以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械について、添付図面を参照して詳細に説明する。
ここで、図1ないし図11は第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機を例に挙げて述べる。
図中、1はスクロール式空気圧縮機の外枠を構成する略筒状のケーシングで、該ケーシング1は、図1ないし図3に示す如く、略円筒状に形成され軸方向の両側が開口した中間ケース2と、該中間ケース2の軸方向一側(左側)に設けられた第1の外側ケース3Aと、中間ケース2の軸方向他側(右側)に設けられた第2の外側ケース3Bとによって構成されている。
ここで、外側ケース3A,3Bは段付きの有底筒状に形成され、その底部側が中間ケース2に取付けられている。また、第1の外側ケース3Aは、後述する第1の固定スクロール5A、第1の旋回スクロール12A等と共に低圧側の圧縮部4Aを構成し、第2の外側ケース3Bは、第2の固定スクロール5B、第2の旋回スクロール12B等と共に高圧側の圧縮部4Bを構成している。この場合、低圧側と高圧側の圧縮部4A,4Bは互いにほぼ同一の構成要素を有しているので、以下の説明では、低圧側の構成要素に符号「A」を付して説明し、高圧側の構成要素については、符号「B」を付して説明すると共に、低圧側と重複する説明を省略するものとする。
5Aはケーシング1の外側ケース3Aに取付けられた低圧側の固定スクロールで、該固定スクロール5Aは、図2に示す如く、軸線O1−O1を中心として略円板状に形成された鏡板6Aと、該鏡板6Aの表面に立設された渦巻状のラップ部7Aと、鏡板6Aの外周側から軸方向に突出し、ラップ部7Aを取囲む位置で径方向外向きに延びた略筒状のフランジ部8Aとにより大略構成されている。
ここで、鏡板6Aには、ラップ部7Aの径方向外側に位置して後述の圧縮室15A内に空気を吸込む吸込口9Aと、ラップ部7Aの中央に位置して圧縮空気を吐出する吐出口10Aとが設けられている。また、鏡板6Aの裏面には、図2に示す如く、冷却風の流れ方向に沿って延びる複数の冷却フィン11Aが立設されている。
一方、5Bはケーシング1の外側ケース3Bに取付けられた高圧側の固定スクロールで、該固定スクロール5Bは、図3に示す如く、低圧側の固定スクロール5Aとほぼ同様に、鏡板6B、ラップ部7B、フランジ部8B、吸込口9B、吐出口10B、冷却フィン11B等によって構成されている。
そして、低圧側の吐出口10Aは、例えば配管、冷却器等を経由して高圧側の吸込口9Bに接続され、高圧側の吐出口10Bは、空気タンク(図示せず)等に接続されている。これにより、空気圧縮機は、吸込口9Aから吸込んだ空気を圧縮部4A,4Bによって順次圧縮する2段式の圧縮機として構成されている。
12Aは固定スクロール5Aと対面してケーシング1内に旋回可能に設けられた低圧側の旋回スクロールで、該旋回スクロール12Aは、図2に示す如く、軸線O2−O2を中心として略円板状に形成され外側ケース3A内に収容された鏡板13Aと、該鏡板13Aの表面に立設された渦巻状のラップ部14Aと、後述のボス部17A、冷却フィン21A等とによって構成されている。
ここで、旋回スクロール12Aのラップ部14Aは、固定スクロール5Aのラップ部7Aと重なり合った状態で配置され、これらのラップ部7A,14A間には複数の圧縮室15Aが画成されている。また、旋回スクロール12Aと固定スクロール5Aとの間には、低圧側と高圧側の旋回スクロール12Bの自転を防止する補助クランク16が設けられている。
そして、旋回スクロール12A,12Bは、後述のモータ27により回転軸28、駆動軸31等を介して一緒に駆動され、固定スクロール5A,5Bに対してそれぞれ旋回運動することにより、圧縮室15A,15B内で空気を圧縮する。
17Aは旋回スクロール12Aの鏡板13Aの裏面中央に突設されたスクロール側連結部としてのボス部で、該ボス部17A内には、図5に示す如く、後述する駆動軸31の小径軸部33Aが圧入等の手段によって回転を規制した状態で嵌合されている。
この場合、ボス部17Aは、例えば軸線O2−O2を中心とする有底の筒状体として形成され、端面18Aを有している。そして、ボス部17Aの内周側には、後述する高圧側のボス部17Bとほぼ同様に、駆動軸31への熱伝導を抑える複数本の長溝19A(1本のみ図示)と、該各長溝19Aの間に位置して駆動軸31が当接する複数箇所の円弧状周面部20Aとが設けられている。
21Aは旋回スクロール12Aの鏡板13Aの裏面に立設された複数の冷却フィンで、該各冷却フィン21Aは、旋回スクロール12Aの熱を放熱するものであり、図2に示す如く、冷却風の流れ方向に沿って延びている。
一方、12Bは外側ケース3B内に設けられた高圧側の旋回スクロールで、該旋回スクロール12Bは、図3、図4に示す如く、低圧側の旋回スクロール12Aとほぼ同様に形成された鏡板13B、ラップ部14Bと、後述のボス部17B、冷却フィン21B、補強リブ22、ボス部側冷却風通路25,26とによって大略構成されている。そして、ラップ部14Bは、固定スクロール5Bのラップ部7Bとの間に複数の圧縮室15Bを画成している。
17Bは旋回スクロール12Bの鏡板13Bの裏面中央に突設されたスクロール側連結部としてのボス部で、該ボス部17Bは、図6に示す如く、例えばアルミニウム等の金属材料によって鏡板13Bと一体に形成され、その内周側には、後述する駆動軸31の小径軸部33Bが圧入等の手段によって回転を規制した状態で嵌合されている。
そして、ボス部17Bは、例えば軸方向の一側が開口し他側が閉塞した有底の筒状体として形成され、軸線O2−O2を中心(中心O2)として軸方向に延びると共に、その端面18Bは環状の平坦面となっている。また、ボス部17Bの内周面は、後述の長溝19Bと円弧状周面部20Bとによって構成されている。
19Bはボス部17Bの内周側に形成された複数本(例えば3本)の長溝を示し、該各長溝19Bは、図6ないし図9に示す如く、後述の周溝35Bと協働してボス部17Bの内周側と駆動軸31の外周側との間に空間37Bを形成している。これにより、長溝19Bと周溝35Bとは、空間37Bによってボス部17Bと駆動軸31との間で径方向の接触面積(熱伝導経路)を減少させ、ボス部17Bから駆動軸31への熱伝導を抑えるものである。
ここで、各長溝19Bは、ボス部17Bの軸方向に延びる細長い溝として形成され、互いに周方向に間隔をもって配置されると共に、ボス部17Bの端面18Bに開口している。また、ボス部17Bの内周面は、各長溝19Bの間に位置する部位が例えば3箇所の円弧状周面部20Bとなり、これらの円弧状周面部20Bの内周側には、後述する駆動軸31の小径軸部33B(環状段部36B)が密着した状態で嵌合されている。
21Bは旋回スクロール12Bの鏡板13Bの裏面に立設された複数の冷却フィンで、該各冷却フィン21Bは、鏡板13B、ボス部17B等の放熱を行うものであり、図3、図4に示す如く、冷却風の流れ方向(矢示C方向)に沿って延びると共に、互いに間隔をもってほぼ平行に配置されている。
22は鏡板13Bの裏面に突出して設けられた複数の補強リブで、該各補強リブ22は、図10、図11に示す如く、例えば各冷却フィン21Bと交差しつつ、これと直交する方向に互いに間隔をもって延びている。
ここで、高圧側の旋回スクロール12Bには、圧縮空気の高い圧力や温度変化による応力等が加わり易い。このため、冷却フィン21Bと補強リブ22とは、鏡板13Bの裏面に全体として格子状のリブ構造を形成し、互いに直交する2方向に対して旋回スクロール12Bの強度及び剛性を高めることにより、その反り、熱変形等を防止している。この場合、旋回スクロール12Bの中央部には特に高い圧力が加わるので、補強リブ22は、ボス部17Bに近い部位ほど鏡板13Bから大きく突出した形状となっている。
一方、ボス部17Bの近傍は高温となり易いので、補強リブ22には、ボス部17Bを取囲む位置に略環状の凹溝23が形成され、この凹溝23の位置では補強リブ22の突出寸法が小さくなっている。これにより、冷却フィン21Bに沿って冷却風が流れるときには、補強リブ22が突設された状態でも、凹溝23によってボス部17Bの外周側に冷却風を効率よく接触させることができ、冷却性能を高めることができる。また、旋回スクロール12Bの鏡板13Bの外周側には、放熱性を高める複数の放熱フィン24が突設されている。
25,26は例えば高圧側の旋回スクロール12Bのボス部17Bに設けられたボス部側冷却風通路を示し、該各ボス部側冷却風通路25,26は、後述の軸部側冷却風通路41と協働してボス部17B及び駆動軸31の内部に冷却風を流通させ、これらの嵌合部位の冷却効率を高めるものである。
ここで、ボス部側冷却風通路25,26は、図6ないし図9に示す如く、ボス部17Bを略径方向に貫通する例えば4個の貫通孔として形成され、ボス部17Bの内周面と外周面とに開口すると共に、その直径方向両側に2個ずつ配置されている。この場合、2個のボス部側冷却風通路25は、後述の流入口52B(図4参照)に向けて開口し、空間37Bを通じて軸部側冷却風通路41の上流側に連通している。また、他の2個のボス部側冷却風通路26は、後述の流出口53Bに向けて開口し、軸部側冷却風通路41の下流側に連通している。
このため、外側ケース3Bの流入口52Bから流出口53Bに向けて冷却風が流通するときには、図4に示す如く、矢示C方向に流れる冷却風の一部が冷却風通路25,26,41内にスムーズに流入し、これによってボス部17Bと駆動軸31との嵌合部位を内側から効率よく冷却することができる。
また、各冷却風通路25,26,41の位置では、ボス部17Bと駆動軸31の横断面積を各冷却風通路の分だけ小さくすることができる。これにより、ボス部17B側から駆動軸31に至る軸方向の熱伝導経路を減少させることができ、これらの間で熱伝導を抑えることができる。
また、ボス部側冷却風通路25,26は、例えば上流側のボス部側冷却風通路25が長溝19B内に開口し、軸部側冷却風通路41は、駆動軸31の周溝35B内に開口しているので、ボス部側冷却風通路25,26と軸部側冷却風通路41とは、後述の空間37Bを通じて互いに連通している。
これにより、冷却風通路25,26,41を流れる冷却風を空間37B内にも流通させることができ、空間37Bを冷却風の通路として利用することができる。従って、空間37B内の温度を低い温度に保持でき、ボス部17Bから駆動軸31への熱伝導を抑える空間37Bの断熱機能を高めることができる。
次に、27は旋回スクロール12A,12Bの駆動源となる例えば電動式のモータで、該モータ27は、図1に示す如く、ケーシング1の中間ケース2内に設けられた筒状のステータと、後述する回転軸28の外周側に固定された筒状のロータ等とからなり、回転軸28を回転駆動するものである。
28はケーシング1内に回転可能に設けられた回転軸で、該回転軸28は、例えば段付円筒状の中空ロッドからなり、回転軸受29A,29Bを介して外側ケース3A,3Bに回転可能に支持されると共に、軸線O1−O1を中心としてモータ27のロータと一体に回転する。
30Aは回転軸28の一端側外周に固着して取付けられた略円筒状の偏心ブッシュで、該偏心ブッシュ30Aは、図2に示す如く、軸線O1−O1を中心として回転軸28と一体に回転するものであり、その内周側には、後述の偏心軸受42Aが軸線O1−O1から偏心した状態で嵌合されている。一方、回転軸28の他端側には、図3に示す如く、他の偏心ブッシュ30Bと偏心軸受42Bとが取付けられている。
31は旋回スクロール12A,12Bを旋回駆動する段付円柱状の駆動軸で、該駆動軸31は、図5、図6に示す如く、回転軸28内に挿通して設けられた中間軸部32と、該中間軸部32の軸方向一側に縮径して形成され、後述の偏心軸受42Aと偏心ブッシュ30Aとを介して回転軸28に回転可能に取付けられた駆動軸側連結部としての小径軸部33Aと、中間軸部32の軸方向他側に縮径して形成され、後述の偏心軸受42Bと偏心ブッシュ30Bとを介して回転軸28に回転可能に取付けられた他の駆動軸側連結部としての小径軸部33Bとによって大略構成されている。
ここで、中間軸部32と小径軸部33A,33Bとの間には、中間軸部32の端面によって環状の拡径段部34A,34Bが形成されている。また、小径軸部33A,33Bの先端側は回転軸28から突出し、例えば圧入等の手段によって旋回スクロール12A,12Bのボス部17A,17B内にそれぞれ回転を規制した状態で嵌合、固着されている。
そして、駆動軸31の軸線O2−O2は、偏心ブッシュ30A,30Bにより回転軸28等の軸線O1−O1に対して一定の寸法だけ偏心した位置に保持されている。これにより、駆動軸31は、回転軸28が回転するときに、一定の旋回半径をもって旋回スクロール12A,12Bを旋回運動させるものである。
35Aは駆動軸31の低圧側の小径軸部33Aに設けられた周溝、35Bは高圧側の小径軸部33Bに設けられた周溝をそれぞれ示し、これらの周溝35A,35Bは、図5、図6に示す如く、ボス部17A,17B内で小径軸部33A,33Bの全周にわたって延びる環状溝として形成されている。
この場合、低圧側の小径軸部33Aの外周面は、周溝35Aとその両側に位置する2箇所の環状段部36Aとによって構成され、各環状段部36Aは、圧入等の手段によってボス部17Aの円弧状周面部20Aの内周側に嵌合されている。この状態で、周溝35Aとボス部17Aの各長溝19Aとは、ボス部17Aと小径軸部33Aとの間にこれらの部材を径方向に離間させる径方向の空間37Aを形成し、この空間37Aは、ボス部17Aから小径軸部33Aへの熱伝導を抑制するものである。
また、高圧側の小径軸部33Bの外周面も同様に、周溝35Bと各環状段部36Bとによって構成されている。そして、環状段部36Bは、ボス部17Bの円弧状周面部20Bに嵌合され、周溝35Bとボス部17Bの各長溝19Bとは、ボス部17Bと小径軸部33Bとの間に径方向の空間37Bを形成している。そして、この空間37Bは、ボス部17Bの冷却風通路25,26と小径軸部33Bの冷却風通路41との間に介在している。
さらに、38Aは低圧側の小径軸部33Aの端面に設けられた凹窪部、38Bは高圧側の小径軸部33Bの端面に設けられた凹窪部をそれぞれ示している。この場合、小径軸部33Aの端面は、図5に示す如く、凹窪部38Aとその径方向外側に位置する環状の平坦面39Aとによって構成され、平坦面39Aはボス部17Aの底部側に当接している。この状態で、凹窪部38Aは、ボス部17Aの底部側と小径軸部33Aの端面との間にこれらの部材を軸方向に離間させる軸方向の空間40Aを形成し、この空間40Aは、ボス部17Aと小径軸部33Aとが軸方向で接触する面積を減少させ、これらの間の熱伝導を抑制している。
一方、高圧側の小径軸部33Bの端面も同様に、図6に示す如く、凹窪部38Bと環状の平坦面39Bとによって構成されている。そして、平坦面39Bはボス部17Bの底部側に当接し、凹窪部38Bは、ボス部17Bとの間に軸方向の空間40Bを形成している。
41は例えば駆動軸31の高圧側の小径軸部33Bに設けられた軸部側冷却風通路を示し、該軸部側冷却風通路41は、ボス部側冷却風通路25,26と協働してボス部17B及び小径軸部33Bの内部に冷却風を流通させるものである。
ここで、軸部側冷却風通路41は、図6ないし図9に示す如く、駆動軸31の小径軸部33Bを直径方向に貫通する貫通孔として形成され、周溝35B内に開口している。これにより、軸部側冷却風通路41は、ボス部側冷却風通路25,26の説明で述べたように、駆動軸31の横断面積を減少させることができ、また空間37Bに冷却風を流通させることができる。
42A,42Bは駆動軸31の小径軸部33A,33Bを回転可能に支持する軸受としての偏心軸受で、これらの偏心軸受42A,42Bは、図5、図6に示す如く、例えばころ軸受等によって構成されている。そして、低圧側の偏心軸受42Aは、駆動軸31の小径軸部33Aの外周側に設けられた内輪43Aと、該内輪43Aの外周側に位置して回転軸28側の偏心ブッシュ30A内に設けられた外輪44Aと、内輪43Aと外輪44Aとの間に転動可能に設けられ、これらを回転可能に連結する複数の転動子45Aとによって大略構成されている。
ここで、偏心ブッシュ30Aの内周側には、駆動軸31の小径軸部33Aの外周側に摺接する環状のシール部材46Aが設けられ、このシール部材46Aは、偏心ブッシュ30A内に配置された偏心軸受42Aを異物から保護したり、偏心軸受42Aの潤滑油等が外部に漏れるのを防止している。
一方、高圧側の偏心軸受42Bも、低圧側の偏心軸受42Aとほぼ同様に、内輪43B、外輪44B、転動子45B等によって構成され、シール部材46Bによってシールされている。
次に、空気圧縮機の冷却構造について説明すると、47Aは回転軸28の軸方向一側に設けられた低圧側の冷却ファン47Bは回転軸28の軸方向他側に設けられた高圧側の冷却ファンをそれぞれ示している。
ここで、まず高圧側の冷却ファン47Bについて述べると、この冷却ファン47Bは、図3に示す如く、例えば遠心ファン等からなり、偏心ブッシュ30Bの外周側に固定されると共に、旋回スクロール12Bとモータ27との間で外側ケース3B内に収容されている。
そして、冷却ファン47Bは、モータ27によって回転軸28と一緒に回転駆動され、外側ケース3Bの内,外を流通する矢示A,B,C,D方向の冷却風を発生することにより、固定スクロール5B、旋回スクロール12B、偏心軸受42B等を冷却するものである。
この場合、外側ケース3B内には、冷却ファン47Bの軸方向両側で外側ケース3B内の空間を仕切る環状の仕切板48B,49Bと、後述の冷却風ガイド55とが設けられている。また、外側ケース3Bには、外部から冷却ファン47Bの内周側に冷却風を取入れる取入れ口50Bと、この冷却風が冷却ファン47Bの外周側から外側ケース3Bの外部に吹出す吹出し口51Bと、該吹出し口51Bから吹出した冷却風が旋回スクロール12Bの裏面側に流入する流入口52Bと、旋回スクロール12Bの裏面側を通過した冷却風が流出する流出口53Bとが設けられている。
そして、流入口52Bと流出口53Bとは、図3、図4に示す如く、旋回スクロール12Bを挟んで直径方向の両側に配置されている。また、外側ケース3Bの外部には、吹出し口51Bから吹出した冷却風を流入口52Bと固定スクロール5Bの裏面側とに導くダクト54Bが設けられている。
55はケーシング1の外側ケース3B内に設けられた例えば2個の冷却風ガイドを示し、該各冷却風ガイド55は、図4に示す如く、例えば樹脂材料、金属材料等からなる細長い板材によって形成されている。また、冷却風ガイド55は、旋回スクロール12Bを直径方向の両側から挟む位置で外側ケース3Bの流入口52Bと流出口53Bとの間に延設され、固定スクロール5Bの裏面側に取付けられると共に、仕切板49Bに向けて軸方向に突出している。
そして、冷却風ガイド55は、固定スクロール5Bと仕切板49Bとの間で外側ケース3B内に形成された円形状の空間のうち、旋回スクロール12Bの両側に位置する空きスペースを閉塞し、旋回スクロール12Bの裏面側を通って流入口52Bから流出口53Bに至る細長い通気路56を画成している。これにより、冷却風ガイド55は、外側ケース3B内に流入する冷却風をボス部17Bの近傍に流通させ、冷却風通路25,26,41に向けて導くものである。
一方、低圧側の冷却ファン47Aについて述べると、この冷却ファン47Aは、例えば高圧側の冷却ファン47Bとほぼ同様の遠心ファン等からなり、偏心ブッシュ30Aの外周側に固定されると共に、旋回スクロール12Aとモータ27との間で外側ケース3A内に収容されている。そして、冷却ファン47Aは、モータ27によって回転駆動されることにより、固定スクロール5A、旋回スクロール12A、偏心軸受42A等を冷却する冷却風を発生する。
この場合、外側ケース3Aには、冷却ファン47Aの軸方向両側で外側ケース3A内の空間を仕切る環状の仕切板48A,49Aと、例えば旋回スクロール12Aの裏面側に冷却風が流入する取入れ口(図示せず)と、この冷却風を冷却ファン47Aの径方向外側から外側ケース3Aの外部に流出させる吹出し口51Aと、該吹出し口51Aから流出した冷却風を固定スクロール5Aの裏面側に導入するダクト54Aとが設けられている。
本実施の形態によるツインラップ型のスクロール式空気圧縮機は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、モータ27に給電すると、回転軸28が軸線O1−O1を中心として回転駆動される。これにより、回転軸28内に偏心状態で取付けられた駆動軸31が旋回運動を行うと、その両端側に連結された旋回スクロール12A,12Bは、固定スクロール5A,5Bに対して旋回動作を行う。
この結果、低圧側の圧縮部4Aは、吸込口9Aから外気を吸込みつつ、この空気を各圧縮室15A内で順次圧縮し、吐出口10Aから中間圧の圧縮空気を吐出する。そして、この中間圧の圧縮空気は、高圧側の圧縮部4Bに吸込まれて圧縮されることにより、高圧の圧縮空気となって吐出口10Bから吐出され、空気タンク等に貯留される。
また、圧縮機の運転時には、回転軸28と一緒に冷却ファン47A,47Bが回転駆動される。これにより、低圧側の冷却ファン47Aは、図2に示す如く、旋回スクロール12Aの裏面側に冷却風を吸込みつつ、この冷却風をダクト54Aによって固定スクロール5Aの裏面側に供給し、これらのスクロール5A,12Aを冷却することができる。
また、高圧側の冷却ファン47Bは、図3中の矢示Aに示す如く、外側ケース3Bの取入れ口50Bから冷却風を吸込み、吹出し口51Bからダクト54Bに向けて冷却風を矢示B方向に吹出させる。この冷却風の一部は、外側ケース3Bの流入口52Bから通気路56内に流入し、冷却フィン21Bに沿って矢示C方向に流通することにより、旋回スクロール12Bの鏡板13B、ボス部17B、駆動軸31、偏心軸受42B等を冷却した後に、流出口53Bから外側ケース3Bの外部に流出する。また、残りの冷却風は、固定スクロール5Bの冷却フィン11Bに沿って矢示D方向に流通し、これを冷却することができる。
この場合、外側ケース3B内を冷却風が流通するときには、図4に示す如く、矢示C方向に流れる冷却風の一部が旋回スクロール12Bのボス部側冷却風通路25に流入し、軸部側冷却風通路41を通って他のボス部側冷却風通路26から流出する。これにより、冷却風通路25,26,41を流れる冷却風によってボス部17Bと駆動軸31との嵌合部位を内側から効率よく冷却でき、旋回スクロール12Bの鏡板13B側で発生する熱が駆動軸31側に伝わるのを抑制することができる。
かくして、本実施の形態によれば、旋回スクロール12Bのボス部17Bにボス部側冷却風通路25,26を設け、駆動軸31の小径軸部33Aに軸部側冷却風通路41を設ける構成としたので、これらの冷却風通路25,26,41に冷却風を流通させることにより、ボス部17Bと駆動軸31との嵌合部位を内側から効率よく冷却することができる。また、冷却風通路25,26,41の位置では、ボス部17Bと駆動軸31の横断面積を各冷却風通路の分だけ小さくすることができ、ボス部17B側から駆動軸31に至る軸方向の熱伝導経路を減少させることができる。
これにより、旋回スクロール12B側の熱がボス部17Bから駆動軸31に伝わるのを冷却風通路25,26,41によって抑制でき、偏心軸受42B、回転軸受29B等が旋回スクロール12B側の熱によって高温となるのを確実に防止することができる。従って、軸受29B,42B等を熱による劣化から保護することができ、耐久性を高めることができる。
この場合、外側ケース3B内には冷却風ガイド55を設けたので、外側ケース3B内を流れる冷却風を冷却風ガイド55によって冷却風通路25,26,41の位置に導くことができる。これにより、十分な風量の冷却風を各冷却風通路25,26,41に安定的に流通させることができ、冷却効率を高めることができる。
また、旋回スクロール12Bのボス部17Bに複数本の長溝19Bを設け、駆動軸31の小径軸部33Bに複数本の周溝35Bを設けたので、ボス部17Bと駆動軸31との間には、これらの長溝19Bと周溝35Bとによって空間37Bを配設することができる。これにより、ボス部17Bと駆動軸31とが径方向で接触する面積(熱伝導経路)を空間37Bの分だけ小さくすることができる。
従って、例えば空間37Bの周方向寸法等を適切に設定することにより、ボス部17Bと駆動軸31との嵌合部位に十分な強度を与えつつ、ボス部17Bから駆動軸31への熱伝導を抑えることができ、偏心軸受42B等を低い温度に保持することができる。そして、この空間37Bを冷却風通路25,26,41と連通させることにより、各冷却風通路を流れる冷却風を空間37B内にも流通させることができ、空間37B内の空気を外部と循環させてボス部17Bや駆動軸31の放熱性を高めることができる。
さらに、駆動軸31の小径軸部33Bの先端側に凹窪部38Bを設け、この凹窪部38Bによって駆動軸31とボス部17Bとの間に空間40Bを設けたので、これらの間で軸方向の熱伝導経路を減少させることができ、ボス部17Bから駆動軸31への熱伝導をより低減することができる。
この場合、ツインラップ型のスクロール式空気圧縮機では、両側の圧縮部4A,4Bで発生する熱が軸受等の部品に伝わり易く、特に高圧側の軸受29B,42B等は、高温となる旋回スクロール12Bから熱伝導の影響を受け易い。このため、本実施の形態では、冷却風通路25,26,41、空間37B及び空間40Bを用いて高圧側の旋回スクロール12Bから駆動軸31への熱伝導を抑えることにより、軸受29B,42B等の温度上昇を抑えて耐熱性の高い圧縮機を実現することができる。
一方、低圧側の圧縮部4Aについても、旋回スクロール12Aのボス部17Aと駆動軸31の小径軸部33Aとの間に空間37A及び空間40Aを設けたので、軸受29A,42A等の耐熱性を高めることができる。
次に、図12ないし図15は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ボス部と駆動軸との間に取付ねじを設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
61Bは高圧側の旋回スクロールで、該旋回スクロール61Bは、第1の実施の形態と同様の鏡板13B、ラップ部14B、冷却フィン21B、補強リブ22と、後述のボス部62Bとによって大略構成されている。
62Bは鏡板13Bの裏面側に一体形成された有底筒状のスクロール側連結部としてのボス部で、該ボス部62Bには、図12、図13に示す如く、第1の実施の形態とほぼ同様に、端面63B、長溝64B、円弧状周面部65Bと、ボス部側冷却風通路66,67とが設けられている。
しかし、ボス部62Bには、図14、図15に示す如く、後述の取付ねじ80を挿通する例えば3箇所の挿通孔68が穿設され、これらの挿通孔68は、ボス部側冷却風通路66,67と軸方向の異なる位置に形成されている。また、各挿通孔68は、各円弧状周面部65Bの位置でボス部62Bを径方向に貫通し、径方向外側が段付状に拡径した段付孔となって各長溝64Bの間に開口している。
69は旋回スクロール61Bを旋回させる駆動軸で、該駆動軸69は、第1の実施の形態とほぼ同様に、中間軸部70と、駆動軸側連結部としての小径軸部71Bと、拡径段部72B、周溝73B、環状段部74B等とを有し、小径軸部71Bとボス部62Bとの間には、長溝64Bと周溝73Bとによって空間75Bが形成されている。
また、小径軸部71Bの端面76Bは円形状の平坦面として形成され、第1の実施の形態の凹窪部38Bを廃止した構成となっている。そして、小径軸部71Bの端面76Bは、その全面がボス部62Bの底部側から軸方向に離間して配置され、これらの間には、後述の環状体81によりスラスト方向の荷重を受承した状態でボス部62Bと駆動軸69とを軸方向に離間させる軸方向の空間77Bが形成されている。
また、小径軸部71Bには、これを径方向に貫通して周溝73B内に開口する軸部側冷却風通路78が設けられている。さらに、小径軸部71Bには、環状段部74Bの位置に開口する複数のねじ孔79が径方向に穿設され、これらのねじ孔79はボス部62Bの各挿通孔68と連通している。
80は旋回スクロール61Bのボス部62Bと駆動軸69の小径軸部71Bとの間に設けられた例えば3本の取付ねじで、該各取付ねじ80は、ボス部62Bの各挿通孔68に挿通され、ボス部62Bを径方向に貫通して小径軸部71Bのねじ孔79に螺着されている。これにより、取付ねじ80は、ボス部62Bと小径軸部71Bとを軸方向、径方向及び回転方向に対して一体に固定している。
この場合、各取付ねじ80は、長溝64B、周溝73B及び冷却風通路66,67,78と異なる位置、即ち円弧状周面部65Bと環状段部74Bとが当接する位置でボス部62Bと小径軸部71Bとを締結している。これにより、取付ねじ80の締結力を円弧状周面部65Bと環状段部74Bとが当接する位置に安定的に付加でき、これらの部位を強く密着させることができるので、ボス部62Bと駆動軸69とを安定した状態で強固に締結することができる。
81は旋回スクロール61Bのボス部62Bと偏心軸受42Bの内輪43Bとの間に設けられた環状体で、該環状体81は、例えば内輪43Bとほぼ同じ鉄等の金属材料を用いて円筒状に形成され、旋回スクロール61B側で発生するスラスト方向の荷重をボス部62Bと内輪43Bとの間で受承するものである。
ここで、環状体81は、図12、図15に示す如く、駆動軸69の小径軸部71Bの外周側に挿嵌され、軸方向一側が偏心軸受42Bの内輪43Bに当接すると共に、軸方向他側がボス部62Bの端面63Bに当接している。また、環状体81は、駆動軸69の拡径段部72Bとの間に内輪43Bを挟持し、これによって偏心軸受42Bを駆動軸69の軸方向に位置決めしている。
そして、圧縮機の運転時には、旋回スクロール61Bが空気を圧縮することによってスラスト方向の荷重を受けると、このスラスト方向の荷重は、ボス部62Bに衝合された環状体81によって受承され、環状体81と偏心軸受42Bの内輪43Bとを通じて駆動軸69に伝達される。
この場合、環状体81は十分に大きな外径寸法をもって形成され、その外周面は、ボス部62Bの長溝64Bから径方向外側に離間している。これにより、環状体81は、ボス部62Bの底部側と駆動軸69の端面76Bとの間に軸方向の空間77Bが形成された状態でも、ボス部62Bの端面63Bと広い面積で接触することによってスラスト方向の荷重を安定的に受承することができる。また、環状体81の外周側には、偏心ブッシュ30Bとの間に位置して第1の実施の形態とほぼ同様のシール部材46B′が設けられている。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、ボス部62Bと駆動軸69とを締結する構成としたので、これらが嵌合(接触)する面積を大きく確保しなくても、取付ねじ80によってボス部62Bと駆動軸69との嵌合状態を安定的に保持することができる。
従って、取付ねじ80を用いない場合と比較して、例えば長溝64B、周溝73B等を大きく広幅に形成でき、ボス部62Bと駆動軸69との接触面積を減少させることができるので、これらの間の熱伝導を十分に抑えることができる。
この場合、取付ねじ80を、ボス部62Bの円弧状周面部65Bと駆動軸69の環状段部74Bとが当接する位置に配設しているので、取付ねじ80の締結力をボス部62Bと駆動軸69とが径方向で密着する部位に付加でき、これらを安定した状態で強固に締結することができる。このため、例えば外力、振動等によってボス部62Bと駆動軸69との嵌合部位にがたつき等が生じたり、この部位にかじり、摩耗(フレッティング)等が生じるのを確実に防止でき、耐久性を高めることができる。
また、旋回スクロール61Bのボス部62Bと偏心軸受42Bの内輪43Bとの間には環状体81を設けたので、この環状体81は、駆動軸69を取囲む位置でボス部62Bの端面63Bと偏心軸受42Bの内輪43Bとに十分な接触面積をもって当接することができ、これによって旋回スクロール61Bから駆動軸69に伝わるスラスト方向の荷重を安定的に受承することができる。
この場合、環状体81とボス部62Bとの接触部位、及び環状体81と内輪43Bとの接触部位では、スラスト方向の荷重を広い面積に分散して当該荷重による圧力(面圧)を軽減できるので、スラスト荷重の受承部位が変形したり、この変形が原因で各スクロール5B,61B間の軸方向ギャップが変動するのを確実に防止でき、圧縮機の耐久性を高めて動作を安定させることができる。
これにより、旋回スクロール61Bと駆動軸69との位置関係を環状体81によって安定的に定めることができる。このため、ボス部62Bの底部側と駆動軸69との間には、端面76B全体にわたって空間77Bを設けることができ、この空間77Bによってボス部62Bと駆動軸69との軸方向の接触面積を十分に減少させることができるので、耐熱性をより高めることができる。
なお、前記各実施の形態では、ボス部17B,62Bに4個のボス部側冷却風通路25,26(またはボス部側冷却風通路66,67)を設け、駆動軸31,69に単一の軸部側冷却風通路41(または軸部側冷却風通路78)を設ける構成とした。しかし、本発明では、軸部側に必ずしも冷却風通路を設ける必要はなく、軸部側には冷却風通路を設けない構成としてもよい。そして、この場合には、ボス部側冷却風通路を、例えばボス部と軸部との間に形成した空間(実施の形態における空間37B,75B等)に連通させる構成とすればよい。
また、本発明では、冷却風通路となる貫通孔の個数も実施の形態に限るものではなく、例えば3個以下または5個以上のボス部側冷却風通路を設けたり、複数個の軸部側冷却風通路を設ける構成としてもよい。
一方、実施の形態では、旋回スクロール12B,61Bにボス部17B,62Bを設け、駆動軸31,69には軸部33B,71Bを設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回スクロールの裏面側にスクロール側連結部としての軸部を設け、駆動軸には、この軸部が嵌合される駆動軸側連結部としてのボス部を設ける構成としてもよい。
また、実施の形態では、高圧側の圧縮部4Bに冷却風通路25,26,41,66,67,78を設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば低圧側の旋回スクロール12Aのボス部17Aと駆動軸31の小径軸部33Aとに貫孔を設ける構成としてもよい。
一方、実施の形態では、ボス部17B,62B等に3本の長溝19B,64Bを設け、駆動軸31,69に1本の周溝35B,73Bを設ける構成とした。しかし、本発明における溝の本数は実施の形態に限らず、例えばボス部に1本、2本または4本以上の長溝を設けたり、駆動軸に複数本の周溝を設ける構成としてもよい。また、本発明では、例えばボス部の内周側に周溝を設け、駆動軸の外周側に長溝を設ける構成としてもよく、またボス部と駆動軸の両方に周溝を設けたり、両方に長溝を設ける構成としてもよい。さらには、ボス部と駆動軸のうち何れか一方の部材だけに溝を設け、他方の部材は溝を省略する構成としてもよい。
また、実施の形態では、固定スクロール5A,5Bに対して旋回スクロール12A,12B,61Bが旋回運動する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば2つの旋回スクロールを互いに対面して配置することにより当該旋回スクロールの間に圧縮室を画成し、これら2つの旋回スクロールをそれぞれ相手方の旋回スクロールに対して旋回運動させることにより圧縮動作を行う構成とした全系回転型のスクロール式流体機械に適用してもよい。
さらに、実施の形態では、スクロール式流体機械としてスクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機、真空ポンプ等を含めて他のスクロール式流体機械に適用してもよい。