JP5853456B2 - Sr後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐hic溶接鋼管およびその製造方法 - Google Patents

Sr後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐hic溶接鋼管およびその製造方法 Download PDF

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湿潤硫化水素環境下にある石油精製設備などのプラント配管などに使用される溶接鋼管およびその製造方法に関し、特にSR、PWHT後の溶接金属靱性と耐サワー性能および低降伏比を両立した350〜550MPa級溶接鋼管およびその製造方法に関する。
原油の品質は年々低下し、硫化水素濃度が高くなってきている。そのため、石油精製設備のプラント配管にも湿潤硫化水素腐食応力下に対する抵抗力、すなわち優れた耐水素誘起割れ(HIC)性および耐硫化物応力腐食割れ(SSC)性(これら両者を合せて耐サワー性という)が求められている。また、前記プラント配管は様々な形状の鋼管を様々な継手作製方法によりとりつけて使用するため、その中の一部の鋼管のみが高降伏比であるとその周囲の鋼管や継手部に応力集中が生じやすくなり、そのような部位に検査でみつけることのできなかった欠陥が存在すると、その部位より破壊が発生する可能性がある。
よって、プラント配管では周囲の部材との強度的不均質を低減するために、降伏比が90%以下の溶接鋼管を用いることが一般的である。また、プラント配管として用いられる溶接鋼管は、一般に造管によって発生した残留応力を低減するために応力除去焼鈍(SR)が行われ、前記周囲部材との溶接後にも溶接後熱処理(PWHT)と称する溶接部への局部的なSRが行われる。従って、このような熱処理を受けた後の特性、とりわけ降伏比と溶接部靱性を確保することが重要となる。
耐サワー性能の確保のための検討は、主にラインパイプ分野で数多くなされており、HIC特性の改善のためには、低C化による第2相組織の生成量低減、低Mn−低S化による伸長MnSの低減、低Mn−低P化による中心偏析の低減、Ca添加量の最適化によるMnSの球状化およびCaクラスタの生成抑制などの手法が一般的に用いられる。一方、SSC特性の改善のためには、母材、HAZ、溶接金属の表層硬さを低減することが有効とされ、合金元素の低減による焼入性の低下や加速冷却や焼入条件の最適化、焼戻による表層硬さの低減などが一般的に行われる。
一方で、圧力容器やフィッティング部材などプラント配管と同じく応力除去焼鈍を行うプラント設備用厚鋼板および溶接鋼管分野においても様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1および2では母材強度の低下を少なくしつつ、HAZ硬さを効果的に低減する成分系として低C−Bフリー系を選択し、またNbを添加し制御圧延後ただちに加速冷却もしくは、直接焼入+焼戻を行うことによって、析出強化により強度の不足を補う方法が開示されている。
また、特許文献3および4では、制御圧延で組織を均一微細化させた厚鋼板に焼準を行うことによって、耐サワー性能と熱間加工性を両立させる方法が開示されている。また、特許文献5では、B添加鋼の圧延加熱温度を最適化することによって焼入焼戻処理後の表層硬さを低減することにより、耐SSC特性を向上させる方法が開示されている。
また、特許文献6では、熱間成形工程を経るフィッティング部材の製造に関して、曲げ加工直後に焼入れを行うことにより均一なベイナイト組織を得て、耐HIC性能および耐SSC性能を向上させる方法が開示されている。また、圧力容器用鋼板の溶接部特性に関して特許文献7および特許文献8では、溶接金属の化学成分を最適化することにより硬さの上昇を抑え溶接部の耐SSC特性を確保する方法が開示されている。
特開平2−8322号公報 特開平2−263918号公報 特開平8−283839号公報 特開平8−283840号公報 特開昭59−74219号公報 特開平7−87225号公報 特開平4−120240号公報 特開平5−200583号公報
しかしながら、特許文献1および2で開示されている直接焼入やTMCPによって作製される厚鋼板は熱間加工を行った際に、圧延により微細化させた組織が再変態してしまうため、熱間加工後に熱処理を行っても、当初得られていた強度−靱性バランスが得られないという問題がある。
特許文献3および4では、焼準処理により全厚に渡って微細均一組織にすることで耐HIC性能と熱間加工性能を両立しているが、強度の確保がし難い製造方法であり、強度確保のためには多量の合金添加を必要とし、コストの増大を招くばかりでなく、HAZ硬さの増大により耐SSC性能の劣化が問題となる。
特許文献5では母材の表層硬さを効果的に低減することができるが、最適とするC量が高くまたB添加を必須としているため、この範囲ではHAZ硬さを低減することが困難であり、HAZを起点としたSSCの発生をさけることができない。
特許文献6では焼入焼戻プロセスを採用することにより耐HIC性能および耐SSC性能を向上させているが、降伏比や溶接部の靱性との両立をするための方法が開示されていない。また、特許文献7および8では、母材だけでなく溶接部も含めた耐サワー性能を確保するための方法が開示されているが、これらについても降伏比や溶接部の靱性との両立を図る方法が開示されていない。
一方で、降伏比の低い厚鋼板および溶接鋼管は主に建築分野やラインパイプ分野を対象とした検討が多く開示されているが、これらの検討では耐サワー性能を両立させるための手段はほとんど開示されておらず、応力除去焼鈍後の溶接金属部靱性の確保まで同時に検討した事例は皆無である。
このように、これまでの発明では、応力除去焼鈍後の溶接部靱性と耐サワー性能とを低下させることなく降伏比の低い溶接鋼管を製造することは困難であった。
そこで、本発明では、応力除去焼鈍後の溶接部靱性と耐サワー性能とを低下させることなく、降伏比が低い溶接鋼管およびその製造方法を提供することを目標とする。
発明者らは、熱間加工性に優れるとされる焼準および焼入焼戻処理を行う厚鋼板を対象に、前記の課題を解決するために鋼材の化学成分、製造方法および組織形態について鋭意検討し、以下の知見を得た。
まず、優れた耐HIC性能を得るためには、従来からいわれているように、低C−低Mn−低S−低P−Ca添加量の最適化を行うことが有効であると確認した。とくに、Caの最適添加量については、式(3)で規定されるACRを1.0〜4.0に制御することにより伸長MnSの球状化による板厚中央部(以下1/2tと呼ぶ)でのHIC割れおよびCaクラスタの生成による板厚1/4部(以下1/4tと呼ぶ)でのHIC割れを抑制することができることが分かった。
また、伸長MnSがほとんどなくなった場合においても、1/2tでは中心偏析部の硬さが高い場合にNbCなどの微細析出物や気包などの欠陥を起点にHIC割れが発生することがわかった。
本発明では、中心偏析部の硬さに及ぼす成分の影響を合理的に評価する指標として、式(2)で規定されるPHICを用いることで、中心偏析に起因する1/2tのHIC割れに及ぼす合金成分の影響を評価することを可能にした。PHICが大きくなるほど中心偏析部の硬さが増大し、割れが発生しやすくなり、例えばラインパイプ用X65溶接鋼管をTMCPで作製した場合、NACEサワー条件でHIC割れの発生を十分に抑えようとした場合、PHICを0.95以下にする必要があった。
一方、焼入焼戻処理を行うことにより、(1)等軸組織化によるHIC割れの伝播抑制、(2)焼戻処理による中心偏析部の硬さ低減、を行うことができ、PHICの上限値が大きくなることがわかった。また、焼入焼戻処理は、焼準処理に比べて低成分で母材強度を確保することができるため、HAZ硬さを低減でき、耐SSC特性に優れていることが分かった。また、耐SSC特性を確保するためにHAZ硬さを低減する必要があるが、これに対する成分の影響としては、従来からいわれているように低C−Bフリー化が望ましいことをあらためて確認した。
一方、焼入焼戻鋼の降伏比は、Cを低減するほど高くなることが知られており、耐サワー性能との両立が困難とされている。そこで、本発明では、焼入焼戻によって得られた組織の形態と降伏比の関係を調査した。その結果、主体とする組織がポリゴナルフェライトもしくは擬似ポリゴナルフェライトであり、その粒間に硬質第2相を含むような組織形態の場合に降伏比が低く、ポリゴナルフェライトもしくは擬似ポリゴナルフェライトの平均粒径が大きいほど、硬質第2相の分率が大きいほど、より降伏比が小さくなることがわかった。また、耐HIC性能との両立のためには、両組織を等軸組織にすることが重要で、平均アスペクト比を2以下にすることで、両特性を両立できることがわかった。
以上のような鋼材成分、厚鋼板製造条件の制約のもとで、応力除去焼鈍後の溶接部靱性を確保する方法を検討した。その結果、溶接金属部の靱性は溶接金属に含まれるO量および析出脆化を助長する元素であるNb、V、Tiに大きく影響されることがわかった。特に、O量の影響は大きく、高塩基性フラックスや焼成型フラックスを適用することによりO量を0.035%以下にし、これによって靱性が大幅に向上することがわかった。
また、Nb、V、Tiについては、Nbによる靱性劣化の程度が大きく、その脆化への寄与は、Nb=V/2=Ti/2と整理できた。また、Tiについては、溶接金属に含まれる全Ti量ではなく、酸化物や窒化物として消費されたTi量を除くTiがTiCとして析出することで靱性劣化に寄与することがわかった。従って、母材に含まれるNb、V量を低減すること、Nb、Vを含まないワイヤを使用すること、および母材からのNb、Vの稀釈を減らし、さらに溶接金属に含まれるAl、Ti、N、Oを適正に制御することによって、溶接金属へのNb、Vあるいは析出脆化に関与するTiの侵入を防ぐことができ、これによって、靱性が大幅に向上することがわかった。
本発明は、上記した知見にさらに検討を加えたもので、その要旨は以下の通りである。
第一の発明は、厚鋼板からなる母材を管状に成形してそのシーム部を、サブマージアーク溶接により接合して製造される溶接鋼管であって、該溶接鋼管の母材は、質量%で、C:0.03%以上0.08%未満、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.5%、P:0.010%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.025%、B:0.0003%以下、Ca:0.0005〜0.0050%、O:0.0030%以下を含有し、さらにCu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Nb:0.025%以下、V:0.050%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、式(1)で規定されるCeqを0.28以上、式(2)で規定されるPHICを1.00以下、式(3)で規定されるACRを1.0〜4.0とし、残部Feおよび不可避的不純物からなり、前記母材の管厚中央部の組織は、平均粒径10〜40μmかつ平均アスペクト比2.0以下のポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトを80〜95体積%含み、さらに平均アスペクト比2.0以下のベイナイト、パーライト、島状マルテンサイトおよびセメンタイトからなる硬質第2相を5〜20体積%含み、また、前記溶接鋼管の溶接金属部は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.50%以下、Mn:0.8〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.050%以下、Ti:0.01〜0.04%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0040%以下、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含有し、さらにCu:1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下、Nb:0.025%以下、V:0.050%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、式(4)で規定されるPcmが0.12以上で、式(5)で規定されるPSRが0.025以下であることを特徴とするSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管である。
Figure 0005853456
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第二の発明は、第一の発明に記載の溶接鋼管の母材の成分組成を有する鋼片を加熱し熱間圧延した後、室温からAc点以上の温度まで加熱、保持した後、800〜500℃の温度域を冷却速度1〜25℃/sで水冷し、再び室温から550℃〜Ac点の温度に加熱、保持した後に空冷して作製した厚鋼板を、管状に成形してそのシーム部を、サブマージアーク溶接により接合することにより、第一の発明に記載の成分組成から成る溶接金属部を有する溶接鋼管とすることを特徴とするSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管の製造方法である。
第三の発明は、前記サブマージアーク溶接を、Nb:0.005質量%以下、V:0.005質量%以下を含有し残部Feおよび不可避的不純物からなるワイヤと、高塩基性溶融型フラックスまたは焼成型フラックスを用いて行うことを特徴とする第二の発明に記載のSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管の製造方法である。
第四の発明は、前記母材のNbおよび/またはV含有量と母材希釈率Aとから式(6)で規定されるWSRが、0.025以下であることを特徴とする、第二または第三の発明に記載のSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管の製造方法である。
Figure 0005853456
本発明により、耐サワー性能と低降伏比および応力除去焼鈍後の溶接部靱性を両立した350〜550MPa級溶接鋼管の製造が可能となるので、湿潤硫化水素腐食環境下にある石油精製設備のプラント配管などに適用できる。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.本発明に係る耐サワー性能に優れた低降伏比溶接鋼管の母材成分組成、組織形態、製造方法について述べる。
1.1母材の成分組成について
以下の説明において成分%は全て質量%を意味する。
C:0.03%以上0.08%未満
Cは、焼入処理時の焼入性を高め母材強度を高めるのに最も有効な元素である。Cが0.03%未満では十分な強度を確保できず、0.08%以上では第2相組織の分率や硬さが上昇しHIC性能が劣化する。また、HAZ硬さも上昇するため、C量は0.03%以上0.08%未満の範囲とする。好ましくは、0.03%以上0.05%未満の範囲である。
Si:0.5%以下
Siは脱酸のために添加するが、Siを0.5%を超えて添加すると靱性や溶接性が劣化するため、Si量は0.5%以下とする。好ましくは0.3%以下である。
Mn:0.5〜1.5%
Mnは母材の強度、靱性の向上のために添加するが、0.5%未満では効果が十分でなく、1.5%を超えて添加すると中心偏析部の硬さの上昇やMnSの生成に起因してHIC性能が劣化するため、Mn量は0.5〜1.5%の範囲とする。好ましくは、1.0〜1.4%の範囲である。
P:0.010%以下
Pは不可避的不純物であり、中心偏析部の硬さを顕著に上昇させ、その結果HIC性能を劣化させる。この傾向は0.010%を超えると顕著になるため、P量は0.010%以下とする。好ましくは、0.008%以下である。
S:0.0030%以下
Sは鋼中においては一般にMnS系介在物となるが、Ca添加によりMnSから球状のCa(O、S)系介在物に形態制御される。しかしながら、S量が多いとCa(O、S)系介在物の総量が増加し、HIC割れの起点となるため、S量は0.0030%以下とする。好ましくは、0.0010%以下である。
Al:0.005〜0.050%
Alは脱酸剤として添加され、酸化物を固定するために0.005%以上の添加を必要とするが、0.050%を超えると清浄度が低下して延性が低下するため、Al量は、0.005〜0.050%の範囲とする。
Ti:0.005〜0.025%
TiはTiNを形成して焼入前の加熱保持中のγ粒の粗大化を抑制して、母材靱性を確保するために必須の元素である。また、TiNは高温でも安定であるため溶接を行った際に形成されるCGHAZを微細化し、靱性の向上とHAZ硬さの低減が実現される。これらの効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要であるが、0.025%を超える添加によりTiNが粗大化しピンニング力が飽和し、また、熱間加工やSRなどの処理中にTiCとして析出し靱性を劣化させるため、Ti量は0.005〜0.025%の範囲とする。好ましくは、0.005〜0.015%の範囲である。
B:0.0003%以下
Bは、耐SSC性に有害な元素であり、本発明においてはBの混入を極力抑えるため製鋼原料を吟味して、0.0003%以下とする。
Ca:0.0005〜0.0050%
Caは硫化物系介在物の形態を制御して、延性の改善と耐HIC性能の向上に有効な元素であるが、0.0005%未満ではその効果は小さく、0.0050%を超える添加ではCaクラスタの生成によりHIC割れの発生起点や変形時の延性き裂の発生起点となるため、Ca量は0.0005〜0.0050%の範囲とする。
O:0.0030%以下
Oは、AlやCaなどと酸化物を形成し鋼中に不可避的介在物として存在する。Oが0.0030%を超えるほどの酸化物が生成すると、HICの割れの発生起点や延性き裂の発生起点となるため、O量は0.0030%以下とする。
以上が本発明の基本成分であるが、所望の強度、靭性を得るために以下に示すCu、Ni、Cr、Mo、Nb、Vの中から選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
Cu:0.5%以下
Cuは、靱性の改善と強度の上昇のために有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化するため、Cuを添加する場合は、Cu量は0.5%以下とすることが好ましい。
Ni:0.5%以下
Niは、靱性の改善と強度の上昇のために有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化するため、Niを添加する場合は、Ni量は0.5%以下とすることが好ましい。
Cr:0.5%以下
Crは、焼入性を高め、また焼戻軟化抵抗を向上させて焼戻後の強度低下を小さくする両方の効果から、焼入焼戻処理鋼の強度確保のために有効な元素であるが、0.5%を超える添加により溶接性が劣化するため、Crを添加する場合は、Cr量は0.5%以下とすることが好ましい。
Mo:0.5%以下
Moは焼入性を高め、また焼戻軟化抵抗を向上させて焼戻後の強度低下を小さくする両方の効果を有しており、その効果はCrよりも大きく、焼入焼戻処理鋼の強度確保のためには最も有効な元素であるが、0.5%を超える添加により溶接性が劣化するため、Moを添加する場合は、Mo量は0.5%以下とすることが好ましい。
Nb:0.025%以下
Nbは焼入性を高める効果及び焼戻処理時のNbCの析出の両方の効果により、強度上昇に有効であるが、添加量が大きくなるほど溶接金属への稀釈量が大きくなり応力除去焼鈍後の靱性が劣化する。0.025%を超える添加量とするとVなど他の析出系元素を含まない場合においても、優れた応力除去焼鈍後の溶接部靱性が得られないため、Nbを添加する場合は、Nb量は0.025%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.010%未満である。
V:0.050%以下
Vは焼入性を高める効果及び焼戻処理時のVCの析出の両方の効果により、強度上昇に有効であるが、Nbと同じく添加量が大きくなるほど溶接金属への稀釈量が大きくなり、応力除去焼鈍後の靱性が劣化する。0.050%を超える添加量とするとNbなど他の析出系元素を含まない場合においても、優れた応力除去焼鈍後の溶接部靱性が得られないため、Vを添加する場合は、V量は0.050%以下とすることが好ましい。
本発明では、さらに、式(1)〜(3)に規定するCeq、PHIC、ACRの範囲を定める。
Ceq:0.28以上
Ceqは値が高いほど焼入性が高まり高強度が得られる。本発明で対象とする350〜550MPa級の強度を得るためにCeqは0.28以上とする。
Figure 0005853456
PHIC:1.00以下
PHICは各合金元素の含有量から中心偏析部の材質を推定するために考案された式であり、PHICが高いほど中心偏析部の濃度が高くなり、中心偏析部硬度が上昇する。本発明では焼戻処理を行うことにより中心偏析部硬さの低減を図っているが、PHICが1.00を超えると中心偏析部の硬化に起因したHIC割れが発生するため、PHICは1.00以下とする。
Figure 0005853456
ACR:1.0〜4.0
CaはOとの親和性が高く、まずCaOを生成し、残ったCaがSと結合しCaSを形成する。ACRはこれらの鋼中のOとSとCaの存在形態を表す指標であり、ACRが1.0未満の場合は、Caに対して、OとSが過剰に存在するため、SがMnSとなり1/2tのHIC割れを助長する。一方、4.0を超えると過剰に添加されたCaがクラスタ状になり1/4tのHIC割れを助長する、よって、ACRは1.0〜4.0の範囲とする。好ましくは、1.5〜3.5の範囲である。
Figure 0005853456
1.2母材の金属組織について
本発明では、溶接鋼管母材の管厚中央部(1/2t)での金属組織の分率、粒径、アスペクト比を規定する。
ポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトの平均粒径:10〜40μm
本発明の溶接鋼管母材の主体組織であるポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトの平均粒径を10〜40μmに規定する。これらの軟質フェライトの粒径が大きいほど降伏比は低下するが、平均粒径が40μmを超えると靱性が劣化するため、10〜40μmとする。より好ましくは、10〜30μmである。なお、ポリゴナルフェライトは塊状のフェライトのことで、ナイタールエッチングした際に光学顕微鏡で白く観察される組織のことである。一方、擬似ポリゴナルフェライトはポリゴナルフェライトにくらべてやや角ばった形状をしており、ポリゴナルフェライトよりもやや焼きの入った組織のことをさす。なお、両組織とも粒内にラス状の炭化物を含まないことも組織の判別基準として挙げられる。
ポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトの体積分率:80〜95体積%
ポリゴナルフェライトと擬似ポリゴナルフェライトが95体積%を超えると強度確保が困難な上、降伏比が高くなるため、上限を95体積%とする。また、80体積%未満では、HIC試験を行った際に、硬質第2相をき裂が伝播し、優れたHIC性能が確保できないため、下限を80体積%とする。
硬質第2相の体積分率:5〜20体積%
ベイナイトのような低温変態組織、島状マルテンサイト(MA)、セメンタイトやパーライトのような高C組織からなる硬質第2相を軟質なフェライト母相中に点在させることによって、母相界面でひずみが集中し、降伏応力が低下することに起因して低降伏比が実現される。この効果は硬質第2相の体積分率が5%未満では得られないため、下限を5%とする。一方、20体積%を超えて硬質第2相を含むと耐サワー特性を低下させるので、硬質第2相の体積分率は20体積%以下とする。
なお、上記ポリゴナルフェライト、擬似ポリゴナルフェライトおよび硬質第2相以外の組織は少ない方が好ましいが、10%までは許容できる。
ポリゴナルフェライト、擬似ポリゴナルフェライトおよび硬質第2相の平均アスペクト比:2.0以下
軟質フェライトおよび硬質第2相は等軸であるほど、HIC割れに対する伝播抵抗が高まるため好ましいが、アスペクト比が2.0を超えると伝播抵抗が弱まりHIC特性が劣化するため、ポリゴナルフェライト、擬似ポリゴナルフェライトおよび硬質第2相の平均アスペクト比は2.0以下とする。
1.3母材の製造方法について
連続鋳造
本発明で規定したACRは連続鋳造で最適とされる範囲であり、造塊法ではMnSやCaクラスタの生成を適切に抑制できないため、連続鋳造法を用いることとする。
焼入温度:Ac点以上
焼入温度はAc点以上とする。焼入温度は低いほど組織が微細化して降伏比が上昇する。また、Ac点未満になると強度が著しく低下し、所望の強度が得られなくなるため、Ac点を下限とする。好ましくは、Ac点〜950℃である。なお、Ac点はフォーマスタ試験などで求めることが望ましいが、式(7)で求めてもさしつかえない。
Figure 0005853456
焼入冷却速度:1〜25℃/s
焼入時の800℃から500℃までの冷却速度は、1〜25℃/sとする。焼入時の冷却速度が遅いほど、粗大かつ軟質なフェライトが得られる。一方、冷却速度が25℃/s超えとなるとベイナイトを主体とする組織となり降伏比が上昇し、1℃/s未満ではフェライト粒径が粗大化しすぎて、所望の強度と靱性が得られないため、冷却速度は1〜25℃/sの範囲とする。好ましくは、3〜20℃/sの範囲である。
焼戻温度:550℃〜Ac
焼戻温度は550℃〜Ac点とする。焼戻処理を行うことで、中心偏析部の硬さが低下しHIC性能が向上する。また、表層硬さも低減し、SSC特性が向上する。この効果は550℃未満では得られず、また、Ac点を超えると逆変態を起こし、高Cの逆変態組織が靱性を劣化させるため、上限をAc点とする。なお、Ac点は、フォーマスタ試験などで求めることが望ましいが、式(8)で求めてもさしつかえない。
Figure 0005853456
2.本発明に係る応力除去焼鈍後の溶接部靱性に優れる溶接鋼管のサブマージ溶接によって得られる溶接金属の成分組成、溶接材料および溶接部断面形状を規定する。
2.1溶接金属の成分組成について
以下の説明において成分%は全て質量%とする。
C:0.03〜0.10%
Cは焼入れ性を大きく高める成分であるが、0.03%未満では強度が不足し、一方、0.10%超では炭化物やマルテンサイトが生成しやすくなり、靭性が低下するとともに溶接金属硬さが上昇して、耐SSC特性が劣化するため、C量は0.03〜0.10%の範囲とする。好ましくは、0.03〜0.08%の範囲である。
Si:0.50%以下
Siは脱酸剤として添加されるが、焼入れ性を高める成分でもあるため、過剰に添加されると上部ベイナイトと呼ばれる粗大組織が生成し、靭性を低下させることから、Si量は0.5%以下とする。好ましくは0.1〜0.5%の範囲である。
Mn:0.8〜1.5%
Mnは、脱酸剤および焼入れ性を高める成分として必要であるが、0.8%未満ではその効果に乏しく、一方、1.5%を超えると上部ベイナイト(UB)が生成しやすくなり、靭性を低下させることから、Mn量は0.8〜1.5%の範囲とする。
P:0.030%以下
Pは母材や溶接材料に微量に含まれている不純物元素であり、応力除去焼鈍後に粒界脆化を引き起こすなどして溶接部特性を劣化させるので、できるだけ低減することが望ましい。劣化の傾向は0.030%を超えると顕著になるため、P量は0.030%以下とする。
S:0.010%以下
Sは母材や溶接材料に微量に含まれている不純物元素であり、MnSを生成させるなどして溶接部の延性低下を引き起こすため、できるだけ低減することが望ましいので、S量は0.010%以下とする。
Al:0.050%以下
Alは脱酸剤として添加されるが、過剰に添加されるとAlが多くなりTi系酸化物による組織微細化効果を利用できなくなるため、Al量は0.050%以下とする。
Ti:0.01〜0.04%
Tiは、微細なフェライトを形成させて靭性を向上させるが、0.01%未満ではこの効果に乏しく、一方、0.04%超では溶接ままでの固溶Tiが増加し、応力除去焼鈍後にTiCとして析出して靱性を劣化させるため、Ti量は0.01〜0.04%の範囲とする。
B:0.0005〜0.0040%
Bは、焼入れ性を大きく高める成分であり、Tiとの相乗効果によって微細なアシキュラフェライトを形成させ靭性を向上させるが、0.0005%未満ではこの効果に乏しく、一方、0.0040%を超えると溶接部硬さを著しく増大させ、耐SSC特性を劣化させるため、B量は0.0005〜0.0040%の範囲とする。
Ca:0.0040%以下
Caは母材からの混入する成分であり少量では溶接部特性に影響しない。しかしながら、0.0040%を超えるとCaO系介在物の増加により溶接部延性が低下するため、Ca量は0.0040%以下とする。
N:0.0080%以下
Nは、溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、0.0080%を超えると介在物を増加させ、さらにBと結合して粒界での初析フェライトの生成を促進し、靭性を低下させるので、N量は0.0080%以下とする。
O:0.035%以下
Oは、溶接金属中に不可避的に含まれる成分であるが、0.035%を超えると介在物を増加させ、さらにBと結合して粒界での初析フェライトの生成を促進し、靭性を低下させるので、O量は0.035%以下とする。
以上が本発明の基本成分であるが、所望の溶接部強度を得るために以下に示すCu、Ni、Cr、Mo、Nb、Vの中から選ばれる1種または2種以上を添加してもよい。
Cu:1%以下
Cuは、焼入性を高める成分であり、母材およびワイヤのメッキから混入する成分であるが、1%を超えると焼入性が過剰となり、靭性を低下させるため、Cuを添加する場合は、Cu量は1%以下とすることが好ましい。
Ni:1%以下
Niは、焼入性を高める成分であり、母材からの混入およびワイヤから供給されることにより含有され、多量に添加することで靱性を劣化させずに高強度化することができるが、1%を超えるとSSC特性が劣化するため、Niを添加する場合は、Ni量は1%以下とすることが好ましい。
Cr:1%以下
Crは、焼入性を高める成分であり、母材からの混入およびワイヤから供給されることにより含有されるが、1%を超えると焼入性が過剰となり靭性を低下させるため、Crを添加する場合は、Cr量は1%以下とすることが好ましい。
Mo:1%以下
Moは、焼入性を高める成分であり、溶接金属組織を微細化し靭性を向上させるが、1%を超えると溶接金属再熱部を脆化させるため、Moを添加する場合は、Mo量は1%以下とすることが好ましい。
Nb:0.025%以下
Nbは、焼入性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、応力除去焼鈍後の靱性を著しく劣化させる。そのため可能な限り添加すべきでないが、Nbを添加する場合は、Nb量は母材特性との両立の観点から0.025%以下とすることが好ましい。
V:0.050%以下
Vは、焼入性を高める成分であり、母材からの混入により含有されるが、応力除去焼鈍後の靱性をNbほどではないが著しく劣化させる。そのため可能な限り添加すべきでないが、Vを添加する場合は、V量は母材特性との両立の観点から0.050%以下とすることが好ましい。
本発明では、さらに式(4)、(5)で規定するPCM、PSRを規定する。
Pcm:0.12以上
Pcmは本来、溶接低温割れの危険性を表す指標であるが、同時に溶接部の強度ともよい相関があることが知られている。所望の継手強度を得るためには0.12以上にする必要があるため下限を0.12とした。一方Pcmが高いほど溶接部硬さが上昇するため、好ましくは、0.12〜0.18の範囲である。
Figure 0005853456
PSR:0.025以下
PSRは前述したように応力除去焼鈍後の析出脆化による靱性劣化を示す指標である。PSRが0.025超えでは応力除去焼鈍による靱性劣化が大きくなり、低酸素化や組織の微細化を行っても所望の靱性が得られないため、PSRは0.025以下とする。
なお、Tiは溶接時に酸化物、窒化物が優先的に析出し、その残りのTiがSR時に炭化物として析出し、靱性に悪影響を及ぼすため、Tieffを定義し、酸化物、窒化物になる無効Tiの影響を除外する。
Figure 0005853456
2.2溶接材料について
ワイヤのNb、V
溶接金属の成分は溶接材料の成分と母材から稀釈された成分から構成される。応力除去焼鈍後の溶接部靱性を確保するためにはNb、V量を減らすことが望ましい。一方、Nb、Vは、母材の強度、靱性を確保するために有効な働きをする。従って、母材へのNb、Vの添加可能量を増やすため、ワイヤへのNb、Vの積極的な添加は好ましくない。ただし、Nb、Vは不可避的不純物として許容される範囲で含有してもよい。その範囲はNb≦0.005%、V≦0.005%である。
フラックス
溶接金属のO量を低減するためには、高塩基性溶融型フラックスもしくは焼成型フラックスを用いる必要がある。溶融型フラックスに関しては、式(9)で定義される塩基度BLが1.0以上であるものが望ましい。
Figure 0005853456
2.3母材希釈率について
本発明では、母材のNb、V量とシーム溶接の円周方向断面から測定される母材の希釈率Aから、式(6)で規定されるWSRの上限を規定する。WSRは母材から溶接金属へのNb、Vの混入を示す指標で、この指標を用いることで、開先形状や溶接入熱、溶接積層数が異なる場合の応力除去焼鈍後の溶接金属靱性の変化を評価することができる。そのため、上限値は、溶接金属のPSRと同じ0.025%とする。より好ましくはTiの影響も考慮して0.022%とする。なお、母材稀釈率は、式(10)で計算される。
Figure 0005853456
Figure 0005853456
表1に示す化学成分の鋼(A〜L)を連続鋳造法によりスラブとし、再加熱して板厚が15〜120mmになるように高温(950℃以上)で熱間圧延して、その後室温まで空冷した。続いて、ショットブラストで表面スケールを除去後、表2に示す条件で焼入焼戻処理を行い、厚鋼板(No.1〜17)を製造した。焼入れおよび焼戻し保持温度は炉の保持温度を、保持時間は炉が目標温度−20℃に達してから厚鋼板を炉から出すまでの時間を採用した。焼入れ時の冷却速度は、厚鋼板(No.1)を作製する際に、焼入れまま(焼戻し処理前)の鋼板から一部サンプルを採取し、1/2tの硬さと930℃10min保持のCCT線図の硬さを比較することで各板厚毎の冷却速度を推定した。焼戻しの冷却は、空冷によって行った。また、比較として厚鋼板No.15は、連続鋳造スラブを1150℃に再加熱して、950℃以下で50%圧下して760℃で圧延を終了し、厚みを30mmにした後、720℃から400℃まで10℃/sで水冷し、室温まで空冷することによって作製した(TMCPと呼ぶ)。
Figure 0005853456
Figure 0005853456
上述の方法で製造した厚鋼板を長手方向に3000〜12000mmに切断し、冷間加工(UOE法もしくはベンディングロール法)で鋼管形状にし、サブマージアーク溶接でシーム部を溶接して溶接鋼管(イ〜ツ)を製造した。溶接鋼管の鋼管素材に用いた厚鋼板および造管方法、溶接条件を表3に示す。また、溶接に用いた溶接ワイヤの銘柄もしくは化学成分を表4に、溶接フラックスの銘柄もしくは化学成分を表5に示す。溶接ワイヤおよび溶接フラックスで成分が記載してあるものは、今回の検討で新たに作製したもの、もしくは成分分析を行ったもので、銘柄が記載してあるものは一般的に入手可能な市販品であり、今回は成分分析を行っていない。また、UOE法で造管したものについてはX状に開先加工した後、C−U−Oプレスを行い、外面側から炭酸ガス溶接で仮付け溶接を行い、内面1層溶接を行い、その後外面1層溶接を行った。一方、ベンディングロール法で造管したものについては、Y状に開先加工をした後、複数回のベンディングプレスで筒状にし、内面側を多層溶接を行い、その後外面側をガスガウジングで開先加工し多層溶接を行った。
Figure 0005853456
Figure 0005853456
Figure 0005853456
これらの溶接鋼管について以下に示す方法で特性評価試験およびミクロ組織の定量化を行った。引張試験は、管厚40mm未満のものについては、鋼管円周方向から採取したクーポンをプレス機でフラットニングしたものからAPIで規定される全厚引張試験片を採取して実施した。管厚40mm以上のものについては、鋼管円周方向から採取したクーポンの1/2t位置からフラットニングを実施せずにASTM A370−07aに準拠した直径12.7mmの丸棒引張試験片を採取して行った。
このとき、引張強度が415MPa(A516−Gr.60の下限値相当)を超えるものおよび降伏比(0.5%降伏応力/引張強さ×100)が85%以下のものを合格とした。
シャルピー試験は、母材については1/2t位置で圧延直角方向から採取し、溶接部については円周方向断面の溶接部中央の外面側溶接部から採取した2mmV切欠き試験片を−50℃で各3本試験しその平均値を用い、27J以上を合格とした。
HIC特性は、NACE Standard TM0284−2003に基づいて、各3個のサンプルを採取して、pHが約3の硫化水素を飽和させた5%Nacl+0.5%CHCOOH水溶液中に試験片を96時間浸漬した後、超音波探傷により試験片全面の割れの有無を調査し、割れ面積率(CAR)で評価した。ここで、それぞれの鋼板の最大値をその鋼板のCARとしてCAR≦6%を合格とした。
SSC特性は、NACE Standard TM0177−2005に基づいて、母材および溶接部について各2個の丸棒引張り型サンプルを採取して、負荷応力を母材の80%かけて、pHが約3の硫化水素を飽和させた5%Nacl+0.5%CHCOOH水溶液中に試験片720時間浸漬して破断するか否か評価した。このとき2本とも破断しなかった場合は、No crack、1本でも破断した場合は、Crackと評価した。
ミクロ組織の分率およびアスペクト比はそれぞれの厚鋼板(No.1〜17)の1/2t位置から採取したL面観察サンプルを鏡面研磨後、3%ナイタールエッチングして、光学顕微鏡で400倍の写真を3枚撮影して、画像解析を行うことで求めた。このとき、ポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトの平均粒径は各結晶粒の円相当径の平均値を、アスペクト比は各結晶粒の長辺/短辺の平均値を採用した。第2相の分率は、ポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライト以外の部分の分率を、アスペクト比は各組織および組織群の長辺/短辺の平均値を採用した。
溶接部の形状因子であるAW、AYは作製した溶接継手から円周方向面が観察面になるようにマクロサンプルを採取し、ナイタールエッチで組織を現出させ写真を撮影し、そこから画像解析により面積を測定することで求めた。開先断面積AKについては、シーム溶接直前に開先断面に一列にならべた針金の束を押し当て形状を抽出することで求めた。以上の測定方法で得られたAW、AY、AKと母材Nb、V量からWSR値を求めた。
溶接金属の化学成分は溶接金属のシャルピー試験評価位置とできるだけ一致するような面から採取したカントバック分析で実施した(O、N、Bは切り粉による湿式分析)。
表6に溶接金属部の化学分析値を示す。
Figure 0005853456
表7に引張試験、シャルピー試験、HIC試験、SSC試験の各試験結果を示す。
Figure 0005853456
溶接鋼管No.イ、ロ、ハ、ニ、ヘ、ソ、ツはいずれも本発明の成分範囲、組織形態範囲、製造方法範囲を満たすため、所望の強度、靱性、耐HICおよび耐SSC特性が得られている。一方、比較例である溶接鋼管No.ホ、ト、チ、リ、ル、ワ、レは溶接金属の化学成分がいずれも本発明の請求範囲外であるため、SR後の溶接金属部の靱性が低くなっている。溶接鋼管No.リは、焼入れ冷却速度が速いため、ベイナイト主体の組織となり降伏比が高くなっている。溶接鋼管No.ヌは、焼入れ冷却速度が遅いため、軟質フェライトが粗大化しすぎて、強度および靱性が劣化している。溶接鋼管No.ルは、フェライト主体の金属組織ではあるがフェライト粒径が細かすぎるため、降伏比が高くなっている。溶接鋼管No.ヲは、MnおよびPHICが上限を超えているため、HICで多くの割れがみられる。溶接鋼管No.ワは、ACRが低いため、HICで多くの割れがみられる。溶接鋼管No.カは、Cが上限を超えているため、HICで多くの割れがみられ、SSCでも割れが発生している。溶接鋼管No.ヨは、Tiが添加されていないため、フェライト粒が粗大化し靱性が劣化している。溶接鋼管No.タは、Bが添加されているため、SSCで割れが発生している。
溶接鋼管No.レは、TMCPで製造されており、軟質フェライトおよび第2相のアスペクト比が大きいため、HICで割れが多くみられる。

Claims (4)

  1. 厚鋼板からなる母材及び溶接金属部を有する溶接鋼管であって、該溶接鋼管の母材は、質量%で、C:0.03%以上0.08%未満、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜1.5%、P:0.010%以下、S:0.0030%以下、Al:0.005〜0.050%、Ti:0.005〜0.025%、B:0.0003%以下、Ca:0.0005〜0.0050%、O:0.0030%以下を含有し、さらにCu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Nb:0.025%以下、V:0.050%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、式(1)で規定されるCeqを0.28以上、式(2)で規定されるPHICを1.00以下、式(3)で規定されるACRを1.0〜4.0とし、残部Feおよび不可避的不純物からなり、前記母材の1/2t位置である管厚中央部の組織は、平均粒径10〜40μmかつ平均アスペクト比2.0以下のポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトを80〜95体積%含み、さらに平均アスペクト比2.0以下のベイナイト、パーライト、島状マルテンサイトおよびセメンタイトからなる硬質第2相を5〜20体積%含み、また、前記溶接鋼管の溶接金属部は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.50%以下、Mn:0.8〜1.5%、P:0.030%以下、S:0.010%以下、Al:0.050%以下、Ti:0.01〜0.04%、B:0.0005〜0.0040%、Ca:0.0040%以下、N:0.0080%以下、O:0.035%以下を含有し、さらにCu:1%以下、Ni:1%以下、Cr:1%以下、Mo:1%以下、Nb:0.025%以下、V:0.050%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有し、式(4)で規定されるPcmが0.12以上で、式(5)で規定されるPSRが0.025以下であることを特徴とするSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管。
    Figure 0005853456
    Figure 0005853456
    Figure 0005853456
    Figure 0005853456
    Figure 0005853456
  2. 請求項に記載の溶接鋼管の母材の成分組成を有する鋼片を加熱し熱間圧延した後、室温からAc点以上の温度まで加熱、保持した後、800〜500℃の温度域を冷却速度1〜25℃/sで水冷し、再び室温から550℃〜Ac点の温度に加熱、保持した後に空冷して作製した厚鋼板を、管状に成形してそのシーム部を、サブマージアーク溶接により接合することにより、母材の1/2t位置である管厚中央部の組織は、平均粒径10〜40μmかつ平均アスペクト比2.0以下のポリゴナルフェライトおよび擬似ポリゴナルフェライトを80〜95体積%含み、さらに平均アスペクト比2.0以下のベイナイト、パーライト、島状マルテンサイトおよびセメンタイトからなる硬質第2相を5〜20体積%含み、請求項記載の成分組成から成る溶接金属部を有する溶接鋼管とすることを特徴とするSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管の製造方法。
  3. 前記サブマージアーク溶接を、NbおよびVを含まない(ただし、不可避的不純物としてNb:0.005質量%以下、V:0.005質量%以下は許容される)ワイヤと、下記式(9)で定義される塩基度BLが1.0以上である高塩基性溶融型フラックスを用いて行うことを特徴とする請求項2に記載のSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管の製造方法。
    Figure 0005853456
  4. 前記母材のNbおよび/またはV含有量と母材希釈率Aとから式(6)で規定されるWSRが、0.025以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載のSR後の溶接部靱性に優れた低降伏比耐HIC溶接鋼管の製造方法。
    Figure 0005853456
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