JP4619660B2 - 光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
この色素増感型光電変換素子10では、透明基板11に照射された光がn型半導体電極13に達し、その光エネルギーによってn型半導体電極13にて正孔を発生させる(伝導帯に電子を励起させる)。n型半導体電極13にて発生した正孔は、電解質膜14を移動して電子伝導性電極15に達する。その結果、透明電極12と電子伝導性電極15との間に起電力が生じて発電することができる。
そこで、太陽光による膨張を抑制する目的で、電解質として、固体状の共役系導電性高分子を用いることが検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。共役系導電性高分子を含む電解質膜の形成方法としては、n型半導体電極上で単量体を電解重合して共役系導電性高分子の膜を直接形成する方法や、単量体を化学酸化重合法で重合した共役系導電性高分子を溶媒に混合し、その混合液をn型半導体電極上に塗布し、溶媒を除去して共役系導電性高分子の膜を形成する方法などが知られている。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、共役系導電性高分子を含む固体の電解質膜が大量生産に適しており、しかもその電解質膜が均一に形成された光電変換素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記正孔輸送性高分子電解質膜は、共役系導電性高分子と、ポリアニオンおよび/または電子吸引性官能基含有高分子と、スルホン酸基を有する繊維状導電体とを含有することを特徴とする。
本発明の光電変換素子においては、前記正孔輸送性高分子電解質膜は無機系p型半導体を含有することが好ましい。
さらに、本発明の光電変換素子においては、前記正孔輸送性高分子電解質膜は、n型半導体電極上に塗布された塗膜であることが好ましい。
本発明の光電変換素子の製造方法は、共役系導電性高分子と、ポリアニオンおよび/または電子吸引性官能基含有高分子と、スルホン酸基を有する繊維状導電体とを溶媒中に分散または溶解した溶液をn型半導体上に塗布し、溶媒を除去して塗膜を成膜した後に、該塗膜上に、電子伝導性電極を形成する工程を有することを特徴とする。
本発明の光電変換素子の製造方法は、正孔輸送性高分子電解質膜の形成が簡便で大量生産に適しており、しかも、正孔輸送性高分子電解質膜を均一に形成することができる。
はじめに、光電変換素子の製造方法について説明する。ここで、本実施形態例の光電変換素子は、図1に示す光電変換素子10であって、電解質膜4が共役系導電性高分子を含むものである。
そして、正孔輸送性高分子電解質膜の上に、蒸着法、スパッタ法、塗布法などにより電子伝導性電極を形成する。このようにして、図1に示すような、透明基板11と透明電極12とn型半導体電極13と正孔輸送性高分子電解質膜(電解質膜14)と電子伝導性電極15とを有する光電変換素子10を得る。
透明基板の厚みは、20〜2000μmであることが好ましく、50〜500μmがより好ましい。また、光透過率は50%以上であることが好ましい。
透明電極12の厚みは、0.01〜0.5μmであることが好ましく、その表面抵抗値は500Ω以下であることが好ましい。ここで、表面抵抗値は、JIS K 6911に準拠して測定した値である。
色素は光増感作用を有するものであり、例えば、有機金属錯体色素、メチン色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素などが挙げられる。この色素はn型半導体化合物上に層状に形成される。
n型半導体電極の厚みは、2〜50μmであることが好ましい。
共役系導電性高分子は無置換のままでも良好な正孔輸送性が得られるが、他の有機樹脂成分等への添加、溶媒へ分散又は溶解に有効であることから、アルキル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アルコキシル基、エステル基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入することがより好ましい。
このポリアニオンとしては、アニオン系重合性モノマのみから構成される重合体であってもよいが、アニオン系重合性モノマと他の重合性モノマとの共重合が好ましい。
置換アクリルアミドスルホン酸化合物の具体例としては、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩等を挙げることができる。
置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物の具体例としては、シクロブテン−3−スルホン酸、シクロブテン−3−スルホン酸塩等を挙げることができる。
これらの中では、ビニルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、イソプレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸塩等を好ましい例として示すことができ、イソプレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸塩をより好ましい例として挙げることができる。
酸化剤としては、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が使用できる。
上述のポリアニオンの中では、ポリイソプレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸の共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸の共重合体が好ましい。
炭素系繊維材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、ガラス状カーボン、カーボンナノチューブ、及び表面処理を施したこれらの炭素繊維等を挙げることができる。
金属系繊維状材料としては、例えば、金、銀、ニッケル、白金等から製造された繊維状金属、繊維状金属合金、繊維状金属複合体、及び表面処理を施したこれらの金属繊維等を挙げることができる。
金属酸化物系繊維状材料としては、例えば、InO2、InO2Sn、SnO2、ZnO、SnO2−Sb2O4、SnO2−V2O5、TiO2(Sn/Sb)O2、SiO2(Sn/Sb)O2、K2O−nTiO2−(Sn/Sb)O2、K2O−nTiO2−C等から製造された金属酸化物繊維、金属酸化物複合繊維、及び表面処理を施したこれらの金属酸化物繊維、表面処理を施したこれらの金属被覆繊維等を挙げることができる。
これらの中でも、腐食しにくい炭素系繊維材料、金属酸化物系繊維状材料、または表面処理材料等がより好ましい。
繊維状導電体の繊維径(短径)は1μm以下、繊維長(長径)は1μm〜100μm(ただし、繊維長/2≧繊維径)であることが好ましい。
繊維状導電体がスルホン酸基を有する材料であれば、繊維状導電体表面のスルホン酸基がバイポーラロン状態の共役系導電性高分子との相互作用が生じ、より低抵抗の導電性複合体が得られる。
ハロゲン化合物としては、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)、塩化ヨウ素(ICl)、臭化ヨウ素(IBr)、フッ化ヨウ素(IF)等が挙げられる。
ルイス酸としては、PF5、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、BBr3、SO3等が挙げられる。
プロトン酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウフッ化水素酸、フッ化水素酸、過塩素酸等の無機酸と、有機カルボン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボニル基が一つまたは一つ以上を含むものが使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する高分子として、側鎖にアニオン基を有する高分子であれば使用できる。主鎖としては、例えば、メチレンの繰り返しで構成されているポリアルキレン、主鎖にビニル基が1個含まれる構成単位からなるポリアルケニレン等が挙げられる。具体的な例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリルアミド−t−ブチルスルホン酸、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
さらに、可逆的な酸化還元対としては、I−/I3 ― 対などのハロゲン分子とハロゲン化合物で構成されたものが好ましい。このような可逆的な酸化還元対においては、I−のような還元種が、酸化された色素から正孔を受け取ってI3 ― のような酸化種になり、この酸化種が正孔輸送性高分子電解質膜内を移動して電子伝導性電極15へ正孔を輸送することができる。
また、ハロゲン化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属ハロゲン化物、ハロゲン化4級アンモニウム化合物、ハロゲン化溶融塩等が挙げられる。
具体的には、金属ハロゲン化物としては、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2、MgI2、AlI3、PbI2、SnI2、SnI4、GeI4、GaI3、TiI4、NiI2、CoI2 、ZnI2、MgI2、CuI2、RuI3,PtI4、MnI2、OsCl3、IrBr3、RhI3、PdI2、GaI4、FeI2、CaCl2、ZnCl2、MgCl2、BCl3、PCl3、LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2、ScBr3、SiI4、TiBr4などが挙げられる。
ハロゲン化4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩、トリメチルフェニルアンモニウム塩、トリエチルフェニルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルオクチルアンモニウム塩、アセチルコリン塩、ベンゾイルコリン塩等のハロゲン化合物が挙げられる。
ハロゲン化溶融塩としては、ピリジニウム、イミダゾリウム等のハロゲン化合物が挙げられる。例えば、ピリジニウムのハロゲン化合物としては、1−アセトニルピリジニウムクロライド、1−アミノピリジニウムアイオダイド、4−ブロモピリジンハイドロブロマイド、4−ブロモピリジンハイドロクロライド、1−n−ブチルピリジンブロマイド、エチルピリジニウムブロマイド、エチルピリジニウムクロライド、クロロメチルピリジンハイドロクロライド、2−クロロ−メチルピリジニウムアイオダイド、ヘキサデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1,1’−ジメチル−4,4’−ビピリジニウムジクロライドなどが挙げられる。
イミダゾリウムのハロゲン化合物としては、1,1−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソヘキシル(分岐)イミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾールアイオダイド、1−エチル−3−イソプロピルイミダゾリウムアイオダイド、1−プロピル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、ピロリジニウムアイオダイドが挙げられる。
また、正孔輸送性高分子電解質膜の厚みは、0.1〜100μmであることが好ましい。
必要に応じて、正孔輸送性高分子電解質膜とn型半導体電極との間に前記無機p型半導体層を介在させてもよい。
電子伝導性電極15の厚みは、0.05μm〜100μmであることが好ましい。
(正孔輸送性高分子電解質溶液Iの調製)
1.02gのピロールと、2.37gのポリイソプレンスルホン酸とを300mlの蒸留水に溶かし、この溶液を0℃に保ち、かき混ぜながら40mlの蒸留水に溶かした3.4gの過硫酸アンモニウムと0.6gの硫酸第二鉄の溶液をゆっくり加え、3時間攪拌した。
得られた反応溶液に400mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて硫酸鉄と硫酸アンモニウムイオンを除去した後、加熱しながら減圧濃縮し、固形分が10質量%の導電性高分子溶液を調製し、等質量のアセトニトリルを添加して5質量%の正孔輸送性高分子電解質溶液Iを調製した。
(正孔輸送性高分子電解質溶液IIの調製)
上記の正孔輸送性高分子電解質溶液I20gに、9.5gのアセトニトリルに溶解した0.475gのテトラプロピルアンモニウムヨーダイドと0.025gのヨウ素を添加し、よくかき混ぜて、5質量%の正孔輸送性高分子電解質溶液IIを調製した。
(正孔輸送性高分子電解質溶液IIIの調製)
上記の正孔輸送性高分子電解質溶液I20gに、15gのアセトニトリルに溶解した0.475gのテトラプロピルアンモニウムアイオダイドと0.025gのヨウ素を添加し、よくかき混ぜた後、0.2gのスルホン酸置換カーボンナノチューブを添加し、さらにかき混ぜて、4.8質量%の正孔輸送性高分子電解質溶液IIIを調製した。
二酸化チタン層の形成:市販の超微粒子酸化チタン水溶液(商品名:PASOL−HPA−15R、触媒化成工業株式会社)を、透明なフッ素ドープSnO2ガラス基板にドクターブレード法で塗布し、100℃の雰囲気下で60分間予備乾燥した後、450℃の雰囲気下で90分間焼成した。さらに、焼成膜上に上記の塗布、予備乾燥、焼成を行い、膜厚13〜15μmの二酸化チタン多孔質層を作製した。
色素層の形成:下記式(1)に示す構造の増感色素(ルテニウム有機錯体、小島化学薬品株式会社)のエタノール中の濃度が3×10−4mol/lである色素溶液に、上記二酸化チタン多孔質層を60℃で5時間浸漬して色素層を形成した。
正孔輸送性高分子電解質層の作製:上記色素層が形成された二酸化チタン基板上に上記正孔輸送性高分子電解質溶液Iをドクターブレード法で塗布し、真空乾燥して正孔輸送性高分子電解質層を形成して光電変換素子Iを得た。
正孔輸送性高分子電解質溶液Iの代わりに正孔輸送性高分子電解質溶液IIを用いたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子IIを得た。
(実施例3)
正孔輸送性高分子電解質溶液Iの代わりに正孔輸送性高分子電解質溶液IIIを用いたこと以外は実施例1と同様にして光電変換素子IIを得た。
13 n型半導体電極
14 電解質膜(正孔輸送性高分子電解質膜)
15 電子伝導性電極
Claims (4)
- 表面に色素が吸着されたn型半導体電極と電子伝導性電極との間に、正孔輸送性高分子電解質膜が介在した積層構成を具備した光電変換素子において、
前記正孔輸送性高分子電解質膜は、共役系導電性高分子と、ポリアニオンおよび/または電子吸引性官能基含有高分子と、スルホン酸基を有する繊維状導電体とを含有することを特徴とする光電変換素子。 - 前記正孔輸送性高分子電解質膜は無機系p型半導体を含有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記正孔輸送性高分子電解質膜は、n型半導体電極上に塗布された塗膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
- 共役系導電性高分子と、ポリアニオンおよび/または電子吸引性官能基含有高分子と、スルホン酸基を有する繊維状導電体とを溶媒中に分散または溶解した溶液をn型半導体上に塗布し、溶媒を除去して塗膜を成膜した後に、該塗膜上に、電子伝導性電極を形成する工程を有することを特徴とする光電変換素子の製造方法。
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