JP5046453B2 - 切削インサート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具本体に着取自在に装着して金属材料、特にアルミニウム合金などの比較的軟質な被削材の切削加工に用いる切削インサートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の切削インサートとして、ノーズR21の2等分線方向のすくい角γおよび切刃26のすくい角γを、ノーズ部切れ味を向上するため約20°とした図9乃至図15に示す切削インサート20が用いられてきた。
図9は、上記従来の切削インサート20の斜視図を、図11はその刃先の拡大図を示し、図10は上面図を示す。また、図12乃至図14はそれらの切刃に直交する断面形状を示し、図15はノーズR21の2等分線方向の垂直断面形状を示す。
【0003】
この切削インサート20において、切刃26はノーズRから離れるにしたがって着座面に向かって傾斜している。また、ノーズ部の中央のすくい面23はノーズR21から離れるにしたがって着座面に向かって傾斜する面であるのに対して、これよりも離れたすくい面25は平坦状となっている。
この切削インサート20では、比較的大きなすくい角で切削抵抗を低減させ切れ味を向上させることを主眼としていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の切削インサート20では、比較的大きなすくい角を備えていたので、切れ味は良好であるが、切刃で切削された切りくずは、すくい面23もしくは反対側のすくい面22にあたることでカールさせられるため、切りくずのカール半径が大きくなり、もしくは切りくずが全くカールせず、切りくず処理が不能であった。それにより、切屑のホルダーへの絡みつきや切屑の切刃への噛み込みなどにより、作業を停止しなければならない頻度が高く、生産性が悪いという不具合があった。
【0005】
このような従来技術の課題に鑑み、本発明は、アルミニウム合金など比較的軟質な被削材を切削したときも良好な切りくず処理が得られ、且つ切りくずの溶着も少ない切削インサートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するため、請求項1の切削インサートは、主面が多角形状である略平板状をなし、一方の主面にすくい面、他方の主面に着座面を、側面に逃げ面を形成するとともに、上記すくい面外周の稜線に切刃を形成し、この切刃はコーナーにノーズRが設けられ、かつ、このノーズRから離れるにしたがって上記着座面に向かって上記切刃が傾斜している切削インサートであって、上記すくい面のうち上記ノーズRに連続する連続部位は内方に向かうにしたがって上記着座面に向かって傾斜しており、且つ、上記すくい面のうち上記連続部位の内方であって上記ノーズRを2等分する方向の両側が凹円弧状となって上記切刃にまで至っており、上記二つの凹円弧状部分の境界部分は上記ノーズRから離れるにしたがって1°〜5°の角度で上記着座面に向かって傾斜しつつ上記すくい面中央の貫通孔に至っていることを特徴とする。
【0007】
例えばアルミニウム合金の加工において、ノーズRから離れた位置のブレーカー溝の幅が狭い場合、切りくずがカールされずにブレーカー壁を乗り越えてしまうか、上記本発明の構成のように、ノーズRを2等分する方向の両側のすくい面を凹円弧状とすることにより、ノーズRから離れた位置でも切りくずをカールさせることができる。また、切りくず2つの凹円弧状部分の境界部分に強くは当たらないので、切りくずの溶着を防ぐこともできる。
【0008】
また、請求項2の発明は、上記凹円弧状の円弧半径が上記ノーズRから離れるにしたがって漸増することを特徴とする。
切りくずは切刃直下を支点に、もう一方の端点が円運動を行い、その力により切りくずは切刃直下の支点より折れる。一般にカールした切りくずが一定の角度をもってねじれることを横向きカールといい、横向きカールの場合、切りくずの円運動の振幅が大きくなり、切りくずはより折れやすくなる。
【0009】
そこで上記請求項2の構成によれば、ノーズRから離れるにしたがって切りくずは大きな曲率半径を呈し、ノーズRでは小さな曲率半径を呈するので、切りくず全体にねじれが発生し、切りくずが良好に処理される。
請求項3の発明は、上記切刃のすくい角がノーズRから離れるに従って漸減することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、ノーズRに近いところでは切刃のすくい角が大きく、離れたところではすくい角が小さく、切削抵抗に差が出る。これにより、切りくず全体にねじれが発生し、切りくずが良好に処理される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1乃至図3に本発明の実施形態の切削インサート1を示し、この切削インサート10は図1に示す如く、主面が多角形状である略平板状をなし、一方の主面にすくい面12〜15、他方の主面に不図示の着座面を、側面に逃げ面18を形成するとともに、すくい面外周の稜線に切刃16を形成し、多角形のコーナーにはノーズR11を備える。
【0012】
図3の拡大図に示す如く、切刃16はノーズR11から離れるに従い着座面に向かって傾斜している。この傾斜により、切削抵抗を低減することができる。
また、上記すくい面12〜15において上記ノーズR11を2等分する方向の両側が凹円弧状であり、また、上記2等分方向に、この二つの凹円弧状部分の境界部分(以下、境界部分と略称する)17が形成されている。この境界部分17の幅としては0.2mmまでが好ましい。この幅が0.2mmを越えると、切りくず処理が悪化する恐れがある。
【0013】
このように構成される、上記切削インサート1は、ノーズR11の2等分線方向の両側のすくい面12〜15を凹円弧状としたことにより、ノーズR11から離れた位置でも切りくずをカールさせることができる。また、切りくずが2つの凹円弧状部分の境界部分17に強くは当たらないので、切りくずの溶着を防ぐこともできる。
【0014】
また、図8を参照して、上記境界部分17は傾斜角θ=1°〜5°で上記ノーズR11から離れるにしたがって上記着座面に向かって傾斜している。比較的切り込みが大きい場合、この傾斜角θが1°未満か、あるいは反対方向に傾斜(高くなっていく)すると、すくい面でカールされた切りくずの排出方向を過度にコントロールすることとなり、切りくずが切削方向へ排出され、切りくずが被削材にあたり傷つける恐れがある。他方、この傾斜角θが5°を越える場合、切りくずの排出方向が不安定になり、切りくず処理が悪化する恐れがある。
【0015】
図4乃至図7に示される、上記切刃16に対する上記境界部分の高さdは、−0.1〜0.15mmの範囲であることが好ましい。境界部分17の高さdが−0.1mm以下、すなわち切刃16より0.1mm以上低い場合、すくい面12〜15上で切りくずが十分にカールされなかった場合、切りくずは上記境界部分17が低いため、コントロールされることなく排出され、切りくず処理が悪化する。他方、上記境界部分17の高さdが0.15mmより大きい場合、境界部分17によって切りくずが過大にコントロールされるため、切削抵抗が増大したり、切りくずの塑性変形量が増大し、被削材にバリが発生する恐れがある。
【0016】
図4乃至図7に示すように切削インサート1は、上記垂直断面において凹円弧状のすくい面12〜15の曲率半径R1〜R4が上記ノーズR11から離れるに従って漸増する。
【0017】
すなわち、上記凹円弧状のすくい面12〜15の曲率半径R1〜R4は順次、ノーズR11から離れた位置の曲率半径であるが、その曲率半径の大小関係がR1<R2<R3<R4であり、ノーズR11から離れる従って大きくなっている。
【0018】
なお、円弧溝の曲率半径はRn=0.4〜5mmの範囲で緩やかに変化することが好ましい。この曲率半径Rnが0.4mmより小さいとき、切りくずをすくい面12〜15上に沿って流れるようにコントロールすることができなくなり、その結果、切りくずがカールし難くなり、切りくず処理が悪化する恐れがある。他方、上記曲率半径Rnが5mmを越える場合も、曲率半径が大きいため、切りくずのカール半径が大きくり、カールし難くなるため、切りくず処理が悪化する恐れがある。
【0019】
次に、図4乃至図7に示すように、上記切刃16のすくい角α1〜α4はノーズR11から離れるにしたがって漸減する。
【0020】
すなわち、切刃16のすくい角α1〜α4は順次、ノーズR11から離れた位置の切刃16のすくい角であるが、そのすくい角の大小関係がα1>α2>α3>α4であり、ノーズR11から離れる従って小さくなる。
【0021】
なお、このすくい角αnは30°〜15°の範囲で緩やかに変化することが好ましい。このすくい角αnが30°より大きい場合、切刃で生成した切りくずがすくい面上を滑らかに流れることが困難となり、すくい面上のある点に切りくずが集中的にあたりやすくなる。その結果、切りくずのコントロールが不安定になったり、すくい面に切りくずの溶着が起こりやすくなる恐れがある。また、すくい角αnが30°より大きいと、切刃強度も低下し欠損等の不具合も発生しやすくなる。他方、すくい角αnが15°より小さい場合、切削抵抗が増加し、切れ味が悪化する。また、αnが30°〜15°の範囲を越えて変化すると、切り込み位置ですくい角の差が大きくなりすぎ、切りくずに必要以上のねじれが生じるため、過度に切りくずをカールさせ、切削抵抗が増加し、切れ味が悪化する。
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り任意の形態とすることができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、切刃がノーズRから離れるにしたがって着座面に向かって傾斜し、すくい面の上記ノーズRを2等分する方向の両側が凹円弧状となっていることにより、例えばアルミニウム合金の加工において、ノーズRから離れた位置でも切りくずをカールさせることができる。また、切りくずが2つの凹円弧状部分の境界部分に強くは当たらないので、切りくずの溶着を防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施形態の切削インサートの斜視図である。
【図2】図1の切削インサートの上面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】図2のC−C線断面図である。
【図7】図2のD−D線断面図である。
【図8】図2のE−E線断面図である。
【図9】従来の切削インサートの斜視図である。
【図10】図10の切削インサートの上面図である。
【図11】図10の切削インサートの部分拡大図である。
【図12】図10のA‘−A’線断面図である。
【図13】図10のC‘−C’線断面図である。
【図14】図10のD‘−D’線断面図である。
【図15】図10のE‘−E’線断面図である。
【符号の説明】
10 切削インサート
11 ノーズR
12 すくい面
13 すくい面
14 すくい面
15 すくい面
16 切刃
17 境界部分
18 逃げ面
Rn 曲率半径
αn すくい角
d 高さ
θ 傾斜角
Claims (6)
- 主面が多角形状である略平板状をなし、一方の主面にすくい面、他方の主面に着座面を、側面に逃げ面を形成するとともに、上記すくい面外周の稜線に切刃を形成し、この切刃はコーナーにノーズRが設けられ、かつ、このノーズRから離れるにしたがって上記着座面に向かって上記切刃が傾斜している切削インサートであって、
上記すくい面のうち上記ノーズRに連続する連続部位は内方に向かうにしたがって上記着座面に向かって傾斜しており、且つ、上記すくい面のうち上記連続部位の内方であって上記ノーズRを2等分する方向の両側が凹円弧状となって上記切刃にまで至っており、
上記二つの凹円弧状部分の境界部分は、上記ノーズRから離れるにしたがって1°〜5°の角度で上記着座面に向かって傾斜しつつ、上記すくい面中央の貫通孔に至っていることを特徴とする切削インサート。 - 上記凹円弧状の円弧半径が上記ノーズRから離れるにしたがって漸増することを特徴とする請求項1記載の切削インサート。
- 上記切刃のすくい角は上記ノーズRから離れるに従って漸減することを特徴とする請求項1または請求項2記載の切削インサート。
- 上記凹円弧状の円弧半径が0.4〜5mmの範囲であることを特徴とする請求項2記載の切削インサート。
- 上記切刃のすくい角が30°〜15°の範囲であることを特徴とする請求項3または請求項4記載の切削インサート。
- 上記切刃に対する上記二つの凹円弧状部分の境界部分の高さdが−0.1〜0.15mmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の切削インサート。
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