WO2022153369A1

WO2022153369A1 - 移動体

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Publication number: WO2022153369A1
Application number: PCT/JP2021/000709
Authority: WO
Inventors: 恒毅野間; 航末田
Original assignee: エバーブルーテクノロジーズ株式会社; シンガポール国立大学
Priority date: 2021-01-12
Filing date: 2021-01-12
Publication date: 2022-07-21
Also published as: JPWO2022153369A1

Abstract

本発明の課題は、目的水域まで速やかに到達可能とし、且つ、目的水域での航行に要するエネルギー量を抑制することである。移動体１００は、空中を飛行可能且つ水上を航行可能である。移動体１００は、船体部１と、船体部１の上側に設けられた帆装部２と、を備えている。帆装部２は、航行時に風を受けるセイル６０と、セイル６０を支持するマスト５０と、を有している。マスト５０は、セイル６０の展開率を変更する展開機構Ｅを有している。

Description

移動体

　本開示は、移動体に関する。

　空中を飛行可能且つ水上を航行可能な移動体が知られている。一般に水上を航行するよりも空中を飛行する方が高速での移動が容易であることから、このような移動体によれば、空中を飛行して目的水域まで短時間で到達し、その後、水上を航行して任務を遂行することができる。例えば特許文献１には、胴体の左右に設けられた主翼等によって空中を飛行可能であるとともに、胴体の下部に設けられたフロートによって水上に浮遊可能な水上飛行機が開示されている。この水上飛行機は、水上に浮遊している状態でプロペラを駆動することにより、前方に向けて加速することができる。この水上飛行機は、胴体の下方に水中翼を備えており、水上を進行する際に、当該水中翼が発生させる揚力によって胴体を水面から浮き上がらせることができる。

特開２０１８－１６７７９２号公報

　上述した水上飛行機のような移動体では、水上を航行するために例えばプロペラを駆動して推進力を発生させる必要がある。このため、プロペラを駆動するための燃料（エネルギー）が大量に消費されることとなる。

　そこで、本開示に係る移動体は、目的水域まで速やかに到達可能とし、且つ、目的水域での航行に要するエネルギー量を抑制することを目的とする。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）は、空中を飛行可能且つ水上を航行可能な移動体（１００）であって、船体部（１）と、船体部（１）の上側に設けられた帆装部（２）と、を備え、帆装部（２）は、航行時に風を受けるセイル（６０）と、セイル（６０）を支持するマスト（５０）と、を有し、マスト（５０）は、セイル（６０）の展開率を変更する展開機構（Ｅ）を有する。

　これによれば、移動体（１００）は、空中を飛行可能である一方で、マスト（５０）により支持されたセイル（６０）で風を受けることにより、水上を航行可能である。しかも、移動体（１００）は、マスト（５０）の展開機構（Ｅ）によりセイル（６０）の展開率を変更することができるため、例えば飛行時及び航行時においてセイル（６０）を好適な展開率とすることができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）では、マスト（５０）は、飛行時及び航行時のいずれにおいても、船体部（１）の上側に立設された状態とされていてもよい。これによれば、飛行と航行とを切替える際（すなわち、離水時又は着水時）に、例えばマスト（５０）の設置又は格納といった動作を行う必要がない。また、マスト（５０）の設置又は格納といった動作を行うための機構が不要となるため、帆装部（２）を簡便な構造とすることができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）では、マスト（５０）は、主支持柱（５１）を有し、展開機構（Ｅ）は、主支持柱（５１）によりセイル（６０）の巻取り及び巻戻しを行うことで、セイル（６０）の展開率を変更してもよい。これによれば、簡便な構造により、展開機構（Ｅ）の機能を実現することができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）では、展開機構（Ｅ）は、主支持柱（５１）が延在する軸線回りに当該主支持柱（５１）を回転させる回転駆動部（５４）と、セイル（６０）を展開させる向きにセイル（６０）に張力を発生させるウインチ（５５）と、を含み、ウインチ（５５）によりセイル（６０）に張力を発生させつつ回転駆動部（５４）によりセイル（６０）の巻取り及び巻戻しの少なくともいずれかを行うことで、セイル（６０）の展開率を変更してもよい。これによれば、上述した展開機構（Ｅ）の機能を具体的に実現することができる。特に、ウインチ（５５）により張力を発生させた状態でセイル（６０）の巻取り又は巻戻しを行うため、例えばセイル（６０）が絡まるといった不具合の発生を抑制することができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）では、マスト（５０）は、巻取りを行った状態でセイル（６０）を固定する固定機構を含んでいてもよい。これによれば、巻取りを行った状態のセイル（６０）が解けて広がってしまうことを抑制することができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）では、マスト（５０）は、上端部において主支持柱（５１）と連結された一対の副支持柱（５２）を有し、主支持柱（５１）及び一対の副支持柱（５２）のそれぞれは、下端部において船体部（１）と連結されていてもよい。これによれば、主支持柱及び一対の副支持柱によって三角錐状のトラス構造を形成するため、マストの強度を向上させることができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）では、船体部（１）は、当該船体部（１）の前後方向に延在する胴体（１０）と、胴体（１０）の左右に設けられた一対の固定翼（２０）と、を有していてもよい。これによれば、固定翼機としての移動体（１００）において、上述した作用及び効果を好適に奏することができる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）は、マスト（５０）の動作を制御する制御部（４）を備えていてもよい。これによれば、制御部（４）によりマスト（５０）の動作を制御して、移動体（１００）の飛行及び航行を好適に制御することができる。特に、制御部（４）によりマスト（５０）の動作を自動制御する場合には、移動体（１００）の自動操縦が可能となる。

　本開示の一態様に係る移動体（１００）は、当該移動体（１００）に対する風向を検出する風向検出部（３）を備え、制御部（４）は、風向検出部（３）により検出された風向に基づいて、マスト（５０）の動作を制御してもよい。これによれば、移動体（１００）に対する風向に基づいてマスト（５０）の動作を制御することにより、移動体（１００）の航行をより好適に制御することができる。

　なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本開示の一例として示したものであって、本開示を実施形態の態様に限定するものではない。

　このように、本開示に係る移動体は、目的水域まで速やかに到達可能とし、且つ、目的水域での航行に要するエネルギー量を抑制することができる。

図１は、本実施形態に係る移動体がセイルを展開した状態を示す斜視図である。図２は、移動体がセイルを格納した状態を示す斜視図である。図３は、移動体がセイルを格納した状態を示す平面図である。図４は、セイルの動作を制御するウインチを示す図である。

　以下、図面を参照して例示的な実施形態について説明する。なお、各図における同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。

［移動体の構成］
　図１は、本実施形態に係る移動体１００がセイル６０を展開した状態を示す斜視図である。図２は、移動体１００がセイル６０を格納した状態を示す斜視図である。図３は、移動体１００がセイル６０を格納した状態を示す平面図である。図１～図３に示されるように、移動体１００は、空中を飛行可能且つ水上を航行可能（すなわち、水空両用）に構成された装置である。

　移動体１００は、乗員が搭乗しない無人機であり、自動操縦により空中を飛行可能且つ水上を航行可能とされている。移動体１００は、上部に帆を展開可能な固定翼機として構成されている。より詳細には、移動体１００は、帆を格納した状態では固定翼機として空中を飛行することができるとともに、帆を展開した状態では帆船として水上を航行（すなわち、帆走）することができる。移動体１００は、船体部１、帆装部２、風向検出部３、及び制御部４を備えている。

　船体部１は、移動体１００において、固定翼機としての機体部分であり、且つ、帆船としての船体部分である。船体部１は、移動体１００が水上を航行可能とするために、水上に浮かぶように構成されている。すなわち、船体部１は、全体として比較的軽量に構成され、移動体１００の重量に抗し得るだけの十分な浮力を生じる。船体部１は、胴体１０、一対の主翼（固定翼）２０、尾翼３０、及びプロペラ４０を有している。

　胴体１０は、船体部１の主体部分であり、船体部１の前後方向に延在している。胴体１０は、船体部１の前後方向に関して流線型をなしており、前端から後方に向かうにつれて一旦拡径した後、更に後方に向かうにつれて縮径している。胴体１０は、船体部１が水上に浮かぶ際に、胴体１０自体がフロートとして機能する。

　胴体１０の下側（すなわち、底面側）には、船体部１の前後方向に沿って延びる一対のキール１１が設けられている。換言すると、胴体１０は、その下側に、一対のキール１１を含んでいる。一対のキール１１は、左右に並設されたフィン状を呈し、航行時における移動体１００の横流れを抑制する。また、一対のキール１１は、その先端部（すなわち、下端部）に錘を含んでおりバラストとして機能する。一対のキール１１としていわゆるツインキール形式が採用されることにより、既存のヨットに用いられる部品を流用（又は、一部流用）可能となるとともに、移動体１００を地面に載置（保管）する場合又は移動体１００を緊急着陸させる場合等に当該移動体１００を自立させることが可能となっている。

　各キール１１は、上下方向において、航行時における喫水線よりも下方まで延びている。具体的には、各キール１１は、船体部１の底部１ａよりも下方まで延びている。各キール１１は、飛行時及び航行時のいずれにおいても、船体部１の下側（例えば、船体部１の底部１ａ）に立設された状態とされている。なお、喫水線とは、移動体１００が水上に浮かべられた場合に、移動体１００の外面において水面が位置する高さ（線）である。

　一対の主翼２０は、固定翼機としての翼部分であり、移動体１００が空中を飛行する際に揚力を発生させる。一対の主翼２０は、胴体１０の左右にそれぞれ設けられている。一対の主翼２０は、いわゆるデルタ翼として構成されている。なお、一対の主翼２０は、デルタ翼に限らず、テーパー翼、後退翼、及び前進翼といった種々の形態の翼であってもよい。

　各主翼２０は、略水平に延在する水平部２１、及び、水平部の先端（すなわち、左翼の左端及び右翼の右端）から水平部２１よりも下方に傾斜する傾斜部２２を含んでいる。各主翼２０の少なくとも一部は、船体部１が水上に浮かぶ際に水中に没し、フロートとして機能してもよい（すなわち、浮力を生じさせてもよい。）。例えば、各主翼２０のうち、傾斜部２２がフロートとして機能してもよく、傾斜部２２に加えて水平部２１の先端側の一部がフロートとして機能してもよく、傾斜部２２及び水平部２１の全体がフロートとして機能してもよい。

　また、各主翼２０は、水平部２１の後縁部に可動式のフラップ２３を含んでいる。フラップ２３は、当該フラップ２３の前縁部において船体部１の左右方向に延びる中心軸線回りに、後縁側を回動させることにより、各主翼２０により発生する揚力を増減させる。

　尾翼３０は、移動体１００の後部に設けられ、固定翼機としての船体部１が空中を飛行する際に機体を安定させるための翼である。尾翼３０は、垂直尾翼３０Ｖ及び水平尾翼３０Ｈを含んでいる。垂直尾翼３０Ｖは、胴体１０の上方に向かって略垂直に立設され、船体部１の前後方向に沿って延びる翼である。垂直尾翼３０Ｖは、飛行ラダー３１及び航行ラダー３２を含んでいる。水平尾翼３０Ｈは、垂直尾翼３０Ｖの上下方向における略中央部から左右に向かって略水平に立設された翼である。水平尾翼３０Ｈは、エレベータ３３を含んでいる。

　飛行ラダー３１は、飛行時における移動体１００の進行方向を調整する方向舵（ラダー）である。飛行ラダー３１は、垂直尾翼３０Ｖの後縁部に設けられている。飛行ラダー３１は、当該飛行ラダー３１の前縁部において船体部１の上下方向に延びる中心軸線回りに、後縁側を回動させることにより、飛行時における移動体１００のヨーイングの挙動を制御する。

　航行ラダー３２は、航行時における移動体１００の進行方向を調整する舵（ラダー）である。航行ラダー３２は、垂直尾翼３０Ｖの後縁部のうち、飛行ラダー３１よりも下方に設けられている。航行ラダー３２は、当該航行ラダー３２の前縁部において船体部１の上下方向に延びる中心軸線回りに、後縁側を回動させることにより、航行時における移動体１００のヨーイングの挙動を制御する。航行ラダー３２は、飛行ラダー３１と連結されており一体として動作する。ここでは、航行ラダー３２は、飛行ラダー３１を下方に延長した形状に構成されている。

　航行ラダー３２は、航行時における喫水線よりも下方まで延びている。具体的には、航行ラダー３２は、船体部１の底部１ａよりも下方まで延びている。より具体的には、航行ラダー３２及び一対のキール１１のそれぞれは、船体部１の上下方向において下端部が同等の位置となるように下方に延びている。つまり、航行ラダー３２及び一対のキール１１のそれぞれは、船体部１の底部１ａからの下方に向かって同程度の距離まで延在している。これにより、船体部１は、航行ラダー３２及び一対のキール１１のそれぞれを脚として陸上に載置された場合に、略水平の姿勢をとることとなる。

　エレベータ３３は、飛行時における移動体１００の進行方向を調整する昇降舵（ラダー）である。エレベータ３３は、水平尾翼３０Ｈの後縁部に設けられている。エレベータ３３は、当該エレベータ３３の前縁部において船体部１の左右方向に延びる中心軸線回りに、後縁側を回動させることにより、飛行時における移動体１００のピッチング（すなわち、機首上げ及び機種下げ）の挙動を制御する。

　プロペラ４０は、移動体１００を前進させる推進力を発生させる回転翼である。プロペラ４０は、船体部１の前後方向に延びる中心軸線回りに、複数枚（ここでは、２枚）の羽根を回転させることにより、推進力を発生させる。プロペラ４０は、尾翼３０に固定されている。具体的には、プロペラ４０は、尾翼３０の前方に、尾翼３０の垂直尾翼３０Ｖと水平尾翼３０Ｈとの交差する線分に当該プロペラ４０の中心軸線が沿うように、設けられている。プロペラ４０は、後述する帆装部２の後方に、帆装部２のマスト５０及びセイル６０と干渉しない位置に設けられている。

　帆装部２は、帆船としての移動体１００において、風を受けて推進力を得るための機構である。つまり、帆装部２は、帆を展開することで、移動体１００を帆船として水上を航行（すなわち、帆走）可能とするための機構である。帆装部２は、船体部１の上側に設けられている。帆装部２は、マスト５０及びセイル６０を有している。

　マスト５０は、船体部１の上側に立設され、セイル６０を支持する構造体である。マスト５０は、移動体１００の飛行時及び航行時のいずれにおいても、船体部１の上側に立設された状態とされている。マスト５０は、セイル６０の展開率を変更することにより、セイル６０を展開及び格納することができる。「セイルの展開率」とは、セイル６０が展開されている程度を示す指標値である。以下の説明では、セイル６０の展開率が１００％である場合に、セイル６０が完全に展開されているものとする。一方、セイル６０の展開率が０％である場合に、６０が完全に格納されているものとする。マスト５０は、セイルの展開率を１００％から０％までの間の任意の状態とすることができる。マスト５０は、主支持柱５１、一対の副支持柱５２、結束部５３、展開機構Ｅ、及び固定機構（不図示）を有している。

　主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれは、長尺筒状に構成された竿（柱）である。主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれは、例えばアルミ管によって形成されている。主支持柱５１は、いわゆるフォアステイを構成し、一対の副支持柱５２のそれぞれは主支持柱５１を支持している。主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれは、上端部において結束部５３により結束されている。これにより、主支持柱５１及び一対の副支持柱５２は、三角錐状をなしている。換言すると、一対の副支持柱５２は、上端部において主支持柱５１と連結されている。

　結束部５３には、主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれの上端部が嵌入される３つの凹部が形成されている。これにより、結束部５３は、主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれを上端部において保持する。結束部５３に形成される３つの凹部のうち、各副支持柱５２が嵌入される２つの凹部（副凹部）は、各副支持柱５２を回転不能に保持してもよい。一方、結束部５３に形成される３つの凹部のうち、主支持柱５１が嵌入される１つの凹部（主凹部）は、主支持柱５１を回転自在に保持する。例えば、主凹部は、主支持柱５１が遊嵌されることで、主支持柱５１を回転自在に保持してもよい。あるいは、主凹部は、主支持柱５１を軸受により保持することで、主支持柱５１を回転自在に保持してもよい。

　主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれは、下端部において船体部１と連結されている。具体的には、主支持柱５１は、下端部において船体部１の胴体１０の上面側の略中央部と連結されている。一方、一対の副支持柱５２のそれぞれは、下端部において船体部１の一対の主翼２０のそれぞれと連結されている。より具体的には、各副支持柱５２は、各主翼２０の上面側の略中央部と連結されている。このため、一対の副支持柱５２の間にプロペラ４０が位置することとなり、その結果、各副支持柱５２はプロペラ４０と干渉しない。

　展開機構Ｅは、セイル６０の展開率を変更する機構である。展開機構Ｅは、主支持柱５１によりセイル６０の巻取り及び巻戻しを行うことで、セイル６０の展開率を変更する。具体的には、例えばセイル６０の巻取りに際して、展開機構Ｅは、主支持柱５１を回転させることにより主支持柱５１の周囲にセイル６０を巻き付ける。展開機構Ｅは、移動体１００が固定翼機として空中を飛行する際には、セイル６０の展開率を低下させて（すなわち、セイル６０の巻取りを行うことでセイル６０を格納して）、飛行時にセイル６０に作用する空気抵抗を低減させる。一方、展開機構Ｅは、移動体１００が帆船として水上を航行する際には、セイル６０の展開率を増大させて（すなわち、セイル６０の巻戻しを行うことでセイル６０を展開して）、航行時にセイル６０に作用する空気抵抗（或いは、帆走のための揚力）を増大させる。展開機構Ｅは、回転駆動部５４及びウインチ５５を含んでいる。

　回転駆動部５４は、主支持柱５１が延在する軸線回りに当該主支持柱５１を回転させるファーラ機構である。回転駆動部５４は、例えば駆動モータの回転駆動力を主支持柱５１に伝達し、主支持柱５１を軸線回りに回転させてもよい。図４は、セイル６０の動作を制御するウインチ５５を示す図である。図４に示されるように、ウインチ５５は、セイル６０を展開させる向きにセイル６０に張力を発生させる機構である。ウインチ５５は、例えばセイル６０の主支持柱５１とは反対側の端部に接続された紐（ロープ）を巻取るように駆動されることで、セイル６０に張力を発生させてもよい。これら回転駆動部５４及びウインチ５５を用いて、展開機構Ｅは、ウインチ５５によりセイル６０に張力を発生させつつ回転駆動部５４によりセイル６０の巻取り及び巻戻しの少なくともいずれかを行うことで、セイル６０の展開率を変更する。なお、図４に示されるウインチ５５は、当該ウインチ５５により巻き取られる紐を案内する紐案内部５６を含んでいる。紐案内部５６は、ウインチ５５からセイル６０に向かって好適な角度で紐が延びるように、紐の延在方向を調整する機構である。紐案内部５６は、図１～図３においては図示を省略されている。

　固定機構は、展開機構Ｅにより巻取りを行った状態でセイル６０を固定する機構である。固定機構は、セイル６０の主支持柱５１とは反対側の端部が主支持柱５１から離間しないように（又は、当該端部が風等を受けて不規則に動くこと（暴れること）を抑制するように）するための機構である。固定機構は、当該端部を主支持柱５１に向かって付勢する付勢力を発生させてもよい。あるいは、固定機構は、展開機構Ｅのウインチ５５が紐を介してセイル６０の端部を引っ張ることにより（つまり、テンションをかけることにより）、当該端部の動きを抑制してもよい。固定機構は、移動体１００が固定翼機として空中を飛行するときに、セイル６０を主支持柱５１に固定してもよい。また、固定機構は、移動体１００が帆船として水上を航行し始めようとするときに、セイル６０の固定を解除してもよい。

　図１～図３に戻り、セイル６０は、航行時に風を受ける帆（シート）である。セイル６０は、略三角形の帆布６１を含んでいる。帆布６１の１辺は、主支持柱５１に沿って延在し、主支持柱５１に連結されている。展開機構Ｅが主支持柱５１によりセイル６０の巻取りを行う際には、この連結された１辺が巻取りの起点とされる。また、セイル６０は、ブーム６２及びバテン（不図示）を含んでいる。

　ブーム６２は、帆布６１の底辺（主支持柱５１に沿わない１辺）に沿って延在して帆布６１が連結された棒状部材である。ブーム６２は、主支持柱５１に対して、例えば弾性を有する樹脂製のジョイントパーツによって取り付けられている。ブーム６２は、主支持柱５１を中心軸線としてジョイントパーツの可動範囲内で主支持柱５１回りに回動することで、帆布６１の向きを規定する。ブーム６２は、主支持柱５１側の端部（基端部）とは反対側の端部（先端部）側において、紐（ロープ）を介してウインチ５５と接続されている。そして、ウインチ５５が紐を繰出し及び繰戻しすることで、ブーム６２の回動可能範囲（角度範囲）が規定される。その結果、航行時に風を受けたセイル６０の向きが制御可能となる。バテンは、帆布６１に取り付けられて帆布６１の剛性を調整する部材である。バテンは、例えば、可撓性を有する部材によって形成され、展開機構Ｅにより主支持柱５１が回転させられて帆布６１が巻き取られる際に、帆布６１とともに主支持柱５１の周囲に巻き取られてもよい。

　風向検出部３は、移動体１００に対する風向を検出する風向計であり、例えば風見である。風向検出部３は、胴体１０の上面に設けられている。なお、風向検出部３は、移動体１００に対する風向を電子データとして取得し、取得した風向に関する電子データを制御部４に出力する。

　制御部４は、移動体１００の各部の動作を制御するコントローラである。制御部４は、物理的には制御演算装置として構成され、記憶装置及び入出力装置との間で情報の授受が可能である。制御部４は、例えばＣＰＵ（Central Processing Unit）等により構成されており、演算処理を実行するとともに記憶装置及び入出力装置の制御を行う。記憶装置は、例えば主記憶装置及び補助記憶装置を有している。主記憶装置は、例えばＲＡＭ（Random Access Memory）により構成されている。また、補助記憶装置は、例えばＲＯＭ（Read Only Memory）により構成されている。入出力装置は、例えば外部からデータを入力されて記憶装置に送信する入力装置、及び、例えば制御演算部により演算されて記憶装置に記憶された演算結果を外部に出力する出力装置を有している。制御部４は、例えば、ＲＯＭに記憶されているプログラムをＲＡＭに読み込ませ、ＲＡＭに読み込まれたプログラムを実行することにより、所定の処理を実行する。なお、制御部４は、移動体１００の各部の動作を制御するコントローラとして構成されていればよく、上述した構成とは異なる構成を備えていてもよい。

　より詳細には、制御部４は、例えば飛行ラダー３１及び航行ラダー３２の動作を制御する。この場合、制御部４は、風向検出部３により検出された風向に基づいて、飛行ラダー３１及び航行ラダー３２の動作を制御してもよい。また、制御部４は、例えばマスト５０の動作を制御する。この場合、制御部４は、風向検出部３により検出された風向に基づいて、マスト５０の動作を制御してもよい。具体的には、制御部４は、マスト５０のウインチ５５を制御してもよい。なお、上述したものの他に、制御部４は、フラップ２３、エレベータ３３、回転駆動部５４、及び固定機構等の動作を制御してもよい。

［作用及び効果］
　以上説明したように、移動体１００は、空中を飛行可能且つ水上を航行可能な移動体１００であって、船体部１と、船体部１の上側に設けられた帆装部２と、を備え、帆装部２は、航行時に風を受けるセイル６０と、セイル６０を支持するマスト５０と、を有し、マスト５０は、セイル６０の展開率を変更する展開機構Ｅを有する。

　これによれば、移動体１００は、空中を飛行可能である一方で、マスト５０により支持されたセイル６０で風を受けることにより、水上を航行可能である。しかも、移動体１００は、マスト５０の展開機構Ｅによりセイル６０の展開率を変更することができるため、例えば飛行時及び航行時においてセイル６０を好適な展開率とすることができる。

　移動体１００では、マスト５０は、飛行時及び航行時のいずれにおいても、船体部１の上側に立設された状態とされる。これによれば、飛行と航行とを切替える際（すなわち、離水時又は着水時）に、例えばマスト５０の設置又は格納といった動作を行う必要がない。また、マスト５０の設置又は格納といった動作を行うための機構が不要となるため、帆装部２を簡便な構造とすることができる。

　移動体１００では、マスト５０は、主支持柱５１を有し、展開機構Ｅは、主支持柱５１によりセイル６０の巻取り及び巻戻しを行うことで、セイル６０の展開率を変更する。これによれば、簡便な構造により、展開機構Ｅの機能を実現することができる。

　移動体１００では、展開機構Ｅは、主支持柱５１が延在する軸線回りに当該主支持柱５１を回転させる回転駆動部５４と、セイル６０を展開させる向きにセイル６０に張力を発生させるウインチ５５と、を含み、ウインチ５５によりセイル６０に張力を発生させつつ回転駆動部５４によりセイル６０の巻取り及び巻戻しの少なくともいずれかを行うことで、セイル６０の展開率を変更する。これによれば、上述した展開機構Ｅの機能を具体的に実現することができる。特に、ウインチ５５により張力を発生させた状態でセイル６０の巻取り又は巻戻しを行うため、例えばセイル６０が絡まるといった不具合の発生を抑制することができる。

　移動体１００では、マスト５０は、巻取りを行った状態でセイル６０を固定する固定機構を含んでいる。これによれば、巻取りを行った状態のセイル６０が解けて広がってしまうことを抑制することができる。

　移動体１００では、マスト５０は、上端部において主支持柱５１と連結された一対の副支持柱５２を有し、主支持柱５１及び一対の副支持柱５２のそれぞれは、下端部において船体部１と連結されている。これによれば、主支持柱及び一対の副支持柱によって三角錐状のトラス構造を形成するため、マストの強度を向上させることができる。

　移動体１００では、船体部１は、当該船体部１の前後方向に延在する胴体１０と、胴体１０の左右に設けられた一対の固定翼２０と、を有している。これによれば、固定翼機としての移動体１００において、上述した作用及び効果を好適に奏することができる。

　移動体１００は、マスト５０の動作を制御する制御部４を備えている。これによれば、制御部４によりマスト５０の動作を制御して、移動体１００の飛行及び航行を好適に制御することができる。特に、制御部４によりマスト５０の動作を自動制御する場合には、移動体１００の自動操縦が可能となる。

　移動体１００は、当該移動体１００に対する風向を検出する風向検出部３を備え、制御部４は、風向検出部３により検出された風向に基づいて、マスト５０の動作を制御する。これによれば、移動体１００に対する風向に基づいてマスト５０の動作を制御することにより、移動体１００の航行をより好適に制御することができる。

［変形形態］
　上述した実施形態は、当業者の知識に基づいて変更又は改良が施された様々な形態により実施可能である。

　例えば、上述した実施形態においては、航行ラダー３２及び一対のキール１１のそれぞれの下端部に、別途の構造物等は設けられていない。しかし、航行ラダー３２及び一対のキール１１のそれぞれの下端部には、車輪（不図示）が設けられていてもよい。換言すると、航行ラダー３２及び一対のキール１１のそれぞれは、下端部に車輪を含んでいてもよい。これによれば、船体部１を陸上でも容易に移動させることができる。また、車輪は、駆動源に接続されており回転駆動可能であってもよい。これによれば、船体部１を陸上で自走させることができる。

　また、上述した実施形態においては、各キール１１は、飛行時及び航行時のいずれにおいても、船体部１の下側に立設された状態とされている。しかし、各キール１１は、少なくとも移動体１００の航行時において船体部１の下側に立設された状態とされていればよい。すなわち、各キール１１は、飛行時においては、船体部１に格納された状態とされており、航行時においては、船体部１の下側に立設された状態とされていてもよい。一例として、各キール１１は、当該キール１１の基端部（すなわち、船体部１の下側に立設された状態における当該キール１１の上端部）の中心軸線回りに先端部側（すなわち、船体部１の下側に立設された状態における当該キール１１の下端部側）が回動して、船体部１の底部１ａに形成された格納室（不図示）内に格納されてもよい。これによれば、飛行時において、船体部１の周囲に好適な気流を発生させやすい。

　また、上述した実施形態においては、航行ラダー３２は、飛行ラダー３１と連結されており一体として動作する。しかし、航行ラダー３２は、飛行ラダー３１と分離されており別体として動作してもよい。これによれば、航行ラダー３２を航行に最適化するとともに、飛行ラダー３１を飛行に最適化することができる。

　また、上述した実施形態においては、移動体１００は無人機である。しかし、移動体１００は、乗員が搭乗可能な有人機であってもよい。また、移動体１００は、自動操縦により空中を飛行可能及び水上を航行可能とされているが、オペレータによる遠隔操作又は乗員による直接操作が可能であってもよい。

　また、上述した実施形態においては、胴体１０は、左右に並設された一対のキール１１を含んでいる。しかし、胴体１０は、上述した一対のキール１１に代えて、単一のキール（又は、センターボード）を含んでいてもよい。

　また、上述した実施形態においては、マスト５０は、移動体１００の飛行時及び航行時のいずれにおいても、船体部１の上側に立設された状態とされている。しかし、マスト５０は、少なくとも移動体１００の航行時において船体部１の上側に立設された状態とされていればよい。すなわち、マスト５０は、飛行時においては、船体部１の上側に立設されていない状態（例えば、胴体１０に沿うように倒された状態、又は、胴体１０の内部に格納された状態）とされており、航行時においては、船体部１の上側に立設された状態とされていてもよい。

　また、上述した実施形態においては、マスト５０は、セイル６０の展開率を１００％から０％までの間の任意の状態とすることができる。しかし、マスト５０は、セイル６０の展開率を１００％又は０％のいずれかの状態にのみすることができてもよい。あるいは、マスト５０は、セイル６０の展開率を１００％及び０％を含む複数の状態（例えば、１００％、５０％、及び０％の３つの状態）にすることができてもよい。

　また、上述した実施形態においては、移動体１００は、主支持柱５１によりセイル６０の巻取り及び巻戻しを行う展開機構Ｅと、帆布６１に連結されて帆布６１の向きを規定するブーム６２と、の両方を備えている。しかし、移動体１００は、これら展開機構Ｅとブーム６２とのいずれか一方のみを備えていてもよい。すなわち、移動体１００は、展開機構Ｅを備えている場合にはブーム６２を備えていなくてもよく、逆に、ブーム６２を備えている場合には展開機構Ｅを備えていなくてもよい。これにより、例えば、構造の簡便化、及び、各機構の動作の信頼性向上を図り得る。

Claims

　空中を飛行可能且つ水上を航行可能な移動体であって、
　船体部と、
　前記船体部の上側に設けられた帆装部と、を備え、
　前記帆装部は、
　　航行時に風を受けるセイルと、
　　前記セイルを支持するマストと、を有し、
　前記マストは、前記セイルの展開率を変更する展開機構を有する、移動体。
　前記マストは、飛行時及び航行時のいずれにおいても、前記船体部の上側に立設された状態とされている、請求項１に記載の移動体。
　前記マストは、主支持柱を有し、
　前記展開機構は、前記主支持柱により前記セイルの巻取り及び巻戻しを行うことで、前記セイルの展開率を変更する、請求項１又は２に記載の移動体。
　前記展開機構は、
　　前記主支持柱が延在する軸線回りに当該主支持柱を回転させる回転駆動部と、
　　前記セイルを展開させる向きに前記セイルに張力を発生させるウインチと、を含み、
　　前記ウインチにより前記セイルに張力を発生させつつ前記回転駆動部により前記セイルの巻取り及び巻戻しの少なくともいずれかを行うことで、前記セイルの展開率を変更する、請求項３に記載の移動体。
　前記マストは、巻取りを行った状態で前記セイルを固定する固定機構を含む、請求項３又は４に記載の移動体。
　前記マストは、上端部において前記主支持柱と連結された一対の副支持柱を有し、
　前記主支持柱及び一対の前記副支持柱のそれぞれは、下端部において前記船体部と連結されている、請求項３～５のいずれか一項に記載の移動体。
　前記船体部は、
　　当該船体部の前後方向に延在する胴体と、
　　前記胴体の左右に設けられた一対の固定翼と、を有する、請求項１～６のいずれか一項に記載の移動体。
　前記マストの動作を制御する制御部を備える、請求項１～７のいずれか一項に記載の移動体。
　当該移動体に対する風向を検出する風向検出部を備え、
　前記制御部は、前記風向検出部により検出された前記風向に基づいて、前記マストの動作を制御する、請求項８に記載の移動体。