JP4601000B2 - 特定物質観察装置及び特定物質観察方法 - Google Patents
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Description
即ち、観察を行うにあたって、大気中や溶液中に存在する各種の特定物質を、その都度状況に応じて基板等に固定する必要があるので、ノウハウを必要とする準備作業が要求されていた。この固定作業には、経験が必要な上、時間と手間がかかるものであった。
また、細胞構造を固定するので、時間の経過と共に刻々と変化する細胞に関しては、経時的な状態観察を行うことができず、連続的な解析をすることができなかった。
更に、生細胞は、上述したように細胞構造が固定されているので、生きたままの状態での電気的な解析を行うことができない。よって、電気的な反応をリアルに観察することができなかった。
また、別の目的としては、僅かな電流や電圧であっても測定でき、特定物質の電気的な解析を高精度に行うことができる特定物質観察装置を提供することである。
本発明に係る特定物質観察装置は、粒状の特定物質を基板上で観察する特定物質観察装置であって、前記基板に対して面が対向するように配置され、基端側から先端側に向けて一方向に延びた平板状のレバー部と、該レバー部の先端に形成された開口部と、該レバー部を片持ち状態に支持するホルダ部と、前記レバー部の撓みを測定する撓み測定手段とを有するプローブと、先端に探針を有するカンチレバーと、前記カンチレバーと前記プローブとを、前記基板表面に平行なXY方向と基板表面に垂直なZ方向とに向けて、それぞれ移動させる移動手段と、前記開口部内に前記特定物質を嵌め込んだ状態で、該特定物質を前記基板に押し付けて一時的に固定させると共に、一時的に固定された特定物質の表面上を前記探針で走査するように、前記移動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
次いで、観察工程が終了した後、固定解除工程を行う。即ち、レバー部を基板から離間するように、プローブを3方向に適宜移動させる。これにより、開口部内に嵌め込まれた状態で基板に押し付けられていた特定物質は、一時的な固定から開放される。
特に、上述したように、特定物質を一時的に固定した状態で観察を行うので、細胞構造が固定された状態の生細胞を観察するしかなかった従来の方法とは異なり、生きたままの状態で生細胞を観察することができる。従って、時間の経過と共に変化する生細胞のリアルな反応を観察することができ、高精度で連続的な解析を行えると共に、細胞のより詳細な観察を行える。このように液中観察を行えるので、生細胞等、観察できる特定物質の幅を広げることができ、機能性が向上する。
即ち、開口部内に嵌め込まれて一時的に固定された特定物質は、開口部の内周面に形成された導電性膜に接触している状態となっている。よって、電圧印加手段により導電性膜を介して、生細胞に対して直接電圧を印加して電流を流すことができる。そして、電流計測手段が、生細胞を介して導電性膜と探針との間に流れた電流の計測を行う。
また、生きている状態の生細胞に対して電流を流すことができるので、例えば、細胞膜表面にあるチャネルの動きを調べることができる。特に、この電流測定と形状観察とを同時に行えるので、従来知られているパッチクランプ方式等では不可能であったチャネルの形状とチャネルの動きとを相関付けて観察することができる。これにより、チャネルの動きを詳細に解明することも可能である。このように、特定物質の電気的な解析を同時に行うことで、特定物質をより多角的に観察することができ、より詳細な解明を行うことができる。
即ち、開口部内に嵌め込まれて一時的に固定された特定物質は、開口部の内周面に形成された導電性膜に接触している状態となっている。これにより、電圧印加手段により導電性膜を介して生細胞に対して直接電圧を印加して、電流を流すことができる。そして、電位計測手段が、参照電極の電位を基準として、生細胞の表面電位と導電性膜との電位差を計測する。
特に、導電性膜から生細胞に対して直接且つ局所的に電流を流すので、生細胞の局所的な表面電位を計測することができるので、生細胞の電気的な解析を高精度に行うことができる。
本実施形態の特定物質観察装置1は、粒状の特定物質である生細胞Sを、基板2上で観察する装置であって、図1に示すように、プローブ3と、先端に探針4を有するカンチレバー5と、該カンチレバー5とプローブ3とを、基板表面2aに平行なXY方向と基板表面2aに垂直なZ方向に向けてそれぞれ移動させる移動手段6と、該移動手段6を制御する制御手段7と、溶液W及び複数の生細胞Sを貯留すると共に、少なくともプローブ3及びカンチレバー5を溶液W内に浸した状態で収納する容器8とを備えている。
即ち、本実施形態では、溶液W内に存在する生細胞Sを液中観察する場合を例にして説明する。
レバー部20の先端部には、円形の上記開口部21が形成されている。この開口部21は、生細胞Sの最大直径よりも若干小さい大きさ(例えば、直径が数十μm〜100μmの範囲内)で形成されており、生細胞Sがレバー部20の裏面側から表面側に通過しないようになっている。
なお、開口部21の形状は、円形に限定されるものではなく、三角形状や四角形状でも良く、形状や大きさは観察対象物である特定物質に応じて、適宜変更すれば良い。
また、ホルダ部22及びレバー部20の基端側には、レバー部20の撓み量に応じて抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子25が、開口24の両側にレバー部20の長手方向に沿って設けられている。なお、このピエゾ抵抗素子25は、SOI基板2にイオン注入法や拡散法等により不純物が注入されて形成されたものである。
なお、ピエゾ抵抗素子25及び金属配線26上には、図示しない絶縁膜が成膜されており、外部と電気的に接触しないようになっている。
即ち、上述したピエゾ抵抗素子25、金属配線26及び外部接続端子27は、上記撓み測定手段23を構成している。
なお、プローブ3と同様に、ピエゾ抵抗素子43及び金属配線44上には、図示しない絶縁膜が成膜されており、外部と電気的に接触しないようになっている。
また、このZ電圧フィードバック回路37には、上述した制御部30が接続されており、該制御部30がZ電圧フィードバック回路37により上下させる信号に基づいて、生細胞Sの表面形状観察を行うようになっている。
また、制御手段7は、プローブ3のピエゾ抵抗素子25から送られてきた出力信号から、レバー部20の撓み具合を算出している。つまり、生細胞Sの押し付け力の算出を行っている。そして、レバー部20の撓み量が所定の値に達した時点で、押し付けを停止するように移動手段6の制御を行っている。これにより、必要以上の力で生細胞Sを押し付けてしまうことを防止できる。
本実施形態の生体物質観察方法は、プローブ3をXY方向及びZ方向に移動させ、開口部21内に生細胞Sを嵌め込んだ状態で、該生細胞Sを基板2に押し付けて一時的に固定する固定工程と、該固定工程後、一時的に固定された生細胞Sの表面上を探針4で走査させ、生細胞Sの表面形状を観察する観察工程と、該観察工程後、プローブ3をXY方向及びZ方向に移動させて、生細胞Sの固定を解く固定解除工程とを備えている。
また、固定工程を行う際に、制御手段7は、ピエゾ抵抗素子25から送られてきたレバー部20の出力信号に基づいて、レバー部20の押し付け力を所定の値以下となるように調整している。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
次いで、溶液W中に存在する複数の生細胞Sのうち、選択した1つの生細胞Sを一時的に固定する固定工程を行う。即ち、制御手段7は、駆動部32からXYZステージ31に電圧を印加させて、プローブ3をXY方向及びZ方向に適宜移動させる。そして、開口部21内に生細胞Sが入り込むように、レバー部20を生細胞Sの上方から被せ、そのままの状態で基板2に押さえつけるよう制御する。これにより、生細胞Sは、図4に示すように、開口部21内に嵌め込まれた状態で、レバー部20と基板2との間で押さえ付けられて一時的に固定された状態となる。
なお、本実施形態では、レバー部20の厚みの関係により、生細胞Sの上側が開口部21から露出した状態となっている。
また、観察終了後においても固定状態が続いていた従来の方法とは異なり、観察中は生細胞Sを一時的に固定するだけであるので、観察終了後にこの固定状態を解いて元の状態に戻すことができる。よって、一定時間の経過後、再度同じ生細胞Sを一時的に固定して観察することも可能である。
特に、生細胞Sを一時的に固定した状態で観察を行い、その後開放することができるので、細胞構造を固定した状態で観察するしかなかった従来の方法とは異なり、生きたままの状態で生細胞Sを観察することができる。従って、生細胞Sのリアルな反応を観察することができ、より詳細な観察を行える。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、単に生細胞Sの表面形状を観察するだけであったのに対し、第2実施形態の特定物質観察装置1は、生細胞Sの表面形状観察に加え、電気的な解析も行う点である。
また、本実施形態の特定物質観察装置50は、探針4が導電性の探針となっており、図示しない配線を介して電流計測手段53に電気的に接続されている。
即ち、図6に示すように、開口部21内に嵌め込まれて一時的に固定された生細胞Sは、開口部21の内周面に形成された導電性膜51に接触している状態となっている。よって、電圧印加手段52により導電性膜51を介して、生細胞Sに対して直接電圧を印加して電流を流すことができる。そして、電流計測手段53が生細胞Sを介して導電性膜51と探針4との間に流れた電流の計測を行う。
また、生きている状態の生細胞Sに対して電流を流すことができるので、細胞膜表面にあるチャネルの動きを調べることができる。特に、電流測定と形状観察とを同時に行えるので、従来知られているパッチクランプ方式等では不可能であったチャネルの形状とチャネルの動きとを相関付けて観察することができる。これにより、チャネルの動きを詳細に解明することも可能である。
このように、生細胞Sの電気的な解析を同時に行うことで、生細胞Sをより多角的に観察することができ、より詳細な解明を行うことができる。
この場合の特定物質観察装置60を用いた特定物質観察方法は、観察工程を行う際に、開口部21内に嵌め込まれた生細胞Sに対して、導電性膜51を介して所定の電圧を印加すると共に、参照電極61の電位を基準として、生細胞Sと導電性膜51との電位差を計測する電位計測工程を行う。この場合においても、観察を行っている探針4の近傍において、生細胞Sの局所的な表面電位を計測することができるので、同様に生細胞Sの電気的な解析を高精度に行うことができる。
即ち、図8に示すように、例えば、基板2の下側から、任意に選択した生細胞Sに向けてレーザ光Lを照射する。この際、生細胞S内で集光するように図示しないレンズ等を利用してレーザ光Lを照射する。なお、この場合においては、光学的に透明な基板2を用いる。ここで、光り、即ち、粒子である光子は、運動量を持っているので、屈折や反射によって物体に力が及ぼされる。つまり、生細胞Sで反射又は通り抜けた光子は、屈折することで運動量として変換される。この際、一部の運動量が生細胞Sに分配され、これが生細胞Sを動かす力となる。
上述したように、光りピンセット技術を利用することで、より短時間に生細胞Sの固定を行うことができ、さらに効率の良い観察を行うことができる。
W 溶液
1、50、60 特定物質観察装置
2 基板2
2a 基板表面
3 プローブ
4 探針
5 カンチレバー
6 移動手段
7 制御手段
8 容器
20 レバー部
21 開口部
22 ホルダ部
23 撓み測定手段
51 導電性膜
52 電圧印加手段
53 電流計測手段
61 参照電極
62 電位計測手段
Claims (8)
- 粒状の特定物質を基板上で観察する特定物質観察装置であって、
前記基板に対して面が対向するように配置され、基端側から先端側に向けて一方向に延びた平板状のレバー部と、該レバー部の先端に形成された開口部と、該レバー部を片持ち状態に支持するホルダ部と、前記レバー部の撓みを測定する撓み測定手段とを有するプローブと、
先端に探針を有するカンチレバーと、
前記カンチレバーと前記プローブとを、前記基板表面に平行なXY方向と基板表面に垂直なZ方向とに向けて、それぞれ移動させる移動手段と、
前記開口部内に前記特定物質を嵌め込んだ状態で、該特定物質を前記基板に押し付けて一時的に固定させると共に、一時的に固定された特定物質の表面上を前記探針で走査するように、前記移動手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする特定物質観察装置。 - 請求項1に記載の特定物質観察装置において、
前記カンチレバーは、前記探針が前記開口部上に位置した状態で前記ホルダ部に基端側が支持されていることを特徴とする特定物質観察装置。 - 請求項1又は2に記載の特定物質観察装置において、
溶液及び前記特定物質を貯留すると共に、少なくとも前記プローブ及び前記カンチレバーを溶液内に浸した状態で収納する容器を備えていることを特徴とする特定物質観察装置。 - 請求項3に記載の特定物質観察装置において、
前記探針が、導電性の探針であり、
前記開口部の内周面に形成された導電性膜と、
該導電性膜に電気的に接続され、前記開口部内に嵌め込まれた前記特定物質に対して導電性膜を介して所定の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記特定物質を介して、前記導電性膜と前記探針との間に流れる電流を計測する電流計測手段とを備えていることを特徴とする特定物質観察装置。 - 請求項3に記載の特定物質観察装置において、
前記探針が、導電性の探針であり、
前記開口部の内周面に形成された導電性膜と、
該導電性膜に電気的に接続され、前記開口部内に嵌め込まれた前記特定物質に対して導電性膜を介して所定の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記開口部の近傍に配された参照電極と、
該参照電極の電位を基準として、前記特定物質と前記導電性膜との電位差を計測する電位計測手段とを備えていることを特徴とする特定物質観察装置。 - 基板に対して面が対向するように配置され、基端側がホルダ部に片持ち状態に支持されたレバー部と、該レバー部の先端に形成された開口部とを有するプローブと、先端に探針を有するカンチレバーとを利用して、粒状の特定物質を基板上で観察する特定物質観察方法であって、
前記プローブを、基板表面に平行なXY方向及び基板表面に垂直なZ方向に移動させ、前記開口部内に前記特定物質を嵌め込んだ状態で、該特定物質を前記基板に押し付けて一時的に固定する固定工程と、
該固定工程後、一時的に固定された前記特定物質の表面上を前記探針で走査させ、特定物質の表面形状を観察する観察工程と、
該観察工程後、前記プローブを前記XY方向及び前記Z方向に移動させて、前記特定物質の固定を解く固定解除工程とを備え、
前記固定工程を行う際に、前記レバー部の撓み具合から前記押し付け力を所定の値以下となるように調整していることを特徴とする特定物質観察方法。 - 請求項6に記載の特定物質観察方法において、
前記開口部の内周面には導電性膜が形成されていると共に、前記探針が導電性の探針であり、
前記観察工程を行う際に、前記開口部内に嵌め込まれた前記特定物質に対して、前記導電性膜を介して所定の電圧を印加すると共に、特定物質を介して導電性膜と探針との間に流れる電流を計測する電流計測工程を同時に行うことを特徴とする特定物質観察方法。 - 請求項6に記載の特定物質観察方法において、
前記開口部の内周面には導電性膜が形成されていると共に、前記探針が導電性の探針であり、
前記観察工程を行う際に、前記開口部内に嵌め込まれた前記特定物質に対して、前記導電性膜を介して所定の電圧を印加すると共に、開口部の近傍に配された参照電極の電位を基準として、特定物質と導電性膜との電位差を計測する電位計測工程を同時に行うことを特徴とする特定物質観察方法。
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