JP4620342B2 - ラテックス組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の種類の赤外色素を含有する充填型ラテックス粒子組成物に関する。このような組成物は、不可視マーキングをするのに使用することができるインク配合物を製造するのに特に有用である。該組成物の製造方法及び該組成物を用いて種々の要素を製造する方法は、本発明の他の態様を構成する。
ロゴは、化粧用又は認証の必要性がある場合に、色素を用いて物体上に印刷されることがよくある。マークは、企業名又は他の識別商標記号であることができる。化粧用では、厳重に調査して可視色を選択する。実際のところ、現実の色は、認証の最も重要な要素であることができる。認証に有用なマークを製造するためのより高性能な手段に、肉眼では見えない独特の構成要素を作製することがある。一つのこのような方法では、極めて低濃度の色素又はさらに理想的には可視領域外、好ましくは赤外で吸収するものを使用する。実際に、当該技術分野における数多くの用途では、セキュリティーマーク用の赤外色素を使用することが説明されている。しかしながら、赤外領域で吸収する色素は、一般的に溶液中又は空気中では安定ではなく、特に光褪色しやすい。この劣化のため、これらの色素は、安定剤の存在しない状態ではほとんどの用途では役に立たない。色素をセキュリティー要素又は認証要素に使用するとき、この色素の劣化により、最終的には認証要素を認識することができなくなる。
さらに、写真画像を担持する要素の表面に赤外色素含有組成物を適用したくなる理由がいくつかある。例えば、赤外吸収色素を含む保護オーバーコートを、最終オーバーコートとして適用すると、インクジェットプリントにおける基本的色素安定性を安定化するのに役立つことができる。別の実施態様では、写真プリントの表面に肉眼では見えない赤外吸収インクを用いて、情報をエンコードすることができる。プリントの表面に塗布される情報は、例えば、米国出願第09/223,859号(出願日2000年9月13日)に記載されているサウンド情報等であることができる。サウンド情報は、例えば、バーコード化又はいくつかの他のデジタルエンコード化の形態を用いてエンコードすることができる。次に、プリントの表面を、好適な赤外色素検出装置を用いて検出して音を「奏でる」ことができる。別の実施態様では、シリコン系検出器によりこのようなマークを簡単に検出できるように、表面にマークをつけることが必要なことがある。このようなマークは、さらに下流の処理事象用の要素を確認するのに使用できる。写真要素に赤外色素組成物を使用するには、同様な安定化の問題がある。
色素の安定化は、当該技術分野において周知である。三菱化成工業株式会社(EP0483387A1)及びTDK株式会社(米国特許第4,713,314号)には、シアニン色素を金属安定剤と組み合わせて使用することが記載されている。Kodak社(米国特許第5,547,728号)には、ニッケルホルマザン色素が赤外色素用安定剤として記載されている。さらに、Kodak社(米国特許第4,753,923号)に、金属ジチオレン色素単独で、バーコード化用途に有用な安定な色素として開示されている。
赤外色素の使用を制限するさらなる事柄として、溶解性の問題がある。この問題の一つの解決策に、充填型ラテックス粒子を使用することがある。充填型ラテックス粒子は、種々の写真用途及び非写真用途に使用することが知られている。例えば、米国特許第4,237,194号では、ポリマーラテックス粒子上に充填されたポリアニリン塩を使用する帯電防止組成物が記載されている。ラテックス組成物を塗布後にラテックスの乾燥及びコアレッスンすると、好適な静電防止層が形成される。免疫学の研究では、蛍光標識をラテックス粒子に充填することも知られている(例えば、米国特許第4,259,313号参照)。また、複数の蛍光色素を、同じラテックス粒子上に充填して有用な結果を得ることができる(例えば、米国特許第5,326,692号及び第5,919,850号参照)。米国特許第5,852,074号は、インクジェットインク用ラテックス組成物を使用することを開示している。米国特許第4,401,787号、第4,304,769号及び第5,594,047号は、種々の充填型ラテックス組成物の製造方法を記載し、このような組成物を写真要素に使用することを検討している。
米国特許第6,361,916B1号は、赤外色素のラテックス分散液の製造について記載している。ラテックスの充填により、他の方法では水性不溶性である色素を水溶液に分散させることができる。また、色素と共充填安定剤の近接性が増加するのでより効率的に色素を安定化できる。さらに、これらの赤外分散液を追加の層の形態で要素の写真表面に付加した写真要素についても記載されている。
米国特許第4237194号明細書 米国特許第4259313号明細書 米国特許第4304769号明細書 米国特許第4401787号明細書 米国特許第4713314号明細書 米国特許第4753923号明細書 米国特許第5326692号明細書 米国特許第5547728号明細書 米国特許第5594047号明細書 米国特許第5852074号明細書 米国特許第5919850号明細書 米国特許第6361916号明細書 欧州特許出願公開第0483387号明細書
しかしながら、光及び高湿度において安定である色素組成物、特に赤外色素組成物が、まだ必要とされている。特に、画像形成要素上の印刷インクとして使用できる安定な赤外色素組成物が必要とされている。
本発明によれば、水を連続相として、そしてフェニレンジアミン部分が共有結合されている赤外ポリメチン色素が組み合わされている疎水性ポリマー粒子を分散相として含んで成るラテックス組成物が提供される。さらに、本発明によれば、ラテックス組成物においてポリマー粒子に色素を組み合わせる方法であって、
(1)フェニレンジアミン部分が共有結合されているポリメチン色素を水混和性又は水不混和性有機溶媒に溶解させることにより色素溶液を形成し、
(2)疎水性ポリマー粒子を水性連続相に分散させることによりラテックスを形成し、
(3)該ラテックスと該色素溶液とをブレンドし、そして
(4)該有機溶媒を除去して該ポリマー粒子を充填することにより、ポリメチン色素が組み合わされているラテックスを形成する
ことを特徴とする方法が提供される。
本発明によれば、光、高湿度及び他の酸化性条件において極めて安定である色素組成物が提供される。該色素は、コストが低い上、赤外光と可視光の両方に感度を有し得る。該色素組成物は、画像形成要素上に情報を印刷するのに特に有用である。該色素組成物は、要素の画像形成層側又は要素の裏面側に使用することができる。
本発明で使用される赤外光吸収色素は、フェニレンジアミン部分、より好ましくは2以上のフェニレンジアミン部分が共有結合されているポリメチン(シアニン)色素である。この光吸収色素におけるフェニレンジアミン部分は、安定剤として作用する。一態様によれば、該フェニレンジアミン部分が、当該色素の発色団に共役結合している。該フェニレンジアミン部分がパラ−フェニレンジアミン部分であることが好ましい。また、該フェニレンジアミン部分がアルキル置換基又はフェニル置換基を有することも好ましい。本明細書において、赤外吸収色素は、約700nm〜約1200nmの範囲で実質的な光吸収性を有する。
一態様によれば、赤外光吸収ポリメチン色素は、下式(I)で表すことができる:
Figure 0004620342
1、X2及びX3は、各々独立して水素、ハロゲン、シアノ、炭素原子数が1〜12個(より好ましくは炭素原子数1〜6個)のアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基を表すか、該X1、X2及びX3のうちのいずれか2つが互いに結合して5〜7員の炭素環式基又は複素環式基を形成してもよい。好ましくは、X1、X2及びX3は水素である。mは1〜3、より好ましくは1又は2である。
Rは、独立して水素又は置換基を表すが、該基の少なくとも一つはフェニレンジアミン部分基Raである。両方のR基がRaであることが好ましい。R1、R2、R3、R4及びR5の各々は、独立して炭素原子数が1〜12個であるアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基又は複素環式もしくは高分子主鎖基を表す。R1とR2又はR3とR4は、一緒に結合して5〜7員の複素環式基を形成してもよい。また、R1とR2は、化合物11及び化合物12について示すような2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−であることもできる。
好ましくは、R1、R2、R3、R4及びR5は、独立して炭素原子数1〜6個のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基又はメトキシメチル基を表すか;アリール基、特にフェニル基又はナフチル基を表すか;R1とR2の両方が、2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−である。一つの好適な態様によれば、R1及びR2がn−ブチルであり、R3がメチルであり、R4がフェニルであり、R5がメチルである。別の態様によれば、R1及びR2が2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−であり、R3がメチルであり、R4がフェニルであり、R5がメチルである。第三の態様によれば、R1及びR2が2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−であり、R3、R4及びR5がエチルである。
1、r2及びr3は、各々独立して、色素の活性を妨害しない置換基を表し、当業者において公知であろう。好ましくは、r1、r2及びr3は、上記したようなアルキル基又はアリール基である。各nは0〜4である。Wは、該色素の電荷を釣り合わせる1価の対アニオンである。好適な対アニオンの例は、ハロゲン化物又はスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、カルボキシレート基、ヒドロキシド基、SbF6基、BF4基、パークロレート基もしくはフェノラート基である。
好ましい態様によれば、色素は、下式(Ia)により表される。
Figure 0004620342
上式中、各Rは、独立して水素又は置換基を表すが、該基の少なくとも一つはフェニレンジアミン部分基Rbである。両方のR基がRbであることが好ましい。W、R1、R2、R3、R4及びR5は、上記で定義した通りである。
式(I)及び式(Ia)により表される特定の色素の例として、以下の色素等が挙げられる:
Figure 0004620342
Figure 0004620342
Figure 0004620342
本発明の好ましい態様によれば、光吸収色素の量は、例えば、約0.01g/m2〜約0.500g/m2であることができる。別の好ましい態様によれば、当該色素層に、画像色素又は顔料を組み合わせることもできる。
特記のない限りは、用語「基」、「置換された」又は「置換基」は、水素以外の基又は原子を意味する。さらに、用語「基」を使用するとき、置換基が置換可能な水素を含有するときに、その置換基が写真用途に必要な特性を破壊しない限り、置換基の未置換形態だけでなく、ここで述べるような置換基(単一又は複数)でさらに置換された形態を含むことをも意図していることを意味する。好適には、置換基は、ハロゲンでもよいし、分子の残部に炭素原子、ケイ素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子又はイオウ原子により結合されていてもよい。置換基は、例えば、ハロゲン、例えば、塩素、臭素又はフッ素;ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシル;又はさらに置換されていてもよい基、例えば、直鎖又は分岐鎖又は環状アルキル、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、t−ブチル、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)プロピル、シクロヘキシル及びテトラデシルを含むアルキル;アルケニル、例えば、エチレン、2−ブテン;アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2−メトキシエトキシ、sec−ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ及び2−ドデシルオキシエトキシ;アリール、例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、ナフチル;アリールオキシ、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、α−ナフチルオキシ、β−ナフチルオキシ及び4−トリルオキシ;カルボンアミド、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチル−フェノキシ)アセトアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α−(3−ペンタデシルフェノキシ)−ヘキサンアミド、α−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシ)−テトラデカンアミド、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−5−テトラデシルピロリン−1−イル、N−メチルテトラデカンアミド、N−スクシンイミド、N−フタルイミド、2,5−ジオキソ−1−オキサゾリジニル、3−ドデシル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリル、N−アセチル−N−ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5−(ジ−t−ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p−ドデシル−フェニルカルボニルアミノ、p−トリルカルボニルアミノ、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−メチル−N−ドデシルウレイド、N−ヘキサデシルウレイド、N,N−ジオクタデシルウレイド、N,N−ジオクチル−N’−エチルウレイド、N−フェニルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド、N−フェニル−N−p−トリルウレイド、N−(m−ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N−(2,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−N’−エチルウレイド及びt−ブチルカルボンアミド;スルホンアミド、例えば、メチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トリルスルホンアミド、p−ドデシルベンゼンスルホンアミド、N−メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N−ジプロピル−スルファモイルアミノ及びヘキサデシルスルホンアミド;スルファモイル、例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル;N−[3−(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N−メチル−N−テトラデシルスルファモイル及びN−ドデシルスルファモイル;カルバモイル、例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N−メチル−N−テトラデシルカルバモイル及びN,N−ジオクチルカルバモイル;アシル、例えば、アセチル、(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p−ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3−ペンタデシルオキシカルボニル及びドデシルオキシカルボニル;スルホニル、例えば、メトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2−エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4−ノニルフェニルスルホニル及びp−トリルスルホニル;スルホニルオキシ、例えば、ドデシルスルホニルオキシ及びヘキサデシルスルホニルオキシ;スルフィニル、例えば、メチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4−ノニルフェニルスルフィニル及びp−トリルスルフィニル;チオ、例えば、エチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ及びp−トリルチオ;アシルオキシ、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p−ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチルカルバモイルオキシ及びシクロヘキシルカルボニルオキシ;アミン、例えば、フェニルアニリノ、2−クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン;イミノ、例えば、1−(N−フェニルイミド)エチル、N−スクシンイミド又は3−ベンジルヒダントイニル;ホスフェート、例えば、ジメチルホスフェート及びエチルブチルホスフェート;ホスファイト、例えば、ジエチルホスファイト及びジヘキシルホスファイト;複素環基、複素環式オキシ基又は複素環式チオ基(これらの基の各々は、置換されていてもよく、且つ炭素原子と、酸素、窒素及びイオウからなる群から選択された少なくとも1個のヘテロ原子とからなる3員〜7員の複素環、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ベンゾイミダゾリルオキシ又は2−ベンゾチアゾリルを含有する);第4級アンモニウム、例えば、トリエチルアンモニウム;並びにシリルオキシ、例えば、トリメチルシリルオキシでよい。
必要に応じて、置換基は、それら自体、上記で記載した置換基で1回以上さらに置換されていてもよい。使用される具体的な置換基は、特定の用途についての所望の写真特性が得られるように当業者により選択でき、且つ例えば、疎水性基、可溶化基、ブロッキング基、放出性(放出することができる又は放出されることができる)基等であってもよい。分子が2個以上の置換基を有することができるとき、置換基が互いに結合して、特記のない限りは縮合環等の環を形成してもよい。一般的に、上記基及びそれらの置換基は、炭素原子数48個以下、典型的には炭素原子数1〜36個、通常炭素原子数24個未満であるが、選択される具体的な置換基に応じてこれよりも多くの炭素原子を含有できる。
本発明者等は、ここで、本発明で利用される赤外吸収色素が、ラテックスポリマー粒子上に充填後分散して印刷インクを形成するか、予め形成した着色印刷インクに添加できることを見出した。したがって、ラテックス上の赤外色素により、他では水性インクにおいて有用ではない色素で写真要素をマーキングすることが可能となる。本発明によれば、ラテックス組成物において疎水性ラテックス粒子に赤外色素が「組み合わされる」ことが必要である。「組み合わされる」とは、赤外色素が、当該ポリマー粒子に結合しているか、又はポリマー粒子内に位置していることを意味する。すなわち、該色素は、当該技術分野で知られているように単にラテックス分散体と混合され又はこれに分散されているのではなく、個々のポリマー粒子の一部となっていなければならない。すなわち、コーティング組成物中の赤外色素の実質的にすべてが、吸着されること、吸収されることその他当該ポリマー粒子と一体化された部分となること、が必要である。これらについては、米国特許第4,199,363号、第4,304,769号、第4,401,787号、第5,594,047号及び第6,361,916号を参照されたい。これらの特許は、引用することにより本明細書の内容とする。当該疎水性ポリマー粒子に対して安定剤を利用してもよいが、必要ではない。本発明の一態様によれば、凝集した疎水性ポリマー粒子は、安定剤を含有しない。
安定剤を利用する場合、メタノール等の有機溶媒への溶解度が、約0.5mg/ml以上であるものも有用である。有用な安定剤としては、例えば、ニッケルジチオレン色素、例えば、「Nickel Dithiolene Complexes(ニッケルジチオレン錯体)」、Nakazumi,H.等、JSDC、Vol.106、363−367、1990に記載のもの;ジチオレン色素、例えば、「The Synthesis of Dithiolene Dyes with Strong Near−IR Absorption(強近IR吸収を有するジチオレン色素の合成)」、Mueller−Westerhoff,U.T.等、Tetrahedron Vol.47、No.6、1991、909−932に記載のもの;ビスジチオ−a−ジケトン類、例えば、「Preparation, Reactions and Structure of Bisdithio−a−diketone Complexes of Nickel, Palladium and Platinum(ニッケル、パラジウム及び白金のビスジチオ−a−ジケトン錯体の調製、反応及び構造)」、Schtuazer,G.及びMayweg,V.、J.Am.Chem.Soc.、87、1965、1483に記載のもの;ジチオラトニッケル錯体、例えば、「The influence of dithiolato nickel complexes on the light fastness of a thin layer of a near infrared absorbing cyanine dye(近赤外吸収シアニン色素の薄層の耐光性に対するジチオラトニッケル錯体の影響)」、Nakazumi,H.等、JSDC、Vol.105、173−176、1988に記載のもの;及びビス−(チオベンジル)ニッケル化合物、例えば、「Bis−(thiobenzil) nickel compounds on their absorption spectra, reduction potential and singlet oxygen quenching efficiency(ビス−(チオベンジル)ニッケル化合物の吸収スペクトル、還元電位及び単一酸素クエンチ効率)」、Shiozaki,H.等、JSDC、Vol.105、26−29、1989に記載されているものなどがある。
本発明に使用されるポリマー粒子組成物を形成する際、IR色素及び、必要に応じて安定剤を、ポリマー粒子と組み合わせる。これは、色素及び安定剤を水混和性有機溶媒に溶解し、得られた溶液をポリマー粒子と混合した後、該溶媒を除去することによりおこなうことができる。有用な水混和性有機溶媒には、水混和性アルコール類、ケトン類及びアミド類、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物がある。これらの溶媒の具体例には、アセトン、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、メチル−エチルケトン等などがある。
好ましいコーティング組成物である水性ラテックスは、連続相としての水と分散相としての充填型ポリマー粒子から実質的になっている。充填可能なポリマー粒子は、以下の試験を満たすものである。25℃で、試験されている充填可能ポリマー粒子は、(a)ラテックスの総質量基準で0.2〜50質量%、好ましくは1〜20質量%のポリマー粒子濃度において水でラテックスを形成できなければならず、且つ(b)次にラテックス100mlを、高分子ラテックス充填組成物の形成に用いられる水混和性有機溶媒の等容量に混合し、攪拌し、10分間放置したときに、ポリマー粒子の凝集が観察されてはならない。
水性ラテックスは、ラジカル重合又は縮合重合により調製できる。乳化重合は、好ましいポリマーラテックス調製方法である。この用途のポリマーラテックスを調製するのに好適なモノマーには、アクリル酸、例えば、アクリル酸、α−クロロアクリル酸、α−アルキルアクリル酸(例えば、メタクリル酸等)等、アクリル酸由来エステル又はアミド(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ブチルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、β−ヒドロキシメタクリレート、テトラヒドロフリルメタクリレート等)、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルラウレート等)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン及びその誘導体、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセトフェノン、スルホスチレン等)、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、塩化ビニリデン、ビニルアルキルエーテル(例えば、ビニルエチルエーテル等)、マレイン酸エステル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルピリジン、2−又は4−ビニルピリジンなどがある。これらのモノマーのうち、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル並びにスチレン及びスチレン誘導体が特に好ましい。2種以上のエチレン性不飽和モノマーを、一緒に使用できる。例えば、メチルアクリレートとブチルアクリレートとの組み合わせ、エチルアクリレートとスチレンとの組み合わせ、テトラヒドロフリルメタクリレートとエチルアクリレートとの組み合わせ、メチルアクリレートとエチルアクリレートとの組み合わせ等を、使用できる。
ポリマーラテックスは、乳化重合法又は溶液重合法により、調製できる。乳化重合が、好ましい。乳化重合は、当該技術分野において周知であり、例えば、F.A.Bovey,「Emulsion Polymerizaion(乳化重合)」、ニューヨークにあるInterscience Publishers社発行、1955年に記載されている。使用することのできる化学開始剤としては、例えば、熱分解性開始剤、例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)、過酸化水素、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、並びにレドックス開始剤、例えば、過酸化水素−鉄(II)塩、過硫酸カリウム−硫酸水素ナトリウム、過硫酸カリウム−メタ重亜硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム−重亜硫酸水素ナトリウム、セリウム塩−アルコール等がある。乳化重合に使用できる乳化剤には、石鹸、硫酸塩(例えば、N−メチル−N−オレオイルタウリン酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホネート、ジフェニルオキシドジスルホネート、ナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホスクシネート及びナフタレンスルホスクシナメート、ポリエーテルスルホネート、アルキルポリエーテルスルホネート、アルキルアリールポリエーテルスルホネート等)、硫酸エステル(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、リン酸エステル(例えば、ノニルフェノールエトキシレートホスフェート、線状アルコールアルコキシレートホスフェート、アルキルフェノールエトキシレートホスフェート、フェノールエトキシレート)、カチオン性化合物(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等)、両性化合物並びに高分子量保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン等)などがある。
第二の種類のポリマーラテックスは、ポリエステルの水性分散液、例えば、Eastman Chemicals社製EastmanAQ(登録商標)ポリエステルがある。Eastman AQ29、Eastman AQ38及びEastman AQ55の3種のポリエステルは、異なる量のイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、ジエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールからなる。これらの熱可塑性、非晶質、イオン性ポリエステルを高温及び低圧での溶融相縮重合により調製し、溶融生成物を押し出して小ペレットとする。固形ポリマーは、70℃で最小の攪拌により容易に水に分散して界面活性剤又は溶媒を添加しない半透明低粘度分散液となる。イオン性モノマー、すなわち、スルホイソフタル酸の量を変えることにより、粒度を制御できる。粒度は、20〜100nmの範囲である。第三の種類のポリマーラテックスは、ポリウレタンの水性分散液、例えば、Witco社製のWitcobond(登録商標)アニオン性及びカチオン性ポリウレタン分散液又はBF Goodrich社製のSancure(登録商標)ポリウレタンである。Dieterich,D.、「Progress in Organic Coatings(有機コーティングの発展)」,9(3),281−340(1981)では、水性分散性ポリウレタンについて検討文献が記載されている。水分散性ポリウレタンの合成には、(1)水混和性有機溶媒、例えば、アセトン又はテトラヒドロフラン中でのジオール類、ジイソシアネート及び官能性ジオール、例えば、カルボキシルジオール又はスルホジオールの縮重合;(2)水中でのアミン類又は水酸化ナトリウムによるポリウレタンの中和;(3)ジアミン類による連鎖延長後、低沸点有機溶媒の除去が含まれる。ジオール類としては、例えば、ポリテトラヒドロフリルジオール、ポリ(テトラメチレンアジペート)グリコール、ポリ(カプロラクトン)ジオール、ポリ(エチレングリコール)等が挙げられる。ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ビス(イソシアナートシクロヘキシル)メタン又は米国特許第4,147,679号の第6欄に開示されている他のジイソシアネートが挙げられる。官能性ジオール類は、例えば、Dieterich,D.、「Progress in Organic Coatings(有機コーティングの発展)」、9(3)、pp.292(1981)に記載されている。
好ましい調製法によれば、所望の色素及び任意の安定剤を有機溶媒に溶解し、激しく攪拌しながらポリマーラテックス溶液に滴下できる。有機溶媒中の色素及び安定剤濃度は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜2質量%である。ラテックス溶液は、好ましくはポリマーを1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%含有する。次に、有機溶媒を蒸発除去し、ラテックス溶液を0.25μmフィルターにより濾過して色素充填ラテックス原液を得ることができる。この溶液を透析して、水中に残存する遊離色素分子を除去することができる。
最終組成物における色素:ラテックスポリマー質量比は、重要ではない。典型的な色素:ポリマー質量比は、1:100〜1:5、好ましくは1:80〜1:8、さらにより好ましくは1:40〜1:8であることができる。安定剤を利用し、一方では色素の存在量に対して少なくとも同量の安定剤が望ましい場合でも、色素:安定剤比は重要ではない。色素:安定剤質量比は、典型的には2:1〜1:10であることができ、好ましくは1:1〜1:5である。一実施態様によれば、ラテックス粒子上で色素を安定剤に近接させることが好ましい。したがって、ラテックスポリマーに対する色素の量を多くし且つ色素に対する安定剤の量を多くすることが、望ましい。質量比の観点から、色素:ポリマー質量比が1:40以下であるとともに、色素:安定剤質量比が1:1〜1:2とすることが、好ましい。
充填ラテックス組成物は、可視マークが望ましい場合には着色剤を含有することができる。本発明で使用できる顔料には、例えば、米国特許第5,026,427号、第5,086,698号、第5,141,556号、第5,160,370号及び第5,169,436号に開示されているものなどがある。これらの特許に開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容とする。厳密にどの顔料を選択するかは、具体的用途及び性能要件、例えば、色再現性及び画像安定性によって決まる。本発明に使用するのに好適な顔料には、例えば、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、アゾ顔料レーキ、β−ナフトール顔料、ナフトールAS顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、ジアゾ縮合顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン顔料及びイソインドリン顔料、多環式顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料及びペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラピリミドン顔料、フラバントロン顔料、アンタントロン顔料、ジオキサジン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、酸化チタン、酸化鉄及びカーボンブラックなどがある。使用可能な顔料の典型例として、カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1、2、3、5、6、10、12、13、14、16、17、62、65、73、74、75、81、83、87、90、93、94、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、111、113、114、116、117、120、121、123、124、126、127、128、129、130、133、136、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、183、184、185、187、188、190、191、192、193、194;C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、6、13、15、16、17、17:1、19、22、24、31、34、36、38、40、43、44、46、48、49、51、59、60、61、62、64、65、66、67、68、69;C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、38、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、49:3、50:1、51、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、68、81、95、112、114、119、122、136、144、146、147、148、149、150、151、164、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、192、194、200、202、204、206、207、210、211、212、213、214、216、220、222、237、238、239、240、242、243、245、247、248、251、252、253、254、255、256、258、261、264;C.I.ピグメントバイオレット1、2、3、5:1、13、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、50;C.I.ピグメントブルー1、2、9、10、14、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15、16、18、19、24:1、25、56、60、61、62、63、64、66;C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、36、45;C.I.ピグメントブラック1、7、20、31、32;並びにC.I.ピグメントブラウン1、5、22、23、25、38、41、42などが挙げられる。
本発明においては、広範囲の水不溶性色素、例えば、油性色素、分散色素又は溶剤色素、例えば、Ciba−Geigy Orasol Red G、Ciba−Geigy Orasol Blue GN、Ciba−Geigy Orasol Pink及びCiba−Geigy Orasol Yellowを使用できる。好ましい水不溶性色素は、キサンテン色素、メチン色素、ポリメチン色素、アントラキノン色素、メロシアニン色素、アザメチン色素、アジン色素、キノフタロン色素、チアジン色素、オキサジン色素、フタロシアニン色素、モノ又はポリアゾ色素及び金属錯体色素であることができる。より好ましくは、水不溶性色素は、アゾ色素、例えば、米国特許第6,468,338号(引用することにより本明細書の内容とする)に開示されているピラゾールアゾインドール色素の水不溶性類似体及び米国特許第4,698,651号(引用することにより本明細書の内容とする)に開示されているアリールアゾイソチアゾール色素;又は金属錯体色素、例えば、米国特許第5,997,622号及び第6,001,161号(これらの両方に開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容とする)に記載されている色素の水不溶性類似体、すなわち、8−ヘテロシクリルアゾ−5−ヒドロキシキノリンの遷移金属錯体であることができる。
本発明では、広範囲の水溶性色素を使用することができる。水溶性色素としては、例えば、反応性色素、直接色素、アニオン性色素、酸性色素、塩基性色素、フタロシアニン色素、メチン若しくはポリメチン色素、メロシアニン色素、アザメチン色素、アジン色素、キノフタロン色素、チアジン色素、オキサジン色素、アントラキノン、金属錯体色素又は米国特許第5,973,026号(引用することにより本明細書の内容とする)に開示されている色素が挙げられる。本発明の好ましい実施態様によれば、水溶性色素は、アニオン性色素であることができる。使用できるアニオン性色素には、モノアゾ色素若しくはポリアゾ色素、例えば、米国特許第6,468,338号に開示されているようなピラゾールアゾインドール色素;金属錯体色素、例えば、米国特許第5,997,622号及び第6,001,161号に開示されているような遷移金属錯体、すなわち、8−ヘテロシクリルアゾ−5−ヒドロキシキノリンの遷移金属錯体;フタロシアニン色素、例えば、C.I.ダイレクトブルー199;C.I.ダイレクトブルー307;リアクティブブラック31、リアクティブレッド31、例えば、米国特許第6,152,969号、EP1,063,268、EP1,067,155、WO00/23440、WO01/18123、JP2000−256587及びJP2001−072884(これらに開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容とする)に開示されているようなアントラキノン色素又はアントラピリドン色素なとがある。
水を連続相として含み、そして上記のポリメチン赤外色素が組み合わされている疎水性ポリマー粒子を分散相として含有するラテックス組成物を含む最終的な印刷インク組成物は、当該色素充填ラテックス原液を、蒸留水及び適当な界面活性剤、保湿剤その他当該技術分野において公知のインク着色剤又は添加剤で適切に希釈することにより調製できる。インク溶液中の色素材料の濃度は、0.005質量%〜1質量%、好ましくは0.01質量%〜0.5質量%であることができる。上記したように、種々の添加剤を、本発明のインクに添加できる。利用されるプリンターの種類に応じて決定することができる好適な添加剤には、界面活性剤、表面活性剤、消泡剤、腐食防止剤及び殺生物剤などがある。
好ましい表面活性剤又は界面活性剤は、ポリアルキレンオキシド部分を含有する非イオン型である。非イオン性界面活性剤の特に好ましい型は、アセチレン系ジオール類のエトキシル化により得られ、例えば、エトキシル化テトラメチルデシンジオール(18195ペンシルバニア州アレンタウンにあるAir Products and Chemicals社製のSurfynol(登録商標)465)がある。これは0.5質量%〜2質量%で添加でき、またグリセロール2〜10%、ジエチレングリコール2〜10%、プロパノール2〜10%及びトリエタノールアミン0%〜2%が存在できる。界面活性剤の活性は、消泡剤を添加することにより制御できる。消泡剤は、好ましくはテトラメチルデシンジオールとプロピレングリコールとの混合物(18195ペンシルバニア州アレンタウンにあるAir Products and Chemicals社製のSurfynol(登録商標)104PG)からなる。用語「殺生物剤」は、インク組成物を長時間放置した場合の種々の菌類の成長を防止又は抑制するのに使用される種々の抗真菌化合物を説明するのに使用される。1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(19897デラウェア州ウィルミントンにあるICI Americas社のProxel(登録商標)GXL)が、殺生物剤として有用である。
腐食防止剤を、インク配合物に添加してインクジェットプリンターの金属部分、特にノズル/オリフィスの腐食を防止又は減少させる。好ましい種類の腐食防止剤として、1H−ベンゾトリアゾール類がある。1H−ベンゾトリアゾール自体が、好ましい腐食防止剤(Cobratec(登録商標)99、オハイオ州シンシナティにあるPMC Specialties社製)である。
一態様によれば、充填型ラテックス組成物(好ましくは印刷インク組成物として)を、当業者に公知のGravuereプリンター又は他の手段、例えば、インクジェットプリンターを用いてハロゲン化銀写真表示要素の裏面に適用する。表示要素の「裏面」とは、支持体の画像形成層とは反対の面を意味する。表示要素の「前面」とは、画像形成層を含む表示要素の面を意味する。一般的に、印刷インクを表示要素の裏面の最外面に適用するが、保護層等の別の層を、印刷インク組成物上に塗布することもできる。適用後、組成物を、表面上で凝集させる。凝集は、単に組成物を乾燥することによりおこなうことができる。別法として、多少の熱を加えて、凝集しやすくしてもよい。
印刷インク組成物は、デジタルデータを表すロゴ若しくはパターン又は単に赤外若しくは光信号を付与するロゴ若しくはパターンで適用することができる。媒体の検出のために、裏面上に印字された検出可能なロゴパターン又は表示を有する印画紙等の媒体を、光センサーの下を通したり、必要に応じて光センサーを固定媒体上を通過させることができる。赤外(IR)源により、IR線を媒体の表面又は裏面に向け、光センサーにより、媒体の表面から反射したIR照度を検出する。IR吸収ロゴの存在、すなわち、媒体における反射率差により、反射IR照度が変化し、したがって、センサーにより生成される信号が変化する。本発明においては、感可視光印画紙に損傷が生じず且つ不可視マーキングを利用できるように、IR照明を使用する。
センサーからの信号は、一般的にコンディショニングエレクトロニクス、例えば、増幅器又はフィルターを通過させてセンサー信号を向上させ、且つマイクロコントローラー又はコンピュータを介してAD変換器又はデジタイザーによりデジタル形態に変換するための準備をする。その後、デジタルデータを、デジタルシグナルプロセッサー(DSP)による処理のためのバッフア、又は適当な処理能力のある他のコンピュータ、例えば、マイクロコントローラー又はコンピュータに入れる。システムオペレーションは、ホストコンピュータ若しくはシステムコンピュータからマイクロコントローラーへの開始信号から始まる。その後、マイクロコントローラーからの得られた信号を、システムコンピュータ又はホストコンピュータに通す。
このような情報を利用する一つの方法に、画像形成装置に使用される媒体の種類を検出する方法であって、赤外線照明を媒体の裏面に向ける工程と、媒体の裏面から反射された赤外線照度に基づいて、媒体の裏面上の表示の存在を検出する工程とを含む方法がある。別の方法では、上に反復表示を有する媒体の裏面上に赤外線照明を向け、媒体の裏面から反射した赤外線照度を検出して第一信号を得る工程と;反復表示が赤外線照明を受けたときに反射される赤外線照明の変化を検出して第二信号を得る工程と;第一信号と第二信号に基づいて表示の反復距離を算出し、算出された反復距離を、参照媒体用の記憶した表示反復距離と比較して媒体の種類を決定する工程とを含む方法がある。この方法は、米国出願第10/144,487号(出願日2002年5月13日)により詳細に記載されている。
別の実施態様では、充填型ラテックス組成物(好ましくは印刷インクの形態)を、表示要素の表面を含む写真画像に、好ましくはインクジェットプリンターにより適用する。これは、通常、ハロゲン化銀を現像した場合、画像形成要素についておこなう。表示要素は、写真画像形成プリントのいずれの形態、例えば、インクジェットプリント、熱転写プリント又はハロゲン化銀写真要素でよい。好ましくは、表示要素は、ハロゲン化銀写真要素である。充填型ラテックス組成物は、デジタルデータ、例えば、音データを表すパターンで適用できる。適用後、組成物を、表面上で凝集させる。組成物を単に乾燥することにより凝集させることができるが、別法として、多少の熱を加えて、凝集しやすくしてもよい。
本実施態様によれば、情報を一般的に画像の上部に印刷するので、パターンは、表示要素を見ている人には見えないことが重要である。スペクトルの可視領域の見えるほどの光学濃度がほとんどないことが必要であるだけでなく、適用したパターンは、下に設けられている写真プリントの光沢と調和していなくてはならない。下に位置するプリントの光沢は、当該技術分野において公知のように、広く異なることができる。艶消しプリントと同様にして光沢プリントを形成できる。付着させたラテックス組成物の光沢をその下のプリントの光沢と調和させるためには、組成物におけるラテックスポリマーを慎重に選択する必要がある。例えば、高光沢用途では、低Tgにより凝集を促進して完全凝集し、したがって、高光沢となるので、比較的低Tgのラテックスポリマーを選択する。艶消し用途では、比較的高いTgを選択して、部分凝集させてより綿密に艶消し表面の光沢に調和させる。ここでも、充填型ラテックス組成物を、一般的に表示要素の前面の最外面に適用するが、凝集したラテックス充填組成物上に保護層等の別の層を塗布してもよい。
商用インクジェットプリンター、例えば、印刷解像度が300又は360dpiであるHP Deskjet 560又はEpson Stylus Color 200を、試験に使用することができる。赤外線マーキングの場合、ロゴ、商標シンボル、ステップウエッジファイル又はバーコードを、視覚反射濃度0.01〜1.0、好ましくは0.05〜0.4で種々の支持体上にデジタル印刷できる。商用ラバースタンプを使用して、インクを表面に適用して評価することもできる。別法として、インクを、エアーブラシを用いてスプレーしてもよい。本発明で使用したエアーブラシの一つは、60131イリノイ州フランクリンパークウェストベルモントアベニュー9128にある Badger Air−Brush社(Model200)から購入した。
画像形成要素がハロゲン化銀要素である態様においては、本発明で利用されるハロゲン化銀乳剤は、例えば、塩化銀乳剤、臭化銀乳剤、臭ヨウ化銀乳剤、臭塩化銀乳剤、ヨウ塩化銀乳剤、臭ヨウ塩化銀乳剤及びヨウ臭塩化銀乳剤からなることができる。ハロゲン化銀乳剤は、好ましくは主として塩化銀乳剤である。「主として塩化銀」とは、乳剤粒子は、塩化銀が約50モル%超であることを意味する。好ましくは、塩化銀が約90モル%超、最適には塩化銀が約95モル%超のものである。
主として塩化銀からなる乳剤は、{111}結晶面及び{100}結晶面を有する立方粒子、平板状粒子及び14面体粒子を有するものを含む種々の形態をとることができる。粒子は、立方格子型ハロゲン化銀粒子の天然形態をとることができる。さらに、粒子は、球状粒子等の不規則なものでもよい。さらに、これらの乳剤は、総ハロゲン化物組成物の10%未満のヨウ化物又は臭化物を含有できる。
粒子は、写真乳剤に使用されることのできる通常の分散媒体に含有させることができる。具体的には、分散媒体は、水性ゼラチノ−ペプタイザー分散媒体であることができる。ゼラチノ−ペプタイザー分散媒体のゼラチンは、とりわけ、例えば、アルカリ処理ゼラチン(牛骨ゼラチン及び牛皮膚ゼラチン)又は酸処理ゼラチン(豚皮ゼラチン)及びゼラチン誘導体、例えば、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン等であることができる。ゼラチンは、総銀1モル当たり0.01〜100gのレベルで使用するのが好ましい。
本発明の写真表示要素は、色素産生白黒要素、単色要素又は多色要素等の白黒要素であることができる。本発明で利用される支持体は、一般的に当該技術分野において公知であるような反射性支持体である。多色要素は、スペクトルの三原色領域の各々に感度のある画像色素形成単位を含有する。各単位は、スペクトルの一定領域に感度を有する単一の乳剤層又は複数の乳剤層を含むことができる。画像形成単位の層を含む要素の層を、当該技術分野において公知の種々の順序で配置できる。別のフォーマットにおいて、スペクトルの三原色領域の各々に感度のある乳剤を、単一セグメント化層として配置できる。
典型的な多色写真要素は、少なくとも一種のシアン色素形成カプラーを組み合わせた少なくとも1つの赤感性ハロゲン化銀乳剤層を含むシアン色素画像形成単位と、少なくとも一種のマゼンタ色素形成カプラーを組み合わせた少なくとも1つの緑感性ハロゲン化銀乳剤層を含むマゼンタ色素画像形成単位と、少なくとも一種のイエロー色素形成カプラーを組み合わせた少なくとも1つの青感性ハロゲン化銀乳剤層を含むイエロー色素画像形成単位とを支持体に担持して有している。この要素は、追加の層、例えば、フィルタ層、中間層、オーバーコート層、下塗り層等を有していてもよい。一つの好適な実施態様によれば、本発明において利用されるピリミジン化合物を、ハロゲン化銀乳剤又はカプラー分散体においてイエロー色素画像形成単位に添加できる。
必要に応じて、写真要素は、英国PO10 7DQハンプシャー州エムスワースノースストリート12aダドレイアネックス(Dudley Annex,12a North Street,Emsworth,Hampshire PO10 7DQ,ENGLAND)にあるKenneth Mason Publications社により発行されている、リサーチディスクロージャー(Research Disclosure)、1992年11月、アイテム34390(これに記載の内容は、引用することにより本明細書の内容とする)に記載されているように適用される磁性層と関連して使用することができる。
下表では、(1)リサーチディスクロージャー、1978年12月、アイテム17643、(2)リサーチディスクロージャー、1989年12月、アイテム308119、(3)リサーチディスクロージャー、1994年9月、アイテム36544及び(4)リサーチディスクロージャー、1996年9月、アイテム38957を引用している。これらの全ては、英国PO10 7DQハンプシャー州エムスワースノースストリート12aダドレイアネックスにあるKenneth Mason Publications社から発行されたものである(ここに開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容とする)。下表及びその表に引用した文献には、本発明の要素に使用するのに好適な特定の成分が記載されている。また、以下の表とその引用文献には、要素を調製し、露光し、処理し、操作するのに好適な方法及びその中に含まれている画像を得るのに好適な方法が記載されている。本発明とともに使用するのに特に好適なこのような要素を処理する高塩化物写真要素及び方法が、英国PO10 7DQハンプシャー州エムスワースノースストリート12aダドレイアネックスにあるKenneth Mason Publications社より発行されているリサーチディスクロージャー、1995年2月、アイテム37038、リサーチディスクロージャー、1997年9月、アイテム40145及び、特に重要な、リサーチディスクロージャー、2000年9月、アイテム437013に記載されている(ここに開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容とする)。
Figure 0004620342
写真要素は、寸法的に安定である限りは、当業者に公知の従来の支持体を利用できる。このような材料には、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンナフタレート);ポリスルホン;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリアミド;ポリカーボネート;セルロースエステル、例えば、セルロースアセテート;フッ素ポリマー、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)又はポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン);ポリエーテル類、例えば、ポリオキシメチレン;ポリアセタール類;ポリオレフィン類、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はメチルペンテンポリマー;並びにポリイミド類、例えば、ポリイミド−アミド及びポリエーテル−イミドなどがある。支持体は、一般的に約5〜約200μmの厚さを有する。
通常の写真画質紙の一つは、ポリエチレン樹脂防水塗膜を有するセルロース紙を含む。支持体は、ポリマー結合層を溶融押出しすることにより写真画質紙支持体の上部及び底部の両方につけた二軸延伸ポリオレフィンの多層フィルムからなっていてもよい。二軸延伸フィルムは、少なくとも一層がボイドを有する複数の層を含んでいてよい。ボイドにより、画像形成要素に不透明を付与する。ボイド化層は、TiO2、CaCO3、クレー、BaSO4、ZnS、MgCO3、タルク、カオリン、又は該複数の層からなるフィルムにおいて高度に反射性の白色層が得られる他の材料からなる群から選択された少なくとも一種の顔料を含有する層と関連して使用することもできる。着色層とボイド化層とを組み合わせることにより、最終画像の光学性能上の利点が得られる。これらの支持体は、米国特許第5,866,282号、第5,888,681号、第6,030,742号、第6,030,759号、第6,107,014号及び第6,153,351号により詳細に記載されている。このような二軸延伸フィルムは、半透明又は透明支持体を有する表示材料に使用することもできる。
感放射線性高塩化物乳剤層を含む写真要素は、通常通り光学印刷するか、典型的に電子印刷法で用いられる好適な高エネルギー放射線源を用いてピクセルバイピクセルモードで像様露光できる。好適な活性型エネルギーには、電磁スペクトルの紫外領域、可視領域及び赤外領域だけでなく、電子線も含まれ、ガス状又は固体レーザーを含む一種以上の光放出ダイオード又はレーザーからのビームにより供給するのが都合がよい。露光は、単色性、整色性又は全整色性であることができる。例えば、記録要素が多層多色要素であるときには、このような要素が感度がある適当な分光放射線、例えば、赤外、赤色、緑色又は青色波長のレーザー又は光放出ダイオードビームによって露光をおこなうことができる。上記した米国特許第4,619,892号に開示されているように、赤外領域の少なくとも2つの部分を含む電磁スペクトルの別々の部分における露光との相関関係でシアン色素、マゼンタ色素及びイエロー色素を生成する多色要素を、用いることができる。好適には、2000nm以下、好ましくは1500nm以下で露光する。好適な光放出ダイオード及び市販のレーザー源は、公知であり、市販されている。周囲温度、高温度若しくは低温度及び/又は周囲圧力、高圧力若しくは低圧力での像様露光を、通常のセンシトメトリー法で求められる記録要素の有用な応答範囲内で用いることができる。この方法は、T.H.James、The Theory of the Photographic Process(写真プロセスの理論)、第4版、マクミラン(Macmillan)、第4、6、17、18及び23章、1977年に記載されている。
露光源により記録媒体に照射される高エネルギー活性線の量又はレベルは、一般的には少なくとも10-4エルグ/cm2であり、典型的には約10-4エルグ/cm2〜10-3エルグ/cm2の範囲であり、しばしば10-3エルグ/cm2〜102エルグ/cm2の範囲である。当該技術分野において公知のピクセルバイピクセルモードにおける記録要素の露光は、継続時間が極めて短い。典型的な最大露光時間は、100マイクロ秒以下、しばしば10マイクロ秒以下及び頻繁には0.5マイクロ秒以下でしかない。各ピクセルに、単一露光又は複数露光することができる。ピクセル濃度は、当業者には明らかなように広範に異なる。ピクセル濃度が高いほど、画像の鮮明度を高くすることができるが、装置が複雑となる。一般的に、ここに記載されている種類の通常の電子印刷法に使用されるピクセル濃度は、107ピクセル/cm2を超えず、典型的には約104〜106ピクセル/cm2である。露光源、露光時間、露光レベル及びピクセル濃度並びに他の記録要素特性を含むシステムの種々の特徴及び構成要素を検討するハロゲン化銀印画紙を用いた高品質連続トーンカラー電子印刷技術の評価が、Firth等、A Continuous−Tone Laser Color Printer(連続トーンレーザーカラープリンター),Journal of Imaging Technology,Vol.14,No.3,1988年6月(ここに開示されている内容は、引用することにより本明細書の内容とする)に記載されている。光放出ダイオード又はレーザービーム等の高エネルギービームで記録要素を走査することを含む通常の電子印刷法の内容の一部が、ヒオキ(Hioki)による米国特許第5,126,235号、ヨーロッパ特許出願EP479167A1及び502508A1に記載されている。
次に、写真要素を、処理して可視色素画像を形成することができる。可視色素画像を形成するための処理には、要素を発色現像主薬と接触させて現像性ハロゲン化銀を還元し、発色現像主薬を酸化する工程を含む。酸化された発色現像主薬が次にカプラーと反応して色素を生じる。ネガ形ハロゲン化銀の場合、上記した処理工程により、ネガ画像が得られる。一実施態様によれば、上記した要素を、公知のカラ−プリントプロセス、例えば、ニューヨーク州ロチェスターにあるEastman Kodak社のRA−4プロセスで処理できる。
以下、実施例により、本発明をさらに説明する。しかしながら、これらは、本発明の全て可能な変更態様ではない。部及び%は、特記のない限りは、質量基準である。
以下に示すIR色素化合物は、直接結合したフェニレンジアミン安定剤部がないか、外添剤として使用されるフェニレンジアミン部を有するものであり、これらを本発明の利点を明らかにするための対照化合物として使用する:
Figure 0004620342
Figure 0004620342
Figure 0004620342
Figure 0004620342
例1(光安定性)
本発明の要素1
ポリ(エチレンテレフタレート)支持体上に、セルロースアセテートプロピオネートバインダー(0.5g/m2)に本発明の色素10(0.1g/m2)を添加したものを塗布することにより、本要素を作製した。この塗布に使用した溶媒は、メチルイソブチルケトンと3Aアルコールとの70/30(v/v)混合物であった。
対照要素CE−1
対照要素CE−1を、色素10の代わりに色素試料C−1を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−2
対照要素CE−2を、色素10の代わりに色素試料C−2を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−3
対照要素CE−3を、色素10の代わりに色素試料C−3を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−4
対照要素CE−4を、色素10の代わりに色素試料C−4を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−5
対照要素CE−5を、色素10の代わりに色素試料C−5を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−6
対照要素CE−6を、色素10の代わりに色素試料C−6を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−7
対照要素CE−7を、色素10の代わりに色素試料C−7を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
対照要素CE−8
対照要素CE−8を、色素10の代わりに色素試料C−8を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
上記要素を、露光装置に5.4キロルクス及び50キロルクスで1週間入れておいた。露光前後の分光吸光度曲線を分光光度計で測定し、安定性を、最高濃度ステップについてのλmaxでの要素の濃度損失%に基づいて算出した。結果は、以下の通りであった:
Figure 0004620342
上記結果から、共有結合したフェニレンジアミン単位を有する本発明で用いるIR色素10が、両光条件下、従来技術の対照化合物C−1〜C−8と比較して、IR色素の光分解を防止する上で大きな安定化効果を示すことが明らかである。
例2(暗安定性)
当該要素を、一定乾燥空気流量で流したブラックボックスに6週間入れた以外は、例1の操作を繰り返した。得られた結果を、以下に示す:
Figure 0004620342
上記結果から、共有結合したフェニレンジアミン単位を有する本発明で用いるIR色素10が、暗条件下、IR色素の空気酸化を防止する上で安定化効果を示すことも明らかである。
例3(湿式オーブン安定性)
対照要素CE−11を用いて、該要素を、湿式オーブンチャンバー(38℃/90RH)に4週間入れた以外は、例1の操作を繰り返した。
対照要素CE−11
本要素は、色素10の代わりにC−11(色素試料C−1と、フェニレンジアミン基含有のその合成中間体との混合物)を使用した以外は、要素1と同様にして作製した。
結果は、以下の通りであった:
Figure 0004620342
本例から、フェニレンジアミンが本発明色素10と同様に共有結合しているとき高湿条件でのIR色素安定性が改善されることが、明らかである。
例4
本発明の要素2を、色素10の代わりに色素11を使用した以外は、要素1と同様に作製した。
本発明の要素3を、色素10の代わりに色素12を使用した以外は、要素1と同様に作製した。
対照要素CE−3を、色素10の代わりに試料C−3を使用した以外は、要素1と同様に作製した。
対照要素CE−5を、色素10の代わりに試料C−11を使用した以外は、要素1と同様に作製した。
上記要素を、室内灯条件下に3週間置いた以外は、例1の操作を繰り返した。
得られた結果を、以下に示す:
Figure 0004620342
本例は、本発明による共有結合したフェニレンジアミン部分を有する色素(IR色素11及び12)と、安定剤としてフェニレンジアミン誘導体を外添した又は外添しないIR色素試料(C-3及びC−11)との間で安定性について比較検討したものを示す。
安定剤のIR色素への共有結合の利点が、得られたデータから明らかである。要素11及び要素12についての例では、光安定性の顕著な改善が見られる。フェニレンジアミンの置換基の選択は、要素11と要素12の両方の安定性がこの条件下で極めて類似しているので、安定化効果にとっては重要ではないと思われる。
例5
例5の要素を、湿式オーブンチャンバー(38℃/90RH)に3週間入れた以外は、例4の操作を繰り返した。得られた結果を、以下に示す:
Figure 0004620342
本例から、フェニレンジアミンが共有結合していると、高湿条件での本発明に有用な本発明の色素の安定性が非常に改善されることが、明らかである。
要素6シアニン色素に対するラテックス充填フェニレンジアミン色素の改善された光安定性
比較試料「C−A」:
ポリマーラテックス(AQ55)(29質量%)原液8.6gに、水16.4gとメタノール25.0gとを添加した。得られた組成物を、室温で激しく攪拌してラテックス溶液を形成した。色素溶液を調製するために、色素(C−12)12.5mgを、メタノール2.5mlと塩化メチレン2.5mlとの混合物に溶解させた。次に、色素溶液を、連続攪拌しながらラテックス溶液に滴下した。1時間後、有機溶媒を減圧下で除去した。得られた色素(C−12)充填ラテックス原液を、0.45マイクロメートルフィルターにより濾過した。ラテックス原液中の色素(C−12)の濃度の推定値は500ppmであり、ポリマー濃度はほぼ10質量%であった。
本発明試料1
色素充填ラテックス原液を、色素(C−12)の代わりに色素(6)を使用した以外は、比較例C−Aと同様に調製した。
一般的に、調製したインクジェットインク液を、補給可能インクジェットカートリッジに充填した。Surfynol(登録商標)465(Air Products社より入手)15gと、グリセロール0.75gと、ジエチレングリコール0.6gと、プロパノール0.75gとを、上記で調製した色素充填原液の計算量に添加して色素充填ラテックス含有インクを調整した。最終インクが、色素0.025質量%並びにSurfynol(登録商標)465 1質量%、グリセロール5質量%、ジエチレングリコール4質量%及びプロパノール5質量%を含有するように、補給量の蒸留水を添加した。最終インク溶液の総量は、15.0gであった。この溶液を、0.45μmフィルターにより濾過し、補給可能カートリッジに充填した。
ステップウエッジ画像を、Kodak中質量写真品質インクジェット紙に、Epson200インクジェットプリンターにより、解像度360dpiで印刷した。次に、この試料に、5.4キロルクス昼光を1週間照射した。最高濃度ステップについて、μmaxでの試料の濃度損失%基準で光安定性を算出した。得られた結果を、表6に示す。
Figure 0004620342
Figure 0004620342
Figure 0004620342
本発明を、その好ましい特定の実施例を引用して詳細に記載したが、本発明の精神及び範囲内で種々の変更及び修正が可能であることは、理解されるところであろう。本明細書で触れている特許及び他の刊行物の内容全体は、引用することにより本明細書の内容とする。
以下、本発明の好ましい態様を項分け記載する。
(1)水を連続相として、そしてフェニレンジアミン部分が共有結合されている赤外ポリメチン色素が組み合わされている疎水性ポリマー粒子を分散相として含んで成るラテックス組成物。
(2)該フェニレンジアミン部分がパラ−フェニレンジアミン部分である、(1)項に記載のラテックス組成物。
(3)該フェニレンジアミン部分がアルキル又はフェニル置換基を含有する、(1)項に記載のラテックス組成物。
(4)該色素が少なくとも2個の該フェニレンジアミン部分を含有する、(1)項に記載のラテックス組成物。
(5)該フェニレンジアミン部分が該色素の発色団と共役している、(1)項に記載のラテックス組成物。
(6)該色素が下式で表される、(1)項に記載のラテックス組成物。
Figure 0004620342
上式中、
1、X2及びX3は、各々独立して水素、ハロゲン、シアノ、炭素原子数1〜12個のアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基を表すか、該X1、X2及びX3のうちのいずれか2つが互いに結合して5〜7員の炭素環式基又は複素環式基を完成することができ、mは1〜3であり;
Rは、各々独立して水素又は置換基を表すが、該基の少なくとも一つはフェニレンジアミン部分基Raであり、ここでR1、R2、R3、R4及びR5は、各々独立して炭素原子数1〜12個のアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基、又は複素環式もしくは高分子主鎖基を表し;但し、R1とR2又はR3とR4が一緒に結合して5〜7員の複素環式基を形成することはでき;
1、r2及びr3は、各々独立して置換基を表し、各nは0〜4であり;そして
Wは、該色素の電荷を釣り合わせる1価の対アニオンである。
(7)両方のR基がRaである、(6)項に記載のラテックス組成物。
(8)R3、R4及びR5の各々が独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はナフチル基であり、R1及びR2の各々が独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はナフチル基であるか、又はR1とR2の両方が2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−である、(7)項に記載のラテックス組成物。
(9)R1及びR2がn−ブチルであり、R3がメチルであり、R4がフェニルであり、R5がメチルである、(7)項に記載のラテックス組成物。
(10)該R1及びR2が2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−であり、R3がメチルであり、R4がフェニルであり、R5がメチルである、(7)項に記載のラテックス組成物。
(11)該R1及びR2が2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−であり、R3、R4及びR5がエチルである、(7)項に記載のラテックス組成物。
(12)mが1である、(7)項に記載のラテックス組成物。
(13)mが2である、(7)項に記載のラテックス組成物。
(14)該対アニオンが、ハロゲン化物又はスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、カルボキシレート基、ヒドロキシド基、SbF6基、BF4基、パークロレート基もしくはフェノラート基である、(7)項に記載のラテックス組成物。
(15)各色素置換基がアルキル基又はアリール基である、(7)項に記載のラテックス組成物。
(16)該赤外色素が式Iaで表される、(7)項に記載のラテックス組成物。
Figure 0004620342
上式中、各Rは、独立して水素又は置換基を表すが、該基の少なくとも一つはフェニレンジアミン部分基Rbであり、ここでR1、R2、R3、R4及びR5の各々は独立して炭素原子数が1〜12個であるアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基又は複素環式もしくは高分子主鎖基を表し;但し、R1とR2又はR3とR4は一緒に結合して5〜7員の複素環式基を形成してもよく;
Wは、該色素の電荷を釣り合わせる1価の対アニオンである。
(17)両方のR基がRbである、(16)項に記載のラテックス組成物。
(18)R3、R4及びR5の各々が独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はナフチル基であり、R1及びR2の各々が独立してメチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はナフチル基であるか、又はR1とR2の両方が2個の縮合6員環の一部としての−(CH2CH2CH2)−である、(17)項に記載のラテックス組成物。
(19)該赤外色素が、
Figure 0004620342
Figure 0004620342
である、(17)項に記載のラテックス組成物。
(20)該対アニオンが、ハロゲン化物又はスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基、カルボキシレート基、ヒドロキシド基、SbF6基、BF4基、パークロレート基もしくはフェノラート基である、(17)項に記載のラテックス組成物。
(21)該組成物が印刷インクである、(1)項に記載のラテックス組成物。
(22)該組成物が印刷インクである、(7)項に記載のラテックス組成物。
(23)さらに着色剤を含む、(1)項に記載のラテックス組成物。
(24)さらに着色剤を含む、(7)項に記載のラテックス組成物。
(25)ラテックス組成物においてポリマー粒子に色素を組み合わせる方法であって、
(1)フェニレンジアミン部分が共有結合されているポリメチン色素を水混和性又は水不混和性有機溶媒に溶解させることにより色素溶液を形成し、
(2)疎水性ポリマー粒子を水性連続相に分散させることによりラテックスを形成し、
(3)該ラテックスと該色素溶液とをブレンドし、そして
(4)該有機溶媒を除去して該ポリマー粒子を充填することにより、ポリメチン色素が組み合わされているラテックスを形成する
ことを特徴とする方法。
(26)該色素が下式で表される、(25)項に記載の方法。
Figure 0004620342
上式中、
1、X2及びX3は、各々独立して水素、ハロゲン、シアノ、炭素原子数が1〜12個であるアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基を表すか、該X1、X2及びX3のうちのいずれか2つが互いに結合して5〜7員の炭素環式基又は複素環式基を形成してもよく、mが1〜3であり;
Rは、各々独立して水素又は置換基を表すが、該基の少なくとも一つはフェニレンジアミン部分基Raであり、ここでR1、R2、R3、R4及びR5の各々は独立して炭素原子数が1〜12個であるアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基又は複素環式もしくは高分子主鎖基を表し;但し、R1とR2又はR3とR4は一緒に結合して5〜7員の複素環式基を形成してもよく;
1、r2及びr3は、各々独立して置換基を表し、各nは0〜4であり;
Wは、該色素の電荷を釣り合わせる1価の対アニオンである。
(27)両方のR基がRaである、(26)項に記載の方法。

Claims (1)

  1. 水を連続相として、そしてフェニレンジアミン部分が共有結合されている赤外ポリメチン色素が組み合わされている疎水性ポリマー粒子を分散相として含んで成り、該赤外色素が式Iaで表される、ラテックス組成物。
    Figure 0004620342
    上式中、Rはフェニレンジアミン部分基Rbであり、
    1 、R 2 、R 3 、R 4 及びR 5 は各々独立して炭素原子数が1〜12個であるアルキル基、炭素環における炭素原子数が5〜10個であるシクロアルキル基、炭素環における炭素原子数が6〜10個であるアリール基又は複素環式もしくは高分子主鎖基を表し、
    但し、R 1 とR 2 又はR 3 とR 4 が一緒に結合して5〜7員の複素環式基を形成してもよく、またR 1 とR 2 の両方が2個の縮合6員環の一部としての−(CH 2 CH 2 CH 2 )−であってもよく、そして
    Wは、該色素の電荷を釣り合わせる1価の対アニオンである。
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