最良の形態1
本発明における特徴的な考え方は以下のとおりである。
1)沈澱法でドロスを除去することを基本とする。そのため沈殿槽を大きくする。
2)めっき槽では、ドロスが有害な寸法に成長する前に液を更新する。そのためには、めっき槽はできるだけ小さい方が望ましい。
3)めっき槽への原料亜鉛の供給を固体亜鉛ではなく、液体亜鉛で行う。めっき槽で浴温変動によるドロスの成長促進を防ぐためである。
4)原料亜鉛の供給は、沈殿槽で固体亜鉛(インゴット)を溶解して行う。固体亜鉛溶解部近傍の浴温変動を活用してドロス成長促進を図るためである。沈殿槽では加熱装置の設置が不可欠である。
5)沈殿槽からめっき槽への溶融亜鉛の供給を非常に穏やかな流れを介して行う。トップドロスの発生を抑えるためである。浴面で少しでも大気を巻き込むような流れが発生すると、トップドロスが激しく発生する。沈殿槽とめっき槽を開口部で結び、両者の液位を等しくすると前記条件が満たされる。
6)ドロスを除去した溶融亜鉛の沈殿槽からの排出は、沈殿槽での液面を含む流れが最適である。開口部をできるだけ上部に設けるとこの条件が満たされる。
7)以上の要件を、一つの容器を上部のめっき槽と下部のドロス除去槽に分割して行う。設備の簡素化、これによる操業の安定化、設備費の低減、設置面積の低減などを図るためである。
本発明は、前記の考えに基くものであり、最良の形態1の要旨は以下の通りである。
第1の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき容器に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なうに際して、前記めっき容器を上部に配設しためっき槽とその下部に配設したドロス除去槽に分割し、めっき槽に鋼帯を浸漬して溶融亜鉛系めっきを行い、めっき槽の溶融金属浴をメカニカルポンプを用いてドロス除去槽へ移送し、ドロス除去槽で溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解し、またドロス除去槽の溶融金属浴をめっき槽に設けた開口部からめっき槽に戻すことを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第2の実施の形態は、ドロス除去槽からめっき槽に戻す溶融金属浴がドロスを除去した上澄み浴を含むものであることを特徴とする第1の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第3の実施の形態は、めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、W1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するめっき槽とドロス除去槽を用い、めっき槽からドロス除去槽へ移送する溶融金属浴の流量を1m3/h以上10m3/h以下とすることを特徴とする第1の実施の形態又は第2の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第4の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき容器に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なう溶融亜鉛系めっき装置において、前記めっき容器を分割して上部に鋼帯を浸漬して溶融亜鉛系めっきを行うめっき槽およびその下部に溶融金属中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解するドロス除去槽を配設し、またさらにめっき槽の溶融金属浴をドロス除去槽へ移送するメカニカルポンプ及びドロス除去槽の溶融金属浴をめっき槽に戻す開口部をめっき槽に配設することを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第5の実施の形態は、開口部がドロスを除去した上澄み浴を含む溶融金属浴をめっき槽に還流可能に配設されていることを特徴とする第4の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
第6の実施の形態は、めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、めっき槽とドロス除去槽がW1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するとともに、溶融金属浴を移送するメカニカルポンプが1m3/h以上10m3/hの流量の溶融金属浴を移送可能であることを特徴とする第4の実施の形態又は第5の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
最良の形態1においては、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固相亜鉛(インゴット)の溶解をめっき槽の下部に配設したドロス除去槽で行うので、めっき槽の溶融金属浴(融液)の温度変動が小さくなり、めっき槽におけるドロスの発生を減少できる。
めっき槽のドロスを含む融液をメカニカルポンプを用いてドロス除去槽に移送するので、ガスリフトポンプに見られるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がない。また、鋼帯の随伴流を利用した融液の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所の融液を必要流量だけ確実にドロス除去槽に移送できる。
ドロス除去槽内では走行する鋼帯により生じる融液の攪拌がないため流れが沈静化され、ドロスが沈澱しやすくなる。またドロス除去槽でインゴットを溶解することによって、局部的な融液温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの沈降分離が促進される。この二つの作用により、ドロス除去槽ではドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去槽でドロスが除去され、清浄化された融液が優先してめっき槽に配設された開口部からめっき槽に戻る。融液の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽とドロス除去槽の融液にはほとんど液面差がない。したがって、融液がめっき槽に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロス除去槽のドロスが除去された上澄み浴を戻すように開口部をできるだけ上部に配設すると、より清浄性に優れる浴面近傍の上澄み浴を優先してめっき槽に戻すことができる。
最良の形態1の装置は、めっき容器を上下に配置しためっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題を解消できる。
めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、W1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するめっき槽とドロス除去槽を用い、めっき槽からドロス除去槽へ移送する溶融金属浴の流量を1m3/h以上10m3/h以下にすると、めっき槽内において、めっき槽内の融液の流れが淀んだ部分でドロスが堆積することを防止でき、また発生したドロスをドロス除去槽で効率よく除去できるのでより好ましい。
最良の形態1について第1図及び第2図を用いて説明する。第1図は最良の形態1に係る溶融亜鉛系めっき装置で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。第1図及び第2図において、1はスナウト、2はシンクロール、3は溶融金属浴(融液)、4はめっき容器である。めっき容器4は、鋼帯Sにめっきするめっき槽11と前記めっき槽の下部に配設され、ドロスを沈降分離しインゴット14を溶解するドロス除去槽12に分割されている。また、5はメカニカルポンプ、13はめっき槽11に配設された開口部である。
鋼帯Sは矢印の方向に走行してスナウト1からめっき槽11に侵入し、シンクロール2で方向転換後、溶融金属浴3から引上げられ、図示しない付着量制御装置でめっき付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施された後、めっき鋼帯となる。
めっき槽11のドロスを含む融液3は、メカニカルポンプ5を介してドロス除去槽12に移送され、ドロス除去槽12でドロスが沈降分離され、融液3は開口部13を経てめっき槽11に戻る。メカニカルポンプ5で移送される融液量がめっき槽11とドロス除去槽12間の融液3の循環量になる。
ドロス除去槽12に一対の加熱装置(誘導加熱装置)15、16が配設されている。めっき槽11の融液温度はドロス除去槽12から戻る融液3の熱とめっき槽11に侵入する鋼帯Sの板温により決まる。
本装置では、めっき槽11には加熱装置が配設されておらず、めっき槽11の融液の温度管理をドロス除去槽12に配設した加熱装置15、16で行う。ドロス除去槽12にインゴット14を投入した場合、加熱装置15、16を適切に稼動させて、開口部13からめっき槽11に流入する融液温度を所定温度に保つように制御する。
インゴット14の溶解をめっき槽11で行わないのでめっき槽11の融液3の温度変動が小さくなり、まためっき槽11の融液3の温度管理をドロス除去槽11の加熱装置15、16で行うので誘導加熱装置から噴射される高温の融液3が鋼帯Sに接触することがなくなり、鋼帯Sからの鉄の溶出が抑えられ、めっき槽11におけるドロスの発生自体を低減できる。
めっき槽11の融液3をドロス除去槽12に移送するセラミックス製のメカニカルポンプ5がめっき容器4に配設されている。めっき槽11とドロス除去槽12が隣接しているので、融液3の移送距離が短く、移送時の融液3の凝固や漏洩の問題を実質的に解消できる。また、めっき槽11の所要の領域の融液3を必要流量だけ確実にドロス除去槽12に移送できる。
メカニカルポンプとは、ポンプ機械の作動部に直接触れる形で融液を移送する渦巻ポンプ(遠心ポンプ)やタービンポンプ、容積型ポンプ等のポンプであり、ガスリフトポンプを含まない。
ドロス除去槽12で、インゴット14の溶解とボトムドロスの沈降分離を行う。ドロス除去槽12では、融液3の流れが整流化される。この作用に加えて、インゴット溶解に伴う局部的な融液温度低下とアルミ濃度変化が大きくなり、ドロスの沈降分離が促進される。これにより、ドロスの沈降分離効率が向上する。
ドロス除去槽12には、ボトムドロスを効率良く沈降分離するために、必要に応じて融液3の流れを整流化する仕切板を配設してもよい。
インゴット投入部と反対側のめっき槽11の側壁に、浴面を含む浴面近傍に流路を形成する開口部13が配設されている。溶解したインゴット融液が混合し、またドロスを沈降分離して清浄化した浴面近傍の上澄み浴が優先的に開口部13からめっき槽11に戻る。融液3の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽11とドロス除去槽12の融液3にはほとんど液面差が生じない。したがって、融液3がめっき槽11に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロスが除去された清浄な融液3がめっき槽11に戻り、まためっき槽11で発生するドロス自体も少ないので、めっき槽11においてドロス堆積を防止する効果が優れる。
第1図の装置において、槽容量、循環流量を変更した場合のめっき槽11におけるドロス付着による品質欠陥の発生状況について調査した。調査結果を第2図〜第4図に示す。
第2図は、ドロス除去槽12の容量を20m3、循環流量を一定の3m3/hにして、めっき槽11の容量を変更して鋼帯Sにめっきした場合のドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を示す図である。ドロス付着による品質欠陥の発生状況は、めっき後の鋼帯Sの表面を目視観察してドロス付着の程度に応じてインデックス1〜5の5段階に分けて評価した。インデックス1が最も優れ、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯において求められている品質レベルである。
めっき槽11の容量が10m3以下ではインデックスが1で品質が良好だが、めっき槽11の容量が10m3を超えると、インデックスが大きくなり品質が低下する。めっき槽11の容量が大きくなる程流れの淀んだ部分が発生しやすくなり、そこにボトムドロスが堆積するためである。めっき槽11でボトムドロスの堆積を防止するにはめっき槽11の容量を小さくすることが有効であり、めっき槽11の容量を10m3以下にすると、現在求められている高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
また、循環流量を一定の3m3/hにして、ドロス除去槽12の容量を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。ドロス除去槽12の大きさは、めっき槽11の容量の影響を受けるので、めっき槽11の容量(W1)をドロス除去槽12の容量(W2)で除したパラメータW1/W2を用いてドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を整理した。調査結果を第3図に示す。
W1/W2が1.0以下の領域ではインデックスが1で品質が良好だが、W1/W2が1.0を超えるとインデックスが大きくなり品質が低下している。W1/W2を1.0以下にすることによって、現在求められている高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
また、めっき槽11、ドロス除去槽12の容量をそれぞれ一定の5m3、20m3にして、循環流量を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。調査結果を第4図に示す。
循環流量が多い場合、ドロス除去槽12でドロスの沈降分離が不十分なためにめっき槽11に混入したと考えれる欠陥が発生した。ドロス除去槽12では、問題となるドロスの沈降時間を考慮してドロスの沈降時間以上の滞留時間を確保することが重要である。前記欠陥は循環流量の減少と共に減少し、循環流量が10m3/h以下になると品質に問題の無い製品を製造することが可能になる。しかし、循環流量がさらに減少して1m3/hを下回るようになると、ドロスがめっき槽11からドロス除去槽12に排出されないでめっき槽11内にとどまるため、逆にインデックスが大きくなり品質が低下するようになる。高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するには、循環流量を1m3以上10m3以下にする必要がある。
実施例
本実施例では、第1図に示した装置において、めっき容器4の深さを2m、めっき槽11の容量を5m3、ドロス除去槽12の容量を20m3とした。通常の溶融亜鉛系めっきで問題となるドロスの沈降速度は、概ね1時間あたり1m程度である。めっき容器4の深さが2mなので、ドロス除去槽12では2時間以上の滞留時間を必要とする。循環流量が10m3以下であれば滞留時間が2時間を超えるので、ドロス除去の効果が期待できる。一方、循環流量が1m3/hを下回ると、めっき槽11のドロスがめっき槽11にとどまり品質欠陥を発生させる原因となる。両者を考慮して、循環流量を5m3/hに設定した。
前記装置を用いて鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行ったところ、従来生産量の2%程度の発生量であっためっき鋼帯のドロス欠陥の発生が皆無になり、ドロス付着による問題が全く無くなった。
最良の形態1によれば、鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行う際に発生するドロスの発生を低減でき、また発生したドロスがめっき槽で堆積することを防止するとともに、めっき槽の下部に配置したドロス除去槽でドロスを効率よく除去できるので、鋼帯のドロス付着による品質欠陥を低減できる。最良の形態1によれば、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
最良の形態1の装置は、めっき容器を上下に配置しためっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題も解消できる。融液3の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽11とドロス除去槽12の融液3にはほとんど液面差が生じない。したがって、融液3がめっき槽11に戻った際にトップドロスが発生することがない。
最良の形態1では、ドロスを沈降分離する領域が小さくて済むので、めっき容器全体を小型化できる。そのため、既存設備を改造して、最良の形態1を実施することも容易である。
最良の形態2
第1の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき容器に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なうに際して、前記めっき容器を上部に配設した分割可能なめっき槽とその下部に配設したドロス除去槽に分割し、めっき槽に鋼帯を浸漬して溶融亜鉛系めっきを行い、めっき槽の溶融金属浴をメカニカルポンプを用いてドロス除去槽へ移送し、ドロス除去槽で溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解し、またドロス除去槽の溶融金属浴をめっき槽に設けた開口部からめっき槽に戻すことを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第2の実施の形態は、めっき槽の溶融金属浴をめっき槽の中央底部から吸引してドロス除去槽へ移送することを特徴とする第1の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第3の実施の形態は、ドロス除去槽からめっき槽に戻す溶融金属浴がドロスを除去した上澄み浴を含むものであることを特徴とする第1の実施の形態又は第2の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第4の実施の形態は、めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、W1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するめっき槽とドロス除去槽を用い、めっき槽からドロス除去槽へ移送する溶融金属浴の流量を1m3/h以上10m3/h以下とすることを特徴とする第1の実施の形態乃至第3の実施の形態の何れかに記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第5の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき容器に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なう溶融亜鉛系めっき装置において、前記めっき容器を分割して上部その下部に溶融金属中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解するドロス除去槽を配設し、まためっき槽の溶融金属浴をドロス除去槽へ移送するメカニカルポンプ及びドロス除去槽の溶融金属浴をめっき槽に戻す開口部をめっき槽に配設することを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第6の実施の形態は、メカニカルポンプの溶融金属の吸引部をめっき槽の中央底部に配設することを特徴とする第5の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
第7の実施の形態は、開口部がドロス除去槽のドロスを除去した上澄み浴をめっき槽に還流可能に配設されていることを特徴とする第5の実施の形態又は第6の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
第8の実施の形態は、めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、めっき槽とドロス除去槽がW1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するとともに、溶融金属浴を移送するメカニカルポンプが1m3/h以上10m3/hの流量の溶融金属浴を移送可能であることを特徴とする第5の実施の形態乃至第7の実施の形態の何れかに記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
最良の形態2においては、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固相亜鉛(インゴット)の溶解をめっき槽の下部に配設したドロス除去槽で行うので、めっき槽の溶融金属浴(融液)の温度変動が小さくなり、めっき槽におけるドロスの発生を減少できる。
また、めっき槽がめっき容器の上部に配設されているので、めっき容器の耐火物近傍に発生するような低温度領域が、めっき槽内で発生しなくなるため、ボトムドロスの発生量を低減する効果もある。
めっき槽のドロスを含む融液はメカニカルポンプを用いてドロス除去槽に移送するので、ガスリフトポンプに見られるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がない。また、鋼帯の随伴流を利用した融液の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所の融液を必要流量だけ確実にドロス除去槽に移送できる。ドロス濃度の高い場所の融液を確実にドロス除去槽に移送するには、めっき槽の中央底部の融液を吸引してドロス除去槽へ移送することがより好ましい。
ドロス除去槽内では、走行する鋼帯により生じる融液の攪拌がないため流れが沈静化され、ドロスが沈澱しやすくなる。またドロス除去槽でインゴットを溶解することによって、局部的な融液温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの沈降分離が促進される。この二つの作用により、ドロス除去槽ではドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去槽でドロスが除去され、清浄化された融液が優先してめっき槽に配設された開口部からめっき槽に戻る。融液の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽とドロス除去槽の融液にはほとんど液面差がない。したがって、融液がめっき槽に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロス除去槽のドロスが除去された上澄み浴を戻すように開口部をできるだけ上部に配設すると、より清浄性に優れる浴面近傍の上澄み浴を優先してめっき槽に戻すことができる。
最良の形態2において、使用するめっき槽は概ね10m3程度であるため、ステンレスで装置を製作した場合には、溶接部の焼きなましが出来ずに、めっき容器に沈めた時に、熱歪みを生じることがあり、めっき槽の変形がひどい場合には、めっき槽をめっき容器から取出すことが不可能になる。まためっき槽の底に穴が無い場合、めっき槽をめっき容器に沈めるにはめっき槽に溶融亜鉛をポンプで供給しなくてはならないため、作業が煩雑になる。そこで、めっき槽を分割できる構造にすることによって、めっき槽をめっき容器へ容易に出し入れできるようになる。熱歪みによりめっき槽が変形を発生した場合にも、分割してあるため、めっき槽をめっき容器内からの取出しも容易になり、操業面からも簡便な装置になる。
最良の形態2の装置は、めっき容器を上下に配置しためっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題を解消できる。
めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、W1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するめっき槽とドロス除去槽を用い、めっき槽からドロス除去槽へ移送する溶融金属浴の流量を1m3/h以上10m3/h以下にすると、めっき槽内において、めっき槽内の融液の流れが淀んだ部分でドロスが堆積することを防止でき、また発生したドロスをドロス除去槽で効率よく除去できるのでより好ましい。
以下、本発明においてめっき槽内においてドロスの堆積を防止できる作用について、めっき槽内の融液の流れの解析に基いて説明する。
めっき槽内では、第7図に示すように、鋼帯Sがシンクロール102に接触する部分で、鋼帯Sとシンクロール102に随伴された流れの行き場所がなくなるため、横方向(ロール胴長方向)への強い流れが発生する。また、シンクロール102で方向転換後の鋼帯Sに随伴された上昇流れが発生する。
従来のめっき槽では容積が大きいために、これらの流れがロール端部やめっき槽の側壁で減衰するため、前記領域でドロスが沈降して堆積する。しかし、めっき槽を現状よりも小さくした場合、第8図に示すように、これらの流れが減衰しないで、ロール胴長方向の流れはめっき槽の側壁に衝突後、一部はめっき槽底部中央に向う活性化した流れ(第8図の流れa)になり、また、シンクロール102で方向転換後の鋼帯Sに随伴された上昇流れは、一部浴面で反転後めっき槽の側壁に沿った下降流れとなり、さらにめっき槽底部中央に向う活性化した流れ(第8図の流れb)になる。これらの活性化した流れによって、めっき槽内でドロスが沈降、堆積しなくなる。
溶融亜鉛系めっきを行う際の鋼帯の寸法や通板速度は常に一定とは限らない。例えば、直火加熱炉を備えた焼鈍炉で鋼帯を加熱する場合、鋼帯板厚が厚くなると、加熱時間がかかるため低速になり、また、板幅が狭くなると直火加熱炉における加熱効率が低下して、加熱炉の排ガス温度が上昇するためにやはり低速になる。
また、本発明者等による実験結果から以下のことが判明した。鋼帯が低速で通板される場合、第9図に示すように、前記活性化した流れ(流れa、b)の部分からドロスを板幅中央部のめっき槽底部に掻き集める流れが強くなり、掻き集められたドロスがめっき槽の中央底部(領域c)に堆積しやすくなる。通板速度が上昇すると、堆積したドロスが舞上る。すなわち、通板する板幅が広くなり又は板厚が薄くなって通板速度が上昇した場合、その初期に鋼帯にドロス付着が発生しやすくなる。めっき槽の中央底部の融液をポンプで吸引してめっき槽の外に移送すると、低速通板した場合における領域cのドロスの堆積を確実に防止できるようになる。
最良の形態2について第10図、第11図を用いて説明する。第10図は最良の形態2に係る溶融亜鉛系めっき装置で、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、第11図は第10図(a)のB−B断面図である。第10図、第11図において、101はスナウト、102はシンクロール、103は溶融金属浴(融液)、104はめっき容器である。めっき容器104は、鋼帯Sにめっきするめっき槽111と前記めっき槽の下部に配設され、ドロスを沈降分離しインゴット114を溶解するドロス除去槽112に分割されている。また、105はメカニカルポンプ、113はめっき槽111に配設された開口部である。めっき槽111は分割可能なめっき槽部材111aとめっき槽部材111bから構成されており、第11図に示すように、流れ止め治具117によって、めっき容器104に着脱可能に取り付けられている。
めっき槽111をめっき容器104に設置する場合、先ずめっき槽部材111aを流れ止め冶具117でめっき容器104に固定し、次いでめっき槽部材111bの底部をめっき槽部材111aの底部上に載せ、また両部材の側壁の当接部118の隙間がほとんどなくなるようにめっき槽部材111bの水平方向の位置を調整した後、めっき槽部材111bを流れ止め冶具117でめっき容器104に固定する。めっき槽111をこのように配設することによって、めっき槽部材111aとめっき槽部材111bの接合部を通るめっき槽111とドロス除去槽112間の融液103の移動が実質的に起こらなくなり、めっき槽111を1つの槽として使用できる。
本装置では、めっき槽部材111bの底部は、その先端がめっき槽部材111aの傾斜面に近接配置した構造になっている。この部分では鋼帯Sによる随伴流れの影響が弱いので、めっき槽部材111aと111bが熱歪みにより変形し、両者の底部間に隙間ができてめっき槽111とドロス除去槽112が連通するようになっても、めっき槽111とドロス除去槽112の融液103がこの連通部を通って移動することがない。
めっき槽111をめっき容器104から取り外す場合、先ずめっき槽部材111bを取り外し、次いでめっき槽部材111aを取り外す。めっき槽111が熱歪みにより変形しても、分割して、めっき容器104から容易に取出すことができる。
前記装置において、鋼帯Sは矢印の方向に走行してスナウト101からめっき槽111に浸漬され、シンクロール102で方向転換後、溶融金属浴103から引上げられ、図示しない付着量制御装置でめっき付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施された後、めっき鋼帯となる。
めっき槽111のドロスを含む融液103は、メカニカルポンプ105を介してドロス除去槽112に移送され、ドロス除去槽112でドロスが沈降分離され、融液103は開口部113を経てめっき槽111に戻る。メカニカルポンプ105で移送される融液量がめっき槽111とドロス除去槽112間の融液103の循環量になる。
本装置では、めっき槽111には加熱装置が配設されておらず、めっき槽111の融液の温度管理をドロス除去槽112に配設した加熱装置(誘導加熱装置)115、116、および通板される鋼帯温度を調整して行う。ドロス除去槽112にインゴット114を投入した場合、加熱装置115、116を適切に稼動させて、開口部113からめっき槽111に流入する融液温度を所定温度に保つように制御する。
インゴット114の溶解をめっき槽111で行わないのでめっき槽111の融液103の温度変動が小さくなり、まためっき槽111の融液103の温度管理をドロス除去槽112の加熱装置115、116で行うので加熱装置115、116から噴射される高温の融液103が鋼帯Sに接触することがなくなり、鋼帯Sからの鉄の溶出が抑えられ、めっき槽111におけるドロスの発生自体を低減できる。
また、めっき槽111をめっき容器104内に吊るす構造になっているので、めっき容器104の底部の耐火物近傍に発生する低温度領域が、めっき槽111内では発生することがないため、ボトムドロスの発生量を低減する効果もある。
めっき槽111のスナウト101下部の融液103をドロス除去槽112のインゴット114投入部側に移送するセラミックス製のメカニカルポンプ105がめっき容器104に配設されている。めっき槽111とドロス除去槽112が隣接しているので、融液103の移送距離が短く、移送時の融液103の凝固や漏洩の問題を実質的に解消できる。また、めっき槽111にある融液103を必要流量だけ確実にドロス除去槽112に移送できる。
メカニカルポンプとは、ポンプ機械の作動部に直接触れる形で融液を移送する渦巻ポンプ(遠心ポンプ)やタービンポンプ、容積型ポンプ等のポンプであり、ガスリフトポンプを含まない。
ドロス除去槽112で、インゴット114の溶解とボトムドロスの沈降分離を行う。ドロス除去槽112では、走行する鋼帯Sにより生じる融液103の攪拌がないので、融液103の流れが整流化される。この作用に加えて、インゴット溶解に伴う局部的な融液温度低下とアルミ濃度変化が大きくなり、ドロスの沈降分離が促進される。これにより、ドロスの沈降分離効率が向上する。
ドロス除去槽112には、ボトムドロスを効率良く沈降分離するために、必要に応じて融液103の流れを整流化する仕切板を配設してもよい。
インゴット投入部と反対側のめっき槽111の側壁に、第11図に示すように、浴面を含む浴面近傍に流路を形成する開口部113が配設されている。溶解したインゴット融液が混合し、またドロスを沈降分離して清浄化した浴面近傍の上澄み浴が優先的に開口部113からめっき槽111に戻る。融液103の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽111とドロス除去槽112の融液103にはほとんど液面差が生じない。したがって、融液103がめっき槽111に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロスが除去された清浄な融液103がめっき槽111に戻り、まためっき槽111で発生するドロス自体も少ないので、めっき槽111においてドロス堆積を防止する効果が優れる。
第10図の装置において、槽容量、循環流量を変更した場合のめっき槽111におけるドロス付着による品質欠陥の発生状況について調査した。調査結果を第12図〜第14図に示す。
第12図は、ドロス除去槽112の容量を20m3、循環流量を一定の3m3/hにして、めっき槽111の容量を変更して鋼帯Sにめっきした場合のドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を示す図である。ドロス付着による品質欠陥の発生状況は、めっき後の鋼帯Sの表面を目視観察してドロス付着の程度に応じてインデックス1〜5の5段階に分けて評価した。インデックス1が最も優れ、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯において求められている品質レベルである。
めっき槽111の容量が10m3以下ではインデックスが1で品質が良好だが、めっき槽111の容量が10m3を超えると、インデックスが大きくなり品質が低下する。めっき槽111の容量が大きくなる程流れの淀んだ部分が発生しやすくなり、そこにボトムドロスが堆積するためである。めっき槽111でボトムドロスの堆積を防止するにはめっき槽111の容量を小さくすることが有効であり、めっき槽111の容量を10m3以下にすると、現在求められている高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
また、循環流量を一定の3m3/hにして、ドロス除去槽112の容量を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。ドロス除去槽112の大きさは、めっき槽111の容量の影響を受けるので、めっき槽111の容量(W1)をドロス除去槽112の容量(W2)で除したパラメータW1/W2を用いてドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を整理した。調査結果を第13図に示す。
W1/W2が1.0以下の領域ではインデックスが1で品質が良好だが、W1/W2が1.0を超えるとインデックスが大きくなり品質が低下している。W1/W2を1.0以下にすることによって、現在求められている高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
また、めっき槽111、ドロス除去槽112の容量をそれぞれ一定の5m3、20m3にして、循環流量を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。調査結果を第14図に示す。
循環流量が多い場合、ドロス除去槽112でドロスの沈降分離が不十分なためにめっき槽111に混入したと考えられる欠陥が発生した。ドロス除去槽112では、問題となるドロスの沈降時間を考慮してドロスの沈降時間以上の滞留時間を確保することが重要である。前記欠陥は循環流量の減少と共に減少し、循環流量が10m3/h以下になると品質に問題の無い製品を製造することが可能になる。しかし、循環流量がさらに減少して1m3/hを下回るようになると、ドロスがめっき槽111からドロス除去槽112に排出されないでめっき槽111内にとどまるため、逆にインデックスが大きくなり品質が低下するようになる。高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するには、循環流量を1m3以上10m3以下にする必要がある。
次に、本発明の別の実施の形態について、第15図を用いて説明する。第15図は、第10図〜第11図示した装置におけるメカニカルポンプ105の吸込み口をめっき槽111の中央底部に設けた溶融亜鉛系めっき装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA―A断面図である。
本装置では、めっき槽111のドロスを含む融液103は、めっき槽111の中央底部に吸込み口119を設けたメカニカルポンプ105を介してドロス除去槽112に移送される。鋼帯幅が狭く、鋼帯通板速度が低速になっても、めっき槽111の底部中央部におけるドロスの堆積を防止する効果が優れるので、鋼帯幅が広くなり、あるいは鋼帯通板速度が高速になった場合、その初期におけるドロス付着を防止する効果がより優れる。
(実施例1)
第10図に示した装置において、めっき容器104の深さを2.5m、めっき槽111の容量を10m3、ドロス除去槽112の容量を30m3とした。通常の溶融亜鉛系めっきで問題となるドロスの沈降速度は、概ね1時間あたり1m程度である。めっき容器104の深さが2.5mなので、ドロス除去槽112では2.5時間以上の滞留時間を必要とする。循環流量が12m3/h以下であれば滞留時間が2.5時間を超えるので、ドロス除去の効果が期待できる。一方、循環流量が1m3/hを下回ると、めっき槽111のドロスがめっき槽111にとどまり品質欠陥を発生させる原因となる。両者を考慮して、循環流量を5m3/hに設定した。
前記装置を用いて鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行ったところ、従来生産量の2%程度の発生量であっためっき鋼帯のドロス欠陥の発生が皆無になり、ドロス付着による問題が全く無くなった。
(実施例2)
第15図に示した装置において、実施例1と同様の容量、寸法のめっき容器104、めっき槽111を使用し、実施例1と同様、融液の循環流量を5m3/hに設定して、鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行ったところ、従来生産量の2%程度の発生量であっためっき鋼帯のドロス欠陥の発生が皆無になり、ドロス付着による問題が全く無く、通板速度を従来の100m/minから140m/minに増速可能になった。
最良の形態2によれば、鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行う際に発生するドロスの発生を低減でき、また発生したドロスがめっき槽で堆積することを防止するとともに、めっき槽の下部に配置したドロス除去槽でドロスを効率よく除去できる。また、融液の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽とドロス除去槽の融液にはほとんど液面差が生じず、融液がめっき槽に戻った際にトップドロスが発生することがない。そのため、鋼帯のドロス付着による品質欠陥を低減できる。最良の形態2によれば、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
最良の形態2の装置は、めっき容器を上下に配置しためっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題も解消できる。
最良の形態2では、ドロスを沈降分離する領域が小さくて済むので、めっき容器全体を小型化できる。そのため、既存設備を改造して、本発明を実施することも容易である。
最良の形態3
最良の形態3の要旨は以下の通りである。
第1の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき槽に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なうに際して、前記めっき槽内に仕切壁を設けて、前記めっき槽を鋼帯に溶融めっきを行うめっき領域と溶融金属浴中のドロスを除去するドロス除去領域に分割して、めっき領域において鋼帯にめっきを行い、まためっき領域の溶融金属浴をメカニカルポンプを用いてドロス除去領域へ移送し、ドロス除去領域において溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解し、前記仕切壁に設けた堰を経てドロス除去領域のドロスを除去した上澄み浴を同一浴面のめっき領域に戻すことを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第2の実施の形態は、ドロス除去領域に加熱装置を配設し、前記加熱装置を用いてめっき領域の溶融金属浴温度が所定温度になるように加熱制御することを特徴とする第1の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第3の実施の形態は、めっき領域及びドロス除去領域の溶融金属浴の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2〜5の範囲内にあることを特徴とする第1の実施の形態又は第2の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第4の実施の形態は、めっき槽内に設けた仕切壁によって、めっき槽をめっき領域と2ケ所のドロス除去領域に分割するとともに、それぞれのドロス除去領域についてめっき領域から溶融金属浴を移送するメカニカルポンプおよびめっき領域に溶融金属浴を戻す堰を配設し、一方のドロス除去領域側に配設したメカニカルポンプでめっき領域の溶融金属浴を一方のドロス除去領域に移送してドロスを除去し、他方のドロス除去領域側に配設したメカニカルポンプを停止して他方のドロス除去領域に堆積したドロスをめっき槽外に除去することを特徴とする第1の実施の形態乃至第3の実施の形態のいずれかの発明に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第5の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき槽に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なう溶融亜鉛系めっき装置において、前記めっき槽を鋼帯に溶融めっきを行うめっき領域と溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解するドロス除去領域に分割する仕切壁をめっき槽内に配設し、さらに前記めっき領域の溶融金属浴を前記ドロス除去領域へ移送するメカニカルポンプを配設し、また前記仕切壁はドロス除去領域のドロスを除去した溶融金属浴の上澄み浴を同一浴面のめっき領域に移送可能とする堰を備えることを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第6の実施の形態は、ドロス除去領域にめっき領域の溶融金属浴温度を加熱制御するための加熱装置を配設したことを特徴とする第5の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
第7の実施の形態は、めっき領域及びドロス除去領域の溶融金属浴の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2〜5の範囲内にあることを特徴とする第5の実施の形態又は第6の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
第8の実施の形態は、めっき槽内に仕切壁を配設してめっき槽をめっき領域と2ケ所のドロス除去領域に分割するとともに、それぞれのドロス除去領域についてめっき領域からドロス除去領域に溶融金属浴を移送するメカニカルポンプを配設し、またそれぞれのドロス除去領域からめっき領域に溶融金属浴を戻す堰をそれぞれのドロス除去領域とめっき領域を分割する仕切壁に備えることを特徴とする第5の実施の形態乃至第7の実施の形態のいずれかに記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
最良の形態3においては、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固体亜鉛(インゴット)の溶解をドロス除去領域で行い、めっき領域にはドロス除去領域から液体亜鉛として供給されるので、めっき領域の溶融金属浴(以下、融液)の温度変動が小さくなり、めっき領域におけるドロスの発生、成長が防止される。
めっき領域のドロスを含む融液をメカニカルポンプを用いてドロス除去領域に移送するので、ガスリフトポンプにみられるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がなく、また鋼帯の随伴流にみられる融液の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所の融液を必要流量だけ確実にドロス除去領域に移送できる。
ドロス除去領域はめっき領域と仕切壁で分離されており、ドロス除去領域内では走向する鋼帯より生じる融液の攪拌がないため流れが沈静化され、ドロスが沈降しやすくなる。またドロス除去領域でインゴットを溶解することによって局部的な融液温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの成長が促進される。この二つの作用により、ドロス除去領域では、ドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去領域でドロスが除去された上澄み浴が仕切壁に配設された堰を経て優先してめっき領域に戻る。ドロス除去領域とめっき領域の液位が等しいので、前記上澄み浴が戻る際にめっき領域でトップドロスが発生することがない。
ドロス除去領域とめっき領域が仕切壁で分離されているだけの簡易な設備で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題を解消できる。
最良の形態3においては、ドロス除去領域に配設した加熱装置を用いてめっき領域の融液温度の制御を行う。めっき領域に加熱装置を備える場合、この加熱装置を用いてめっき領域における融液の温度が一定になるように補償する低出力の加熱を行うだけにすることが望ましい。めっき領域では、高温の融液が鋼帯に接触することがなくなるので、鋼帯から鉄の溶出が抑えられ、ボトムドロスの発生自体を低減できるので、めっき領域におけるドロスの堆積を防止する効果をより向上できる。
ドロス除去領域に2基以上の加熱装置を配設した場合、加熱装置全体を1つのグループにしてめっき領域の融液温度を制御してもよいが、加熱装置を2つのグループに分け、一方のプループの加熱装置を用いてめっき領域の融液温度を制御し、他方のグループの加熱装置を用いてドロス除去領域のインゴット溶解部近傍の融液温度を制御することによって、めっき槽全体のより合理的な加熱を行ってもよい。
めっき領域におけるメカニカルポンプの吸い込み部をめっき領域の底部から500mm以下に配設した場合、ドロス濃度が高くめっき槽内でドロスが堆積しやすい領域の融液を優先してドロス除去領域に移送できるので、めっき領域においてドロスの堆積を防止する効果をより向上できる。
仕切壁の堰を浴面下500mm以内に配設することによって、清浄性に優れた浴面近傍の融液を優先的にめっき領域に戻すことができるので、めっき領域における融液の清浄性がより向上する。前記堰は、溝状流路のような浅い堰にすることが最も好ましい。
めっき領域及びドロス除去領域の融液の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2以上になると、ドロス除去領域においてドロスを除去する効果をより向上できる。しかし、W1/W2が5を上回ると、ドロスを除去する効果が飽和し、逆にめっき領域の容量が大きくなり、設備費や溶融金属量が増大するので、W1/W2は0.2〜5の範囲内にあることが望ましい。
めっき槽内に2ケ所のドロス除去領域を配設し、一方のドロス除去領域にめっき領域の融液を移送してドロスを除去する間に、他方のドロス除去領域で堆積したドロスをめっき槽外に搬出することによって、めっき作業を停止することなくまためっき部に品質影響を与えることなく堆積したドロスをめっき槽の外に取り出すことができる。
最良の形態3について第16図及び第17図を用いて説明する。第16図は最良の形態3係る溶融亜鉛系めっき装置の平面図、第17図の(a)、(b)、(c)は、それぞれ第16図のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面の矢視図(拡大図)を示す。第16図及び第17図において、201はスナウト、202はシンクロール、203は溶融金属浴(融液)、204はめっき槽、205はめっき領域、206はドロス除去領域、207は堰、210はメカニカルポンプである。
鋼帯Sは矢印の方向に走行してスナウト201からめっき領域205に侵入し、シンクロール202で方向転換後、溶融金属浴203から引上げられ、図示しない付着量制御装置でめっき付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施された後、めっき鋼帯となる。また、めっき領域205のドロスを含む融液203は、メカニカルポンプ210を介してドロス除去領域206に移送され、ドロス除去領域206でドロスが沈降分離され、次いで融液203は堰207を経てめっき領域205に戻る。
めっき槽204は、めっき槽204内に設置された仕切壁220によって、鋼帯Sにめっきするめっき領域205とドロスを沈降分離しインゴット213を溶解するドロス除去領域206に分割されている。
めっき領域205には一対の加熱装置231、温度計241が配設され、ドロス除去領域206にはインゴット213の投入部付近に加熱装置232が配設されている。加熱装置231、232は何れも誘導加熱装置である。
めっき領域205の融液温度を一定にするように一対の加熱装置231で加熱制御するが、インゴット213の溶解とめっき領域205の操業温度までの融液203の加熱は、めっき領域205の温度計241で検出した温度が所定の温度になるように、制御装置236を介してドロス除去領域206の加熱装置232で加熱制御する。鋼帯Sに付着して持ち去られる亜鉛の溶解をめっき領域205で行わないのでめっき領域205の融液203の温度変動を小さくでき、また加熱装置231から噴射される高温の融液203が鋼帯Sに接触することがなくなるので鋼帯Sからの鉄の溶出が抑えられ、ボトムドロスの発生自体を低減できる。
めっき領域205とドロス除去領域206の間にめっき領域205の融液203をドロス除去領域206に移送するセラミックス製のメカニカルポンプ210を配設している。ポンプの吸い込み口211はめっき領域の底部から500mm以下に配設することが好ましい。第16図の装置ではめっき槽204の底部に近接して配設されている。吸い込み口211の幅はシンクロール202の軸長より400mm長い。これによりロール端にドロスが堆積するのを防止する。
メカニカルポンプとは、ポンプ機械の作動部に直接触れる形で融液を移送する渦巻ポンプ(遠心ポンプ)やタービンポンプ、容積型ポンプ等のポンプであり、ガスリフトポンプを含まない。
めっき領域205とドロス除去領域206は仕切壁220で隔てられているだけなので、融液203の移送距離が極短くなり、融液移送時の融液203の凝固や漏洩の問題を解消できる。融液203の汲み上げ高さを高くすると融液203が落下時に浴面を攪拌してトップドロス(酸化亜鉛)を大量に生成する。これを防止するにはポンプの汲み上げ高さをできるだけ低くすることが必要である。
第16図の装置では、ポンプの吐出口212はドロス除去領域206内の浴面近傍に設けられているので、浴面の攪拌によるトップドロスの生成を防止できる。また、融液203の移送経路が実質的に槽外に配設されていないので、融液移送時の融液203の凝固、漏洩の問題もない。
ドロス除去領域206では、インゴット213の溶解とボトムドロス214の沈降分離が行われる。ドロス除去領域206には、インゴット213を効率よく溶解し、ボトムドロス214を沈降分離するために、仕切壁221、222が配設されている。
仕切壁221、222によって、ドロス除去領域206の融液203の流れが整流化される。これによりドロスの沈降分離効率が向上する。この作用に加えて、インゴット溶解に伴う局部的な融液温度低下とアルミ濃度の変化が大きくなり、ドロスの沈降分離が促進される。
仕切壁222に設ける堰207は浴面下500mm以内に配設することが好ましい。第16図の装置では、堰207は浴面近傍に設けられている。溶解したインゴット融液が混合し、またドロスを沈降分離して清浄度の高い浴面近傍の上澄み浴が優先的に堰207からオーバーフローしてめっき領域205に戻る。融液203の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき領域205とドロス除去領域206の融液203にはほとんど液面差が生じない。したがって、融液203がめっき領域205に戻った際にトップドロスが発生することがない。
本発明おいてドロス除去領域とめっき領域が同一浴面であるというのは、両者の浴面が同一の場合だけでなく、液面差があってもドロス除去領域206の融液203がめっき領域205に戻る際に品質の劣化を伴うトップドロスの発生を伴わない場合を含んでいる。また、気体を混入することなく液体で充填された状態で移送されるものを含んでいる。
第16図の装置において、めっき領域205は容量15m3、深さ2mで、ドロス除去領域206は容量12m3、深さ2mである。第16図の装置では、ポンプで移送される融液量が循環流量になる。除去目標のドロスの沈降速度が1時間あたり1mであるので、ドロス除去領域206内における融液203中のドロスの沈降分離に必要な滞留時間を2時間として、循環量は6m3/hであれば問題ないが、第16図の装置ではドロス除去領域206内の流れが完全な整流になっていないので、ドロスの沈降に要する時間を前記時間の2倍と見積もり、滞留時間を4時間とした。よって、第16図の装置では、循環流量は3m3/hに設定されている。
第16図の装置では、めっき領域205の容量がドロス除去領域206の容量よりも大きいが、めっき領域205の容量はできるだけ小さい方が望ましい。めっき領域205の容量を小さくしてもドロス除去領域206の容量を小さくしない方が好ましい。ドロス除去領域206をめっき領域205より大幅に大きくすると、循環流量を大きくしてもドロス除去領域206で所要のドロス除去を行うことができる。循環流量を大きくすることによって、めっき領域205の攪拌が十分に行われるようになるので、めっき領域205でドロスの堆積を防止する作用が向上する。またドロス除去領域206の容量を大きくすることにより、ドロス除去領域206でのドロス沈降分離作用が向上する。
めっき領域205及びドロス除去領域206の融液をそれぞれW1とW2にした場合、W1/W2が0.2〜5の範囲内にすることが好ましい。
本発明の別の実施の形態について、第18図〜第21図に示す溶融亜鉛系めっき装置を用いて説明する。なお、以下の図において、説明済みの第16図、第17図に示された部分と同じ部分には同じ符号を付してある。また、融液を移送するメカニカルポンプは第16図、第17図の装置の場合と同様の吸い込み口、吐出口を備えるメカニカルポンプであり、加熱装置は誘導加熱装置である。
第18図に示す装置では、めっき槽204内に設置された仕切壁220a、220b、220cによって、めっき槽204がめっき領域205とドロス除去領域206に分割されている。ドロス除去領域220内には、融液の流れを整流化するための222b、222cが設置されている。めっき領域205に加熱装置231が配設され、ドロス除去領域206に、インゴット溶解部近傍に加熱装置232及びめっき槽204の両側壁204bに加熱装置233a、233bが配設されている。めっき領域205には温度計241、ドロス除去領域206には温度計242が配設されている。
第16図、第17図の装置の場合と同様、めっき領域205の融液温度を一定にするのは加熱装置231で負担し、インゴット溶解とめっき領域205の操業温度までの融液203の加熱はドロス除去領域206の加熱装置232、233a、233bで制御する。インゴット溶解とめっき領域205の操業温度までの融液の加熱については、温度計241で検出しためっき領域205の融液温度に基いて、制御装置236で加熱装置232、233a、233bを1グループとして各加熱装置の出力を制御してもよいし、加熱装置233aと233bを第1グループ、加熱装置232を第2グループとし、温度計241で検出しためっき領域205の融液温度に基いて制御装置236で第1グループの加熱装置233aと233bの出力を制御し、温度計242で検出したドロス除去領域206の融液温度に基いて第2グループの加熱装置232の出力を調整してもよい。後者のように加熱制御することによって、めっき領域205における操業に影響を与えないで、ドロス除去領域206におけるドロスの沈降を促進できる等、めっき槽204の融液のより合理的な加熱を行うことができる。
めっき領域205から移送された融液は、メカニカルポンプ210を介してドロス除去領域206に移送され、第18図の矢印に示すようにドロス除去領域206内を流れる間に、ドロスが沈降分離される。ドロスを沈降分離後の上澄み浴は、仕切壁220b、220cのめっき槽204の側壁204c寄りの浴面近傍に設けられた堰207を経てめっき領域205に戻る。
第18図の装置では、めっき領域205の三方を包むようにドロス除去領域206を設置することによって、ドロス除去領域206の容量を大きくしてドロスの沈降分離時間を長くするとともにめっき領域205の加熱装置231による加熱をさらに低下することができる。したがって、めっき領域205におけるドロスの発生をより低減でき、またドロス除去領域206におけるドロスの沈降分離をより向上できる。本装置はボトムドロスの沈降分離を優先する必要がある場合に有効である。
第19図の装置では、めっき槽204がめっき領域205と2ケ所のドロス除去領域206a、206bに分割され、めっき領域205と各ドロス除去領域206a、206b間には、それぞれ融液循環手段が配設されている。すなわち、めっき槽204は、槽内に設置された複数の仕切壁220a、220b、220c、224によって、めっき領域205とドロス除去領域206a、206bに分割されている。ドロス除去領域206a、206bには、それぞれメカニカルポンプ210a、210bを介してめっき領域205から融液が移送できるようになっている。ドロス除去領域206a、206bでは、それぞれインゴット213を溶解でき、メカニカルポンプ210a、210bで移送された融液がショートカット流れにならないように、ドロス除去領域206b、206c内に鉤型の仕切壁222d、222eが設置されている。また、仕切壁220b、220cのめっき槽204の側壁204c寄りの浴面近傍に堰207a、207bが配設されている。
めっき領域205に加熱装置231が配設され、ドロス除去領域206a、206bのインゴット溶解部近傍にそれぞれ加熱装置232a、232bが配設されている。めっき領域205には温度計241、ドロス除去領域206a、206bには、それぞれ温度計242a、242bが配設されている。制御装置236は、温度計241で検出しためっき領域205の融液温度に基いて加熱装置232a又は232bを用いてインゴット溶解とめっき領域205の操業温度までの融液203の加熱制御すること、またドロス除去領域206に配設した温度計242a又は242bで検出したドロス除去領域206の融液温度に基いて、加熱装置232a又は232bを用いて、それぞれドロス除去領域206a又は206bの融液温度を制御することが自在になっている。
めっき領域205から移送された融液は、メカニカルポンプ210a又は210bを介して、それぞれドロス除去領域206a又は206bに移送され、第19図の矢印に示すように、融液がドロス除去領域206a又は206b内を流れる間に、ドロスが沈降分離する。ドロスを沈降分離後の上澄み浴は、仕切壁220b又は220cのめっき槽204の側壁204c寄りの浴面近傍に設けた堰207a、207bを経てめっき領域205に戻る。
連続してめっき作業を行うと、メカニカルポンプを用いて融液を循環しているドロス除去領域内にボトムドロスが堆積するので、堆積したボトムドロスをめっき槽204の槽外に取り出す必要がある。堆積したドロスを取り出すためにめっき作業を停止すると生産性を損なう。
第19図の装置では、2ケ所のドロス除去領域206a、206bへの融液の移送を交互に行うことによって前記問題を回避できる。すなわち、ドロス除去領域206a又は206bとめっき領域205間の融液の移送を交互に行い、一方のドロス除去領域を使用してドロスの沈降分離を行っている間に、他方ドロス除去領域から堆積したボトムドロスをウエルマンスコップ等を用いてめっき槽204から除去(以下、ドロッシング)することができるので、めっき作業を連続して行うことが可能になる。
この場合、加熱装置231を用いてめっき領域205の融液温度が一定になるように加熱を行い、温度計241で検出しためっき領域205の温度に基いて、融液を移送しているドロス除去領域に配設されている加熱装置を用いて、インゴット溶解とめっき領域の操業温度までの融液の加熱を行う。また、ドロッシングを行っているドロス除去領域の融液温度については、その領域に配設されている温度計で検出したドロス除去領域の融液温度に基き、その領域に配設されている加熱装置を用いて制御する。
ポンプを停止した場合のめっき領域205側の液が堰207a、207bを越えないようにしておくと、ドロッシングを行う側のポンプを止めた場合、ドロッシングを行うドロス除去領域側の液面がその領域の堰の位置まで低下して、めっき領域205とドロッシングを行うドロス除去領域間の融液の混合がなくなる。したがって、ドロッシングを行なった際にドロス除去領域内でボトムドロスが舞上がっても、めっき領域205側に影響を与えることがない。ドロス除去領域のドロスを清掃した後、一定時間経過させて取りきれなかった微細なドロスを沈降させた後、清掃したドロス除去領域への融液の移送を再開すれば良い。
また、第19図の装置では、ポンプ停止時にドロス除去領域の融液温度を独立に制御できる。ポンプ停止時にドロス除去領域の融液温度を一旦低下させて、融液中のドロスを十分に析出させて沈降分離した後ドロッシングすることによって、効率的なボトムドロスの除去が可能になる。
溶融亜鉛系めっきでは、溶解するインゴットの成分組成を変更してめっき領域205の融液203の成分組成を変更する場合がある。第19図の装置では、ポンプを停止したドロス除去領域に成分組成の異なるインゴットを溶解しておき、めっき領域205の融液203の成分組成の変更に迅速に対処することもできる。
第20図の装置では、めっき槽204が、めっき領域205とドロス除去領域206が仕切壁壁220dによって分割され、ドロス除去領域206が、さらに仕切壁225によって、ドロスの沈降分離とインゴット213の溶解を行う主領域206cと主領域206cで沈降分離されなかったドロスの沈降分離を行うとともにめっき領域205に移送するインゴット溶解後の融液を一旦貯留する融液貯留領域206dに分割されている。仕切壁220dのめっき槽204の側壁寄りの液面近傍に堰207が配設され、また仕切壁225のめっき槽204の側壁寄りの液面近傍に堰208が配設されている。
めっき領域205に一対の加熱装置231、主領域206cのインゴット213の投入部近傍に加熱装置232が配設されている。加熱装置231は融液温度を一定にするように加熱を負担する。めっき領域205の温度計241で検出した融液温度に基いて、制御装置236を介して加熱装置232を用いてインゴット溶解とめっき領域205の操業温度までの融液の加熱を行う。
めっき領域205からポンプ210で移送された融液は、主領域206cでドロスを沈降分離し、インゴット213を溶解する。次いで、主領域206cの融液は、堰208を経て融液貯留領域206dに流入する。融液貯留領域206dの融液は堰207を経てめっき領域205に戻る。溶解するインゴット213の成分組成を変更するような場合、融液貯留領域206dを備えることによって、めっき領域205の成分組成の急激な変化を防ぐことができる。
第21図の装置には、めっき領域205をドロス除去領域206の上部に配置するように仕切壁226が配設されている。(a)は装置の平面図、(b)は(a)のA―A断面図、(c)は(a)のB―B断面の矢視図である。堰207はスナウト201後方の仕切壁226の浴面近傍に配設されている。ドロス除去領域206には、インゴット溶解部近傍に加熱装置232、めっき槽204の両側壁に加熱装置233a、233bが配設されている。めっき領域205には温度計241、ドロス除去領域206には温度計242が配設されている。
本装置では、めっき領域205で放散される熱量分の加熱やインゴット溶解とめっき領域205の操業温度までの融液203の加熱は、全てドロス除去領域206の加熱装置232、233a、233bで行う。インゴット溶解とめっき領域205の操業温度までの融液203の加熱については、温度計241で検出しためっき領域205の融液温度に基いて制御装置236で加熱装置232、233a、233bを1グループ化して各加熱装置の出力を制御してもよいし、233aと233bを第1グループ、232を第2グループとし、温度計241で検出しためっき領域205の融液温度に基いて制御装置236で第1グループの加熱装置233aと233bの出力を制御し、温度計242で検出したドロス除去領域206の融液温度に基いて第2グループの加熱装置232の出力を調整してもよい。
めっき領域205の融液203は、メカニカルポンプ210を介してドロス除去領域206に移送され、第21図の矢印に示すようにドロス除去領域206内のめっき領域205の側方、下方を流れる間に、ドロスを沈降分離できる。ドロスを沈降分離後の上澄み浴は、スナウト201後方の仕切壁226の浴面近傍に設けられた堰207を経てめっき領域205に戻る。
第21図の装置では、ドロス除去領域206の容量を大きくできるので、ドロス除去領域206においてボトムドロスを沈降分離するための滞留時間を十分取ることができる。
なお、本発明においては、めっき皮膜の成分組成の大きく異なる異品種の溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するためにめっき槽を複数備えるいわゆるタンデムポットのめっき設備を配設する場合、使用するめっき槽を迅速に交換できるように、前記複数のめっき槽を同一の台車上に設置して同時に移動できるようにしてもよい。
最良の形態3によれば鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行う際に発生するドロスの発生を低減でき、また発生したドロスがめっき領域で堆積することを防止するとともに、めっき槽内にめっき領域と分離して設けたドロス除去領域でドロスを効率よく除去できるので、鋼帯のドロス付着による品質欠陥を低減できる。本発明によれば、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
最良の形態3では、ドロスを除去するための別の槽を設置しないので、既存設備を改造して実施することもできる。また、設備が簡易で設備費用が安価であり、融液の移送に伴う融液の凝固や漏洩の問題も解消できる。更に、ガスリフトポンプのように融液の移送に伴う新たな操業上、品質上の問題が発生することがない。
最良の形態3では、ドロス除去領域を複数備えることによって、めっき作業を停止することなくドロス除去領域で堆積したボトムドロスをめっき槽外に取り出すことができる。
また、異品種の溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するためにめっき槽を複数備えるような場合においても、設置スペースが小さくて済むので有利である。
最良の形態4
最良の形態4の要旨は以下の通りである。
第1の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき槽内に配設したシンクロールを介して鋼帯を通板・浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なうに際して、前記めっき槽内に仕切壁を設けて、前記めっき槽を鋼帯に溶融めっきを行うめっき領域と溶融金属浴中のドロスを除去するドロス除去領域に分割して、めっき領域において鋼帯にめっきを行い、まためっき領域のシンクロール上方の溶融金属浴をメカニカルポンプを用いてドロス除去領域へ移送し、ドロス除去領域において溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解し、前記仕切壁に設けた堰を経てドロス除去領域のドロスを除去した上澄み浴を同一浴面のめっき領域に戻すことを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第2の実施の形態は、ドロス除去領域に加熱装置を配設し、前記加熱装置を用いてめっき領域の溶融金属浴温度が所定温度になるように加熱制御することを特徴とする第1の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第3の実施の形態は、めっき領域及びドロス除去領域の溶融金属浴の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2〜5の範囲内にあることを特徴とする第1の実施の形態又は第2の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第4の実施の形態は、溶融金属を収容するめっき槽内に配設したシンクロールを介して鋼帯を通板・浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なう溶融亜鉛系めっき装置において、前記めっき槽を鋼帯に溶融めっきを行うめっき領域と溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解するドロス除去領域に分割する仕切壁をめっき槽内に配設し、さらに前記めっき領域のシンクロール上方の溶融金属浴を前記ドロス除去領域へ移送するメカニカルポンプを配設し、また前記仕切壁はドロス除去領域のドロスを除去した溶融金属浴の上澄み浴を同一浴面のめっき領域に移送可能とする堰を備えることを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第5の実施の形態は、ドロス除去領域にめっき領域の溶融金属浴温度を加熱制御するための加熱装置を配設したことを特徴とする第4の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
第6の実施の形態は、めっき領域及びドロス除去領域の溶融金属浴の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2〜5の範囲内にあることを特徴とする第4の実施の形態又は第5の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
最良の形態4においては、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固体亜鉛(インゴット)の溶解をドロス除去領域で行い、めっき領域にはドロス除去領域から液体亜鉛として供給されるので、めっき領域の溶融金属浴(以下、融液)の温度変動が小さくなり、めっき領域におけるドロスの発生、成長が防止される。
めっき領域のドロスを含む融液をメカニカルポンプを用いてドロス除去領域に移送するので、ガスリフトポンプにみられるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がなく、また鋼帯の随伴流にみられる融液の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所の融液を必要流量だけ確実にドロス除去領域に移送できる。
ドロス除去領域はめっき領域と仕切壁で分離されており、ドロス除去領域内では走向する鋼帯より生じる融液の攪拌がないため流れが沈静化され、ドロスが沈降しやすくなる。またドロス除去領域でインゴットを溶解することによって局部的な融液温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの成長が促進される。この二つの作用により、ドロス除去領域では、ドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去領域でドロスが除去された上澄み浴が仕切壁に配設された堰を経て優先してめっき領域に戻る。ドロス除去領域とめっき領域の液位が等しいので、前記上澄み浴が戻る際にめっき領域でトップドロスが発生することがない。
ドロス除去領域とめっき領域が仕切壁で分離されているだけの簡易な設備で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題を解消できる。
最良の形態4においては、ドロス除去領域に配設した加熱装置を用いてめっき領域の融液温度の制御を行う。めっき領域に加熱装置を備える場合、この加熱装置を用いてめっき領域における融液の温度が一定になるように補償する低出力の加熱を行うだけにすることが望ましい。めっき領域では、高温の融液が鋼帯に接触することがなくなるので、鋼帯から鉄の溶出が抑えられ、ボトムドロスの発生自体を低減できるので、めっき領域におけるドロスの堆積を防止する効果をより向上できる。
ドロス除去領域に2基以上の加熱装置を配設した場合、加熱装置全体を1つのグループにしてめっき領域の融液温度を制御してもよいが、加熱装置を2つのグループに分け、一方のプループの加熱装置を用いてめっき領域の融液温度を制御し、他方のグループの加熱装置を用いてドロス除去領域のインゴット溶解部近傍の融液温度を制御することによって、めっき槽全体のより合理的な加熱を行ってもよい。
めっき領域のシンクロール上方の領域は浴の更新が少ないので、ドロスの濃度が高くなりやすい。メカニカルポンプの吸い込み部をこの領域に設けると、高い領域の溶融金属浴を優先してドロス除去領域に移送できる。めっき領域においてドロスの堆積を防止し鋼帯にドロスが付着することを防止する効果をより向上でき、またドロス除去領域でドロスをより効果的に沈降分離できる。前記吸い込み部はシンクロール上方500mm以内、シンクロール幅以内の領域に配設することが好ましい。
仕切壁に設ける堰を浴面下500mm以内に配設することによって、清浄性に優れた浴面近傍の融液を優先的にめっき領域に戻すことができるので、めっき領域における融液の清浄性がより向上する。前記堰は、溝状流路のような浅い堰にすることが最も好ましい。
めっき領域及びドロス除去領域の融液の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2以上になると、ドロス除去領域においてドロスを除去する効果をより向上できる。しかし、W1/W2が5を上回ると、ドロスを除去する効果が飽和し、逆にめっき領域の容量が大きくなり、設備費や溶融金属量が増大するので、W1/W2は0.2〜5の範囲内にあることが望ましい。
最良の形態4について第22図及び第23図を用いて説明する。第22図は最良の形態4に係る溶融亜鉛系めっき装置の平面図、第23図の(a)、(b)、(c)は、それぞれ第22図のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面の矢視図(拡大図)を示す。第22図及び第23図において、301はスナウト、302はシンクロール、303は溶融金属浴(融液)、304はめっき槽、305はめっき領域、306はドロス除去領域、307は堰、310はメカニカルポンプである。
鋼帯Sは矢印の方向に走行してスナウト301からめっき領域305に侵入し、シンクロール302で方向転換後、溶融金属浴303から引上げられ、図示しない付着量制御装置でめっき付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施された後、めっき鋼帯となる。また、めっき領域305のドロスを含む融液303は、メカニカルポンプ310を介してドロス除去領域306に移送され、ドロス除去領域306でドロスが沈降分離され、次いで融液303は堰307を経てめっき領域305に戻る。
めっき槽304は、めっき槽304内に設置された仕切壁320によって、鋼帯Sにめっきするめっき領域305とドロスを沈降分離しインゴット313を溶解するドロス除去領域306に分割されている。
めっき領域305に一対の加熱装置331、温度計341が配設され、ドロス除去領域306にインゴット313の投入部付近に加熱装置332が配設されている。加熱装置331、332は何れも誘導加熱装置である。
めっき領域305の融液温度を一定にするように一対の加熱装置331で加熱制御するが、インゴット313の溶解とめっき領域305の操業温度までの融液303の加熱は、めっき領域305の温度計341で検出した温度が所定の温度になるように、制御装置336を介してドロス除去領域306の加熱装置332で加熱制御する。鋼帯Sに付着して持ち去られる亜鉛の補給をめっき領域305で行わないのでめっき領域305の融液303の温度変動を小さくでき、また加熱装置331から噴射される高温の融液303が鋼帯Sに接触することがなくなるので鋼帯Sからの鉄の溶出が抑えられ、ボトムドロスの発生自体を低減できる。
めっき領域305とドロス除去領域306の間にめっき領域305の融液303をドロス除去領域306に移送するセラミックス製のメカニカルポンプ310を配設している。ポンプの吸い込み口311はめっき領域のシンクロール上方500mm以内、シンクロール幅以内の領域に配設することが好ましい。めっき領域305内のドロス濃度が高い領域の融液303を効率よく吸引できるので、めっき領域305内におけるドロスの堆積を防止できる。
メカニカルポンプとは、ポンプ機械の作動部に直接触れる形で融液を移送する渦巻ポンプ(遠心ポンプ)やタービンポンプ、容積型ポンプ等の各種ポンプであり、ガスリフトポンプを含まない。
融液303の汲み上げ高さを高くすると融液303が落下時に浴面を攪拌してトップドロス(酸化亜鉛)を大量に生成する。これを防止するにポンプの汲み上げ高さをできるだけ低くする必要がある。第22図の装置では、ポンプの吐出口312はドロス除去領域306内の浴面近傍に設けられているので、浴面の攪拌によるトップドロスの生成を防止できる。また、めっき領域305とドロス除去領域306は仕切壁320で隔てられているだけなので、融液303の移送距離が短く、融液移送時の融液303の凝固や漏洩の問題を解消できる。
ドロス除去領域306では、インゴット313の溶解とボトムドロス314の沈降分離が行われる。ドロス除去領域306には、ボトムドロス314を効率良くまた確実に沈降分離するために、仕切壁321、322が配設されている。
仕切壁321、322によって、ドロス除去領域306の融液303の流れが整流化される。これによりドロスの沈降分離効率が向上する。この作用に加えて、インゴット溶解に伴う局部的な融液温度低下とアルミ濃度の変化が大きくなり、ドロスの沈降分離が促進される。
仕切壁322に設ける堰307は浴面下500mm以内に配設することが好ましい。第22図の装置では、堰307は浴面近傍に設けられている。溶解したインゴット融液が混合し、またドロスを沈降分離して清浄度の高い浴面近傍の上澄み浴が優先的に堰307からオーバーフローしてめっき領域305に戻る。融液303の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき領域305とドロス除去領域306の融液303にはほとんど液面差が生じない。そのため、融液303がめっき領域305に戻った際にトップドロスが発生することがない。
本発明おいてドロス除去領域とめっき領域が同一浴面であるというのは、両者の浴面が同一の場合だけでなく、液面差があってもドロス除去領域306の融液303がめっき領域305に戻る際に品質の劣化を伴うトップドロスの発生を伴わない場合を含んでいる。また、気体を混入することなく液体で充填された状態で移送されるものを含んでいる。
第22図の装置において、めっき領域305は容量15m3、深さ2mで、ドロス除去領域306は容量12m3、深さ2mである。第22図の装置では、ポンプで移送される融液量が循環流量になる。除去目標のドロスの沈降速度が1時間あたり1mであるので、ドロス除去領域306内における融液303中のドロスの沈降分離に必要な滞留時間を2時間として、循環量は6m3/hであれば問題ないが、第22図の装置ではドロス除去領域206内の流れが完全な整流になっていないので、ドロスの沈降に要する時間を前記時間の2倍と見積もり、滞留時間を4時間とした。よって、第22図の装置では、循環流量は3m3/hに設定されている。
また、ポンプの吸い込み口311は、めっき槽304のシンクロール302に近づすぎるとシンクロールとの接触によりシンクロールに疵が発生し、シンクロールから500mm以上離した場合シンクロール近辺に浮遊するドロスを吸引することができなかったので、シンクロールの直上300mmの位置に設置した。また吸い込み口311の幅は走向する鋼帯Sの最大幅以内にした。
第22図の装置では、めっき領域305の容量がドロス除去領域306の容量よりも大きいが、めっき領域305の容量はできるだけ小さい方が望ましい。めっき領域305の容量を小さくしてもドロス除去領域6の容量を小さくしない方が好ましい。ドロス除去領域306をめっき領域305より大幅に大きくすると、循環流量を大きくしてもドロス除去領域306で所要のドロス除去を行うことができる。循環流量を大きくすることによって、めっき領域305の攪拌が十分に行われるようになるので、めっき領域305でドロスの堆積を防止する作用が向上する。またドロス除去領域306の容量を大きくすることにより、ドロス除去領域6でのドロス沈降分離作用が向上する。
めっき領域5及びドロス除去領域306の融液303の容量をそれぞれW1、W2とした場合、W1/W2が0.2〜5の範囲内にすることがより好ましい。
最良の形態4の別の実施の形態について、第24図に示す溶融亜鉛系めっき装置を用いて説明する。なお、第24図において、説明済みの第22図、第23図に示された部分と同じ部分には同じ符号を付してある。また、融液を移送するメカニカルポンプは第22図、第23図の装置の場合と同様の吸い込み口、吐出口を備えるメカニカルポンプであり、加熱装置は誘導加熱装置である。
第24図の装置には、めっき領域305をドロス除去領域306の上部に配置するように仕切壁326が配設されている。(a)は装置の平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面の矢視図である。堰307はスナウト301後方の仕切壁326の浴面近傍に配設されている。ドロス除去領域306には、インゴット溶解部近傍に加熱装置332、めっき槽304の両側壁に加熱装置333a、333bが配設されている。めっき領域305には温度計341、ドロス除去領域306には温度計342が配設されている。
本装置では、めっき領域305の融液温度を一定にする加熱やインゴット溶解とめっき領域305の操業温度までの融液303の加熱は、全てドロス除去領域306の加熱装置332、333a、333bで行う。インゴット溶解とめっき領域305の操業温度までの融液303の加熱については、温度計341で検出しためっき領域305の融液温度に基いて制御装置336で加熱装置332、333a、333bを1グループ化して各加熱装置の出力を制御してもよいし、333aと333bを第1グループ、332を第2グループとし、温度計341で検出しためっき領域305の融液温度に基いて制御装置336で第1グループの加熱装置333aと333bの出力を制御し、温度計342で検出したドロス除去領域306の融液温度に基いて第2グループの加熱装置332の出力を調整してもよい。
めっき領域305の融液303は、メカニカルポンプ310を介してドロス除去領域306に移送され、第24図の矢印に示すようにドロス除去領域306内のめっき領域305の側方、下方を流れる間に、ドロスを沈降分離できる。ドロスを沈降分離後の上澄み浴は、スナウト301後方の仕切壁326の浴面近傍に設けられた堰307を経てめっき領域305に戻る。
第24図の装置では、ドロス除去領域306の容量を大きくできるので、ドロス除去領域306においてボトムドロスを沈降分離するための滞留時間を十分取ることができる。
なお、最良の形態4においては、めっき皮膜の成分組成の大きく異なる異品種の溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するためにめっき槽を複数備えるいわゆるタンデムポットのめっき設備を配設する場合、使用するめっき槽を迅速に交換できるように、前記複数のめっき槽を同一の台車上に設置して同時に移動できるようにしてもよい。
最良の形態4によれば、鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行う際に発生するドロスの発生を低減でき、また発生したドロスがめっき領域で堆積することを防止するとともに、めっき槽内にめっき領域と分離して設けたドロス除去領域でドロスを効率よく除去できるので、鋼帯のドロス付着による品質欠陥を低減できる。最良の形態4によれば、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
最良の形態4では、ドロスを除去するための別の槽を設置しないので、既存設備を改造して、本発明を実施することもできる。また、設備が簡易で設備費用が安価であり、融液の移送に伴う融液の凝固や漏洩の問題も解消できる。更に、ガスリフトポンプのように融液の移送に伴う新たな操業上、品質上の問題が発生することがない。
また、異品種の溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するためにめっき槽を複数備えるような場合においても、設置スペースが小さくて済むので有利である。
最良の形態5
最良の形態5の要旨は以下の通りである。
第1の実施の形態は、スナウト内を走行してきた鋼帯を案内するシンクロールが配設された、溶融金属を収容するめっき容器に、鋼帯を浸漬して連続して溶融亜鉛系めっきを行なうに際して、前記めっき容器の浴中に、前記シンクロールを覆うようにめっき槽を配設するとともに、更に鋼帯下面側の前記スナウト下部と前記めっき槽側壁上部に形成される隙間を遮蔽する遮蔽部材を配設して、前記めっき容器を、めっき領域とドロス除去領域とに分割し、前記めっき領域に鋼帯を浸漬して溶融亜鉛系めっきを行い、前記めっき領域内の溶融金属浴をメカニカルポンプを用いてドロス除去領域に排出し、前記ドロス除去領域で溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解し、また前記ドロス除去領域の溶融金属浴を前記めっき領域に戻すことを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第2の実施の形態は、めっき槽の上端がシンクロールの回転軸よりも高くなるように、めっき槽が設置されていることを特徴とするの第1の実施の形態に記載の溶融亜鉛系めっき方法である。
第3の実施の形態は、鋼帯が内部を走行するスナウト、および、前記スナウト内を走行してきた鋼帯を案内するシンクロールが配設された、溶融金属を収容するめっき容器を備える溶融亜鉛系めっき装置において、前記めっき容器の浴中に、前記シンクロールを覆うようにめっき槽、及び、鋼帯下面側の前記スナウト下部と前記めっき槽側壁上部に形成される隙間を遮蔽する遮蔽部材を配設して、前記めっき容器を、鋼帯を浸漬して溶融亜鉛系めっきを行うめっき領域と、溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解するドロス除去領域とに分割し、更に、前記めっき領域の溶融金属浴を前記ドロス除去領域に排出するとともにドロス除去領域の溶融金属浴をめっき領域に戻すためのメカニカルポンプを配設することを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第4の実施の形態は、めっき槽の上端が、シンクロールの回転軸よりも高くなるように、めっき槽が設置されていることを特徴とする請求項3に記載の溶融亜鉛系めっき装置である。
最良の形態5においては、めっき容器の浴中に、シンクロールを覆うようにめっき槽を配設し、更に鋼帯下面(or裏面)側のスナウト下部とめっき槽側壁上部に形成される隙間を遮蔽する遮蔽部材を配設することによって、めっき容器が、めっき領域とドロス除去領域とに実質的に分割されている。
鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固体亜鉛(インゴット)の溶解をめっき領域と分離されたドロス除去領域で行うので、めっき領域の溶融金属浴の温度変動が小さくなり、めっき領域におけるドロスの発生を減少できる。
めっき領域のドロスを含む融液をメカニカルポンプを用いてドロス除去領域に移送することによって、ガスリフトポンプに見られるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がない。また、鋼帯の随伴流を利用した融液の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所の融液を必要流量だけ確実にドロス除去領域に移送できる。
ドロス除去領域内では、走行する鋼帯により生じる融液の攪拌がないため、流れが沈静化され、ドロスが沈澱しやすくなる。またドロス除去領域でインゴットを溶解することによって、局部的な融液温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの沈降分離が促進される。この二つの作用により、ドロス除去領域ではドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去領域でドロスが除去され、清浄化された上澄みの融液が優先してめっき領域に戻る。融液の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき領域とドロス除去領域の融液にはほとんど液面差がない。したがって、融液がめっき領域に戻った際にトップドロスが発生することがない。
めっき容器の浴中に設けるめっき槽の上端がシンクロールの回転軸よりも高くなるようにすると、めっき槽におけるドロス堆積を防止して、鋼帯のドロス付着の発生を低減する効果がより優れる。
本発明の装置は、めっき容器の浴中にめっき槽を設置して、めっき容器をめっき領域とドロス除去領域に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題を解消できる。
最良の形態5について第25図及び第26図を用いて説明する。
第25図は最良の形態5に係る溶融亜鉛系めっき装置の断面図(後記第26図のB―B断面矢視図)、第26図は第25図の装置のA―A断面矢視図である。第25図及び第26図において、401はスナウト、402はシンクロール、403は溶融金属浴(融液)、404はめっき容器である。めっき容器404の浴中にシンクロール402を覆うようにめっき槽410が配設され、また鋼帯下面側のスナウト401下部と前記めっき槽410側壁上部に形成される隙間を遮蔽する遮蔽部材418が配設され、めっき容器404は、鋼帯Sにめっきするめっき領域411と、ドロスを沈降分離しインゴット414を溶解するドロス除去領域412に分割されている。めっき槽410、遮蔽部材418は、吊り下げ冶具によってめっき容器404に取り付けられ、あるいは支持用冶具を介してめっき容器404の底部に取り付けられる。405はメカニカルポンプで、めっき領域411の溶融金属浴をドロス除去領域412に排出する。ドロス除去領域412には一対の加熱装置(誘導加熱装置)415、416が配設されている。
第25図の図面上では、めっき槽410の上部は、インゴット414投入部と反対側の浴中でドロス除去領域412に対して開放状態になっているが、実際にはシンクロール402以外のサポートロール421a、421bおよびこれらの浴中機器をサポートするための治具(図示されていない)が配設されているので、浴中の融液403を実質的にめっき領域411とドロス除去領域412とに分割することが可能であり、めっき槽410の上部の融液403はめっき領域411に属し、その他の部分の融液403はドロス除去領域412に属することになる。
本装置において、鋼帯Sが矢印の方向に走行してスナウト1からめっき領域411に浸漬され、シンクロール402で方向転換後、溶融金属浴403から引上げられ、図示しない付着量制御装置でめっき付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施された後、めっき鋼帯となる。
また、めっき領域411のドロスを含む融液403は、メカニカルポンプ405によって、ドロス除去領域412のインゴット414溶解部側に移送され、ドロス除去領域412でドロスが沈降分離され、ドロスが沈降分離された融液403が、インゴット414溶解部とは反対側のめっき槽410の上端と浴面の間を通って、めっき領域411に戻る。
本装置では、めっき槽410には加熱装置が配設されておらず、めっき領域411の融液の温度管理をドロス除去領域412に配設した加熱装置415、416、および通板される鋼帯温度を調整して行う。
ドロス除去領域412にインゴット414を投入した場合、加熱装置415、416を適切に稼動させて、インゴット414溶解部とは反対側のめっき槽410の上端と浴面の間を通ってめっき領域411に流入する融液温度を所定温度に保つように制御する。
遮蔽部材418は、鋼帯下面側の前記スナウト下部と前記めっき槽側壁上部に形成される隙間を遮蔽して、加熱装置415、416からの高温の浴流動やインゴット414投入による局所的な浴温度低下の影響がめっき領域411内に及ぶのを断ち切り、めっき領域411内の浴温の変動、浴成分の変動を低減する。また、加熱装置415、416による浴流動によって、ドロス除去領域412で沈降分離したドロスが舞上がって、めっき領域411内に流入することを防止する。
インゴット414の溶解をめっき領域411で行わないのでめっき領域411の融液403の温度変動が小さくなり、まためっき領域411の融液403の温度管理をドロス除去領域412の加熱装置415、416で行うので、加熱装置415、416から噴射される高温の融液403が鋼帯Sに接触することがなくなり、鋼帯Sからの鉄の溶出が抑えられ、めっき領域411におけるドロスの発生自体を低減できる。
本装置では、めっき容器404に、めっき槽410の底部に吸込口422、ドロス除去領域412のインゴット414溶解部側に排出口423を有するセラミックス製のメカニカルポンプ405が配設されており、めっき槽410の底部のドロスを含む融液403をドロス除去領域412に移送する。メカニカルポンプ405の吸込口422が前記のように設けられているので、ライン速度が低い場合や鋼帯幅が狭い場合にめっき槽410の底部に堆積する可能性のあるドロスを含む融液403をドロス除去領域412に確実に移送して、めっき槽410におけるドロスの堆積を防止する。前記ドロスはめっき槽410の中央底部により堆積しやすいので、メカニカルポンプの吸込み口402をめっき槽410の中央底部付近に設けることがより好ましい。
鋼帯Sの通仮性やめっき槽410内に配設するロールやロールをサポートする冶具の着脱作業性の考慮、まためっき槽410底部で融液403の攪拌が弱くなることによるドロスの堆積防止の観点から、めっき槽410の内壁と鋼帯Sとの間隔(d)およびシンクロール2軸方向端部とめっき槽410の内壁との間隔は、250〜500mm程度にするのが好ましい。
本装置では、めっき槽410がめっき容器404の浴中に設けられているので、融液403の移送が非常に簡便で、移送時の融液403の凝固や漏洩の問題を実質的に解消できる。また、めっき領域411の融液403を必要流量だけ確実にドロス除去領域412に移送できる。
なお、メカニカルポンプとは、ポンプ機械の作動部に直接触れる形で融液を移送する渦巻ポンプ(遠心ポンプ)やタービンポンプ、容積型ポンプ等のポンプであり、ガスリフトポンプを含まない。
ドロス除去領域412で、インゴット414の溶解とボトムドロスの沈降分離を行う。ドロス除去領域412では、走行する鋼帯Sによる生じる融液403の攪拌がないため,融液403の流れが整流化される。この作用に加えて、インゴット溶解に伴う局部的な融液温度低下とアルミ濃度変化が大きくるため、ドロスの沈降分離が促進される。これにより、ドロスの沈降分離効率が向上する。
ドロス除去領域412には、ボトムドロスを効率良く沈降分離するために、必要に応じて融液403の流れを整流化する仕切板を配設してもよい。
ドロス除去領域412で、溶解したインゴット融液が混合し、またドロスを沈降分離して清浄化した浴面近傍の上澄み浴が、めっき槽410の上端と浴面の間を通って、優先的にめっき領域411に戻る。融液403の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき領域411とドロス除去領域412の融液403には液面差が生じず、融液403がめっき領域411に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロスが除去された清浄な融液403がめっき領域411に戻り、まためっき領域411で発生するドロス自体も少ないので、めっき槽410においてドロス堆積を防止する効果が優れる。
第25図の装置において、めっき槽410の垂直方向の位置を変えて、シンクロール402に対する相対位置を変化させ、ドロス付着による品質欠陥の発生状況について調査した。但し、めっき槽410は深さは1m、シンクロールの直径は750mmの場合である。調査結果を第27図に示す。
第27図では、横軸にめっき槽410の上端の位置をシンクロール402に対する相対的位置で示した。シンクロール下部とは、めっき槽410の上端がシンクロール下端までしか無いことを示し、シンクロール上部とは、めっき槽410の上端がシンクロール上端まであることを示す。縦軸のドロス付着による品質欠陥の発生状況は、めっき後の鋼帯Sの表面を目視観察し、ドロス付着の程度に応じてインデックス1〜5の5段階に分けて評価した結果を示す。インデックス1が最も優れ、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯において求められている品質レベルであり、現状レベルをインデックス5としている。
めっき槽410の上端がシンクロール402の下端よりも上、即ちめっき槽410をシンクロール402を覆うように配設すると、ドロス付着を防止して品質を向上する効果が顕著になる。めっき槽410の上端が、概ねシンクロール402の中心軸より上になるとインデックスが1になり、品質が特に良好になる。
この理由は次のように考えられる。鋼帯Sの通板によって随伴されている融液403の流れは、シンクロール402と鋼帯Sとの接触位置で板幅方向に方向転換し、めっき槽410の側面に衝突し、上に向かう流れと下に向かう流れに分かれる。下に向かう流れは、めっき槽410内でボトムドロスが堆積しないように浴を攪拌する動力源となる。この流れが生じにくくなるような浅いめっき槽では、攪拌が十分に行われず、めっき槽410内にボトムドロスが堆積し、通板速度の変動や通板板幅の変更により、一旦堆積したボトムドロスが舞上り、鋼帯Sに付着する。
なお、めっき領域411とドロス除去領域412を分離するには、めっき槽410の上端と浴面との距離(L)を1000mm以下にすることが好ましい。
また、めっき槽410、ドロス除去領域412の容量をそれぞれ一定の5m3、20m3にして、循環流量(メカニカルポンプの移送液量)を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。調査結果を第28図に示す。
循環流量が多い場合、ドロス除去領域412でのドロスの沈降分離が不十分なため、あるいはメカニカルポンプ405から流れ出た融液403が、沈降したドロスを巻き上げて、これらがめっき領域411に流れ込むためと考えられる欠陥が発生した。ドロス除去領域412では、問題となるドロスの沈降時間を考慮してドロスの沈降時間以上の滞留時間を確保することが重要である。前記欠陥は循環流量の減少と共に減少し、循環流量が10m3/h以下になると品質に問題の無い製品を製造することが可能になる。しかし、循環流量がさらに減少して1m3/hを下回るようになると、ドロスがドロス除去領域412に排出されないでめっき領域411内にとどまるため、逆にインデックスが大きくなり品質が低下するようになる。高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するには、循環流量を1m3以上10m3以下にする必要がある。
実施例
第25図に示した装置において、めっき容器404の深さを2.5m、めっき槽410の容量を5m3、ドロス除去領域412の容量を25m3、シンクロール402径を750mm、シンクロール402とめっき槽410の底部との間隔、スナウト401からめっき領域411に進入した鋼帯Sがシンクロール402に接触するまでの間の鋼帯Sとめっき槽410の内壁との間隔、シンクロール402から離れた鋼帯Sとめっき槽410の側壁との間隔は、何れも300mmとし、めっき槽410は、上端が浴表面から700mmの位置で、シンクロールの上端とほぼ一致する位置に設置した。
通常の溶融亜鉛系めっきで問題となるドロスの沈降速度は、概ね1時間あたり1m程度である。めっき容器404の深さが2.5mなので、ドロス除去領域412では2.5時間以上の滞留時間を必要とする。循環流量が10m3以下では滞留時間が2.5時間を超えるので、ドロス除去の効果が期待できる。一方、循環流量が1m3/hを下回ると、ドロスがめっき領域411にとどまり品質欠陥を発生させる原因となる。両者を考慮して、循環流量を3m3/hに設定した。
前記装置を用いて鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行ったところ、従来生産量の2%程度の発生量であっためっき鋼帯のドロス欠陥の発生が皆無になり、ドロス付着による問題が全く無く、通板速度を従来の100m/minから160m/minに増速が可能になった。
最良の形態5によれば、鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行う際に発生するドロスの発生を低減でき、また発生したドロスがめっき槽で堆積することを防止するとともにめっき容器内のドロス除去領域でドロスを効率よく除去できるので、鋼帯のドロス付着による品質欠陥を低減できる。本発明によれば、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
最良の形態5で設置するめっき槽は、従来のめっき容器内にも設置可能であるため、既存設備を改造して、本発明を実施することも容易である。
最良の形態6
最良の形態6の要旨は以下の通りである。
(1)アルミニウムを0.05wt%以上含有する溶融亜鉛系めっき浴を収容しためっき浴槽と該めっき浴槽に浸漬する鋼帯が内部を走行するスナウトを備える溶融亜鉛系めっき装置において、めっき浴槽に仕切りを設けて、めっき浴槽を、鋼帯にめっきを施すめっき槽と、インゴットを溶解してドロスを沈降分離するドロス除去槽に分割し、また、前記めっき槽とドロス除去槽を、スナウト直下および鋼帯出側の一部で、下式で定義される水力直径が0.1m以上の流路で浴面が同一レベルになるように連通し、また、スナウト内のめっき浴をスナウトの長辺方向の両端からポンプで吸い込み、めっき槽の通板していない部分に排出して、スナウト内のめっき浴面を清浄化するとともに前記めっき槽とドロス除去槽間でめっき浴を循環するスナウト清浄化装置を配設したことを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
水力直径=(流路断面積/流路の濡れ長さ)×4
(2)前記(1)において、めっき槽の容積が10m3以下、ドロス除去槽の容積が10m3以上であることを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
(3)スナウト内を走行してきた鋼帯をアルミニウムを0.05wt%以上含有する溶融亜鉛系めっき浴を収容しためっき浴槽に浸漬して溶融亜鉛系めっきを行うに際して、めっき浴槽に仕切りを設けて、めっき浴槽を、鋼帯にめっきを施すめっき槽とインゴットを溶解してドロスを沈降分離するドロス除去槽に分割し、前記めっき槽とドロス除去槽を、スナウト直下および鋼帯出側の一部で、下式で定義される水力直径が0.1m以上の流路で浴面が同一レベルになるように連通し、スナウト内のめっき浴をスナウトの長辺方向の両端からポンプで吸い込み、めっき槽の通板していない部分に排出して、スナウト内のめっき浴面を清浄化するとともに、前記めっき槽とドロス除去槽間でめっき浴を循環することを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
水力直径=(流路断面積/流路の濡れ長さ)×4
(4)前記(3)において、めっき槽の容積が10m3以下、ドロス除去槽の容積が10m3以上、めっき槽とドロス除去槽の間のめっき浴の循環流量が0.5m3/h以上、5m3/h以下であることを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
以下、最良の形態6について説明する。
溶融亜鉛系めっき鋼帯のめっき皮膜の加工性を良好にするために亜鉛を主成分とするめっき浴にアルミを0.05%(以下、wt%)以上含有させる。このめっき浴に鋼帯を浸漬すると鋼帯から鉄が溶出してドロスになる。
最良の形態6では、めっき浴槽に仕切りを設けてドロス除去槽とめっき槽に分離し、めっき槽内のドロスが小さいうちにめっき槽からドロス除去槽にめっき浴(溶融金属)を移送し、ドロス除去槽で長い沈降時間をかけて、微細なドロスを含むめっき浴からドロスを沈降分離し、清浄化しためっき浴をめっき槽に戻す。
通常の操業においては、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給を一定温度に保持されているめっき槽で低温のインゴットを溶解して行う。この場合、第29図に示すように、インゴット519の周辺の温度は、バルクのめっき浴温度よりも低くなる。温度低下によってめっき浴の鉄溶解度が低下するため、めっき浴中の鉄は亜鉛あるいはアルミとの金属間化合物を生成する。
最良の形態6では、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固相亜鉛(インゴット)の溶解をめっき槽とは分離したドロス除去槽で行うので、めっき槽のめっき浴の温度変動が小さくなり、めっき槽におけるドロスの発生を減少できる。
めっき浴の移送に関しては、より高品質のめっき鋼帯を製造するために、スナウトの浴面を清浄にする浴中ポンプを設置して、スナウトの長辺側の両端から溶融亜鉛を吸い込み、めっき槽の鋼帯を通板していない部分に排出する。そして、このポンプの吸い込み側のスナウト直下部分及びめっき槽の鋼帯出側部分に、めっき槽とドロス除去槽を連通する流路を設けることによって、スナウト直下部分の流路を経てドロス除去槽からめっき槽へめっき浴が流入し、鋼帯出側部分の流路を経てめっき槽からドロス除去槽にめっき浴が流出する。
通常、スナウト浴面には、酸化亜鉛、スナウト壁面から落下したダスト等が存在し、これらがめっき鋼帯の表面欠陥の原因になる場合がある。前記ポンプによって、スナウトの浴を排出してスナウト浴面の清浄性を確保して高品質なめっき鋼帯が得られるようになるばかりでなく、前記ポンプの流れにより、めっき槽の鋼帯入側から出側まで鋼帯幅方向に安定した流れを形成することが可能になり、鋼帯の随伴流を利用しためっき浴の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所のめっき浴を必要流量だけ確実にドロス除去槽に移送できるようになる。
最良の形態6では、めっき槽でドロスが有害な寸法に成長する前にめっき浴を更新する。そのためには、めっき槽の容量は10m3以下にすることが好ましい。また、めっき槽から排出されてきた微細なドロスを含むめっき浴をドロス除去槽に受け入れ、時間をかけてドロスを分離除去する。そのためにはドロス除去槽の容量は10m3以上にすることが好ましい。
また、スナウトの浴面の清浄性を確保するためには、めっき槽とドロス除去槽の間のめっき浴の循環流量は0.5m3/h〜5m3/h程度にするのがよい。0.5m3/h未満では浴面の更新が遅いために品質欠陥が発生し、5m3/h越えでは流量が多すぎて浴面に波立ちやスプラッシュが発生して別な品質欠陥の原因となるためである。また、流量を前記範囲にすると、めっき槽内のドロスが小さい内にめっき槽のめっき浴をドロス除去槽に移送するためにもより有利である。
めっき槽内のドロスは小さいうちにめっき槽からドロス除去槽に移送され、ドロス除去槽で長い沈降時間をかけてドロスを沈降分離する。ドロス除去槽内では、走行する鋼帯によるめっき浴の攪拌がないため流れが沈静化され、ドロスが沈澱しやすくなる。またドロス除去槽でインゴットを溶解することによって、局部的なめっき浴の温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの沈降分離が促進される。この二つの作用により、ドロス除去槽ではドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去槽でドロスが除去され清浄化されためっき浴が、優先してめっき槽のスナウト直下部分に配設された所定の水力直径の流路を経てめっき槽に戻る。めっき浴の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽とドロス除去槽のめっき浴にはほとんど液面差がない。したがって、めっき浴がめっき槽に戻った際にトップドロスが発生することがない。
また、本発明の装置は、めっき浴槽に仕切を設けてめっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置なので、設備費が安価であり、また、離れた槽にめっき浴を移送することにともなう設備費の問題やめっき浴の凝固、漏洩の問題を解消できる。
最良の形態6について第30図〜第33図を用いて説明する。第30図は最良の形態6に係るめっき装置を示す図、第31図は第30図のめっき装置のA−A断面を示す図である。
第30図及び第31図において、501はスナウト、502はシンクロール、503はめっき浴、510はめっき浴槽、511はめっき槽、512はドロス除去槽、513はメカニカルポンプである。めっき浴槽510は、めっき槽511の槽壁によってめっき槽511とドロス除去槽512に仕切られ、ドロス除去槽512はめっき槽511の下部に配設されている。517、518は加熱装置(誘導加熱装置)、519はインゴットである。
鋼帯Sはスナウト501から矢印の方向に走行してめっき槽511に浸漬されてめっきされ、シンクロール502で方向転換した後、めっき浴503から引上げられ、図示しない付着量調整装置で付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施した後、所要のめっき鋼帯となる。
本実施例では、メンテナンスの問題を考慮して、めっき槽511とドロス除去槽512を連通するスナウト直下部分に設ける流路515を浴面に近接して設け、鋼帯出側に設ける流路516を上部が開放した流路にするとともに、めっき槽511とドロス除去槽512間のめっき浴の移送をスナウト内のめっき浴面を清浄化するために設けたメカニカルポンプ513によって行う。
即ち、スナウト501のめっき槽511のスナウト直下部分の槽壁の浴面に近接して流路515及び鋼帯S出側部分の側壁に上部が開放された流路516が配設され、めっき槽511とドロス除去槽512のめっき浴面を同一レベルにする構造になっている。また、めっき槽511とドロス除去槽512間のめっき浴503の移送は、スナウト直下部分の流路515近傍のスナウト501両サイドに設けたメカニカルポンプ513を用いて、スナウト直下の浴面から0〜500mmの深さのめっき浴を吸込み、めっき槽511の鋼帯Sが通板していない部分に流し込む。
ドロス除去槽512の浴面近傍にはアルミ亜鉛系のトップドロスが浮遊する。メカニカルポンプ513でめっき浴503を吸込むことによって、ドロス除去槽512の浴面より少し下の清浄性の高い上澄み浴がめっき槽511に排出される。
めっき浴503をメカニカルポンプ513を用いて循環させるので、ガスリフトポンプに見られるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がない。
メカニカルポンプ513で吸込まれためっき浴503を、めっき槽511の鋼帯Sの走行していない部分に流すことによって、めっき槽511内のめっき浴503の流れを極力二次元化するようにして、三次元的な流れを防止する。通常、ポンプで作為的に流れを作らない場合には、めっき槽511内のめっき浴503の流れは、鋼帯Sの随伴流を主体とするものになるため、めっき槽511内には流れの淀む部分ができる。淀みの発生は、通板する鋼帯Sの幅が広くなった場合に、この淀み部分に堆積したドロスを舞上らせる原因になる。メカニカルポンプ513から排出するめっき浴503を鋼帯Sの無い部分に流すことによって、鋼帯Sの走行している領域では、第32図に示されるように、鋼帯Sの随伴流により二次元的な流れになり、鋼帯Sの走行していない領域では、第33図に示されるように、ポンプから排出されるめっき浴503の流れによって二次元的な流れが形成されるため、めっき槽511における淀みの発生を防止し、ドロスの堆積や堆積したドロスの舞上りの問題を解決できる。
鋼帯Sに付着して持ち出されるめっき浴503は、インゴット519をドロス除去槽512に供給して加熱装置517、518を用いて溶解することによってめっき浴面を一定に維持する。ドロス除去槽512のインゴット519近傍では、鉄とアルミが反応してトップドロス531、亜鉛と鉄が反応したボトムドロス532が生成される。インゴット519のアルミ濃度によって、ドロス発生状況は変化するものの、最終的にドロス除去槽512で集中的にドロスが堆積して除去できるため、めっき槽511でのドロスの発生が大幅に抑えられる。
流路を大きく取ると、通常のめっき槽504と同様になるため、流路の寸法には何らかの最適値が存在する。流路の断面形状は円形、矩形等種々の形状が考えられるため、本発明者らは水力学で使用されている水力直径を使用して検討を行なった。水力直径とは、流路の断面積を流路の濡れ長さ、すなわち流路断面の周囲の長さで割り、4を掛けたものである。円形断面の場合、水力直径は円形断面の直径と一致する。また、正方形断面の場合、正方形の一辺の長さと同一になる。
水力直径を用いて検討を行なったところ、水力直径が概ね50mm以下の流路では、流路内に亜鉛の凝固物が発生して溶融金属を安定して移送することができず、実機に適用できる寸法ではなかった。水力直径は最小限100mm程度は必要であった。一方、流路を大きくするにつれて、めっき槽511とドロス除去槽512の機能分担が混在するようになり、めっき槽511でドロスの発生が増加するので、水力直径で0.5m以下にすることが好ましいことが判った。本実施例では、めっき槽511の容量は8m3、ドロス除去槽512は深さ2.5mで容量が12m3、めっき槽511のスナウト直下に設けた流路515は、断面幅1500mm、高さ200mm、鋼帯立上がり側に設けた流路16は、断面幅2500mm、高さ100mm、即ち水力直径は、それぞれ353mm、192mmであり、ポンプの流量は循環流量が3m3/hになるように調整した。
本実施例では、従来の生産量の2%程度あった、めっき鋼帯のドロス欠陥は皆無となり、ドロスに対する問題は全く無くなった。
別の実施例として、第30図、第31図に示した装置において、めっき浴槽510の深さを2m、めっき槽511の容量を5m3、ドロス除去槽512の容量を20m3とし、流路515、516は前記実施例と同様の寸法とした。通常の溶融亜鉛系めっきで問題となるドロスの沈降速度は、概ね1時間あたり1m程度である。めっき浴槽510の深さが2mなので、ドロス除去槽512では2時間以上の滞留時間を必要とする。循環流量が10m3以下であれば滞留時間が2時間を超えるので、ドロス除去の効果が期待できる。一方、循環流量が0.5m3/hを下回ると、めっき槽511のドロスがめっき槽511にとどまり品質欠陥を発生させる原因となる。両者を考慮して、循環流量を5m3/hに設定した。
前記装置を用いて鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行ったところ、ライン速度毎分120mの条件で発生するドロス欠陥が皆無となり、ライン速度を毎分160mに増速してもドロスに対する問題は全く無くなった。
最良の形態6によれば、めっき槽で発生したドロスをめっき槽とは別のドロス除去槽に移動して、トップドロス又はボトムドロスとして除去できるので、めっき槽におけるボトムドロスの発生を低減し、ボトムドロスの堆積を防止でき、同時に、スナウトの浴面を清浄化できる。発明によれば、溶融亜鉛系めっき設備において、ドロスによる鋼帯の表面欠陥やスナウト内の酸化亜鉛等に起因する表面欠陥を防止できるので、高品質の溶融亜鉛系めっき鋼帯の製造を実現できる。
また、構造が簡単な設備で、流路におけるめっき浴の漏洩や凝固のような重大な問題点を解決でき、操業性にも優れる。
最良の形態7
本発明者らは、まず、通常の操業に使用している溶融亜鉛槽(めっきポット)での溶融亜鉛めっきの流れ、ならびにドロスの発生メカニズムおよびドロスのめっきポット内での挙動を調査した。その結果、以下のことが確認された。
すなわち、第34図(a)、(b)、(c)に示すように、めっきポット内の溶融亜鉛の流れが駆動力になっているのは、
1.(a)の記号Aで示すめっきポット内を走行するストリップにより生じる溶融亜鉛の随伴流
2.(b)の記号Bで示すようなストリップおよびシンクロールの接触部分で行き場所のなくなった随伴流がシンクロール胴長方向に流れる吐き出し流
3.(c)の記号Cで示す溶融亜鉛を保熱あるいは加熱するための誘導加熱装置での電磁気力による流れ
4.(a)の記号Dで示す固相の亜鉛を供給するインゴット投入口近傍で生じる溶融亜鉛の温度不均一による自然対流による流れ
である。
鉄と鋼Vol.81(1995)No.7の溶融めっき浴内流れに関するコールドモデル実験には、上述した記号Aの流れが主体的である記述がなされているが、ドロスの沈降分布のデータを解析した結果、この流れと同等に上述した記号B、Cの流れが重要であることが明らかとなった。
第34図に示すように、シンクロール近傍下部からめっきポットの端部にドロスが集中的に堆積するのは、記号Aの流れによって、ドロスが再度巻上げられる以外に、記号Bの流れによって、端からドロスを含む流れが底部に生じ、ドロスが巻上げられたり、吹き寄せられ、記号Cの流れによって、沈静化していたドロスが巻き上がることが水モデル試験のデータから把握された。
一方、ストリップがめっきポットに進入するに際し、ストリップに付着する鉄粉およびストリップが溶融亜鉛と反応して溶出した鉄が、亜鉛との間で金属間化合物を生成する反応が初期に生じる。この金属化合物は微細なドロスであり、この微細なドロスは、ストリップの走行に随伴して流されて、一旦は溶融亜鉛めっきポット底部に達し、底部の低温めっき浴と混合することにより、また、溶融亜鉛への鉄の溶解度および金属間化合物の組織が変化することにより、成長することが判明した。
以上のようなことにより、品質欠陥の極めて少ない高品質の溶融亜鉛めっき鋼板を得るためには、溶融亜鉛中に発生するドロスをめっきポット内の溶融亜鉛めっき浴底部に速やかに沈降分離させて溶融亜鉛めっき浴を清浄化するとともに、めっき部分には大径のドロスが存在しないような流れを形成することが必要であり、そのためには、シンクロール周辺の溶融亜鉛を常に強攪拌させて、問題となる大きさのドロスよりも小さいうちに鋼帯に付着させること、一旦シンクロール近傍から流出したドロスは沈静化された部分で極力沈降分離させること、大径化したドロスは二度と巻き上がらないようにすることが必要であることを知見した。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、第1の実施の形態は、溶融亜鉛を貯留するとともに、溶融亜鉛を加熱する加熱手段を有する溶融亜鉛槽と、
この溶融亜鉛槽内の溶融亜鉛に浸漬され被めっき鋼板が巻き掛けられるシンクロールと、
前記シンクロールを収容するように設けられ、側板と底板とからなり、その上部が開口された容器と
を具備し、前記溶融亜鉛槽内に連続的に供給される被めっき鋼板に溶融亜鉛めっきを施す溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を提供する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態において、前記溶融亜鉛槽の加熱手段はコアレスの誘導加熱を行なうことを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を提供する。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態または第2の実施の形態において、前記容器は、その中を走行する鋼帯、前記シンクロール、およびシンクロールを固定する治具から200mm以上500mm以下の範囲で離隔していることを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を提供する。
第4の実施の形態は、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態のいずれかにおいて、前記溶融亜鉛槽の溶融亜鉛に浸漬される鋼帯が前記容器に至るまでの間、実質的に鋼帯の下面を覆うカバーを具備することを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を提供する。
第5の実施の形態は、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態のいずれかにおいて、前記容器は、その側板と底板との接合部分が曲面で形成されていることを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を提供する。
第6の実施の形態は、第1の実施の形態ないし第5の実施の形態のいずれかにおいて、前記容器は、その底部に溶融亜鉛を排出する排出口を有し、この排出口を介してその中の溶融亜鉛を強制的に溶融亜鉛槽に排出することを特徴とする溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を提供する。
上記第1の実施の形態においては、シンクロールを収容するように側板と底板とからなり、その上部が開口された容器を設けることにより、シンクロールと鋼帯との随伴流は、溶融亜鉛槽の底部に発生せず、かつ、この容器の側板の存在により、鋼帯とシンクロールとの接触部分で胴長方向に流れる溶融亜鉛の流れも溶融亜鉛槽の底部に届かなくなる。また、この流れは容器の側板に衝突して、容器内の底部に向かう流れと、上昇する流れに分かれる。容器の底部に向かう流れは、この容器内の溶融亜鉛を充分混合させる効果を発揮し、この効果による強攪拌でドロスの堆積を防ぐことができる。また上昇した流れは溶融亜鉛槽底部のドロスを巻き上げる駆動力にはならないので、溶融亜鉛槽底部では沈静化してドロスを充分沈降分離させることが可能になる。したがって、品質欠陥の極めて少ない高品質の溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
また、第2の実施の形態のようにコアレスの誘導加熱を行うことで、従来のインジェクションヒーターでの加熱時に生じていた溶融亜鉛の対流に起因する局所的な高速流を低減することができ、品質欠陥を一層低減することができる。
さらに、第3の実施の形態のように、鋼帯、シンクロールおよびこれを支持する治具と容器との距離を200mm以上500mm以下とすることより、容器内の攪拌を充分行うことができる。すなわち、この容器はシンクロールなどの浴中機器を挿入する以前に設置されなければならないので、設置するのに必要な余裕を確保し、局所的な温度分布および濃度分布の発生を防ぐために200mm以上であることが好ましく、500mmを超えると容器の底部の溶融亜鉛を攪拌する強い流れを形成し難くなる。
また、第4の実施の形態のように溶融亜鉛槽の溶融亜鉛に浸漬される鋼帯が容器に至るまでの間、実質的に鋼帯の下部を覆うカバーを設けることにより、シンクロールと鋼帯との間の随伴流を遮断する効果を増大させることができ、溶融亜鉛槽の底部の溶融亜鉛を沈静化してドロスを充分に沈降分離する効果を一層高めることができる。
さらに、第5の実施の形態のように側板と底板との接合部を曲面状にすれば流れのよどみの原因となる角部が存在しないので、容器内の攪拌効果をさらに向上させることができる。
さらにまた、第6の実施の形態のように容器の底部の排出口から強制的に溶融亜鉛を排出することにより、容器内にドロスが沈降することを一層有効に防止することができる。この場合に、この排出された流れが溶融亜鉛槽の底部のドロス巻き上げに関与しないように、溶融亜鉛を上方に向かって低速で放出させることが望ましい。
以下、添付図面を参照して、最良の形態7について具体的に説明する。
まず、第1の実施形態について、第35図から第37図に基づいて説明する。第35図は本発明の第1の実施形態に係る溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を示す断面図、第36図は第35図のA−A’線による断面図、第37図は本発明の第1の実施形態に係る溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を示す平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係る溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置は矩形状のめっきポット601を有し、めっきポット601にはめっき浴を構成する溶融亜鉛602が貯留されている。めっきポット601内には、溶融亜鉛602に浸漬された状態でシンクロール605が設けられており、このシンクロール605は支持治具604によりめっきポット601に取り付けられている。そして、めっきポット601内の溶融亜鉛602にスナウト603を経由して浸漬された鋼帯Sがシンクロール605に巻き掛けられて上方に方向転換され、連続的にめっきポット601の上方に通板される。シンクロール605の上方には一対のサポートロール606,607が設けられており、これらにより鋼帯Sが支持され、その形状が調整される。
めっきポット601内には、シンクロール605、支持治具604およびサポートロール606,607を収容するように容器608が設けられている。この容器608は、第36図に示すように底板608aと側板608bとからなり、その上部が開口されている。底板608aと側板608bとの接合部は曲面状となっている。この容器608はその底部においてパイプ状の支持足609で支持されている。
容器608の底部の板幅方向中央部には、溶融亜鉛の排出口610が形成され、この排出口610から水平に延び途中で上方に屈曲する排出管610aが設けられている。排出管610a内にはセラミックスポンプ611が設けられており、このセラミックスポンプ611は排出管610aの先端部610bの上方に設けられたモータ612により駆動され、容器608内の溶融亜鉛を排出口610および排出管610aを介してめっきポット601内に強制的に排出するようになっている。なお、容器608の底板608a、側板608bは、その中を走行する鋼帯S、シンクロール605,支持治具604,サポートロール606,607から200mm〜500mmの範囲で離隔していることが好ましく、例えば300mmに設定される。
めっきポット601の端部の溶融亜鉛602の表面近傍には、溶融亜鉛補給用の亜鉛インゴット613が浸漬されている。また、めっきポット601の外側には、めっきポット601内の溶融亜鉛602を加熱するためのインダクションヒータ615が設けられている。
このように構成された溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置においては、被めっき鋼帯Sがスナウト603を経由してめっきポット601に貯留された溶融亜鉛602中に連続的に浸漬される。そして、鋼帯Sはシンクロール605によって上方に方向転換された後めっきポット601の上方へ通板され、図示しないガスワイパーにより余分な溶融亜鉛が除去され、溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
この際に、側板608bと底板608aとからなり、その上部が開口されている容器608を設けたので、シンクロール605と鋼帯Sとの随伴流はめっきポット601の底部に発生せず、かつシンクロール605と鋼帯Sとの接触部分で胴長方向に流れる溶融亜鉛流れはめっきポット601の底部に届かない。また、この流れは容器608の側板608bに衝突して、容器608内の底部に向かう流れと、上昇する流れに分かれる。容器608の底部に向かう流れは、この容器608内の溶融亜鉛602を充分混合させる効果を発揮し、この効果による強攪拌でドロスの堆積を防ぐことができる。また上昇した流れはめっきポット601の底部のドロスを巻き上げる駆動力にはならないので、めっきポット601の底部では沈静化してドロスを充分沈降分離させることができる。したがって品質欠陥の極めて少ない高品質の溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
また、容器608を、走行する鋼帯S、シンクロール605、シンクロール605を支持する支持治具604、およびサポートロール606,607から200mm以上500mm以下の範囲で離隔するように設けることにより、容器608内の攪拌を充分行うことできる。さらに、容器608の側板608bと底板608aとの接合部分が曲面状であるので、容器608内における溶融亜鉛の流れが良好であり、容器608内の攪拌効果が極めて高い。
なお、支持足609は、例えば200mm直径の円筒パイプで構成されている。このため、容器608を沈める際に、パイプ状の支持足609から容器608に溶融亜鉛602が流れ込むことにより、容易に容器608を沈めることができる。また、容器608を引き上げる際に、パイプ状の支持足609から容器608内の溶融亜鉛602が排出されることにより、容易に容器608をめっきポット601から引き上げることができる。なお、操作中はパイプ状の支持足609はめっきポット601の底部に接地しているため、めっきポット601の底部の溶融亜鉛602が容器内に混合することはない。
また、セラミックポンプ611を上方に設けられたモータ612により駆動させて、容器608の板幅方向中央部に設けられた排出口610から排出管610aを介してめっきポット601内に強制的に溶融亜鉛602を排出することにより、容器608内にドロスが沈降することを一層有効に防止することができる。
以上のような本実施形態の装置を用いて溶融亜鉛系めっき鋼板を製造した場合におけるドロス付着による品質欠陥を調査した。その結果、ライン速度を変化させても2週間の連続運転によって品質欠陥の発生は1%以下であることが確認された。また、プレス等の加工時に問題となる大径ドロスは皆無になったことが確認された。
次に、第2の実施形態について、第38図から第40図に基づいて説明する。第38図は本発明の第2の実施形態に係る溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を示す断面図、第39図は第38図のB―B’線による断面図、第40図は本発明の第2の実施形態に係る溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置を示す平面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係る溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置は、上記第1の実施形態の装置と同様の基本構成を有しており、第1の実施形態と同じ符号を付して説明を簡略化する。
本実施形態の溶融亜鉛めっき装置は溶融亜鉛を貯留した円筒状のめっきポット620を有している。このめっきポット620の周囲には加熱手段としての高周波コイル621が設けられており、これによりコアレス誘導加熱によって溶融亜鉛602を加熱するようになっている。シンクロール605、サポートロール606,607は第1の実施形態と同様に配置され、スナウト603を経由してめっきポット620内の溶融亜鉛602に浸漬された鋼帯Sが第1の実施形態と同様シンクロール605に巻き掛けられて上面に方向転換され連続的にめっきポット601の上方へ通板される。
めっきポット620内には、シンクロール605、支持治具604およびサポートロール606,607を収容するように第1の実施形態と同様の構造の容器608が設けられている。また、スナウト603を経由した鋼帯Sが溶融亜鉛602に浸漬される位置から容器8に至るまでの間、実質的に鋼帯Sの下面を覆うように断面U字状のカバー616が設けられている。
この実施形態においても、容器608の底部の板幅方向中央部に設けられた排出口610から水平に延び途中で上方に屈曲する排出管610aが設けられている。排出管610aの先端部にはメカニカルポンプ617が設けられており、このメカニカルポンプ617は、その上方に設けられたモータ612により駆動され、容器608内の溶融亜鉛を排出口610および排出管610aを介してめっきポット620内に強制的に排出するようになっている。なお、この実施形態においても容器608の底板608a、側板608bは、その中を走行する鋼帯S、シンクロール605、支持具604、サポートロール606,607から200mm〜500mmの範囲で離隔していることが好ましく、例えば300mmに設定される。また、めっきポット620の端部の溶融亜鉛602の表面近傍には、溶融亜鉛補給用の亜鉛インゴット613が浸漬されている。
このように構成された溶融亜鉛系めっき鋼板の製造装置においては、第1の実施形態と同様被めっき鋼帯Sがスナウト603を経由して、めっきポット620に貯留された溶融亜鉛602中に連続的に浸漬される。そして、鋼帯Sはシンクロール605によって上方に方向転換された後めっきポット620の上方へ通板され、図示しないガスワイパーにより余分な溶融亜鉛が除去され、両表面に所定量の溶融亜鉛が付着した溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
本実施形態においては、第1の実施形態と同様、容器608の存在により、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる他、高周波コイル621よりコアレスの誘導加熱を行うので、従来のインダクションヒーターでの加熱時に生じていた溶融亜鉛の対流に起因する局所的高速流を低減することができるといった効果が付加され、品質欠陥を一層減少させることができる。また、カバー616により、シンクロール605と鋼帯Sとの間の随伴流を遮断する効果を増大させることができ、めっきポット620の底部の溶融亜鉛602を沈静化してドロスを充分に沈降分離する効果を一層高めることができる。
また、第1の実施形態と同様、容器608を、走行する鋼帯S、シンクロール605、シンクロール605を支持する支持治具604、およびサポートロール606,607から200mm以上500mm以下の範囲で離隔するように設けることにより、容器608内の攪拌を充分行うことできる。さらに、容器608の側板608bと底板608aとの接合部分が曲面状であるので、容器608内における溶融亜鉛の流れが良好であり、容器608内の攪拌効果が極めて高い。
また、メカニカルポンプ617により、容器608の板幅方向中央部に設けられた排出口610から排出管610aを介してめっきポット601内に強制的に溶融亜鉛602を排出することによって、容器608内にドロスが沈降することを一層有効に防止することができる。
以上のような本実施形態の装置を用いる溶融亜鉛系めっき鋼板を製造した場合におけるドロス付着による品質欠陥を調査した。その結果、ライン速度を変化させても3週間の連続運転によって品質欠陥の発生は1%以下であることが確認された。また、プレス等の加工時に問題となる大径ドロスは皆無となることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、溶融亜鉛槽にシンクロールを収容する容器を設置することにより、ドロスを沈降分離させ、めっき浴を清浄化し、めっき部分に大径のドロスが存在しないような流れをつくることができ、品質欠陥の極めて少ない高品質の溶融亜鉛めっき系鋼板の製造装置を提供することができる。
最良の形態8
最良の形態8における特徴的な考え方は以下のとおりである。
1)沈澱法でドロスを除去することを基本とする。そのため沈殿槽を大きくする。
2)めっき槽では、ドロスが有害な寸法に成長する前に液を更新する。そのためには、めっき槽はできるだけ小さい方が望ましい。
3)めっき槽への原料亜鉛の供給を固体亜鉛ではなく、液体亜鉛で行う。めっき槽で浴温変動によるドロスの成長促進を防ぐためである。
4)原料亜鉛の供給は、沈殿槽で固体亜鉛(インゴット)を溶解して行う。固体亜鉛溶解部近傍の浴温変動を活用してドロス成長促進を図るためである。沈殿槽では加熱装置の設置が不可欠である。
5)沈殿槽からめっき槽への溶融亜鉛の供給を非常に穏やかな流れを介して行う。トップドロスの発生を抑えるためである。浴面で少しでも大気を巻き込むような流れが発生すると、トップドロスが激しく発生する。沈殿槽とめっき槽を開口部で結び、両者の液位を等しくすると前記条件が満たされる。
6)ドロスを除去した溶融亜鉛の沈殿槽からの排出は、沈殿槽での液面を含む流れが最適である。開口部をできるだけ上部に設けるとこの条件が満たされる。
7)ライン速度が速くても遅くても、めっき槽内のドロスが確実にめっき槽からドロス除去槽に移送され、またライン速度が速い場合にもドロス除去能力が十分にあること。
8)以上の要件を、一つの容器を上部のめっき槽と下部のドロス除去槽に分割して行う。また上部のめっき槽をさらに分割可能な構造にする。設備の設置簡素化、また、操業の安定化、設備費の低減、設置面積の低減などを図るためである。
最良の形態8は、前記の考えに基くものであり、本発明の要旨は以下の通りである。
第1の実施の形態は、スナウト内を走行してきた鋼帯を案内する浴中ロールが配設された、溶融金属を収容するめっき容器に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なうに際して、前記めっき容器を、ドロス除去槽と前記ドロス除去槽内に設置するめっき槽に分割し、めっき槽に鋼帯を浸漬して溶融亜鉛系めっきを行い、めっき槽の溶融金属浴のドロス除去槽への移送を、メカニカルポンプによる移送及びめっき槽から引き上げられる鋼帯表面に対向するめっき槽の側壁に設けためっき槽とドロス除去槽を連通する第1の連通部からの鋼帯の随伴流による移送によって行い、ドロス除去槽で移送されてきた溶融金属浴中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解し、ドロス除去槽の溶融金属浴をめっき槽から引き上げられる鋼帯表面に直角方向のめっき槽側壁に設けためっき槽とドロス除去槽を連通する第2の連通部からめっき槽に戻すことを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態において、めっき槽の溶融金属浴をメカニカルポンプで、浴中ロールを挟んで第1の連通部とは反対側のめっき槽から吸引し、吸引した溶融金属をめっき槽を挟んで前記第1の連通部とは反対側のドロス除去槽に排出することを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第3の実施の形態は、前記第1の実施の形態又は第2の実施の形態において、鋼帯がめっき槽に進入してから浴中ロールを離れるまでの間の、めっき槽と鋼帯との距離及びめっき槽と浴中ロールとの距離を何れも200mm以上400mm以下とし、まためっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、W1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するめっき槽とドロス除去槽を用い、めっき槽からドロス除去槽へ移送する溶融金属浴の流量を1m3/h以上10m3/h以下とすることを特徴とする溶融亜鉛系めっき方法である。
第4の実施の形態は、スナウト内を走行してきた鋼帯を案内する浴中ロールが配設された、溶融金属を収容するめっき容器に鋼帯を浸漬して鋼帯に連続して溶融亜鉛系めっきを行なう溶融亜鉛系めっき装置において、前記めっき容器を、溶融金属中のドロスを除去するとともにめっきに使用する固相金属を溶解するドロス除去槽と、前記ドロス除去槽内に設置した鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行うめっき槽に分割し、めっき槽の溶融金属浴をドロス除去槽に移送するために、メカニカルポンプを配設し、また鋼帯の随伴流による移送を行うためのめっき槽とドロス除去槽を連通する第1の連通部を、めっき槽から引き上げられる鋼帯表面に対向するめっき槽の側壁に配設し、またドロス除去槽の溶融金属浴をめっき槽に戻すためのめっき槽とドロス除去槽を連通する第2の連通部を、めっき槽から引き上げられる鋼帯表面に直角方向のめっき槽側壁に配設することを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第5の実施の形態は、第4の実施の形態において、メカニカルポンプのめっき槽の溶融金属浴の吸引部を、浴中ロールを挟んで第1の連通部とは反対側のめっき槽に設け、吸引した溶融金属のドロス除去槽への排出部を、めっき槽を挟んで前記第1の連通部とは反対側のドロス除去槽に設けることを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
第6の実施の形態は、第4の実施の形態又は第5の実施の形態において、めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、めっき槽とドロス除去槽がW1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するとともに、鋼帯がめっき槽に進入してから浴中ロールを離れるまでの間の、めっき槽と鋼帯との距離及びめっき槽と浴中ロールとの距離を何れも200mm以上400mm以下に配設することを特徴とする溶融亜鉛系めっき装置である。
最良の形態8においては、鋼帯に付着して持ち去られる亜鉛の補給すなわち固相亜鉛(インゴット)の溶解をめっき槽の下部に配設したドロス除去槽で行うので、めっき槽の溶融金属浴(融液)の温度変動が小さくなり、めっき槽におけるドロスの発生を減少できる。
めっき槽のドロスを含む融液は、メカニカルポンプ及びめっき槽から引き上げられる鋼帯表面に対向するめっき槽の側壁に設けためっき槽とドロス除去槽を連通する第1の連通部を介して、ドロス除去槽に移送するので、ガスリフトポンプに見られるヒュームやトップドロスの発生等の品質面、操業面の問題がない。また、鋼帯の随伴流だけを利用した融液の不安定な移送を改善し、ドロス濃度の高い場所の融液を必要流量だけ確実にドロス除去槽に移送できる。
すなわち、鋼帯速度が遅い場合には、発生したドロスを随伴流だけで排出するのが困難になることから、メカニカルポンプで強制的にめっき槽内のドロスを含む浴をドロス除去槽に移送させ、鋼帯速度が速い場合には、鋼帯の随伴流でめっき槽の第1の連通部からドロス除去槽に移送させることにより、鋼帯速度に依存すること無く、又メカニカルポンプの回転数制御すること無く、ドロス発生量に比例して融液の移送量を増加させることが可能になる。
ドロス除去槽内では、走行する鋼帯により生じる融液の攪拌がないため流れが沈静化され、ドロスが沈澱しやすくなる。またドロス除去槽でインゴットを溶解することによって、局部的な融液温度の低下とアルミ濃度の変化によりドロスの沈降分離が促進される。この二つの作用により、ドロス除去槽ではドロスが効率よく速やかに除去される。
ドロス除去槽でドロスが除去され、清浄化された融液が優先して、めっき槽から引き上げられる鋼帯表面に直角方向のめっき槽側壁に配設されためっき槽とドロス除去槽を連通する第2の連通部からめっき槽に戻る。融液の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽とドロス除去槽の融液にはほとんど液面差がない。したがって、融液がめっき槽に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロス除去槽のドロスが除去された上澄み浴を戻すように第2の連通部をできるだけ上部に配設すると、より清浄性に優れる浴面近傍の上澄み浴を優先してめっき槽に戻すことができる。この場合、走行する鋼帯板面に直角な面から融液を鋼帯とシンクロールに挟まれた部分に流入させることができれば、めっき槽の融液循環の効率が良くなる。前記のような流れを形成するには、第1の連通部をめっき槽から引き上げられる鋼帯表面に対向するめっき槽側壁に設け、第2の連通部をめっき槽から引き上げられる鋼帯表面に直角方向のめっき槽側壁に設けるのがよい。
また、メカニカルポンプのめっき槽の融液の吸引部を、浴中ロールを挟んで第1の連通部とは反対側のめっき槽に設け、吸引した融液のドロス除去槽への排出部を、めっき槽を挟んで前記第1の連通部とは反対側のドロス除去槽に設けて、メカニカルポンプでめっき槽の融液をドロス除去槽に排出すると、融液の循環効率がさらに良くなる。
本発明の装置は、めっき容器をめっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題を解消できる。
鋼帯がめっき槽に進入してから浴中ロールを離れるまでの間の、鋼帯とめっき槽の間隔及び浴中ロールと鋼帯の間隔を一定範囲内(200以上400mm以下)にすることで、鋼帯とめっき槽との接触を防ぎ、またメカニカルポンプと鋼帯の随伴流によって融液を移送することにより、鋼帯速度に関係なく、めっき槽内のドロス堆積を防止できるようになり、ドロス欠陥を防止できるようになる。
鋼帯がめっき槽に進入してから浴中ロールを離れるまでの間の、鋼帯Sとめっき槽11の間隔(第42図中のL1、L2)、めっき槽と浴中ロールとの間隔(第42図中のL3、第41図のL4)が200mm未満になると、通板時や操業トラブル時に鋼帯Sがめっき槽711に接触して、疵を発生させたり、溶接部での板破断が生じたり、めっき槽711内の温度分布が不均一になる傾向がある。また、前記間隔が400mmを超えると、めっき槽711内の一部分にドロスが堆積する傾向が見られる。そのため、前記間隔は200mm以上400mm以下にすることが好ましい。
めっき槽の容量をW1、ドロス除去槽の容量をW2とした場合、W1≦10m3且つW1≦W2の関係を満足するめっき槽とドロス除去槽を用い、めっき槽からドロス除去槽へ移送する溶融金属浴の流量を1m3/h以上10m3/h以下にすると、めっき槽内において、めっき槽内の融液の流れが淀んだ部分でドロスが堆積することを防止でき、また発生したドロスをドロス除去槽で効率よく除去できるのでより好ましい。
最良の形態8について第41図〜第43図を用いて説明する。第41図は最良の形態8に係る溶融亜鉛系めっき装置を示す図で、めっき容器の上縁位置より下方に見た場合の要部設備の配置を示す。第42図は第41図の装置のA−A断面図、第43図は第41図の装置のB―B断面図である。第41図〜第43図において、701はスナウト、702はシンクロール(浴中ロール)、703は溶融金属浴(融液)、704はめっき容器である。めっき容器704は、浴中ロール702が配設され、鋼帯Sにめっきするめっき槽711と、前記めっき槽711の下部に配設され、ドロスを沈降分離しインゴット714を溶解するドロス除去槽712に分割されている。
713はめっき槽711に配設された第1の開口部(第1の連通部)で、めっき槽711から引き上げられる鋼帯表面に対向するめっき槽711の側壁に設けられ、めっき槽711とドロス除去槽712を連通する。717はめっき槽711に配設された第2の開口部(第2の連通部)で、めっき槽711から引き上げられる鋼帯表面に直角方向のめっき槽711の両側の側壁に設けられ、めっき槽711とドロス除去槽712を連通する。705はメカニカルポンプで、第1の開口部713とは浴中ロール702を挟んで反対側のめっき槽711の底部に設けた第3の開口部719から、めっき槽711の融液703を吸引し、吸引した融液703をめっき槽711を挟んで第1の開口部713とは反対側の排出口718からドロス除去槽712に排出可能に配設されている。
第44図に前記各開口部の形状を示す。第44図において、(a)は第41図のC−C矢視図で、第1の開口部713の形状、(b)は第41図のD−D矢視図で、第2の開口部717の形状、(c)は第42図のA−A矢視図で、第3の開口部719の形状を示す。第1の開口部713、第2の開口部717は、何れも浴面を含む浴面近傍に流路を形成するように配設されている。
鋼帯Sは矢印の方向に走行してスナウト701からめっき槽711に浸漬され、浴中ロール702で方向転換後、融液703から引上げられ、図示しない付着量制御装置でめっき付着量を調整後、冷却して所定の後処理を施された後、めっき鋼帯となる。
めっき槽711のドロスを含む融液703は、メカニカルポンプ705を介して開口部719から排出口718を経てドロス除去槽712に移送され、また鋼帯Sの随伴流で第1の開口部713からドロス除去槽712に流れ、ドロス除去槽712でドロスが沈降分離され、融液703は第2の開口部717を経てめっき槽711に戻る。めっき槽711とドロス除去槽712間の融液703の循環量は、鋼帯Sの随伴流で流れる第1の開口部713からの排出流量とメカニカルポンプ705からの排出流量を合わせた流量になる。
ドロス除去槽712に一対の加熱装置(誘導加熱装置)715、716が配設されている。本装置では、めっき槽711には加熱装置が配設されておらず、めっき槽711の融液温度はドロス除去槽712から戻る融液703の保有熱とめっき槽711に進入する鋼帯Sの板温により決まるので、めっき槽711の融液の温度管理をドロス除去槽712に配設した加熱装置715、716、および通板される鋼帯温度を調整して行う。ドロス除去槽712にインゴット714を投入した場合、加熱装置715、716を適切に稼動させて、開口部717からめっき槽711に流入する融液温度を所定温度に保つように制御する。
めっき槽711の温度調整を迅速に行うことができるように、めっき槽711の材料は、セラミックス系の材料ではなく、熱伝導性のよい材料、例えばSUS316Lのような耐食性の優れる金属材料であることが好ましい。めっき槽711の材料に金属材料を使用すると、めっき槽711をめっき容器704から着脱する際にも有利である。
インゴット714の溶解をめっき槽711で行わないのでめっき槽711の融液703の温度変動が小さくなり、まためっき槽711の融液703の温度管理をドロス除去槽712の加熱装置715、716で行うので加熱装置715、716から噴射される高温の融液3が鋼帯Sに接触することがなくなり、鋼帯Sからの鉄の溶出が抑えられ、めっき槽711におけるドロスの発生自体を低減できる。
めっき槽711のドロスを含む融液703を、めっき容器704に配設したセラミックス製のメカニカルポンプ705を用いてめっき槽711の融液703を第3の開口部719から吸引し、排出口718を経てドロス除去槽712へ移送し、また鋼帯Sの随伴流でめっき槽711の融液703を、第44図(a)に示すように、浴面を含む浴面近傍に流路を形成する第1の開口部713からドロス除去槽712に移送する。めっき槽711とドロス除去槽712が隣接しているので、融液703の移送距離が短く、移送時の融液3の凝固や漏洩の問題を実質的に解消できる。また、鋼帯速度が遅い場合にはメカニカルポンプ705で強制的にめっき槽711内のドロスを含む融液703を第3の開口部719から吸引してドロス除去槽712に移送させ、鋼帯速度が速い場合には鋼帯Sの随伴流でめっき槽711の第1の開口部713からドロス除去槽712に移送させることにより、めっき槽711にある融液703を必要流量だけ確実にドロス除去槽712に移送できる。
メカニカルポンプとは、ポンプ機械の作動部に直接触れる形で融液を移送する渦巻ポンプ(遠心ポンプ)やタービンポンプ、容積型ポンプ等のポンプであり、ガスリフトポンプを含まない。
ドロス除去槽712で、インゴット714の溶解とボトムドロス708の沈降分離を行う。ドロス除去槽712では、融液703の流れが整流化される。この作用に加えて、インゴット溶解に伴う局部的な融液温度低下とアルミ濃度変化が大きくなり、ドロスの沈降分離が促進される。これにより、ドロスの沈降分離効率が向上する。
ドロス除去槽712には、ボトムドロス708を効率良く沈降分離するために、必要に応じて融液703の流れを整流化する仕切板を配設してもよい。
めっき槽711の側壁に、第44図(b)に示すように、浴面を含む浴面近傍に流路を形成する第2の開口部717が配設されている。溶解したインゴット融液が混合し、またドロスを沈降分離して清浄化した浴面近傍の上澄み浴が優先的に第2の開口部717からめっき槽711に戻る。融液703の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽711とドロス除去槽712の融液703にはほとんど液面差が生じない。したがって、融液703がめっき槽711に戻った際にトップドロスが発生することがない。
ドロスが除去された清浄な融液703がめっき槽711に戻り、まためっき槽711で発生するドロス自体も少ないので、めっき槽711においてドロス堆積を防止する効果が優れる。
鋼帯Sがめっき槽に進入してから浴中ロールを離れるまでの間の、鋼帯Sとめっき槽711の間隔(第42図中のL1、L2)、めっき槽と浴中ロールとの間隔(第42図中のL3、第41図中のL4)が200mm未満になると、通板時や操業トラブル時に鋼帯Sがめっき槽711に接触して、疵を発生させたり、溶接部での板破断が生じたり、めっき槽711内の温度分布が不均一になる傾向がある。また、前記間隔が400mmを超えると、めっき槽711内の一部分にドロスが堆積する傾向が見られる。そのため、前記間隔は200mm以上400mm以下にすることが好ましい。
第41図〜第43図の装置では、第1の開口部713、第2の開口部717を設けためっき槽711の側壁は垂直に配設されているが、側壁は垂直でなくてもよい。この場合、鋼帯Sがめっき槽711に進入してから浴中ロール702を離れるまでの間の、めっき槽711と鋼帯Sとの距離及びめっき槽711と浴中ロール702との距離を何れも200mm以上400mm以下とすることが望ましいが、鋼帯Sが浴中ロール2を離れた後は前記距離を超えても良い。また、めっき槽711側壁とめっき容器704側壁の間隔は100mm以上にすることが好ましい。
第41図の装置において、めっき槽711と鋼帯Sとの距離及びめっき槽711と浴中ロール702との距離をL1〜L4を200〜300mmの範囲とし、鋼帯速度:120m/minで、槽容量、循環流量を変更した場合のめっき槽711におけるドロス付着による品質欠陥の発生状況について調査した。調査結果を第45図〜第47図に示す。
第45図は、ドロス除去槽712の容量を20m3、循環流量を一定の5m3/hにして、めっき槽711の容量を変更して鋼帯Sにめっきした場合のドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を示す図である。ドロス付着による品質欠陥の発生状況は、めっき後の鋼帯Sの表面を目視観察してドロス付着の程度に応じてインデックス1〜5の5段階に分けて評価した。インデックス1が最も優れ、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯において求められている品質レベルである。
めっき槽711の容量が10m3以下ではインデックスが1で品質が良好だが、めっき槽711の容量が10m3を超えると、インデックスが大きくなり品質が低下する。めっき槽711の容量が大きくなる程流れの淀んだ部分が発生しやすくなり、そこにボトムドロス708が堆積するためである。めっき槽711でボトムドロス708の堆積を防止するにはめっき槽711の容量を小さくすることが有効であり、めっき槽711の容量を10m3以下にすると、現在求められている高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
また、循環流量を一定の5m3/hにして、ドロス除去槽712の容量を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。ドロス除去槽712の大きさは、めっき槽711の容量の影響を受けるので、めっき槽711の容量(W1)をドロス除去槽712の容量(W2)で除したパラメータW1/W2を用いてドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を整理した。調査結果を第46図に示す。
W1/W2が1.0以下の領域ではインデックスが1で品質が良好だが、W1/W2が1.0を超えるとインデックスが大きくなり品質が低下している。W1/W2を1.0以下にすることによって、現在求められている高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
また、めっき槽711、ドロス除去槽712の容量をそれぞれ一定の5m3、20m3にして、循環流量を変更して鋼帯Sにめっきを行い、ドロス付着による鋼帯Sの品質欠陥の発生状況を調査した。調査結果を第47図に示す。
循環流量が多い場合、ドロス除去槽712でドロスの沈降分離が不十分なためにめっき槽711に混入したと考えられる欠陥が発生した。ドロス除去槽712では、問題となるドロスの沈降時間を考慮してドロスの沈降時間以上の滞留時間を確保することが重要である。前記欠陥は循環流量の減少と共に減少し、循環流量が10m3/h以下になると品質に問題の無い製品を製造することが可能になる。しかし、循環流量がさらに減少して1m3/hを下回るようになると、ドロスがめっき槽711からドロス除去槽712に排出されないでめっき槽711内にとどまるため、逆にインデックスが大きくなり品質が低下するようになる。高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造するには、循環流量を1m3以上10m3以下にする必要がある。
鋼帯速度が速くなるにつれて、第1の開口部713からの流量が多くなるために、メカニカルポンプ705の循環流量は少な目に設定することが望ましく、120m/min以上の鋼帯速度では、メカニカルポンプ705の流量は6m3/h以下で十分である。逆に多すぎると前記同様のドロスの沈降分離不足が生じて、ドロスが再度第2の開口部717からめっき槽711に流入するため、品質の低下を招く。
なお、第41図〜第43図に示した装置では、めっき槽711とドロス除去槽712間で、融液703が、鋼帯Sに対向する第1の開口部713を経てめっき槽711からドロス除去槽712へ移送され、ドロス除去槽712から第2の開口部717を経てめっき槽711へと移送され、循環効率のよい融液の移送が行われるので、第1の開口部713と第2の開口部717が連続、すなわち第1の連通部と第2の連通部が連続していてもよい。
また、第41図〜第43図に示した装置のように、メカニカルポンプ705の吸引部(第3の開口部)719を、浴中ロール702を挟んで第1の開口部713とは反対側のめっき槽711に設け、吸引した融液703のドロス除去槽712への排出部を、めっき槽711を挟んで前記第1の開口部713とは反対側のドロス除去槽712に設けた場合、融液703の循環効率がさらに良好になり、前記開口部713、717以外のめっき槽711の上端が融液703の液面下に位置する、すなわちめっき槽711の側壁上縁全周にめっき槽711とドロス除去槽712との連通部が形成されていても良い。
第41図〜第43図の装置では、メカニカルポンプ705をめっき槽711底部に近接した位置に設けたが、メカニカルポンプ705を液面に近い位置に設けてもよい。第48図は、メカニカルポンプを液面に近い位置に設けためっき装置の例を示す図で、めっき槽711及びその近傍の要部設備のみを図示しており、(a)は、メカニカルポンプを配設した側から見ためっき槽711の正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
第48図において、719はめっき槽711に設けた第3の開口部、705aはメカニカルポンプ、731はメカニカルポンプ705aを収用するポンプ室、メカニカルポンプ705aが排出する融液は、ポンプ室731の側壁731a側に配設されている排出管から、流路が浴面上に出ることなく、ドロス除去槽712に排出可能である。ポンプ室731の側壁731aには、シール部材733が着脱可能に配設されいる。側壁731aにはU形の切り込み、シール部材733には逆U形の切り込みが形成されている。側壁731aの切り込みの底部形状、シール部材733の頂部形状は、何れも半円形で、半径はほぼ排出管730の外径(半径)に等しい。
メカニカルポンプ705aをポンプ室731に配設する場合、メカニカルポンプ705aの排出管730が側壁731aの切り込みの底部に当接するようにメカニカルポンプ705aを設置し、シール部材733の切り込みの頂部を排出管730に当接させるように、シール部材733を側壁731aに取り付け、排出管730の外周側をシールする。
開口部719から吸引されためっき槽711の融液703は導路732を経てポンプ室731に送られ、メカニカルポンプ705aを用いて排出管730からドロス除去槽712に排出される。メカニカルポンプ705aをポンプ室731から取り出す場合、シール部材733を側壁731aから取り外し、メカニカルポンプ705aをポンプ室731から取り出す。本装置によれば、メカニカルポンプ705aの着脱を簡単に行うことができる。
実施例
第41図に示した装置において、めっき容器704の深さを2.5m、めっき槽711の容量を10m3、ドロス除去槽712の容量を30m3、まためっき槽711と鋼帯Sとの距離及びめっき槽711と浴中ロール702との距離をL1=300mm、L2=250mm、L3=300mm、L4=200mmとした。めっき槽711は厚さ6〜15mmの鋼材(SUS316L)を溶接して作製した。通常の溶融亜鉛系めっきで問題となるドロスの沈降速度は、概ね1時間あたり1m程度である。めっき容器704の深さが2.5mなので、ドロス除去槽712では2.5時間以上の滞留時間を必要とする。循環流量が12m3/h以下であれば滞留時間が2.5時間を超えるので、ドロス除去の効果が期待できる。一方、循環流量が1m3/hを下回ると、めっき槽711のドロスがめっき槽711にとどまり品質欠陥を発生させる原因となる。両者を考慮して、循環流量を3m3/hに設定した。
前記装置を用いて鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行ったところ、従来生産量の2%程度の発生量であっためっき鋼帯のドロス欠陥の発生が皆無になり、ドロス付着による問題が全く無くなった。
最良の形態8によれば、鋼帯に溶融亜鉛系めっきを行う際に発生するドロスの発生を低減でき、また発生したドロスがめっき槽で堆積することを防止するとともに、めっき槽の下部に配置したドロス除去槽でドロスを効率よく除去できるので、鋼帯のドロス付着による品質欠陥を低減できる。本発明によれば、高品質溶融亜鉛系めっき鋼帯を製造することができる。
最良の形態8の装置は、めっき容器を上下に配置しためっき槽とドロス除去槽に分割しただけの簡易な装置で、設備費が安価であり、また、離れた槽に融液を移送することにともなう設備費の問題や融液の凝固、漏洩の問題も解消できる。
融液の流れる抵抗がほとんど無いので、めっき槽とドロス除去槽の融液にはほとんど液面差が生じない。したがって、融液がめっき槽に戻った際にトップドロスが発生することがない。また、ライン速度が速くても遅くても、めっき槽内のドロスが確実にめっき槽からドロス除去槽に移送され、めっき槽内にドロスが沈降する問題が無い。
最良の形態8では、ドロスを沈降分離する領域が小さくて済むので、めっき容器全体を小型化できる。そのため、既存設備を改造して、本発明を実施することも容易である。