JP4601759B2 - ペルフルオロデカリル基含有過酸化物及びその製造方法並びにペルフルオロデカリル基含有化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なペルフルオロデカリル基含有過酸化物、その用途、それを用いて得たペルフルオロデカリル基含有化合物、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ペルフルオロアルキル基を有する化合物が種々知られているが、そのうち有機過酸化物、例えばペルフルオロアルカノイルペルオキシド等は、フッ素系モノマーの重合触媒として多用されている。このような有機過酸化物としては、例えば、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンの共重合触媒用に過酸化ペルフルオロアルカノイルが知られている(特開昭49−10290号公報)。
【0003】
また、ペルフルオロアルキル基を含有する安定な化合物については、耐候性、耐光性、撥水撥油性、さらには生理活性等の有用な性質を示すため近年注目を集めている。特に、ペルフルオロアルキル基含有重合体は、低表面張力性、低屈折性、低反射性、耐熱性、耐寒性、耐油性、電気絶縁性、撥水性、撥油性、防曇性、防汚性、離型性、耐薬品性、潤滑性等の優れた特性を有しているため種々の分野、例えば表面処理剤、繊維処理剤、界面活性剤、塗料、ワックス添加剤、離型性付与剤などの分野で用いられ、特に、ガラス器具、光学レンズ、眼鏡用レンズ、眼内レンズ、プラスチックファイバー、分離膜、医療用材等の表面に撥水撥油性、防汚染性、乱反射防止性等を付与させるための表面処理剤として有用であると考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような事情の下、特定モノマーの重合開始剤や特定のペルフルオロ有機基導入化剤として有用な新規なペルフルオロ有機過酸化物及び該過酸化物を用いて得られる新規なペルフルオロ有機化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規なペルフルオロ有機化合物について鋭意研究を重ねた結果、ペルフルオロデカリル基を有する有機過酸化物、及びそれを用いて得られる新規な種々のペルフルオロデカリル基含有化合物がその目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて、本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf (I)
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物を提供するものである。
【0007】
この過酸化物は、文献未載の新規化合物であって、一般式
RfC(=O)X
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基、Xはハロゲン原子を示す)
で表わされるペルフルオロデカリンカルボン酸ハライドを過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム及び過酸化バリウムの中から選ばれた少なくとも1種と反応させることにより製造することができる。
【0008】
この過酸化物は、反応性に富み、種々の特性、用途を有し、特にそれを有効成分とするエチレン性重合基をもつモノマー用重合開始剤や該過酸化物からなるペルフルオロデカリル基導入化剤として有用である。
【0009】
また、本発明は、このような過酸化物を用いて、以下の一般式(II)〜(IV)で表わされる種々のペルフルオロデカリル基含有化合物の製造方法を提供するものである。
Rf−(A)m−(B)n−Rf (II)
〔式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を、A及びBは互いに異なるエチレン性重合基をもつモノマー単位を、m、nは0〜5000(ただし、m+n≠0)をそれぞれ示す〕
Ar−Rf (III)
(式中、Arは重合性を有しない芳香族化合物残基であり、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基で芳香環の炭素原子に結合している)
(Ar′−H)x(Ar′−Rf)y (IV)
(式中、Ar′は重合性を有する芳香族モノマー単位残基であり、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基で芳香環の炭素原子に結合し、xは0〜10000の整数、yは1〜10000の整数である)
【0010】
これらのペルフルオロデカリル基含有化合物は、文献未載の新規化合物であって、次のようにして製造することができる。
本発明の前記一般式(II)のペルフルオロデカリル基含有化合物は、1種又は2種以上のエチレン性重合基をもつモノマーを一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させることにより製造することができる。
また、本発明の前記一般式(III)のペルフルオロデカリル基含有化合物は、一般式
Ar−H
(式中、Arは重合性を有しない芳香族化合物残基であって、その結合手は芳香環に位置する)
で表わされる芳香族化合物を一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させることにより製造することができる。
また、本発明の前記一般式(IV)のペルフルオロデカリル基含有化合物は、一般式
Ar″−H
(式中、Ar″は重合性を有する芳香族モノマー残基であって、その結合手は芳香環に位置する)
で表わされる重合性を有する芳香族モノマーを一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させることにより製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の前記式(I)で示されるペルフルオロデカリル基含有過酸化物〔以下、過酸化物(I)ともいう〕において、式中のRfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基、換言すれば1‐ペルフルオロデカリル基及び2‐ペルフルオロデカリル基の一方又は両方、さらに言い換えれば1‐ペルフルオロデカリル基及び2‐ペルフルオロデカリル基の中から選ばれた少なくとも1種を示し、したがって過酸化物(I)はペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドということもできる。
過酸化物(I)の中でもRfが1‐ペルフルオロデカリル基であるビス(ペルフルオロデカリン‐1‐カルボニル)ペルオキシドが入手しやすいので好ましい。
【0012】
過酸化物(I)すなわちペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドは、対応する酸ハロゲン化物(例えば、ペルフルオロデカリンカルボン酸フッ化物、ペルフルオロデカリンカルボン酸塩化物、ペルフルオロデカリンカルボン酸臭化物、ペルフルオロデカリンカルボン酸ヨウ化物)を原料化合物に用いて次の方法により製造することができる。
第一の方法は、上記酸ハロゲン化物を過酸化水素と反応させるものであって、反応は好ましくはアルカリ条件下、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムや、これらの混合物などのアルカリ成分の存在下に行われる。上記酸ハロゲン化物に対する他成分の好適用量比はモル比で過酸化水素で0.3〜20、中でも0.5〜10、アルカリ成分で0.3〜10、中でも0.5〜7の範囲で選ばれる。この比が、過酸化水素で20を超えると、またアルカリ成分で10を超えると、目的物の過酸化物(I)の収率が低下するし、また過酸化水素で0.3未満となると、またアルカリ成分で0.3未満となると、反応時間が長くなり、しかも収率も低下する傾向が見られる。
第二の方法は、上記酸ハロゲン化物を過酸化ナトリウム、過酸化カリウム及び過酸化バリウムの中から選ばれた少なくとも1種の無機過酸化物と反応させるものである。上記酸ハロゲン化物に対する無機過酸化物の好適用量比はモル比で0.3〜20、中でも0.5〜15の範囲で選ばれる。この比が20を超えると目的物の過酸化物(I)の収率が低下するし、また0.3未満となると反応時間が長くなり、しかも収率も低下する傾向が見られる。
これらの方法で用いられるアルカリ成分及び無機過酸化物については水溶液として用いるのが好ましく、濃度はいずれも1〜60重量%、中でも5〜30重量%の範囲であるのが好ましい。濃度が60重量%を超えると目的物の過酸化物(I)の収率が低下するし、また1重量%未満では反応時間が長くなり、しかも収率も低下する傾向が見られる。
【0013】
これらの方法における反応条件については、各種原料の種類や使用割合などにより変動するが、通常、圧力は常圧が用いられ、反応温度は−30〜50℃、好ましくは−20〜10℃の範囲が用いられる。この反応温度が−30℃未満では反応時間が長くなるし、また50℃を超えると反応時の圧力が高くなりすぎるなど反応系の制御(反応操作)が困難となるので好ましくない。また、反応時間は通常0.5〜20時間の範囲で選ばれるが、実用的には0.5〜10時間となるように条件を設定するのが望ましい。
【0014】
また、これらの方法においては、過酸化物(I)に対応する酸ハロゲン化物を溶解しうる有機溶媒を用いるのが好ましい。
このような有機溶媒としてはハロゲン化脂肪族溶媒、ハロゲン化芳香族溶媒が特に好ましい。具体的には例えば、塩化メチレン、クロロホルム、2‐クロロ‐1,2‐ジブロモ‐1,1,2‐トリフルオロエタン、1,2‐ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2‐ジブロモテトラフルオロエタン、1,1‐ジフルオロテトラクロロエタン、1,2‐ジフルオロテトラクロロエタン、フルオロトリクロロメタン、ヘプタフルオロ‐2,3,3‐トリクロロブタン、1,1,1,3‐テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1‐トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロキシレン、ペンタフルオロベンゼン等を挙げることができ、特に工業的には1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、あるいはこれらを任意の割合で混合した混合溶媒〔例えば旭硝子社製、AK−225(1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパンと1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパンとの混合溶媒)〕が好適である。
【0015】
本発明の過酸化物(I)すなわちペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドは、ペルフルオロデカリル基を有するため10時間選定半減期温度が通常のフッ素系の有機過酸化物に比べて低いのでラジカル反応活性が非常に高く、エチレン性重合基をもつモノマー、中でもビニル基、そのアルキル置換体、そのハロゲン置換体などのα,β‐エチレン性不飽和結合を有する基をもつモノマー、特に後記一般式(VI)や一般式(VII)のモノマーの重合開始剤、特にラジカル重合開始剤として有用である。
【0016】
そして、このようなモノマーを1種又は2種以上用い、これをペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドと反応させ、好ましくはさらに重合させることによって通常前記一般式(II)で表わされる、両末端にペルフルオロデカリル基をもつ化合物、好ましくはホモポリマー又はコポリマーからなる重合体を製造することができる。この際、片方の末端にペルフルオロデカリル基をもつ化合物が副生することもある。
【0017】
この一般式(II)の化合物の中でも、特に一般式
Rf−(CH2CR1R2)m−(CH2CR3R4)n−Rf (V)
{式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を、R1及びR3は同一であるかあるいは互いに異なる、水素原子又はアルキル基を、R2及びR4は互いに異なるものであって、ピペリジノ基、1‐ピロリジニル基、ハロゲン原子、シアノ基、−SiRaRa′Ra″(ここで、Ra、Ra′、Ra″は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4の、アルコキシ基又はアルカノイルオキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子を示す)、−CO2R5又は−CONR6R7[ここで、R5、R6、R7は同一であるかあるいは互いに異なる、水素原子、炭素数1〜18の、シクロアルキル基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、グリシジル基、−D−Q(ここで、Dはウレタン結合、エステル結合、アミド結合、酸素原子又は窒素原子が介在していてもよい二価飽和炭化水素基を、Qはイソシアネート基(−NCO)又はブロック化イソシアネート基をそれぞれ示す)、−(Y1)a−(Y2−O)b−R8〔ここで、Y1、Y2は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜6のアルキレン基を、R8は水素原子、アルキル基又は−SiRbRb′Rb″(ここで、Rb、Rb′、Rb″は同一であるかあるいは互いに異なる、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルカノイルオキシ基又は水素原子を示す)、aは0又は1を、bは0〜20の整数をそれぞれ示す〕、又は炭素数1〜20の、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基又はジアルキルアミノアルキル基又はそれらのアンモニウム塩、シアノアルキル基、アルキルチオアルキル基、アルキルホスホニウム基、ホスホアルキル基、又はグリシジルアルキル基をそれぞれ示し、さらにR6及びR7は互いに結合してそれらが結合するNとともに複素環を形成してもよい]、−OCOR5(ここで、R5は前記と同じ意味を有する)、又は−Y1−(O−Y2)b−R9(ここで、Y1、Y2は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜6のアルキレン基を、R9は水酸基又はアルコキシ基を、bは0〜20の整数をそれぞれ示す)を、m、nは0〜5000(ただし、m+n≠0)をそれぞれ示す}
で表わされるもの(以下、化合物Pともいう)が好ましい。
【0018】
上記一般式(V)における符号中、Y1のアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などの炭素数1〜3のアルキレン基が、Y2のアルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基がそれぞれ好ましく、式:−(Y1)a−(Y2−O)b−R8で示される基としては−SiRbRb′Rb″や、−Y1−SiRbRb′Rb″や、−(Y2−O)d−R8(ここで、dは1〜20の整数である)、中でもポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基又はポリ(混合オキシエチレン−オキシプロピレン)基やこれらの末端水酸基を−OSiRbRb′Rb″又はアルコキシ基で置換した基が、式:−Y1−(O−Y2)b−R9で示される基としてはY1がメチレン基であり、残基はポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基又はポリ(混合オキシエチレン−オキシプロピレン)基である基やその末端水酸基をアルコキシ基で置換した基がそれぞれ好ましい。
【0019】
また、式:−D−Qで示される基は、ウレタン結合、酸素原子又は窒素原子が介在していてもよい、イソシアネート基で置換された飽和炭化水素基や、そのイソシアネート基がイソシアネートブロック剤でブロック化されたものであって、Dにおける二価飽和炭化水素基としてはアルキレン基が好ましく、このようなものとしてはウレタン結合、酸素原子又は窒素原子が介在していてもよい、イソシアナトアルキル基やブロック化イソシアナトアルキル基、中でもイソシアナトアルキル基や、イソシアナトアルキルアミノカルボニルオキシアルキル基(例えば式;
−CH2CH2−O−CO−NHCH2CH2NCO
で表わされる基など)や、それらのブロック化されたものなどが挙げられる。
【0020】
イソシアネートブロック剤は、遊離のイソシアネート基に作用してその反応性を抑制しうるもの、例えばイソシアネート基と反応して遊離のイソシアネート基をなくするものなどであって、適当な条件下、例えば加熱条件下や触媒存在下で、イソシアネート基を生成させるなどしてイソシアネート基の反応性を復元させるものであれば特に限定されないが、好ましくはフェノール系、アルコール系、イミン系、オキシム系、ラクタム系、活性メチレン系の活性水素基含有化合物が用いられる。
【0021】
また、−SiRaRa′Ra″や−SiRbRb′Rb″としては、例えばオルガノシラン、オルガノハロゲンシラン、オルガノシラノール、オルガノアルコキシシラン、オルガノシロキサン、オルガノシリコンエステル、オルガノシラザンなどの有機ケイ素化合物の残基等が挙げられるが、中でもオルガノシリル基、オルガノハロゲノシリル基、オルガノシロキシ基が好ましい。
【0022】
化合物Pは、一般式
CH2=CR1R2 (VI)
及び
CH2=CR3R4 (VII)
{式中、R1及びR3は同一であるかあるいは互いに異なる、水素原子又はアルキル基を、R2及びR4は互いに異なるものであって、ピペリジノ基、1‐ピロリジニル基、ハロゲン原子、シアノ基、−SiRaRa′Ra″(ここで、Ra、Ra′、Ra″は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4の、アルコキシ基又はアルカノイルオキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子を示す)、−CO2R5又は−CONR6R7[ここで、R5、R6、R7は同一であるかあるいは互いに異なる、水素原子、炭素数1〜18の、シクロアルキル基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、グリシジル基、−D−Q(ここで、Dはウレタン結合、エステル結合、アミド結合、酸素原子又は窒素原子が介在していてもよい二価飽和炭化水素基を、Qはイソシアネート基(−NCO)又はブロック化イソシアネート基をそれぞれ示す)、−(Y1)a−(Y2−O)b−R8〔ここで、Y1、Y2は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜6のアルキレン基を、R8は水素原子、アルキル基又は−SiRbRb′Rb″(ここで、Rb、Rb′、Rb″は同一であるかあるいは互いに異なる、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルカノイルオキシ基又は水素原子を示す)、aは0又は1を、bは0〜20の整数をそれぞれ示す〕、又は炭素数1〜20の、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基又はジアルキルアミノアルキル基又はそれらのアンモニウム塩、シアノアルキル基、アルキルチオアルキル基、アルキルホスホニウム基、ホスホアルキル基、又はグリシジルアルキル基をそれぞれ示し、さらにR6及びR7は互いに結合してそれらが結合するNとともに複素環を形成してもよい]、−OCOR5(ここで、R5は前記と同じ意味を有する)、又は−Y1−(O−Y2)b−R9(ここで、Y1、Y2は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜6のアルキレン基を、R9は水酸基又はアルコキシ基を、bは0〜20の整数をそれぞれ示す)をそれぞれ示す}
で表わされるモノマーの中から選ばれた少なくとも1種を一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させることにより製造することができる。
【0023】
化合物Pの製造方法において用いられる前記一般式(VI)や一般式(VII)のモノマーとしては、ビニル系モノマー、中でも(メタ)アクリル酸又はそのエステルやアミドなどの酸誘導体が好ましい。(メタ)アクリレート型ビニル系モノマーとして遊離イソシアネート基を有するものも用いられるが、それよりはポットライフを延長させたり、使用時に一液化し取扱性を向上させるために、前記イソシアネートブロック剤、好ましくはフェノール系、アルコール系、イミン系、オキシム系、ラクタム系、活性メチレン系の活性水素基含有化合物と反応させてイソシアネート基をブロック化したものを用いるのが好ましい。
【0024】
この一般式(VI)や一般式(VII)のモノマーとしては、例えば以下のものが挙げられる。
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、2‐エチルヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、アジピン酸モノビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、サリチル酸ビニル、m‐ヒドロキシ安息香酸ビニル、p‐ヒドロキシ安息香酸ビニル、p‐ジメチルアミノ安息香酸ビニル、p‐メチル安息香酸ビニル、n‐吉草酸ビニル、イソ吉草酸ビニル、D,L‐2‐メチル酪酸ビニル、モノブロモ酢酸ビニル、2,2‐ジメチル酪酸ビニル、2,2‐ジメチルペンタン酸ビニル、2‐エチル‐2‐メチル酪酸ビニル、α‐ナフテン酸ビニル、β‐ナフテン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、モノクロロ安息香酸ビニル、パーサティック酸ビニル、安息香酸ビニル、p‐t‐ブチル安息香酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸‐t‐ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸‐n‐ブチル、(メタ)アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルカルビトール、(メタ)アクリル酸プロピルカルビトール、(メタ)アクリル酸ブチルカルビトール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐クロロプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2‐(6‐ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,3‐エポキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジメチルクロロビニルシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリメチルビニルシラン、トリエチルビニルシラン、トリ‐t‐ブトキシビニルシラン、トリ(エトキシメトキシ)ビニルシラン、エトキシジエチルビニルシラン、(ビニルジメチルシリル)酢酸メチル、ジエチルメチルビニルシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルジアセトキシメチルシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリメチルシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリ‐t‐ブトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルジエチルメチルシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルジアセトキシメチルシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリメチルシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリ‐t‐ブトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルジエチルメチルシラン、N‐(3‐メタクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルジメチルエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメチルシラン、O‐メタクリロイルオキシ(ポリエチレンオキシ)トリメチルシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、3‐メタクリロイルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、(2‐アクリロイルオキシエトキシ)トリメチルシラン、N‐3‐(アクリロイルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3‐アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、アクリロイルオキシトリメチルシラン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、アクリロニトリル、臭化ビニル、N‐ビニルカプロラクタム、N‐ビニルカルバゾール、4‐ビニルピリジン塩酸塩、2‐ビニルピリジン塩酸塩、1‐ビニル‐2‐ピロリドン、N‐ビニルピペリドン、5‐エチル‐2‐ビニルピリジン塩酸塩、2‐メチル‐5‐ビニルピリジン塩酸塩、2‐イソプロペニルピリジン塩酸塩、アリルアルコール及びそのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、アリルアミン塩酸塩、グリセリンモノアリルエーテル、アミノエチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、フェニルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミノメチルメタクリレート、N‐ビニルエチルアミン、N‐アセチルビニルアミン、アクリルアミン、2‐アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、2‐ヒドロキシ‐3‐メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、N‐アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、(メタ)アクリロイルモルホリン、アクリルアミド、N‐イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジエチル(メタ)アクリルアミド、2‐アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、N,N‐ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N‐2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、p‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、α‐メチロール(メタ)アクリルアミド、トリ‐n‐ブチル(2‐メタクリロイルオキシエチル)ホスホニウムクロリド、トリオクチル(4‐ビニル)ホスホニウムクロリド、2‐(メタ)アクリロイルエチルリン酸、N,N,N′,N′‐テトラキス(β‐ヒドロキシエチル)エチレンジアミンアクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、イソシアネートペンチル(メタ)アクリレート、イソシアネートヘキシル(メタ)アクリレート、1‐メチル‐2‐イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、1,1‐ジメチル‐2‐イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、これらイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートのブロック化付加物、活性水素基含有ビニル系モノマーと多官能イソシアネート化合物との反応生成物などを挙げることができる。
【0025】
上記イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートのブロック化付加物としては、例えばイソシアネートエチルメタクリレートブチルウレタン、イソシアネートエチルメタクリレートオクチルウレタン、イソシアネートエチルメタクリレート−カプロラクタム付加物、イソシアネートエチルメタクリレート−ブチロラクタム付加物、イソシアネートエチルメタクリレート−メチルエチルケトオキシム付加物(商品名、昭和電工社製、「カレンズMOI−BM」)などが挙げられる。
【0026】
上記の活性水素基含有ビニル系モノマーと多官能イソシアネート化合物との反応生成物において、原料として用いられる活性水素基含有ビニル系モノマーとしては、好ましくは水酸基含有ビニル系モノマー、例えば2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,3‐ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐クロロプロピル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルセルロース(メタ)アクリレート、N‐2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、p‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド等が用いられる。
その他、アミノ基含有ビニル系モノマー、メルカプト基含有ビニル系モノマーも用いることができる。
【0027】
また、同じく原料として用いられる多官能イソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4‐トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、p‐フェニレンジイソシアネート、4,4′‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′‐ジメチルジフェニル‐4,4′‐ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、m‐キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5‐ナフタレンジイソシアネート、トランス‐1,4‐シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4‐シクロヘキシルイソシアネート)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のジイソシアシアネート化合物や、トリフェニルメタントリイソシアネート、リジントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等の3個以上のイソシアシアネート基を有する化合物からなるモノマーや、そのポリマーなどが挙げられ、またこれらの各種変性体や付加物、例えばウレタン変性体、アロファネート変性体、ビウレット変性体、カルボジイミド変性体、ウレトニミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、アシル尿素変性体、トリメチロールプロパン付加物などが挙げられる。
これらの原料は単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記の活性水素基含有ビニル系モノマーと多官能イソシアネート化合物との反応生成物としては、例えば水酸基含有ビニル系モノマーとジイソシアネート化合物との反応生成物、中でもこれら原料をほぼ等モル比で反応させて得たウレタン結合含有化合物などが挙げられる。
【0028】
前記一般式(II)の化合物、中でも化合物Pの製法において、過酸化物(I)すなわちペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドと、エチレン性重合基をもつモノマー、中でも前記一般式(VI)のモノマー(以下モノマーAともいう)及び/又は前記一般式(VII)のモノマー(以下モノマーBともいう)とを反応させる際、モノマーは全体として過酸化物(I)に対しモル比で0.1〜5000、特に0.5〜1000の範囲とするのが好ましい。この比が0.1未満では過酸化物(I)の自己分解に起因する生成物が大量に発生するし、また5000を超えると、目的化合物の収率が低下するので好ましくない。
モノマーAとモノマーB(少なくとも2種、好ましくは2種のモノマー)を用いる場合には各モノマーの使用割合については任意としうるが、モノマーBのみがイソシアネート基やトリアルコキシシリル基等の反応活性基をもつ場合には、モノマーAがモノマーBに対しモル比で100を超えない範囲、中でも20を超えない範囲とするのが好ましい。この比が100を超えると、化合物中に導入される活性基の割合が小さくなり、基材、特にその表面への結合力や吸着性が低下するからである。
【0029】
また、この過酸化物に対するモノマーのモル比を調整することにより、得られる生成物の分子量を約900〜1,000,000、好ましくは約950〜100,000に調節することができる。すなわち、例えばこの比を小さくして、仕込みモル量について過酸化物の方をモノマーより高くすると低分子量の目的化合物を得ることができるし、またこの比を大きくして、仕込みモル量について過酸化物の方をモノマーより低くすると高分子量の目的化合物を得ることができる。
【0030】
上記方法における反応条件については、各種原料の種類や使用割合などにより変動するが、通常、圧力は常圧が用いられ、反応温度は−20〜150℃、好ましくは0〜100℃の範囲が用いられる。この反応温度が−20℃未満では反応時間が長くなるし、また150℃を超えると反応時の圧力が高くなりすぎて反応系の制御(反応操作)が困難となるので好ましくない。また、反応時間は通常0.5〜20時間の範囲で選ばれるが、実用的には1〜10時間となるように条件を設定するのが望ましい。
【0031】
このようにして、ペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドと前記モノマーを反応させることにより、目的のペルフルオロデカリル基含有化合物を直接一段階反応で得ることができるが、反応をより円滑に行うために有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0032】
このような有機溶媒としてはハロゲン化脂肪族溶媒、ハロゲン化芳香族溶媒が特に好ましい。具体的には例えば、塩化メチレン、クロロホルム、2‐クロロ‐1,2‐ジブロモ‐1,1,2‐トリフルオロエタン、1,2‐ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2‐ジブロモテトラフルオロエタン、1,1‐ジフルオロテトラクロロエタン、1,2‐ジフルオロテトラクロロエタン、フルオロトリクロロメタン、ヘプタフルオロ‐2,3,3‐トリクロロブタン、1,1,1,3‐テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1‐トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロキシレン、ペンタフルオロベンゼン等を挙げることができ、殊に工業的には1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、あるいはこれらを任意の割合で混合した混合溶媒〔例えば旭硝子社製、AK−225(1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパンと1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパンとの混合溶媒)〕が好適である。
前記溶媒を使用する場合には、通常溶媒中のペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドの濃度が0.1〜50重量%、中でも0.1〜30重量%であるのが望ましい。
【0033】
上記方法により得られる前記一般式(II)の化合物、中でも化合物Pは、蒸留法、再結晶法、再沈殿法、カラムクロマトグラフィー法、透析法等の公知の方法で精製することができる。
【0034】
また、本発明の過酸化物(I)は、上記反応の他、種々の反応性化合物、中でも芳香族化合物と反応させてペルフルオロデカリル基を導入させることができる。
こうして得られるもののうち、前記一般式(III)で示されるペルフルオロデカリル基含有化合物については、芳香族残基は重合性を有しない芳香族化合物の残基であれば特に制限されないが、好適なものとしては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、ビベンジル、ナフタレン、インデン、フェナントレン、チオフェン、フラン、ピロール、ルチジン又はベンゾフランの残基、中でもベンゼン、チオフェン、フラン、トルエン、キシレン又はナフタレンなどが挙げられる。
【0035】
また、前記一般式(IV)で示されるペルフルオロデカリル基含有化合物については、芳香族残基は重合性を有する芳香族化合物またはその重合体の残基であれば特に制限されないが、好適なものとしては、例えば分子量200〜2,000,000のポリスチレンの残基等が挙げられる。
【0036】
これらのペルフルオロデカリル基含有化合物の製法においては、ペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドに対する芳香族化合物の仕込みモル比については任意の割合とすることが可能であるが、好ましくは1:0.01〜100の範囲であり、特に1:0.5〜50の範囲とするのが好ましい(なお、ポリスチレンにおいてはモノマー換算のモル比とする)。
前記原料の芳香族化合物の仕込みモル比が0.01未満では過酸化物の自己分解に起因する生成物が多量に生成するし、また100を超えると未反応物が多量に残存するので好ましくない。
【0037】
前記反応は常圧で行うことが可能であり、反応温度は−20〜150℃で、好ましくは0〜100℃の範囲であることが望ましい。この反応温度が−20℃未満では反応時間が長くなるし、また150℃を超えると反応時の圧力が高くなりすぎて反応系の制御(反応操作)が困難となるので好ましくない。また、反応時間は通常0.5〜20時間の範囲で選ばれるが、実用的には1〜10時間となるように条件を設定するのが望ましい。
【0038】
このようにして、ペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドと前記芳香族化合物を反応させることにより、目的のペルフルオロデカリル基含有化合物を直接一段階反応で得ることができるが、反応をより円滑に行うために有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0039】
このような有機溶媒としてはハロゲン化脂肪族溶媒、ハロゲン化芳香族溶媒が特に好ましい。具体的には例えば、塩化メチレン、クロロホルム、2‐クロロ‐1,2‐ジブロモ‐1,1,2‐トリフルオロエタン、1,2‐ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2‐ジブロモテトラフルオロエタン、1,1‐ジフルオロテトラクロロエタン、1,2‐ジフルオロテトラクロロエタン、フルオロトリクロロメタン、ヘプタフルオロ‐2,3,3‐トリクロロブタン、1,1,1,3‐テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1‐トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロキシレン、ペンタフルオロベンゼン等を挙げることができ、殊に工業的には1,1,2‐トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパン、1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパン、ベンゾトリフルオリド、あるいはこれらを任意の割合で混合した混合溶媒〔例えば旭硝子社製、AK−225(1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパンと1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパンとの混合溶媒)〕が好適である。
前記溶媒を使用する場合には、通常溶媒中のペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドの濃度が0.1〜50重量%、中でも0.1〜30重量%であるのが望ましい。
【0040】
このようにして得られる前記一般式(III)及び一般式(IV)で示されるペルフルオロデカリル基含有化合物は、蒸留法、再結晶法、再沈殿法、カラムクロマトグラフィー法、透析法等の公知の方法で精製することができる。
【0041】
また、前記一般式(IV)の化合物としては、
一般式
【化2】
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基、xは0〜10000の整数、yは1〜10000の整数を示す)
で表わされるものが好ましい。
この化合物は、スチレンを一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させることにより製造することができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明のペルフルオロデカリンカルボニルペルオキシドは新規な化合物であり、それを有効成分とする、エチレン性重合基をもつモノマーの重合開始剤として、またそれ自体でペルフルオロデカリル基導入剤、換言すればペルフルオロデカリル化剤として有用である。
本発明の各種ペルフルオロデカリル基含有化合物も新規な化合物であり、ペルフルオロデカリル基がエステル結合のような長期間の安定性にやや難のある結合ではなく直接炭素−炭素結合により結合されているため、フッ素に起因した性質を長期間にわたり維持することができ、表面張力や屈折率が低く、耐候性、耐熱性、耐寒性、耐油性、電気絶縁性、防曇性、防汚性、耐薬品性等に優れ、従って、新規なフッ素系界面活性剤として有用であり、さらには表面処理剤や、塗料や、光学レンズ、プラスチック光ファイバー、眼鏡用レンズ、ガラス器具等の表面材料や、化粧品等の原料として用いられる。
また、本発明の製造方法により各種ペルフルオロデカリル基含有化合物が反応触媒や特殊な装置を使用せずに一段階反応で容易に短時間で収率良く得られる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
化合物の分析手段については、IRスペクトル分析には島津製作所製FT−IR8200PC型を用い、NMRスペクトルにはバリアン社製Unityplus500(500MHz)を用いた。
また、分子量測定には、島津製作所製高速液体クロマトグラフィーLC−6AD(示差屈折率検出器:同RID−6A、カラム:SHODEX製GPC KF−802.5)を用いて標準プルランの校正曲線により化合物の分子量を測定した。
また、表面張力測定には協和界面化学製表面張力計CBVP−A3型を用いた。
また、実施例3〜8で得られる重合体A〜Fについては1H−NMR測定に溶媒としてクロロホルム−d1(重クロロホルム)(関東化学製、NMR用、化合物A、B、C、E、Fに対し使用)又はジメチルスルホキシド−d6(関東化学製、NMR用、化合物Dに対し使用)を用いた。
なお、FT−IRの測定単位はcm-1、NMRの測定単位(δ)はppmである。
【0044】
合成例1
蒸留装置を備えた200mlの反応器に、α‐ペルフルオロデカリンカルボン酸48.9g、三塩化ホスホリル11.1g及びジメチルホルムアミド3.70gを仕込み、70℃で20分加熱しながら反応させたのち、冷却して反応を終了させた。
次いで、得られた反応液を再度加熱しながら減圧蒸留し、87〜90℃/15mmHgにおいて主留分を得たのち、これを硫酸マグネシウムで乾燥後、吸引ろ過してα‐ペルフルオロデカリンカルボン酸クロリド22.8g(収率45%)を得た。このもののIR吸収スペクトルでは、上記原料の−OH基に起因するものが消失し、また−C=O基に起因するものは上記原料における1786cm-1から1805cm-1にシフトしていた。
【0045】
合成例2
α‐ペルフルオロデカリンカルボン酸48.9gをβ‐ペルフルオロデカリンカルボン酸4.89gに、三塩化ホスホリル及びジメチルホルムアミドの用量をそれぞれ1.2g及び0.4gに、反応条件を80℃で150分の加熱に変えた以外は合成例1と同様にして反応させ、分離処理してβ‐ペルフルオロデカリンカルボン酸クロリド1.45g(収率28%)を得た。このもののIR吸収スペクトルでは、上記原料の−OH基に起因するものが消失し、また−C=O基に起因するものは上記原料における1786cm-1から1803cm-1にシフトしていた。
【0046】
実施例1
撹拌器、冷却器、温度制御装置を備えた300mlの反応器に、水酸化ナトリウム0.72g及び水6.52gを加えて十分に溶解させたのち、これにAK−225(旭硝子社製、1,1,1,2,2‐ペンタフルオロ‐3,3‐ジクロロプロパンと1,1,2,2,3‐ペンタフルオロ‐1,3‐ジクロロプロパンの混合溶媒)100gを加えた。
この反応器を、塩化ナトリウムを添加した氷浴で−5℃に冷却したのち、これに−5℃に冷却した過酸化水素2.04gを加え、次いで合成例1で得たα‐ペルフルオロデカリンカルボン酸クロリド5.01gをAK−225溶媒5.00gに完全に溶解し、−5℃に冷却した溶液を−9〜−3℃で7分間かけて滴下したのち、−5〜0℃で30分間反応させた。反応液を冷水300mlで洗浄し、水を換えて同様の洗浄操作を数回繰り返して十分に洗浄したのち、分液漏斗により下層を分離して、式
【化3】
で表わされるペルフルオロ有機過酸化物のビス(ペルフルオロデカリン‐1‐カルボニル)ペルオキシド(以下過酸化物Xという)2.19g(収率45%)を得た。このもののIR吸収スペクトルでは−C=O基に起因するものが1865cm-1及び1827cm-1に検出された。
また、このものの熱分解速度は次のようにして測定した。
すなわち、このものを、窒素で十分に置換された反応管内において、一定時間、一定温度で熱分解し、次いでこれを飽和ヨウ化カリウム水溶液1ml、イソプロピルアルコール10ml及び酢酸1mlの混合液に加え3分間加熱したのち、0.01Nチオ硫酸ナトリウム標準溶液で滴定し、過酸化物の残存量を測定した。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
これより、本発明過酸化物は10時間選定半減期温度が8.2℃であり、温和な条件でも効率的なα‐ペルフルオロデカリル基導入が可能であることが分った。
【0049】
実施例2
合成例1で得たα‐ペルフルオロデカリンカルボン酸クロリド5.01gを合成例2で得たβ‐ペルフルオロデカリンカルボン酸クロリド5.01gに代えた以外は実施例1と同様に反応させ、分離処理して、式
【化4】
で表わされるビス(ペルフルオロデカリン‐2‐カルボニル)ペルオキシド(以下過酸化物Yという)1.95g(収率40%)を得た。このもののIR吸収スペクトルでは−C=O基に起因するものが1860cm-1及び1825cm-1に検出された。
【0050】
実施例3
撹拌器、冷却器、温度制御装置を備えた300mlの反応器に、アクリル酸0.77gを加え、これに実施例1で得られた過酸化物X1.04gをAK−225溶媒100gに溶解した溶液を加え、窒素気流下、45℃で5時間反応させた。得られた反応液を吸引ろ過し、真空乾燥して、式
【化5】
で表わされる微黄色のペルフルオロデカリル基含有重合体(以下、化合物Aという)0.93g(収率54%)を得た。
このものの数平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲルろ過法により求めると6040(2.95)であった。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR;3250(OH),1726(C=O),1243(CF2)
1H−NMR;1.40〜2.10(CH2),2.10〜2.82(CH)
【0051】
実施例4
過酸化物Xを過酸化物Yに代えた以外は実施例3と同様にして、式
【化6】
で表わされる微黄色のペルフルオロデカリル基含有重合体(以下、化合物Bという)0.26g(収率15%)を得た。
このものの数平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲルろ過法により求めると4560(3.11)であった。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR;3245(OH),1720(C=O),1238(CF2)
1H−NMR;1.38〜2.15(CH2),2.16〜2.88(CH)
【0052】
実施例5
アクリル酸0.77gをジアセトンアクリルアミド〔N‐(1,1‐ジメチル‐3‐オキソブチル)アクリルアミド〕1.40g、過酸化物Xの仕込み量を0.81gに変えた以外は実施例3と同様にして反応させた。得られた化合物をメタノール−水系で再沈殿させ、吸引ろ過し、真空乾燥して、式
【化7】
で表わされる淡黄色のペルフルオロデカリル基含有重合体(以下、化合物Cという)1.93g(収率90%)を得た。
このものの数平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲルろ過法により求めると3710(2.33)であった。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR;3369(NH),1711,1653(C=O),1252(CF2)
1H−NMR;1.00〜2.03(CH2),1.34(CH3),2.03〜2.78(CH2,CH)
【0053】
実施例6
アクリル酸0.77gを3‐メタクリロキシ‐2‐ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド1.10gに、過酸化物Xの仕込み量を0.30gに変えた以外は実施例2と同様にして反応させた。得られた化合物をメタノール−アセトン系で再沈殿させ、吸引ろ過し、真空乾燥して、式
【化8】
で表わされる淡黄色のペルフルオロデカリル基含有重合体(以下、化合物Dという)0.64g(収率47%)を得た。
このものの数平均分子量は、溶媒にメタノールを用い、ゲルろ過法により求めると4950(1.95)であった。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR(cm-1); 3388(OH),1712(C=O),1249,1217(CF2)
1H−NMR; 0.60〜2.00(CH3,CH2,CH),2.82〜3.31(N+CH3),4.14〜4.60(CH2)
【0054】
実施例7
アクリル酸0.77gをジメチルアクリルアミド1.06gに、過酸化物Xの仕込み量を1.04gに変えた以外は実施例2と同様にして反応させた。得られた化合物をメタノール−水系で再沈殿させ、吸引ろ過し、真空乾燥して、式
【化9】
で表わされる淡黄色のペルフルオロデカリル基含有重合体(以下、化合物Eという)1.73g(収率86%)を得た。
このものの数平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲルろ過法により求めると1230(2.12)であった。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR(cm-1); 3430〔C(=O)NMe2〕,1643(C=O),1211(CF2)
1H−NMR; 1.04〜2.00(CH2),2.26〜3.36(CH3,CH)
【0055】
実施例8
撹拌器、冷却器、温度制御装置を備えた300mlの反応器に、イソシアネートエチルメタクリレート−メチルエチルケトンオキシム付加物(商品名、昭和電工社製、「カレンズMO1−BM」)7.26g及びジメチルアクリルアミド(商品名、興人社製、「DMAA」)2.97gの混合物を仕込み、過酸化物X9.74gをAK−225溶媒100gに溶解した溶液を加え、窒素気流下、45℃で5時間反応させた。このようにして得られた化合物をメタノール−ヘキサン系で再沈殿させ、吸引ろ過し、真空乾燥して、式
【化10】
で表わされるペルフルオロデカリル基含有重合体(以下、化合物Fという)12.98g(収率68%)を得た。
このものの数平均分子量は、溶媒にテトラヒドロフランを用い、ゲルろ過法により求めると4110(2.87)であった。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR;1658(C=O),1726(−N=C−),3350(NH),1235(CF2)
1H−NMR;4.12,3.52(CH2),0.80〜3.21(CH2,CH3)
また、共重合比を溶媒に重クロロホルムを用い、前記装置による1H−NMRにより算出した結果、x:y=53:47であった。
【0056】
実施例3〜8の結果より、本発明過酸化物のビス(ペルフルオロデカリンカルボニル)ペルオキシドがエチレン重合性の重合基を有する化合物のラジカル重合開始剤として有用であることが分る。
【0057】
実施例3〜8で得られた化合物について、各種溶媒に対する溶解性を調べ、次の基準で評価した。その結果を表2に示す。
○:溶解する。
△:溶解するものの、白濁する。
×:溶解しない。
【0058】
【表2】
【0059】
表2より、これらの重合体は幅広い溶媒に溶解することが分かった。
【0060】
(2)表面張力特性
実施例3で得られた重合体Aを下記の表に示すように種々の濃度で水に溶解し、25℃における表面張力を前記装置を用いウィルヘルミー法により測定した。
その結果を表3に示す。
【表3】
表3より、本発明化合物は、水の表面張力を効率よく低下させることが分かった。
【0061】
実施例9
撹拌器、冷却器、温度制御装置を備えた300mlの反応器に、ベンゼン0.78gを仕込み、過酸化物X19.48gをAK−225溶媒100gに溶解した溶液を加え、窒素気流下、45℃で8時間反応させた。このようにして得られた化合物を水300ml、5%炭酸ナトリウム水溶液300ml、水300mlの順序で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧蒸留して、α‐ペルフルオロデカリルベンゼン1.82g(収率35%)を得た。
このもののスペクトルデータを以下に示す。
FT−IR;742,3000(CH),1235(CF2)
1H−NMR;7.21〜7.66(C6H5)
本化合物は、新規なフッ素系溶媒として有用である。
【0062】
実施例10
過酸化物X0.49gをAK−225溶媒に溶解した溶液10gを、ポリスチレン(0.5g)(スチレンモノマー単位として5ミリモル)を塩化メチレンに溶解した溶液10gに加え、窒素気流下45℃で10時間反応させた。得られた粗生成物を、水、5%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルム−メタノール系で再沈殿させて式
【化11】
で表わされるα‐ペルフルオロデカリル基が導入されたポリスチレン0.40gを得た。
このものの数平均分子量は110000(Mw/Mn=2.21)、上記式中のx及びyから次の数式
〔y/(x+y)〕×100
により求めたペルフルオロデカリル基の導入化率は6%であった。
また、導入化後のFT−IRスペクトルデータには、CFに起因する1278cm-1のピークが検出された。
これより、本発明の新規なビス(ペルフルオロデカリン‐1‐カルボニル)ペルオキシド)はα‐ペルフルオロデカリル基導入剤として有用であることが分る。
Claims (8)
- 一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物。 - Rfが1‐ペルフルオロデカリル基である請求項1記載のペルフルオロデカリル基含有過酸化物。
- 請求項1又は2記載のペルフルオロデカリル基含有過酸化物を有効成分とする、エチレン性重合基をもつモノマー用重合開始剤。
- 請求項1又は2記載のペルフルオロデカリル基含有過酸化物からなるペルフルオロデカリル基導入化剤。
- 一般式
RfC(=O)X
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基、Xはハロゲン原子を示す)
で表わされるペルフルオロデカリンカルボン酸ハライドを過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム及び過酸化バリウムの中から選ばれた少なくとも1種と反応させることを特徴とする請求項1又は2記載のペルフルオロデカリル基含有過酸化物の製造方法。 - 一般式
CH2=CR1R2
及び
CH2=CR3R4
{式中、R1及びR3は同一であるかあるいは互い異なる、水素原子又はアルキル基を、R2及びR4は互いに異なるものであって、ピペリジノ基、1‐ピロリジニル基、ハロゲン原子、シアノ基、−SiRaRa′Ra″(ここで、Ra、Ra′、Ra″は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜4の、アルコキシ基又はアルカノイルオキシ基、ハロゲン原子、又は水素原子を示す)、−CO2R5又は−CONR6R7[ここで、R5、R6、R7は同一であるかあるいは互いに異なる、水素原子、炭素数1〜18の、シクロアルキル基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、グリシジル基、−D−Q(ここで、Dはウレタン結合、エステル結合、アミド結合、酸素原子又は窒素原子が介在していてもよい二価飽和炭化水素基を、Qはイソシアネート基(−NCO)又はブロック化イソシアネート基をそれぞれ示す)、−(Y1)a−(Y2−O)b−R8〔ここで、Y1、Y2は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜6のアルキレン基を、R8は水素原子、アルキル基又は−SiRbRb′Rb″(ここで、Rb、Rb′、Rb″は同一であるかあるいは互いに異なる、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルカノイルオキシ基又は水素原子を示す)、aは0又は1を、bは0〜20の整数をそれぞれ示す〕、又は炭素数1〜20の、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基又はジアルキルアミノアルキル基又はそれらのアンモニウム塩、シアノアルキル基、アルキルチオアルキル基、アルキルホスホニウム基、ホスホアルキル基、又はグリシジルアルキル基をそれぞれ示し、さらにR6及びR7は互いに結合してそれらが結合するNとともに複素環を形成してもよい]、−OCOR5(ここで、R5は前記と同じ意味を有する)、又は−Y1−(O−Y2)b−R9(ここで、Y1、Y2は同一であるかあるいは互いに異なる、炭素数1〜6のアルキレン基を、R9は水酸基又はアルコキシ基を、bは0〜20の整数をそれぞれ示す)}で表わされるモノマーの中から選ばれた少なくとも1種を一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させて、一般式
Rf−(CH2CR1R2)m−(CH2CR3R4)n−Rf
〔式中、Rf、R1、R2、R3及びR4は前記と同じ意味を有し、m、nは0〜5000(ただし、m+n≠0)をそれぞれ示す〕
で表わされるペルフルオロデカリル基含有化合物を製造することを特徴とするペルフルオロデカリル基含有化合物の製造方法。 - ベンゼンを一般式
RfC(=O)OO(O=)CRf
(式中、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基を示す)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有過酸化物と反応させて、一般式
Ar−Rf
(式中、Arはベンゼンの残基であり、Rfは1‐ペルフルオロデカリル基及び/又は2‐ペルフルオロデカリル基で芳香環の炭素原子に結合している)
で表わされるペルフルオロデカリル基含有化合物を製造することを特徴とするペルフルオロデカリル基含有化合物の製造方法。
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