JP4396303B2 - 低温靭性に優れた高強度溶接鋼管 - Google Patents

低温靭性に優れた高強度溶接鋼管 Download PDF

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Description

本発明は、低温靭性に優れた高強度溶接鋼管に関し、詳しくは、鋼板からなる母材を管状に成形し、その成形された管状体の継目であるシーム部を内外面1層盛りのサブマージドアーク溶接(submerged arc welding:以下、SAWとも記す。)にて接合して製造された鋼管であって、その接合されたシーム部の溶接金属が、母材と同様に、パイプライン用鋼管としての要求に応え得る高強度かつ優れた低温靭性を示し、特に、720MPa以上の引張強度を有し、−46℃以下の低温での靭性が優良である、低温靭性に優れた高強度溶接鋼管に関する。
近年、石油あるいは天然ガスを輸送するパイプラインに使用される溶接鋼管は、高強度を要求される傾向にある。これまで米国石油協会(American Petroleum Institute:以下、APIとも記す。)規格でX80級の溶接鋼管が実用化されており、将来的な需要は増加傾向にある。
かかる高強度の要求に応えるべく、例えば特許文献1では、SAWによる溶接金属において、引張強度700MPa以上を確保するために、次式(1)で定義される炭素当量であるPcmを0.20〜0.25質量%に限定している。
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B ……(1)
ただし、式中右辺の元素記号はその元素の含有量(質量%)を表す。
なお、以下では特に断らない限り%は質量%を表す。
溶接金属に限らず、鋼の引張強度を大きくするためには焼入れ熱処理が用いられる。同熱処理による強度増加は鋼の組成に敏感であり、Cの増加による鋼の高強度化が代表的である。同様の効果はSiやMnといった他の元素にも見られるので、高強度化の程度は前記Pcmのように各元素の含有量の一次式で表現される。なお、Pcmに含まれるCやSiといった元素は焼入れ熱処理による強度の増加をもたらすので、焼入れ性の高い元素と呼ばれる。
一方、Pcmを大きくすると鋼の靭性が低下するので、高強度化との両立のために鋼の金属組織を最適化する必要がある。パイプライン用のSAW溶接鋼管は同技術のもっとも発達した分野であるが、その理由は、同鋼管の使用環境が靭性確保に不利な低温を指向してきたからである。特許文献2や特許文献3は、同鋼管の部位でも靭性確保が最も困難だったSAW溶接金属の組織を制御する方法である。
具体的にはMo、Ti、Bを溶接材料より添加し、アシキュラーフェライト(Acicular Ferrite:以下、AFとも記す。)と呼ばれる微細組織を得るという方法が知られている。
Moは焼入れ性を高める元素であり、オーステナイト‐フェライト変態時にオーステナイト粒界より生成する粗大な初析フェライト(粒界フェライト(Grain Boundary Ferrite)とも通称される。以下、GBFとも記す。)の成長を抑制する効果がある。また、Tiは酸窒化物系介在物となり、AFの核生成サイトとして作用し微細なAF組織の形成を促進する。よって、Mo、Ti添加により溶接金属はAFに若干のGBFが混在する組織となるが、これにBを添加するとGBFの生成をさらに抑制し、一様なAF組織が得られる。もっとも、Bが有効にGBF生成抑制に働くためには、Bの酸化、窒化を防止することが必須であり、それにはBより酸化傾向の強いTiを相当量添加することが有効である。すなわち、Tiには、酸窒化物としてAFの核生成サイトになるとともに、Bの酸化、窒化を防止する効果がある。Mo、Ti、Bは、上記のような効果があるので、SAWによる溶接金属に低温での高靭性を付与するための成分設計に広く用いられている。
一方、内外面1層盛りのSAWによる溶接鋼管の製造方法では、例えば図2に示すように、内面から先に施工される溶接金属(内面溶接金属5)が、反対面外面に施工される後行の溶接により、再び加熱(再熱)される。この再熱された溶接金属の部分(再熱部7)は、再熱される前は上述のMo、Ti、B添加により微細なAF組織になっていても、再熱されることにより組織が島状マルテンサイト(Martensite Agglomerated:以下、M‐Aとも記す。)や上部ベイナイト(Upper Bainite:以下、UBとも記す。)に変質し、脆化してしまうことが知られている。
しかるに、靭性要求が厳格な仕様では、図3に示すように、溶接継手において3つの位置(外面位置1、内面位置2、ルート位置3)でのシャルピー衝撃値を規定するものもあり、特に内面、ルート位置では前記脆化した再熱部にノッチ10が配置されるため、良好な靭性を得ることが難しい。特許文献3では、これを克服するために内面溶接金属と外面溶接金属とで個別に組成を規制するとともに、前記式(1)で定義されるPcmを、内面側では0.110〜0.170%、外面側では0.140〜0.200%に規制することにより、溶接金属の高靭性を確保している。
特開平9−49055号公報 特開平5−375号公報 特開平9−1344号公報
しかしながら、寒冷地に敷設されるパイプラインを想定した−46℃以下の低温において要求される高靭性を有するX80級の溶接鋼管を、内外面1層盛りのSAWにより製造して提供することは、上記従来の技術では困難である。
というのは、内外面1層盛りのSAWによる溶接鋼管では、シーム部を起点に破壊が優先的に進展することを回避するために、溶接金属の強度が母材強度に比較して高いという特性いわゆるオーバーマッチ特性を確保することが要求され、それを安定的に達成するには、溶接金属の強度は母材強度のばらつき範囲の上限に比較しても高くする必要がある。API規格によると、X80級鋼管の母材引張強度の下限は620MPaであるが、製造時に100MPa程度のばらつきがあることを考慮すると、安定的にオーバーマッチ特性を確保するためには、溶接金属の引張強度は720MPa以上が必要であると考えられる。例えば図1に示すような、SAWによる溶接金属についてのPcmと引張強度の相関関係に照らせば、引張強度720MPa以上を満足するためには、Pcmは0.195%以上とする必要がある。これは、特許文献1で引張強度700MPa以上の溶接金属とするためにPcmを0.20〜0.25%に限定していることと略整合している。
しかしながら、一方、溶接金属の高靭性を確保するには、特許文献3によると、内面溶接金属のPcmを0.110〜0.170%とし、かつ外面溶接金属のPcmを0.140〜0.200%とする必要がある。
すなわち、従来の技術では、内外面1層盛りの溶接により製造したX80級溶接鋼管でオーバーマッチ特性を安定して達成できるPcmの範囲と、溶接金属の高靭性を達成できるPcmの範囲とが両立しないため、寒冷地に敷設されるパイプラインを想定した−46℃以下の低温において要求される高靭性を有するX80級の溶接鋼管を、内外面1層盛りのSAWにより製造して提供することは困難なのである。
本発明は、上述の問題に鑑み、内外面1層盛りの溶接により製造される溶接鋼管において、溶接金属に形成される再熱部が−46℃以下の低温でも優れた靭性を有し、かつ、同溶接金属が720MPa以上の引張強度を有する、低温靭性に優れた高強度溶接鋼管を提供することを目的とする。
発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行い、以下のような知見を得た。
(1)外面溶接金属と内面溶接金属とで個別に組成を適正範囲にするとともに、再熱される側になる内面溶接金属中にMo、Ti、B、Al、O、Nを適正量含有させることにより、溶接まま部(再熱されない部分)の靭性を向上させ、しかも再熱部の靭性劣化を防止することができる。
(2)上記内面溶接金属中のMo、Ti、B、Al、O、N含有量の適正範囲は、Mo:0.15%以下、Ti:0.010〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、Al:0.03%以下、O:0.035%以下、N:0.0080%以下を前提とし、かつ、本発明者らが案出し次式(2)で定義した再熱靭性指数であるPrhtが−2.0×10-2〜1.0×10-2%となる範囲である。
Prht=0.0667×Mo+5×B+Ti+1.34×Al−1.5×O−3.4×N ……(2)
ただし、式中右辺の元素記号はその元素の含有量(質量%)を表す。なお、PrhtのPはparameterの頭文字であり、添字のrhtは再熱(reheat)部の靭性を評価する意味から付けたものである。
(3)最熱脆化への影響の小さいNi、Cu、Crなどの添加により外面溶接金属と内面溶接金属において前記式(1)で定義される炭素当量であるPcmを0.195%以上とすることで再熱部を脆化させずに溶接金属の引張強度を720MPa以上とすることができる。
本発明は、かかる知見に基いてなされたものであって、その要旨は以下の通りである。
鋼板からなる母材を管状に成形してそのシーム部を、内面側を先に施工する内外面1層盛り溶接により接合してなる溶接鋼管であって、前記母材が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:1.2〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Nb:0.005〜0.050%、Al:0.01〜0.04%、Ti:0.005〜0.050%、V:0.005〜0.050%を含有し、さらに、Cu:0.1〜2.0%およびNi:0.1〜2.0%からなる一群から1種以上および/またはMo:0.01%超1.00%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
先に施工された内面側の溶接金属である内面溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜3.0%、Al:0.03%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ni:5.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Mo:0.15%以下、Ti:0.010〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)で定義される炭素当量であるPcmが0.195%以上であり、下記式(2)で定義される再熱靭性指数であるPrhtが−2.0×10-2〜1.0×10-2%であり、
後に施工された外面側の溶接金属である外面溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜3.0%、Al:0.03%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ni:5.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Mo:0.10〜1.0%、Ti:0.010〜0.050%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)で示されるPcmが0.195%以上であることを特徴とする低温靭性に優れた高強度溶接鋼管。

Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B …(1)
Prht=0.0667×Mo+5×B+Ti+1.34×Al−1.5×O−3.4×N ……(2)
ただし、式(1)、(2)中、右辺の元素記号はその元素の含有量(質量%)を表す。
本発明によれば、その溶接金属が−46℃以下の寒冷地での使用に耐える低温靭性と引張強度とを併せ持つパイプライン用溶接鋼管を得ることができる。
まず、母材の組成を前記本発明の要旨に記載した範囲に限定した理由を述べる。なお、先にも述べたが、本発明では、組成の成分含有量の単位を質量%とし、%と略記する。
C:Cは、母材の強度と靭性に大きな影響を及ぼす元素であるが、0.03%未満では強度が不足し、一方、0.09%超では靭性に悪影響を及ぼすため、0.03〜0.09%とした。
Si:Siは、鋼の脱酸過程で必然的に含まれる元素であるが、0.5%超では溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、0.5%以下とした。
Mn:Mnは、鋼の強度と靭性を同時に向上させる極めて重要な元素であるが、1.2%未満ではその効果に乏しく、一方、2.0%超では偏析等により靭性に悪影響を及ぼすため、1.2〜2.0%とした。
P、S:P、Sは中心偏析を助長する元素であり、低いことが望ましく、Pは0.020%以下、Sは0.003%以下とした。
Nb:Nbは、鋼板を製造する段階でスラブ加熱時と圧延時の結晶粒の成長を抑制することにより母材のミクロ組織を微細化し、ラインパイプとして十分な靭性を付与するために必要な成分であるが、その効果は0.005%未満では顕現せず、一方、0.050%を超えるとその効果がほぼ飽和するばかりか溶接熱影響部の靭性を劣化させるので、0.005〜0.050%とした。
Al:Alは、脱酸剤として添加され、0.01%以上でその効果は顕著であるが、0.40%を超えると母材の清浄度を損なうばかりか、溶接金属への過剰な混入により該溶接金属のAl含有量が本発明範囲内(0.03%以下)に収まりにくくなるため、0.01〜0.04%とした。
Ti:Tiは、窒化物を形成してスラブ加熱時や溶接熱影響部の結晶粒成長を抑制し、結果としてミクロ組織の微細化をもたらして靭性を改善する効果があり、その効果は0.005%以上で顕著であるが、0.050%を超えると逆に靭性を劣化させるので、0.005〜0.050%とした。
母材は、さらに、Cu:0.1〜2.0%およびNi:0.1〜2.0%からなる一群から1種以上および/またはMo:0.01%超1.00%以下を含有する必要がある。
Cu、Ni:どちらも鋼の強度上昇効果のある元素である。Cu、Niのいずれかを含有してもよいし、Cu、Niの両方を含有してもよい。Cu、Niとも、0.1%未満では強度上昇の効果が得られず、2.0%を超えるとシーム部の溶接金属が高温割れを起こしやすくなるので、0.1〜2.0%とした。
Mo:鋼の強度上昇効果のある元素である。0.01%以下ではその効果が得られず、1.00%を超えると溶接熱影響部で靭性の劣化を引き起こすので0.01〜1.00%とした。
なお、母材は、さらに、V:0.005〜0.050%を含有する。Vは、焼入れ性を助長する元素であり、強度を向上するばかりでなく、Nbと同様に、圧延時の結晶粒を抑制することによりミクロ組織を微細化し、鋼板の靭性を向上させる。0.005%未満ではその効果に乏しく、0.050%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化させるので、V含有量は、0.005〜0.050%とする。
次に、溶接金属の組成を前記本発明の要旨に記載した範囲に限定した理由を述べる。溶接金属の組成は、一部の成分を除き、AF組織形成による強度および靭性の向上効果を目的として構成されている。
C:Cは、焼入れ性を大きく高める元素であるが、0.03%未満では焼入れ性が不足して強度と靭性が低下し、一方、0.09%超では炭化物やマルテンサイトが生成しやすくなって靭性が低下するため、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.03〜0.09%とした。
Si:Siは、脱酸剤として添加されるが、焼入れ性を高める成分でもあるため過剰に添加されると粗大なUB組織が生成し、靭性を低下させるので、内面溶接金属、外面溶接金属共に、0.5%以下とした。
Mn:Mnは、脱酸剤および焼入れ性を高める成分として必要であるが、0.5%未満ではその効果に乏しく、一方、3.0%を超えるとUBが生成しやすくなり、靭性が低下するので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.5〜3.0%とした。
Al:Alは、母材の溶製段階で脱酸剤として添加され、母材より不可避的に混入するが、0.03%を超えると溶接金属のAF組織形成を阻害し、溶接まま部の靭性を低下させ、しかも、後記する内面溶接金属のPrhtを本発明範囲内(−2.0×10-2〜1.0×10-2%)に収めても再熱部の良好な靭性が得られなくなるので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.03%以下とした。
Cu:Cuは、焼入れ性を高める成分であり、母材およびワイヤのめっきから混入する成分であるが、1.0%超では焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、1.0%以下とした。
Cr:Crは、焼入れ性を高める成分であるが、1.0%超では焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、1.0%以下とした。
Ni:Niは焼入れ性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、5.0%超では焼入れ性が過剰なり、靭性を低下させるので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、5.0%以下とした。
Nb、V:Nb、Vは、ともに焼入れ性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、いずれも0.1%超では焼入れ性が過剰となり、靭性を低下させるので、それぞれ、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.1%以下とした。
Mo:Moは、焼入れ性を高める成分であり、溶接金属の組織を微細化し靭性を向上させる。再熱部の脆化を考慮する必要のない外面溶接金属においては、Moは、溶接まま部の靭性を安定的に良好ならしめるために0.10%以上を必要とし、一方、1.0%超では靭性に悪影響をもたらすので、0.10〜1.0%とした。また、溶接まま部の靭性を十分なものとしながら再熱部の脆化を抑制する必要のある内面溶接金属においては、Moは、0.15%超であると再熱部にM‐A、UBが成長するのを助長し、靭性を劣化させるので、0.15%以下とした。なお、内面溶接金属のMo含有量は、0.15%以下であればいくら少量でもかまわない。
Ti:Tiは、酸窒化物を形成しAF組織形成の核生成サイトとして働き、またBの酸化および窒化を防止しBのGBF生成抑制効果を助長するため、AF組織の微細化による高靭性獲得には必須の成分であるが、0.010%未満ではこの効果に乏しく、一方、溶接まま部では0.050%超であると固溶Tiの増加により粗大なUBを形成する傾向があり、さらに再熱部では0.030%超であるとM‐AもしくはUBの成長が顕著になり、靭性が低下する。よって、Tiは、外面溶接金属では0.010〜0.050%とし、内面溶接金属では0.010〜0.030%とした。
B:Bは、焼入れ性を大きく高める成分であり、溶接金属中ではオーステナイト粒界に偏析しGBFの生成を抑制する。すなわちMo、Tiとの共存下で一様な微細AF組織を得、良好な靭性を獲得するために有効である。しかし、Bは、0.0005%未満ではこの効果に乏しく、一方、溶接まま部では0.0050%超であると焼入れ性が過剰となり、さらに再熱部では0.0015%超であるとM‐AもしくはUBの成長が顕著になり、靭性が低下する。よって、Bは、外面溶接金属では0.0005〜0.0050%とし、内面溶接金属では0.0005〜0.0015%とした。
N:Nは、溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、0.0080%超であると介在物を増加させ、さらにBを窒化してGBFの生成を促進し、靭性を低下させるので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.0080%以下とした。
O:Oは、溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、0.035%超であると介在物を増加させ、さらにBを酸化してGBFの生成を促進し、靭性を低下させるので、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.035%以下とした。
Pcm:Pcmは、溶接金属の組成全体としての焼入れ性を炭素当量で示すものであり、式(1)で定義される。このPcmと引張強度の間には図1に示したような相関関係があり、引張強度720MPa以上を得ようとするには、0.195%以上のPcmが必要である。よって、Pcmは、内面溶接金属、外面溶接金属の双方とも、0.195%以上とした。
Prht:内面溶接金属の組成の各成分の含有量を個々に上記のように限定しただけでは、再熱部の脆化を十分に抑制することは困難であったが、この困難は、本発明者らが再熱靭性指数として案出した式(2)で定義されるPrhtの値が、−2.0×10-2〜1.0×10-2%の範囲に収まるように、式(2)右辺の変数として採用した成分元素であるMo、B、Ti、Al、O、Nの含有量を調整することによって克服された。よって、本発明では、内面溶接金属について、Prhtを−2.0×10-2〜1.0×10-2%とした。
再熱靭性指数の変数としてMo、B、Ti、Al、O、Nの含有量を採用したのは、Mo、Ti、Bについては、これらが溶接まま部では靭性を向上させる正の効果と、再熱部ではむしろ脆化を助長するという負の効果とを有するという観点からであり、また、O、Nについては、これらがTi、Bを酸化、窒化あるいは酸窒化させてTi、Bの前記正負いずれかの効果を増減させるという観点からであり、また、Alについては、これがTi、Bよりも安定な酸化物を形成するため、Ti、Bに対して活性なOはAlに固定されているO分量を除いて考慮する必要があるという観点からである。
1組の実験データを用いた重回帰分析により式(2)の変数に掛かる係数を決定し、該決定した式(2)を用いると別の1組の実験データをよく整理できたことから、その有用性(すなわち上記観点の妥当性)が実証された。
本発明の溶接鋼管を製造するには、本発明の母材組成に一致する鋼板を、例えばUOE造管工程等の冷間加工により管状に成形し、該成形した管のシーム部に、高塩基性溶融型フラックスおよび低炭素Mo‐Ti‐B系溶接ワイヤを用いて、内外面1層盛りのSAW施工をする方法が好ましく用いうる。高塩基性溶融型フラックスおよび低炭素Mo‐Ti‐B系溶接ワイヤを用いることで、溶接金属の組成を容易に本発明の溶接金属組成に一致させることができる。
なお、本発明では母材、内面溶接金属、外面溶接金属のそれぞれの組成において前記成分元素を除いた残部はFeおよび不可避的不純物である。
表1に示す組成および厚さの鋼板PA、PBを母材として、UOE造管工程により、4電極法でアークを発生させて内面側を先に施工する内外面1層盛りのSAWにてシーム溶接し、本発明の実施例、および本発明を逸脱する比較例に相当するAPI規格X80級のUOE鋼管を製造した。このとき、溶接条件は表2に示す通り一定とし、開先形状も図4に示す通り一定とし、実施例、比較例への母材の割り当ては表3に示す通りとし、溶接材料に用いた高塩基性溶融型フラックス(特許第1549234号の組成範囲内のもの)とNi、Mo、Ti、Bを含有するSAWワイヤ(低炭素Mo‐Ti‐B系溶接ワイヤに属する。)との組み合わせを種々変えることにより実施例、比較例を製造し分けた。使用したワイヤの組成と汲み合わせをそれぞれ表4、表5に示す。
Figure 0004396303
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実施例、比較例の溶接鋼管の内面溶接金属および外面溶接金属の組成を化学分析により調査した。また、実施例、比較例について、以下の要領で溶接金属の靭性と引張強度を調査した。
(溶接金属の靭性:)JIS Z 3111に規定された10mm×10mmサイズのシャルピー衝撃試験片を、溶接継手の外面位置1(図3(a))、再熱部を検証するための内面位置2(図3(b))、再熱部を検証するためのルート位置3(図3(c))の3つの位置よりそれぞれ採取し、JIS Z 2242に従いシャルピー衝撃試験を行う。外面位置1は外表面から2mmの位置、内面位置2は内表面から2mmの位置、ルート位置3は外面溶接金属6と内面溶接金属5の溶融線が交わる2点(会合部9)を通過する線を試験片中心線11とした位置である。なお、試験片採取位置を図3に断面図で示す。
(溶接金属の引張強度:)JIS Z 3111に規定されたA2号試験片を、溶接継手の外面位置1、内面位置2(図5(b))の2つの位置よりそれぞれ採取し、JIS Z 2241に準拠し引張試験を行った。なお、試験片採取位置を図5に平面図(a)および断面図(b)で示す。また、試験片には鋼管の端から25mm以内の範囲は使用していない。
溶接金属の組成の調査結果を表6に、靭性、引張強度の調査結果を表7にそれぞれ示す。
Figure 0004396303
Figure 0004396303
表6〜表7より、実施例では、外面、内面、ルート位置での−46℃でのシャルピー衝撃値が、吸収エネルギーで106J以上、延性破面率で68%以上に達し、かつ引張強度は720MPa以上に達し、−46℃での高靭性と、X80級の高強度とを同時に達成した。比較例1では、内面溶接金属のTi、B、Prhtが本発明範囲よりも過少であるため、靭性が不足し、内面、ルート位置のシャルピー衝撃値が不良であった。比較例2では、内面溶接金属のMo、Ti、Prhtが過多であるため、再熱部の靭性が劣化し、内面、ルート位置のシャルピー衝撃値が不良であった。比較例3では内面溶接金属のTi、B、Prhtが過多であるため、再熱部の靭性が劣化し、内面、ルート位置のシャルピー衝撃値が不良であった。比較例4では、内面溶接金属、外面溶接金属共にPcmが本発明範囲よりも過少であるため、 引張強度が720MPaを下回った。
本発明は、寒冷地に敷設されるパイプラインに利用することができる。
溶接金属のPcmと引張強度の関係を示す図である。 内外面1層盛りのSAWによる溶接継手の1例を示す断面図である。 衝撃試験片採取位置を示す断面図である。 本発明の実施例における開先形状を示す断面図である。 本発明の実施例における引張試験片採取位置を示す平面図(a)および断面図(b)である。
符号の説明
1 外面位置
2 内面位置
3 ルート位置
4 母材
5 内面溶接金属
6 外面溶接金属
7 再熱部
8 溶接熱影響部
9 会合部
10 ノッチ
11 試験片中心線

Claims (1)

  1. 鋼板からなる母材を管状に成形してそのシーム部を、内面側を先に施工する内外面1層盛り溶接により接合してなる溶接鋼管であって、前記母材が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:1.2〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.003%以下、Nb:0.005〜0.050%、Al:0.01〜0.04%、Ti:0.005〜0.050%、V:0.005〜0.050%を含有し、さらに、Cu:0.1〜2.0%およびNi:0.1〜2.0%からなる一群から1種以上および/またはMo:0.01%超1.00%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、
    先に施工された内面側の溶接金属である内面溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜3.0%、Al:0.03%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ni:5.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Mo:0.15%以下、Ti:0.010〜0.030%、B:0.0005〜0.0015%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)で定義される炭素当量であるPcmが0.195%以上であり、下記式(2)で定義される再熱靭性指数であるPrhtが−2.0×10-2〜1.0×10-2%であり、
    後に施工された外面側の溶接金属である外面溶接金属が、質量%で、C:0.03〜0.09%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜3.0%、Al:0.03%以下、Cu:1.0%以下、Cr:1.0%以下、Ni:5.0%以下、Nb:0.1%以下、V:0.1%以下、Mo:0.10〜1.0%、Ti:0.010〜0.050%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ下記式(1)で示されるPcmが0.195%以上であることを特徴とする低温靭性に優れた高強度溶接鋼管。

    Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B …(1)
    Prht=0.0667×Mo+5×B+Ti+1.34×Al−1.5×O−3.4×N …(2)
    ただし、式(1)、(2)中、右辺の元素記号はその元素の含有量(質量%)を表す。
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