JP4612137B2 - 靴底の製造方法および靴底 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、靴底の製造方法および靴底に関し、詳しくは、ゴルフシューズ等のスポーツ用シューズ、トレッキング用シューズ等のゴム製品からなる靴底として好適に用いられ、靴底の表面にゴム製品中に配合している白色充填剤が外表面へ析出するのを防止するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴム製品は基材となるゴム成分(ポリマーゴム)に加硫剤、老化防止剤、各種の充填剤(増量及び/又は補強用充填剤)などの配合剤を加えて架橋反応に付して成形加工されており、その弾性に富む独特の性質を応用して自動車等の工業製品をはじめ、履物、ゴム引布、ゴルフボールなど極めて広範な分野で用いられている。このようなゴム製品は、原則として化学反応によってゴム基材のゴム分子鎖間に架橋結合を形成させて3次元網状構造化することにより所期の弾性を付与したものであり、経時的に様々な変化が生じがちである。
【0003】
その1つに、配合した薬品が表面に吹き出てくるブルーム(又はブルーミング)と呼ばれる現象があり、その結果、製品の外観が損なわれ、ゴム製品の品質の低下がもたらされる。このブルーム現象は特定の配合剤がゴムの内部から表面に移行することにより起る現象であり、通常、そのような薬品はある程度の溶解性を有する。従って、ブルーム現象を避けるには、従来、問題の薬品の使用量を減少したり、相溶性の良い薬品に置き換える等の方法で解決が図られてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のごとく、従来、知られていたブルーム現象は「溶解性の物質」によるものでありその解決方法は既知であったが、最近、白色充填剤として添加される無機充填剤によっても同現象が起こることが明らかになった。このような「非溶解性物質」によるゴム製品のブルーム現象を回避するためには、問題の充填剤の使用量を減少するか、ブルーム現象を起こし難い他の充填剤に置き換えなければならない。白色充填剤が単に増量を目的として用いられている場合には、適宜充填剤を選択するなどの対策をとることも可能であるが、補強(物性の向上)を目的として用いられる場合には充填剤の変更や減量はゴム製品の本質的な性質や耐久性を損なう恐れがあり、容易でない。特に、白色乃至淡色等の明るい色のゴム製品を作成する場合、白色充填剤が必須であることから、製品の外観及び構造の両面で質的に満足すべき製品を得るためにはブルーム現象を抑制する方法が強く求められていた。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、白色充填剤を配合してもブルーム現象の発生を簡単かつ確実に抑制することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は、ゴム成分、架橋剤及び白色充填剤とするシリカを含むゴム組成物を加硫成形してなるゴム製品からなる靴底の製造方法であって、
上記ゴム組成物はゴム成分100重量部に対して上記シリカを30〜80重量部配し、該ゴム組成物を金型に充填し、該金型中でプレス加硫して靴底を成形し、成形後に該靴底の底面及び/又は側面の外表面に紫外線照射処理を施し、該紫外線照射の照射される紫外線の照度をA(mW/cm2)、照射する時間をB(sec)としたとき、紫外線照射処理におけるA×Bが1000(mW/cm 2 )・sec以上10,000,000(mW/cm 2 )・sec以下とし、上記靴底の底面及び/又は側面の外表面に上記白色充填剤の析出を低減せしめていることを特徴とする靴底の製造方法を提供している。
上記紫外線照射の照射される紫外線の照度をA(mW/cm 2 )、照射する時間をB(sec)としたとき、紫外線照射処理におけるA×Bの単位「(mW/cm 2 )・sec」は積算光量の単位の「mJ/cm 2 」と同値で、(mW/cm 2 )・sec=mJ/cm 2 で、A×Bは積算光量を表す。
【0007】
本発明は、通常の加硫成形用配合剤を含有するゴム組成物から加硫成形により得られるゴム製品に、一定の強さの紫外線照射処理を施すと、本来はブルーム現象が起こる配合であっても、ブルームが抑制されるという知見に基づくものである。
【0008】
ゴム組成物に含有されるゴム成分(ポリマー成分)としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR) 、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多硫化ゴム(T)、ウレタンゴム(U)等を挙げることができ、これらを1種で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0009】
また、架橋剤は、当該技術分野で既知のものから任意に選択することができ、例えば、硫黄、有機含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類等が例示される。硫黄や有機含硫黄化合物の架橋剤(加硫剤)を用いる場合、加硫促進剤や加硫促進助剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、例えば、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤等の有機促進剤を使用することができる。また、加硫促進助剤を配合することもでき、例えば、亜鉛華などの金属化合物やステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸を使用することができる。
【0010】
白色充填剤は、ゴム製品の物性の向上(粘弾性の調整、耐摩耗性の付与、硬度調整等)のために通常用いられる白色乃至淡色の明るい色の無機又は有機充填剤から選択され、本発明ではシリカを用いている。なお、無機充填剤にはカーボン以外の充填剤が包含され、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、亜鉛華などが例示される。また、有機充填剤としてはハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂などがあるが、カーボン以外の無機充填剤が好ましい。本発明は、補強効果が高く、しかも、粒子径の小さい充填剤であることから上記のようにシリカを用いている。架橋ゴムの補強剤として用いられるシリカ(ホワイトカーボン)は一般に一次粒子径が10〜50nmの超微細な白色粉末であり、製法に応じて乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、煙霧状シリカなどに分類されるが、それらから適宜選択することができる。
【0011】
ゴム組成物中の上記シリカからなる白色充填剤の配合量は、ゴム製品の種類によって相異するが、ブルーム現象は配合量が多くなるのに応じて著しくなる傾向があることから、本発明は主として比較的配合量を多くする必要のある靴底を対象とする。具体的には、本発明の靴底におけるブルーム抑制効果は、ゴム成分100重量部に対して白色充填剤を30重量部以上80重量部以下含有するゴム組成物から加硫成形された靴底においてより良く発揮される。
【0012】
本発明では、上記のように、補強剤としてシリカからなる白色充填剤を配合しており、その配合量は、組成物中の他の成分や、充填剤の種類、製品の種類によって異なるが、通常、ゴム成分100重量部に対して30〜80重量部、好ましくは30〜70重量部の範囲で配合する。
【0013】
削除
【0014】
また、ゴム組成物には当該技術分野で通常用いられる他の添加剤を配合しても良く、それらには、老化防止剤、軟化剤(可塑剤)等が含まれる。さらに、撥水性の付与、粘弾性等の調整のためにシランカップリング剤やシリル化剤等を配合してもよい。
【0015】
本発明は、ゴム成分、架橋剤及び白色充填剤を含有するゴム組成物から加硫成形される靴底からなり、紫外線照射効果と外観の両面で一定の品質を維持することが要求される。本発明の靴底を用いる履物としては、トレッキングシューズ、ゴルフシューズ、テニスシューズ、ジョギングシューズなどのアウトドア用の靴、インドアスポーツシューズ、長靴、カジュアルシューズ、サンダル類などが挙げられる。
【0016】
紫外線照射は製品全体にすることもできるが、通常は、白色充填剤を一定量配合して補強する必要がありかつブルーム現象が問題となる部分に局部的に行い、靴底の底面及び/又は側面、サンダル等ならば底面である。
【0017】
本発明の靴底は、上記の配合剤を含有するゴム組成物を常法に従って加硫成形し、所望の部位に紫外線を照射することにより得ることができる。
【0018】
紫外線照射の条件としては、照射される紫外線が強いほど、また照射時間が長いほど、ブルーム防止効果が大きい。しかしながら、紫外線が強すぎたり、長時間照射するとゴムが劣化したり変色し製品の質低下を招く恐れがある。従って、紫外線照射の照度(光源の中心面から240mmの距離をUVメーターで測定した値)をA(mW/cm2)、照射する時間をB(sec)で表したとき、紫外線照射処理におけるA×Bの積算光量の値((mW/cm 2 )・sec=mJ/cm 2 )は、ブルーム抑制効果のみならずゴム製品からなる靴底の品質への影響及びコストを考慮して決定される。
【0019】
通常、上記A×B(mJ/cm 2 )の下限値は1000mJ/cm 2 、好ましくは1200mJ/cm 2 であり、上限値は10,000,000mJ/cm 2 、好ましくは5,000,000mJ/cm 2 である。1000mJ/cm 2 未満ではブルーム抑制効果が不十分であり、10,000,000mJ/cm 2 を越えるとブルーム効果は余り変化しないにも係らず、製品表面の紫外線劣化により変色や物性低下を招く恐れがあり、またコストも高くつくことから、上記範囲が適当である。
【0020】
本発明の実施に際しては、A(照度)×B(時間)を上記範囲にするために、適当なA及びBを決定する。当然、Aが大きければ照射時間が短く、逆の場合には長時間照射が必要となる。従って、Aが大きければ時間の短縮により生産性は向上するが、装置が高価につき、逆に、Aが小さければ生産性が低下する。よって、A(mW/cm 2 )は、50〜1500、好ましくは200〜1000の範囲とし、B(sec)は10〜10,000、好ましくは15〜600の範囲とするのが良い。
【0021】
紫外線照射処理は市販の適宜な装置を用いて行うことができ、そのような装置として、アイスーパーUVテスター「SUV−W13」(岩崎電気)、「NUX7324F」(松下電工)などがあるが、これらに限定されない。
【0022】
上記の条件下、紫外線照射処理した本発明の靴底とするゴム製品は、後述するように、屋外の日陰に1ヶ月放置してもブルーム現象を起こさず、品質が保持された。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明する。
下記の表1に靴底とするゴム製品の組成物を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1中において、*1〜*6は下記の通りである。
*1 溶液重合スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン製)
*2 ウルトラジルVN3(デグサ製)
*3 老防ノクラック200(大内新興化学製) 化学名:2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
*4 ノクセラーNS(大内新興化学製) 化学名:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミド
*5 ノクセラーEZ(大内新興化学製) 化学名:ジエチルジチオ カルバミン酸亜鉛
*6 ノクセラーDT(大内新興化学製) 化学名:ジ・オルトトリル グアニジン
【0026】
上記表1に記載のゴム組成物を金型に充填し、金型中で160℃で15分間プレス加硫して目的とする試験用ゴム製品片を調製した。次いで、得られたゴム製品の表面に市販の紫外線照射装置NUX7324F(松下電工)を用い、下記の表2に記載の条件下で紫外線照射処理した(実施例1〜3)。他方、同様にして得たゴム製品であって、紫外線照射処理をしない製品(比較例1)、及びA×B=350で紫外線照射した製品(比較例2)を用意した。
【0027】
上記実施例1〜3、比較例1、2を蒸し暑い屋外の日陰に一ヶ月干して表面のブルーミング現象の有無を目視観察して比較検討した。この間の平均気温は約30℃、湿度は約50%であった。白化が観察された場合は×、観察されなかった場合は○で評価し、下記の表2に示す結果を得た。
【0028】
【表2】
【0029】
上記表2から明らかに、比較例1、2の製品はシリカのブルーミングによる白化を示したのに対し、実施例1〜3のゴム製品の紫外線照射部分は白化を示さなかった。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、紫外線を照射することにより、架橋ゴム製品における白色充填剤によるブルーミングが抑制されるので、十分な補強効果が得られる量の白色充填剤を配合することができ、外観及び耐久性の両面で優れた特性を有するゴム製品からなる靴底を得ることができる。
【0031】
本発明のゴム製品からなる靴底は、特に外観のみならず耐久性の両方を要求される履物用アウトソールであり,紫外線照射部分がその底面及び/又は側面である場合には、品質向上を図ることができ、その作用効果は大きい。
Claims (2)
- ゴム成分、架橋剤及び白色充填剤とするシリカを含むゴム組成物を加硫成形してなるゴム製品からなる靴底の製造方法であって、
上記ゴム組成物はゴム成分100重量部に対して上記シリカを30〜80重量部配し、該ゴム組成物を金型に充填し、該金型中でプレス加硫して靴底を成形し、成形後に該靴底の底面及び/又は側面の外表面に紫外線照射処理を施し、該紫外線照射の照射される紫外線の照度をA(mW/cm2)、照射する時間をB(sec)としたとき、紫外線照射処理におけるA×Bが1000(mW/cm 2 )・sec以上10,000,000(mW/cm 2 )・sec以下とし、上記靴底の底面及び/又は側面の外表面に上記白色充填剤の析出を低減せしめていることを特徴とする靴底の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法で製造された靴底。
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