JP4629525B2 - 積層セラミック部品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このため高誘電率層と低誘電率層との間に中間層を設けて一体焼成する方法が下記特許文献1〜4に開示されている。また、高誘電率層を多層基板の厚さ方向に対称に配置して一体焼成する方法が下記特許文献5に開示されている。
〈1〉ガラス及び低誘電率無機フィラーを含有する低誘電率層と、該ガラスと同一組成系のガラス及び高誘電率無機フィラーを含有する高誘電率層と、が積層された積層部を備え、
且つ、該低誘電率無機フィラーは、組成式(1)[xCaO・yM1O・zSiO2](但し、x+y+z=100モル%である。)で表した場合に下記条件(1)及び条件(2)を満たし、
上記高誘電率無機フィラーは、組成式(3)[aBaO・bTiO 2 ・cREO 3/2 ・dBiO 3/2 ](但し、REは希土類金属元素であり、a、b、c及びdはモル比を表し、a+b+c+d=1である。)で表した場合に下記条件(3)を満たし、
上記低誘電率層を構成している上記ガラス、及び、上記高誘電率層を構成している上記ガラスの各々は、少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、該各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、該BaをBaO換算で25〜55質量%、該ZnをZnO換算で5〜30質量%、該BをB 2 O 3 換算で15〜35質量%、該SiをSiO 2 換算で5〜30質量%、各々含有することを特徴とする積層セラミック部品。
条件(1);上記組成式(1)中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式(1)中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。
〈2〉上記低誘電率層中の上記ガラスの含有量は、該低誘電率層全体に対して35体積%以下である上記〈1〉に記載の積層セラミック部品。
〈3〉上記高誘電率層中の上記ガラスの含有量は、該高誘電率層全体に対して45体積%以下である上記〈1〉又は〈2〉に記載の積層セラミック部品。
〈4〉上記低誘電率無機フィラーは、フォルステライト、クリストバライト、モンチセライト、エンスタタイト、クオーツ、ウィルマイト及びトリジマイトのうちの少なくとも1種の結晶相を有する上記〈1〉乃至〈3〉のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品。
〈5〉上記積層部は、上記低誘電率層の一面の一部と上記高誘電率層の一面の一部とが直接接して積層された部位を有し、該低誘電率層の一面の他部と該高誘電率層の一面の他部との間にAg及び/又はCuを含み、且つ、該低誘電率層及び該高誘電率層と同時焼成された導体層を備える上記〈1〉乃至〈4〉のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品。
〈6〉上記低誘電率層中の上記ガラスの含有量と、上記高誘電率層中の上記ガラスの含有量との差は、15体積%以下である上記〈1〉乃至〈5〉のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品。
〈7〉少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、該各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、該BaをBaO換算で25〜55質量%、該ZnをZnO換算で5〜30質量%、該BをB2O3換算で15〜35質量%、該SiをSiO2換算で5〜30質量%、各々含有するガラスと、
組成式(1)[xCaO・yM1O・zSiO2](但し、x+y+z=100モル%である。)で表した場合に下記条件(1)及び条件(2)を満たす低誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成低誘電率シートを形成する未焼成低誘電率シート製造工程、
上記ガラスと、組成式(3)[aBaO・bTiO2・cREO3/2・dBiO3/2](但し、REは希土類金属元素であり、a、b、c及びdはモル比を表し、a+b+c+d=1である。)で表した場合に下記条件(3)を満たす高誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成高誘電率シートを形成する未焼成高誘電率シート製造工程、
上記未焼成低誘電率シート及び/又は上記未焼成高誘電率シートの表面にAg及び/又はCuを含有する未焼成導体層を形成する未焼成導体層形成工程、
上記未焼成導体層形成工程を経たのちの上記未焼成低誘電率シートと上記未焼成高誘電率シートとを積層して未焼成積層体を製造する積層工程、並びに、
上記未焼成積層体を800〜1050℃で焼成する焼成工程、を備えることを特徴とする積層セラミック部品の製造方法。
条件(1);上記組成式中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。
〈8〉少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、該各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、該BaをBaO換算で25〜55質量%、該ZnをZnO換算で5〜30質量%、該BをB2O3換算で15〜35質量%、該SiをSiO2換算で5〜30質量%、各々含有するガラスと、
組成式(1)[xCaO・yM1O・zSiO2](但し、x+y+z=100モル%である。)で表した場合に下記条件(1)及び条件(2)を満たす低誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成低誘電率シートを形成する未焼成低誘電率シート製造工程、
上記ガラスと、組成式(3)[aBaO・bTiO2・cREO3/2・dBiO3/2](但し、REは希土類金属元素であり、a、b、c及びdはモル比を表し、a+b+c+d=1である。)で表した場合に下記条件(3)を満たす高誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成高誘電率シートを形成する未焼成高誘電率シート製造工程、
所定位置及び所定枚数が各々積層されるように、上記未焼成低誘電率シートと上記未焼成高誘電率シートとを積層し、且つ、該積層の間にAg及び/又はCuを含有する未焼成導体層を印刷形成して未焼成積層体を製造する積層工程、並びに、
上記未焼成積層体を800〜1050℃で焼成する焼成工程、を備えることを特徴とする積層セラミック部品の製造方法。
条件(1);上記組成式中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。
〈9〉上記低誘電率無機フィラーは、上記各金属元素の酸化物、炭酸塩及び/又は水酸化物を混合したのち1000〜1300℃で仮焼して仮焼物を得、次いで、該仮焼物を粉砕して得られる上記〈7〉又は〈8〉に記載の積層セラミック部品の製造方法。
〈10〉上記低誘電率無機フィラーは、フォルステライト、クリストバライト、モンチセライト、エンスタタイト、クオーツ、ウィルマイト及びトリジマイトのうちの少なくとも1種の結晶相を有する上記〈7〉乃至〈9〉のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品の製造方法。
低誘電率層及び高誘電率層を構成しているガラスが所定のガラスである場合は、特にガラスの使用量を少なくすることができ、更に、層間剥離及び割れのない積層セラミック部品を得ることができる。
低誘電率無機フィラーが所定の結晶相を有する場合は、特に低誘電率層の誘電損失を小さくできる。
高誘電率層を構成しているガラスが45体積%以下である場合は、ガラスの使用量が少ないにも関わらず、上記積層セラミック部品の焼結性を保持しつつ、特に高誘電率層のQ値を大きくできる。
高誘電率無機フィラーが所定の組成である場合は、特に前記ガラスとの相性がよく、優れた焼結性を示す。
積層部が低誘電率層と高誘電率層との間に導体層を備える場合であっても、層間の反応層の形成が抑制され、積層セラミック部品の性能設計を行い易い。
低誘電率無機フィラーが1000〜1300℃で仮焼してなる仮焼物を粉砕して得られる場合は、特に優れた焼結性を得ることができる。
低誘電率無機フィラーが、所定の結晶相を有する場合は、特に低誘電率層の誘電損失を小さくできる。
[1]積層セラミック部品
本発明の積層セラミック部品は、低誘電率層と高誘電率層とが積層された積層部を備え、且つ、低誘電率無機フィラーは、上記組成式(1)で表した場合に上記条件(1)及び上記条件(2)を満たし、高誘電率無機フィラーは、上記組成式(3)で表した場合に上記条件(3)を満たし、低誘電率層を構成しているガラス、及び、高誘電率層を構成しているガラスの各々は、少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、BaをBaO換算で25〜55質量%、ZnをZnO換算で5〜30質量%、BをB 2 O 3 換算で15〜35質量%、SiをSiO 2 換算で5〜30質量%、各々含有することを特徴とする。
上記Znは、ZnO換算で5〜30質量%であり、好ましくは7〜25質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。この範囲では特に焼結性に優れる。
上記Bは、B2O3換算で15〜35質量%であり、好ましくは17〜33質量%、より好ましくは20〜30質量%である。この範囲では特に焼結性に優れ、誘電損失が小さい。
上記Siは、SiO2換算で5〜30質量%であり、好ましくは7〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。この範囲では特に焼結性に優れ、誘電損失が小さい。
更に、低誘電率層構成ガラスには、上記各元素以外にも他の元素が含有されていてもよい。他の元素としては、アルカリ金属元素(Li、Na及びK等)、Ba以外のアルカリ土類金属元素(Mg、Ca及びSr等)、その他の金属元素(Ti、Zr、Al及びSi等)が挙げられる。但し、この低誘電率層構成ガラスは、低温焼結性能を向上させるPbを含有することはできるが、環境保護の観点から含まれないことが好ましい。また、ガラス中に含有されるCa及びSrは合計で低誘電率層構成ガラス全体に対して0.5質量%以下であることが好ましい。
条件(1);上記組成式(1)中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式(1)中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
この組成式(1)中のM1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。即ち、低誘電率無機フィラーにはMgOのみが含有されてもよく、ZnOのみが含有されてもよく、MgO及びZnOの両方が含有されてもよい。
AB2C2D領域:
A(0,35,65)、B2(10,40,50)、C2(10,68,22)、D(0,80,20)
A2B3C3D2領域:
A2(0,45,55)、B3(10,45,45)、C3(10,65,25)、D2(0,75,25)
A2B4C4D2領域:
A2(0,45,55)、B4(7,45,48)、C4(7,68,25)、D2(0,75,25)
A3B5C4D2領域:
A3(0,55,45)、B5(7,55,38)、C4(7,68,25)、D2(0,75,25)
また、これらの結晶相は主結晶相であることが好ましい。即ち、例えば、これらの結晶相は低誘電率無機フィラー全体を100質量%とした場合に、合計で50質量%以上(より好ましくは60質量%以上、100質量%であってもよい)含有されることが好ましい。この範囲では低温焼結性が特に優れている。
また、上記xが0〜13モル%であり、上記yが35〜80モル%であり、且つ、上記zが20〜65モル%である場合には、10GHzにおける比誘電率が5〜10であり、特に誘電損失が小さい(即ち、例えば、5×10−4〜30×10−4)低誘電率層とすることができる。
特に、上記xが0〜7モル%であり、上記yが35〜80モル%であり、且つ、上記zが20〜65モル%である場合には、10GHzにおける比誘電率が5〜10であり、特に誘電損失が小さい(即ち、例えば、5×10−4〜25×10−4)低誘電率層とすることができる。
上記「ガラス」(高誘電率層構成ガラス)は、前記低誘電率層構成ガラスがそのまま適用される。但し、両ガラスは、完全に同一のガラスであってもよく、前記同一組成系の範囲内で異なるガラスであってもよい。
また、高誘電率層構成ガラスの含有量は、上記範囲で調整することにより、高誘電率層の誘電特性、特にεr及びτfを調整できる。εrは高誘電率層構成ガラスの含有量の減少に伴い大きくでき、高誘電率層構成ガラスの含有量の増加に伴い小さくできる。また、τfの絶対値は、高誘電率層構成ガラスの含有量の減少に伴い大きくでき、高誘電率層構成ガラスの含有量の増加に伴い小さくできる。
上記「積層部」は、少なくとも低誘電率層と高誘電率層とを備え、これらが隣接して積層されてなる部位である。この積層部は、積層セラミック部品の一部であってもよく、積層セラミック部品の全体であってもよい。
更に、より反応層が形成され易い状況である低誘電率層と高誘電率層との間に導体層を備える場合であっても、反応層の形成をほぼ完全に防止、又は形成されたとしてもその最大厚さを7μm以下(更には5μm以下、特に3μm以下)に抑制できる。7μm以下程度の反応層であれば問題なく性能設計できる。尚、この反応層の厚さは後述する実施例における反応層の厚さの測定方法によるものとする。
図5は、本発明の積層セラミック部品(100)の一例を示す分解斜視図である。この積層セラミック部品(100)は、バランの機能を一体的に備えるフィルタである。即ち、各種導体を介して積層された3層の低誘電率層(焼成されて一体化されている)からなる下部バラン部(B1)と、各種導体を介して積層された4層の高誘電率層(焼成されて一体化されている)からなるフィルタ部(F)と、各種導体を介して積層された4層の低誘電率層(焼成されて一体化されている)からなる上部バラン部(B2)と、を備える。これら各部は未焼成段階で積層成形されたのち一体に焼成されてなる。
本発明の製造方法は、未焼成低誘電率シート製造工程、未焼成高誘電率シート製造工程、未焼成導体層形成工程、積層工程、並びに、焼成工程、を備えることを特徴とする。
上記「未焼成低誘電率シート製造工程」は、所定組成のガラスと、低誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成低誘電率シートを形成する工程である。
条件(1);上記組成式中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
この低誘電率無機フィラーについては、前記積層セラミック部品における低誘電率無機フィラーをそのまま適用できる。
即ち、各金属元素とは、低誘電率無機フィラーに含有させる所定の全ての元素であり、Ca、Mg、Zn、Si、Sr、Ba、Sn、Ti、Zr、Al、Fe、Ti、Mn及びCo等である。また、各元素は酸化物、炭酸塩及び水酸化物以外の他の化合物(例えば、塩化物など)を用いてもよいが、通常、酸化物、炭酸塩及び/又は水酸化物を用いる。各元素の酸化物、炭酸塩及び水酸化物が2種以上存在する場合は、このうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、各化合物には、上記元素のうちの1種のみが含有されてもよく、2種以上が含有されてもよい。
更に、この仮焼により、低誘電率無機フィラーは、フォルステライト、クリストバライト、モンチセライト、エンスタタイト、クオーツ、ウィルマイト及びトリジマイトのうちの少なくとも1種の結晶相(特に主結晶相)を有するものとすることができる。これらのなかでも、特にフォルステライト、及びエンスタタイトのうちの少なくとも1種が好ましい。
バインダとしては、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリペプチド、ポリイミド、ポリスチレン及びポリビニルアルコール等が挙げられる。バインダは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、及びエタノール、ブタノール、イソプロパノール、ブチルカルビトール等のアルコール類などが挙げられる。溶剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
更に、可塑剤及び各種の添加剤等が含有されていてもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルアジペート及び2−エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。更に、添加剤としては、着色剤、レベリング剤、消泡剤及び分散剤等が挙げられる。添加剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記「ガラス」は、前記未焼成低誘電率シート製造工程で用いるガラスをそのまま適用できる。但し、上記ガラスの範囲内であれば、未焼成低誘電率シート構成ガラスと未焼成高誘電率シート構成ガラスとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。
この高誘電率無機フィラーについては、前記積層セラミック部品における同様の高誘電率無機フィラーをそのまま適用できる。
上記「混合」及び上記「成形」については、上記未焼成低誘電率シート製造工程における各々をそのまま適用できる。
未焼成導体層の形成方法は特に限定されないが、例えば、Ag粉末、バインダ及び溶剤等含有する未焼成導体層用スラリーを調製し、この未焼成導体層用スラリーを未焼成低誘電率シート及び/又は未焼成高誘電率シートの表面にスクリーン印刷することにより形成することができる。また、未焼成導体層は、未焼成低誘電率シートの表裏面の一方の表面のみであってもよく、両面であってもよい。また、各表面の一部を覆うものであってもよく、全部を覆うものであってもよい。未焼成高誘電率シートの表面においても同様である。
更に、未焼成導体層には、Ag及び/又はCuが含有される。このAg及び/又はCuの含有量(両元素が含有される場合は合計量)は特に限定されないが、焼成後の導体層全体を100質量%とした場合に80質量%以上(更には90質量%以上、100質量%であってもよい)含有されるものであることが好ましい。この未焼成導体層には、Ag以外にも他の金属が含有されていてもよい。他の金属としてはAu、Pt等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の他の製造方法は、未焼成低誘電率シート製造工程、未焼成高誘電率シート製造工程、積層工程、並びに、焼成工程、を備えることを特徴とする。
上記「未焼成低誘電率シート製造工程」、上記「未焼成高誘電率シート製造工程」及び上記「焼成工程」は前記製造方法における各工程をそのまま適用できる。
上記「積層工程」は、所定位置及び所定枚数が各々積層されるように、未焼成低誘電率シートと未焼成高誘電率シートとを積層し、且つ、この積層の間にAg及び/又はCuを含有する未焼成導体層を印刷形成して未焼成積層体を製造する工程である。この工程における未焼成導体層の形成方法については、特に限定されないが、前記製造方法における未焼成導体層形成工程における方法をそのまま用いることができる。
[1]積層セラミック部品
(1)低誘電率層構成ガラス及び高誘電率層構成ガラス
表1の質量割合に調整された市販のガラス粉末G1及びG2を用意した。
このG1とG2とは本発明にいう同一組成系ではないガラスである。即ち、G1に含まれる元素を表1に示す酸化物換算含有量により多い順に積算した場合に70質量%を超えるまでに積算される元素種は、「Ba、B、Zn及びSi」の4種である。対してG2について同様に積算した場合に70質量%を超えるまでに積算される元素種は、「B、Zn及びSi」の3種である。「B、Zn及びSi」の3種の元素については共通しているが、G1とG2において「Ba」が共通しないために同一組成系ではない。また、各々のガラスのガラス転移温度及び中心粒径を表1に併記した。尚、いずれのガラスにおいても、Caの含有量はCaO換算で0.5質量%以下であった。
市販の各CaCO3粉末(純度;99%以上)、MgO粉末(純度;99.6%)、ZnO粉末(純度;99%)及びSiO2粉末(純度;99%以上)を用い、前記組成式(1)に含まれる係数x、y及びzの各々が表2に示す値となるように、秤量した。その後、各粉末をエタノールを媒体として湿式混合した。次いで、得られた混合粉末を大気雰囲気において1200℃で2時間仮焼した。その後、仮焼物に分散剤、バインダ及びエタノールを加え、ボールミルを用いて粉砕し、スラリー状の低誘電率無機フィラーを10種類(本発明にいう低誘電率無機フィラー8種及び他の無機フィラー2種)得た。
上記(1)で用意したガラスと、上記(2)で得られた各低誘電率無機フィラーと、を表2に示す体積割合で混合し、得られた混合スラリーを用いてドクターブレード法により厚さ120μmの未焼成低誘電率シート(実験例L1〜L10)を作製した。
上記(3)で得られた混合スラリーを乾燥させて造粒し、φ19mmの金型を用いて、20MPaで一軸プレスにより円柱状に成形した。次いで、150MPaの圧力でCIP(冷間等方静水圧プレス)処理を行い、得られた成形体を大気雰囲気下、880〜1050℃で2時間焼成し磁器(実験例L1〜L10)を得た。
得られた円柱状の磁器(L1〜L10)の両端面を研磨し、研磨した各磁器を用いて、JIS R1641に準じ、平行導体板型誘電体共振器法により、測定周波数10GHzにおける、比誘電率及び誘電損失を測定した。この結果を表1に併記した。各磁器の研磨表面のX線回折測定を行い、主結晶相の同定を行った。この結果認められた結晶相を表2に併記した。
市販のBaCO3粉末(純度;99.9%)、TiO2粉末(純度;99.9%)、Nd2O3粉末(純度;99.9%)及びBi2O3粉末(純度;99.9%)を原料とし、前記組成式(3)に含まれる係数a、b、c及びdの各々が表3に示す値となるように配合し、ミキサにより20〜30分間乾式混合した後、振動ミルにより粉砕した。玉石としてはアルミナボールを使用し、粉砕時間は4時間とした。その後、得られた混合粉末を、大気雰囲気下、1100℃で2時間仮焼し、次いで、得られた仮焼物をボールミルにより粉砕して高誘電率無機フィラー4種類を得た。
上記(1)で用意したガラスと、上記(5)で得られた各高誘電率無機フィラーと、を表3に示す割合で混合し、得られた混合スラリーを用いてドクターブレード法により厚さ120μmの未焼成高誘電率シート(実験例H1〜H6)を作製した。
上記(6)で得られた混合スラリーを乾燥させて造粒し、得られた造粒粉をプレス機(成形圧力;98MPa)によって、直径19mm、高さ8mmの円柱状の成形体に成形し、その後、大気雰囲気下、900〜1050℃の温度で2時間焼成して磁器(実験例H1〜H6)を得た。
その後、得られた円柱状の磁器(H1〜H6)の両端面を研磨し、研磨した各磁器を用いて、JIS R1641に準じ、平行導体板型誘電体共振器法により、測定周波数1〜5GHzにおける、εr、Q値及びτf(温度範囲;25〜80℃)を測定した。その結果を表3に併記した。尚、Q値は、測定時の共振周波数(f)とQ値の測定値との積(f・Q)で表した。
上記(3)で得られた厚さ120μmの未焼成低誘電率シートを縦150mm、横130mmに裁断した。次いで、未焼成低誘電率シート3層を積層して熱圧着して未焼成低誘電率シート第1積層体を得た。得られた未焼成低誘電率シート第1積層体の一面に、Ag粉末(純度;99%以上)、分散剤、バインダ及びエタノールを混合して得た導体用ペーストをスクリーン印刷して未焼成導体層を形成した。
同様に、裁断した未焼成低誘電率シート4層を積層して熱圧着して未焼成低誘電率シート第2積層体を得た。得られた未焼成低誘電率シート第2積層体の一面に上記導体用ペーストをスクリーン印刷して未焼成導体層を形成した。
得られた積層セラミック部品P1〜P12の各々の中央部研磨面を走査型電子顕微鏡により1000倍に拡大した画像で割れの有無を確認した。この結果、割れが見出できなかった積層セラミック部品については、表4の割れの欄に「◎」と示した。一方、割れが見出された積層セラミック部品については、表4の割れの欄に「×」と示した。
上記表2のL1〜L10及び上記表3のH1〜H6より、未焼成低誘電率シート及び未焼成高誘電率シートは各々単独で焼成した場合にいずれも問題なく焼結することができた。
これに対して、表4より、低誘電率層と高誘電率層とを構成するガラスが異なるP4及びP5では、焼結することができなかった。一方、P1〜P3、P6〜P9、P11及びP12では、低誘電率層と高誘電率層とで用いるガラスが同一組成系であるために割れを生じていない。また、P1〜P3、P6〜P8、P11及びP12では、層間剥離も生じていない。P9では層間剥離を生じているものの使用上問題ない程度である。
これらのことから同一組成系のガラスを用い、且つ前記低誘電率無機フィラーを用いることで低誘電率層と高誘電率層とを同時焼成して焼結させることができることが分かる。
このことから同一組成系のガラスを用い、且つ前記低誘電率無機フィラーを用いることで低誘電率層と高誘電率層とを同時焼成した場合に、各層の界面の反応層の形成を抑制できることが分かる。また、特にCaを含有しない低誘電率無機フィラーを用いた(L1〜L4、L9及びL10)場合は、反応層が認められないことが分かる。
301;低誘電率層、
302;高誘電率層、
303;導体層、
304;反応層、
B1;下部バラン部、
B2;上部バラン部、
F;フィルタ部、
11、12、13、18、19、20、21;低誘電率層、
14、15、16、17;高誘電率層、
112、141、171、211;接地用導体、
121、131、162、191、201;共振器用導体、
151、152;キャパシタ用導体、
161、163;共振器インダクタンス兼用導体、
181;接続用導体。
Claims (10)
- ガラス及び低誘電率無機フィラーを含有する低誘電率層と、該ガラスと同一組成系のガラス及び高誘電率無機フィラーを含有する高誘電率層と、が積層された積層部を備え、
且つ、該低誘電率無機フィラーは、組成式(1)[xCaO・yM1O・zSiO2](但し、x+y+z=100モル%である。)で表した場合に下記条件(1)及び条件(2)を満たし、
上記高誘電率無機フィラーは、組成式(3)[aBaO・bTiO 2 ・cREO 3/2 ・dBiO 3/2 ](但し、REは希土類金属元素であり、a、b、c及びdはモル比を表し、a+b+c+d=1である。)で表した場合に下記条件(3)を満たし、
上記低誘電率層を構成している上記ガラス、及び、上記高誘電率層を構成している上記ガラスの各々は、少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、該各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、該BaをBaO換算で25〜55質量%、該ZnをZnO換算で5〜30質量%、該BをB 2 O 3 換算で15〜35質量%、該SiをSiO 2 換算で5〜30質量%、各々含有することを特徴とする積層セラミック部品。
条件(1);上記組成式(1)中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式(1)中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。 - 上記低誘電率層中の上記ガラスの含有量は、該低誘電率層全体に対して35体積%以下である請求項1に記載の積層セラミック部品。
- 上記高誘電率層中の上記ガラスの含有量は、該高誘電率層全体に対して45体積%以下である請求項1又は2に記載の積層セラミック部品。
- 上記低誘電率無機フィラーは、フォルステライト、クリストバライト、モンチセライト、エンスタタイト、クオーツ、ウィルマイト及びトリジマイトのうちの少なくとも1種の結晶相を有する請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品。
- 上記積層部は、上記低誘電率層の一面の一部と上記高誘電率層の一面の一部とが直接接して積層された部位を有し、該低誘電率層の一面の他部と該高誘電率層の一面の他部との間にAg及び/又はCuを含み、且つ、該低誘電率層及び該高誘電率層と同時焼成された導体層を備える請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品。
- 上記低誘電率層中の上記ガラスの含有量と、上記高誘電率層中の上記ガラスの含有量との差は、15体積%以下である請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品。
- 少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、該各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、該BaをBaO換算で25〜55質量%、該ZnをZnO換算で5〜30質量%、該BをB2O3換算で15〜35質量%、該SiをSiO2換算で5〜30質量%、各々含有するガラスと、
組成式(1)[xCaO・yM1O・zSiO2](但し、x+y+z=100モル%である。)で表した場合に下記条件(1)及び条件(2)を満たす低誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成低誘電率シートを形成する未焼成低誘電率シート製造工程、
上記ガラスと、組成式(3)[aBaO・bTiO2・cREO3/2・dBiO3/2](但し、REは希土類金属元素であり、a、b、c及びdはモル比を表し、a+b+c+d=1である。)で表した場合に下記条件(3)を満たす高誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成高誘電率シートを形成する未焼成高誘電率シート製造工程、
上記未焼成低誘電率シート及び/又は上記未焼成高誘電率シートの表面にAg及び/又はCuを含有する未焼成導体層を形成する未焼成導体層形成工程、
上記未焼成導体層形成工程を経たのちの上記未焼成低誘電率シートと上記未焼成高誘電率シートとを積層して未焼成積層体を製造する積層工程、並びに、
上記未焼成積層体を800〜1050℃で焼成する焼成工程、を備えることを特徴とする積層セラミック部品の製造方法。
条件(1);上記組成式中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。 - 少なくともBa、Zn、B及びSiの各元素を含有し、該各元素の酸化物換算合計量を100質量%とした場合に、該BaをBaO換算で25〜55質量%、該ZnをZnO換算で5〜30質量%、該BをB2O3換算で15〜35質量%、該SiをSiO2換算で5〜30質量%、各々含有するガラスと、
組成式(1)[xCaO・yM1O・zSiO2](但し、x+y+z=100モル%である。)で表した場合に下記条件(1)及び条件(2)を満たす低誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成低誘電率シートを形成する未焼成低誘電率シート製造工程、
上記ガラスと、組成式(3)[aBaO・bTiO2・cREO3/2・dBiO3/2](但し、REは希土類金属元素であり、a、b、c及びdはモル比を表し、a+b+c+d=1である。)で表した場合に下記条件(3)を満たす高誘電率無機フィラーと、を混合して得られた混合物を成形して未焼成高誘電率シートを形成する未焼成高誘電率シート製造工程、
所定位置及び所定枚数が各々積層されるように、上記未焼成低誘電率シートと上記未焼成高誘電率シートとを積層し、且つ、該積層の間にAg及び/又はCuを含有する未焼成導体層を印刷形成して未焼成積層体を製造する積層工程、並びに、
上記未焼成積層体を800〜1050℃で焼成する焼成工程、を備えることを特徴とする積層セラミック部品の製造方法。
条件(1);上記組成式中の該M1は、Mg及びZnのうちの少なくとも1種である。
条件(2);上記組成式中の該x、該y及び該zは、各々の相関を三角図を用いて表した場合に対応する値が、図1における辺AB、辺BC、辺CD及び辺DA(点Aはx=0、y=35、z=65、点Bはx=13、y=40、z=47、点Cはx=13、y=64、z=23及び点Dはx=0、y=80、z=20である。)により囲まれた領域内(但し、辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAは全て該領域内に含まれる。)にある。
条件(3);上記組成式(3)中の該aは0.09≦a≦0.16、該bは0.54≦b≦0.62、該cは0.20≦c≦0.34、該dは0≦d≦0.10を各々満たす。 - 上記低誘電率無機フィラーは、上記各金属元素の酸化物、炭酸塩及び/又は水酸化物を混合したのち1000〜1300℃で仮焼して仮焼物を得、次いで、該仮焼物を粉砕して得られる請求項7又は8に記載の積層セラミック部品の製造方法。
- 上記低誘電率無機フィラーは、フォルステライト、クリストバライト、モンチセライト、エンスタタイト、クオーツ、ウィルマイト及びトリジマイトのうちの少なくとも1種の結晶相を有する請求項7乃至9のうちのいずれかに記載の積層セラミック部品の製造方法。
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