以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
(実施の形態)
[飛行体の概略構成]
実施の形態の飛行体10について説明する。
図1は、実施の形態の飛行体の斜め下方から見た斜視図である。図2は、実施の形態の飛行体の平面図である。図3は、図2におけるIII−III断面を示す飛行体の断面図である。図4は、図2におけるIV−IV断面を示す飛行体の断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施の形態の飛行体10は、緩衝体としての1つのバルーン20と、4つのロータユニット30とを備えている。また、図3及び図4に示すように、飛行体10には、制御器41、バッテリ42、プロジェクタ43、及びカメラ44が、搭載機器として設けられている。更に、飛行体10には、発光体46が設けられている。
[バルーン]
次にバルーン20について説明する。
図5は、実施の形態のバルーンの平面図である。図6は、図5におけるVI−VI断面を示すバルーンの断面図である。
図3、図4及び図6に示すように、バルーン20は、柔軟なシート状の材料(例えば、塩化ビニル)によって構成され、このシート状材料によって囲まれた閉空間であるガス空間21を有する。図3、図4及び図6では、バルーン20を構成するシート状材料の断面を太線で示している。バルーン20の外側面を構成するシート状材料は、光を透過させる半透明の白色である。シート状の材料によって形成されたガス空間21には、空気よりも密度の小さいガスが封入されている。本実施の形態では、ヘリウムガスがバルーン20封入されている。
図5に示すように、バルーン20は、上下方向(図5における紙面に垂直な方向)に延びる直線を対称軸とした回転対称性を有する形状に形成されている。この対称軸が、バルーン20の中心軸Pとなる。図5に示すバルーン20の形状は、90°回転対称性を有している。つまり、バルーン20は、中心軸Pまわりに90°回転する毎に、回転する前と同じ形状となる。
図6に示すように、バルーン20は、上下に扁平な形状である。また、バルーン20は、側方から見て流線形状である。バルーン20の高さは、バルーン20の中心部から周縁部へ向かって次第に低くなる。具体的には、バルーン20は、図6に示すバルーン20の中心軸Pを通る断面の形状が、長軸が水平方向となって短軸が鉛直方向となる楕円形状である。つまり、このバルーン20の断面の形状は、実質的に上下対称である。なお、このバルーン20の断面形状は、厳密な楕円である必要はなく、一見して楕円形と認識できる形状であればよい。
バルーン20には、ロータユニット30と同数(本実施の形態では4つ)の通気孔22が形成されている。図6に示すように、各通気孔22は、断面が概ね円形の通路であって、バルーン20を上下方向へ貫通している。各通気孔22の中心軸Qは、バルーン20の中心軸Pと実質的に平行である。
また、図6に示すように、各通気孔22の中心軸Qは、バルーン20の中心軸Pと周縁の中間位置よりも、バルーン20の周縁側に配置される。具体的には、バルーン20の中心軸Pから通気孔22の中心軸Qまでの距離Sが、バルーン20の中心軸Pからバルーン20の周縁までの距離Rの半分よりも長い(S>R/2)。このように、ロータユニット30は、バルーン20の周縁寄りの部分に配置される。このようにロータユニット30を配置するのは、ロータユニット30同士の間隔を十分に確保し、飛行体10の飛行を安定させるためである。
通気孔22は、上下方向の中央部において、その断面積(中心軸Qと直交する断面の面積)が最も小さい。また、通気孔22は、上下方向の中央部から上端部へ向かって次第に断面積が拡大し、且つ上下方向の中央部から下端部へ向かって次第に断面積が拡大する形状を有する。
なお、通気孔22の形状はこの形状に限定されず、例えば、上下方向の中央部がストレートな筒状であってもよい。つまり、通気孔22の形状は、高さ方向の中央部が括れた柱状、または、上端部及び下端部の断面積が拡大した筒状である。
また、上述したように、バルーン20は、バルーン20の中心部から周縁部へ向かって高さが次第に低くなる形状を有する。このため、各通気孔22は、バルーン20の周縁部寄りの高さhが、バルーン20の中心部寄りの高さHよりも低い。
図5に示すように、4つの通気孔22は、バルーン20の中心軸Pまわりに90°間隔で配置されている。また、バルーン20の中心軸Pから各通気孔22の中心軸Qまでの距離は、一定である。つまり、各通気孔22の中心軸Qは、バルーン20の中心軸Pを中心とする1つのピッチ円PCと実質的に直交する。
図5に示すように、バルーン20の上面視における周縁は、通気孔22と同数ずつ(本実施の形態では4つずつ)の基準曲線部23と小曲率半径部24とによって構成されている。バルーン20の上面視における周縁では、基準曲線部23と小曲率半径部24とが交互に配置されている。小曲率半径部24は、各通気孔22の外側(即ち、バルーン20の中心軸Pとは反対側)に1つずつ配置されている。基準曲線部23は、隣り合う2つの小曲率半径部24の間に配置されている。
基準曲線部23と小曲率半径部24とは、共に湾曲した曲線状に形成されている。各小曲率半径部24の長さ方向(周方向)の中点は、その小曲率半径部24に最も近い通気孔22の中心軸Qとバルーン20の中心軸Pの両方と直交する直線Lの上に位置している。
小曲率半径部24の曲率半径は、基準曲線部23の曲率半径よりも小さい。ただし、基準曲線部23の曲率半径は、基準曲線部23の全長に亘って一定である必要は無い。また、小曲率半径部24の曲率半径は、小曲率半径部24の全長に亘って一定である必要は無い。基準曲線部23及び小曲率半径部24の曲率半径が一定でない場合は、小曲率半径部24の曲率半径の最大値が、基準曲線部23の曲率半径の最小値よりも小さければよい。
図6に示すように、バルーン20は、筒状の連結部材25を備えている。この連結部材25は、透明なシート状の材料で構成されており、円筒状(あるいは円管状)に形成されている。連結部材25は、その中心軸がバルーン20の中心軸Pと実質的に一致する姿勢で配置されている。この連結部材25は、バルーン20の内部において、その上端がバルーン20の上部に接合され、その下端がバルーン20の下部に接合されている。
筒状の連結部材25は、その上端面が塞がれる一方、その下端面が開口している。このため、連結部材25の内部空間は、バルーン20の外部空間と連通している。連結部材25の内部空間には空気が存在し、この内部空間の圧力は大気圧と実質的に等しい。
上述したように、バルーン20は、上下方向に延びる中心軸Pを対称軸とした回転対称性を有する形状に形成されている。また、バルーン20のガス空間21に充填されたヘリウム等のガスは、ガス空間21の全体に均一に存在する。このため、バルーン20に充填されたガスによって得られる浮力の作用点(浮力中心)は、実質的にバルーン20の中心軸P上に位置する。
本実施の形態では、バルーン20の内容積(即ち、ガス空間21の容積)は、バルーン20に充填されたガスによって得られる浮力の大きさが、例えば、飛行体10の総重量の近傍の値となるように設定されている。従って、飛行体10は、複数のロータユニット30が停止している状態であっても、浮上することができる。または、飛行体10は、複数のロータユニット30による比較的小さな上方向の推力で浮上することができる。
[ロータユニット]
次に、ロータユニット30について説明する。
図2及び図3に示すように、ロータユニット30は、フレーム31と、プロペラ32と、モータ33とを備えている。
フレーム31は、リング状に形成された部分と、中心からリング状の部分へ向かって延びるスポーク状の部分とによって構成されている。モータ33は、フレーム31の中心部に取付けられている。プロペラ32は、モータ33の出力軸に取付けられている。モータ33の出力軸の回転軸(即ち、プロペラ32の回転軸)は、フレーム31の中心軸と実質的に一致している。なお、ロータユニット30は、同一の回転軸において互いに逆回転する2枚のプロペラ32を有してもよい。つまり、ロータユニット30は、二重反転プロペラを有してもよい。
ロータユニット30は、各通気孔22に1つずつ配置されている。このロータユニット30は、プロペラ32の回転軸が実質的に鉛直方向となる姿勢で設置されている。プロペラ32の回転軸は、通気孔22の中心軸Qと実質的に一致している。ロータユニット30は、通気孔22の上下方向の中央部に配置されている。つまり、図3に示すように、ロータユニット30は、バルーン20の上下方向の中央面Mとオーバーラップするように配置される。この中央面Mは、バルーン20の上下方向の中央に位置して、バルーン20の中心軸Pと直交する平面である。ロータユニット30のフレーム31の外径は、通気孔22の上下方向の中央部の内径と概ね等しい。
ロータユニット30は、通気孔22の内部にロータユニット30の全高さが収まるように配置されている。つまり、複数のロータユニット30のそれぞれは、上下方向の高さに亘って、当該ロータユニット30の側方がバルーン20によって覆われている。なお、上下方向とは、飛行体10が傾いていない水平な姿勢における上下方向である。つまり、上下方向は、ロータユニット30の回転軸方向に略平行である。
通気孔22は、ロータユニット30の上下方向の中心の位置から、上下方向のそれぞれにおいて、ロータユニット30の半径以上の高さを有することがより好ましい。これにより、ロータユニット30に対して衝撃が加えられたり、ロータユニット30が故障したりすることで、ロータユニット30のプロペラ32の回転軸が飛行体10に対して90°回転した状態となったとしても、ロータユニット30が通気孔22の外に飛び出すことを低減できる。よって、バルーン20は、ロータユニット30の側方を、ロータユニット30が物体に接触し難い程度に覆うことができる。
[搭載機器、発光体など]
上述したように、飛行体10には、制御器41、バッテリ42、プロジェクタ43、及びカメラ44が、搭載機器として設けられている。また、飛行体10には、発光体46が設けられている。
図3に示すように、飛行体10には、円板部材40が設けられている。この円板部材40は、連結部材25の下端と直径が概ね等しい円板状の部材であって、連結部材25の下端面を塞ぐように設置されている。円板部材40は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂等の樹脂材料により構成されていてもよいし、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属により構成されていてもよい。
撮影用のカメラ44は、ジンバル45を介して円板部材40の下面に取付けられている。カメラ44は、上空からの映像を撮影するためのものであって、斜め下方を向く姿勢で設置されている。ジンバル45は、飛行体10の姿勢が変化してもカメラ44の向きを一定に保つための部材である。
制御器41、バッテリ42、及びプロジェクタ43は、円板部材40の上に設置されている。制御器41は、複数のロータユニット30の動作を制御する装置である。本実施の形態では、制御器41は、無線操作装置から発信された指示信号を受信し、受信した指示信号に基づいて、ロータユニット30、カメラ44、プロジェクタ43、及びLEDの制御を行う。また、制御器41は、カメラ44が撮影した映像の送信等も行う。
なお、制御器41は、無線操作装置から発信された指示信号を取得する指示取得部を有しており、指示取得部によって取得された指示信号に従って動作する。指示取得部は、無線操作装置から発信された指示信号のほか、例えばセンサ等から出力される信号も取得することができる。指示取得部については、図11を用いて後述する。
なお、上記機能を有する制御器41は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信インタフェース、及び、I/Oポート等を備えるコンピュータによって実現される。
また、制御器41は、互いに機能が異なる複数の制御部で構成されていてもよい。例えば、制御器41は、複数のロータユニット30を制御する飛行制御部と、カメラ44等の他の機器を制御する機器制御部とを有してもよい。また、これら複数の制御部のそれぞれが、例えば、互いに別体のマイクロコントローラによって実現されてもよい。
バッテリ42は、ロータユニット30、制御器41、プロジェクタ43、及び発光体46へ電力を供給する。プロジェクタ43は、半透明の材料からなるバルーン20の内面に映像を投影する。
発光体46は、長尺状のフレキシブルプリント基板と、当該フレキシブルプリント基板に長手方向に並んで実装された多数の発光素子(例えばLED素子)とによって構成されているテープLEDである。この発光体46は、LED素子が外側に向くようにらせん状に巻回されることで筒形に形成された状態で、連結部材25の上下方向の中央部に配置されている。つまり、発光体46は、連結部材25の内面を覆うように設けられている。このため、発光体46は、連結部材25に対してかかるガス空間21内の圧力を受けており、連結部材25内部の空間が所定の筒状の形状を維持している。つまり、発光体46は、連結部材25が所定の筒状の空間よりも狭くならないように、連結部材25の内方から、連結部材25の、連結部材25内方への移動を規制している。上述したように、連結部材25は、透明の材料で構成されている。このため、発光体46から発せられた光は、連結部材25透過し、半透明の材料からなるバルーン20の内面に当たる。
なお、発光体46は、テープLEDがらせん状に巻回されることで筒形に形成されているが、これに限らずに、筒形の形状を実現する部材と発光素子とが別々の部材であってもよい。つまり、筒形の形状を有する筒状部材と、LED素子が実装された基板との組み合わせにより、筒形の発光体を実現してもよい。
また、飛行体10は、プロジェクタ43、カメラ44及び発光体46のいずれか1つのみを備えてもよく、また、これらの全てを備えていなくてもよい。また、スピーカ、またはディスプレイパネルなど、他の種類の機器が飛行体10に備えられてもよい。つまり飛行体10は、ロータユニット30等の、基本的な飛行機能を実現するための機器を備えていればよく、プロジェクタ43またはカメラ44等の、実質的には飛行に関与しない機器については、例えばユーザの要望に応じて適宜備えられればよい。
[飛行体の飛行姿勢]
上述したように、飛行体10では、制御器41及びバッテリ42等の搭載機器が、連結部材25の内部空間の下端部に配置されている。つまり、比較的重量の大きな搭載機器が、飛行体10の下部に集中して設置されている。その結果、飛行体10全体の重心は、バルーン20に充填されたガスによって得られる浮力の作用点よりも下方に位置する。このため、ロータユニット30が停止した状態でも、飛行体10は、横転または上下反転等することなく、カメラ44が下方を向いた姿勢に維持される。
また、比較的重量の大きな搭載機器は、ロータユニット30よりも下方に配置されている。その結果、飛行体10全体の重心は、ロータユニット30の動作によって得られる浮力の作用点よりも下方に位置する。このため、ロータユニット30の作動中においても、飛行体10は、カメラ44が下方を向いた姿勢に維持される。
[飛行体の移動及び姿勢の変更]
次に、飛行体10の移動及び姿勢の制御と、各ロータユニット30の動作との関係の具体例について、図7A〜図11を用いて説明する。
まず、図7A及び図7Bを用いて、飛行体10の上昇及び下降の際の複数のロータユニット30の動作の例を説明する。
図7Aは、飛行体10が上昇する場合における複数のロータユニット30の動作の例を示す図であり、図7Bは、飛行体10が下降する場合における複数のロータユニット30の動作の例を示す図である。なお、図7A及び図7Bでは、各ロータユニット30の動作を明確に説明するために、バルーン20の外形を点線で簡易的に図示し、カメラ44等の他の要素の図示は省略されている。このことは、後述する図8A〜図10B、及び図11についても同じである。
本実施の形態の飛行体10は、平面視(上方(Z軸プラス側)から見た場合、以下同じ)において環状に並んで配置された、4つのロータユニット30を備えている。本実施の形態では、バルーン20の中心軸Pを中心とする円環上に、各ロータユニット30におけるプロペラ32の回転軸が位置するように、各ロータユニット30が配置されている。また、各ロータユニット30が上方向の推力を発生する場合のプロペラ32の回転方向は統一されていない。
具体的には、本実施の形態では、対向して配置された一対のロータユニット30は、プロペラ32が平面視において左回りに回転することで、上方向の推力を発生する。図7A及びこれ以降の図では、これら一対のロータユニット30のそれぞれを、他のロータユニット30と区別するために、便宜上ロータユニット30Aと表記する。
また、4つのロータユニット30のうちの、一対のロータユニット30A以外の一対のロータユニット30は、プロペラ32が平面視において右回りに回転することで、上方向の推力を発生する。図7A及びこれ以降の図では、これら一対のロータユニット30のそれぞれを、ロータユニット30Aと区別するために、便宜上ロータユニット30Bと表記する。なお、ロータユニット30A及びロータユニット30Bの一方は、第一ロータユニットの一例であり、他方は、第二ロータユニットの一例である。
また、各ロータユニット30が上方向の推力を発生する場合のプロペラ32の回転を「正転」と表現し、各ロータユニット30が下方向の推力を発生する場合のプロペラ32の回転を「逆転」と表現する。例えば、「ロータユニット30Aが正転する」という場合、ロータユニット30Aのプロペラ32が左回りに回転することを意味する。また、「ロータユニット30Bが正転する」という場合、ロータユニット30Bのプロペラ32が右回りに回転することを意味する。
本実施の形態の飛行体10は、図7Aに示すように、4つのロータユニット30(一対のロータユニット30A及び一対のロータユニット30B)が正転することで、4つのロータユニット30のそれぞれは、下方向に風を吹き出す。これにより、4つのロータユニット30は、上方向の推力を発生する。
なお、ロータユニット30の回転方向と推力の方向との対応付けは、上記の対応付けには限定されない。例えば、ロータユニット30A及びロータユニット30Bは、同一形状のプロペラ32を備えることで、同じ回転方向で、同じ方向の推力を発生させてもよい。
また、例えば、対向して配置された一対のロータユニット30のそれぞれにおいて、同じ回転方向で、逆方向の推力を発生させてもよい。つまり、対向して配置された一対のロータユニット30のうちの一方が、平面視において右回転することで下方向の推力を発生し、当該一対のロータユニット30のうちの他方が、平面視において左回転することで下方向の推力を発生してもよい。
ここで、本実施の形態では、バルーン20には、空気よりも密度の小さいガス(本実施の形態ではヘリウムガス)が封入されており、飛行体10は、バルーン20の浮力のみ、または1以上のロータユニット30のわずかな推力で浮上可能である。そのため、4つのロータユニット30の単位時間当たりの回転数(回転速度)が比較的に小さい場合であっても、飛行体10を迅速に上昇させることができる。これにより、例えば、バッテリ42の消費量を抑制することができる。また、飛行体10の上昇を伴う移動の際における騒音の問題が生じ難い。
より具体的には、図7Aに示すように、4つのロータユニット30のそれぞれが上方向の推力を発生する場合、一対のロータユニット30Aでは、プロペラ32が左回転し、一対のロータユニット30Bでは、プロペラ32が右回転する。また、飛行体10を単純に上昇させる場合、4つのロータユニット30の回転速度は略一致する。この場合、飛行体10におけるバルーン20の中心軸P周りのトルクはほぼ打ち消され、飛行体10の、中心軸P周りの回転は抑制される。その結果、各ロータユニット30が発生するエネルギーは、効率よく飛行体10の上昇に使用される。
なお、飛行体10を上昇させる場合、例えば一対のロータユニット30Bに上方向の推力を発生させ、かつ、一対のロータユニット30Aに下方向の推力を発生させてもよい。この場合、例えば、一対のロータユニット30Aによる下方向の推力により、バルーン20の浮力を打ち消すことができる。これにより、比較的に広い範囲内で回転速度を制御することができる一対のロータユニット30Bの上方向の推力により、飛行体10を上昇させることができる。
また、本実施の形態の飛行体10は、図7Bに示すように、4つのロータユニット30が逆転することで、4つのロータユニット30のそれぞれは、上方向に風を吹き出し、これにより、下方向の推力を発生する。これにより、飛行体10を、バルーン20が有する浮力に抗してスムーズに下降させることができる。
この場合、一対のロータユニット30Aでは、プロペラ32が右回転し、一対のロータユニット30Bでは、プロペラ32が左回転する。また、飛行体10を単純に下降させる場合、4つのロータユニット30の回転速度は略一致する。この場合、飛行体10におけるバルーン20の中心軸P回りのトルクはほぼ打ち消され、飛行体10の中心軸P周りの回転は抑制される。その結果、各ロータユニット30が発生するエネルギーは、効率よく飛行体10の下降に使用される。
なお、飛行体10を上昇させる場合、または、飛行体10の上昇を加速させる場合、正転させるロータユニット30の数は1以上であればよい。また、飛行体10を下降させる場合、逆転させるロータユニット30の数は1以上であればよい。つまり、少なくとも1つのロータユニット30が発生する上方向または下方向の推力により、飛行体10の位置を、上方または下方に移動させることも可能である。
また、図7A及び図7Bに示される複数のロータユニット30それぞれの動作は、制御器41から送信される制御信号に従って制御される。制御器41が複数のロータユニット30それぞれに送信する制御信号は、上述のように、例えば無線操作装置から発信された指示信号に応じて制御器41によって生成される。このことは、後述する図8A〜図11を用いて説明される複数のロータユニット30の動作についても同じである。
次に、図8A及び図8Bを用いて、飛行体10が回転する際の複数のロータユニット30の動作の例を説明する。
図8Aは、飛行体10が左回転する場合における複数のロータユニット30の動作の例を示す図であり、図8Bは、飛行体10が右回転する場合における複数のロータユニット30の動作の例を示す図である。
図8Aに示す例では、一対のロータユニット30Aは、逆転することで下方向の推力を発生し、かつ、一対のロータユニット30Bは、正転することで上方向の推力を発生している。
つまり、これら4つのロータユニット30のそれぞれにおけるプロペラ32は右回りに回転している。この場合、各プロペラ32の回転の反作用により、飛行体10には左回りのトルクが作用する。その結果、飛行体10は左回りに回転する。また、このときの回転軸は、例えば平面視においてバルーン20の内側に存在し、理想的には、バルーン20の中心軸Pと一致する。つまり、飛行体10は、平面視における位置の移動をほぼ伴わずに左回転することができる。
さらに、本実施の形態では、一対のロータユニット30Aは下方向の推力を発生し、一対のロータユニット30Bは上方向の推力を発生する。そのため、一対のロータユニット30Aと一対のロータユニット30Bとの間で、上下方向の推力の相殺が生じる。その結果、飛行体10は、上下方向への移動を抑制しながら左回転することができる。
言い換えると、バルーン20が浮力を有するため、一対のロータユニット30Aを、左回りのトルクを生じさせるように逆転(右回転)させることができる。このことが、飛行体10の迅速な左回転と、飛行体10の上下方向の移動の抑制とを可能にしている。
このように、本実施の形態の飛行体10は、例えば、無線操作装置から左回転する旨の指示信号を受信した場合、その場で左回転することが可能である。
ここで、飛行体10が、仮にバルーン20を備えない場合、または、バルーン20にヘリウムガス等の、空気よりも密度が小さな気体が封入されていない場合を想定する。この場合、例えば、一対のロータユニット30Bを高速で正転(右回転)させ、かつ、一対のロータユニット30Bを低速で正転(左回転)させることで、ホバリングしながら左回転させることは可能である。しかしながらこの場合、一対のロータユニット30Bにより、右回りのトルクは生じ、このことは、飛行体10の迅速な左回転を阻害する。この点、実施の形態の飛行体10は、浮力を有するバルーン20を備えるため、複数のロータユニット30の全てを右回転にすること(一部のロータユニット30に下方向の推力を発生させること)が可能である。これにより、飛行体10に、ホバリングさせながら迅速に左回転させることができる。
また、飛行体10に、ホバリングさせながら右回転させる場合も同様であり、図8Bに示すように、一対のロータユニット30Aを正転させることで上方向の推力を発生させ、かつ、一対のロータユニット30Bを逆転させることで下方向の推力を発生させる。つまり、4つのロータユニット30のそれぞれは左回転する。
これにより、飛行体10には右回りのトルクが生じ、かつ、一対のロータユニット30Aと一対のロータユニット30Bとの間で、上下方向の推力の相殺が生じる。その結果、浮力を有するバルーン20を備える飛行体10は、上下方向への移動を抑制しながら右回転することができる。
このように、本実施の形態の飛行体10によれば、姿勢の制御(図8A及び図8Bでは回転)を容易に行うことができる。
次に、図9A〜図10Bを用いて、飛行体10が上下方向と交差する方向(横方向)への移動を行う際の複数のロータユニット30の動作の例を説明する。
図9Aは、飛行体10が横方向に移動する場合における複数のロータユニット30の動作の第1の例を示す図であり、図9Bは、図9Aに示す飛行体10の移動時の姿勢を示す側面図である。
図9Aに示す例では、左右方向(Y軸方向)に並ぶ一対のロータユニット30Aのうちの左側のロータユニット30Aは、逆転することで下方向の推力を発生し、かつ、右側のロータユニット30Aは、正転することで上方向の推力を発生している。また、例えば、右側のロータユニット30Aによる推力は、左側のロータユニット30Aによる推力よりも大きい。その結果、図9Bに示すように、飛行体10は左側が下、右側が上となるように傾いて左に移動する。
また、この場合、X軸方向に並ぶ一対のロータユニット30Bのそれぞれは、正転することで上方向の推力を発生し、飛行体10が図9Bに示すように傾くことで、これらロータユニット30Bの推力の一部は、飛行体10の左方向への移動のための推力として利用される。
なお、この場合、正転(左回転)する右側のロータユニット30Aは、逆転(右回転)する左側のロータユニット30Aよりも回転速度が大きくなるように制御される。これにより、一対のロータユニット30Aは、右回りのトルクを生じさせる。しかし、この右回りのトルクは、ともに正転(右回転)する一対のロータユニット30Bにより生じる左回りのトルクによって打ち消すことが可能である。つまり、飛行体10の、バルーン20の中心軸P周りの回転を抑制しながら、飛行体10を移動させることが可能である。
ここで、本例の場合、4つのロータユニット30による推力とバルーン20の浮力との合力は上方向の成分を持つ。しかし、飛行体10は、進行方向に頭を下げた姿勢で進むため、空気抵抗により下方向の力を受けながら飛行する。そのため、飛行体10を略水平方向に移動させることは可能である。また、例えば、上方向の推力を発生する右側のロータユニット30Aの回転速度を増加させることで、飛行体10斜め上方に移動させることも可能である。
また、例えば、各ロータユニット30を、図10Aに示すように動作させることで、飛行体10を横方向に移動させることも可能である。
図10Aは、飛行体10が横方向に移動する場合における複数のロータユニット30の動作の第2の例を示す図である。図10Bは、図10Aに示す飛行体10の移動時の姿勢を示す側面図である。
図10Aに示す例では、Y軸方向に並ぶ一対のロータユニット30Aのうちの右側のロータユニット30Aは、逆転することで下方向の推力を発生し、かつ、左側のロータユニット30Aは、正転することで上方向の推力を発生している。また、右側のロータユニット30Aによる推力は、左側のロータユニット30Aによる推力よりも大きい。その結果、飛行体10は、図10Bに示すように、左側が上、右側が下となるように傾いて左に移動する。
また、この場合、X軸方向に並ぶ一対のロータユニット30Bのそれぞれは、逆転することで下方向の推力を発生し、飛行体10が図10Bのように傾くことで、これらロータユニット30Bの推力の一部は、飛行体10の左方向への移動のための推力として利用される。
なお、この場合、4つのロータユニット30による推力の合力は、下方向の成分を持つ。しかし、飛行体10は、進行方向に頭を上げた姿勢で進むため空気抵抗により上方向の力を受けながら飛行する。従って、この上方向の力とバルーン20が有する浮力との合力によって、飛行体10を浮上した状態に維持することが可能である。この場合、飛行体10は略水平方向に移動することができる。また、例えば、下方向の推力を発生する右側のロータユニット30Aの回転速度を増加させることで、飛行体10斜め下方に移動させることも可能である。
また、本例の場合、逆転(右回転)する右側のロータユニット30Aは、正転(左回転)する左側のロータユニット30Aよりも回転速度が大きくなるように制御される。これにより、一対のロータユニット30Aは、左回りのトルクを生じさせる。しかし、この左回りのトルクは、ともに逆転(左回転)する一対のロータユニット30Bにより生じる右回りのトルクによって打ち消すことが可能である。つまり、飛行体10の、バルーン20の中心軸P周りの回転を抑制しながら、飛行体10を移動させることが可能である。
また、図9A〜図10Bでは、飛行体10が左(Y軸マイナス方向)に移動する場合を図示し、その説明を行った。しかし、例えば、図9A〜図10Bにおいて、一対のロータユニット30Aの正転と逆転とを入れ替えれば、飛行体10は右(Y軸プラス方向)に移動する。そのため、飛行体10が右に移動する場合における各ロータユニット30の動作等の図示及びその説明は省略する。
また、本実施の形態の飛行体10において、一組のロータユニット30A及びロータユニット30Bに、上方向の推力を発生させ、かつ、残りのロータユニット30A及びロータユニット30Bに、下方向の推力を発生させてもよい。このような制御によって、飛行体10を横方向に移動させることも可能である。
図11は、飛行体10が横方向に移動する場合における複数のロータユニット30の動作の第3の例を示す図である。
図11に示す例では、奥側に位置するロータユニット30A及びロータユニット30Bがともに正転することで、下方向の推力を発生し、手前側に位置するロータユニット30A及びロータユニット30Bがともに逆転することで下方向の推力を発生している。これにより、下方向の推力を発生するロータユニット30A及びロータユニット30Bの側が下になるように傾いて横方向に移動する。
このように、本実施の形態の飛行体10は、少なくとも1つのロータユニット30のプロペラ32が逆転し、かつ、他の少なくとも1つのロータユニット30のプロペラ32が正転することで、飛行体10の平面視における位置が移動する。
なお、図7A〜図11を用いて説明した飛行体10の動作のそれぞれは一例であり、複数のロータユニット30の正転及び逆転の組み合わせ、並びに、各ロータユニット30のプロペラ32の回転速度等に応じて、各種の姿勢制御及び移動制御を行うことができる。
以上説明したように、本実施の形態の飛行体10は、浮力を有するバルーン20を備えることで、例えば、飛行体10の浮上に必要な推力をバルーン20によって賄うことができる。これにより、飛行体10の上方への移動を効率よく行うことができる。また、必要に応じて1以上のロータユニット30を逆転させることで、バルーン20の浮力の少なくとも一部を打ち消すことができる。これにより、各ロータユニット30の回転速度の制御範囲を拡大することができ、その結果、移動または姿勢の制御を容易に行うことができる。
[センサの検出結果に基づく制御]
本実施の形態では、飛行体10は、無線操作装置から発信された指示信号に従って動作するとした。しかしながら飛行体10は、無線操作装置からの指示信号に換えてまたは加えて、飛行体10に備えられた検出部による検出結果に従って動作してもよい。
図12は、検出部80を備える飛行体10の構成概要を示すブロック図である。
図12に示す飛行体10は、飛行体10の状態を検出する検出部80を備えている。検出部80は、例えば加速度センサである。また、飛行体10が備える制御器41は、指示取得部70を有している。指示取得部70は、例えば、無線操作装置からの指示信号、及び、検出部80から出力される信号を取得する。なお、図12では、バッテリ42等の他の要素の図示は省略されている。
飛行体10を、例えば屋外で飛行させている場合、突風が吹くことで、飛行体10が急激に上昇する場合がある。この場合、検出部80は、飛行体10が急激に上昇している状態を検出し、当該状態を示す所定の信号を出力する。指示取得部70は、当該所定の信号を受信する。この場合、制御器41は、例えば、複数のロータユニット30うちの少なくとも1つを逆転させる。または、その時点で逆転している1以上のロータユニット30の回転速度を増加させる。その結果、飛行体10に作用する下方向の推力が増加され、飛行体10の上昇が抑制される。つまり、指示取得部70は、検出部80による検出結果に応じた指示を取得し、これに応じて、制御器41は、少なくとも1つのロータユニット30に下方向の推力を発生させる。
なお、制御器41は、その時点における複数のロータユニット30の回転速度等に基づいて、飛行体10の急激な上昇が正常な動作ではないと判断される場合に、飛行体10の上昇を抑制するための制御を行ってもよい。また、例えば検出部80が、その時点における複数のロータユニット30の回転速度等の情報を取得し、取得した情報に基づいて飛行体10の急激な上昇が正常な動作ではないと判断される場合に、所定の信号を出力してもよい。これにより、例えば、飛行体10の急激な上昇が、無線操作装置からの指示信号に基づく正常な動作である場合に、その動作が阻害されることが防止される。
また、検出部80は、検出部80が検出する飛行体10の水平面に対する傾きが所定の値以上である場合、傾き方向等の情報を含む所定の信号を出力してもよい。この場合、指示取得部70が当該所定の信号を受信した場合、制御器41は、バルーン20の中心軸Pから見た場合に上方に移動した部分に配置された1以上のロータユニット30を逆転させる。これにより、当該1以上のロータユニット30により下方向の推力が発生し、その結果、飛行体10の傾きは抑制される。
なお、制御器41は、その時点における複数のロータユニット30の回転速度等に基づいて、飛行体10の傾きが正常な動作ではないと判断される場合に、飛行体10の傾きを抑制するための制御を行ってもよい。また、例えば検出部80が、その時点における複数のロータユニット30の回転速度等の情報を取得し、取得した情報に基づいて飛行体10の傾きが正常な動作ではないと判断される場合に、所定の信号を出力してもよい。これにより、例えば、飛行体10の傾きが、無線操作装置からの指示信号に基づく正常な動作である場合に、その動作が阻害されることが防止される。
また、検出部80は、飛行体10が備えるカメラ44の撮像データを用いて、飛行体10の状態(急激な移動等)を検出してもよい。この場合、カメラ44が検出部80の機能を備えてもよい。つまり、カメラ44が検出部80として機能してもよい。
このように、飛行体10は、飛行体10の状態を検出する検出部80を備えることで、突風または障害物との接触等に起因して、飛行体10の位置または姿勢に予期せぬ変化が生じた場合に、自動的に飛行体10の位置または姿勢の変化を抑制することができる。
[効果等]
本実施の形態に係る飛行体10は、プロペラ32、及び、当該プロペラ32を駆動するモータ33をそれぞれが有する複数のロータユニット30と、複数のロータユニット30に接続されたバルーン20とを備える。また、バルーン20には、空気よりも密度の小さいガスが封入されており、複数のロータユニット30のうちの少なくとも1つのロータユニット30は、下方向の推力を発生する。
この構成によれば、バルーン20に充填されたガスによって得られる浮力と、ロータユニット30が発生させる気流によって得られる浮力(上方向の推力)との両方を利用して、飛行体10が飛行する。このため、ロータユニット30の動作によって得られる浮力だけを利用して飛行する場合に比べ、ロータユニット30の駆動に要する電力等のエネルギーを低く抑えることができる。これにより、例えば飛行体10の飛行時間を延ばすことができる。
ここで、飛行体10は、バルーン20が浮力を有することで、比較的に小さな推力で移動しやすいという特性を有する。その一方で、仮に、全てのロータユニット30が上方向の推力のみを発生する場合、各ロータユニット30の回転速度は、比較的に狭い範囲内で制御する必要がある。
しかしながら、本実施の形態の飛行体10では、少なくとも1つのロータユニット30が下方向の推力を発生する。そのため、任意のタイミングで、バルーン20による浮力の少なくとも一部を打ち消すように、少なくとも1つのロータユニット30に下方向の推力を発生させることができる。これにより、他の1以上のロータユニット30の回転速度の制御範囲が広がり、その結果、飛行体10の位置、回転または姿勢の制御が容易になる。
つまり、本実施の形態の飛行体10によれば、バルーン20の浮力を利用して効率よく飛行することができ、かつ、必要に応じて1以上のロータユニット30に下方向の推力を発生させることで、位置、回転または姿勢の制御を容易に行うことができる。
また、本実施の形態において、バルーン20は、複数のロータユニット30の上下方向の高さに亘って、複数のロータユニット30の側方を覆うよう配置される。
この構成によれば、飛行体10が飛行中に物体と接触する場合は、ロータユニット30ではなくバルーン20が物体と接触する。つまり、飛行体10は、飛行中に物体と接触する場合であっても、ロータユニット30と物体との接触を回避できる。従って、本実施の形態によれば、飛行体10が飛行中に物体に接触した場合でも、それに起因するロータユニット30の損傷を未然に防ぐことができ、飛行体10の安定した飛行を継続させることができる。
また、飛行体10が墜落した場合は、ガスが充填されたバルーン20が地面などに当たることになり、バルーン20が変形することによって衝撃が緩和される。このため、本実施の形態によれば、墜落に起因するロータユニット30の損傷を未然に防ぐことができる。また、飛行体10が墜落した場合であっても、ロータユニット30や搭載機器ではなくバルーン20が物体に接触することになるため、飛行体10との接触によって、接触した物体を損傷させることを低減できる。
また、本実施の形態において、バルーン20には、バルーン20を上下方向に貫通する複数の通気孔22が形成され、複数のロータユニット30は、それぞれ、複数の通気孔22のうちの互いに異なる通気孔22内に配置されている。
これにより、例えば、各ロータユニット30が吹き出す風が、他のロータユニット30が吹き出す風に乱される可能性が低減される。また、例えば、障害物との衝突等に起因してバルーン20の形状が歪んだ場合であっても、ロータユニット30同士が干渉する可能性が低減される。
より詳細には、バルーン20では、所定位置に配置された複数のロータユニット30全体を囲う領域だけでなく、複数のロータユニット30の間の領域にも、ヘリウム等のガスを充填する空間が形成される。従って、本実施の形態によれば、バルーン20の内容積を確保でき、バルーン20の大型化を抑えることができる。
また、複数のロータユニット30を備えた飛行体10では、飛行体10を安定して飛行させるために、複数のロータユニット30の間隔をある程度大きくすることが望ましい。一方、上述したように、本実施の形態のバルーン20では、複数のロータユニット30の間の領域にも、ヘリウム等のガスを充填するガス空間21が存在する。従って、本実施の形態によれば、飛行体10の大型化を抑えつつガスの充填量を確保でき、かつ、複数のロータユニット30の間隔を確保できる。このため、飛行体10の飛行状態を安定させることができる。
また、本実施の形態において、複数のロータユニット30のそれぞれは、プロペラ32が正転することで上方向の推力を発生し、プロペラ32が逆転することで、下方向の推力を発生する。
つまり、各ロータユニット30は、プロペラ32の正転及び逆転で、発生する推力の向きを、下方向及び下方向の一方から他方に切り替えることができる。従って、例えば、飛行体10の移動または姿勢の制御についての自由度が高い。
また、本実施の形態の飛行体10は、複数のロータユニット30の動作を制御する制御器41を備える。制御器41は、複数のロータユニット30のうちの少なくとも1つのロータユニット30のプロペラ32を逆転させることで、飛行体10を、移動、または、平面視において回転させる。
この構成によれば、複数のロータユニット30それぞれの動作制御を、飛行体10側で実行することがきる。そのため、例えば、無線操作装置から、移動すべき方向等を示す指示信号を、制御器41に送信するだけで、飛行体10の位置または姿勢を変更することができる。
また、本実施の形態において、複数のロータユニット30は、平面視において環状に並んで配置されている。また、複数のロータユニット30のうちの、少なくとも1つのロータユニット30のプロペラ32が逆転し、かつ、他の少なくとも1つのロータユニット30のプロペラ32が正転することで、飛行体10の平面視における位置が移動する。
つまり、1以上のロータユニット30に下方向の推力を発生させ、かつ、1以上のロータユニット30に上方向の推力を発生させることで、バルーン20の浮力を打ち消しながら、飛行体10を傾かせることができる。これにより、1以上のロータユニット30が発生する上方向または下方向の推力の一部を、横方向の移動のための推力として利用することができ、その結果、飛行体10を安定的に横方向に移動させることができる。
また、本実施の形態において、複数のロータユニット30は、平面視において環状に並んで配置されており、対向する位置に配置された一対のロータユニット30Aと、対向する位置に配置された一対のロータユニット30Bとを備える。ロータユニット30Aは、プロペラ32が右回りに回転することで下方向の推力を発生し、ロータユニット30Bは、プロペラ32が左回りに回転することで下方向の推力を発生する。この構成において、一対のロータユニット30Aが下方向の推力を発生し、かつ、一対のロータユニット30Bが上方向の推力を発生する場合、一対のロータユニット30Aは右回りに回転し、かつ、一対のロータユニット30Bも、右回りに回転する。
つまり、合計4つのロータユニット30におけるプロペラ32の回転方向は全て右回りとなり、これにより生じる左回りのトルクによって、飛行体10は、平面視において左回りに回転する。また、これら4つのロータユニット30が発生する推力の合力を、上下方向においてゼロまたはその近傍の値にすることが可能である。これにより、飛行体10の移動を抑制しつつ、飛行体10を回転させることができる。
また、本実施の形態において、複数のロータユニット30の全てが下方向の推力を発生することで、飛行体10は下降する。この場合、例えば、浮力を有するバルーン20を備える飛行体10を迅速に着陸させることができる。
また、本実施の形態において、飛行体10は、少なくとも1つのロータユニットに下方向の推力を発生させるための指示を取得する指示取得部70を有する。この指示取得部70が当該指示を取得した場合、当該少なくとも1つのロータユニット30は、下方向の推力を発生する。なお、少なくとも1つのロータユニット30に下方向の推力を発生させるための指示として、飛行体10の移動または姿勢の変更のための指示であって、1以上のロータユニット30に下方向の推力を発生させ、かつ、他の1以上のロータユニット30に上方向の推力を発生させるための指示が例示される。
これにより、例えばユーザが望むタイミングで、飛行体10に、移動または回転等の動作をさせることができる。
また、本実施の形態において、飛行体10は、飛行体10の状態を検出する検出部80を備える。指示取得部70は、検出部80による検出結果に応じた指示を取得する。
この構成によれば、制御器41は、検出部80による検出結果に基づいて、少なくとも1つのロータユニット30に下方向の推力を発生させることができる。これにより、例えば、飛行体10の急激な上昇または基準値以上の傾き等の異常の発生時に、自動的に当該異常な状態を解消させるように、飛行体10を動作させることができる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記の実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
例えば、上記実施の形態では、飛行体10が備えるロータユニット30の数は4であるが、飛行体10が備えるロータユニット30の数は4に限定されない。飛行体は、複数のロータユニットを備え、かつ、そのうちの少なくとも1つのロータユニットが下方向への推力を発生可能であればよい。また、バルーンは、複数のロータユニットのいずれかが内部に配置される通気孔を複数有すればよい。例えば、飛行体がN個(Nは2以上の整数)のロータユニットを備える場合、バルーンはN個以上の通気孔を有すればよい。
図13は、5つのロータユニットを備える飛行体10aの構成概要を示す平面図である。
図13に示す飛行体10aは、空気よりも密度の小さなガスが封入されたバルーン20aと、平面視において環状に配置された4つのロータユニット30とを備える。4つのロータユニット30のそれぞれは、バルーン20が有する通気孔22内に配置されている。この構造において、飛行体10aは、上記実施の形態の飛行体10と共通する。
しかし、飛行体10aは、4つのロータユニット30に囲まれる位置に、さらにロータユニット130を備えており、ロータユニット130は、バルーン20の中央部分に設けられた通気孔22a内に配置されている。
ロータユニット130は、同一の回転軸において互いに逆回転する2枚のプロペラ(プロペラ131a及び131b)を備えている。つまり、ロータユニット130は、二重反転プロペラを有している。従って、ロータユニット130は、推力を発生するようにプロペラ131a及び131bを回転させた場合であっても、飛行体10aを回転させるトルクを実質的に生じさせない。そのため、飛行体10aでは、上記実施の形態の飛行体10と同じく、4つのロータユニット30のそれぞれが発生するトルクを打ち消すよう4つのロータユニット30を制御することで、飛行体10aの回転(平面視におけるバルーン20aの中心軸周りの回転)を抑制することができる。
このように、飛行体10aの回転に影響しないロータユニット130を備えることで、例えば、ロータユニット130を、下方向の推力の発生のためだけに動作させることもできる。
つまり、ロータユニット130を、バルーン20aの浮力を打ち消すため、及び、バルーン20の浮力に抗して飛行体10aを下降させるためにのみ使用することができる。従って、例えば、バルーン20aに封入するガスの種類、量、または濃度等を調整することで、バルーン20aの浮力を比較的に大きくした場合であってもバルーン20aの浮力の打ち消しを容易に行うことができる。その結果、例えば、4つのロータユニット30の動作を制御することによる、飛行体10aの位置、回転または姿勢の制御が容易化される。
もちろん、ロータユニット130の推力の方向は、上方向及び下方向の一方から他方に切り替え可能であってもよい。この場合、例えば、飛行体10aの高速上昇等が可能となる。
なお、飛行体10aにおいて、制御器41及びバッテリ42等の、ロータユニット30及び130以外の要素は、バルーン20aに設けられた収容部(図示せず)にバランスよく配置される。これにより、飛行体10aの重心を平面視におけるバルーン20aの中心軸と略一致させることができる。
また、上記実施の形態では、飛行体10が備える複数のロータユニット30の全てが、発生する推力の方向を上方向及び下方向の一方から他方に切り替え可能とした。しかし、例えば、飛行体10が備える4つのロータユニット30のうちの2つが上方向の推力のみを発生し、残りの2つのロータユニット30が下方向の推力のみを発生してもよい。また、上述の飛行体10aについての説明の中で記載したように、1つのロータユニットが下方向の推力のみを発生する場合、残りの1以上のロータユニットは上方向の推力のみを発生してもよい。いずれの場合であっても、少なくとも1つのロータユニットが下方向の推力を発生することで、浮力を有するバルーンを備える飛行体の移動、回転または姿勢の制御の容易化が図られる。
ここで、浮力を有するバルーンを備える飛行体における制御の容易化について、図14を参照して説明する。
図14は、飛行体が有する浮力と、ロータユニットの制御との関係を示す図である。
図14の上部のグラフは、ロータユニットにおけるプロペラの回転数と発生する推力との関係の一例を示している。また、図14におけるグラフの下には、飛行体が有する浮力の大きさと、上昇及び下降の際の回転数の制御範囲との大まかな関係が図示されている。
なお、図14及びその説明では、説明内容の明瞭化のために、飛行体が有する4つのロータユニットが同一動作を行うことで、飛行体の上昇及び下降を行う場合における各ロータユニットの制御について記載している。また、図14のグラフの横軸は、各ロータユニットの回転速度であり、縦軸は、4つのロータユニットによる推力の合計値である。
図14に示されるグラフからわかるように、プロペラの回転速度(絶対値)が大きくなるほど、ロータユニットが発生する推力の変化が急になっている。
この前提において、浮力を有するバルーンを備えない従来の飛行体の場合、上昇する際には、ロータユニットは、例えば下限が2000rpm以上の、比較的に高い回転速度の範囲で制御される。つまり、図14のグラフにおける傾きが大きな範囲でロータユニットの回転速度が制御される。これにより、例えば、飛行体の上昇時に、回転速度の小さな変化で、ロータユニットの推力が大きく変化する場合がある。また、飛行体の下降時には、飛行体にかかる重力がそのまま下方向への推力として作用するため、ロータユニットは、低回転速度となるよう制御されるが、その制御範囲が狭くなる。これにより、例えば、狙った速度で飛行体を下降させようとする場合に、その速度への調整が困難である。
一方、本実施の形態の飛行体10のように、浮力を有するバルーンを備える飛行体では、上昇時におけるロータユニットは、従来の飛行体におけるロータユニットと比較すると、低い回転速度の範囲で制御される。
例えば、図14に示すように、バルーンによる浮力が、飛行体に作用する重力(つまり飛行体の重量)と同じである場合、上昇時において、ロータユニットの回転速度は、例えば、0rpm〜3000rpm程度の範囲で制御される。つまり、図14のグラフにおける傾きが小さな範囲でロータユニットの回転速度が制御される。そのため、従来の飛行体と比較すると、飛行体の上昇時における推力の調整が容易である。
また、下降時には、ロータユニットは、例えば、−3000rpm〜0rpm程度の範囲で制御される。つまり、従来の飛行体と比較すると、飛行体の下降時におけるロータユニットの回転速度についての制御範囲は広くなる。そのため、例えば、狙った速度で飛行体を下降させようとする場合に、その速度への調整が容易である。
なお、バルーンによる浮力が小さい場合(図14における「浮力小」の場合)であっても、図14に示すように、上昇時におけるロータユニットの回転速度の範囲は、従来の飛行体と比較すると低い範囲である。そのため、従来の飛行体よりも、上昇時における推力の調整が容易である。従って、例えば、上記実施の形態の飛行体10が備えるバルーン20による浮力が、飛行体10の重量よりも小さい場合であっても、飛行体10の制御の容易化が図られる。
また、バルーンによる浮力が飛行体の重量よりも大きい場合(図14における、「浮力のみで上昇」の場合)、例えば、ロータユニットによる推力を発生させずに飛行体を上昇させることが可能である。また、この場合、例えば、図14に示すように、上昇時において、プロペラを逆転させて、ロータユニットに下方向の推力を発生させることで、上昇速度の制御を行うことができる。なお、バルーンによる浮力が、飛行体の重量より大きい場合であっても、例えば、飛行体に、より高速に上昇させるために、上昇時においてロータユニットに上方向の推力を発生させてもよい。
ここで、上記実施の形態の飛行体10では、複数のロータユニット30のうちの少なくとも1つのロータユニット30が下方向の推力を発生しているときに、複数のロータユニット30のうちの他の1以上のロータユニット30が上方向の推力を発生することができる。この飛行体10において、上方向または下方向の推力を発生するロータユニット30を、図14を用いて説明したように、回転速度の変化に対する推力の変化が少ない領域で制御してもよい。
これにより、例えば、ロータユニット30の回転数が大きく変化した場合であっても、推力の変化が抑制されるため、飛行体10の移動等の制御が容易化される。
また、飛行体10が備えるバルーン20は、バルーン20の浮力だけで飛行体10を浮上させてもよい。これにより、例えば、飛行体10の、より高速な上昇が可能となり、かつ、下方向の推力を発生する1以上のロータユニット30により下降(着地)させることも可能である。
また、例えば、各通気孔22の下端部に、各ロータユニット30から吹き出される風の方向を変更するための可動式のフラップを設けてもよい。これにより、例えば、複数のロータユニット30で生じるトルクにより、飛行体10が平面視において回転する場合、その回転を抑制するように、各ロータユニット30から吹き出る風の方向(推力の方向)を調整することができる。また、1以上のフラップの傾きを制御することで、飛行体10の移動または回転等の動作を実現することもできる。
また、本実施の形態において、連結部材25の上端は、閉じられているが、当該上端が外部に開放されていてもよい。これにより、連結部材25の内方の空間の上端及び下端が外部に開放されているため、連結部材25の内方の空間の気体を流れやすくできる。このため、連結部材25の内方の空間に配置される搭載機器を効率よく冷却することができる。なお、この場合、円板部材40に複数の貫通孔や切り欠きを設けることでさらに気体が流れやすくする構成を取れば、連結部材25の内方の空間の気体をさらに流れやすくできるためより効果的に搭載機器を冷却できる。
また、例えば上記実施の形態の飛行体10において、複数のロータユニット30のそれぞれはバルーン20に対して着脱可能であってもよい。これにより、例えば飛行体10を搬送する際に、バルーン20から複数のロータユニット30を取り外し、バルーン20を小さく折り畳むことが可能となる。その結果、搬送中の飛行体10の荷姿を小型化できる。
また、バルーン20には、ロータユニット30の数よりも多くの通気孔22が形成されていてもよい。この場合は、ロータユニット30が設けられない通気孔22が存在することになる。このようなロータユニット30が配置されない通気孔22をバルーン20に設けると、飛行体10の上昇時と下降時に飛行体10に作用する空気抵抗を低減することが可能となる。
また、バルーン20の通気孔22に、通気孔22を横断する保護ネットが設けられていてもよい。この場合、各通気孔22では、ロータユニット30の上方と下方のそれぞれに保護ネットが配置される。この保護ネットにより、例えば、通気孔22内への異物の進入が抑制され、これにより、ロータユニット30のプロペラ32と異物との接触の可能性が低減される。
なお、保護ネットが設けられた飛行体では、当該飛行体に設けられた通気孔は、物体の接触によりバルーン及び保護ネットが変形しても保護ネットがロータユニットに接しない程度の高さを有する構成としてもよい。これにより、物体が保護ネットに接触した場合であっても、物体がロータユニットに接触することを低減することができる。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。