JP4612960B2 - 飛行船の姿勢制御装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、飛行船に装着され、面形状を自在に変えながら浮揚気体と空気とを仕切るダイヤフラムをアクティブに制御することによって、飛行船のピッチ制御やロール制御などの姿勢制御を行う装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
飛行船における、例えばピッチ制御やロール制御などの姿勢制御には、従来から種々のやり方があり、そのうちの一つは、例えば特開昭63−154496号公報に開示されるようなプロペラ羽根で行うやり方がある。この公報では、飛行船の船首又は船尾に取り付けられたロータ組立体のプロペラ羽根は、そのピッチが調節できるようになっており、適宜に調節されたプロペラ羽根によって適宜方向のスラスト力を発生させ、これによって飛行船の姿勢制御ができるようにしている。
また、もう一つのやり方は、所謂ダイヤフラム方式の軟式飛行船で行われているもので、ダイヤフラムによって仕切られた浮揚気体(例えばヘリウム)及び空気に対し、これら気体の飛行船内における容積割合を変えることによって飛行船の姿勢制御が行われるようにしているものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、姿勢制御をプロペラ羽根で行うタイプの飛行船においては、プロペラ羽根を含むロータ組立体及びその駆動装置などが搭載され、飛行船としては航空機の構造により近づいた本格的なものとなるために簡易な構造とはなり難く、コストも高くなるという問題がある。
また、ダイヤフラム方式の軟式飛行船は、飛行船としての構造は簡易である。しかるに、従来のダイヤフラム方式の飛行船では姿勢制御はできず、浮揚気体や空気が外部の影響を直接受けるために、例えばガストなどの外乱の影響で浮揚気体や空気が不安定な状態になるときには所定の姿勢を維持することが不可能である。実際、成層圏上空での停留状態にあるときは、飛行船100は図4(D)のような姿勢で安定している。しかし、上昇するようなときに、飛行船100を同図(A)のような水平姿勢に維持して行うことはできず、また、同図(B)のように垂直姿勢で上昇している場合、ガストなどの外乱の影響を受けると、同図(C)のように船体が逆さまになったりする。尚、これら図中の101は浮揚気体と空気とを仕切るダイヤフラム、また、102は方向舵である。
【0004】
本発明の目的は、所望の姿勢を維持することができ、ガストなどの外乱の影響を受けても素早く得られる飛行船の姿勢制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る飛行船の姿勢制御装置は、飛行船が側面視楕円形をなし、前記飛行船内に充填された浮揚気体と空気とを仕切るダイヤフラムが前記楕円形の長軸を含む平面で形成される場合に、前記ダイヤフラムの面上の複数部位をこのダイヤフラム面に垂直な複数の平面が当該ダイヤフラムと交わる各線分上の拘束点とし、また、前記飛行船の船体外皮の複数部位を前記拘束点の線分を含む前記平面が前記外皮と交わる各曲線上の連結点として、これら拘束点と連結点とを索体を介して連結し、前記連結点に配設される電動モータにより前記索体を巻取り・巻戻しすることによって前記ダイヤフラムを応動させるようにしたもので、飛行船の姿勢が所望の状態になるように、例えばマイクロプロセッサからの指令を受けた適宜位置の電動モータが正転又は逆転し、この正転又は逆転で索体が巻取り・巻戻しされることによってダイヤフラムが応動するようになるので、ガストなどの外乱で浮揚気体や空気が不安定な状態にあっても、飛行船内における上記気体の容積割合を素早く変えられ、所望の姿勢が直ちに得られる。
ところで、ダイヤフラムの面上の複数部位と飛行船体の外皮の複数部位との索体による連結態様は、ピッチ制御やロール制御などの姿勢制御の対象によって、また、制御の疎密度合いなどによって最適なものが選定される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の飛行船の姿勢制御装置に係る実施の形態を図1及び2を参照して説明する。
本姿勢制御装置1は、図1(A)に示すような側面視略楕円形をなす飛行船2内に配設されたダイヤフラム3を、後述するように索体6を介してアクティブに制御するものである。
ダイヤフラム3は、上記楕円形の長軸3aを含み、且つ、ヘリウム(浮揚気体)収容部4と空気収容部5とを仕切る平面で形成されるフレキシブルな隔膜である。尚、8は、操舵機である。
【0008】
本姿勢制御装置1では、このようなダイヤフラム3に対し、当該ダイヤフラム3の面に略垂直な5つの平面A〜E(図1(A)では、線分で表示されている)がこのダイヤフラム3と交わる各線分上に、上記索体6の拘束点が略等間隔に4つそれぞれ設けられている(例えば、図1(A)のX−X断面の同図(B)では、c1〜c4で表示されている)。したがって、ダイヤフラム3の面上の複数部位とは、拘束点c1〜c4のような各線分上に設けられた4つの拘束点である。
そして、上記拘束点c1〜c4に関して言えば、拘束点c1〜c4の各点は、当該拘束点c1〜c4の線分を含む、ダイヤフラム3の面に略垂直な平面、即ち平面Cが飛行船2の船体外皮2aと交わる曲線(本実施の形態では、略円周となる)上に配される連結点の3点ずつと索体6を介して連結されており、例えば上記拘束点c1〜c4のうちの拘束点c1は連結点c11,c12,c13と連結され、また、拘束点c2は連結点c21,c22,c23と連結されている(図1(B))。したがって、飛行船2の船体外皮2aの複数部位とは、各円周上に設けられたc11,c12,c13・・・のような連結点である。
更に、本姿勢制御装置1では、これら連結点に上記索体6を巻取り・巻戻しするための電動モータ(駆動装置)7がそれぞれ配設されている。
【0009】
本姿勢制御装置1による姿勢制御のうちピッチ制御について図1及び2を参照して説明するが、ロール制御などもピッチ制御に準じたやり方でなされるので、その説明は割愛する。尚、図2(B)は同図(A)のA平面による断面図、図2(C)は同図(A)のB平面による断面図、図2(D)は同図(A)のD平面による断面図、図2(E)は同図(A)のE平面による断面図である。
上記図1(A)の状態にある飛行船2が、同図中の矢印方向からガストなどの外乱を受けて船首が下方を向く事態になったとき、本姿勢制御装置1において、これを回避すべく図2(A)のように船首を上げるピッチ制御がなされる。即ち、船首側でダイヤフラム3より下にある索体6を巻取り、ダイヤフラム3より上の索体6を巻戻し、船尾側ではこれと逆の操作を行う。本ピッチ制御は、ダイヤフラム3を索体6によってアクティブに制御するために、換言すれば、ダイヤフラム3を索体6によって直接動かすために、上記気体の飛行船2内における容積割合が素早く変わり、これによって船首を直ちに上げることができる。
【0010】
具体的には、船体に設置されたセンサ(図示せず)が船首の下方傾斜を検知し、その信号がマイクロプロセッサ(図示せず)に供給されると、マイクロプロセッサからの指令を受けた電動モータ7では、船首側の船体天井にある連結点a11,a21,a31,a41の各電動モータ7は、図2(B)に示すように、その拘束点a1,a2,a3,a4からの隔たりに応じた割合で索体6を巻戻しする一方、船底にある他の連結点の各電動モータ7は、当該連結点から拘束点a1,a2,a3,a4までの隔たりに応じた割合で索体6を巻取る。また、連結点b11,b21,b31,b41の各電動モータ7においても、図2(C)に示すように、図2(B)の各電動モータ7と同様な索体6の巻取り・巻戻しがなされるが、図2(C)に示す各電動モータ7の巻取り・巻戻し量が、図2(B)に示す各電動モータ7の巻取り・巻戻し量とは異なるように制御されることはもちろんである。
【0011】
一方、船尾側では、船体天井の連結点d11,d21,d31,d41の各電動モータ7は、図2(D)に示すように、その拘束点d1,d2,d3,d4からの隔たりに応じた割合で索体6を巻取る一方、船底の他の連結点の各電動モータ7は、当該連結点から拘束点d1,d2,d3,d4までの隔たりに応じた割合で索体6を巻戻しする。また、連結点e11,e21,e31,e41の各電動モータ7においても、図2(E)に示すように、図2(D)の各電動モータ7と同様な索体6の巻取り・巻戻しがなされるが、図2(E)に示す各電動モータ7の巻取り・巻戻し量が、図2(D)に示す各電動モータ7の巻取り・巻戻し量とは異なるように制御されることは言うまでもない。このような各電動モータ7による索体6の巻取り・巻戻しにダイヤフラム3が応動する結果、上記気体の、飛行船2内における容積割合が素早く変わり、図2(A)のように船首を直ちに上げることが可能になる。
尚、本ピッチ制御では、船体中央の拘束点c1〜c4と連結される連結点c11,c12,c13〜c41,c42,c43に配設される電動モータ7にはマイクロプロセッサからの巻取り・巻戻し指令はなされていない。
【0012】
ところで、上述のピッチ制御やロール制御のような姿勢制御はもとより、飛行船2の下降・上昇制御において、ダイヤフラム3全体を図1(A)において上方に移動させるように適宜電動モータ7を正逆転させ、浮揚気体の体積を減少させれば、飛行船2は下降するし、逆に、ダイヤフラム3全体を上方に移動させれば飛行船2は上昇する。しかも、このような下降や上昇に際しその速度も制御できる。更には、上記図4(B)のような状態で急上昇する場合にも、船首部がヘリウム収容部4に、また、船尾部が空気収容部5になるようにダイヤフラム3を素早く応動させ、これを維持させることができるので、ガストなどの外乱を受けても姿勢制御が不可能となることはない。
【0013】
上述した実施の形態では、図1(B)に示すように、例えば拘束点c1が3つの連結点c11,c12,c13と索体6を介してそれぞれ連結され、連結点c11が連結点c12,c13とダイヤフラム3を介して隔てられているような態様のものを説明したが、図3に示す姿勢制御装置10のように、例えば拘束点c1が2つの連結点c11,c12と索体6を介してそれぞれ連結され、これらの連結点がダイヤフラム3を介して隔てられているような態様のものとして簡便化を図ってもよい。ここで、図3において、図1中の構成部材と同一部材には同一の番号を付し、その説明は割愛する。但し、図3(B)は、同図(A)のY−Y断面図である。
【0014】
尚、拘束点が設けられる線分は5本に限らないことはもとより、当該拘束点が4つに限らないことは言うまでもない。また、線分上の拘束点の数が各線分において同一である必要はなく、適宜異なるようにしてよいことはもちろんである。更に、隣接する連結点同士、即ち、電動モータ7間の隔たりは、制御の疎密度合いなどによって適宜選定することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明の飛行船の姿勢制御装置によれば、ダイヤフラムをアクティブに制御しているので、ガストなどの外乱の影響を受けても直ちに所望の姿勢を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る飛行船の姿勢制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】 本姿勢制御装置による姿勢制御の説明図である。
【図3】 図2とは異なる索体構成による姿勢制御の説明図である。
【図4】 従来のダイヤフラム方式の飛行船における姿勢制御の説明図である。
【符号の説明】
1,10 本姿勢制御装置
2 飛行船
2a 船体外皮
3 ダイヤフラム
6 索体
7 電動モータ(駆動装置)
c1〜c4等 拘束点
c11,c12,c13等 連結点
Claims (1)
- 飛行船が側面視楕円形をなし、前記飛行船内に充填された浮揚気体と空気とを仕切るダイヤフラムが前記楕円形の長軸を含む平面で形成される場合に、前記ダイヤフラムの面上の複数部位をこのダイヤフラム面に垂直な複数の平面が当該ダイヤフラムと交わる各線分上の拘束点とし、また、前記飛行船の船体外皮の複数部位を前記拘束点の線分を含む前記平面が前記外皮と交わる各曲線上の連結点として、これら拘束点と連結点とを索体を介して連結し、前記連結点に配設される電動モータにより前記索体を巻取り・巻戻しすることによって前記ダイヤフラムを応動させることを特徴とする飛行船の姿勢制御装置。
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