JP4620893B2 - 抗菌性ポリウレタンフォーム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医療関連,食品関連,日用品関連,建材関連など様々な分野に適用可能なポリウレタンフォームに関するものである。詳細には優れた消臭性,抗菌性,防虫性を有するポリウレタンフォームに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリウレタンフォームは椅子やマットレス等のクッション材を始め様々な分野で用いられているが、近年の清潔志向からポリウレタンフォームにも抗菌性と消臭性が求められている。例えば一般家庭で用いられている洗剤用スポンジたわしとして軟質ポリウレタンフォームが用いられているが、ポリウレタンフォームは雑菌に対する抗菌性を有していないために、漂白剤、熱湯などを用いて滅菌処理を行わなければならなかった。しかしながらその様な滅菌処理を行ったとしても、スポンジたわしに雑菌が残留していたり、あるいは完全に滅菌できたとしても、スポンジたわしをスポンジ受け皿等に載置しておくと、この受け皿に残留している雑菌がスポンジに付着して増殖することがあるため無菌状態を保つことが難しかった。特に近年、O−157、黄色ブドウ球菌等の食中毒の原因となる雑菌等に対する関心の高まりから、雑菌の増殖を防ぐことができ、しかも人体に無害であるスポンジたわしが望まれていた。
【0003】
またポリウレタンフォームは枕やマットレスなどの寝具用品、パットやクッションなどの日用品にも用いられているが、ポリウレタンフォームを用いたマットレスやクッションは汗や湿気など水分を吸収しやすく、また日干しなどで乾燥させただけでは臭気成分の除去や雑菌除去も十分為し得ず、雑菌の繁殖、体臭などの臭気の吸収などが問題となっていた。
【0004】
この様な問題を解決するため、従来より様々なポリウレタンフォームが提案されている。例えば特開平1−161053号には金属イオン等の無機系抗菌剤が分散保持された軟質ポリウレタンフォームが提案されている。また特開平1−311168号では、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミドと2−ベンズイミダゾールカルバミン酸低級アルキルエステルおよび/または2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールを含有するポリウレタンフォームが提案されており、更に特開平6−122746号では、微粉末化した抗菌抗黴剤と微粉末化した消臭剤を含有するポリウレタンフォームが提案されている。しかしながら上記の様な無機系や有機系の化学的に合成された抗菌剤は、人体に対しての弊害も指摘され始めており、人体に対してより安全性の高い抗菌剤が求められている。
【0005】
また更にポリウレタンフォームは断熱性に優れ、しかも軽量であって加工が容易であるために家屋における断熱材,防音材など建材として用いられているが、ポリウレタンフォームを用いた場合、シロアリやゴキブリによる食害を受けやすく、また適度な保温性を有することからこれら害虫の繁殖場となったり、巣となってしまうという問題を有していた。この様な害虫を駆除する方法として従来から有機塩素系殺虫剤などの殺虫剤が用いられているが、一時的な駆除効果しかないために定期的に駆除作業を行なわなければならず、また殺虫剤成分が屋内に充満して人体に有害であるため問題となっていた。
【0006】
尚、ポリウレタンフォームに植物抽出液を添加する試みは成されているものの、使用に伴って該成分が消失してしまい長期使用には適していなかった。また植物を粉末状にしてポリウレタンフォームに添加することが試みられているが、該粉末をフォーム中に分散させることができず十分な効果が発揮し得ないと共に、十分な発泡性が得られないという問題を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記する様な事情に鑑みてなされたものであり、その目的は優れた抗菌性,消臭性,防虫性を兼ね備えたポリウレタンフォームを提供することである。また本発明の他の目的は前記特徴を有するポリウレタンを製造するにあたり十分な発泡性を有するポリウレタンフォームの製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成し得た本発明のポリウレタンフォームとは、ポリオールと有機イソシアネートを含む発泡原料を用いて製造されたポリウレタンフォームであって、該ポリウレタンフォーム中のポリオール成分100質量部に対してよもぎが7質量部以下(0質量部を含まない)含まれているところに要旨を有する。
【0009】
特にこのよもぎ含有量が該ポリオール成分100質量部に対して0.7〜7質量部含まれていると特に優れた抗菌性と消臭性を発揮するので推奨される。
【0010】
本発明はこれらのポリウレタンフォームを用いたクッション製品及びスポンジたわし製品に好適に用いることができる。
【0011】
上記抗菌性ポリウレタンフォームを製造するにあたり、よもぎを9.8Paを超える圧力で30分以上、4時間以内の加圧処理を施した後、ポリオールと混合し、次いでイソシアネートとの反応により発泡させることが望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、天然植物であるよもぎは従来から食用として用いられ、人体に対する安全性も問題なく、しかもポリウレタンフォーム原料によもぎ粉末を添加すれば極めて優れた抗菌性,消臭性,防虫性が得られることを見出した。またこの添加物の含有量がポリオールに対して特定範囲内とすると共に、前処理を行なえばフォーム製造時の発泡性が阻害されることなく、また抗菌性と消臭性を維持したまま軟質ポリウレタンフォームを製造できることを知見し本発明に至った。
【0013】
本発明のポリウレタンフォームとは、ポリオール、有機イソシアネートを含む発泡原料を用いて製造されたポリウレタンフォーム中によもぎ粉末が含まれているところに要旨を有する。
【0014】
以下、本願発明をよもぎ含有軟質ポリウレタンフォームの製造方法に基づいて説明するが、本願発明はこれに限定される趣旨ではなく、適宜変更を加えて実施することも可能であり、本発明の範囲に含まれる(尚、本発明で分子量とは何れも数平均分子量であり、官能基数は平均官能基数を示す。)。
【0015】
本発明のポリウレタンフォームの主原料としては、ポリウレタンフォームの製造に通常用いられるポリオール、イソシアネートでよく、ポリウレタンフォームの物性、用途に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
【0016】
ポリオールとしては、水酸基を複数有するものであれば、低分子化合物、高分子化合物のいずれであってもよい。低分子のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどのトリオールが挙げられる。
【0017】
高分子のポリオールとしては、活性水素原子を持つ開始剤とアルキレンオキサイドとの反応によって得ることができるポリエーテルポリオール;アジピン酸等の2塩基酸とグリコール又はトリオールとの脱水縮合によって得られる縮合系ポリエステルポリオール;ε−カプロラクタム等のラクタムの開環重合によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;環状ジオールを用いて合成されるポリカーボネートジオール;アクリル系共重合体に適宜水酸基を導入してなるアクリルポリオールなどのポリマーポリオールが挙げられる。これらの中でも分子量400〜10000程度の高分子のものが望ましく、ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、ポリエステルポリオール(例えばポリエチレンアジぺート等)が推奨され、特に官能基数3で分子量3000〜5000のポリエーテルポリオールがよい。また目的や用途に応じて官能基数や分子量の異なるポリオールを混合したものを用いることも可能である。
【0018】
イソシアネートとしては、通常のポリウレタンフォームの製造に用いられる有機イソシアネートであれば特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系、脂環族系のポリイソシアネート類、またはこれらの混合物、化合物、あるいはこれらの誘導物であり、イソシアネート基を2以上有するものであれば特に限定せず、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂肪族、脂環族、芳香族、芳香脂肪族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。これらの中でも芳香族系イソシアネート化合物は入手が容易であり、経済的にも好ましい。
【0019】
触媒は原材料の化学的構造、物理的構造、性状、温度など目的、用途に応じて適宜選択することができる。例えば有機アミン系触媒、金属化合物など種々の触媒から選ばれる1種または2種以上組合せたものを用いることができる。またその使用量も通常のポリウレタンフォームの製造に用いられる量でよく、目的に応じて適宜使用量を選択すればよく特に限定されない。有機アミン系触媒としては例えばモノアミン(トリメチルアミン等)、環状アミン(N−メチルモルホリン等)、ジアミン(トリエチレンジアミン等)、エーテルアミン(ジメチルエタノール等)、トリアミン、ヘキサアミン、環状ポリアミン等も用いることができる。また金属化合物としては例えば4価のすず化合物(ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート等)や2価のすず化合物等も用いることができる。
【0020】
発泡剤としては水を用いて有機イソシアネートと反応させ、炭酸ガスを発生させることが推奨されるが、必要に応じてトリクロロモノフロオロメタン、メチレンクロライド等の低沸点の有機化合物や、空気、二酸化炭素などの気体を用いても良く、またその使用量も目的、用途に応じて適宜変更すればよく、通常のポリウレタンフォーム製造に用いられる使用量でよく、特に限定されない。
【0021】
整泡剤としては特に制限されず、汎用タイプの整泡剤を用いればよく、特にシリコン系整泡剤が望ましい。またその添加量も目的、用途に応じて適宜変更すればよい。
【0022】
尚、上記以外にも難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、分散剤、充填剤、強化剤、安定剤、架橋剤、界面活性剤、乳化剤など各種添加剤を併用してもよく、ポリウレタンフォームの物性、用途に応じて適宜選択でき、本発明の効果を逸脱しない限りこれら各種添加剤の配合量についても特に限定されない。
【0023】
本発明では、抗菌性を有する添加剤としてよもぎ粉末を添加する。よもぎ粉末の粒子径はポリウレタンフォーム製造時の発泡性を阻害しない限度で適宜決定すれば良いが、好ましい平均粒子径としては例えば100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下であり、平均粒子径が小さければ、より優れた抗菌性,消臭性,防虫性を発揮する。尚、これらの粉末は製造時にメッシュを透過させることによって、粒子径をある程度調整できるが、最大粒子径の上限を500μm程度とすることが発泡性の観点からも望ましい。
【0024】
本発明において用いることができるよもぎについては特に限定されず、キク科に属するヨモギであればその種類については特に限定されず、また多年草,一年草,越年草,亜低木などであってもよく、例えばカズザキヨモギ,カワラヨモギ,アサギリソウ,ミブヨモギ,ニガヨモギ,ヒメムカシヨモギ,シロヨモギ,ハマヨモギなどを用いることができる。
【0025】
またよもぎの葉部分のみを用いると葉部分と茎部分を合わせて用いた場合や、茎部分のみを用いた場合と比べて消臭性,抗菌性,防虫性が極めて優れているので望ましい。
【0026】
よもぎの含有量としては、ポリウレタンフォーム中のポリオール成分100質部に対して7質量部以下(0質量部を含まない)含まれていることが好ましい。7質量部を超えてよもぎを添加すると製造時にウレタンフォームの割れ等が発生するため、十分な発泡性が発揮されなくなるので望ましくない。ポリウレタンフォーム中によもぎが含まれていれば消臭性と抗菌性を発揮するが、図1、図2のグラフが示す様に、よもぎ含有量がより好ましくは0.7質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、より更に好ましくは4質量部以上であるものは特に優れた消臭性と抗菌性を発揮するので推奨される。
【0027】
またより好ましい上限値としては6.5質量部、更に好ましくは5.5質量部である。この様な上限値を満たせば、ポリウレタンフォーム製造時にウレタンフォームの割れ等が発生せず、発泡性を確保できるとともに優れた抗菌性、消臭性を発揮させることができる。
【0028】
製造されたポリウレタンフォームに含まれるよもぎ量はGPC分析を用いて測定することができる。また製造されたポリウレタンフォームに含まれるポリオール成分量もGPC分析によって測定することができる。
【0029】
尚、よもぎはポリウレタンフォーム中で均一に分散している方が、不均一に分散している場合に比べてより優れた消臭性と抗菌性を発揮するので、製造の原料段階で十分に混合しておくことが望ましく、また原料段階でよもぎの添加量を適切に制御して製造後のポリウレタンフォーム中に上記含有量となるようにすることが望ましい。
【0030】
特に図6に例示される様にポリウレタンフォームのセル骨格中によもぎが組み込まれていると、長期間使用してもよもぎがポリウレタンフォームからの剥離が抑止され、効果を持続することができるので望ましい。
【0031】
尚、本発明において「セル骨格」とはポリウレタンフォームマトリックスの3次元立体構造の支柱部分を意味し、この際のマトリックス構造は骨格で囲まれた内部が空隙を有する場合である。尚、骨格で囲まれた内部が空隙でなく、膜を有している場合、該膜部分によもぎが包摂されていてもよい意味である。また包摂されているとは、よもぎが完全に該部分で包摂され外気と遮断されていなくてもよく、一部が包摂されずに外気と接する状態であってもよい。
【0032】
本発明において「発泡性」とは、軟質ポリウレタンフォームを製造する際のフォームの成形安定性であり、やぶれや独立気泡による収縮などの発泡不良を起こさない特性をいい、優れた発泡性とは発泡不良などが発生しないことであり、また発泡性の低下とは製造時にやぶれや発泡不良が発生することである。
【0033】
本発明のポリウレタンフォームは上述したような原料を用いて製造でき、製造方法としては従来公知の製造方法をそのまま、もしくは適当に変更して採用すればよく、例えば連続法、不連続法、ワンショット法、プレポリマー法等が例示されるが、特に限定されない。また製造工程についても夫々の製法において通常採用されている製造条件でよく、特に限定されない。
【0034】
以下、本発明の好ましいよもぎ含有ポリウレタンフォームの製造方法を図5を参照しながら更に詳述するが、本発明のポリウレタンフォームは以下の製造方法に限定される趣旨ではない。尚、特に原料の成分,使用量等については言及しない限り上記要件を満たす原料である。
【0035】
よもぎ(必要量全量)をポリオールと混合した後、次いで該混合物とイソシアネート,水,触媒,必要に応じてその他添加剤とを混合し反応させてから発泡させる。尚、発泡に際して加熱しながら或いは加熱せずに発泡させることができ、このときの発泡温度は特に限定されない。
【0036】
また原料の混合方法も、例えばよもぎをポリオール,触媒,水,イソシアネートなどの原料と同時に混合してもよいが、同時に混合するとよもぎが原料中に十分に分散させることができないため、発泡性を阻害する大きさの塊となったまま発泡に付されることがあり、ポリウレタンフォームが発泡しなかったり、あるいは発泡しても所望の発泡率が得られないことがあるので望ましくない。
【0037】
したがって本発明では上記ポリウレタンフォームを製造するにあたり、よもぎを発泡前の原料ポリオールに混合しておき、この混合物とイソシアネート、発泡剤、その他の添加物を混合し、同時発泡させることが望ましく、この様な方法を採用すれば発泡性の低下を抑止できるので望ましい。
【0038】
特によもぎ粉末を加圧処理した後、該処理されたよもぎをポリオールと混合してからイソシアネートなど他の原料と混合して軟質ポリウレタンフォームを製造すると、前記した様にポリウレタンフォームのセル骨格によもぎを組み込むことができ、しかも良好な発泡性が得られるので望ましい。またポリウレタンフォームのセル骨格中によもぎが包摂されていれば長期間使用してもポリウレタンフォームからよもぎが剥離することがなく、加圧処理しない場合と比較して優れた上記効果を持続することができるので望ましい。本発明において加圧処理とは、大気圧を超える圧力であり、より好ましくは大気圧の2倍(2気圧)以上の圧力を、30分以上、より好ましくは1時間30分以上、4時間以下、より好ましくは3時間以下の条件でよもぎに加えることである。この際、加圧に伴う温度上昇はあるが、外部から熱を供給しながらよもぎを加圧すると、よもぎの有効成分が抽出されてしまい十分な効果が得られないことがあるので常温下で加圧することが好ましい。また加圧手段としては特に限定されず、シリンダー状の加圧装置など公知の加圧装置を用いて加圧すればよい。尚、大気圧の4倍以上の圧力をかけるとよもぎの有効成分が抽出されてしまうことがあるのでより好ましくは大気圧の3倍以下の圧力とすることが望ましい。
【0039】
また加圧処理したよもぎとポリオールとを混合した後、少なくとも6時間、より好ましくは12時間以上常温下で放置してからポリウレタンフォームの製造に用いるとよもぎがポリオール中に十分分散させることができるので、イソシアネートなど他の原料と混合して発泡させる際に、発泡性を阻害することがないので望ましい。放置時間については特に限定されないが、24時間以上放置しても分散性は飽和するので、上限は24時間とすることが望ましい。またよもぎなどの添加粉末と原料とよく混合しておけば、この粉末を製造後のポリウレタンフォーム中に分散させることができ、優れた消臭性,抗菌性,防虫性を発揮し得るものとなる。
【0040】
上記のようなポリオールとイソシアネートの配合量も物性や、用途に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、イソシアネートと水酸基との当量比(NCO:OH)が100:70〜150(比率)、より好ましくは100:100〜120となるように混合することが好ましい。
【0041】
本発明のよもぎ含有ポリウレタンフォームを用いたクッション製品、スポンジたわし製品としては以下の用途が例示される。
車両用;クッション材、天井材、ドアトリム中材、パッド材、フロアクッション、エアシール材など、寝装品;マットレス、布団、枕、コタツ敷など、家具;椅子のクッション材、ソファのクッション材、シートクッション材など、電気・電子機器;エアコンなどのフィルター材、吸音・断熱材など、医療用;床ずれ防止用クッション、車椅子用クッション、医療用マットレス、介護用マットレス、ひざ用などの各種サポーター類、アトピー用クッション、ぜんそく用クッションなど、衣料用;肩パット、ブラパット等の各種ボディーパットなど、包材;鮮度保持材、梱包緩衛材、食品緩衛材など、建材:断熱材,防音材など日用雑貨;家庭用皿洗用スポンジ、ボディクリーナー、パフなどの各種スポンジ製品、シューズの内張り材、シューズインソール、スリッパ、お風呂マットなど、また本発明のポリウレタンフォームは上記以外にも建築、土木用材としてバックアップ材、養生シート、道路ジョイント材など、工業用品として帯電防止用半導体アース、クッション電池、パッキング材、シール材など、雑貨品としてパソコン用ハンドパットなどにも用いることができる。尚、本願発明のポリウレタンフォームは優れた生分解性を有している。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することはいずれも本発明の範囲に含まれる。
【0043】
参考例1(しょうが添加フォーム)
ポリオール(分子量3000、官能基数3、ダウ・ポリウレタン日本株式会社製「3022J」)100質量部、イソシアネート(TDI−80、武田薬品工業株式会社製「タケネート80」)58質量部、すず触媒(オクチル酸スズ、吉富製薬株式会社製「スタノクト」)0.03質量部、アミン触媒(三共エアプロダクツ株式会社製「ダブコ33LV」)0.03%質量部、シリコン系整泡剤(東レ・ダウ・コーニング・シリコン株式会社製「SH190」)2.0質量部、水44質量部、ジクロロメタン3.0質量部、しょうが粉末10.0質量部(平均粒径20〜30μm)を混合したものを使用し、図5に示す工程で軟質ポリウレタンフォームを製造した。(尚、しょうがは2気圧で2時間加圧処理した後、ポリオールに添加、混合して24時間放置した混合原料を他の原料とミキシングヘッドで混合した。)得られたポリウレタンフォーム(ポリオール成分100質量部に対するしょうが含有量は10.0質量部)の消臭性(表1)、抗菌性(表2,図3,図4)、発泡性を夫々下記の方法により調べた。また、ポリウレタンフォーム中のしょうが粉末の添加量を変化させ、消臭性、抗菌性及び発泡性に及ぼす添加量の影響を調べた。
【0044】
実施例1(よもぎ添加フォーム)
ポリオール(分子量3000、官能基数3、ダウ・ポリウレタン日本株式会社製「3022J」)100質量部、イソシアネート(TDI−80、武田薬品工業株式会社製「タケネート80」)58質量部、すず触媒(オクチル酸スズ、吉富製薬株式会社製「スタノクト」)0.03質量部、アミン触媒(三共エアプロダクツ株式会社製「ダブコ33LV」)0.03%質量部、シリコン系整泡剤(東レ・ダウ・コーニング・シリコン株式会社製「SH190」)2.0質量部、水44質量部、ジクロロメタン3.0質量部、よもぎ粉末5.7質量部(平均粒径20〜30μm)を混合したものを使用し、図5に示す工程で軟質ポリウレタンフォームを製造した。(尚、よもぎは2気圧で2時間加圧処理した後、ポリオールに添加、混合して24時間放置した混合原料をイソシアネートなど他の原料とミキシングヘッドで混合した。)得られたポリウレタンフォーム(ポリオール成分100質量部に対するよもぎ含有量は5.7質量部)の消臭性(表1)、抗菌性(表2,図3,図4)、発泡性を夫々後記する方法により調べた。また、ポリウレタンフォーム中のよもぎ粉末の添加量を変化させ、各添加量における消臭性、抗菌性及び発泡性を調べた。
【0045】
比較例1(コントロール)
ポリオール(分子量3000、官能基数3、ダウ・ポリウレタン日本株式会社製「3022J」)100質量部、イソシアネート(TDI−80、武田薬品工業株式会社製「タケネート80」)58質量部、すず触媒(オクチル酸スズ、吉富製薬株式会社製「スタノクト」)0.03質量部、アミン触媒(三共エアプロダクツ株式会社製「ダブコ33LV」)0.03%質量部、シリコン系整泡剤(東レ・ダウ・コーニング・シリコン株式会社製「SH190」)2.0質量部、水44質量部、ジクロロメタン3.0質量部を使用し、図5に示す工程で軟質ポリウレタンフォームを製造した(尚、この場合、よもぎ粉末またはしょうが粉末は無添加)。得られたポリウレタンフォームの消臭性(表1)、抗菌性(表2)を下記の方法により調べた。
【0046】
消臭性試験
5リットルのテドラーバックに10×200mmサイズの上記各ポリウレタンフォームサンプルを入れ、ガス量が3リットルでアンモニアの初期濃度が400ppmとなるようにガスを注入し、20℃雰囲気中に放置して30分後のアンモニア濃度変化を調査した。結果を表1、図1に示す。(図1中、消臭値の単位はppm、混入量の単位は質量部であり、ポリウレタンフォーム中のポリオール成分100質量部に対するよもぎまたはしょうがの混入量を示す)
【0047】
【表1】
Figure 0004620893
【0048】
表1および図1からも明らかな様に、特によもぎ添加フォームは極めて優れた消臭性を示す。
【0049】
抗菌性試験(静菌活性値・殺菌活性値)
黄色ブドウ状球菌を使用した統一法(日本化学繊維検査協会「抗菌防臭加工製品の統一試験方法(JISL1902)」)により抗菌性を調べた。
【0050】
18×18mmサイズの上記各ポリウレタンフォームサンプルに黄色ブドウ状球菌0.2mlを均一に接種し、37±1℃で18時間静置した後、サンプル内の生菌数を測定した。尚、静菌活性値はナイロン標準白布の18時間培養後に回収した菌数の平均値log〔A〕から各サンプルの18時間培養後に回収した菌数の平均値(よもぎの場合はlog〔D〕)を引いた値である。また殺菌活性値は各サンプルに接種直後の黄色ブドウ状球菌数(log2.0×104)から各サンプルの18時間培養後に求めた菌数の平均値(よもぎの場合はlog〔D〕)を引いた値である。(図2中、混入量の単位は質量部であり、ポリウレタンフォーム中のポリオール成分100質量部に対するよもぎまたはしょうがの混入量を示す。)
結果を表2、図2、図3に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0004620893
【0052】
表2、図2によっても明らかな様に、特によもぎは優れた抗菌性(生菌活性値)を示した。また表2より明らかな様に、よもぎ添加フォームでは、黄色ブドウ状球菌数が接種直後よりも減少しており、極めて優れた殺菌活性を有していることがわかった。更に図3で示す通り、よもぎ添加フォームは菌数が減少していることが明らかであり、特に優れた抗菌性(殺菌活性値)を有していることが分かる。
【0053】
発泡性試験
しょうが添加フォーム、およびよもぎ添加フォームの発泡性をコントロール(比較例)と対比し下記の通り評価した。結果を表3に示す。
○:発泡性に全く問題を生じない。
△:反応調整を行えば十分な発泡性が得られるが、反応調整のための配合率調整可能範囲が狭く、また原料ロットのバラツキなどで製造時の反応性が均一でないと、破れ(ブロー)あるいは独立気泡による収縮が発生する。
×:反応調整を行っても破れや収縮を起こす。
【0054】
【表3】
Figure 0004620893
【0055】
表3からも明らかな様にしょうが添加フォームでは、ポリウレタンフォーム中のしょうが混入量が15質量部を超えるとポリウレタンフォームの製造時にブローや収縮などが起こった。またよもぎ添加フォームでは、よもぎ混入量が7質量部を超えるとブローや収縮などが起こった。
【0056】
実施例2(よもぎ添加フォーム)
ポリオール(分子量3000、官能基数3、ダウ・ポリウレタン日本株式会社製「3022J」)100質量部、イソシアネート(TDI−80、武田薬品工業株式会社製「タケネート80」)58質量部、すず触媒(オクチル酸スズ、吉富製薬株式会社製「スタノクト」)0.30質量部、アミン触媒(三共エアプロダクツ株式会社製「ダブコ33LV」)0.30%質量部、シリコン系整泡剤(東レ・ダウ・コーニング・シリコン株式会社製「SH190」)2.0質量部、水4.4質量部、ジクロロメタン3.0質量部、よもぎ粉末5.7質量部(平均粒径20〜30μm)を混合したものを使用し、図5に示す工程で軟質ポリウレタンフォームを製造した。(尚、よもぎは2気圧で2時間加圧処理した後、ポリオールに添加、混合して24時間放置した混合原料をイソシアネートなど他の原料とミキシングヘッドで混合した。)得られたポリウレタンフォーム(ポリオール成分100質量部に対するよもぎ含有量は5.7質量部)の消臭性,抗菌性発泡性を夫々上記方法により調べた。また、ポリウレタンフォーム中のよもぎ粉末の添加量を変化させ、各添加量における消臭性、抗菌性及び発泡性を調べた。結果は表1,表2,図3,図4に示されている実施例1と同じ結果であった。
【0057】
比較例2(コントロール)
比較例として東洋ゴム社製のウレタンフォーム(20タイプ,品番388)を用いた。尚、該ウレタンフォームにはよもぎなどは添加されていない。このポリウレタンフォームの消臭性,抗菌性を上記方法により調べた結果、比較例1と同じ結果であった。
【0058】
<防虫試験>
上記実施例2で用いたよもぎ含有ポリウレタンフォーム(サイズ:高さ10cm×横30cm×長さ60cm)(以下、「フォームA」という)と比較例2で用いたポリウレタンフォーム(サイズ:10×30×60cm)(以下、「フォームB」という)を用いて防虫実験を行なった。
【0059】
実験方法A:実験ボックス(サイズ:15×60×60cm)にフォームAを右側に、フォームBを左側にセットし、該ボックス中央(横30cm地点)には仕切り板(サイズ:15×1×60)を設けた。尚、該仕切り板には害虫が通行できる程度の穴を数ヶ所設けた。この実験用ボックスを水平な床の上に静置し、ゴキブリを10匹入れ、室温下、24時間放置した。24時間後、仕切り板の穴を塞ぐとともに穴の空いていない仕切り板を装入してゴキブリが仕切られた部屋を行き来しない様にして夫々の部屋に存在するゴキブリの数を数えた。その結果フォームB側には8匹存在したが、フォームA側には2匹しか存在していなかった。またフォームA側のゴキブリはいずれも衰弱して動けない状態であった。
【0060】
実験方法B:実験ボックス(15×30×60cm)に上記フォームAを入れ、空気穴を設けた以外は該ボックスにフタをして害虫がボックス外に出れないようにして該ボックス内にゴキブリを20匹入れて実験方法Aと同様にして24時間放置した。24時間後、ボックス内のゴキブリの様子を調べたところ、いずれのゴキブリも衰弱していた。
【0061】
参考例2
よもぎをポリオールに添加する前に加圧処理をしなかった以外は実施例2と同様にしてポリウレタンフォームを製造したが、加圧処理した実施例2と比べて発泡が低くまた各効果も3割程度低い値となった。
【0062】
【発明の効果】
以上の様に本発明のポリウレタンフォームは消臭性,抗菌性に優れており、消臭性,抗菌性が要求されるスポンジたわしやクッション製品などに好適に用いることができる。しかも本発明のポリウレタンフォームは優れた防虫性(忌避効果,殺虫効果)を有しているので断熱材などの建材として用いた場合、害虫による食害を受けることがなく、また優れた忌避効果とともに殺虫効果も有しているので害虫の繁殖場となることがない。また特定量のよもぎを前処理を行なって原料に含ませることによって、発泡性を阻害することなくポリウレタンフォームを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ポリウレタンフォームの消臭性を示すグラフである。
【図2】本発明ポリウレタンフォームの抗菌性(静菌活性値)を示すグラフである。
【図3】本発明ポリウレタンフォームの抗菌性(静菌活性値)を示すグラフである。
【図4】本発明ポリウレタンフォームの抗菌性(殺菌活性値)を示すグラフである。
【図5】本発明ポリウレタンフォームの製法の一例を示す概念図である。
【図6】本発明のポリウレタンフォームの電子顕微鏡によるセル骨格中によもぎ粉末が包摂されている状態の一例を示すものである。

Claims (6)

  1. ポリウレタンフォーム中にポリオール成分100質量部に対して、大気圧を超える圧力で30分以上、4時間以内の加圧処理が施されたよもぎが7質量部以下(0質量部を含まない)含有されていることを特徴とする抗菌性ポリウレタンフォーム。
  2. 上記よもぎ含有量が0.7〜7質量部である請求項1に記載の抗菌性ポリウレタンフォーム。
  3. 上記ポリウレタンフォームのセル骨格中によもぎが包摂されて存在している請求項1または2に記載の抗菌性ポリウレタンフォーム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンフォームを用いたクッション製品。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンフォームを用いたスポンジたわし製品。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性ポリウレタンフォームを製造するにあたり、よもぎを大気圧を超える圧力で30分以上、4時間以内の加圧処理した後、ポリオールと混合し、次いでイソシアネートとの反応により発泡させることを特徴とする抗菌性ポリウレタンフォームの製造方法。
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