JP4631414B2 - 耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管 - Google Patents

耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管

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Description

本発明は、耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管に関し、詳しくは、鋼板からなる母材をUOE造管工程により管状に成形し、その母材が当接するシーム部を内外面1層盛りの大入熱SAW(submerged arc welding:サブマージドアーク溶接)にて接合して製造された鋼管であって、その接合されたシーム部の溶接金属すなわちシーム溶接金属が高靭性を示すとともに、パイプラインとして接合する場所で円周溶接により継ぎ合わせるとき、鋼管の一方と他方とでシーム部がずれてT字形の継ぎ目が形成される部位であるT-クロス部が、前記円周溶接による熱サイクルを受けても硬度が上昇しにくい、耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管に関する。
近年の海底パイプラインに用いる鋼管は、石油・ガス開発の深海化、特に水深2000mを超える海域への敷設を反映して厚肉、高靭性が要求される。さらに、輸送流体が高濃度のHS(硫化水素)を含むサワー性のものである場合、耐HIC(hydrogen induced cracking:水素誘起割れ)特性、さらに耐SSC(sulfide stress corrosion cracking:硫化物応力腐食割れ)特性といった耐サワー特性が要求される。海底パイプラインに用いる鋼管の円周溶接には、通常、高能率GMAW(gas metal arc welding:ガスメタルアーク溶接)が用いられるが、能率向上のため予熱なしで施工される。よって、円周溶接によるHAZ(heat affected zone:熱影響部)は急熱、急冷の熱履歴が与えられ、特にT-クロス部での硬度上昇が著しい。SSCはHS環境下での腐食反応により鋼中に導入された水素が鋼の硬化部に集中する現象に起因した割れであり、耐SCC特性の条件として敷設後の鋼管の全ての部位においてHv(ヴィッカース硬度)248以下と規定するのが通例である。実質的には敷設後の鋼管の全ての部位において最も硬化する部位はT-クロス部であるので、この部位での最高硬度をHv248以下とするのが課題となる。
ここでパイプライン上のT-クロス部13について図4を用いて説明しておく。図4は2つの溶接鋼管11を円周溶接して接合した部分の状況の見取図である。円周溶接による接合部はガスメタルアーク溶接ビード6を形成している。一方、各溶接鋼管11はシーム部12を有しているため、ガスメタルアーク溶接ビード6とシーム部12はアルファベットのTに例えられる形状に会合する。この会合部分をT-クロス部13と呼ぶ。
一般にT-クロス部の硬度を低くするためには、円周溶接時にT-クロス部を含む溶接部の冷却速度を低くする、あるいはシーム溶接金属の焼入れ性を低減し高硬度のマルテンサイト(Martensite:以降Mと記すこともある。)組織の生成を抑止する方法が考えられる。溶接部の冷却速度を制御する方法としては、予熱・後熱処理、パス間温度制限などがあるが、高能率が要求される円周溶接工程においてこれらの工程、条件の追加は時間、コスト面において有益といえず実践的でない。
一方、シーム溶接金属の靭性を確保するために最も効果的な方法としては、Mo、Ti、Bを溶接材料より添加し、溶接金属の組織をアシキュラーフェライト(Acicular ferrite:以降、AFと記すこともある。)と呼ばれる微細な組織にする方法が知られている。Tiは酸窒化物系介在物となり、AF変態の核生成サイトとして作用し、Bはフェライト変態前のオーステナイトの結晶粒界に偏析し、粒界の初析フェライトの粗大化を抑制する。大入熱となる内外面1層盛りによるシーム溶接においては、Ti、B添加のみでは粒界に粗大な初析フェライトが生成するのを完全には防止できないので、焼入れ性を高める元素であるMoを添加し、組織の均一微細化をはかる必要がある。(特許文献1,2,3)。
また、内外面1層盛りの大入熱SAWによる溶接鋼管の製造方法では、例えば内面から先に施工される溶接金属が、反対面例えば外面に施工される後行の溶接により再び加熱される(再熱される)。このとき再熱された溶接金属は部分的に脆化を引き起こすことが知られている。
特開平5−375号公報 特開平9−1344号公報 特公平6−98500号公報
特に2000mを超える深海ラインパイプへの使用を目的とした、母材の厚さ25mmを超える厚肉鋼管では、シーム溶接の入熱を従来よりも増大させる必要があり、前述のように後行の溶接による先行の溶接金属の再熱領域は増大を免れない。すなわち、シーム溶接金属に対し、シャルピー衝撃試験結果の吸収エネルギー(以降、vEと記すこともある。)、延性破面率(以降、SAと記すこともある。)の両方で良好な特性を持たせるのはさらに困難である。
さらに、耐サワー特性を要求される鋼管はSSCを回避するために、T-クロス部の硬度をHv248以下とする必要がある。
本発明は、上述の問題に鑑み、内外面1層盛り溶接により製造される、母材の厚さ25〜35mmの溶接鋼管において、シーム溶接金属の高靭性化と、鋼管同士を接合して形成されるT-クロス部における低硬度とを両立させた耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管を提供することを目的とする。
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行い、以下のような知見を得た。
1)Mo、Bの低減は、シーム溶接金属の高靭性化およびT-クロス部における低硬度獲得に有効である。
2)加えて、次式で定義されるパラメータPsscを用いると、Psscの下限規定によりシーム溶接金属における高靭性獲得のための十分な焼入れ性を確保することができ、しかもPsscの上限規定によりT-クロス部における低硬度を確保することができる。
Pssc=C+Si/15+(Mn+Cu+Cr)/10+Ni/30+Mo/2+V/5+20×B−12×N−4×O
ただし、式中右辺の元素記号は溶接金属中でのその元素の含有量(質量%)を表す。なお、PsscのPはparameterの頭文字であり、添字のsscは前記した耐SSC特性を評価する意味から付けたものである。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであって、その要旨は以下の通りである。
すなわち本発明は、厚さ25〜35mmの鋼板からなる母材を管状に成形後そのシーム部を内外面1層盛り溶接してなる溶接鋼管であって、前記母材が、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.5%、P:0.010%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、Cu:0.10〜0.70%、Ni:0.05〜1.00%、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:0.001〜0.005%、O:0.005%以下、N:0.005%以下、Cr:0.60%以下、Mo:0.10%以下、V:0.08%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
シーム溶接金属が、質量%で、C:0.030〜0.060%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.24〜0.50%、Cr:0.01〜0.50%、Ni:0.21〜0.50%、Nb:0.014〜0.07%、V:0.001〜0.07%、Mo:0.060〜0.12%、Ti:0.010〜0.03%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.008%以下、O:0.035%以下を含み、かつ〔数1〕式で定義されるPsscが0.140〜0.160%であり、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管である。
〔数1〕
Pssc=C+Si/15+(Mn+Cu+Cr)/10+Ni/30+Mo/2+V/5+20×B−12×N−4×O
ただし、式中右辺の元素記号は溶接金属中でのその元素の含有量(質量%)を表す。
本発明によれば、母材の組成および内外面1層盛り溶接により形成されるシーム溶接金属の組成を最適化することができるので、シーム溶接金属の高靭性化とT-クロス部の低硬度とが両立した、優れた低温靭性を有する厚肉の低温用高靭性溶接鋼管が得られる。
まず、母材の組成を前記本発明の範囲に限定した理由を述べる。なお、本発明では、組成の成分含有量の単位を質量%とし、%と略記する。
C:Cは、母材の強度と靭性に大きな影響を及ぼす元素であるが、0.01%未満では強度が不足し、一方、0.06%超では靭性に悪影響を及ぼすため、0.01〜0.06%とした。
Si:Siは、鋼の脱酸過程で必然的に含まれる元素であるが、0.5%超ではHAZの靭性を劣化させるため、0.5%以下とした。なお、脱酸を十分に行うには、0.1%以上とすることが好ましい。
Mn:Mnは、母材の強度と靭性を同時に向上させる極めて重要な元素であるが、0.8%未満ではその効果に乏しく、一方、1.5%超では後述するP、Sの中心偏析等により靭性等に悪影響を及ぼすため、0.8〜1.5%とした。
P、S:P、Sは中心偏析を助長する元素であり、低いことが望ましく、Pは0.010%以下、Sは0.01%以下とした。
Al:Alは、後記するTiと同様に鋼の脱酸過程で必然的に含まれる元素であるが、0.01%未満ではその効果に乏しく、一方、0.10%超ではAl系非金属介在物を増加させ、靭性を低下させるため、0.01〜0.10%とした。
Cu:Cuは、母材の強度を確保するために必要な元素であるが、0.10%未満ではその効果に乏しく、一方、0.70%を超えると母材およびHAZの靭性を低下させるため、0.10〜0.70%とした。
Ni:Niは、母材の強度と靭性を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果に乏しく、一方、1.00%を超えるとHAZが硬化するため、0.05〜1.00%とした。
Nb:Nbは、母材およびHAZの強度と靭性を確保するために添加されるが、0.01%未満ではその効果に乏しく、一方、0.08%を超えると靭性に悪影響を及ぼすため、0.01〜0.08%とした。
Ti:Tiは、母材の靭性確保に必要な元素であるが、0.005%未満ではその効果に乏しく、一方、0.05%を超えると母材の靭性を劣化させるため、0.005〜0.05%とした。
Ca:Caは、脱酸剤であるが、0.001%未満ではその効果に乏しく、一方、0.005%超では靭性を低下させるため、0.001〜0.005%とした。
O:Oは、不可避的に混入する元素であり、低いことが望ましいが、特に、0.005%を超えると靭性を低下させるため、0.005%以下とした。
N:Nは、Oと同様に不可避的に混入する元素であり、低いことが望ましいが、特に、0.005%を超えると靭性を低下させるため、0.005%以下とした。
本発明ではさらに、必要に応じて母材組成に次の元素を追加してもよい。
Cr:Crは、母材の強度を高めるために、必要に応じて添加しうるが、0.60%を超えるとHAZの靭性を劣化させるため、0.60%以下が好ましい。より好ましくは0.10〜0.60%である。
Mo:Moは、母材の強度を高めるために、必要に応じて添加しうるが、0.10%を超えるとHAZが硬化するため、0.10%以下が好ましい。より好ましくは0.01〜0.10%である。
V:Vは、母材およびHAZの強度と靭性を向上させるために、必要に応じて添加しうるが、0.08%を超えると靭性に悪影響を及ぼすため、0.08%以下が好ましい。より好ましくは0.01〜0.08%である。
なお、本発明では、水素誘起割れ防止の観点から、母材中のCa、S、Oの含有量は、次の〔数2〕式で定義されるCa当量が1.0〜3.0%になる範囲内とすることが好ましい。Ca当量が1.0%未満では水素誘起割れ防止が不十分となり、一方、3.0%超では靭性を低下させる。
〔数2〕
Ca当量={Ca−(0.18+130×Ca)×O}/(125×S)
ただし、式中右辺の元素記号は母材中のその元素の含有量(質量%)を表す。
次に、シーム溶接金属の組成を前記本発明の範囲に限定した理由を述べる。溶接金属の組成は一部を除き、焼入れ熱処理による強度および靭性の上昇効果を目的に構成されている。以下では、上記効果を奏せしめる性質を「焼入れ性」と称する。
C:Cは焼入れ性を大きく高める成分であるが、0.030%未満では強度が不足し、一方、0.060%超では炭化物やマルテンサイトが生成しやすくなり、靭性が低下するとともにT-クロス部の硬度を上昇させるため、0.030〜0.060%とした。
Si:Siは脱酸剤として添加されるが、焼入れ性を高める成分でもあるため過剰に添加されるとアッパーベイナイト(Upper Bainite:以降、UBと記すこともある。)と呼ばれる粗大組織が生成し、靭性を低下させるほか、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.5%以下とした。好ましくは0.1〜0.5%である。
Mn:Mnは、脱酸剤および焼入れ性を高める成分として必要であるが、0.8%未満ではその効果に乏しく、一方、1.8%を超えるとUBが生成しやすくなり、靭性を低下させるとともに、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.8〜1.8%とした。
Cu:Cuは、焼入れ性を高める成分であり、母材およびワイヤのメッキから混入する成分であるが、0.50%を超えると焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるとともに、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.50%以下とした。
Cr:Crは、焼入れ性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、0.50%を超えると焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるとともに、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.50%以下とした。
Ni:Niは、焼入れ性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、0.50%を超えると焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるとともに、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.50%以下とした。
Nb:Nbは、焼入れ性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、内面、外面とも0.07%を超えると焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるとともに、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.07%以下とした。
V:Vは、焼入れ性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、内面、外面とも0.07%を超えると焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるとともに、T-クロス部の硬度を上昇させるので、0.07%以下とした。
Mo:Moは、焼入れ性を高める成分であり、溶接金属組織を微細化し靭性を向上させるが、0.12%超では、溶接金属再熱部を脆化させ、特に、T-クロス部の硬度を著しく上昇させるので、0.12%以下とした。
Ti:Tiは、微細なフェライトを形成させて靭性を向上させるが、0.010%未満ではこの効果に乏しく、一方、0.03%超では固溶Tiの増加により焼入れ性が過剰に上昇してT-クロス部の硬化を招くので、0.010〜0.03%とした。
B:Bは、焼入れ性を大きく高める成分であり、Tiとの相乗効果によって微細なAFを形成させ靭性を向上させるが、0.0005%未満ではこの効果に乏しく、一方、0.0015%を超えるとT-クロス部の硬度を著しく上昇させるので、0.0005〜0.0015%とした。
N:Nは、溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、0.008%を超えると介在物を増加させ、さらにBと結合して粒界での初析フェライトの生成を促進し、靭性を低下させるので、0.008%以下とした。
O:Oは、溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、0.035%を超えると介在物を増加させ、さらにBと結合して粒界での初析フェライトの生成を促進し、靭性を低下させるので、0.035%以下とした。
Pssc:Psscは、溶接金属の焼入れ性を示す指標として発明者が導入したパラメータであり、Psscが大きいことは、焼入れ性が高いことを示す。Psscは前記した焼入れ性を高める元素の含有量を、焼入れ性に与える影響の大きい元素であるCに等価な含有量に換算してC含有量に合算したものである。具体的には〔数1〕式で表現され、各元素に乗じる係数は、焼入れ性に与える影響の大きさを示す。なお、Bの焼入れ性を低めるN、Oには負の係数を乗じる。シーム溶接金属において、Psscが0.140%未満では、焼入れ性が不足し、初析フェライトが生成して靭性が劣化する。一方、Psscが0.160%超では、UB、M組織を生成しやすくなり、再熱部の脆化を助長してT-クロス部の硬度を上昇させる。よって、Psscは、0.140〜0.160%の範囲に制限した。
本発明の溶接鋼管を製造するには、本発明の母材組成に一致する厚さ25〜35mmの鋼板を、例えばUOE造管工程等の冷間加工により管状に成形し、該成形した管のシーム部に、高塩基性溶融型フラックスおよび低炭素Mo-Ti-B系溶接ワイヤを用いて、内外面1層盛りのSAW施工をする方法が好ましく用いうる。高塩基性溶融型フラックスおよび低炭素Mo-Ti-B系溶接ワイヤを用いることで、溶接金属の組成を容易に本発明の溶接金属組成に一致させることができる。
表1に示す組成および厚さの鋼板PA、PB、PCを母材として、UOE造管工程により、4電極法でアークを発生させて内外面1層盛りのSAWにてシーム溶接し、本発明の実施例、および本発明を逸脱する比較例に相当するAPI規格X65クラスのUOE鋼管を製造した。このとき、溶接条件は表2に示す通り一定とし、開先形状も図1に示す通り一定とし、溶接材料に用いた高塩基性溶融型フラックスと低炭素Mo-Ti-B系溶接ワイヤとの組み合わせを種々変えることにより実施例および比較例を製造し分けた。実施例および比較例のシーム溶接金属の組成を表3に示す。また、実施例、比較例について後述の方法でT-クロス部を形成した。
実施例および比較例について、以下の要領でシーム溶接金属の靭性とT-クロス部の最高硬度を調査した。
(シーム溶接金属の靭性:)溶接終了後10mm×10mmサイズのシャルピー衝撃試験片3を溶接継手の外面(図2(a))、内面(図2(b))、ルート(図2(c))の3つの位置よりそれぞれ採取し、JIS Z2242に従いシャルピー衝撃試験を行う。試料採取位置は、外面は外表面から2mmの位置、内面は内表面から2mmの位置、ルートは外面と内面の溶接金属の溶融線が交わる2点(会合部)を通過する線が試験片中心線となる位置である。試験片の採取位置を図2に断面図で示す。
(T-クロス部の最高硬度:)円周溶接の模擬として、鋼管の外表面に、外面側シーム部長手方向と直交するように、CO2シールドガスを用いて入熱10.0kJ/cmでガスメタルアーク溶接ビードを形成し、T-クロス部を作製した。このガスメタルアーク溶接により再熱されたシーム溶接金属(外面溶接金属)2を硬さ試験箇所とするため、ガスメタルアーク溶接の溶接方向に垂直なT-クロス部の断面を露出させ、ガスメタルアーク溶接ビード6の溶融線7から圧痕8までの距離aが圧痕8の対角線の長さd以内の位置で、JIS Z3101に従い荷重98Nでヴィッカース硬度試験を行い、これをT-クロス部の最高硬度とする。試験箇所の概要を図3に示す。なお、ガスメタルアーク溶接に先立ち、シーム部の外面溶接金属を鋼管の外表面と平滑になるように研削した。
これらの調査結果を表4に示す。表3と表4を対比すると、比較例1、2、3では、Mo、Psscが本発明範囲より過多であり、T-クロス部の最高高度がHv248以下にならなかった。中でも比較例3では、Mo、Psscが特に過多であるため、内面、ルート位置など再熱部を含む位置でのシャルピー衝撃値が低下した。また、比較例4については、Psscが本発明範囲より過少なため、シャルピー衝撃値が著しく低下した。これに対し、実施例1、2、3、4においては、T-クロス部の最高硬度がHv248以下を達成し、かつ、シャルピー衝撃値は吸収エネルギー171.5J以上かつ延性破面率86.7%以上を達成した。
本発明は、2000mを超える深海ラインパイプに利用することができる。
実施例における開先形状を示す断面図である。 シーム溶接金属の靭性調査に用いる試験片採取位置を示す断面図である。 T-クロス部の最高硬度調査に用いる試験片採取位置を示す断面図である。 2つの溶接鋼管を円周溶接して接合した部分の状況の見取図である。
符号の説明
1 内面溶接金属
2 外面溶接金属
3 シャルピー衝撃試験片
4 ノッチ
5 鋼管の外表面
6 ガスメタルアーク溶接ビード
7 溶融線
8 圧痕
10 母材

Claims (1)

  1. 厚さ25〜35mmの鋼板からなる母材を管状に成形後そのシーム部を内外面1層盛り溶接してなる溶接鋼管であって、前記母材が、質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.5%、P:0.010%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、Cu:0.10〜0.70%、Ni:0.05〜1.00%、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.005〜0.05%、Ca:0.001〜0.005%、O:0.005%以下、N:0.005%以下、Cr:0.60%以下、Mo:0.10%以下、V:0.08%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    シーム溶接金属が、質量%で、C:0.030〜0.060%、Si:0.5%以下、Mn:0.8〜1.8%、Cu:0.24〜0.50%、Cr:0.01〜0.50%、Ni:0.21〜0.50%、Nb:0.014〜0.07%、V:0.001〜0.07%、Mo:0.060〜0.12%、Ti:0.010〜0.03%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.008%以下、O:0.035%以下を含み、かつ〔数1〕式で定義されるPsscが0.140〜0.160%であり、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする耐サワー特性に優れた高靭性厚肉溶接鋼管。
    〔数1〕
    Pssc=C+Si/15+(Mn+Cu+Cr)/10+Ni/30+Mo/2+V/5+20×B−12×N−4×O
    ただし、式中右辺の元素記号は溶接金属中でのその元素の含有量(質量%)を表す。
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