JP4613404B2 - スローアウェイチップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、旋削用のスローアウェイチップに関し、特に外径の倣い加工に好適なブレーカ溝を有するスローアウェイチップを提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
シャフトなどの外径の倣い加工は、バイトの送り方向が一定しない使われ方をするために、切屑処理に困難を伴う加工であることから、従来からさまざまな形状のブレーカが提案されている。図7はその代表的な例であり、特開平10−128605号公報に開示されたものである。コーナ6の部分には突起7が配置され、この突起7の両側の一部分を凹凸を有するすくい面8として、切刃4を側面視したときに波状となるように形成したことを基本的な特徴とするものである。そして、切刃6の一部を巾細の波状としたことにより、押し加工の際には波状部が補助突起として作用して切屑を変形させ、引きの加工の際には複数の波状部が突起7の方向に切屑を誘導してカールさせるので、削り方向に左右されることなく安定した切屑排出が得られると説明されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記に例示のように、一般に倣い加工用のスローアウェイチップのブレーカは、ブレーカのすくい面を波形形状としたものが多い。波状切刃は、切屑とすくい面との接触面積を減少させるとともに、切屑幅の切屑圧縮比を増すことで切屑処理性を改善する効果があるからである。しかしながら、波状切刃はその効果を上げるためにコーナに近いところに配置されるから、倣い加工において瞬間的に切削負荷が大きくなる隅Rの加工や押し込みテーパ加工などの際に、切刃強度不足や切屑の噛み込みに原因するチッピング・欠損を誘発する恐れがある。
【0004】
また、前記ような加工箇所ではブレーカが過大に作用して切屑詰まりを生じたり、必要以上に細かく分断された切屑が吹き上げられて飛散することになり危険である。仕上げ面にも悪影響を及ぼす。また、逃げをとるためにチップは傾けてバイトに取り付けられるから、波状部で切刃は直線とならず、たとえば、コーナ切刃以外の切刃を利用してプランジ切削によって面取り加工するときも、波形が加工面に転写されることになり、所望する加工形状が得られない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の如き課題に鑑みてなされたもので、多角形平板状をなすチップ本体の切刃に沿ってブレーカ溝が形成され、特にコーナ近傍では、ボス面よりコーナに向かって延伸する2段形式の突起によってブレーカ溝の形成されたスローアウェイチップにおいて、前記ブレーカ溝は第1のすくい面と第2のすくい面とを有し、前記第1のすくい面は、コーナ先端を最高位とする傾斜面によって形成され、前記第2のすくい面は、前記第1のすくい面上の切刃の末端を始点とし、コーナより離間するに従って次第に高位となってから等位に移行するように形成させた切刃の直交断面において、正のすくい角を有する傾斜面によって形成されるとともに、コーナ先端より前記始点までの長さは、コーナ先端より前記突起の上段の突起先端までの長さよりも長く形成されていることを特徴とする。また、前記第2のすくい面は、切刃との間にランドを介在して形成されることを特徴とするものである
【0006】
ボス面よりコーナに向かって延伸する2段形式の突起の、コーナ近くまで達する下段の長い突起が、切り込みが変動して低切り込みとなったときの切屑処理を担う。下段の突起を乗り越えた切屑処理は、上段の突起がカバーする。さらに切り込みが大きく突起では処理できない切屑は、第1のすくい面と第2のすくい面とによって突起のサイドにV字谷のように形成されたポケット内に誘導される。
V字形の切刃形状と2つのすくい面の作用により、切削方向の変動によって誘導効果が大きく失われることがない。誘導された切屑は、切削の方向や切り込みの大きさによって、コーナ部の突起への屹立壁あるいはボス面への屹立壁のどちらかにぶつかって変形作用を受け、カールしたのち適当な長さとなったところで折断する。さらに、切刃中央部にランドを設けることにより、切屑の殴打によるチッピングなどの損傷を防止している。
【0007】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施の一形態を、図を参照しながら説明する。図1〜図4は、本発明スローアウェイチップの外観を示している。チップ本体1は、菱形平板を呈し、上下面の利用が可能なネガティブ形を例示したものである。チップ本体1の中央には、バイトにクランプするときに利用される取付穴2が貫通し、この取付穴2の周囲4カ所に、バイトのチップ座に載置されるときには着座面となるボス面3が配設されている。各ボス面3同士の間は僅かに低位としたヌスミ面であって、若干の模様がデザインされている。
【0008】
菱形チップの外縁に切刃4があって、切刃4に沿って全周にブレーカ溝5が形成されている。このブレーカ溝5は、コーナ6の部分については、ボス面3より延伸する突起7と切刃4に挟まれて形成される。そして、図5の対頂方向断面図に示すように、突起7は2段形式となっており、下段の突起71が上段の突起72よりもコーナ6の近くまで延びている。コーナ6の付近のすくい面8は、コーナ6の先端を最高位として内方に向かい低位となる傾斜面となっている。この傾斜面は、平面または凹曲面によって形成される。これを第1のすくい面81とする。第1のすくい面81と下段の突起72との間には屹立壁91、下段の突起71と上段の突起72との間には屹立壁92が立ち上がっている。
【0009】
切刃4は、図4に示すように、第1のすくい面81の末端で低位となったあと、これを始点Pとしてコーナ6より離間するに従って次第に高位となり、やがて等位に移行するように形成されている。そして、切刃4の中間部分には、切刃4に沿ってランド10が設けられる。ランド10は、切屑の殴打に抗する目的で設けられるもので、すくい角0゜のネガティブランド、または若干のすくいを有するポジティブランドに形成される。
【0010】
図6の切刃直交方向断面図に示すように、切刃4との間にランド10を介在させて設けられたブレーカ溝5は、内方に向かい次第に低位となる傾斜面(これを第2のすくい面82とする。)と屹立壁93とでもって形成される。屹立壁93は、切刃4に沿った方向に波形として、プランジ切削による面取り加工などの際に切刃4の中央部分を使用する加工時に、排出される切屑との接触面積を減少させるようにしている。波形であるために、図6におけるブレーカ溝5の底面の幅は、断面箇所により異なる。
【0011】
屹立壁は切屑変形性能に多大な影響を及ぼすものである。切り込みが僅かなときには下段の突起71周りの屹立壁91が作用して、切屑をカールさせて折断する。切削条件によっては切屑は屹立壁91で処理しきれなくなるが、このときは、乗り越えてきた切屑を屹立壁92でもってカールさせて折断する。
【0012】
突起7だけでは切屑処理できない切り込みのときは、切屑は、第1のすくい面81のすくい角の作用によって突起7の外縁に沿った方向に誘導される。倣い切削において、隅Rの加工や端面引き上げ加工のように、削り代は小さいにもかかわらず切刃との接触長さが長くなる加工のときも、第1のすくい面81と第2のすくい面82のもつすくい角の作用によって、そのV字谷の方向に導かれるように切屑が流れる。このような切屑が上段の突起72付近の屹立壁92あるいは屹立壁93に当たってカール状となる変形作用を受け、一定長さで折断される。そしてそれが安定的に行われるために、コーナ6の先端に対し始点Pを上段の突起72の先端Qより遠くして、切屑が誘導されるポケットを確保しておく。
【0013】
【発明の効果】
本発明スローアウェイチップによれば、V字状の切刃形状とブレーカ溝内の2つの異なるすくい角とによって、倣い旋削加工の送り方向や切り込み変動に左右されることなく、切屑は一定方向に誘導され、誘導先に設けられたブレーカ溝の屹立壁と確実に当接するようになって安定した切屑折断がなされるようになる。
しかも切屑変形に無理がないから、従来のこの種のスローアウェイチップにみられがちな過大な切屑変形がなく、よって切削抵抗が一定し、切屑の吹き上げ・飛散なども防止される。切屑の噛み込みもなくなって、切刃チッピングといった損傷が起きにくくなる。切刃中央部に設けたランドが切屑殴打に対して一層の補強効果を上げ、また、直線切刃であることからプランジ切削による面取り加工も可能という二義的効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図1のコーナ先端側から見たA部斜視図である。
【図4】図1のA部側面図である。
【図5】図1のB−B線に沿った一部断面図である。
【図6】図1のC−C線に沿った一部断面図である。
【図7】従来のスローアウェイチップの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
3 ボス面
4 切刃
6 コーナ
71 下段の突起
72 上段の突起
81 第1のすくい面
82 第2のすくい面
10 ランド
Claims (3)
- 多角形平板状をなすチップ本体の切刃に沿ってブレーカ溝が形成され、特にコーナ近傍では、ボス面よりコーナに向かって延伸する、上段及び下段からなる2段形式の突起によってブレーカ溝の形成されたスローアウェイチップにおいて、
前記切刃は、コーナ先端から離間するにしたがって次第に低位となるように移行して最低位に達し、さらにコーナ先端から離間するにしたがって次第に高位となってから等位に移行するように形成されており、
前記ブレーカ溝は、第1のすくい面と、第2のすくい面とを有し、
前記第1のすくい面は、前記コーナ先端から最低位の位置へと移行する前記切刃に沿って、コーナ先端を最高位とする傾斜面によって形成されており、
前記第2のすくい面は、前記最低位の位置から次第に高位となって次に等位に移行する前記切刃に沿って、正のすくい角を有する傾斜面によって形成されており、
コーナ先端から前記切刃の最低位までの長さは、コーナ先端から前記2段形式の突起の上段の突起先端までの長さよりも長いことを特徴とするスローアウェイチップ。 - 前記第2のすくい面は、前記切刃との間にランドを介在して形成されることを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイチップ。
- 前記第2のすくい面は、前記ボス面の端部に形成された屹立壁と接しており、
前記第2のすくい面と接している前記屹立壁は、前記切刃に沿った方向に波形に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスローアウェイチップ。
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