以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械について、添付図面を参照して詳細に説明する。
ここで、図1ないし図9は第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機を例に挙げて述べる。
図中、1はスクロール式空気圧縮機の外枠を構成する略筒状のケーシングで、該ケーシング1は、図1、図2に示す如く、略円筒状に形成され軸方向の両側が開口した中間ケース2と、該中間ケース2の軸方向一側(左側)に設けられた第1の外側ケース3Aと、中間ケース2の軸方向他側(右側)に設けられた第2の外側ケース3Bとにより構成されている。
ここで、左,右の外側ケース3A,3Bは、段付きの有底筒状に形成されている。また、第1の外側ケース3Aは、後述する第1の固定スクロール5A、第1の旋回スクロール13A等と共に低圧段の圧縮部4Aを構成し、第2の外側ケース3Bは、第2の固定スクロール5B、第2の旋回スクロール13B等と共に高圧段の圧縮部4Bを構成している。この場合、低圧段と高圧段の圧縮部4A,4Bは互いにほぼ同一の構成要素を有しているので、以下の説明では、低圧段の構成要素に符号「A」を付して説明し、高圧段の構成要素については、符号「B」を付して説明すると共に、低圧段と重複する説明を省略するものとする。
5Aはケーシング1の外側ケース3Aに設けられた低圧段の固定スクロールで、該固定スクロール5Aは、図3に示す如く、軸線O1−O1を中心として略円板状に形成された鏡板6Aと、該鏡板6Aの表面に立設された渦巻状のラップ部7Aと、鏡板6Aの外周側から軸方向に突出し、該ラップ部7Aを径方向外側から取囲む筒部8Aと、該筒部8Aから径方向外向きに突出し、外側ケース3Aに取付けられる例えば3個のフランジ部9Aとにより大略構成されている。
ここで、鏡板6Aには、ラップ部7Aの径方向外側に位置して後述の圧縮室16A内に空気を吸込む2箇所の吸込口10A(図1参照)と、ラップ部7Aの中央に位置して圧縮空気を吐出する吐出口11Aとが設けられている。また、鏡板6Aの裏面には、複数の冷却フィン12Aが立設されている。
一方、5Bはケーシング1の外側ケース3Bに設けられた高圧段の固定スクロールで、該固定スクロール5Bは、図4に示す如く、低圧段の固定スクロール5Aとほぼ同様に、鏡板6B、ラップ部7B、筒部8B、フランジ部9B、吸込口(図示せず)、吐出口11B、冷却フィン12B等を備えている。
ここで、低圧段の吐出口11Aは、図1に示す如く、後述の冷却器50、配管等を介して高圧段の吸込口に接続され、高圧段の吐出口11Bは、冷却器50、他の配管等を介して空気タンク(図示せず)等に接続されている。これにより、空気圧縮機は、サイレンサ等を介して吸込口10Aから吸込んだ空気を圧縮部4A,4Bによって順次圧縮する構成となっている。
13Aは固定スクロール5Aと対面してケーシング1内に旋回可能に設けられた低圧段の旋回スクロールで、該低圧段の旋回スクロール13Aは、図3に示す如く、軸線O2−O2を中心として略円板状に形成され外側ケース3A内に収容された鏡板14Aと、該鏡板14Aの表面に立設された渦巻状のラップ部15Aと、後述のボス部19Aとにより大略構成されている。
ここで、ラップ部15Aは、固定スクロール5Aのラップ部7Aと所定の角度(例えば180度)だけずらして重なり合うように配設され、これによって低圧段のラップ部7A,15A間には、外周側から内周側にわたって複数の圧縮室16Aが画成されている。また、旋回スクロール13Aは、鏡板14Aの裏面に立設された複数の冷却フィン17Aと、固定スクロール5Aと旋回スクロール13Aとの間に設けられ、旋回スクロール13A,13Bの自転を防止する補助クランク18とを備えている。
19Aは旋回スクロール13Aの裏面に突設されたボス部で、該ボス部19Aは、図5ないし図8に示す如く、例えばアルミニウムまたはその合金等の金属材料により鏡板14Aと一体に形成され、鏡板14Aの裏面中央に配置されている。また、ボス部19Aは、例えば有底の円筒状に形成され、軸線O2−O2を中心(中心O2)として軸方向に延びると共に、軸方向の一側が閉塞し他側が駆動軸31に向けて開口している。この場合、ボス部19Aの他端側は環状をなす平坦な端面20Aとなっている。
そして、ボス部19Aの内周側には、例えば圧入等の手段によって駆動軸31の小径軸部33Aが回転を規制した状態で嵌合されている。また、ボス部19Aの内周側には、後述の長溝21Aが複数箇所に形成され、ボス部19Aの底部側には、後述の凹窪部24Aが形成されている。
21Aはボス部19Aの内周側に形成された複数本(例えば4本)の長溝を示し、該各長溝21Aは、ボス部19Aの内周側と駆動軸31の外周側との間にこれらの部材を径方向に離間させる径方向の空間22Aをそれぞれ形成し、これら複数箇所の空間22Aによってボス部19A側から駆動軸31への熱伝導を抑えるものである。
ここで、長溝21A(空間22A)は、例えばボス部19Aの開口側と環状底面部26Aとの間を軸方向に延びて形成され、駆動軸31に向けて開口すると共に、ボス部19Aの端面20Aにも開口している。
また、長溝21Aは、互いに周方向に間隔をもって配置され、ボス部19Aの内周面には、各長溝21Aの間に位置して例えば4箇所の円弧状周面部23Aが形成されている。これらの円弧状周面部23Aは、互いに同一の円周上に配置され、軸方向に帯状をなして延びている。そして、各円弧状周面部23Aの内周側には、駆動軸31の小径軸部33A(環状段部38A)が嵌合されている。
また、長溝21Aは、各円弧状周面部23Aの間に配置され、円弧状周面部23Aに対し径方向外向きに凹湾曲状をなして窪んでいる。このように、長溝21Aは、ボス部19Aと駆動軸31とが径方向で接触する面積を各円弧状周面部23Aの位置だけに縮小し、これらの間に存在する径方向の熱伝導経路を各空間22Aによって減少させるものである。
24Aはボス部19Aの底部側に設けられた凹窪部で、該凹窪部24Aは、図5に示す如く、ボス部19Aの底部側と駆動軸31(小径軸部33A)の端面35Aとの間にこれらの部材を軸方向に離間させる軸方向の空間25Aを形成し、この空間25Aによってボス部19A側から駆動軸31への熱伝導を抑えるものである。
ここで、凹窪部24Aは、図7に示す如く、例えば駆動軸31の小径軸部33Aの外径(ボス部19Aの内径)よりも小径な円形状の有底穴として形成されている。これにより、ボス部19Aの底面には、凹窪部24Aを取囲む位置に環状底面部26Aが形成されている。そして、この環状底面部26Aは、小径軸部33Aの端面35Aと当接し、駆動軸31を軸方向に位置決めしている。
また、凹窪部24Aは、環状底面部26Aの内周側に配置され、環状底面部26Aに対して軸方向に窪んでいる。このように、凹窪部24Aは、ボス部19Aと駆動軸31とが軸方向で接触する面積を環状底面部26Aの位置だけに縮小し、これらの間に存在する軸方向の熱伝導経路を空間25Aによって減少させる構成となっている。
これにより、長溝21Aと凹窪部24Aとは、圧縮室16A側で発生する熱が旋回スクロール13Aのボス部19Aから駆動軸31に伝わるのを抑えることができ、後述の回転軸受29A、偏心軸受39A等を高温による劣化から保護することができる。
また、旋回スクロール13Aの形成時には、例えば鋳造等によって必要最低限の寸法精度でボス部19A、長溝21A、凹窪部24A等を形成した後に、例えば研削、研磨等の仕上げ加工によって円弧状周面部23Aと環状底面部26Aとを高い寸法精度に形成する。これにより、ボス部19Aのうち仕上げ加工が必要な部位を減らしてスクロールの加工、形成を効率よく行うことができる。
一方、13Bは固定スクロール5Bと対面して設けられた高圧段の旋回スクロールで、該旋回スクロール13Bは、図4に示す如く、低圧段の旋回スクロール13Aとほぼ同様に、鏡板14B、ラップ部15B、冷却フィン17B、ボス部19B等を有し、高圧段のラップ部7B,15B間には、複数の圧縮室16Bが画成されている。
また、ボス部19Bには、図9に示す如く、低圧段のボス部19Aとほぼ同様に、端面20B、長溝21B、円弧状周面部23B、凹窪部24B、環状底面部26B等が形成され、ボス部19Bの内周側には、駆動軸31の小径軸部33Bが回転を規制した状態で嵌合されている。また、ボス部19Bの内周側と小径軸部33Bの外周側との間には、各長溝21Bによって径方向の空間22Bが形成され、ボス部19Bの底部側と小径軸部33Bの端面35Bとの間には、凹窪部24Bによって軸方向の空間25Bが形成されている。
そして、旋回スクロール13A,13Bは、後述のモータ27により回転軸28、駆動軸31等を介して駆動され、一定の旋回半径をもって旋回運動を行うことにより、各圧縮室16A,16Bで空気を圧縮する構成となっている。
27は旋回スクロール13A,13Bの駆動源となる例えば電動式のモータで、該モータ27は、図2に示す如く、旋回スクロール13A,13Bの間でケーシング1の中間ケース2内に設けられた筒状のステータと、後述する回転軸28の外周側に固定された筒状のロータ等とからなり、回転軸28を回転駆動するものである。
28はケーシング1に回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸28は、例えば段付円筒状の中空ロッドからなり、軸線O1−O1を中心としてモータ27のロータと一体に回転する。また、回転軸28は、軸方向の両側が回転軸受29A,29Bを介して外側ケース3A,3Bに回転可能に支持されている。
30Aは回転軸28の一端側に取付けられた略円筒状の偏心ブッシュで、該偏心ブッシュ30Aは、図3に示す如く、回転軸28の外周側に嵌合、固着され、軸線O1−O1を中心として回転軸28と一体に回転する。この場合、偏心ブッシュ30Aの内周側は、その一部が軸線O1−O1から偏心して形成され、この偏心部位には、後述の駆動軸31を回転可能に支持する偏心軸受39Aが嵌合されている。一方、回転軸28の他端側には、図4に示す如く、他の偏心ブッシュ30Bと後述の偏心軸受39Bとが取付けられている。
31は回転軸28内に挿通して設けられた駆動軸で、該駆動軸31は、例えば段付円柱状の金属ロッド等からなり、軸線O2−O2を中心として軸方向に延びている。ここで、駆動軸31は、図5、図9に示す如く、その軸方向中間部に位置して回転軸28内に配置された中間軸部32と、該中間軸部32の軸方向一側,他側に縮径して形成された円柱状の小径軸部33A,33Bとによって大略構成されている。
この場合、中間軸部32と小径軸部33A,33Bとの間には、中間軸部32の端面によって環状の拡径段部34A,34Bが形成されている。また、小径軸部33A,33Bの端部側は円形状の平坦な端面35A,35Bとなっている。
そして、軸方向一側の小径軸部33Aは、偏心ブッシュ30Aと後述の偏心軸受39Aとを介して回転軸28に相対回転可能に取付けられている。また、小径軸部33Aの端部側は回転軸28から軸方向に突出し、例えば圧入等の手段によって旋回スクロール13Aのボス部19A内に回転を規制した状態で嵌合、固着されている。また、軸方向他側の小径軸部33Bは、偏心ブッシュ30Bと後述の偏心軸受39Bとを介して回転軸28に相対回転可能に取付けられ、旋回スクロール13Bのボス部19B内に回転を規制した状態で嵌合、固着されている。
この場合、駆動軸31の軸線O2−O2は、偏心ブッシュ30A,30Bにより回転軸28等の軸線O1−O1から寸法(偏心量)δだけ偏心した位置に保持されている。これにより、駆動軸31は、回転軸28が回転するときに、偏心量δに対応する一定の旋回半径をもって旋回スクロール13A,13Bを旋回運動させるものである。
36Aは駆動軸31の小径軸部33Aの外周側に形成された複数本(例えば3本)の周溝を示し、該各周溝36Aは、ボス部19Aの内周側と駆動軸31の外周側との間に径方向の空間37Aをそれぞれ形成し、これら複数箇所の空間37Aによってボス部19A側から駆動軸31への熱伝導を抑えるものである。
ここで、周溝36A(空間37A)は、図5ないし図8に示す如く、駆動軸31の全周にわたって延び、ボス部19Aに向けて開口すると共に、長溝21Aによって形成された空間22Aと連通している。
また、周溝36Aは、互いに軸方向に間隔をもって配置されている。これにより、小径軸部33Aの外周側には、各周溝36Aの間及び各周溝36Aの軸方向外側に位置して例えば4箇所の環状段部38Aが形成され、これらの環状段部38Aは、例えば圧入等の手段によってボス部19Aの円弧状周面部23Aの内周側に嵌合されている。
また、周溝36Aは、各環状段部38Aの間に配置され、環状段部38Aに対して径方向内向きに窪んでいる。このように、各周溝36Aは、ボス部19Aと駆動軸31との径方向の接触面積を各環状段部38Aの位置だけに縮小し、これらの間に存在する径方向の熱伝導経路を環状の各空間37Aによって減少させるものである。
この場合、ボス部19Aの長溝21Aと駆動軸31の周溝36Aとは、互いに溝の方向が異なる方向、本実施の形態では、例えば互いに直交する方向に延びている。これにより、各長溝21Aにより形成された空間22Aと、各周溝36Aにより形成された空間37Aとは、全体として略格子状に並んだ状態で配置され、互いに連通している。
一方、駆動軸31の軸方向他側の小径軸部33Bには、図9に示す如く、軸方向一側の小径軸部33Aとほぼ同様に、周溝36B、環状段部38B等が形成され、ボス部19Bと小径軸部33Bとの間には、空間37Bが形成されている。
39A,39Bは駆動軸31を軸方向両側で回転可能に支持する軸受としての偏心軸受で、これらの偏心軸受39A,39Bは、図5、図9に示す如く、例えばころ軸受等によって構成されている。そして、軸方向一側の偏心軸受39Aは、駆動軸31の小径軸部33Aの外周側に設けられた内輪40Aと、該内輪40Aの外周側に位置して回転軸28側の偏心ブッシュ30A内に設けられた外輪41Aと、内輪40Aと外輪41Aとの間に転動可能に設けられ、これらを回転可能に連結する複数の転動子42Aとによって大略構成されている。
ここで、偏心軸受39Aの軸方向一側には、例えば偏心ブッシュ30Aの内周側に取付けられた状態で駆動軸31の小径軸部33Aの外周側に摺接する環状のシール部材43Aが設けられている。このシール部材43Aは、偏心ブッシュ30A内をシールすることにより、その内部に配置された偏心軸受39Aを異物から保護したり、偏心軸受39Aの潤滑油等が外部に漏れるのを防止している。
一方、軸方向他側の偏心軸受39Bも、偏心軸受39Aとほぼ同様に、内輪40B、外輪41B、転動子42B等によって構成され、シール部材43Bによってシールされている。
次に、空気圧縮機の冷却構造について説明すると、まず44Aは回転軸28の軸方向一側に設けられた低圧段の冷却ファンで、該冷却ファン44Aは、図3に示す如く、例えば遠心ファン等からなり、モータ27により回転軸28と一緒に回転駆動される。
この場合、冷却ファン44Aは、偏心ブッシュ30Aの外周側に廻止め状態で嵌合され、環状の仕切板45Aと一緒に外側ケース3A内に収容されている。そして、冷却ファン44Aは、後述の流入口46Aから外側ケース3A内に冷却風を吸込み、この冷却風を旋回スクロール13A及び固定スクロール5Aの裏面側と、後述の冷却器50とに供給する。
また、44Bは回転軸28の軸方向他側に設けられた高圧段の冷却ファンで、該冷却ファン44Bは、図4に示す如く、偏心ブッシュ30Bの外周側に廻止め状態で嵌合され、環状の仕切板45Bと一緒に外側ケース3B内に収容されている。この冷却ファン44Bは、後述の流入口46Bから外側ケース3B内に吸込んだ冷却風を、各スクロール5B,13Bの裏面側と冷却器50とに供給する。
46Aは低圧段の外側ケース3Aに設けられた例えば2箇所の流入口(1箇所のみ図示)で、該各流入口46Aは、図1に示す如く、旋回スクロール13Aの裏面側に流入させるものである。また、高圧段の外側ケース3Bにも、冷却風の流入口46Bが設けられている。
47Aは例えば外側ケース3Aに設けられた上,下2箇所の流出口で、該各流出口47Aのうち下側の流出口は、図3に示す如く、ダクト48Aを用いて固定スクロール5Aの裏面側(冷却フィン12Aの位置)に接続され、上側の流出口47Aは、他のダクト49Aを用いて後述の冷却器50に接続されている。
一方、高圧段の外側ケース3Bにも、図4に示す如く、上,下の流出口47Bと、ダクト48B,49Bとが設けられている。また、図1において、50はケーシング1の上側に設けられた冷却器で、該冷却器50は、例えば圧縮部4A,圧縮部4Bから吐出される圧縮空気をそれぞれ冷却するものである。
本実施の形態によるツインラップ型のスクロール式空気圧縮機は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、モータ27に給電すると、回転軸28が軸線O1−O1を中心として回転駆動される。これにより、回転軸28内に偏心状態で取付けられた駆動軸31が旋回運動を行うと、その両端側に連結された旋回スクロール13A,13Bは、固定スクロール5A,5Bに対して旋回動作を行う。
この結果、低圧段の圧縮部4Aは、サイレンサ等を介して吸込口10Aから外気を吸込みつつ、この空気を各圧縮室16A内で順次圧縮し、吐出口11Aから中間圧の圧縮空気を吐出する。そして、この中間圧の圧縮空気は、高圧段の圧縮部4Bに吸込まれて圧縮されることにより、高圧の圧縮空気となって吐出口11Bから吐出され、空気タンク等に貯留される。
また、圧縮機の運転時には、各圧縮室16A,16Bのうち中央側の圧縮室等で熱が発生する。この熱は、旋回スクロール13A,13Bの鏡板14A,14B等を経由してボス部19A,19Bにも伝わるが、ボス部19A,19Bと駆動軸31との間には、断熱用の空間22A,22B,25A,25B,37A,37Bが形成されているので、中央側の熱が旋回スクロール13A,13Bと駆動軸31とを経由して偏心軸受39A,39B、回転軸受29A,29B等に伝わるのを抑制でき、これらの軸受部品を低い温度に保持することができる。
一方、圧縮の運転時には、回転軸28と一緒に冷却ファン44A,44Bが回転駆動される。これにより、冷却ファン44A,44Bは、図3、図4中の矢示に示す如く、流入口46A,46Bから旋回スクロール13A,13Bの裏面側(冷却フィン17A,17Bの位置)に冷却風を吸込むので、これらの冷却風によって鏡板14A,14B、ボス部19A,19B、偏心軸受39A,39B、駆動軸31等を効率よく冷却することができる。
そして、この冷却風は、仕切板45A,45Bの内周側を通って冷却ファン44A,44Bの位置に流入し、上,下の流出口47A及び上,下の流出口47Bからそれぞれ流出する。これにより、下側の流出口47A,47Bから流出した冷却風は、ダクト48A,48Bに導かれることにより、固定スクロール5A,5Bの裏面側(冷却フィン12A,12B)に沿って流通し、固定スクロール5A,5Bを効率よく冷却することができる。また、上側の流出口47A,47Bから流出した冷却風は、ダクト49A,49Bに導かれて冷却器50内に流入し、冷却器50を冷却することができる。
かくして、本実施の形態によれば、例えば低圧段の圧縮部4Aにおいて、旋回スクロール13Aのボス部19Aの内周側には、駆動軸31との間に径方向の空間22Aを形成する複数本の長溝21Aを設け、駆動軸31の小径軸部33Aの外周側には、ボス部19Aとの間に径方向の空間37Aを形成する複数本の周溝36Aを設ける構成としている。
これにより、ボス部19Aの各長溝21Aは、ボス部19Aと駆動軸31との径方向の接触面積を空間22Aの分だけ縮小でき、駆動軸31の各周溝36Aは、同じく径方向の接触面積を空間37Aの分だけ縮小することができる。
このため、長溝21Aと周溝36Aとは、ボス部19Aと駆動軸31との間に存在する径方向の熱伝導経路を減少させることができ、これによって圧縮室16A側で発生する熱がボス部19Aから駆動軸31に伝わるのを抑制できると共に、駆動軸31を支持する軸受29A,39A等が圧縮室16A側の熱によって高温となるのを確実に防止することができる。
従って、例えば従来技術のように旋回スクロールとボス部との間に金属板等を介在させなくても、簡単な構造によって軸受29A,39A等を熱による劣化から保護することができ、圧縮機全体をコンパクトに形成しつつ、耐久性を高めることができる。
しかも、複数本の長溝21Aと複数本の周溝36Aとを互いに直交する方向に延ばすことができるので、ボス部19Aと駆動軸31との間には、長溝21Aによる空間22Aと、周溝36Aによる空間37Aとを全体として略格子状に並んだ状態で配置でき、各空間22A,37Aを互いに連通させることができる。
これにより、ボス部19Aと駆動軸31との接触部位を、これらの空間22A,37Aによって島状の小さな面積に区切った状態で配置でき、接触部位から空間22A,37Aへの放熱性を高めることができる。従って、例えば長溝21Aと周溝36Aの本数、溝幅、間隔等を適切に設定することにより、ボス部19Aと駆動軸31との嵌合部位に十分な強度を与えつつ、これらの間に広い空間や多数の空間を形成でき、両者の接触面積を十分に減少させることができる。
また、各長溝21Aを軸方向に延ばして形成したので、複数本の長溝21Aを形成した状態でも、各長溝21Aにより形成された空間22Aをボス部19Aの端面20A側にそれぞれ開口させることができ、空間22A内の空気を外部と循環させてボス部19Aの放熱性を高めることができる。
また、ボス部19Aを形成するときには、例えば中子を用いない鋳造手段や、簡単な切削加工等によって長溝21Aを効率よく形成でき、他の形状の溝と比較して溝加工を容易に行うことができる。また、各長溝21Aの周壁部位には、駆動軸31が嵌合されないので、これらの部位に高精度な加工を行う必要がなくなり、ボス部19Aの内周面のうち高精度に加工する部位を円弧状周面部23Aだけに減らして生産性を高めることができる。
さらに、ボス部19Aの底部側には、駆動軸31の端面35Aとの間に軸方向の空間25Aを形成する凹窪部24Aを設けたので、ボス部19Aと駆動軸31との間に存在する径方向の熱伝導経路だけでなく、軸方向の熱伝導経路も減少させることができ、これらの間の熱伝導をより低減することができる。
一方、高圧段の圧縮部4Bについても、旋回スクロール13Bのボス部19Bに長溝21Bと凹窪部24Bとを設け、駆動軸31の小径軸部33Bに周溝36Bを設けたので、ボス部19Bと小径軸部33Bとの間には、径方向及び軸方向の空間22B,25B,37Bを形成でき、前述した低圧段の圧縮部4Aの場合とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
次に、図10ないし図13は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ボス部と駆動軸との間に取付ねじを設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
51Aは低圧段の旋回スクロールで、該旋回スクロール51Aは、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板52A、ラップ部53A、冷却フィン54Aと、後述のボス部55Aとを有している。
55Aは鏡板52Aの裏面側に一体形成されたボス部で、該ボス部55Aは、図11ないし図13に示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、環状の端面56Aを有する有底の筒状体として形成されている。そして、ボス部55Aの内周側には、例えば3本の広幅な長溝57Aが周方向に間隔をもって形成され、これらの長溝57Aは、ボス部55Aの内周側と、後述する駆動軸63の小径軸部65Aとの間に径方向の空間58Aを形成している。
そして、ボス部55Aの内周面は、各長溝57Aの間に位置する部位が3箇所の円弧状周面部59Aとなり、各円弧状周面部59Aの内周側には、駆動軸63の小径軸部65A(環状段部70A)が嵌合されている。また、ボス部55Aの底部側には、その内径とほぼ等しい径方向寸法をもつ凹窪部60Aが形成され、この凹窪部60Aは、小径軸部65Aの端面67Aとの間に軸方向の空間61Aを形成している。
また、本実施の形態のボス部55Aには、後述の取付ねじ72を挿通する例えば3箇所の挿通孔62が設けられ、これらの挿通孔62は、各長溝57A内に開口する位置でボス部55Aを径方向に貫通している。
63は駆動軸で、該駆動軸63は、図10に示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、中間軸部64、小径軸部65A、拡径段部66A、端面67A等を有し、低圧段の偏心ブッシュ30A、偏心軸受39Aと、高圧段の偏心ブッシュ、偏心軸受(図示せず)とを介して回転軸28の内周側に回転可能に配置されている。
そして、小径軸部65Aの外周側には、例えば1本の広幅な周溝68Aが全周にわたって形成されている。この場合、周溝68Aは、ボス部55Aの内周側と小径軸部65Aの外周側との間に径方向の空間69Aを全周にわたって形成している。
また、小径軸部65Aの外周面は、周溝68Aの軸方向両側に位置する部位が環状段部70Aとなり、これら2箇所の環状段部70Aは、ボス部55Aの各円弧状周面部59Aの内周側に嵌合されている。さらに、駆動軸63の小径軸部65Aには、ボス部55Aの各挿通孔62に対応する位置に例えば3箇所のねじ孔71が穿設されている。
72は旋回スクロール51Aのボス部55Aと駆動軸63の小径軸部65Aとの間に設けられた例えば3本の取付ねじで、該各取付ねじ72は、図11、図13に示す如く、ボス部55Aの各挿通孔62にそれぞれ挿通され、ボス部55Aを径方向に貫通して小径軸部65Aのねじ孔71に螺着されている。
これにより、取付ねじ72は、駆動軸63をボス部55Aに対して軸方向及び径方向に位置決めし、これらを嵌合した状態で締結、固定すると共に、ボス部55A内で駆動軸63の回転を規制している。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、ボス部55Aと駆動軸63とを取付ねじ72によって締結する構成としたので、これらが嵌合(接触)する面積を大きく確保しなくても、ボス部55Aと駆動軸63との嵌合状態を取付ねじ72によって安定的に保持することができる。
従って、取付ねじ72を用いない場合と比較して、例えば長溝57A、周溝68A等を大きく広幅に形成でき、ボス部55Aと駆動軸63との接触面積を減少させることができるので、これらの間の熱伝導を十分に抑えることができる。
また、本実施の形態では、取付ねじ72用の挿通孔62を各長溝57Aに対応する位置に設ける構成としたので、例えば挿通孔を長溝以外の部位に設ける場合と比較して、挿通孔の長さ(貫通距離)を短くすることができ、その孔加工を容易に行うことができる。さらに、取付ねじ72とボス部55Aとの接触面積を長溝57Aの深さ分だけ減少させることができ、ボス部55Aから駆動軸63側への熱伝導をより低減することができる。
次に、図14は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、旋回スクロールのボス部に周溝を設け、駆動軸に長溝を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
80Aは旋回スクロール13Aのボス部19A′の内周側に設けられた複数本(例えば3本)の周溝を示し、これらの周溝80Aは、ボス部19A′の端面20A′とほぼ平行に延びる環状溝として形成され、ボス部19A′の内周側と駆動軸31′(小径軸部33A′)の外周側との間に径方向の空間81Aをそれぞれ形成している。また、ボス部19A′の内周側には、各周溝80Aの間、及び各周溝80Aの軸方向外側に位置して例えば4箇所の環状段部82Aが形成されている。
83Aは駆動軸31′の小径軸部33A′の外周側に設けられた複数本(例えば4本)の長溝を示し、これらの長溝83Aは、ボス部19A′の内周側と小径軸部33A′の外周側との間に径方向の空間84Aをそれぞれ形成している。この場合、駆動軸31′は、中間軸部32′、拡径段部34A′、端面35A′等を有している。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、本実施の形態でも、ボス部19A′と駆動軸31′との接触部位を、径方向の空間81A,84Aによって島状の小さな面積に区切った状態で配置でき、接触部位から空間81A,84Aへの放熱性を高めることができる。
従って、周溝80Aと長溝83Aの本数、溝幅、間隔等を適切に設定することにより、ボス部19A′と駆動軸31′との嵌合部位に十分な強度を与えつつ、これらの間に広い空間や多数の空間を形成でき、両者の接触面積を十分に減少させて、軸受39A等への熱伝導を低減することができる。
次に、図15ないし図18は本発明による第4の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、取付ねじをボス部と駆動軸とが接触する位置に設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
91Bは高圧段の旋回スクロールで、該旋回スクロール91Bは、第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板92B、ラップ部93B、冷却フィン94Bと、後述のボス部95Bとを有している。
95Bは鏡板92Bの裏面側に一体形成されたボス部で、該ボス部95Bは、図15ないし図17に示す如く、第2の実施の形態のボス部55Aとほぼ同様に、環状の端面96Bを有する有底の筒状体として形成されている。そして、ボス部95Bの内周側には、例えば3本の広幅な長溝97Bが周方向に間隔をもって形成され、これらの長溝97Bは、ボス部95Bの内周側と、後述する駆動軸102の小径軸部104Bとの間に径方向の空間98Bを形成している。
そして、ボス部95Bの内周面は、各長溝97Bの間に位置する部位が3箇所の円弧状周面部99Bとなり、各円弧状周面部99Bの内周側には、駆動軸102の小径軸部104B(環状段部109B)が嵌合されている。また、ボス部95Bの底部側には、小径軸部104Bの端面106Bとの間に軸方向の空間100Bが形成されている。
また、ボス部95Bには、第2の実施の形態とほぼ同様に、後述の取付ねじ111を挿通する例えば3箇所の挿通孔101が設けられている。しかし、これらの挿通孔101は、各長溝97Bと異なる位置、即ち各円弧状周面部99Bの位置でボス部95Bを径方向に貫通し、径方向外側が段付状に拡径した段付孔となって各長溝97Bの間に開口している。
102は旋回スクロール91Bを旋回運動させる駆動軸で、該駆動軸102は、第1の実施の形態とほぼ同様に、中間軸部103、小径軸部104B、拡径段部105B、端面106B等を有し、低圧段の偏心ブッシュ、偏心軸受(図示せず)と、高圧段の偏心ブッシュ30B、偏心軸受39Bとを介して回転軸28の内周側に回転可能に配置されている。
ここで、小径軸部104Bの端面106Bは、ボス部95Bの底部から軸方向に離間している。また、小径軸部104Bの先端外周側には、互いに軸方向に離間した例えば2本の周溝107Bが全周にわたって形成され、これらの周溝107Bは、ボス部95Bの内周側と小径軸部104Bの外周側との間に径方向の空間108Bを全周にわたって形成している。
また、小径軸部104Bの外周面は、各周溝107Bの間に位置する部位が当該周溝107Bよりも径方向外側に突出した環状段部109Bとなり、この環状段部109Bは、ボス部95Bの各円弧状周面部99Bの内周側に当接(接触)し、これらの円弧状周面部99B内に密着した状態で嵌合されている。そして、小径軸部104Bには、環状段部109Bと円弧状周面部99Bとが当接する部位に複数のねじ孔110が径方向に穿設され、これらのねじ孔110は、ボス部95Bの挿通孔101とそれぞれ連通している。
111は旋回スクロール91Bのボス部95Bと駆動軸102の小径軸部104Bとの間に設けられた例えば3本の取付ねじで、該各取付ねじ111は、図16に示す如く、第2の実施の形態とほぼ同様に、ボス部95Bの各挿通孔101に挿通され、ボス部95Bを径方向に貫通して小径軸部104Bのねじ孔110に螺着されている。これにより、取付ねじ111は、ボス部95Bと小径軸部104Bとを軸方向、径方向及び回転方向に対して一体に固定している。
この場合、各取付ねじ111は、ボス部95Bの円弧状周面部99Bと小径軸部104Bの環状段部109Bとが当接する位置でボス部95Bと小径軸部104Bとを締結し、長溝97B、周溝107Bとは異なる位置に配設されている。
これにより、取付ねじ111の締結力を円弧状周面部99Bと環状段部109Bとが当接する位置に安定的に付加でき、これらの部位を強く密着させることができるので、ボス部95Bと駆動軸102とを安定した状態で強固に締結することができる。
112は旋回スクロール91Bのボス部95Bと偏心軸受39Bの内輪40Bとの間に設けられた環状体で、該環状体112は、例えば内輪40Bとほぼ同じ鉄等の金属材料を用いて円筒状に形成され、旋回スクロール91B側で発生するスラスト方向の荷重をボス部95Bと内輪40Bとの間で受承するものである。
ここで、環状体112は、図15、図18に示す如く、例えば圧入等の手段によって駆動軸102の小径軸部104Bの外周側に挿嵌され、軸方向一側が偏心軸受39Bの内輪40Bに当接すると共に、軸方向他側がボス部95Bの端面96Bに当接している。また、環状体112は、駆動軸102の拡径段部105Bとの間に内輪40Bを挟持し、これによって偏心軸受39Bを駆動軸102の軸方向に位置決めしている。
そして、圧縮機の運転時には、旋回スクロール91Bが空気を圧縮することによってスラスト方向の荷重を受けると、このスラスト方向の荷重は、ボス部95Bに衝合された環状体112によって受承され、環状体112と偏心軸受39Bの内輪40Bとを通じて駆動軸102に伝達される。
この場合、環状体112は十分に大きな外径寸法をもって形成され、その外周面は、ボス部95Bの長溝97Bから径方向外側に離間している。これにより、環状体112は、ボス部95Bの底部側と駆動軸102の端面106Bとの間に軸方向の空間100Bが形成された状態でも、ボス部95Bと広い面積で接触することによってスラスト方向の荷重を安定的に受承することができる。また、環状体112の外周側には、偏心ブッシュ30Bとの間に位置して第1の実施の形態とほぼ同様のシール部材43B′が設けられている。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1,第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、取付ねじ111をボス部95Bの円弧状周面部99Bと駆動軸102の環状段部109Bとが当接する位置に配設する構成としている。
これにより、取付ねじ111の締結力をボス部95Bと駆動軸102とが径方向で密着する部位に付加でき、これらを安定した状態で強固に締結することができる。従って、例えば外力、振動等によってボス部95Bと駆動軸102との嵌合部位にがたつき等が生じたり、この部位にかじり、摩耗(フレッティング)等が生じるのを確実に防止でき、耐久性を高めることができる。
また、旋回スクロール91Bのボス部95Bと偏心軸受39Bの内輪40Bとの間には、例えば圧入等の手段によって駆動軸102の小径軸部104Bの外周側に挿嵌される環状体112を設けたので、この環状体112は、駆動軸102を取囲む位置でボス部95Bの端面96Bと偏心軸受39Bの内輪40Bとに十分な接触面積をもって当接でき、これによって旋回スクロール91Bから駆動軸102に伝わるスラスト方向の荷重を安定的に受承することができる。
この場合、環状体112とボス部95Bとの接触部位、及び環状体112と内輪40Bとの接触部位では、スラスト方向の荷重を広い面積に分散して当該荷重による圧力(面圧)を小さくすることができる。従って、これらの部品がスラスト方向の荷重によって変形するのを防止でき、耐久性を高めることができる。また、部品の変形が原因で固定スクロール5Bと旋回スクロール91Bとの間の軸方向ギャップが変動するのを防止でき、このギャップの寸法を容易に管理できると共に、圧縮機の性能を安定させることができる。
これにより、ボス部95Bの底部側と駆動軸102の端面106Bとの間に軸方向の空間100Bを安定的に設けることができ、この状態でもスラスト方向の荷重を環状体112によって受承できるので、空間100Bによって耐熱性を高めつつ、圧縮機を安定的に作動させることができる。
そして、この場合には、ボス部95Bと駆動軸102との間に環状体112等を通じて軸方向の熱伝導経路が形成されたとしても、この熱伝導経路は、例えばボス部の底部側に駆動軸の端面を当接させた場合と比較して、旋回スクロール91Bの鏡板92Bから離れた位置に形成される。従って、環状体112を用いることにより、ボス部95Bから駆動軸102への熱伝導をより確実に抑えることができる。
また、スラスト方向の荷重を受承する環状体112、ボス部95B、偏心軸受39Bの内輪40B等の端面は、例えばボス部95Bの底部側に平面加工を施す場合と比較して、簡単な加工によって高い精度の平面に仕上げることができ、圧縮機を効率よく組立てることができる。
なお、前記第2の実施の形態では、ボス部55Aの内径とほぼ等しい径方向寸法の凹窪部60Aを形成する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図19に示す変形例のように構成してもよい。この変形例では、第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、第2の実施の形態と異なる構成要素には「′」(ダッシュ)を付すものとする。
そして、変形例において、ボス部55A′は端面56A′、長溝57A′、円弧状周面部59A′、挿通孔62′等を有し、その底部側には、当該ボス部55A′の内径よりも小さな径方向寸法をもつ凹窪部60A′が形成されると共に、該凹窪部60A′の径方向外側には、駆動軸63′の小径軸部65A′の端面67A′と当接する環状底面部60A″が設けられている。
また、駆動軸63′は中間軸部64′、拡径段部66A′、ねじ孔71′等を有し、小径軸部65A′は、周溝68A′の側壁を構成する環状段部70A′以外の部位が円筒状に形成されている。そして、駆動軸63′をねじ止めするときには、その軸方向位置を環状底面部60A″によって定める構成となっている。
一方、前記各実施の形態では、ボス部19A,55A,95B及び駆動軸31′の軸方向にわたって3本または4本の長溝21A,57A,83A,97Bを設け、駆動軸31,63,102及びボス部19A′の全周にわたって1本ないし3本の周溝36A,68A,80A,107Bを設ける構成とした。しかし、本発明における長溝及び周溝の本数は実施の形態に限らず、任意の本数としてよいものである。即ち、例えばボス部に1本、2本の長溝、または5本以上の長溝を設けたり、駆動軸に4本以上の周溝を設ける構成としてもよい。
また、長溝及び周溝の長さについても、実施の形態に限定されるものではなく、例えばボス部の軸方向の一部だけに長溝を設けたり、駆動軸の周方向の一部だけに円弧状の周溝を設ける構成としてもよい。
また、実施の形態では、ボス部19A,19A′,19B,55A,55A′,95Bと駆動軸31,31′,63,63′,102のうち一方の部材に長溝21A,21B,57A,83A,97Bを設け、他方の部材に周溝36A,36B,68A,80A,107Bを設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えばボス部と駆動軸の両方に長溝を設けたり、これらの両方に周溝を設ける構成としてもよい。さらに、ボス部と駆動軸のうち何れか一方の部材にのみ長溝または周溝を設け、他方の部材は溝を省略する構成としてもよい。
また、実施の形態では、固定スクロール5A,5Bに対して旋回スクロール13A,13B,51A,91Bが旋回運動する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2つの旋回スクロールを互いに対面して配置することにより当該旋回スクロールの間に圧縮室を画成し、これら2つの旋回スクロールをそれぞれ相手方の旋回スクロールに対して旋回運動させることにより圧縮動作を行う構成とした全系回転型のスクロール式流体機械に適用してもよい。
さらに、実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機、真空ポンプ等を含めて他のスクロール式流体機械に適用してもよい。