JP4631386B2 - 有機el素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に関し、特に、発光層のホストとしてホール輸送性材料と電子輸送性材料とを混合した混合ホストを用いたものに関するものである。
有機EL素子は、自己発光のため、視認性に優れ、かつ数V〜数十Vの低電圧駆動が可能なため駆動回路を含めた軽量化が可能である。そこで、薄膜型ディスプレイ、照明、バックライトとしての活用が期待できる。また、有機EL素子は色バリエ−ションが豊富であることも特徴である。
特に、有機EL素子における高視野角・高コントラスト・低温作動性といった性能は、車載用ディスプレイとして極めて有望である。しかしながら、車載用途においては極めて品質基準が厳しく、有機EL特有の輝度低下や耐熱性といった問題により、実用化が難しかった。
輝度寿命を改善する方法としては、ホストとしてのホール輸送性材料および電子輸送性材料とドーパントとしての発光添加材料とを混合してなる発光層を適用する手法が、従来より提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、この手法においては、材料によってはホール輸送材料の耐熱性が不足しており、そのため、たとえば100℃のような高温環境下に曝すとダークスポット等の発生が顕著となり、その結果、輝度低下に至ることが確認された。
一方、従来より、発光層のホストとして種々なホール注入輸送性材料が開示されており(特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)、その中には、高温耐久性を向上させるために高ガラス転移温度を有する材料も開示されている。具体的には、100℃以上のガラス転移温度を有するようにトリフェニルアミンを分子内に3個以上配したものが提案されている。
特開平8−48656号公報 特開2000−156290号公報 国際公開第98/8360号パンフレット 特開平8−48974号公報
上記したような従来技術に鑑みて、本出願人らは、先に出願した特願2004−41458号(2004年2月18日出願)において、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層において、高ガラス転移温度と輝度寿命とを両立する材料を提案している。
この先願においては、当該3級アミン化合物として、特に1分子中にトリフェニルアミンが4個存在する骨格を選択することにより、容易に高ガラス転移温度を達成できるため、トリフェニルアミンが4個未満のものに対して分子設計の自由度が高いことを、長所としている。
また、この先願では、輝度寿命を改善するためには、3級アミン化合物のサイクリックボルタンメトリ−法により測定される複数の酸化電位において、この酸化電位差を所定の数値以上設けることにより高位の酸化電位の寄与を低減させ、発光層内にて電子輸送性材料へのホール移動を妨げることが効果的であるとしている。
3級アミン化合物すなわちホール輸送性材料の酸化電位が高いほど、発光層のホスト内においてホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホールの移動が行われやすくなり、それによって電子輸送性材料が励起されて劣化しやすくなる。
つまり、3級アミン化合物すなわちホール輸送性材料の酸化電位が高いほど、輝度寿命が短くなりやすい。そのため、上記先願では、ホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホール移動を抑制するようにしている。
しかしながら、上記先願においては、3級アミン化合物すなわちホール輸送性材料において酸化電位が複数存在するため、原理的には高位の酸化電位の寄与を低減することはできても、完全に無くすことはできない。そのため、発光層のホスト内にてホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホール移動を無くすことはできず、輝度寿命の低下は避けられなかった。
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、一対の電極間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を有する有機EL素子において、一つの酸化電位しか持たないホール輸送性材料を適用することを考えた。
ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層すなわち混合ホストを用いた発光層によって、輝度寿命が向上するのは、発光層内でホール輸送と電子輸送の各輸送機能が分担できるためと考えられる。
しかしながら、高温環境下で輝度寿命低下が発生するのは、ホストにおいてホール輸送性材料と電子輸送性材料の組合せによっては、電子輸送性材料が励起されやすくなるためであると考えた。そして、このことは、ホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホールの輸送に起因すると考えた。
図5は、このホール輸送性材料と電子輸送性材料との間のホールの輸送について模式的に示す図である。ホールの移動に関わるホール輸送性材料Haと電子輸送性材料Hbとの間のエネルギーギャップは、両材料Ha、Hb間のイオン化ポテンシャルの差ΔG1である。
通常、発光層の混合ホストにおいては、ホール輸送性材料同士の間にて分子から分子へホールが移動する。このとき、ホール輸送性分子は、中性状態からホールを受け取ると酸化され、相手のホール輸送性分子へホールを移動させると、自身は還元されて中性状態に戻る。
しかし、ホール輸送性材料において複数の酸化状態を持つものがある。なお、この酸化状態はサイクリックボルタンメトリー法により複数の酸化電位として容易に測定できるものである。
そのような複数の酸化電位では、通常、最も小さい電位から第1酸化電位、第2酸化電位、第3……、とされ、この第1酸化電位をイオン化ポテンシャルとして一般的には定義される。
ここで、ホール輸送性材料Haと電子輸送性材料HbとのエネルギーギャップΔG1は、元来、ホール輸送性材料のイオン化ポテンシャルすなわち第1酸化電位と電子輸送性材料のイオン化ポテンシャルすなわち第1酸化電位との差であり、このイオン化ポテンシャル差で求められるギャップΔG1が大きければ、ホール輸送性材料Haから電子輸送性材料Hbへのホールの授受は抑制されると考えられる。
しかし、ホール輸送性材料Haにおける第1酸化電位E1と第2酸化電位E2の値が近いものである場合、ホール輸送性材料Ha内で第1酸化電位E1から第2酸化電位E2へとホールが移動する。つまり、ホール輸送輸送性材料Haにおける高位の酸化電位もホール輸送に寄与することになる。
このとき、ホール輸送性材料Haと電子輸送性材料Hbとの実効的なエネルギーギャップはΔG2と小さくなり、ホール輸送性材料Haから電子輸送性材料Hbへのホールの授受が発生しやすくなる。
そのため、発光層中では、ホール輸送性材料Haの分子同士のみでホールを輸送させたいにもかかわらず、ホール輸送性材料Haから電子輸送性材料Hbへホールが移動し、電子輸送性材料Hb内で電子とホールとが再結合する。すると、電子輸送性材料Hbが励起され、劣化する。その結果、輝度寿命が低下すると考えられる。
このような図5参照して述べた推定メカニズムから、本発明者らは、発光層の混合ホストにおいて、ホ−ル輸送層として酸化電位を1つしか有さないものを選択すれば、ホールの移動に関わるホール輸送性材料と電子輸送性材料とのエネルギーギャップを十分確保して、これら両材料間でのホールの授受を抑制できると考えた。
そして、本発明者らは、この考えに基づき、発光層の混合ホストとなるホール輸送性材料に酸化電位を1つしか有さない3級アミン化合物を用いることに着目し、実験検討を行った。
その結果、当該3級アミン化合物として、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が1しか存在しない3級アミン化合物を適用した混合ホストは、上記先願に提案されるものに比べて、すなわち複数の酸化電位を有し且つ第1酸化電位と第2酸化電位との電位差が所定の値以上の3級アミン化合物を適用した混合ホストに比べて、さらに輝度寿命が向上することを見出した。
すなわち、請求項1に記載の発明では、一対の電極間(20、80)に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)を挟んでなる有機EL素子において、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が一つしか存在しないものであり、発光層(50)におけるホール輸送性材料と電子輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であり、3級アミン化合物は、後述する構造式(1)のものとすることを特徴としている。
た、請求項2に記載の発明では、一対の電極間(20、80)に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)を挟んでなる有機EL素子において、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が一つしか存在しないものであり、発光層(50)におけるホール輸送性材料と電子輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であり、3級アミン化合物は、後述する構造式(2)のものとすることを特徴としている。
これら請求項1、請求項2の発明は実験的に見出されたものであり、電子輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であって、且つホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位を1つしか有さないため、実効的なエネルギ−ギャップを効果的に確保することができ、輝度寿命の向上を図ることができる。
したがって、請求項1、請求項2の発明によれば、一対の電極(20、80)間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上を図ることができる。
また、請求項に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の有機EL素子において、発光層(50)において、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物はガラス転移温度が100℃以上のものであり、電子輸送性材料はガラス転移温度が100℃以上のものであることを特徴としている。
それによれば、発光層(50)中のホール輸送性材料のガラス転移温度および電子輸送性材料のガラス転移温度が、ともに100℃以上であるため、100℃以上の耐熱性を確保することができる。
つまり、本発明によれば、一対の電極(20、80)間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
ここで、上記請求項1に記載の有機EL素子における3級アミン化合物としては、次の構造式(2)で示される分子構造であるものを採用することができる。
Figure 0004631386
また、上記請求項2に記載の有機EL素子における3級アミン化合物としては、次の構造式(3)で示される分子構造であるものを採用することができる。
Figure 0004631386
また、請求項に記載の発明では、請求項1〜請求項に記載の有機EL素子において、発光層(50)は、一対の電極(20、80)における陰極(80)側よりも陽極(20)側においてホール輸送性材料の混合比率が大きくなるように、当該混合比率が異なる複数の層が積層されてなる構造であることを特徴としている。
このように、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)については、陰極(80)側よりも陽極(20)側においてホール輸送性材料の混合比率が大きくなるように、混合比率が異なる複数の層が積層された構造としたところ、輝度寿命の向上が図れることが実験的に確認できた。
ここで、請求項に記載の発明では、請求項に記載の有機EL素子において、発光層(50)において、複数の層にそれぞれ添加されている発光添加材料が互いに異なったものであることを特徴としている。
このように、複数の層に添加される発光添加材料(つまり発光添加色素)を、当該複数の層毎に異なるものを選択することによって、たとえば、白色のような混色発光も可能である。
さらに、このように発光層(50)において、添加される発光添加色素が異なるものからなるような複数の発光層が積層された構造である場合において、発光添加色素が青色発光であるような青色発光層が含まれる場合には、青色発光層を陰極側に配置し、青色発光よりも長波長発光を有する発光層を陽極側に配置することにより、輝度寿命の向上が図れることも実験的に確認できた。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る有機EL素子S1の概略断面構成を示す図である。
透明なガラス等からなる基板10の上に、インジウム−錫の酸化物(インジウムチンオキサイド、以下、ITOということにする)等の透明導電膜からなる陽極20が形成されている。
陽極20の上には、結晶性を有する有機材料として銅フタロシアニン(以下、CuPcということにする)等のホール注入性材料からなる正孔注入層30が形成され、正孔注入層30の上には、3級アミン化合物等のホール輸送性材料からなる正孔輸送層40が形成されている。
ここにおいて、陽極20としてITO膜を用いた場合には、そのITO膜の平均表面粗さRaが2nm以下であり、10点平均表面粗さRzが20nm以下であることが好ましい。なお、これらの表面粗さRa、Rzは、JIS(日本工業規格)に定義されたものである。
陽極20の上に位置する結晶性の有機材料としての正孔注入層30を、結晶性が高く安定した膜に成膜するためには、陽極20の表面粗度が重要となる。当該ITO膜のRaを2nm以下、Rzを20nm以下とすることは、本発明者らの検討の結果によるものである。
そして、正孔輸送層40の上には、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料とをホスト材料とし、これにドーパントとして発光添加材料を混合してなる発光層50が形成されている。
この発光層50の上には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alq3ということにする)等の電子輸送性材料からなる電子輸送層60が形成されている。さらに、電子輸送層60の上には、LiF(フッ化リチウム)等からなる電子注入層70が形成され、その電子注入層70上には、Al等の金属などからなる陰極80が形成されている。
こうして、一対の電極20、80の間には、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60および電子注入層70が積層されて挟まれており、有機EL素子S1が形成されている。
この有機EL素子S1においては、陽極20と陰極80との間に電界を印加し、陽極20からホールが、一方、陰極80から電子がそれぞれ発光層50へ注入、輸送され、発光層50にて電子とホールとが再結合し、そのときのエネルギーによって発光層50が発光するものである。そして、その発光は、たとえば基板10側から取り出され視認されるようになっている。
また、この有機EL素子S1は、基板10の上にスパッタ法や蒸着法等により各層20〜80を順次成膜することにより製造することができる。ここで、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60といった有機層は蒸着法により成膜することができる。
ここで、本実施形態の発光層50は、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなるが、ここに用いられるホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料は、100℃以上の耐熱性の確保を図る目的でガラス転移温度が100℃以上のものとしている。
また、輝度寿命の向上を図る目的で、発光層50におけるホール輸送性材料としての3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が1つのみ存在するものとしている。
このような1つのみの酸化電位を有するホール輸送性材料としての3級アミン化合物は、次の構造式(1)に示されるようなスタ−バ−スト化合物である。特に、分子構造の中心にトリフェニルアミンではなくベンゼンを有する非共役型のスターバースト化合物である。
Figure 0004631386
ここで、構造式(1)において、R1〜R6は水素、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基のいずれかである。
さらに、本実施形態の発光層50では、輝度寿命の向上のために、電子輸送性材料は、ホール輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上のものであることが好ましい。
[検討例]
ここで、本実施形態における発光層50の構成等について、具体的な化合物を用いて検証した検討例を参照して、より詳細に述べる。なお、本実施形態は、これら検討例によって限定されるものではない。
[検討例に用いた発光層の構成材料]
以下の化学式8〜化学式17に、検討例に用いた発光層50の構成材料としての化合物1〜10を挙げておく。
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
Figure 0004631386
ここで、化合物1(化学式8参照)、化合物2(化学式9参照)、化合物3(化学式10参照)、化合物4(化学式11参照)、化合物5(化学式12参照)、および化合物10(化学式17参照)はホール輸送性材料である。
なお、化学式8で表される化合物1は、上記「手段」の欄にて化学式5で示した構造式(2)のものと同じであり、化学式17で表される化合物10は、上記「手段」の欄にて化学式6で示した構造式(3)のものと同じである。
また、化合物6(化学式13参照)および化合物7(化学式14参照)は電子輸送性材料であり、化合物8(化学式15参照)は青色系の発色を行うスチリルアミン誘導体であり化合物9(化学式16参照)は黄色系の発光を行うルブレンであり、これら化合物8、9は発光添加材料である。
このうち化合物4〜9は公知の化合物であるため、これら化合物4〜9以外の化合物1〜3および10について合成法を示しておく。
[化合物1]
化合物1:1,3,5−トリス{N−(4−メチルビフェン−4’−イル)−N−(4−メチルフェニル)アミノ}ベンゼンの合成について。
4−アセトトルイジド22.4g(0.15モル)と4−メチル−4’−ヨードビフェニル44.1g(0.15モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール100mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム11.9g(0.18モル)を加え、130℃で加水分解した。
水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去した後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。この濃縮物はカラムクロマトにより精製して、N−(4−メチルビフェン−4’―イル)−N−(4−メチルフェニル)アミン24.6g(収率60%)を得た。
更に、N−(4−メチルビフェン−4’―イル)−N−(4−メチルフェニル)アミン16.4g(0.06モル)と1,3,5−トリス(4−ヨードフェニル)ベンゼン9.1g(0.02モル)とのウルマン反応により、1,3,5−トリス{N−(4−メチルビフェン−4’−イル)−N−(4−メチルフェニル)アミノ}ベンゼンを合成した(収率70%)。得られた材料のガラス転移温度Tgは103℃であった。
[化合物2]
化合物2:1,3,5−トリス{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ベンゼンの合成について。
1,3,5−トリス(4−ヨードフェニル)ベンゼン6.8g(0.01モル)とジフェニルアミン8.45(0.05モル)、水素化カルシウム7.5g、銅粉3.0g、及びメシチレン30mLを三口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃の温度にて24時間反応させた。
この後、得られた反応混合物をエタノールに加えて再沈殿させ、得られた沈殿物をトルエンに溶解させ、この溶液をシリカゲルクロマトグラフィーに付して、反応生成物を分取した。
この反応物をトルエンーエタノール混合溶媒から2回再結晶を行うことにより、1,3,5−トリス{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ベンゼンを合成した(収率75%)。得られた材料のTgは121℃であった。
[化合物3]
化合物3:N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノビフェニル−4’−イル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニルの合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4’−ヨードジフェニル−4−イル)アセトアニリド37.2g(収率60%)を得た。
続いて、N−(4’−ヨードジフェニル−4−イル)アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、4−ジフェニルアミノ−4’−フェニルアミノビフェニル9.2g(収率70.0%)を得た。
更に、4−ジフェニルアミノ−4’−フェニルアミノビフェニル8.7g(0.021モル)、4,4’−ジヨード−p−ターフェニル4.8g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノビフェニル−4’−イル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル4.7g(収率;45.0%)を得た。
[化合物10]
化合物10:1,3,5−トリス[N,N−ビス{(4’−メチルビフェン−4−イル)}アミノ]ベンゼンの合成について。
ビス{(4’−メチルビフェン−4−イル)}アミン17.5g(0.05モル)と1,3,5−トリヨードベンゼン4.6g(0.01モル)、水素化カルシウム7.5g、銅粉3.0g、及びメシチレン30mLを三口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃の温度にて24時間反応させた。
この後、得られた反応混合物をエタノールに加えて再沈殿させ、得られた沈殿物をトルエンに溶解させ、この溶液をシリカゲルクロマトグラフィーに付して、反応生成物を分取した。
この反応物をトルエン−エタノール混合溶媒から2回再結晶を行うことにより、1,3,5−トリス[N,N−ビス{(4’−メチルビフェン−4−イル)}アミノ]ベンゼンを合成した(収率70%)。得られた材料のTgは143℃であった。
[検討例に用いた化合物の物性等]
以上のような化合物1〜10のうち発光添加材料である化合物8、9を除く、化合物1〜7および10の物性値について述べておく。
まず、ホール輸送性材料である化合物1〜5および10について述べる。ガラス転移温度(Tg)については、化合物1は103℃、化合物2は121℃、化合物3は151℃、化合物4は96℃、化合物5は144℃、化合物6は143℃である。また、電子輸送性材料である化合物6および化合物7はそれぞれ175℃、164℃である。
化合物1〜7のイオン化ポテンシャル(Ip)については、化合物1は5.50eV、化合物2は5.65eV、化合物3は5.46eV、化合物4は5.47eV、化合物5は5.40eV、化合物6は5.85eV、化合物7は5.75eVである。なお、イオン化ポテンシャルの測定については、理研計器製の光電子測定装置(AC−2)を用いて行った。
化合物1〜5および10の酸化電位については、一般に知られているサイクリックボルタンメトリー法、すなわち、発光層50のホール輸送性材料である3級アミン化合物を含む溶液に電位変化を与えるという方法により測定した。
その結果、酸化電位については、化合物1および2および10は単一であり、化合物3、4、5は2つ存在した。化合物3の酸化電位差は0.22V、化合物4は0.25V、化合物5は0.19Vであった。
サイクリックボルタンメトリー法による酸化電位の測定の一例として、化合物1の測定結果を図2に示し、化合物3の測定結果を図3に示す。なお、化合物10は図2に示される化合物1と同形状の測定結果であった。ここで、サイクリックボルタンメトリー法の測定条件は次に示されるとおりである。
参照電極:飽和カロメル電極、作用電極:白金電極、対電極:白金電極、支持電解質:塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、測定試料:測定試料が1mmol/lで支持電解質が0.1mmol/lの塩化メチレン溶液、測定条件:室温でスイープ速度100mV/sec(三角波)。
図2に示される化合物1は、単一の酸化電位Eを有するものである。一方、図3に示される化合物3は、複数の酸化電位を有するものであり、最も小さい第1酸化電位E1と2番目に小さい第2酸化電位E2との差が酸化電位差となる。
以上の3級アミン化合物である化合物1〜7および10のうち、ガラス転移温度が100℃以上であり且つサイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が1つのみ存在するものは、化合物1、2および10である。
[輝度寿命および耐熱性等の検討結果]
次に、上記化学式8〜化学式17に示される化合物1〜10を用いて、有機EL素子S1を作製し、輝度寿命や高温保存性(耐熱性)について検証した。その結果は次の表1に示してある。
Figure 0004631386
具体的に、上記表1では各例について次のような項目を示してある。各例における発光層50を構成する「ホール輸送性材料」、「電子輸送性材料」、「発光添加材料」、「輝度寿命」、「高温保存」、ホール輸送性材料の「酸化電位数」、ホール輸送性材料の「酸化電位差」、ホール輸送性材料の「Tg(単位:℃)」、ホール輸送性材料と電子輸送性材料のイオン化ポテンシャル差である「ΔIp(単位:eV)」。
ここで、輝度寿命は、各例にて作製された素子を85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行い、駆動時間が400時間後のときの輝度を初期輝度を1と規格化した規格化輝度で示している。
高温保存は、100℃以上の耐熱性を調べたもので、100℃での保存試験によりダークスポットが発生したものについては「×」、発生しなかったものについては「○」としている。
次に、上記表1に示される個々の検討例について、具体的な実施態様を示しておく。
(検討例1−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物1を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:20:3の重量比により20nm形成した。
電子輸送層60として発光層50側から化合物6を20nm、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを10nm形成し、その上の電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例1−2)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50および電子輸送層60の発光層50側の層に用いる電子輸送性材料を化合物7に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例2−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物2に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例2−2)
上記検討例2−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50および電子輸送層60の発光層50側の層に用いる電子輸送性材料をを化合物7に替えたこと以外は、上記検討例2−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例3−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物3に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例3−2)
上記検討例3−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50および電子輸送層60の発光層50側の層に用いる電子輸送性材料を化合物7に替えたこと以外は、上記検討例3−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例4−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物4に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、ダークスポットが発生した。
(検討例4−2)
上記検討例4−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50および電子輸送層60の発光層50側の層に用いる電子輸送性材料を化合物7に替えたこと以外は、上記検討例4−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、ダークスポットが発生した。
(検討例5−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物5に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例5−2)
上記検討例5−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50および電子輸送層60の発光層50側の層に用いる電子輸送性材料を化合物7に替えたこと以外は、上記検討例5−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例6−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物10に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例6−2)
上記検討例6−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50および電子輸送層60の発光層50側の層に用いる電子輸送性材料を化合物7に替えたこと以外は、上記検討例6−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表1に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
次に、上記表1に示される結果に基づいて、各検討例における特徴点などについて述べる。
上記表1に示されるように、検討例1−1、3−1、6−1では、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料を、ガラス転移温度Tgが100℃以上のものとしており、ホール輸送性材料と電子輸送材料のイオン化ポテンシャル差ΔIpが0.35eV以上の値である。さらに、検討例3−1では、ホール輸送性材料の酸化電位差が0.22V以上の値である。
それにより、これらの例では、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができている。
さらに、ホール輸送性材料の酸化電位が一つしかない化合物1および10を適用した検討例1−1および6−1の方が、ホール輸送性材料の酸化電位が2つある化合物3を適用した検討例3−1に比べて、さらに輝度寿命が向上している。
これは、発光層50中のホール輸送性材料および電子輸送性材料のガラス転移温度Tgが100℃以上であること、および、ホール輸送性材料と電子輸送材料のイオン化ポテンシャル差ΔIpが0.35eV以上の関係とすることにより、ホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホール(正孔)の移動を抑制し、電子輸送性材料の劣化を抑制できることによるものと考えられる。
さらに、単一酸化電位であるホール輸送性材料を適用することにより輝度寿命が向上するのは下記理由によると考えられる。
そもそも混合ホスト発光層においてホール輸送性材料の酸化電位が2つ存在する場合には、ホール輸送性材料内にて第1酸化電位から第2酸化電位へホールが移動し、ホールが電子輸送性材料へ移動し励起状態になり易くなるため、電子輸送性材料の劣化によって輝度低下すると考えられる。
このため、このように複数の酸化電位を有するホール輸送性材料の場合には、その酸化電位差が0.22V以上となるものを適用し、さらにホール輸送性材料と電子輸送材料のイオン化ポテンシャル差が0.35eV以上の関係とすることにより、ホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホール移動を効果的に抑制する結果、輝度寿命が向上することを本発明者は実験的に見出した。検討例3−1がこれに相当する。
そして、この検討例3−1よりも検討例1−1および6−1の方が輝度寿命が向上している点については、ホール輸送性材料として単一の酸化電位を有する材料を適用することによって、そもそも第1酸化電位から第2酸化電位へホールが移動する確率を無くしたことが効果を奏しているためと考えられる。
言い換えれば、酸化電位が2つ存在する場合には、酸化電位差を0.22V以上とすることで、2つの酸化電位の間のホールの移動確率を低減することはできても完全に抑制することはできないこと示唆する。
また、通常、混合ホストを用いた発光層によって、輝度寿命が向上するのは、発光層内でホール輸送と電子輸送の各輸送機能が分担できるためと考えられる。混合ホストを用いた発光層による輝度寿命向上の効果を調べてみた。
上記表1に示される検討例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1および6−1において、発光層のホストが混合ホストではないものを作製し、比較検討した。その検討結果を次の表2に示す。
Figure 0004631386
この表2では、検討例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1および6−1の素子を「混合層有」の欄に示してある。また、これら各検討例について、「混合層なし」のものは、混合ホストとしない単一ホストの発光層とした場合の素子であり、各場合の素子について、その輝度寿命を調べた。
具体的に、この「混合層なし」のものは、各検討例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1および6−1において、発光層を、電子輸送性材料である化合物5と発光添加材料である化合物7とを100:5の重量比により200nm形成したこと以外は、すべて同じにしたものである。
表2からわかるように、いずれの場合も、発光層を混合ホストとすることにより輝度寿命が向上している。
ここで、発光層を混合ホスト層すなわち3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる層とした有機EL素子において、輝度低下が抑制されるメカニズムは、次のように推定される。
発光層が単一ホスト材料の場合には下記式によって発光すると考えられる。
(化18)
++H-+D →(H*+D)→ H+D* → H+D
ここで、Hはホスト材料分子である電荷(ホールまたは電子)輸送材料分子、Dはゲスト材料分子である発光添加材料分子、*は一重項励起状態を示す。
ホスト材料が単一のため、ホスト材料分子の各極性イオンH+、H-からゲスト材料分子Dに電荷移動し発光するか、もしくはホスト材料分子の励起状態H*からゲスト材料分子Dに電荷移動する結果、ゲスト分子が励起状態D*になり発光する。
一方、発光層が混合ホスト層の場合には下記式によって発光すると考えられる。
(化19)
Ha++Hb-+D → Ha+Hb+D* → Ha+Hb+D
ここで、Ha、Hbはホスト材料分子であって、Haはホール輸送性材料分子、Hbは電子輸送性材料分子である。また、Dはゲスト材料分子である発光添加材料分子、*は一重項励起状態を示す。
ホスト材料であるHaとHbはエネルギーバンドのずれが非常に大きいため、相互の電荷移動は発生しない。このためホスト材料は励起状態になることなく、ゲスト材料分子Dに電荷移動する結果、ゲスト分子が励起状態D*になり発光する。
このように、混合ホスト層では、ホスト分子Ha、Hbは励起状態にならないので、ホスト材料の劣化が起こりにくい。このことが、混合ホスト層としたことによる輝度寿命向上の一つの原因と推定される。
しかしながら、発光層を混合ホスト層とした場合でも、ホストにおいてホール輸送性材料と電子輸送性材料の組合せによっては、電子輸送性材料が励起されやすくなる場合がある。本実施形態では、このような組合せを極力排除し、電子輸送性材料の励起を抑え、輝度寿命の向上を図ることができる。
つまり、上述した検討例3−1のように、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物の酸化電位差が0.2V以上の値であれば、電子輸送性材料の劣化を抑制し、輝度寿命が向上できるのである。さらに、検討例1−1および6−1のように酸化電位が1つしか存在しないものであれば、上述した単一の酸化電位による効果も発揮されることから、さらに輝度寿命が向上する。
また、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料が、ガラス転移温度が100℃以上であれば、高温保存が良好であり、100℃以上にさらされてもダークスポットが発生しない。実際に、ガラス転移温度が100℃未満である化合物4(上記化学式11参照)では、高温保存にてダークスポットが発生している。
このダークスポットの原因を調べた結果を図4に示しておく。図4は、上記化合物4を使用した検討例4−1の素子について、100℃で500時間保存した後の断面形状を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真に基づいて模式的に表した図である。
この観察結果から、ホール輸送性材料が存在する層(正孔輸送層40、発光層50)が部分的に空洞化していることが判明した。
空洞化部分K1では、電流が流れないため非発光領域となり、ダークスポットとして認識されると考えられる。これは、環境温度が材料のガラス転移温度よりも高いため、分子振動が活発になり体積変化が進行したためであると推定される。
[発光層における陰極側と陽極側との混合比率の変更についての検討]
また、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層50について、陰極80側よりも陽極20側においてホール輸送性材料の混合比率が大きくなるように、混合比率が異なる複数の層が積層された構造としたところ、輝度寿命の向上が図れることが確認できた。
具体的には、たとえば発光層50を、陽極20側の第1の層と陰極80側の第2の層との2層構成とし、発光層50を2回に分けて成膜する。そして、当該第1の層では、当該第2の層よりもホール輸送性材料の混合比率を多くすればよい。
この場合、複数の層に添加される発光添加材料(つまり発光添加色素)を、当該複数の層毎に異なるものを選択することによって、たとえば、白色のような混色発光も可能である。
さらに、このように発光層50において、添加される発光添加色素が異なるものからなるような複数の発光層が積層された構造である場合において、発光添加色素が青色発光であるような青色発光層が含まれる場合には、青色発光層を陰極側に配置し、青色発光よりも長波長発光を有する発光層を陽極側に配置することにより輝度寿命の向上が図れることも確認できた。
以下、この発光層における陰極側と陽極側との混合比率の変更による効果を確認したことについて、具体的な化合物を用いて検証した検討例7−1、7−2、8−1、8−2、9−1、9−2、10−1、10−2を参照して、より詳細に述べる。
これら検討例に用いた発光層50におけるホール輸送性材料は、上記化合物1(上記化学式8参照)および上記化合物10(上記化学式17参照)の3級アミン化合物である。また、発光層50における電子輸送性材料は、上記化合物6(上記化学式13参照)であり、発光添加材料は、上記した化合物8(上記化学式15参照)および化合物9(上記化学式16参照)である。
そして、これら化合物1、6、8、9および10を用いて、有機EL素子S1を作製し、輝度寿命や高温保存性(耐熱性)、発光効率等について検証した。その結果は、次の表3および表4に示してある。
Figure 0004631386
Figure 0004631386
具体的に、これら表3、表4では各例について次のような項目を示してある。各例における発光層50を構成するホール輸送性材料、電子輸送性材料、発光添加材料、および輝度寿命、高温保存。
さらに、これら表3、表4では、各例について、発光層50における陽極20側の部位の電子輸送性材料とホール輸送性材料との混合比率、陰極80側の部位の電子輸送性材料とホール輸送性材料との混合比率を示してある。
ここで、上記表1と同様に、輝度寿命は、各例にて作製された素子を85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行い、駆動時間が400時間後のときの輝度を、初期輝度を1と規格化した規格化輝度で示している。
高温保存は、上記表1と同様、100℃以上の耐熱性を調べたもので、100℃での保存試験によりダークスポットが発生したものについては「×」、発生しなかったものについては「○」としている。
これら表3および表4に示される個々の検討例について、具体的な実施態様を示しておく。
(検討例7−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物1を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:20:3の重量比により20nm形成した。
電子輸送層60として発光層50側から化合物6を20nm、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを10nm形成し、その上の電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表3に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例7−2)
上記検討例7−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50において3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:30:3の重量比により10nm形成した。
さらに、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:15:3の重量比により10nm形成した。このこと以外は上記検討例7−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表3に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物10を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:20:3の重量比により20nm形成した。
電子輸送層60として発光層50側から化合物6を20nm、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを10nm形成し、その上の電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表3に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−2)
上記検討例8−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50において3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:30:3の重量比により10nm形成した。
さらに、3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:15:3の重量比により10nm形成した。このこと以外は上記検討例8−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表3に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
上記化合物1および10に代表されるような単一酸化電位しか有さないようなスターバースト骨格を有するホール輸送性材料は、ホール移動度が比較的高い。
このため、ホール輸送層40から発光層50においてのホール移動度の変化は極めて大きく、この部分でホールは急減速される。その際、高いエネルギーを有するホールが発光層内の電子輸送性材料にも移動してしまうと考えられる。
このため、ホール輸送性材料の混合比率を段階的にし、急激なホール移動度の変化を抑制することによって、発光層内の電子輸送性材料にホールが移動する確率が低減し、輝度寿命が向上したと考えられる。
(検討例9−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物1を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6(と発光添加材料である化合物9とを、それぞれ60:20:3の重量比により10nm形成した。さらに、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:20:3の重量比により10nm形成した。
電子輸送層60として発光層50側から化合物6を20nm、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを10nm形成し、その上の電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。この素子は化合物8による青色発光と化合物9による黄色発光の混色による白色発光を示した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表4に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例9−2)
上記検討例9−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50において3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物9とを、それぞれ60:30:3の重量比により10nm形成した。
さらに、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:15:3の重量比により10nm形成した。このこと以外は上記検討例7−1と同様にして素子を作製した。この素子は化合物8による青色発光と化合物9による黄色発光の混色による白色発光を示した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表4に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例10−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物10を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物9とを、それぞれ60:20:3の重量比により10nm形成した。さらに、3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:20:3の重量比により10nm形成した。
電子輸送層60として発光層50側から化合物6を20nm、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを10nm形成し、その上の電子輸送層61としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを10nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。この素子は化合物8による青色発光と化合物9による黄色発光の混色による白色発光を示した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表4に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例10−2)
上記検討例10−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50において3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物9とを、それぞれ60:30:3の重量比により10nm形成した。
さらに、3級アミン化合物である化合物10と電子輸送性材料である化合物6と発光添加材料である化合物8とを、それぞれ60:15:3の重量比により10nm形成した。このこと以外は上記検討例10−1と同様にして素子を作製した。この素子は化合物8による青色発光と化合物9による黄色発光の混色による白色発光を示した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は上記表4に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
これら検討例9−1、9−2、10−1、10−2により、異なる発光色を有する発光層が積層された構造においても、同様の効果が発現することを確認できた。
また、検討例9−2および10−2では検討例7−2および8−2に比べて輝度寿命が向上している。このことは、検討例9−2および10−2の発光層50において、添加される発光添加色素が異なる複数の層が積層された構造であり、さらに化合物8による青色発光層を陰極80側に配置し、青色発光よりも長波長発光を有する化合物9による発光層を陽極20側に配置したことによる輝度寿命向上効果を実証している。
本発明の実施形態に係る有機EL素子の概略断面構成を示す図である。 サイクリックボルタンメトリー法による酸化電位の測定の一例として化合物1の測定結果を示す図である。 サイクリックボルタンメトリー法による酸化電位の測定の一例として化合物3の測定結果を示す図である。 化合物4を使用した検討例4−1の素子について100℃で500時間保存した後の断面形状を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真に基づいて模式的に表した図である。 ホール輸送性材料と電子輸送性材料との間のホールの輸送について模式的に示す図である。
符号の説明
20…陽極、50…発光層、80…陰極。

Claims (5)

  1. 一対の電極間(20、80)に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)を挟んでなる有機EL素子において、
    前記ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が一つしか存在しないものであり、
    前記発光層(50)における前記ホール輸送性材料と電子輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であり、
    前記3級アミン化合物は、次の構造式(2)で示される分子構造であることを特徴とする有機EL素子。
    Figure 0004631386
  2. 一対の電極間(20、80)に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層(50)を挟んでなる有機EL素子において、
    前記ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が一つしか存在しないものであり、
    前記発光層(50)における前記ホール輸送性材料と電子輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であり、
    前記3級アミン化合物は、次の構造式(3)で示される分子構造であることを特徴とする有機EL素子。
    Figure 0004631386
  3. 前記発光層(50)において、前記ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物はガラス転移温度が100℃以上のものであり、
    前記電子輸送性材料はガラス転移温度が100℃以上のものであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子。
  4. 前記発光層(50)は、前記一対の電極(20、80)における陰極(80)側よりも陽極(20)側においてホール輸送性材料の混合比率が大きくなるように、当該混合比率が異なる複数の層が積層されてなる構造であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の有機EL素子。
  5. 前記発光層(50)において、前記複数の層にそれぞれ添加されている発光添加材料が互いに異なったものであることを特徴とする請求項に記載の有機EL素子。
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