されるまでの工程では、その雰囲気(合金が直接触れる雰囲気)の酸素量を200ppm以下とすることが好ましい。より好ましい酸素量は100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下である。
<粗粉砕工程(S103)>
粗粉砕工程(S103)では、原料合金作製工程(S101)で得られた原料合金を粗粉砕する。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。
まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行うことが効果的である。この水素放出処理は、R−T−B系焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
<微粉砕工程(S105)>
粗粉砕工程(S103)後、微粉砕工程(S105)に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。
混合法による場合、2種の合金の混合のタイミングは限定されるものではないが、微粉砕工程において低R合金及び高R合金を別々に粉砕した場合には、微粉砕された低R合金粉末及び高R合金粉末を窒素雰囲気中で混合する。低R合金粉末及び高R合金粉末の混合比率は、重量比で80:20〜97:3程度とすればよい。低R合金及び高R合金を一緒に粉砕する場合の混合比率も同様である。なお、成形時の潤滑及び配向性の向上を目的とした脂肪酸又は脂肪酸の誘導体や炭化水素、例えばステアリン酸系やオレイン酸系であるステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、炭化水素であるパラフィン、ナフタレン等を微粉砕時に0.01〜0.3wt%程度添加することができる。
<有機液体顆粒作製工程(S107)>
有機液体顆粒作製工程(S107)では、以上で得られた微粉砕粉末(原料合金粉末)を造粒して有機液体顆粒を作製する。本発明は有機液体を用いて顆粒10を作製するに際し、強度向上助剤2を添加する。
強度向上助剤2は、有機液体顆粒が得られる前、具体的には有機液体顆粒作製工程時、もしくはそれ以前に添加する。
有機液体顆粒作製工程時に添加する場合は微粉砕粉末に対して強度向上助剤2を添加することになる。この場合、(1)強度向上助剤2を微粉砕粉末に添加してから有機液体を添加し混合する形態、(2)強度向上助剤2及び有機液体を微粉砕粉末に同時に添加し混合する形態、(3)有機液体を微粉砕粉末に添加、混合している過程で強度向上助剤2を添加しさらに混合する形態が挙げられる。(2)の場合には、強度向上助剤2と有機液体とを予め混合してから微粉砕粉末に添加することが好ましい。
強度向上助剤2を有機液体顆粒作製工程前に添加する場合には、図3に示すように粗粉砕工程(S103)後かつ微粉砕工程(S105)前に添加すればよい。つまり、この場合には、粗粉砕粉末(合金粒子)に強度向上助剤2を添加した後、両者を微粉砕し、その後、有機液体が添加されることになる。
なお、顆粒作製後に強度向上助剤2を添加した場合、強度向上助剤2を顆粒10に付着させるための混合工程が必要となり、この混合により顆粒10が崩壊するおそれがあるため、強度向上助剤2は上述のいずれかのタイミングで添加することが好ましい。
本発明で用いる有機液体としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系(グリコールエーテル系を含む)化合物、エステル系(グリコールエステル系を含む)化合物、ケトン系化合物、脂肪酸系化合物、テルペン系化合物の1種又は2種から選択することができる。このような有機液体の具体例を挙げると、炭化水素系化合物としては、トルエン、キシレン、アルコール系化合物としては、エタノール、イソブチルアルコール、エーテル系化合物としては、ブチルセロソルブ、セロソルブ、カルビトール、ブチルカルビトール、エステル系化合物としては、酢酸エチル、ケトン系化合物としては、アセトン(ジメチルケトン)、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、テルペン系化合物としては、ピネン、ターピネオール等がある。
もちろん、ここに挙げた有機液体に限るものではなく、これ以外にも、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール等や、グリセリン等、他の有機液体を用いることも可能である。
有機液体を用いて作製された顆粒10は、有機液体が、少なくとも微粉砕粉末を構成する合金粒子1同士の接点に存在し、その液体架橋力によって合金粒子1同士が付着している。強度向上粒子2は図1に示したように顆粒10中に点在しており、有機液体を介して、または有機液体を介さずに合金粒子1に付着しているものと推察される。
なお、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上のために潤滑剤を添加した場合、この潤滑剤の固体成分が有機液体中に存在していてもよい。また、顆粒10の表面にも有機液体が存在し、潤滑剤の役割を果たすことができる。
有機液体を用いて作製された顆粒10は、所定の工程までその形状を維持している必要がある。一旦作製された顆粒10がその形状を維持できなくなると、顆粒10から脱落した微細な合金粒子1が顆粒10の周囲に付着した形態を成し、この形態の顆粒10は流動性を低下させる。したがって、本発明に用いる有機液体としては、容易に揮発しないことが好ましい。そこで本発明では、20℃における飽和蒸気圧が75mmHg(10kPa)以下の有機液体を用いることが好ましい。より好ましい20℃における飽和蒸気圧は20mmHg以下、さらに好ましい20℃における飽和蒸気圧は5mmHg以下である。
また、本発明に用いる有機液体は、室温では気化しないよう、沸点が50℃以上、より好ましくは100℃以上であるのが好ましい。
本発明に用いる有機液体はまた、顆粒10の形状を維持するために十分な付着力を合金粒子1間に付与する必要がある。そのために、有機液体の表面張力、粘度を特定することが本発明では好ましい。好ましい有機液体の表面張力は、20℃において20dyn/cm以上である。より好ましい20℃における表面張力は25dyn/cm以上、さらに好ましい20℃における表面張力は30dyn/cm以上である。また、好ましい有機液体の粘度は、20℃において0.35cp以上である。より好ましい20℃における粘度は1cp以上、さらに好ましい20℃における粘度は2cp以上である。
さらに、微粉砕粉末の酸化を防止するため、本発明に用いる有機液体は、酸素濃度が低く、また水への溶解度(水溶性)が低いものであるのが好ましい。表2に、上記に例示した有機液体の物性等を示した。
Figure 2007227466
微粉砕粉末に対する有機液体の添加量は特に制限されないが、有機液体の添加量が少なすぎると、合金粒子1同士に液体架橋を生じさせるに足る液量を確保することができないために、顆粒化が困難である。一方、有機液体の添加量が多すぎると、得られた顆粒10をそのまま磁場中成形する場合に液体が過剰に存在して成形を阻害するおそれがある。以上より、微粉砕粉末(合金粒子)に対する有機液体の添加量は1.5〜12wt%とすることを推奨する。より好ましい有機液体の添加量は1.5〜8wt%、さらに好ましい有機液体の添加量は2〜6wt%である。なお、有機液体の添加量が多い場合は、磁場中成形までにその一部を除去すればよいので、添加量が少ない場合に比べると本質的な問題とは言えない。なお、添加量の好ましい範囲は、有機液体の種類によって変わり、例えばターピネオールなら2〜6wt%、エタノールなら2〜12wt%である。
微粉砕粉末と有機液体とを用いて顆粒10を作製する方法は、従来公知の造粒法を適用すればよい。適用できる造粒方法としては、転動造粒法、振動造粒法、混合造粒法、流動造粒法、解砕造粒法、圧縮成形造粒法、押出造粒法、噴霧造粒法が掲げられる。微粉砕粉末と有機液体は、造粒法に応じて当該造粒法適用の前に混合、混練される場合と、造粒法適用時に混合、混練される場合がある。
本発明は、第1の有機液体と、第1の有機液体よりも飽和蒸気圧の高い液成分を用いて顆粒10を作製することもできる。この液成分は、有機液体(第2の有機液体)であることが好ましいが、たとえば水等の有機液体以外の液体を用いてもよい。水(20℃における飽和蒸気圧=17.5mmHg)は合金粒子1を酸化するおそれがあるが、添加する量が少ないこと、さらに、合金粒子1を酸化する恐れの少ない純水等を用いることができることから、本発明では有機液体以外の液成分を許容する。
表2に各種有機液体の飽和蒸気圧を示しており、この値を基準として第1の有機液体、第2の有機液体を選定すればよい。例えば、第1の有機液体としては、ピネン、メンタン、ターピネオールを含むテルペン系化合物、酢酸ブチルカルビトール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコール、カルビトール、セロソルブ、ブチルセロソルブを用いることができる。また、第2の有機液体としては、トルエン、キシレン、エタノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸n−ブチル、ジブチルエーテルを用いることができる。ただし、これはあくまで例示であって、本発明の範囲を確定するものではない。例えば、第1の有機液体として例示されたもののなかで、第1の有機液体、第2の有機液体を構成することもできるし、第2の有機液体として例示されたもののなかで、第1の有機液体、第2の有機液体を構成することもできる。
微粉砕粉末に対する第1の有機液体の添加量は6wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。第1の有機液体がないと液体架橋による顆粒形成が容易でなくなり、一方6wt%添加すれば形成された顆粒10の形態維持に十分であり、それを超える添加は磁気特性を低下させる要因となる。そこで第1の有機液体の添加量は6wt%以下(ただし、0を含まず)とするのが好ましい。また、第2の有機液体の添加量は15wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。第2の有機液体がないと顆粒作製に必要な湿分を微粉砕粉末に対して与えることが難しく、15wt%を超えると湿分が多くなりすぎて、第2の有機液体除去に工数がかかることになる。そこで第2の有機液体の添加量は、15wt%以下(ただし、0を含まず)とすることが好ましい。
以上のようにして得られた顆粒10を構成する液成分(第2の有機液体)は除去される。有機液体は、従来のPVA等のバインダに比べると磁気特性に与える影響は極めて小さく、かつ後述する焼結工程において容易に除去される。しかし、添加された全てを除去することが困難である一方、顆粒作製のために添加される量は、実際に顆粒10の形態を維持するために最小限必要な量よりも多い。つまり、顆粒作製時には第1の有機液体に加えて液成分(第2の有機液体)を添加することにより合金粒子1全体に顆粒作製に足りる湿分を与える。このために添加される第1の有機液体及び液成分(第2の有機液体)の量は、顆粒10を構成するために最低限必要な湿分よりも多い。そこで、顆粒作製に必要な量を第1の有機液体と液成分(第2の有機液体)の合計として添加し、顆粒10を作製した後に、液成分(第2の有機液体)を除去して顆粒10に残量する有機液体(第1の有機液体)を制御することが好ましい。
液成分(第2の有機液体)の除去を行う具体的な手段は特に限定されないが、減圧雰囲気に顆粒10を晒して揮発させることが簡易かつ効果的である。本発明では、液成分(第2の有機液体)の飽和蒸気圧が第1の有機液体よりも高いため、減圧雰囲気の圧力を調整することにより、液成分(第2の有機液体)のみを除去することができる。減圧雰囲気は室温であってもよいが、加熱された減圧雰囲気とすることもできる。また、大気圧での加熱によっても液成分(第2の有機液体)の除去を行うことができる。
減圧雰囲気の圧力は、第1の有機液体の飽和蒸気圧、液成分(第2の有機液体)の飽和蒸気圧に応じて定める必要があるが、高すぎると液成分(第2の有機液体)の揮発が十分に進まない。一方、圧力が低すぎると有機液体の揮発が急激であるため顆粒10に残留する有機液体の制御するのが難しくなる。そこで本発明は、減圧雰囲気の圧力を10〜10−2Torrの範囲とすることが好ましい。ただし、加熱された減圧雰囲気の場合は、7×10〜10−1Torrの範囲で足りる。
加熱温度が高すぎると顆粒10を構成する合金粒子1に酸化が生じ磁気特性の劣化を招くおそれがある。したがって加熱する場合には、加熱温度を40〜80℃とすることが好ましい。
以上のようにして液成分(第2の有機液体)が除去された顆粒10に第1の有機液体が残留していないと顆粒10の形態を維持することができない。一方、顆粒10に残留する第1の有機液体の量が多すぎると磁気特性向上の効果を享受することができない。そこで本発明では、顆粒10に残留する第1の有機液体の量は6wt%以下(ただし、0を含まず)の範囲とすることが好ましい。より好ましい顆粒10に残留する第1の有機液体の量は0.1〜4wt%、さらに好ましい顆粒10に残留する第1の有機液体の量は0.2〜3wt%である。この程度の量が残留していれば、次工程である磁場中成形時の金型への付着を防止することができる。
<磁場中成形工程(S109)>
磁場中成形工程(S109)では、以上のようにして得られた顆粒10を磁場中成形する。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cmの範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増又は漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
印加する磁場は、12〜20kOe程度とすればよい。この程度の磁場を印加することにより、顆粒10は崩壊して合金粒子1に分解される。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
本発明では、添加金属粉末を添加して有機液体顆粒を作製しているが、後述する実施例で示すように、この有機液体顆粒を用いることにより、成形体強度を大きく向上させることができる。具体的には0.48MPa以上、さらには0.50MPa以上という高い抗折強度を得ることができる。なお、本願における抗折強度は、日本工業規格JIS R 1601に準じて行った抗折強度試験結果での値である(後述する実施例でも同様)。
ここで、上記のようにして磁場中成形するに際し、成形体が形成された状態での有機液体の残留量は、45vol%以下(10wt%以下)であるのが好ましい。R−T−B系焼結磁石の製造工程における成形体密度は、55〜60vol%であり、残留する有機液体は成形体の空隙部分にのみ実質的に存在し得るからである。有機液体の残留量が45vol%程度より多くなると、成形時に、有機液体は金型キャビティ内で成形圧力によって圧縮され、これによって成形体がうまく成形できなくなる。より具体的には、成形圧力から解放された液体が元の容積に戻ろうとするため、添加金属粉末を添加して作製した有機液体顆粒を用いたとしても成形体に割れが生じることがある。ここで、有機液体の残留量は、顆粒10を形成する粉の重量に対し、顆粒10中に存在する有機液体の重量濃度(wt%)で規定される。残留量を正確に計測するには、顆粒10から有機液体のみを揮発させ、その重量変化を測定する。このとき、顆粒10の酸化による重量変動の影響を避けるため、容器内に顆粒10を入れ、これを高真空にする、あるいは真空や不活性雰囲気下で加熱し、有機液体を揮発させて、そのときの重量変化を計測するのが好ましい。
<焼結工程(S111)>
焼結工程(S111)では得られた成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
<時効処理工程(S113)>
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行う場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行うと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行なう場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
次に本発明が適用される希土類焼結磁石について説明する。
本発明は、特にR−T−B系焼結磁石に適用することが好ましい。R−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。好ましいRの量は28〜35wt%、さらに好ましいRの量は29〜33wt%である。
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。好ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに好ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Coを2wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜1wt%、さらに望ましくは0.3〜0.7wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Al及びCuの1種又は2種を0.02〜0.5wt%の範囲で含有することができる。この範囲でAl及びCuの1種又は2種を含有させることにより、得られるR−T−B系焼結磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Alを添加する場合において、好ましいAlの量は0.03〜0.3wt%、さらに好ましいAlの量は、0.05〜0.25wt%である。また、Cuを添加する場合において、好ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含まず)、さらに好ましいCuの量は0.03〜0.12wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが好ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を2500ppm以下、さらには2000ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは、1500ppm以下である。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
上述の通り、強度向上助剤2は焼結後には原料合金粉末に合金化して取り込まれる。よって、例えば添加金属粉末としてCo粉末を選択した場合には、このCo粉末の添加量を考慮して原料合金の組成を決定し、最終的にR−T−B系焼結磁石中のCoが2wt%を超えないように調整する必要がある。
ストリップキャスト法により、26.5wt%Nd−5.9wt%Dy−0.25wt%Al−0.5wt%Co−0.07wt%Cu−1.0wt%B−Feの組成を有する原料合金を作製した。
次いで、室温にて原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で600℃×1時間の脱水素を行なう水素粉砕処理を行なった。
水素粉砕処理が施された合金に、粉砕性の向上並びに成形時の配向性の向上に寄与する潤滑剤を0.05〜0.1%混合した。潤滑剤の混合は、例えばナウターミキサー等により5〜30分間ほど行なう程度でよい。その後、ジェットミルを用いて平均粒径が4.0μmの微粉砕粉末を得た。
以上の微粉砕粉末に対して、実験1〜5では表3に示す金属粉末(平均粒径2μm)、つまり強度向上助剤2をそれぞれ0.2wt%添加した。また有機液体としてターピネオールを微粉砕粉末に対して2.0wt%添加した後に、微粉砕粉末、金属粉末及び有機液体を乳鉢で十分に混練した。
この混練物から以下のようにして顆粒を作製した。所定の間隔を隔てて、50メッシュの篩(第1篩)と83メッシュの篩(第2篩)を上下方向に配置した。なお、第1篩が上側に位置している。第1篩の上に、得られた混練物を載せた後に、第1篩及び第2篩をともに所定時間振動させた。振動終了後に、第2篩上に残存した顆粒を採取した。この顆粒は、第1篩及び第2篩の目開き寸法より、180〜300μmの粒径を有していることになる。
Figure 2007227466
顆粒化がなされたものについて、以下の方法に基づいて顆粒の安息角を測定した。その結果を表3に合わせて示す。なお、表3には、実験6として、顆粒化する前の微粉砕粉末の安息角を、また実験7として、金属粉末を添加せずに微粉砕粉末及び有機液体とを混練して得た顆粒の安息角を、また実験8として、金属粉末を添加するが有機液体を添加しない微粉砕粉末の安息角を、それぞれ示した。
安息角測定方法:60mmφの円のテーブルの上に、一定高さからふるいを通して少しずつ顆粒を落下させた。顆粒の山が崩壊する直前で顆粒の供給を停止した。円テーブルの上にできた顆粒の山の底角を測定した。円テーブルを120°ずつ回転し、計3箇所について角度を測定し、その平均を安息角とした。
次工程である磁場中成形に先立って、金型への充填重量のばらつきを前述したフィーダを用いて評価した。評価は以下に従って行った。金型キャビティの間口を5mm×15mmとして、この上をフィーダを往復運動させてすり切り充填を行った。粉末は9g程度金型に充填されるように、深さ方向を調節した。往復運動のスピードは0.4m/sとして粉体を充填した。使用した粉体は顆粒化されていない微粉砕粉末及び有機液体を用いた実験1の顆粒である。すり切り充填をするのに、顆粒化していない微粉砕粉末は50往復、顆粒は7往復を要した。これを50ショット行い、重量の標準偏差σを平均重量で割ったσ/ave.を求めた。また、縦軸に各ショットでの充填重量を平均重量で割った値(%)をとった測定結果を図4に示す。これより微粉砕粉末(実験6)はすり切り充填でも重量が安定しない、すなわち流動性が悪いためキャビティ内で密度のばらつきがあることがわかり、結果クラックが発生していると考えられるが、顆粒ではそのようなばらつきは無くなっていることが確認できる。
得られた顆粒を磁場中成形した。具体的には、15kOeの磁場中で1.4ton/cmの圧力で成形を行い、成形体を得た。成形体のサイズは縦20mm×横18mm×厚さ5mmである。得られた各成形体について、日本工業規格JIS R 1601に準じて抗折強度試験を行い、抗折強度を測定した。その結果を表3に示す。表3に示すように、本発明による顆粒を用いることにより、成形体の強度が向上することがわかる。実験6(金属粉末及び有機液体の添加なし)と実験7(有機液体のみ)との比較から、有機液体を添加することにより成形体強度が向上することがわかる。また実験1(有機液体+金属粉末)と実験7(有機液体のみ)との比較から、有機液体と金属粉末の両者を添加することでさらに成形体強度が向上し、その効果は金属粉末のみを添加した実験8よりも顕著であることが確認できた。
また、成形体のクラック有無、及び成形体の割れ・欠けを判定した。その結果を、表3に示す。表3に示すように、本発明による顆粒を用いることにより、成形工程での不具合を低減できることがわかる。なお、表3の◎等の内訳は以下の通りである。
◎:クラック、割れ・欠けの発生が、全数の3%未満
○:クラック、割れ・欠けの発生が、全数の3〜15%
×:クラック、割れ・欠けの発生が、全数の15%超
得られた成形体を真空中及びAr雰囲気中で1080℃まで昇温し4時間保持して焼結を行った。次いで得られた焼結体に800℃×1時間と560℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理を施した。
得られたR−T−B系焼結磁石の磁気特性を測定した結果を表3に示す。なお、表3には微粉砕粉末を顆粒化することなく上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られたR−T−B系焼結磁石(実験6)、強度向上助剤2を添加せずに微粉砕粉末及び有機液体とを混練して得た顆粒を上記と同様にして磁場中成形、焼結及び時効処理を施して得られたR−T−B系焼結磁石(実験7)の磁気特性も合わせて示している。
表3に示すように、微粉砕粉末の安息角が62°であるのに対して、有機液体を用いて顆粒化することにより安息角を50°以下とし流動性を向上することができる。また、有機液体を用いた顆粒から作製された成形体はいずれも0.40MPa以上の抗折強度を示したが、添加金属粉末を添加した場合にはより0.50MPa以上という高い抗折強度を示した。この結果から、金属粉末の添加は顆粒の流動性を高いレベル維持しつつ、成形体の強度を向上させる上で有効であることがわかった。
特に、強度向上助剤2としてCo、Niを使用した場合(実験1、2)には、成形体の強度向上という効果を得つつ、微粉砕粉末を磁場中成形して得られたR−T−B系焼結磁石(実験6)と同等の保磁力(HcJ)を最終的に得ることができた。
流動性の良い顆粒を用いるメリットとして、狭間口の金型への粉体充填性の容易さが挙げられる。それを確認するためにフィーダテストを行った。通常の量産工程において金型へ粉体を供給するためにフィーダという装置が使用される。このフィーダは、金型の上で水平方向に往復運動をする箱であり、箱の下部には供給孔が空けられている。箱の中には一定量の粉がためられており、この箱が往復運動すると、箱下部の供給孔から金型内部に粉が落ちる仕組みになっている。流動性の良い粉ほど、一定回数の往復運動で多くの粉が落ちることになる。そこで、金型キャビティに見立てた3mm×20mmの空隙を設け、この上で、実験1のターピネオールを用いて形成した顆粒、実験6の微粉砕粉末、をそれぞれ往復運動させた。往復運動のスピードは0.4m/sとし、5往復で上記隙間に落下した粉の重量を測定した。この5往復を1回の測定対象とし、15回の測定を繰り返した。測定結果を図5に示すが、顆粒を用いることにより、金型キャビティへの充填性を向上できることが確認された。また、実験1と実験6の顆粒のデータの比較から、安息角が小さいほど、金型キャビティへの充填性が向上することも確認された。
金属粉末としてCo、Niを使用して、その添加量が及ぼす影響を確認した。金属粉末の添加量を表4に示すものとした以外は実施例1と同様の手順で顆粒の作製、成形体の作製、成形体の強度測定、R−T−B系焼結磁石の作製、R−T−B系焼結磁石の磁気特性測定を行った。その結果を表4に示す。
Figure 2007227466
表4の結果から、強度向上助剤2の添加量が変動すると、磁気特性及び抗折強度が変動する。Coについてはその添加量を0.05〜0.45wt%、Niについてはその添加量を0.05〜0.3wt%、とすることが好ましいことが確認できた。但し、本実施例では原料合金にCoが含有されていることから、強度向上助剤2としてCoを選択する場合には原料合金中のCo含有量を考慮して強度向上助剤2の添加量を調整することが好ましい。
強度向上助剤2としてCoを使用して、その平均粒径が及ぼす影響を確認した。その結果を表5に示す。
Figure 2007227466
本発明の顆粒を模式的に示す図である。 本実施の形態における希土類焼結磁石の製造工程を示すフローチャートである。 本実施の形態における希土類焼結磁石の製造工程を示すフローチャートである。 実施例1における充填重量ばらつきの試験結果を示すグラフである。 実施例1におけるフィーダテストの結果を示すグラフである。
符号の説明
1…合金粒子、2…強度向上助剤、10…顆粒

Claims (9)

  1. 所定組成の原料合金粉末、金属粉末から構成される強度向上助剤及び有機液体を含む組成物を混合して顆粒を得る工程と、
    前記顆粒を加圧成形して成形体を得る工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、を備えることを特徴とする希土類焼結磁石の製造方法。
  2. 前記強度向上助剤は微粉砕粉末に対して添加されることを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  3. 前記強度向上助剤はCo、Ni、Zn、Al、Snの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  4. 前記強度向上助剤は遷移金属元素の1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  5. 前記強度向上助剤はCo粉末であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  6. 前記強度向上助剤の添加量は前記原料合金粉末に対し0.05〜0.8wt%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  7. 前記成形体は抗折強度が0.50MPa以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  8. 前記原料合金粉末は、R14B相(Rは希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素、TはFe又はFe及びCoを含む遷移金属元素から選択される1種又は2種以上の元素)を含む組成を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
  9. 所定組成の原料合金粉末、金属粉末から構成される強度向上助剤及び有機液体を含む組成物を混合して顆粒を得ることを特徴とする顆粒の製造方法。
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