JP4691821B2 - 溶融亜鉛めっき方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続的に走行する鋼板に溶融亜鉛を主成分とする金属めっきを施す方法及び装置、特にめっき浴中の不純物、いわゆるドロスが鋼板に付着することにより発生する表面欠陥の無い高品質溶融亜鉛系めっき鋼板の製造に好適なめっき方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融亜鉛系めっき鋼板の製造方法としては、連続的に鋼板を予備処理して所定の加熱パターンで高温に保持した後、めっき浴中を通板させ、シンクロールに巻掛けて案内し、シンクロールから離反した後形状調整や振動防止のためにサポートロールで案内し、めっき浴から引き上げてめっき付着量制御した後に、所定の冷却パターンで常温まで冷却して製造する方法が代表的である。
【0003】
前記方法では、めっき浴中で鋼板から鉄が溶出して、めっき成分との金属間化合物、いわゆるドロスを生成する。このドロスは鉄成分を含有するため、密度がめっき浴の密度に比べて高くなり、めっき浴中で沈降することになる。
【0004】
ドロスはめっき成分と溶出した鉄との反応で発生するため、発生当初のドロスの粒径は小さい。その場合には、このドロスが鋼板に付着しても何ら問題とはならないが、凝集合体、温度変化あるいはめっき成分濃度の時間的変化等の履歴を経てドロスが大きくなった後に、このドロスが鋼板に付着した場合には、表面品質を劣化させるばかりでなく、鋼板を加工時に表面の平滑性を損うことにもなり、めっき鋼板の品質上の大きな問題である。
【0005】
また、連続操業においては、このドロスが浴底部に沈降して堆積する。堆積したドロス量が増加すると、鋼板の通板により誘起するめっき浴の流れによって、一旦沈降したドロスが再浮遊することがあり、この再浮上したドロスの存在は製品品質上最も好ましくないものである。
【0006】
そのため、特開平3−47956号公報(先行文献1)では、溶融亜鉛槽内のシンクロールと槽底部の間に、シンクロールの下方からのめっき浴の流れを抑制するU型やZ型の遮蔽板を配置して、めっき槽底部に溜まったドロスの巻き上げを防止することが提案されている。
【0007】
また、特開平4−154948号公報(先行文献2)では、溶融亜鉛浴槽と、めっき浴に浅い流路を介してつながる沈殿浴を設け、浴中ロールの回転と鋼板の移動により発生する攪拌効果によりめっき浴内でのドロスの沈降堆積を防止し、かつ生成するドロスを積極的に沈殿浴内で沈降堆積させて、ドロス分離できためっき浴をポンプで浴槽に戻す方法が提案されている。
【0008】
また、特許掲載公報第2928454号(先行文献3)では、浴底が円弧状曲線を有するめっき浴槽と、ドロスを沈降堆積する沈殿槽を配設するとともに、めっき浴槽の側壁上端近傍に、めっき浴槽内の溶融金属が沈殿槽内に進入及び/又は排出自在な連通口を設け、さらに、溶融金属浴面に浮遊するトップドロスがめっき浴槽に入り込まないように、該側壁の上端位置を溶融金属浴面より高くする溶融金属めっき装置が提案されている。
【0009】
しかしながら、これらには多くの問題が存在する。すなわち、先行文献1では、めっき槽底部に溜まったドロスの巻き上げを防止する効果は少なく、特にライン速度が変化したり、高速化した場合にその効果が著しく劣るという問題がある。
【0010】
先行文献2のように流路を設けた場合には、従来のめっき浴を加熱保持する装置以外に、別途の加熱装置を設けて、加熱制御することが必要になり、また溶融亜鉛中でポンプを使用することは、ポンプ材料の耐食性の問題から長期間の使用が困難であり、またメンテナンスに手間がかかるという問題がある。
【0011】
先行文献3では、沈殿槽に堆積したドロス(ボトムドロス)の巻き上げ防止効果は期待できるものの、めっき浴槽の側壁上端がめっき浴面より高く配設されているため、側壁部分の浴面での流れが強くなり、トップドロス(浴面上に浮遊するドロス)を多量に発生させると共に、トップドロスの除去を簡易にかつ確実に行えないという大きな問題がある。またポンプを使用していないものの、その流れの駆動力を鋼板の通板により確保しているため、鋼板の通板速度が変わると、進入板温度の変化やめっき浴中のアルミ濃度に鋼板表裏で差がでるため、これによってドロスの発生が増加するという問題がある。さらに円弧状曲線を有するめっき槽に対面する側の面のドロスは低減するが、円弧状曲線を有するめっき槽側とは反対の面に存在するドロスを十分排除できないため、品質改善効果には限界がある。
【0012】
いずれにしても、これら従来技術の多くは、鋼板の表裏に存在するドロスを、ポンプなどの駆動装置を用いることなく、適切に系外に排出することができていないため、抜本的にドロスの低減を行なうには限界がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、連続的に走行する鋼板に溶融亜鉛を主成分とする金属めっきを施す際に、溶融亜鉛中に発生するドロスを溶融亜鉛めっき槽底部に速やかに沈降分離させて、めっき浴を清浄化し、清浄なめっき浴でめっきすることにより、品質欠陥のない高品質溶融亜鉛系鋼板の製造に好適なめっき方法及び装置を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の手段は次の通りである。
(1)めっき槽内で鋼板を巻掛けて案内するシンクロールの前方、後方、側方および下方を覆うように構成されためっき容器を該めっき槽の浴面下に配設して、該めっき槽を鋼板にめっきするめっき部分と、めっき浴中のドロスを沈降させるドロス沈降部分に分割し、該めっき容器底部を該シンクロール下方部分で最低にするとともに、該めっき容器底部と鋼板に挟まれる領域では、該シンクロール下方部分でめっき浴の流速を最大にすることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法。
【0015】
(2)めっき部分からドロス沈降部分へのめっき浴の排出を、該めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁と該サポートロールの間の領域から行うことを特徴とする前記(1)に記載の溶融亜鉛めっき方法。
【0016】
(3)めっき槽内の浴面下に、鋼板を巻掛けて案内するシンクロールの前方、後方、側方及び下方を覆うように構成されためっき容器を配設したことを特徴とする溶融めっき装置。
【0017】
(4)めっき容器の底部がシンクロール下方部分で最も低くなるように配設され、また、該めっき容器の鋼板に対面する側壁及び底部と鋼板との間隔が該シンクロール下方部分で最小になるように配設されていることを特徴とする前記(3)に記載の溶融めっき装置。
【0018】
(5)めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁上端が、シンクロール軸心より高くかつ該シンクロールから離反した鋼板を案内するサポートロール下端より低く配設されていることを特徴とする前記(3)または(4)に記載の溶融めっき装置。
【0019】
(6)めっき容器のシンクロール胴長方向に対面する側壁上端が、シンクロール軸心より高く配設されていることを特徴とする前記(3)〜(5)のいずれかに記載の溶融めっき装置。
【0020】
(7)めっき容器のめっき浴に進入する鋼板に対面する側壁上端が、該めっき容器のシンクロール胴長方向に対面する側壁上端、および、該めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁上端より高く配設されていることを特徴とする前記(3)〜(6)のいずれかに記載の溶融めっき装置。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、発明に至った経緯と共に説明する。
本発明者等は、通常の操業に使用している溶融亜鉛めっき槽(以下、ポット)における溶融亜鉛の流れ、およびドロスの発生メカニズムとドロスのポット内での挙動を調査した。その結果、確認できたことについて説明する。
【0022】
図1は、ポット内における溶融亜鉛流れを説明するめっき装置の概略平面図、図2は、ポット内で鋼板走行により生じる溶融亜鉛の随伴流れ、シンクロール胴長方向に流れる吐き出し流れを説明するポット内の斜視透視図である。図1および図2において、21は溶融亜鉛を主成分とする溶融金属(めっき浴)22を保持するポット、23は鋼板Sを巻掛けて案内するシンクロール、24、25は溶融金属22(めっき浴)の温度を所要温度に加熱保持する誘導加熱装置、26は鋼板に付着してポット21から持ち出される溶融金属22を補給するインゴット(固相亜鉛)投入部である。
【0023】
図中、鋼板Sは矢印Aの方向に走行し、シンクロール23に案内されて方向転換し、上方に走行してめっき浴22から引き上げられる。この際、溶融亜鉛流れがポット21内で発生する。
【0024】
ポット21内の溶融亜鉛流れの駆動力になっているのは、▲1▼ポット内を走行する鋼板により生じる溶融亜鉛の随拌流れ、▲2▼鋼板とシンクロールの接触部分で行き場所の無くなった随伴流がシンクロール胴長方向に流れる吐き出し流れ、▲3▼溶融亜鉛を保熱あるいは加熱するための誘導加熱装置での電磁気力による流れ、▲4▼固相亜鉛を供給するインゴット投入部付近で生じる溶融亜鉛の温度不均一による自然対流による流れ、に大別できる。▲1▼〜▲4▼に対応する流れの方向を、図1及び図2中に、各々▲1▼〜▲4▼で示す。なお、図1中、「○」内に「×」表示の記号は、流れの方向が下方に向かう流れ、「○」内に「・」表示の記号は上方に向かう流れを示している。
【0025】
先行文献には、ポット内の溶融亜鉛流れの駆動力になっているのは、▲1▼の流れが主体的である旨記述されているが、本発明者等の調査によると、▲1▼の流れと同等に▲2▼〜▲4▼の流れが重要であることが、ドロスの沈降分布のデータから明らかになった。
【0026】
ポット21では、鋼板Sに随伴した▲1▼の流れによって、ドロスを含むめっき浴22は、めっき浴面近傍を経て、めっき浴22から引き上げられる鋼板Sに対面する側のポット21の側壁21f側を下降し、さらにポット21の底部に沿ってシンクロール23側に戻る(図2中、矢印bの流れ)。この流れによって、浴中のドロス27は、流速が低くなるシンクロール23近傍下部からポットの端部に集中的に沈降堆積し(図3)、また堆積したドロス27が巻き上げられる。巻き上げられたドロス27が鋼板Sに付着し、表面品質を劣化させる。
【0027】
また、これ以外に、▲2▼の流れによって、ドロスを含む流れが、シンクロール23胴長方向のポット21の側壁21s側から底部に流れる(図2中、矢印aの流れ)。この流れによって、浴中のドロスが流速の低いシンクロール23近傍下部からポット21の端部に吹き寄せられ、そこで沈降堆積し(図3)、また堆積したドロス27が巻き上げられる。▲2▼の流れによって、巻き上げられたドロス27が鋼板Sに付着し、表面品質を劣化させる。
【0028】
また▲3▼と▲4▼の流れに関しては、▲3▼の流れはポット21の側壁21s側からポット21中央に向かう流れになり、▲4▼の流れはインゴット投入部付近で下方に向かう流れになるが、これらはいずれも沈静化していたドロス27を巻き上げる流れになることが、水モデル試験のデータから明らかになった。したがって、▲3▼と▲4▼の流れも鋼板の表面品質を劣化させる流れとなる。
【0029】
また、ポット21に進入する鋼板Sに付着する鉄粉および鋼板Sが溶融亜鉛と反応して、鉄が溶出して亜鉛と金属間化合物を生成する反応がめっき初期に起きる。この金属間化合物は微細なドロスであり、これらは鋼板Sの走行と共に流されて、一旦はポット21底部に達して、底部の低温めっき浴との混合および、溶融亜鉛への鉄の溶解度や金属間化合物の組織が変化することにより、品質上有害な大きなドロスに成長する。
【0030】
前記で説明した事項を考慮して、本発明では、ポット底部に堆積したドロスを巻上げる流れを発生させないために、前記した▲1▼と▲2▼の流れとポット底部でドロスを巻き上げる流れとの縁を切り、また低速でも高速でもドロスの堆積しないめっき部分を形成するために、シンクロール23の上方以外の部分を覆うように形成した容器状のめっき容器を取り付け、ポット21を、鋼板Sにめっきするめっき部分とドロスを沈降除去するドロス沈降部分に機能分離できるようにする。
【0031】
めっき容器のシンクロール胴長方向の側壁上端が浴面近傍位置まであると、側壁に衝突しためっき浴の上昇流(図2の矢印cの流れ)によってめっき浴面が波立ち、トップドロスを増加させることになり、まためっき部分のトップドロスを簡易かつ確実に除去できなくなる。係る点を考慮して、めっき容器のシンクロール胴長方向の側壁上端位置は、めっき浴面より下に配設することが必要であり、その位置は少なくともシンクロールの軸心より下側の部分を覆うように配設するとともに、浴中に配置されるサポートロールのいずれの軸心よりも低い位置に配設することが好ましい。
【0032】
機能分離の観点からは、両部分を完全に遮断することが望ましいが、めっき容器取り付けの目的は、前記した▲1▼と▲2▼の流れの影響がポット底部に及んでドロスを巻き上げることを防ぎ、あるいはドロスを巻き上げた流れがめっき部分に直接戻ることを遮断することであるから、めっき部分からドロス沈降部分で沈降するドロスを巻き上げる程度の運動量をもった流れが流出しさえしなければ、本発明の目的が達成できることになる。したがって、両部分はめっき容器によって完全に遮断されていなくてもよい。
【0033】
本発明では、めっき部分には大径のドロスが存在しないような流れを作り出す。そのために、シンクロール周辺の溶融亜鉛を常に強攪拌させて、ドロスが問題となる大きさのドロスよりも小さいうちに鋼板に付着させ、あるいは、めっき部分のドロスが問題となる大きさのドロスになる前に系外のドロス沈降部分に排出する。
【0034】
また、本発明では、一旦めっき部分から排出されたドロスは、沈静化されたドロス沈降部分で極力沈降分離させ、品質上問題になるドロスが再びめっき部分に戻らないように、ドロス沈降部分の上澄み浴だけをめっき部分に戻すことを基本とする。
【0035】
本発明はこのような知見や考えに基づいてなされたものである。以下、本発明の実施の形態について図を用いて詳しく説明する。図4および図5は本発明の実施の形態に係る溶融亜鉛めっき装置の一例を示す図で、図4はめっき装置の要部断面図、図5は図4のA−A矢視図である。図4および図5において、1は溶融亜鉛を主成分とする溶融金属(めっき浴)2を保持する溶融亜鉛めっき槽(ポット)、3はスナウト、4はシンクロール、5および6は鋼板形状を調整するサポートロール、Sは鋼板である。ポット1内には、ポット1をめっき部分7とドロス沈降部分8に区分するめっき容器9が配設されている。また、10、11は誘導加熱装置、12はインゴット投入部である。
【0036】
めっき容器9は、シンクロール4の前方、後方、側方及び下方を覆うように、すなわちシンクロール4の上方以外の部分を覆うように、浴面下に配設されている。めっき容器9の鋼板S走行方向の断面形状は、入側側壁9bは対面する鋼板Sと平行に配設され、鋼板がシンクロール4に巻掛けられている領域では、鋼板がシンクロールに巻き付いてからシンクロール軸直下部に至る間は鋼板とめっき容器底面の間隔が漸減し、鋼板Sがシンクロール直下部を通過し、シンクロール4から離反するまでの間は鋼板Sとめっき容器9底面との距離が漸増するように滑らかな曲面形状に配設され、鋼板Sがシンクロール4から離反した後、上方外側に傾斜状に形成され、側面側壁9sはほぼ垂直に配設されている。
【0037】
めっき容器9の鋼板S走行方向の断面形状を前記のように構成することによって、めっき容器9底部と鋼板Sに挟まれる領域では、シンクロール軸直下部でめっき浴の流速が最大になり、めっき容器9内でのドロスの堆積を確実に防止できる。
【0038】
めっき浴2に進入した鋼板Sがシンクロール9に巻掛けられるまでの間、鋼板とめっき容器底面の間隔(a)は50〜700mm、シンクロール直下部分の鋼板とめっき容器の底面の間隔(b)は50〜400mmとすることが好ましい。めっき容器を前記のように配設することによって、めっき部分においてめっき浴が十分に攪拌され、まためっき容器と鋼板との接触を防止できる。
【0039】
めっき容器9は直方体状のものでも効果はあるが、流れはカドを持つ部分で淀む傾向があるために、カドを曲面状に形成することでめっき容器9内の攪拌効果はさらに良くなるので、めっき容器9の形状は曲面状に形成することがより好ましい。
【0040】
本装置では、入側側壁9bは対面する鋼板Sと平行に配設されているが、鋼板Sの走行方向に両者の距離が漸減するように配設してもよい。またシンクロール軸直下部でめっき容器9底部が最も低くなり、且つめっき浴の流速が最大になるように配設されているが、シンクロール下方部分でめっき容器9底部が最も低くなるように配設し、さらにシンクロール下方部分でめっき浴の流速が最大になるように配設しても、めっき容器9底部へのドロスの堆積を防止する効果がある。
【0041】
めっき容器9の入側側壁9bの上端は、シンクロール上端より上に配設されている。入側側壁9bの上端は、浴面からの距離(深さ;L1)を50mm以上に配設することが望ましい。
【0042】
めっき容器9の側面側壁9sの上端は、シンクロール4の軸心より上に配設され、また入側側壁9bより低く配設される。したがって、側面側壁9s上端の浴面からの距離(深さ)をL3とすると、L1<L3である。側面側壁9sの上端は、シンクロール上端より高く、かつシンクロール4から離反した鋼板Sを案内する浴中に配置されたサポートロール5、6のいずれの軸心よりも低い位置に配設することが好ましい。
【0043】
めっき容器9の出側側壁9fの上端は、シンクロール4の軸心より高くかつ浴中に配置されたサポートロール5、6のいずれのロール下端よりも低く配設され、また入側側壁9bの上端よりも低く配設されている。したがって、出側側壁9f上端の浴面からの距離(深さ)をL2とすると、L1<L2である。
【0044】
本装置では、鋼板Sに随伴する流れがサポートロール5および6の下方からドロス沈降部分8にスムーズに流れる。この流れによってめっき容器9内のドロスを含むめっき浴2がめっき浴2から引き上げられる鋼板Sに対面するめっき容器9の側壁9f上部から、ドロス沈降部分8に速やかに排出される。排出されたドロスがドロス沈降部分8の中間高さの領域に排出されることになるので、ドロスはより短時間でドロス沈降部分8の底部に沈降する。
【0045】
めっき部分7では、シンクロール4と鋼板Sの随伴流に起因する流れは、ポット底部のドロスを巻き上げる流れと縁が切れ、かつ、めっき容器9はシンクロール胴長方向にも側壁9sがあるため、鋼板Sとシンクロール4との接触部分でシンクロール胴長方向に流れた溶融亜鉛流れもポット1底部に届かなくなる。
【0046】
またこの流れはめっき容器9の側壁9sに衝突して、めっき容器9内の底部に向かう流れと、上昇する流れに分かれる。めっき容器9の底部に向かう流れはこのめっき容器9内のめっき浴2を十分混合させる効果を発揮することにより、強攪拌でドロスの堆積を防げる。また上昇した流れは側面から流入するめっき浴2と混合することにより温度の均一化、めっき浴2の均一化を促進するが、めっき浴面を波立たせてトップドロスを発生させることがない。
【0047】
また、この流れはポット1底部のドロスを巻上げる駆動力にはならないため、ポット1底部では沈静化してドロスを十分に沈降分離することが可能になる。品質上有害な大径のドロスを確実に沈降分離させる観点から、ドロス沈降部分8におけるめっき浴2の滞留時間は1時間以上とすることが望ましい。
【0048】
ドロス沈降部分8からめっき部分7へ戻るめっき浴2は、めっき浴2に進入する鋼板Sに対面するめっき容器側壁9bの上部よりもシンクロール胴長方向のめっき容器側壁9S上部からより多く戻るようになる。この戻りの流れはシンクロール上部の流れを活性化させてめっき部分7の温度・めっき成分の濃度を均一化させると共に発生したドロスをドロス沈降部分8に積極的に排出できる方向に寄与する。
【0049】
めっき容器9の下部には、めっき容器9をポット1の底部から支持する脚13が2箇所に取り付けられている。脚13は円筒部材(パイプ)で構成されており、めっき容器9の脚13の取り付け部内側に開口部14が形成されている。
【0050】
めっき容器9の底部に開口部14が形成されているため、めっき容器9を沈める場合にはこのパイプからめっき浴2が流れ込むため、ポット1にめっき浴2が入ったままの状態で、容易にめっき容器9をポット1に沈めることが出来る。まためっき容器9を引上げる時は、このパイプからめっき容器9内のめっき浴2が排出されるので、めっき容器9内にめっき浴2が入ったままの状態で、容易にポット1からめっき容器9を引上げることができる。また操業中は脚13がポット底部に接しているため、めっき部分7のめっき浴2がポット(ドロス沈降部分8)底部のめっき浴2と混合することは無い。
【0051】
誘導加熱装置10、11、インゴット投入部12は、めっき容器9を挟んで、めっき部分7からドロス沈降部分8へめっき浴2が流れ出る部分とは反対側のドロス沈降部分8に配設されている。両者の配設部は、めっき部分7からめっき浴2が流れ出るめっき容器9の出面側壁9f、ドロス沈降部分8のめっき浴2がめっき部分7に戻るめっき容器9の側面側壁9s、および両者の間を流れるめっき浴2の流路から離れているため、誘導加熱装置10,11およびインゴット投入部12で発生した流れによって、ドロス沈降部分8に堆積したドロスが巻き上げられても、これがめっき部分7に持ち込まれるおそれがない。
【0052】
本装置において、鋼板Sはスナウト3から矢印の方向に進入し、シンクロール4で方向転換し、めっき部分7から引出され、気体絞りノズル15でめっき付着量を調整する。その際、鋼板走行方向にオフセットしたサポートロール5と6をパスライン方向に所要量押し込み、鋼板Sの形状を調整する。
【0053】
また、めっき部分7のめっき浴2は、めっき容器9の出側側壁9fの上部からドロス沈降部分8に流れ、ドロス沈降部分8でめっき浴中に含まれるドロスが沈降除去される。ドロスが除去されて清浄化されためっき浴2は、めっき容器9の側面側壁9sの上部からめっき部分に戻る。鋼板の表面品質に悪影響を与えるドロスを確実に沈降除去するために、ドロス沈降部分におけるめっき浴2の滞留時間は1時間以上にすることが望ましい。
【0054】
めっき部分7では、めっき浴2が十分に攪拌されるので、ドロスが沈降して堆積することがない。またドロス沈降部分8から戻るめっき浴2も清浄なので、めっきされる鋼板に、品質上問題になるドロスが付着することがなくなる。
【0055】
【実施例】
図4及び図5に示した装置において、浴面下に配設しためっき容器9の入側側壁9bの上端は、シンクロール上端より上で浴面からの距離(L1)は100mm、出側側壁9f上端および側面側壁9s上端はシンクロール上端位置に設定した(シンクロール上端と浴面の距離=625mm)。入側側壁9bと鋼板Sの間隔を400mm、シンクロール直下における鋼板Sとシンクロール4の間隔を250mmに設定した。
【0056】
本装置を用いて、めっき槽内に堆積したドロスを槽外に取り出した後、種々のライン速度で溶融亜鉛めっき鋼板を製造し、製造開始後2週間後におけるおけるめっき槽各部におけるドロス堆積状況及びめっき鋼板表面のドロス欠陥の発生状況を調査した。調査結果を図6及び図7に示す。比較のため、図6及び図7には、めっき槽内にめっき部分とドロス沈降部分に分割するめっき容器9を設けない装置を用い(従来法)、本発明法と同様、めっき槽内に堆積したドロスを槽外に取り出した後、製造開始後2週間経過後におけるめっき槽各部におけるドロス堆積状況及びめっき鋼板表面のドロス欠陥の発生状況を記載した。
【0057】
めっき鋼板表面のドロス欠陥の程度は、めっき鋼板表面のドロスの大きさと個数を調査し、面積400mm×400mmあたりの個数に換算した。大きさは、100μm以下をA級ドロス、100μm越え200μm以下をB級ドロスとした。高品質溶融亜鉛系めっき鋼板として要求されるドロス欠陥の程度は、A級とB級を合わせたドロス個数が5個以下である。
【0058】
2週間経過後に調査したドロス堆積量は、従来法では1.1ton/日である。これに対して、本発明法では、ドロス沈降部分のドロス堆積量は0.9ton/日、めっき容器内では0.01ton/日である。すなわち、本発明法では、鋼板にめっきを行うめっき容器内におけるドロスの堆積は極めて少ないだけでなく、めっき槽におけるドロス堆積量も従来法に比較して減少している。
【0059】
従来法では、2週間経過後には、ライン速度が低速の70〜80mpmの場合でも、ドロス欠陥は、高品質溶融亜鉛めっき鋼板として必要な要求品質を満足できる範囲内とすることができず、ライン速度をより高速化して100mpm以上にすると、ドロス個数が著しく増加し、高品質溶融亜鉛めっき鋼板に要求される品質を著しく逸脱したものになった。これは、めっき槽に堆積したドロスが巻き上げられ鋼板に付着したためである。
【0060】
一方、本発明法では、ライン速度を従来法に比較して著しく高速の140〜160mpmにした場合でも、ドロス欠陥の程度は、高品質溶融亜鉛めっき鋼板としての要求品質を満足できる範囲内であった。これは、本発明法では、めっき槽内に設けためっき容器によって、めっき部分とドロス沈降部分が確実に機能分離され、めっき部分では、めっき浴が十分に攪拌されるためドロスが沈降して堆積することがなく、まためっき部分で発生したドロスがドロス沈降部分で確実に沈降分離され、沈降分離されたドロスが浮上して再びめっき部分に持ち込まれることを確実に防止できるので、ドロス沈降部分からめっき部分に戻るめっき浴が清浄であり、めっきされる鋼板に、品質上問題になるドロスが付着することがなくなるためである。
【0061】
【発明の効果】
本発明では、めっき槽を、鋼板にめっきするめっき部分と、めっき浴中のドロスを沈降させるドロス沈降部分に分割し、めっき浴をめっき部分とドロス沈降部分の間を循環することによって、従来のライン速度を大幅に増速させても、鋼板のドロス付着を確実に防止できる。また、本発明では、浴面に浮遊するトップドロスを簡易にかつ確実に除去できる。
【0062】
本発明は、ドロス付着のない高品質溶融亜鉛系めっき鋼板を高能率で製造する方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポット内における溶融亜鉛流れを説明するめっき装置の概略平面図。
【図2】ポット内で鋼板走行により生じる溶融亜鉛の随伴流れ、シンクロール胴長方向に流れる吐き出し流れを説明するポット内の斜視透視図。
【図3】図1のめっき装置において、ポット内に堆積するドロスの状態を説明する図で、(a)は断面図、(b)は(a)のA−A矢視図。
【図4】本発明の実施に使用するめっき装置の一例を示す要部断面図。
【図5】図4のめっき装置のA−A矢視図。
【図6】本発明法と従来法のドロス堆積状況を示す図。
【図7】本発明法と従来法のドロス欠陥発生状況を示す図。
【符号の説明】
1 溶融亜鉛めっき槽(ポット)
2 溶融金属(めっき浴)
3 スナウト
4 シンクロール
5、6 サポートロール
7 めっき部分
8 ドロス沈降部分
9 めっき容器
10、11 誘導加熱装置
12 インゴット投入部
13 脚(パイプ)
14 開口部
15 気体絞りノズル
21 溶融亜鉛めっき槽(ポット)
22 溶融金属(めっき浴)
23 シンクロール
24、25 誘導加熱装置
26 インゴット(固相亜鉛)投入部
27 ドロス(ボトムドロス)
S 鋼板

Claims (8)

  1. めっき槽内で鋼板を巻掛けて案内するシンクロールの前方、後方、側方および下方を覆うように構成されためっき容器を該めっき槽の浴面下に配設して、該めっき槽を鋼板にめっきするめっき部分と、めっき浴中のドロスを沈降させるドロス沈降部分に分割し、該めっき容器底部を該シンクロール下方部分で最低にするとともに、該めっき容器底部と鋼板に挟まれる領域では、該シンクロール下方部分でめっき浴の流速を最大にすることを特徴とする溶融亜鉛めっき方法。
  2. めっき部分からドロス沈降部分へのめっき浴の排出を、該めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁と該サポートロールの間の領域から行うことを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき方法。
  3. めっき槽内の浴面下に、鋼板を巻掛けて案内するシンクロールの前方、後方、側方及び下方を覆うように構成されためっき容器が配設され、該めっき容器の底部がシンクロール下方部分で最も低くなるように配設され、また、該めっき容器の鋼板に対面する側壁及び底部と鋼板との間隔が該シンクロール下方部分で最小になるように配設されていることを特徴とする溶融めっき装置。
  4. めっき槽内の浴面下に、鋼板を巻掛けて案内するシンクロールの前方、後方、側方及び下方を覆うように構成されためっき容器が配設され、該めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁上端が、シンクロール軸心より高くかつ該シンクロールから離反した鋼板を案内するサポートロール下端より低く配設されていることを特徴とする溶融めっき装置。
  5. めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁上端が、シンクロール軸心より高くかつ該シンクロールから離反した鋼板を案内するサポートロール下端より低く配設されていることを特徴とする請求項に記載の溶融めっき装置。
  6. めっき槽内の浴面下に、鋼板を巻掛けて案内するシンクロールの前方、後方、側方及び下方を覆うように構成されためっき容器が配設され、該めっき容器のシンクロール胴長方向に対面する側壁上端が、シンクロール軸心より高く配設されていることを特徴とする溶融めっき装置。
  7. めっき容器のシンクロール胴長方向に対面する側壁上端が、シンクロール軸心より高く配設されていることを特徴とする請求項3〜のいずれかに記載の溶融めっき装置。
  8. めっき容器のめっき浴に進入する鋼板に対面する側壁上端が、該めっき容器のシンクロール胴長方向に対面する側壁上端、および、該めっき容器のめっき浴から引き上げられる鋼板に対面する側壁上端より高く配設されていることを特徴とする請求項3〜のいずれかに記載の溶融めっき装置。
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