JPH1158984A - 感熱記録材料および記録方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 明室での取り扱いが可能で、記録画像が安定
であり、定着性、色再現性に優れた感熱記録材料および
記録方法の提供。 【解決手段】 支持体上に、光を吸収して遊離基を発生
する光遊離基発生剤、該光遊離基発生剤が発生する遊離
基によって消色される色素が、加熱記録される前は消色
抑制剤と隔離された状態で構成されている記録層を設け
た感熱記録材料であって、該消色抑制剤は熱によって該
光遊離基発生剤と混合された際に該光遊離基発生剤と反
応し、該光遊離基発生剤の消色性を停止することにより
潜像を形成する化合物であることを特徴とする感熱記録
材料。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、加熱した後に光を
照射することにより非加熱部を消色させる感熱記録材料
および記録方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】サーマルヘッド等を用いた、感熱記録材
料（以下、単に記録材料ともいう）は記録装置が簡便で
あり、現像が不要である、記録時の騒音が無い、メンテ
ナンスが不要でランニングコストが安い等の特徴を有し
ているため、ファクシミリやプリンター等種々の分野で
広く利用されている。

【０００３】通常の感熱記録材料は、上記の利点を有し
ているものの加熱のみで発色反応が起きてしまうため、
記録後に不慮の加熱により不要の発色反応が起こった
り、記録後の改ざんが容易で記録の信頼性が低いといっ
た問題点を有しており、定着が可能な感熱記録材料が望
まれていた。

【０００４】これまで定着性をもった感熱記録材料とし
ては、ジアゾ感熱記録紙が代表的なものであるが、ジア
ゾニウム塩化合物は反応性が高くて地かぶりを生じ易
く、また熱安定性も悪いため、長期保存をした場合に地
かぶりを生じるだけでなく、最高発色濃度まで低下して
しまうといった問題点を有していた。

【０００５】近年、マイクロカプセルを使ってジアゾと
カプラーを分離した感熱記録材料が開発された。この記
録材料はある程度地かぶりの改良はなされているもの
の、いまだ十分なレベルにはなく、より安定な記録材料
が望まれていた。

【０００６】また、特開平１−１２９２４７号、１−１
４３２５２号、３−１０２５２号、３−１９８３号等に
光遊離基発生剤とロイコ色素を熱応答性のマイクロカプ
セル内に閉じ込め、カプセル外に還元剤を存在させた記
録材料が開示されている。前記記録材料は、熱記録によ
りマイクロカプセルの外にある還元剤を、マイクロカプ
セルの中にある光遊離基発生剤と混合せしめ、その発色
性を停止した後、全面露光して非加熱部を発色させるこ
とができる。このようなタイプの記録材料では、光遊離
基発生剤と反応して発色する酸化発色型ロイコ色素が初
めから混合されているため、保存時に室内光あるいは太
陽光等にさらされたり、長期間の保存中に光遊離基発生
剤が徐々に分解されることによってかぶりが生じるとい
った欠点があり、より簡便に取り扱え、長期の保存に耐
えうる記録材料が求められていた。

【０００７】一方、消色型の感熱記録材料は、色素の発
色体を支持体上に塗布したもので、熱記録部を消色ある
いは熱記録部以外の色素を消色させ記録画を得るもので
ある。消色型の記録材料は、発色型の記録材料に比べ
て、色材の利用効率を高めることができる。すなわち、
発色型の記録材料では、色材の全量を発色させることは
出来ないため、所望の記録濃度を得るためには、過剰の
色材を予め記録材料に塗布しておく必要がある。それに
対して、消色型の記録材料は、色材の発色体をそのまま
利用できるため、高い記録濃度を、より少ない色材で達
成できる可能性がある。

【０００８】特開平２−１９０３８３号、同２−１９０
３８５号、同２−１９０３８６号等には、シアニン色
素、キサンテン色素等のカチオン性色素の有機ホウ素化
合物塩が、その色素の持つ吸収領域の光を照射すること
により消色する性質を利用して画像形成する感熱記録材
料が記載されている。これは加熱印字部で、色素の塩と
なっている有機ホウ素化合物を分解させる化合物と色素
の有機ホウ素化合物塩を混合することにより、有機ホウ
素化合物を光消色を起こさない化合物に分解させた後、
光照射することにより非加熱部を消色させて記録画像を
得るものである。

【０００９】しかしながらこのような記録材料では、使
用できる色素は有機ホウ素化合物と塩を形成するものに
限定されてしまい、色素を自由に選べないという問題点
があった。特に、この記録方法で使用できるカチオン性
の色素は一般的に記録画像の安定性に欠け、耐光性が悪
いため、より安定性、耐光性が良い色素を使用できる記
録材料が求められていた。

【００１０】さらにこの記録材料では、その色素の持つ
吸収領域の光を使って消色するため、種々の不都合が生
じることがあった。例えば、色素の持つ吸収領域の波長
の光を照射することにより消色させるため、室内光でも
簡単に消色が起こってしまい、明室での取り扱いが困難
になる等の問題点を有していた。更には、利用できる色
素は塩になっているため一般に有機溶剤に対する溶解性
が低い、コストが高いこと等も問題であった。

【００１１】これら従来技術の問題点を解決するため、
本発明者らは新たな感熱記録材料を検討し、開発するに
至った（特願平８−１５２２０９号）。それはすなわ
ち、光を吸収して遊離基を発生する光遊離基発生剤、該
遊離基発生剤が発生する遊離基によって消色される色
素、および消色抑制剤により構成され、保存安定性が良
く、明室での取り扱いが可能で、サーマルヘッド等によ
る加熱と簡単な露光のみで、良好な記録画像を得る感熱
記録材料である。その原理は、光遊離基発生剤と色素を
あらかじめ混合しておき、熱記録により光遊離基発生剤
と色素の混合物に更に消色抑制剤を混合させ、その後の
光照射により熱記録部では色素の消色が抑制され、非熱
記録部では色素の消色が起こるものである。

【００１２】この記録材料および方法によれば、光照射
により画像の定着が可能である。また、色素と色素の消
色を起こさせる光遊離基発生剤が独立しているため、各
々に求められる性能に応じて、より広い範囲からの選択
が可能である。例えば、色素は、加熱印字部ではそのま
ま画像形成色素となるが、光や熱に対する堅牢性が高い
色素を選択できる。また記録画像の色調についても、色
素を広い範囲から選択できるため、好ましい色調に調節
することが容易である。また、色素の消色に使用する光
遊離基発生剤も、色素とは独立に選択することができ
る。この記録材料において光遊離基発生剤は、光遊離基
発生剤そのものが吸収する光を照射することで遊離基を
発生する。そのため、照射したい光の波長に合わせた光
遊離基発生剤を選択することができる。例えば、明室で
の取り扱いを可能にするために、照射光を可視光から紫
外光等にずらして使用することができる。

【００１３】この感熱記録材料により従来技術の問題点
である、保存安定性、明室での取り扱いやすさ等の点が
改良された。また、サーマルヘッド等による加熱と簡単
な露光のみで、記録画像の改ざんが出来ない、定着が可
能な安定性の高い画像を得ることができた。

【００１４】しかしながらこの感熱記録材料では、消色
抑制剤によっては経時や、消色部を再加熱することによ
り、徐々にではあるが１度消色した色素がわずかながら
復色してステインとなってしまうといった現象が起こる
ことがあり、十分な定着性を有しているとは言えなかっ
た。この白地部分のステインは、原画の色を忠実に再現
するうえであまり好ましいものではない。

【００１５】

【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、明室での取り扱いが可能で、記録画像が安
定であり、定着性、色再現性に優れた感熱記録材料およ
び記録方法を提供することにある。

【００１６】

【課題を解決するための手段】

１．支持体上に、光を吸収して遊離基を発生する光遊離
基発生剤、該光遊離基発生剤が発生する遊離基によって
消色される色素が、加熱記録される前は消色抑制剤と隔
離された状態で構成されている記録層を設けた感熱記録
材料であって、該消色抑制剤は熱によって該光遊離基発
生剤と混合された際に該光遊離基発生剤と反応し、該光
遊離基発生剤の消色性を停止することにより潜像を形成
する化合物であることを特徴とする感熱記録材料。

【００１７】２．光遊離基発生剤と色素の混合物がマイ
クロカプセル中に含有されていることを特徴とする前記
１に記載の感熱記録材料。

【００１８】３．光遊離基発生剤が光を吸収して遊離基
を発生する際の光吸収波長が４５０ｎｍ以下であること
を特徴とする前記１または２に記載の感熱記録材料。

【００１９】４．支持体上に、光を吸収して遊離基を発
生する光遊離基発生剤、該光遊離基発生剤が発生する遊
離基によって消色される色素が、加熱記録される前は消
色抑制剤と隔離された状態で構成されている記録層を設
けた感熱記録材料であって、熱によって消色抑制剤を光
遊離基発生剤および色素と混合して、光遊離基発生剤と
反応させることにより該光遊離基発生剤の消色性を停止
して潜像を形成し、その後光遊離基発生剤が吸収する光
を照射して潜像以外の色素を消色することにより画像を
得ることを特徴とする記録方法。

【００２０】即ち、本発明の感熱記録材料では、色素及
び光遊離基発生剤の混合物と消色抑制剤は、加熱記録前
には隔離された状態にある。これら色素と光遊離基発生
剤に光を照射することにより色素の消色を行うが、その
消色機構は明らかではない。加熱記録部では、色素及び
光遊離基発生剤と消色抑制剤が混合されるが、その際に
光遊離基発生剤と消色抑制剤が反応し、光遊離基発生剤
は光照射を行っても色素を消色するような遊離基を発生
しなくなる。その結果、消色性が停止された潜像を形成
する。この消色抑制剤の役割は、加熱印字部において光
遊離基発生剤から発生した遊離基による色素の消色を抑
制するのではなく、光遊離基発生剤から色素を消色する
遊離基の発生を停止するものであり、色素の消色を確実
に停止することができる。また、１度消色した色素を徐
々に復色させることもなく、安定な画像を形成すること
を見い出し本発明に至った。

【００２１】以下、本発明について詳しく説明する。

【００２２】本発明の消色抑制剤は、加熱印字時に色素
および光遊離基発生剤と混合された時に光遊離基発生剤
と反応する化合物で、その反応の結果、光照射を行って
も色素を消色する遊離基を発生しない化合物に変換させ
る化合物である。その反応機構および反応生成物は定か
ではないが、光遊離基発生剤に消色抑制剤が付加する、
あるいは光遊離基発生剤を分解させる等の機構によっ
て、光遊離基発生剤の光吸収を大きく変化させる、ある
いは光を吸収しても遊離基を発生しないような化合物に
変化させているものと考えられ、光遊離基発生剤および
消色抑制剤の組み合わせにより、その機構も変わるもの
と考えられる。

【００２３】本発明の消色抑制剤としては、例えばヘキ
シルアミン、オクチルアミン等の１級アミン類、ヒドラ
ジン類、t-ブチルアミンボラン、ベンズヒドリルアミン
ボラン等のアミンボラン類、ローソン試薬が挙げられ、
これらの中で特にアミンボラン類が好ましい。また、上
述の消色抑制剤を２種類以上混合して使ってもよい。好
ましい消色抑制剤の例を以下に示すが、本発明はこれら
に限定されるものではない。

【００２４】

【化１】

【００２５】本発明に使用する色素および光遊離基発生
剤は、ある光遊離基発生剤が吸収する光を照射したとき
に色素が消色、すなわち実質的に可視光領域の光を吸収
しない化合物に変換できるような色素と光遊離基発生剤
の組み合わせで用いることができる。色素としては、例
えばアゾ色素、アゾメチン色素、ポリエン系色素、ポリ
メチン系色素、キノン系色素、インジゴ系色素、ジフェ
ニルメタン系色素、トリフェニルメタン系色素、フタロ
シアニン系色素等が上げられる。具体的には、日本色材
協会編、講談社「色素ハンドブック」記載の色素が挙げ
られる。

【００２６】これらの中から、色調、光消色性、堅牢
性、コスト等を考慮して選択することができる。

【００２７】本発明の記録材料に使用する色素として
は、電荷を有していない中性の色素を使用することが好
ましい。その中でもアゾメチン色素が好ましい色素とし
て挙げられる。特に色調、堅牢性の観点からは、コンベ
ンショナルのカラー写真に利用されているアゾメチン色
素、具体的にはアシルアセトアニリド誘導体、ピラゾロ
ン誘導体、ピラゾロトリアゾール誘導体、フェノール誘
導体、ナフトール誘導体等のカプラーとカラー現像主薬
（ｐ−フェニレンジアミン誘導体）との酸化カップリン
グ反応によって得られるアゾメチン色素が好ましい。上
述の色素を２種類以上混合して使ってもよい。好ましい
色素の例を以下に示すが、本発明はこれらに限定される
ものではない。

【００２８】

【化２】

【００２９】

【化３】

【００３０】

【化４】

【００３１】光遊離基発生剤は、ある特定の波長の光を
吸収したときに活性化され色素を消色させるものをい
い、例えばカルボニル化合物、ジアゾニウム化合物、ア
ジド化合物等が含まれる。光遊離基発生剤には、光を吸
収したときにそのものが開裂分解して遊離基を発生する
ものや、光を吸収して活性化した時に他の分子から水素
原子遊離基等を引き抜いて、光を吸収した化合物自身お
よび水素原子等を引き抜かれた分子が遊離基になるもの
を含む。また、遊離基を発生する際に吸収する光はいわ
ゆる増感剤といわれる色素類が吸収した光を利用するこ
ともできる。ただ、この際増感剤となる色素は、可視域
に吸収をもたず画像に影響を及ぼさないものが好まし
い。

【００３２】光遊離基発生剤としては、例えばＮ−ブロ
モスクシンイミド、トリブロモメチルフェニルスルホ
ン、ジフェニルヨウ素、２−トリクロロメチル−５−
（ｐ−ブトキシスチリル）−１，３，４−オキサジアゾ
ール、２，６−ビス（トリクロロメチル）−４−（ｐ−
メトキシフェニル）−ｓ−トリアジン等の有機ハロゲン
化合物、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル等のカル
ボニル化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化
合物、トリフェニルホスフィン、アシルホスフィンオキ
サイド、ジアシルホスフィンオキサイドのような燐系化
合物等が挙げられる。

【００３３】光遊離基発生剤を活性化する光の波長は、
記録材料としての取り扱い易さや使用する光源の入手の
容易さやコストを考慮して選ぶことが出来る。記録材料
としての取り扱い易さとは、例えば室内光程度の波長の
光で敏感に感光してしまうようでは安定性に問題がある
ため暗室で取り扱わなくてはいけないといった制約を受
けることがある。そのような制約を避けるため好ましく
は紫外部〜可視光の一部にかけての領域や赤外光を使う
ことが好ましい。その中でもエネルギーの強さや光源の
入手の容易さ等を考慮して２５０〜４５０ｎｍの領域の
光を使うことが好ましい。

【００３４】好ましい光遊離基発生剤としては、ベンゾ
インエーテル等のカルボニル化合物、アシルホスフィン
オキサイド等の燐系化合物、ジアゾ化合物等が挙げられ
る。また、光遊離基発生剤の分光吸収極大波長も２５０
〜４５０ｎｍの間に有ることが、光遊離基の発生効率等
から好ましい。上述の光遊離基発生剤を２種類以上混合
して使ってもよい。好ましい光遊離基発生剤の例を以下
に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
（以下の何れの光遊離基発生剤も、４５０ｎｍを越える
波長に吸収を持たない。）

【００３５】

【化５】

【００３６】

【化６】

【００３７】本発明の消色抑制剤は、加熱印字時に色素
および光遊離基発生剤と混合された時に光遊離基発生剤
と反応する化合物で、その反応の結果、色素を消色する
遊離基を発生しない化合物に変換させる化合物である
が、他のタイプの消色抑制剤、すなわち遊離基による色
素の消色を抑制する消色抑制剤も併用して用いることも
できる。他の消色抑制剤としては、例えばトリフェニル
グアニジン、テトラメチルグアニジン、ジシクロヘキシ
ルグアニジン等のグアニジン類、ビス（２−エチルヘキ
シル）アミントリオクチルアミン、ジイソプロピルエチ
ルアミン、Ｎ，Ｎ−ジメチル−ｐ−ドデシルアミン、ピ
ペラジン、ピロリジン、ヒンダードアミン等のアミン
類、２，５−ジ−ｔｅｒ−オクチルハイドロキノン、
２，５−ジ−ｓｅｃ−ドデシルハイドロキノン等のハイ
ドロキノン誘導体、ｐ−ドデシルオキシチオフェノー
ル、２−メルカプトベンズイミダゾール、２−メルカプ
トベンゾチアゾール等のメルカプタン類、２，６−ジ−
ｔｅｒ−ブチルフェノール、４，４′−ブチリデンビス
（６−ｔｅｒ−ブチル−ｍ−クレゾール）ヒンダードフ
ェノール等のフェノール類、ヒドラジン類、フェニド
ン、アスコルビン酸等の還元剤、ベンゾキノン類等のキ
ノイド化合物、２，２，６，６，−テトラメチルピペリ
ジン−１−オキシルフリーラジカル等のニトロキシド化
合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
好ましい併用できる色素の消色を抑制する消色抑制剤の
例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。

【００３８】

【化７】

【００３９】

【化８】

【００４０】本発明の記録方法は、これまでに述べた種
々のタイプの色素、光遊離基発生剤があらかじめ混合さ
れており、これらと隔離された状態で消色抑制剤が配置
される。記録時の熱によって色素、光遊離基発生剤およ
び消色抑制剤が混合されることにより、光遊離基発生剤
と消色抑制剤が反応して遊離基が発生せず、消色性が停
止された潜像を形成する。次いで光を照射すると、潜像
部分では遊離基が発生しないため色素が残るが、熱が加
えられていない部分では光遊離基発生剤から発生する遊
離基により色素が消色される。同時にこの熱が加えられ
ていない部分ではすでに色素は分解して消色しているた
め、以後再び熱を加えられても発色することはなく、定
着されることになる。この方法では熱記録されたところ
が発色状態となり、ポジ画像が得られる。

【００４１】上記の形態において、色素と光遊離基発生
剤は加熱前には消色抑制剤から隔離されている。利用で
きる隔離方法としては、例えば各成分を乳化分散、ある
いは固体分散することにより、均一に混合されることを
避けることができる。またより確実に隔離を行うには、
保存時には隔離しておきたい成分を支持体上の別の層に
分けて塗布することにより行われる。各々の層の間に中
間層を設けることも効果的である。代表的な隔離の方法
としてはワックスに分散する方法、固体分散する方法、
異なった層に添加する方法、いずれかをマイクロカプセ
ルに包含させる方法などが挙げられる。

【００４２】これらの隔離方法の中で、常温では分離が
確保でき、さらに感熱記録に対して実用可能な十分な熱
応答性を持たせる点で、マイクロカプセルに包含させる
方法が好ましい。マイクロカプセルを利用する場合、い
ずれの構成要素についてもマイクロカプセル中に包含さ
せることができるが、光遊離基を使った色素の消色に対
して空気中の酸素が悪影響を及ぼすことがあり、例えば
酸素濃度が高い場合に消色速度が遅くなったり、消色部
が不要の着色を起こしたりすることがある。そのため、
ポジ画像を得るような上記の形態においては色素と光遊
離基発生剤をマイクロカプセルの中に含有させ、マイク
ロカプセル外に消色抑制剤を含有させる方がそのような
酸素の影響を少なくすることができる。また、マイクロ
カプセル中に色素が含有されている場合は、色素と酸素
との接触が抑えられているため、得られた色素画像の堅
牢性は非常に高いものになる。

【００４３】マイクロカプセルの温度による透過性は、
カプセルの壁材、芯物質、添加剤種等によりカプセル壁
のガラス転移温度を変えることにより制御することがで
きる。

【００４４】本発明に好ましく使用されるマイクロカプ
セルの壁材としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ
アミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネー
ト、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムア
ルデヒド樹脂、ポリスチレン、スチレン−メタクリレー
ト共重合体、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビ
ニルアルコール等が挙げられる。これらの壁材は複数を
併用してもよい。

【００４５】本発明において上記壁材のうち、ポリウレ
タン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカ
ーボネート等が好ましく、特にポリウレアおよびポリウ
レタンが好ましい。本発明で好ましく使用することので
きるマイクロカプセルの詳細については、米国特許３，
７９６，６９６号の明細書に記載されている。

【００４６】本発明に好ましく使用されるマイクロカプ
セルは、カプセル化しようとする物質を含有した芯物質
を乳化した後、その油滴の周囲に高分子物質の壁を形成
してマイクロカプセル化する界面重合による方法が好ま
しい。その際、必要に応じて乳化油滴を形成するために
有機溶媒を使用することが好ましく、使用される有機溶
媒としては一般に高沸点有機溶媒の中から適宜選択する
ことができる。

【００４７】例えば、リン酸エステル、フタル酸エステ
ル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルその他
のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフ
ェニル、アルキル化ターフェニル、塩素化パラフィン、
アルキル化ナフタレン、ジアリールエタン等が用いられ
る。具体的には特開昭６０−２４２０９４号、特開昭６
２−７５４０９号等に記載のあるものを用いることがで
きる。

【００４８】また上述の高沸点有機溶媒の他に溶解助剤
として酢酸エチル、塩化メチレン等の低沸点有機溶媒を
併用することもできる。一方、油層と混合する水層に水
溶性高分子を保護コロイドとして含有することができ、
例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘
導体を用いることができる。

【００４９】また、乳化分散する際には、公知の界面活
性剤の中から適当なものを選択して沈殿や凝集を起こさ
ないようにすることができる。

【００５０】マイクロカプセルの粒径は、通常０．１μ
ｍ〜２０μｍの範囲であり、より好ましくは、０．５μ
ｍ〜１０μｍの範囲である。

【００５１】マイクロカプセル外に存在させる化合物
（添加剤）は、固体分散、乳化分散のいずれの方法で分
散されていてもよい。固体分散や乳化分散を用いた形態
時の分散において、該化合物の粒径は画質や発色濃度の
点から０．１〜２０μｍの範囲にあることが好ましく、
より好ましくは０．５〜１０μｍの範囲である。

【００５２】本発明において、色素、光遊離基発生剤お
よび消色抑制剤の使用量については、特に制限があるも
のでは無いが、支持体上に塗布する際の膜厚、消色抑制
効率、発色濃度等を考慮して選定される。好ましい使用
量は、色素は記録材料１ｍ²あたり０．０１〜１０ミリ
モルの範囲であり、より好ましくは１ｍ²あたり０．０
５〜１．０ミリモルである。光遊離基発生剤の好ましい
使用量は、色素の使用量に対して０．１〜５０倍モルの
範囲であり、より好ましくは１．０〜１０倍モルの範囲
である。消色抑制剤の好ましい使用量は、光遊離基発生
剤使用量に対して０．１〜１００倍モルの範囲であり、
より好ましくは１．０〜３０倍モルの範囲である。

【００５３】本発明の感熱記録材料は、色素、光遊離基
発生剤および消色抑制剤、あるいはそれらを内包したマ
イクロカプセルを支持体上に塗布含浸させて作ることが
できる。この際、上記分散物のバインダーとしては、例
えばポリビニルアルコール、ゼラチン、スチレン−ブタ
ジエンラテックス、カルボキシメチルセルロース、アラ
ビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポ
リアクリル酸エステル等の各種エマルジョンを用いるこ
とができ、使用量は固形分に換算して１ｍ²あたり０．
２〜５ｇであることが好ましい。

【００５４】本発明の記録材料においては、画像保護、
記録材料同士の接着防止、サーマルヘッドに対する接着
防止、加筆性、平滑性等を考慮して保護層を設けること
が好ましい。

【００５５】保護層のバインダーとしては、公知のもの
を使用することができる。例えば、メチルセルロース、
カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロ
ース、澱粉類、ゼラチン、アラビアゴム、カゼイン、ス
チレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリビニ
ルアルコール、カルボキシ変成ポリビニルアルコール、
ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポ
リスチレンスルホン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウ
ム、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリロニトリ
ル−ブタジエンゴムラテックス、ポリ酢酸ビニルエマル
ジョン等のポリマー、シリコン樹脂、メラミン樹脂、フ
ェノール樹脂、アクリル樹脂ポリエステル樹脂、エポキ
シ樹脂、フッ素樹脂、ニトロセルロース、セルロースア
セテートプロピオネート、酢酸セルロース、フッ素化ビ
ニリデン樹脂、塩化ゴム等のバインダーを用いることが
できる。保護層の充填剤としては、酸化亜鉛、炭酸カル
シウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リトボン、タル
ク、蝋石、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリ
カ、コロイダルシリカ等の無機顔料、ポリスチレン、ポ
リメチルメタクリレート、ポリエチレン、酢酸ビニル樹
脂、硫化ビニル樹脂、硫化ビニリデン樹脂、スチレン−
メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン、ポリウレ
ア、メラミン−ホルムアルデヒド等の有機顔料、ステア
リン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ア
ルミニウム等の金属石鹸、あるいはパラフィンワック
ス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワック
ス、メチロールステアリロアミド、ポリエチレンワック
ス、シリコーン等のワックス類を添加することができ
る。これらの充填剤は単独で使用しても、２種以上併用
しても構わない。

【００５６】また、レーザー光による加熱記録を行なう
場合は、フタロシアニン誘導体、ニッケル錯体類等の公
知の赤外線吸収剤を含有させることもできる。

【００５７】本発明の感熱記録材料は、紙や合成樹脂フ
ィルム等の支持体の上に塗布する際には、一般によく知
られた塗布方法を用いることができる。例えば、ディッ
プコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート
法、ローラーコート法、ドクターコート法、ワイヤーバ
ーコート法、スライドコート法、グラビアコート法、ス
ピンコート法あるいはエクストルージョンコート法等に
より塗布することができる。

【００５８】本発明の感熱記録材料に使用することがで
きる支持体としては、紙類、再生セルロース、酢酸セル
ロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリエチレン、ポリビニルアセテート、ポリエチレ
ンナフタレート等のフィルム、ガラス、木、金属等が挙
げられる。

【００５９】また、本発明の記録材料は加熱および全面
露光により像を形成させる。加熱に使用できる熱源とし
ては、熱ペン、熱ヘッド、熱スタンプ、近赤外レーザー
光等が挙げられるが、本発明にある各要素を混合するの
に必要な熱エネルギーを記録する像様に与えることがで
きるものであれば特に制限があるものではない。

【００６０】また、本発明において使用できる光源は光
により分解する化合物を分解できるものであればいかな
る光源であってもよく、例えば蛍光灯、高圧水銀灯、ハ
ロゲンランプ、キセノンランプ、タングステンランプあ
るいは太陽光等であってもよい。

【００６１】また、異なる熱感度を有した本発明を２層
以上積層する、あるいは本発明と、本発明とは熱感度の
異なる他の方式による記録層とを積層して多色にするこ
とも可能である。

【００６２】

【実施例】以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限
定されるものではない。また、添加量を示す「部」は
「重量部」を示す。

【００６３】実施例−１ ・カプセル液の調製 酢酸エチル１０部、１−フェニル−１−キシリルエタン
１０部に色素Ｄ−３を１．５部、光遊離基発生剤Ｐ−
１１（光吸収波長：４５０ｎｍ越える波長に吸収無し、
２５０ｎｍ及び４００ｎｍの波長に僅かに吸収持つ）を
２．５部溶解し、キシリレンジイソシアネート／トリメ
チロールプロパン付加物 ８．０部、１０％ドデシルベ
ンゼンスルホン酸ナトリウム ０．５部を添加した。こ
の溶液を、６％ポリビニルアルコールの水溶液６０部の
中に添加し、２０℃でホモジナイザーを用い乳化分散
し、体積平均粒径１μｍの乳化液を得た。得られた乳化
液に水２０部を加え、４０℃で３時間攪拌を続けた。そ
の後、室温に戻してカプセル液を得た。

【００６４】・消色抑制剤固体分散液の調製 ４％ポリビニルアルコール水溶液１５０部に消色抑制剤
Ｉ−１を３０部加えてサンドミルにて分散し、体積平均
粒径１μｍの消色抑制剤固体分散液を得た。

【００６５】・塗布液の調製 上記カプセル液／上記消色抑制剤分散液を重量比で５／
４になるように混合して塗布液を得た。

【００６６】この塗布液を上質紙にワイヤーバーで赤色
部の反射濃度がほぼ１．０になるように塗布し、５０℃
で乾燥させ、本発明の記録材料を作製した。

【００６７】実施例−2 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、消色抑制剤Ｉ
−１を同モルの消色抑制剤Ｉ−４に代えた以外は、実施
例−１と同様にして本発明の記録材料を作製した。

【００６８】実施例−３ 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、消色抑制剤Ｉ
−１を同モルの消色抑制剤Ｉ−６に代えた以外は、実施
例−１と同様にして本発明の記録材料を作製した。

【００６９】実施例−４ 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、消色抑制剤Ｉ
−１を同モルの消色抑制剤Ｉ−７に代えた以外は、実施
例−１と同様にして本発明の記録材料を作製した。

【００７０】実施例−５ 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、消色抑制剤Ｉ
−１を同モルの消色抑制剤Ｉ−１０に代えた以外は、実
施例−１と同様にして本発明の記録材料を作製した。

【００７１】実施例−６ 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、色素Ｄ−３を
同モルの色素Ｄ−１１に代え、青色部の反射濃度がほぼ
１．０になるように塗布した以外は実施例−1と同様に
して本発明の記録材料を作製した。

【００７２】実施例−７ 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、色素Ｄ−３を
同モルの色素Ｄ−８に代え、緑色部の反射濃度がほぼ
１．０になるように塗布した以外は実施例−1と同様に
して本発明の記録材料を作製した。

【００７３】比較例−１ 実施例−１でカプセル液の調製に用いた、消色抑制剤Ｉ
−１を消色抑制剤Ｉ−１９に変えた以外は、実施例−１
と同様にして比較の記録材料を作製した。

【００７４】比較例−２ ・カプセル液の調製 下記有機カチオン性色素化合物の有機ホウ素化合物アニ
オン塩（５００〜５５０ｎｍに吸収波長を持つ）０．４
１部、トリメチルアンモニウムテトラブチルボラート
０．０８部、メチルイソブチルケトン１２部、トリクレ
ジルホスフェート１５部、キシリレンジイソシアネート
／トリメチロールプロパン付加物１２部を混合した後、
８％ポリビニルアルコール、１．６７％ジエチレントリ
アミン水溶液１５部、蒸留水３０部からなる水溶液のな
かに添加した後、２０℃で乳化分散し、体積平均粒径１
μｍの乳化液を得た。更に、得られた乳化液を４０℃で
３時間攪拌し続けた。その後室温に戻し、濾過してマイ
クロカプセル分散液を得た。

【００７５】

【化９】

【００７６】・定着剤分散液の調製 ４−ヒドロキシ安息香酸ベンジル酢酸３０部を、４％ポ
リビニルアルコール１５０部と混合し、ダイノミルにて
分散して体積平均粒径３μｍの固体分散液を得た。

【００７７】・塗布液の調製 次に上記のカプセル液／定着剤分散液を重量比で１／１
になるように混合して塗布液を調製した。

【００７８】この塗布液を上質紙にワイヤーバーで緑色
部の反射濃度がほぼ１．０になるように塗布し、５０℃
で乾燥させ、本発明の記録材料を作製した。

【００７９】［発色／画像保存性試験］実施例−１〜７
および比較例−１で得られた感熱記録材料に対して、熱
傾斜試験機（東洋精機製）を用いて、１２０℃、５秒間
（０．５Ｋｇ／ｍ²）加熱した後、高圧水銀灯を用い
て、３０秒間全面露光したところ、加熱印字部では元々
の色素の色が残り、非加熱部は消色していた。また、比
較例−２で得られた感熱記録材料についても、同様に加
熱した後、白色蛍光灯を全面照射して、記録画像を得
た。それぞれの試料について、加熱印字部および非加熱
部について、それぞれの色素に対応した色相の反射濃度
（イエロー色素の場合はブルー濃度、マゼンタ色素の場
合はグリーン濃度、シアン色素の場合はレッド濃度）を
測定した結果を表１に示した。

【００８０】また、実施例１−〜７および比較例−１、
２で得られた感熱記録材料を熱印加、露光を施した試料
について、キセノンランプを３日間照射した時の加熱印
字部の反射濃度をキセノンランプ照射前のものと比較し
た色素の残存率を表１に合わせて示した。

【００８１】

【表１】

【００８２】また、実施例−１〜７で得られた本発明の
感熱記録材料に熱印字、露光を施した後、記録部、非記
録部にそれぞれ更に熱印字、露光を繰り返したところ有
意差のある変化は認められなかったが、比較例−１では
再加熱印字部で若干の濃度上昇がみられた。

【００８３】また、実施例−１〜７と比較例−１、２を
室内光に暴露した後、熱印字、露光を行ったところ、実
施例−１〜７と比較例−１では記録部、非記録部とも有
意差のある変化は認められなかったが、比較例−２では
濃度低下がみられた。

【００８４】

【発明の効果】実施例からも明らかなように、本発明の
記録材料もしくは記録方法を用いることにより、カブリ
が少なく、サーマルヘッド等による加熱と簡単な露光の
みで良好な記録画像を得ることが出来た。また、本発明
の記録材料および記録方法を用いることにより、定着が
可能で記録部の改ざんの問題が無い記録画像を得ること
ができた。

【００８５】

【発明の効果】実施例で実証した如く、本発明による感
熱記録材料および記録方法は、明室での取り扱いが可能
で、記録画像が安定であり、定着性を持ち、色再現性に
優れた効果を有する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 栄作 東京都日野市さくら町１番地コニカ株式会 社内 (72)発明者 中澤 健造 東京都日野市さくら町１番地コニカ株式会 社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 支持体上に、光を吸収して遊離基を発生
   する光遊離基発生剤、該光遊離基発生剤が発生する遊離
   基によって消色される色素が、加熱記録される前は消色
   抑制剤と隔離された状態で構成されている記録層を設け
   た感熱記録材料であって、該消色抑制剤は熱によって該
   光遊離基発生剤と混合された際に該光遊離基発生剤と反
   応し、該光遊離基発生剤の消色性を停止することにより
   潜像を形成する化合物であることを特徴とする感熱記録
   材料。
2. 【請求項２】 光遊離基発生剤と色素の混合物がマイク
   ロカプセル中に含有されていることを特徴とする請求項
   １に記載の感熱記録材料。
3. 【請求項３】 光遊離基発生剤が光を吸収して遊離基を
   発生する際の光吸収波長が４５０ｎｍ以下であることを
   特徴とする請求項１または２に記載の感熱記録材料。
4. 【請求項４】 支持体上に、光を吸収して遊離基を発生
   する光遊離基発生剤、該光遊離基発生剤が発生する遊離
   基によって消色される色素が、加熱記録される前は消色
   抑制剤と隔離された状態で構成されている記録層を設け
   た感熱記録材料であって、熱によって消色抑制剤を光遊
   離基発生剤および色素と混合して、光遊離基発生剤と反
   応させることにより該光遊離基発生剤の消色性を停止し
   て潜像を形成し、その後光遊離基発生剤が吸収する光を
   照射して潜像以外の色素を消色することにより画像を得
   ることを特徴とする記録方法。