JP4627877B2 - レンズ駆動構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズを駆動するためのレンズ駆動構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、レンズ群を前後方向に駆動させてレンズの繰り出しや変倍を行うレンズ駆動構造が知られている。このようなレンズ駆動構造では、レンズを保持するレンズ保持枠にボス等を設け、このボスをカム環のリブや溝からなるカム部に係合させてレンズ群を駆動させる構造が多く用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなカム構造において、カム環に形成される変倍用のリブや溝などのカム部には、高精度の加工が必要であり、型加工等に時間やコストを要していた。しかも、レンズの繰り出し・収納用のカムと、変倍用のカムとが連続して形成されていたため、精度を必要としない繰り出し・収納用のカム構造にも、変倍用を基準とした高精度の加工が施され、コストと加工時間の上で無駄が生じていた。
【0004】
本発明の課題は、コストと加工時間の点でより優れたレンズ駆動構造を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、例えば図1〜3に示すように、
レンズ群を保持し、外周面に外方に向けて突出するボス(31a,31b)が設けられたレンズ保持枠(30)と、
レンズ保持枠の外側にあって、内周面にレンズ保持枠のボスと係合するカム構造(リブ構造11,21)が形成されたカム環(10,20)とを備え、
カム環の回転によって、前記ボスがカム構造に沿って移動することでレンズ保持枠を介してレンズ群を駆動するレンズ駆動構造(1,2)において、
カム構造は、レンズ群を収納位置と撮影可能となる所定位置までの間で駆動する繰り出し・収納用カム部(収納用リブ11b,11b,21b)と、
レンズ群を前記所定位置からさらに前方に繰り出して変倍を行うための変倍用カム部(変倍用リブ11a,21a)とからなり、
繰り出し・収納用カム部は、カム環(10)の内周面の後端部から前方に向かうように形成された二本のリブ(収納用リブ11b,11b)を1単位として構成され、
変倍用カム部は、繰り出し・収納用カム部の二本のリブの前端部の間から、カム環の内周面の前端部にわたって形成された一本のリブ(変倍用リブ11a)を1単位として設けられ、
レンズ保持枠のボスは二つ(31a,31b)を1単位として形成され、
繰り出し・収納用カム部の二本のリブは、レンズ保持枠の二つのボスの外側を挟むように係合し、
変倍用カム部の一本のリブは、レンズ保持枠の二つのボスの間に挟まれるように係合することを特徴としている。
【0006】
請求項1記載の発明によれば、高精度の加工を必要としない繰り出し・収納用カム部と、高精度の加工が必要な変倍用カム部とが別に設けられる。従って、高精度の加工を施す部分を少なくすることができ、加工時間の短縮と、コストの削減とを図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図4に示すように、
レンズ群を保持し、外周面に外方に向けて突出するボス(31a,31b)が設けられたレンズ保持枠(30)と、
レンズ保持枠の外側にあって、内周面にレンズ保持枠のボスと係合するカム構造(リブ構造11,21)が形成されたカム環(10,20)とを備え、
カム環の回転によって、前記ボスがカム構造に沿って移動することでレンズ保持枠を介してレンズ群を駆動するレンズ駆動構造(1,2)において、
カム構造は、レンズ群を収納位置と撮影可能となる所定位置までの間で駆動する繰り出し・収納用カム部(収納用リブ11b,11b,21b)と、
レンズ群を前記所定位置からさらに前方に繰り出して変倍を行うための変倍用カム部(変倍用リブ11a,21a)とからなり、
繰り出し・収納用カム部は、カム環(20)の内周面の後端部から前方に向かうように形成された一本のリブ(収納用リブ21b)を1単位として設けられ、
変倍用カム部は、繰り出し・収納用カム部の一本のリブの前端部近傍からカム環の内周面の前端部にわたって形成された一本のリブ(変倍用リブ21a)を1単位として設けられ、
レンズ保持枠のボスは二つ(31a,31b)を1単位として形成され、
繰り出し・収納用カム部の一本のリブと、レンズ保持枠の二つのボスの一方とは互いに当接するように係合し、
変倍用カム部の一本のリブは、レンズ保持枠の二つのボスの間に挟まれるように係合することを特徴としている。
ここで、リブとボスとが「当接するように係合する」とは、具体的には、レンズ保持枠またはカム環が、もしくはその両方が、弾性部材によってボスとリブとが互いに当接するように付勢され、それによってボスとリブとの係合状態が維持されるといった構成が挙げられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の一例としてのレンズ駆動構造1を示す分解斜視図である。
【0010】
まず、レンズ駆動構造1の構成を説明する。
図1に示すように、レンズ駆動構造1はカム環10と、レンズ保持枠30とからなる。図1における左側を前方とする。
このレンズ駆動構造1は、複数のレンズ群を有し、レンズ群間隔を変えることによって変倍を行うレンズ鏡胴に使用されるものである。
【0011】
レンズ保持枠30は、内部に図示しないレンズ群を保持するものである。レンズ保持枠30の内側には、前後方向に形成された直進溝を有するキー環(図示略)が回転しない状態で取り付けられている。そして、レンズ保持枠30の内周面には、このキー環の直進溝と係合する図示しない小突起が設けられ、レンズ保持枠30はこのキー環によって直進するように規制されている。また、レンズ保持枠30の外周面には、外方に向けて突出する二つのボス31a,31bが設けられている。ボス31a,31bは、二つで1組となるよう形成されている。図1ではボス31a,31bは1組のみ示されているが、レンズ保持枠30には、図3で示すように、3組設けられる。
【0012】
カム環10は、レンズ保持枠30の外側に取り付けられ、内周面にはレンズ保持枠30のボス31a,31bと係合するカム構造として、リブ構造11が3組設けられている。図2および図3に、ボス31a,31bとリブ構造11の係合状態を示す。リブ構造11は、高精度に加工された前方側の一本の変倍用リブ(変倍用カム部)11aと、比較的ラフに加工された、後方側の二本の収納用リブ(繰り出し・収納用カム部)11b,11bとからなる。変倍用リブ11aの後端部は、収納用リブ11b,11bの前端部の間に位置し、そこから前方に延びるように形成されている。
【0013】
レンズが収納状態にあるとき、図3のAで示すように、収納用リブ11b,11bは、その後部において、二つのボス31a,31bの外側を挟み込むようにして、ボス31a,31bと係合するようになっている。
【0014】
レンズがワイド(最小倍率)状態まで繰り出されたとき、ボス31a,31bは、図3のBで示すように、収納用リブ11b,11bの前端部の間であって、同時に内側において変倍用リブ11aを挟む。さらに、レンズがテレ(最大倍率)状態に達したとき、ボス31a,31bは、図3のCで示すように、変倍用リブ11aの前部を挟むようにして係合する。
【0015】
次に、レンズ駆動構造1の動作を説明する。
収納位置からカム環10がレンズを繰り出す方向(図3において右方向)に回転すると、レンズ保持枠30は、ボス31a,31bが収納用リブ11b,11bに沿って移動することで繰り出される。レンズ保持枠30がワイド状態のB位置まで繰り出されると、ボス31a,31bは、それらの内側で変倍用リブ11aと係合する。さらにカム環10が回転すると、ボス31a,31bと、収納用リブ11b,11bとの係合は外れ、レンズ保持枠30は変倍用リブ11aの案内によって前方に繰り出され、最終的には前述のテレ状態のC位置に至る。
【0016】
レンズがテレ状態から収納位置まで繰り込まれるとき、カム環10は繰り出し時とは逆方向(図3において左方向)に回転する。これに伴い、レンズ保持枠30は、ボス31a,31bが変倍用リブ11aに沿って後方に移動することで繰り込まれ、ワイド状態のB位置においてボス31a,31bと収納用リブ11b,11bとが係合する。さらにカム環10が回転すると、ボス31a,31bと変倍用リブ11aとの係合は外れ、レンズ保持枠30は、収納用リブ11b,11bの案内によって収納位置に戻る。
【0017】
以上のレンズ駆動装置1によれば、カム環10に、繰り出し・収納を行うための収納用リブ11b,11bと、変倍を行うための変倍用リブ11aとを前後方向に別に設け、それらがボス31a、31bと各々係合するようにしている。従って、収納用と変倍用のカム部を分けて設けたので、変倍用の高精度の加工を施す部分を少なくして、加工時間の短縮とコストの削減とを図ることができる。
【0018】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明の第2の実施の形態としてのレンズ駆動構造2におけるカム環20の内周面を示す展開図である。なお、本実施の形態においては、収納用リブ21bが一本である以外は、第1の実施の形態とほぼ同様であり、同じ部材については同符号を付して説明する。
第1の実施の形態と同様に、レンズ駆動構造2はレンズ保持枠30を有する。
【0019】
カム環20の内周面には、レンズ保持枠30のボス31a,31bと係合するカム構造として、リブ構造21が3組設けられている。各リブ構造21は、高精度に加工された前方側の一本の変倍用リブ(変倍用カム部)21aと、比較的ラフに加工された後方側の一本の収納用リブ(繰り出し・収納用カム部)21bとからなる。変倍用リブ21aの後端部は、収納用リブ21bの前端部近傍に位置し、そこから前方に延びるように形成されている。
【0020】
カム環20とレンズ保持枠30のいずれかあるいは両方は、図示しないバネ等によって、ボス31aが収納用リブ21bに押しつけられる方向に付勢されている。
【0021】
レンズが収納状態にあるとき、レンズ保持枠30の一方のボス31aは、図4のAで示すように、収納用リブ21bの後部に押しつけられて当接した状態で係合している。
【0022】
レンズがワイド状態に繰り出された時、ボス31aは、図4のBで示すように、収納用リブ21bの前部に当接し、同時にボス31a,31bは変倍用リブ21aの後部を挟むようにして係合する。またテレ状態では、ボス31a,31bは図4のCで示すように、変倍用リブ21aの前部と係合する。
【0023】
次に、レンズ駆動構造2の動作を説明する。
収納状態からカム環20がレンズ保持枠30を繰り出す方向(図4において右方向)に回転すると、レンズ保持枠30は、ボス31aが収納用リブ21bに当接しながら移動し、繰り出される。レンズ保持枠30がワイド状態のB位置に達すると、ボス31a,31bは、それらの内側で変倍用リブ21aと係合する。さらにカム環20が回転すると、ボス31aは当接していた収納用リブ21bと離れ、レンズ保持枠30は変倍用リブ21aの案内によって前方に繰り出され、最終的に前記テレ状態のC位置に至る。
【0024】
レンズがテレ状態から収納位置まで繰り込まれるとき、カム環20は繰り出し時とは逆方向(図4において左方向)に回転する。これに伴い、レンズ保持枠30は、ボス31a,31bが変倍用リブ21aに沿って後方に移動することで繰り込まれ、B位置に達すると、ボス31aが収納用リブ21bと当接する。さらにカム環20が回転すると、変倍用リブ21aとボス31a,31bとの係合は外れ、レンズ保持枠30は、ボス31aと当接する収納用リブ21bの案内によって収納位置に戻る。
【0025】
以上のレンズ駆動装置2によれば、カム環20に、繰り出し・収納を行うための収納用リブ21bと、変倍を行うための変倍用リブ21aとを前後方向に別に設け、それらがボス31a、31bと各々係合するようにしている。従って、収納用と変倍用のカム部を分けて設けたことから、変倍用の高精度の加工を施す部分を少なくして、加工時間の短縮とコストの削減とを図ることができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば、第1の実施の形態および第2の実施の形態では、カム構造としてリブを用いたが、カム溝であってもよい。また図3および図4において、ボスとリブとは3組設けられていたが、これらを何組設けるかは適宜変更しうるものである。さらに、駆動構造におけるリブの形状や本数も、適宜変更できる。
また、本発明のレンズ駆動構造を、他のカム構造やヘリコイドネジなどと組み合わせてもよい。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、高精度の加工を必要としない繰り出し・収納用カム部と、高精度の加工の必要な変倍用カム部とが別に設けられる。従って、高精度の加工を施す部分を少なくすることができ、加工時間の短縮と、コストの削減とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施の形態のレンズ駆動構造の分解斜視図である。
【図2】図1におけるカム環とレンズ保持枠との係合を示す部分断面図であり、(a)は変倍動作時、(b)はレンズの繰り出し・収納時を示す。
【図3】図1のカム環の内周面をレンズ保持枠のボスと共に示す展開図である。
【図4】本発明を適用した第2の実施の形態のレンズ駆動構造におけるカム環の内周面を、レンズ保持枠のボスと共に示す展開図である。
【符号の説明】
1,2 レンズ駆動構造
10,20 カム環
11,21 リブ構造(カム構造)
11a,21a 変倍用リブ(変倍用カム部)
11b,11b,21b 収納用リブ(繰り出し・収納用カム部)
30 レンズ保持枠
31a,31b ボス
Claims (2)
- レンズ群を保持し、外周面に外方に向けて突出するボスが設けられたレンズ保持枠と、
レンズ保持枠の外側にあって、内周面にレンズ保持枠のボスと係合するカム構造が形成されたカム環とを備え、
カム環の回転によって、前記ボスがカム構造に沿って移動することでレンズ保持枠を介してレンズ群を駆動するレンズ駆動構造において、
カム構造は、レンズ群を収納位置と撮影可能となる所定位置までの間で駆動する繰り出し・収納用カム部と、
レンズ群を前記所定位置からさらに前方に繰り出して変倍を行うための変倍用カム部とからなり、
繰り出し・収納用カム部は、カム環の内周面の後端部から前方に向かうように形成された二本のリブを1単位として構成され、
変倍用カム部は、繰り出し・収納用カム部の二本のリブの前端部の間から、カム環の内周面の前端部にわたって形成された一本のリブを1単位として設けられ、
レンズ保持枠のボスは二つを1単位として形成され、
繰り出し・収納用カム部の二本のリブは、レンズ保持枠の二つのボスの外側を挟むように係合し、
変倍用カム部の一本のリブは、レンズ保持枠の二つのボスの間に挟まれるように係合することを特徴とするレンズ駆動構造。 - レンズ群を保持し、外周面に外方に向けて突出するボスが設けられたレンズ保持枠と、
レンズ保持枠の外側にあって、内周面にレンズ保持枠のボスと係合するカム構造が形成されたカム環とを備え、
カム環の回転によって、前記ボスがカム構造に沿って移動することでレンズ保持枠を介してレンズ群を駆動するレンズ駆動構造において、
カム構造は、レンズ群を収納位置と撮影可能となる所定位置までの間で駆動する繰り出し・収納用カム部と、
レンズ群を前記所定位置からさらに前方に繰り出して変倍を行うための変倍用カム部とからなり、
繰り出し・収納用カム部は、カム環の内周面の後端部から前方に向かうように形成された一本のリブを1単位として設けられ、
変倍用カム部は、繰り出し・収納用カム部の一本のリブの前端部近傍からカム環の内周面の前端部にわたって形成された一本のリブを1単位として設けられ、
レンズ保持枠のボスは二つを1単位として形成され、
繰り出し・収納用カム部の一本のリブと、レンズ保持枠の二つのボスの一方とは、互いに当接するように係合し、
変倍用カム部の一本のリブは、レンズ保持枠の二つのボスの間に挟まれるように係合することを特徴とするレンズ駆動構造。
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