JP6766351B2 - 微小物特性計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は、微小物特性計測装置に係り、更に詳しくは、微小物の特性を計測する微小物特性計測装置に関する。
近年、微小物の特性(例えば付着力、鏡像力、帯電極性、電気抵抗、誘電率等)を計測する技術の開発が盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、狭持部材に狭持された粉体と板状部材とを近接、接触、離間させることにより、粉体の付着力を計測する付着力測定装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1等の従来技術では、計測精度を向上できなかった。
本発明は、微小物を保持可能な導電性を有する保持部材と、前記保持部材に保持された前記微小物に対向する導電性を有するカンチレバーと、前記微小物を保持する保持部材及び前記カンチレバーの一方を、前記保持部材に保持された前記微小物と前記カンチレバーとが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な駆動装置と、前記保持部材及び前記カンチレバーに両極が個別に接続された電源と、前記保持部材と前記カンチレバーとが前記微小物を介して導通しているときに前記微小物に流れる電流を計測する電流計と、を備え、前記保持部材は、前記微小物を把持可能な一対のアームを有し、前記一対のアームに把持された前記微小物と前記カンチレバーとが接触しているときに、前記一対のアームの一方と前記カンチレバーが導通し、他方と前記カンチレバーが導通しない微小物特性計測装置である。
本発明によれば、計測精度を向上させることができる。
第1実施形態の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 保持部材の一例であるマイクロ/ナノピンセットを説明するための図である。 図3(A)及び図3(B)は、それぞれ保持部材の一例であるマイクロ/ナノピペットを説明するための図(その1及びその2)である。 図4(A)は、保持部材を用いて微小物を採取する状態を示す図であり、図4(B)は、保持部材により保持された微小物とカンチレバーとを対向させた状態を示す図である。 図5(A)〜図5(C)は、それぞれ微小物の鏡像力を計測する際の動作を説明するための図(その1〜その3)である。 保持部材に保持された微小物及びカンチレバーにおける電荷分布を示す図である。 保持部材に保持された微小物とカンチレバーとの距離と、微小物の鏡像力の関係を示すグラフである。 図8(A)〜図8(C)は、それぞれ微小物の付着力を計測する際の動作を説明するための図(その1〜その3)である。 微動ステージの変位とカンチレバーの作用力の関係を示すグラフである。 第2実施形態の微小物特性計測装置の概略構成(その1)を示す図である。 第2実施形態において、保持部材とカンチレバーとが微小物を介して導通しているときに微小物に印加された電圧と該微小物に流れた電流の関係を示すグラフである。 第2実施形態の微小物特性計測装置の概略構成(その2)を示す図である。 図13(A)及び図13(B)は、第3実施形態の微小物特性計測装置の概略構成を示す図(その1及びその2)である。 変形例1の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 変形例2の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 変形例3の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 変形例4の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 第4実施形態の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 図19(A)〜図19(C)は、それぞれ保持部材の振動による変位を計測するための構成例1〜3を説明するための図である。 図20(A)〜図20(C)は、それぞれ微小物の粘弾性の計測方法を説明するための図(その1〜その3)である。 貯蔵弾性率や損失弾性率を求めるためのマックスウェル模型を示す図である。 図22(A)は貯蔵弾性率を示す図であり、図22(B)は損失弾性率を示す図である。 保持部材を振動可能な振動装置を増設した例を説明するための図である。 第5実施形態の微小物特性計測装置の概略構成を示す図である。 図25(A)及び図25(B)は、それぞれ第5実施形態におけるカンチレバーの変位を測定する測定装置の構成を説明するための図(その1及びその2)である。 カンチレバーが顕微鏡視野に入ると微小物の採取が困難になることを説明するための図である。 図27(A)〜図27(C)は、それぞれ微小物の鏡像力(帯電量)を計測する手順を説明するための図(その1〜その3)である。 微小物の鏡像力を計測する原理を説明するための図である。 図29(A)〜図29(C)は、それぞれ微小物の付着力を計測する手順を説明するための図(その1〜その3)である。 図30(A)及び図30(B)は、第5実施形態の実施例1を説明するための図(その1及びその2)である。 図31(A)及び図31(B)は、第5実施形態の実施例2を説明するための図(その1及びその2)である。 水平方向ステージの位置制御の精度が計測精度に与える影響について説明するための図である。 図33(A)〜図33(C)は、それぞれ第5実施形態の実施例3を説明するための図(その1〜その3)である。 第5実施形態の実施例4を説明するための図である。
《第1実施形態》
以下に、第1実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1には、第1実施形態に係る微小物特性計測装置100の概略構成が示されている。以下では、図1等に示されるZ軸方向を鉛直方向とするXYZ3次元直交座標系を適宜用いて説明する。
微小物特性計測装置100は、一例として、微小物を保持可能な保持部材10、カンチレバー20(片持ち梁)、レーザ変位計30、固定治具40、微動ステージ50、処理装置60などを備えている。
保持部材10は、微小物を一粒ずつ保持可能な部材である。保持部材としては、図2に示されるような、微小物を両端から挟み込んで保持するマイクロ/ナノグリッパーやマイクロ/ナノピンセットと称されるものや、図3(A)及び図3(B)に示されるような、微小物を吸引することで保持(吸着)するマイクロ/ナノピペットと称されるものを用いることができる。
ここで、計測対象として適切な微小物のサイズは、保持部材10で保持可能な最大径が10nm〜1mmの範囲に入るものであり、より好適なサイズとしては最大径が1um〜100umの範囲に入るものである。微小物の具体例としては、複写機に用いられるトナー、医薬品、食料品、電子機器の構成材料に用いられる粉体や電子基板等に付着する微小異物、更には、細胞等の生体物質が考えられる。
上記粉体としては、トナー粒子の他に、例えば3Dプリンターの構成材料(数um〜数10um程度)、トナー帯電用の鉄粉(30um〜100um程度)、液晶スペーサ(数um程度)等が挙げられる。
保持部材10は、一例として、保持部材10をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に独立に移動させることが可能なXYZ3次元移動機構(以下では、「3次元移動機構」とも称する)により、微小物群が配置されたサンプリングエリア(例えば微小物が散布されている試料台もしくは微小物が付着した部材)における微小物を採取可能な採取位置(図4(A)参照)と、保持した微小物がカンチレバー20に対向する位置(ここではカンチレバー20の+Z側の位置)である計測位置(図4(B)参照)との間を移動可能となっている。保持部材10によって微小物を保持(採取)する際の保持部材10の操作は、操作部を介して手動で行われる。なお、XYZ3次元移動機構に代えて、例えば保持部材10をチルト回転可能なチルト回転機構と保持部材10をXY平面に沿って移動させるXY2次元移動機構を組み合わせたものであっても良い。XYZ3次元移動機構、チルト回転機構、XY2次元移動機構の動作は、自動でも良いし、手動でも良い。
固定治具40は、一例として、XY平面に平行な上面及び下面、YZ平面に平行な一側面(+X側の側面)を有する部材(例えば直方体形状の部材)から成り、微動ステージ50上に設置されている。
カンチレバー20は、一例として、薄い板状部材から成り、固定端側の部分が固定治具40の上面に固定され、自由端側の部分(過半部)が固定治具40上から+X側に張り出し、計測位置に位置する保持部材10に保持された微小物に対向する。
カンチレバー20としては、例えば平滑度が非常に高い原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)用のカンチレバーを使用可能であるが、計測内容に応じて、適切なバネ定数及び材質のカンチレバーを選択する必要がある。なお、通常、原子間力顕微鏡用のカンチレバーは自由端に試料をスキャンするチップが設けられているが、ここでは必ずしもチップを設ける必要はない。すなわち、チップレスカンチレバーを用いるか、もしくはチップが設けられているカンチレバーを使用する場合には、チップは微小物側でなくレーザ変位計30側に向くようにカンチレバーを固定する必要がある。なお、カンチレバー20は、平滑度が高いことが好ましく、AFM用以外のものであっても良い。
レーザ変位計30は、固定治具40の+X側の側面に、カンチレバー20に対向するように固定されている。このように、レーザ変位計30は、固定治具40を介してカンチレバー20と一体的に設けられているため、カンチレバー20の変形(反り)による変位を精度良く測定することができる。
レーザ変位計30は、必ずしも特定の製品(スペック)に限定されるものではないが、カンチレバー20の変形をモニタリングできるよう、そのスポットサイズがカンチレバー20の幅と同程度、もしくはカンチレバー20の幅よりも小さいことが望ましい。また、カンチレバー20の微小変形を検出できるよう、測定分解能が高いことが望ましく、具体的には1nm程度の分解能が要求される。
微動ステージ50は、Z軸方向に微小移動可能な移動台である。微動ステージ50は、nmオーダの位置分解能が必要であり、具体的にはピエゾステージ(ピエゾ素子をアクチュエータとしたステージ)を用いるのが好適である。なお、ピエゾステージに代えて、例えば高精度、高分解のステッピングモータ、ソレノイド等をアクチュエータとしたステージを用いても良い。
そこで、微動ステージ50と固定治具40とを含んで、カンチレバー20をZ軸方向に微小駆動可能な駆動装置が構成されている。なお、カンチレバー20を微動ステージに直接固定し、該微動ステージのみにより駆動装置を構成しても良い。
駆動装置としては、カンチレバー20をZ軸方向に微小駆動可能なものであれば、他の構成でも良い。
処理装置60は、微動ステージ50を制御し、レーザ変位計30の測定結果を取得(収集)し、該測定結果に基づいて微小物の特性を求める。
計測開始までの具体的な流れとしては、必要に応じて3次元移動機構を動作させて保持部材をサンプリングエリア上の採取位置に位置させ、保持部材10を手動操作してサンプリングエリアから微小物を採取し(図4(A)参照)、3次元移動機構を動作させて微小物を保持する保持部材10を該微小物がカンチレバー20に対向する計測位置に移動させる(図4(B)参照)。
なお、3次元移動機構による保持部材の移動に代えて、例えばサンプリングエリアと微動ステージ50にXY平面内での2次元移動機能を担わせて、保持部材10にZ軸方向の1次元移動機能もしくはチルト回転機能を担わせても良い。
また、サンプリングエリアに散布/付着された微小物を保持部材10によって保持する際や、カンチレバー20に微小物を近接、接触させる際の位置合わせのために、観察系(顕微鏡機能)が必要であるが、数umサイズの微小物が認識できれば具体的な手段は制限されず、例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡のいずれでも良い。
以下に、微小物特性計測装置100による具体的な計測例を説明する。
〈鏡像力計測〉
図5(A)〜図5(C)、図6を参照して、微小物の帯電量に依存する鏡像力の計測方法について説明する。
この計測方法では、図5(A)〜図5(C)に示されるように、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とを近接させることで、微小物が保有する電荷と逆極性かつ等量の鏡像電荷(誘導電荷)をカンチレバーに誘起させ(図6参照)、微小物とカンチレバー20との間に作用する鏡像力をカンチレバー20の背面側(−Z側)に設置されたレーザ変位計30を用いて計測する。
より具体的には、計測位置に位置された微小物を保持する保持部材を3次元移動機構により−Z方向に移動させて微小物とカンチレバー20とを近接させる(図5(A)参照)。そして、処理装置60が微動ステージ50を+Z方向に微小移動させて微小物とカンチレバー20とをさらに近接させる(図5(B)、図5(C)参照)とともに、レーザ変位計30がカンチレバー20の反り量(変形量)を測定し、その測定値を処理装置60に例えば数ミリsec毎に出力する。なお、処理装置60は、操作部を介した処理開始要求を受けると、上述した微動ステージ50の制御、レーザ変位計30からの測定値の取得を開始する。
処理装置60は、微動ステージ50の移動を、微小物とカンチレバー20とが接触するまで行う。処理装置60は、微小物とカンチレバー20が接触したか否かを、レーザ変位計30の測定値(接触時のカンチレバーの変位)によって判断する。計測開始前、すなわち微動ステージ50の移動開始前の微小物とカンチレバー20との距離は、微小物が保有すると考えられる電荷量に応じて最適な値に設定すべきであるが、およそ1〜100umに設定するのが好ましい。
微動ステージ50の移動速度は、あまりに低速度の場合は、カンチレバー20がレーザ変位計30からのレーザ光の照射時間が長くなることによりドリフト(サーマルドリフト)して計測値のSNが悪化し、また、あまりに高速度の場合は、微動ステージ50が速度設定値に追従して移動しない。そこで、微動ステージ50の移動速度は、0.1〜100um/secの範囲に設定するのが好ましい。
カンチレバー20とレーザ変位計30は微小物が保有すると考えられる電荷量に応じて決定すべきであるが、一般的には、後述する付着力計測よりも鏡像力計測の方が、よりバネ定数が低いカンチレバー、かつ、より高分解能のレーザ変位計を用いるのが望ましい。具体的には、カンチレバーのバネ定数は0.05N/m以下、より好適には0.01N/m以下であることが望ましい。レーザ変位計30の分解能は10nm以下、より好適には1nm以下であることが望ましい。さらに、カンチレバーはその表面が導電性であり、かつ、接地される必要がある。
以上の方法にて、計測した鏡像力は、更に、電荷量(帯電量)に変換することが可能である。具体的には、例えば、従来技術(参考文献:西谷佳典、村松裕明、丸山博之、田之上健一郎、松坂修二、増田弘和:AFMによる気相中粒子ー壁面間相互作用力の測定, 粉体工学会夏季シンポジウム講演論文集, (2000) pp. 67-69)の手法を用いることで、微小物の電荷量(帯電量)を算出することが可能である。
以下の条件において、微小物の鏡像力を計測した結果が図7に示されている。
カンチレバー:オリンパス株式会社製窒化シリコンカンチレバーBL-RC150VB(バネ定数:0.006N/m、表面金コート)
保持部材:アオイ電子株式会社製接触センサー付きナノピンセット
変位計:キーエンス株式会社製分光干渉レーザ変位計SI-F01/専用コントローラSI-F1000
微小物:モデルトナーをシリコン基板上に散布。散布されたトナーから、ランダムに1粒子を選択して計測(ブロー法にて計測した帯電量Q/M=-33.2 uC/g)
微動ステージ:ピーアイジャパン株式会社製Z 軸コンパクトステージ100um P-621.ZCD型/デジタルコントローラE-753.1CD型システム
移動条件:トナーとカンチレバーの距離が約9umの状態で、微動ステージ(ピエゾステージ)を速度10um/secにて10um移動。レーザ変位計は、微動ステージ(ピエゾステージ)が1um移動した時点で計測値の収集を開始した。
図7が上記の条件で計測した結果である。微小物とカンチレバーを近づけることで、鏡像力が増加していることがわかる。図7を解析することで、力が距離の2乗に反比例して増加していることも確認でき、確かに鏡像力を計測できていることがわかる。図7は本実施形態によって初めて得られる結果であるが、更に、図7の鏡像力から微小物の帯電量の算出は従来技術を用いることで可能である。具体的には、上記参考文献の手法を用いることで帯電量を算出でき、図7の鏡像力から微小物の帯電量(絶対値)は0.96 [fC]と求められる。
〈帯電極性判別〉
微小物の帯電極性の判別方法について説明する。具体的には、鏡像力計測と同様な手順で計測位置に位置された微小物を保持した保持部材10を3次元移動機構により−Z方向に移動させて微小物とカンチレバー20とを近接させる。そして、処理装置60が微動ステージ50を+Z方向に微小移動させて微小物とカンチレバー20とをさらに近接させるとともに、帯電装置を稼働させてカンチレバー20に電圧を印加する(帯電させる)。処理装置60は、カンチレバー20にプラス電圧を印加(正の電荷を付与)し、カンチレバー20が微小物に引き寄せられる方向に変形した場合は、微小物はマイナス帯電していると判別でき、カンチレバー20が微小物に対して反発する方向に変形した場合は、微小物はプラス帯電していると判別できる。なお、処理装置60は、操作部を介した処理開始要求を受けると、上述した微動ステージ50の制御、レーザ変位計30からの測定値の取得を開始する。
カンチレバー20にマイナス電圧を印加(負の電荷を付与)した場合も同様に判別すれば良く、カンチレバー20が微小物に引き寄せられる方向に変形した場合は、微小物はプラス帯電していると判断でき、カンチレバー20が微小物に対して反発する方向に変形した場合は、微小物はマイナス帯電していると判断できる。カンチレバー20と微小物との距離は、1〜5umに設定するのが好ましい。カンチレバー20への印加電圧は、微小物の電荷量に応じて決定すべきだが、その絶対値でおよそ0.1〜3V程度に設定するのが好ましい。
〈付着力計測〉
微小物の付着力の計測方法を、図8(A)〜図8(C)を参照して説明する。計測の流れとしては、鏡像力計測と同様な手順で計測位置に位置された微小物を保持する保持部材10を3次元移動機構により−Z方向に移動させて微小物とカンチレバー20とを近接させた(図8(A)参照)後、処理装置60が微動ステージ50を+Z方向に微小移動させて微小物とカンチレバー20とを接触させる(図8(B)参照)。なお、処理装置60は、操作部を介した処理開始要求を受けると、上述した微動ステージ50の制御、レーザ変位計30からの測定値の取得を開始する。
微小物とカンチレバー20が接触したか否かは、レーザ変位計30の測定値(接触時のカンチレバーの変位)によって判断できる。微小物とカンチレバー20を接触させる際の、カンチレバー20の変形量は、カンチレバー20のバネ定数にもよるが、およそ1um以下に設定するのが好適である。
次いで、処理装置60が微動ステージ50を微小物とカンチレバー20とが離間する方向(−Z方向)に微小移動させる。微動ステージ50の移動直後は、微小物とカンチレバー20との間に作用する付着力によって、微小物とカンチレバー20は接触状態を維持しているが、微動ステージ50を移動させ続けると、カンチレバー20の反りで発生する力が、微小物とカンチレバー20との間の付着力よりも大きくなり、微小物とカンチレバー20とが離間する(図8(C)参照)。
そこで、処理装置60は、微小物とカンチレバー20とが離間するときにカンチレバー20に作用している力を取得することで、微小物とカンチレバー20との間の付着力を求めることができる。なお、微小物とカンチレバー20とが離間するときは、レーザ変位計30の測定値(カンチレバー20の変形量)が最大になるので、その最大値を取得すれば良い。この最大値とカンチレバー20のばね定数から微小物の付着力を求めることができる。
微動ステージ50の移動速度は、あまりに低速度の場合は、カンチレバー20がドリフトして計測値のSN比が悪化し、また、あまりに高速度の場合は、微動ステージ50が速度設定値に追従して移動しない。そこで、微動ステージ50の移動速度は、0.1〜100um/secの範囲に設定するのが好ましい。カンチレバー20とレーザ変位計30は微小物の付着力に応じて決定すべきであるが、カンチレバー20のバネ定数は0.01N/mから1N/m以下、レーザ変位計30の分解能は100nm以下であることが望ましい。
ここでは、カンチレバー20の表面材料と微小物との付着力を計測することになる。保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20との間の付着力を相対比較するだけであれば、カンチレバー20の表面材料は限定する必要はないが、微小物がカンチレバー20を帯電させ易いような材料の場合は、カンチレバー20の少なくとも表面に導電性材料を用いて、更に、カンチレバー20を接地した方が良い。繰り返しの計測に対して、カンチレバー20の表面の汚染が懸念されるような材料で構成される微小物を評価する場合は、カンチレバー20の表面を離型性の良好な材料でコートするのが好ましい。
以下の条件において、微小物の付着力を計測した結果が図9に示されている。
カンチレバー:オリンパス株式会社製窒化シリコンカンチレバーOMCL-TR400PB(バネ定数:0.02N/m、表面金コート)
保持部材:アオイ電子株式会社製接触センサー付きナノピンセット
レーザ変位計:キーエンス株式会社製分光干渉レーザ変位計SI-F01/専用コントローラSI-F1000
微小物:モデルトナー(外添剤無しトナー、平均粒子径6um)をシリコン基板上に散布。散布されたトナーから、ランダムに1粒子を選択して計測。
微動ステージ:ピーアイジャパン株式会社製Z 軸コンパクトステージ100um P-621.ZCD型/デジタルコントローラE-753.1CD型システム
移動条件:トナーとカンチレバーを接触させた後、微動ステージ(ピエゾステージ)を速度10um/secにて20um移動。
レーザ変位計は、微動ステージ(ピエゾステージ)が0.1um移動した時点で計測値の収集を開始。
図9が上記の条件で計測した結果である。微小物とカンチレバー20とが接触した状態から両者が離れる方向(−Z方向)に微動ステージ50を微小移動させると、カンチレバー20が変形し(図9中の作用力が増加し)、更に、微動ステージ50を−Z方向に微小移動させると微小物とカンチレバー20とが離間する(図9中の微動ステージ変位14um)ことがわかる。微小物とカンチレバー20が離間したときのカンチレバー20の作用力140nNが微小物とカンチレバー20との付着力であることがわかる。上記の条件では、カンチレバー20の表面材料は金であるので、微小物と金との付着力を計測したことになる。
以上説明した第1実施形態の微小物特性計測装置100は、微小物を保持可能な保持部材10と、該保持部材10に保持された微小物に対向するカンチレバー20と、該カンチレバー20の変位を測定するレーザ変位計30と、カンチレバー20を、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な微動ステージ50を含む駆動装置と、を備えている。
この場合、保持部材10に微小物を保持させ、微動ステージ50を微小移動させたときの微小物と該微小物に対向するカンチレバー20との間に生じる力によるカンチレバー20の変位を測定することで、微小物の各種特性を精度良く計測することが可能となる。
すなわち、計測精度を向上させることができる。
一方、特許文献1では、粉体(微小物)と板状部材(カンチレバー)とを離間させたときのカンチレバーの変形量(反り量)を精度良く測定することが困難であり、ひいては計測精度を向上させることができない。
また、例えば原子間力顕微鏡のカンチレバーに微小物を固定(例えば接着)して、微小物の特性を計測する方法もあるが、この方法では、カンチレバーに微小物を固定するために非常に長い時間がかかるため、実用に耐えられない。
また、微小物特性計測装置100では、保持部材10により微小物群の微小物を一粒子ずつ保持できるため、例えば形状、大きさ、色等から異常があると推定される少量の微小物を抽出(サンプリング)して、該微小物の固有の特性を計測することができる。この場合、微小物群全体の特性評価を短時間で行うことができる。
また、微小物特性計測装置100は、微動ステージ50を含む駆動装置を制御し、レーザ変位計30の測定結果に基づいて微小物の特性を求める処理装置60を更に備えるため、微小物の特性を自動的に計測することができる。
また、カンチレバー20は導電性を有し、かつ接地され、処理装置60は、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とを近接させたときのカンチレバー20の変形量(反り量)から微小物の鏡像力を求める。
この場合、微小物の鏡像力を自動的に高精度で計測することができる。
また、処理装置60は、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とが接触した状態から微小物とカンチレバー20とを離間させたときのカンチレバーの変形量(反り量)から微小物の付着力を求める。
この場合、微小物の付着力を自動的に高精度で計測することができる。
また、カンチレバー20は、導電性を有し、かつ接地されているため、付着力計測において微小物とカンチレバー20との接触を繰り返しても、微小物及びカンチレバー20に電荷が蓄積するのを防止できる。この結果、付着力計測の際に、微小物の鏡像力をほぼゼロにでき、付着力の計測精度の更なる向上を図ることができる。
なお、付着力計測に際して、カンチレバー20が導電性を有し、かつ接地されることに代えて又は加えて、保持部材10が導電性を有し、かつ接地されていても良い。この場合も、付着力計測の際の微小物の鏡像力をほぼゼロにでき、付着力の計測精度の更なる向上を図ることができる。
また、微小物特性計測装置100は、カンチレバー20を正又は負に帯電させる帯電装置を更に備え、処理装置60は、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とを近接させたときのカンチレバー20の変形方向(反り方向)から、微小物の帯電極性を求める。
この場合、微小物の帯電極性を自動的に高精度で計測(判別)することができる。
また、カンチレバー20の変位を測定する測定装置として、レーザ変位計30を用いているため、距離を実測でき、かつ小型化を図ることができる。
一方、例えば光てこ方式を用いる場合には、複数の検出信号から距離を算出する必要があり、かつ小型化が困難である。
また、微動ステージ50を含む駆動装置は、カンチレバー20及びレーザ変位計30を前記接近する方向及び前記離間する方向に一体的に駆動可能であるため、カンチレバー20の変形(反り)による変位を精度良く測定することができる。
また、カンチレバー20及びレーザ変位計30は、固定治具40を介してリジッドな微動ステージ50上に設置されているため、微小かつスムーズに移動可能であり振動等によるノイズを受け難く、カンチレバー20の変形による変位をより精度良く測定することができる。
また、駆動装置による駆動(微動ステージ50の動作)とレーザ変位計30による測定とを同期させることで、微小物の鏡像力、付着力、帯電極性を短時間で計測可能であり、カンチレバー20のドリフトの影響を低減させることができる。
また、微小物特性計測装置100は、微小物がカンチレバー20に対向しない位置(採取位置)で保持部材10に保持(採取)された後に、微小物を保持する保持部材10を該微小物とカンチレバー20とが対向する位置(計測位置)に移動させるための3次元移動機構(移動手段)を更に備えている。
この場合、微小物の採取から特性計測にスムーズに移行することができ、微小物の評価を短時間で実現できる。
また、カンチレバー20は、原子間力顕微鏡用のカンチレバーである。
この場合、カンチレバー20の表面は、高い平滑性を持つため、測定毎の微小物とカンチレバーとの接触面積の変化を抑制することができる。また、カンチレバー20の変形量を光学的に計測する際、カンチレバー20に当たった光は散乱することなく直進性を保ったまま検出されるため、計測精度を向上させることができる。
また、保持部材10が微小物を把持可能な一対のアームを有する場合には、任意の一の微小物(一粒子)を確実に採取できる。
また、保持部材10は、微小物を吸着可能である場合には、任意の一の微小物(一粒子)を該微小物にかける負荷を小さくした状態で採取できる。
《第2実施形態》
以下に、第2実施形態を図10に基づいて説明する。
《電気抵抗計測》
図10には、第2実施形態の微小物特性計測装置200を用いて微小物の電気抵抗を計測する構成が模式的に示されている。なお、図10では、微動ステージ50、固定治具40、レーザ変位計30の図示が省略されている。
詳述すると、微小物特性計測装置200は、図10に示されるように、導電性を有する保持部材10と、導電性を有するカンチレバー20と、保持部材10とカンチレバー20とが個別に両極に接続され、微小物に直流電圧を印加するための直流電源と、保持部材10とカンチレバー20とが微小物を介して導通しているときに微小物に流れた電流を測定するための電流計とで直列回路を構成している。このように、微小物特性計測装置200では、導電性を有する保持部材10及びカンチレバー20を電極として用いることができる。
図10に示される構成以外の測定方法としては、測定回路に基準抵抗を挿入し、電圧計を用いて基準抵抗の電圧降下を測定する方法や、特定の周波数成分のみ抽出するロックインアンプを設けて、交流電圧を印加して電流を測定する方法などがある。
なお、図10では、保持部材10が電源のhi端子(正極)と接続され、カンチレバー20が電源のlo端子(負極)と接続されているが、その逆であっても良い。
保持部材10は電極として利用するため、少なくとも微小物との接触面から電源との接続箇所までは導通(導電性)が確保されている必要がある。導通に対する具体的な数値として、計測する微小物の抵抗値に対して、1/10以下であることが望ましい。使用する保持部材が標準で導通が得られていない場合(導電性を有していない場合)は、例えば、保持部材を金や銅、タングステン等を用いて表面を成膜する方法や、収束イオンビーム等によるデポジション機能を利用して微小電極を作成する方法によって導通(導電性)を確保する。
計測の流れとしては、鏡像力計測と同様な手順で計測位置に位置された微小物を保持する保持部材10を3次元移動機構により−Z方向に移動させて微小物とカンチレバー20とを近接させた後、処理装置60が微動ステージ50を+Z方向に微小移動させて微小物とカンチレバー20とを接触させる。これにより、保持部材10とカンチレバー20とを微小物を介して導通させる回路を速やかに構築することができる。処理装置60は、微小物とカンチレバー20が接触したか否かを、レーザ変位計30の測定値(接触時のカンチレバー20の変形量)によって判断する。微小物とカンチレバー20を接触させる際の、カンチレバー20の変形量は、カンチレバー20のバネ定数にもよるが、およそ1um以下に設定するのが好適である。なお、処理装置60は、操作部を介した処理開始要求を受けると、上述した微動ステージ50の制御、レーザ変位計30からの測定値の取得を開始する。
微小物と電極の接触状態(接触圧)は、一方の電極にカンチレバーを用いることで、精度良く管理できる。精度良く接触状態を管理できる理由として2つ挙げられる。1つ目は、レーザ変位計30によりカンチレバー20の変形量を計測することで、微小物にかかる圧力を管理できるからである。例えば、バネ定数が0.01N/mであるカンチレバー、分解能が10nmであるレーザ変位計30による構成をとれば、0.1nN単位で微小物にかかる圧力を管理できる。2つ目は、カンチレバー20の表面は高い平滑性を有するからである。これにより、測定毎の表面凹凸による微小物との接触面積の変化を最小限に抑えることができる。
上述のようにして保持部材10とカンチレバー20とを微小物を介して導通させた後、処理装置60は、図11に示されるように直流電源により微小物に電圧を印加して、微小物に流れた電流値を電流計で読み取り、オームの法則より電気抵抗を求めることができる。
微小物に印加する電圧の上限は、電極間の放電を避けるために100V程度とすることが望ましい。電流測定は、入力突入電流の影響を避けるために、電圧印加直後一分程度放置してから読み取りを開始することが望ましい。また、精度の良い計測結果を得るためには、一回の測定の中で印加電圧の値を変化させて、それに伴う電流値の変化を読み取り、オームの法則に対する線形回帰によって抵抗値を得ることが望ましい。
以下の条件において、電気抵抗(電圧/電流)を計測した結果が図11に示されている。
カンチレバー:オリンパス株式会社製窒化シリコンカンチレバーBL-RC150VB(バネ定数:0.006N/m、表面金コート)
保持部材:アオイ電子株式会社製ナノピンセット
レーザ変位計:キーエンス株式会社製分光干渉レーザ変位計SI-F01/専用コントローラSI-F1000
定電圧電源:松定プレシジョン株式会社製デジタル電圧発生器
電流計:株式会社TFF ケースレーインスツルメンツ社製電流計
微小物:ポッターズ・パロティーニ株式会社製ガラスビーズ(平均粒径5um)
ガラスビーズをシリコン基板上に散布して、ランダムに一粒子を選択して計測。
微動ステージ:ピーアイジャパン株式会社製Z 軸コンパクトステージ100um P-621.ZCD型/デジタルコントローラE-753.1CD型システム
印加電圧条件:0V, 25V, 50V, 75V
電流計測条件:電圧印加一分後の電流値を取得
微小物にかかる圧力条件:0.6nN
図11が上記の条件で計測した結果である。電圧変化に対して、計測電流値が線形的に変化していることがわかる。図11内の直線は測定結果をオームの法則に対して線形回帰した結果である。回帰直線の傾きから微小物であるガラスビーズの抵抗値が581[GΩ]と求められる。
《誘電率計測》
微小物の誘電率を計測する場合は、微小物特性計測装置200の上記電気抵抗を計測する構成において直流電源に代えて交流電源を用いればよい。交流電源を用いることで、微小物に流れた電流の周波数応答を計測し、インピーダンスを求めることができる。更にインピーダンスからキャパシタを求めることで誘電率が得られる。
図12には、微小物特性計測装置200を用いて微小物の誘電率を計測する構成が示されている。なお、図12では、微動ステージ50、固定治具40、レーザ変位計30の図示が省略されている。図12では、図10に示される構成に対して、直流電源を交流電源に代え、かつ保持部材10とカンチレバー20とを電圧計を介して接続している。そこで、微小物に交流電圧を印加して、微小物に流れた電流と電圧を計測してインピーダンスを計測することができる。また、図12に示される構成では、誘電率に加えて電気抵抗も計測することができる。
以上説明した第2実施形態の微小物特性計測装置200は、微小物を保持可能な導電性を有する保持部材10と、保持部材10に保持された微小物に対向する導電性を有するカンチレバー20と、カンチレバー20を、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な微動ステージ50を含む駆動装置と、保持部材10及びカンチレバー20に両極が個別に接続された電源と、保持部材10とカンチレバー20とが微小物を介して導通しているときに微小物に流れる電流を計測する電流計と、を備えている。
この場合、保持部材10に微小物を保持させ、微動ステージ50を微小移動させ微小物と該微小物に対向するカンチレバー20とを接触させることで、微小物に電流を流し、該電流を計測し、微小物の電気的特性を計測することが可能となる。
この場合、カンチレバー20の弾性力によって、保持部材に保持された微小物とカンチレバー20とを確実に接触させることができる。
この結果、計測精度を向上させることができる。
また、微小物特性計測装置200は、カンチレバー20の変位を測定するレーザ変位計30を更に備えているため、微小物とカンチレバー20との接触状態(接触圧)を精密に管理できる。
また、微小物特性計測装置200は、保持部材10に保持された微小物とカンチレバー20とが接触しているときの電流計の計測結果から微小物の特性を求める処理装置を更に備えている。
この場合、微小物の特性(電気的特性)を自動的に高精度で計測することができる。
また、電源は直流電源であり、微小物特性計測装置200が計測対象とする微小物の特性は、該微小物の電気抵抗であるため、該電気抵抗を簡易かつ迅速に精度良く計測することができる。
また、電源は、交流電源であり、保持部材10とカンチレバー20とが微小物を介して導通しているときに微小物に印加される電圧を計測する電圧計を更に備え、微小物の特性は、該微小物の誘電率及び電気抵抗の少なくとも一方であるため、該誘電率及び該電気抵抗の少なくとも一方を簡易かつ迅速に精度良く計測することができる。
また、保持部材10とカンチレバー20とで微小物を一粒子だけ狭持して計測を行うことができるため、該一粒子の固有の電気的特性(電気抵抗や誘電率)を安定して高精度に計測することができる。
一方、仮に微小物を複数含む微小物群を一対の電極で狭持して該微小物群の電気的特性の計測を行う場合には、微小物の流動性により微小物群と各電極との接触状態が変化し、安定して高精度な計測を行うことができない。すなわち、この場合、計測精度が微小物の充填率、成形状態等の影響を受けてしまう。
なお、微小物特性計測装置200は、カンチレバー20の変位を測定するレーザ変位計30を備えているが、備えていなくても良い。この場合、微小物とカンチレバーとを接触させることに関しては顕微鏡等を介した目視に頼らざるを得ないが、微小物の電気的特性(電気抵抗や誘電率)の計測を行うことは、十分に可能である。
なお、保持部材10が微小物を把持可能な一対のアームを有している場合には、各アームとカンチレバー20を微小物を介して導通させるようにしても良い。また、一対のアームの一方とカンチレバー20を微小物を介して導通させ、他方とカンチレバー20を微小物を介して導通させないようにしても良い(図10、図12参照)。この場合、微小物の電気抵抗計測に用いないアームへの漏れ電流を低減できるため、計測精度を更に向上させることができる。
ところで、研究者、技術者が品質評価や更にはメカニズム解析を進める上では、微小物の一つの特性値の評価では不十分なことが多い。一方、解析内容に応じて、複数の装置を導入するとなると、装置導入コスト、更には、維持コストが膨大になる。また、同一の微小物について、複数の特性計測を試みようとした場合、微小サイズの同一サンプルを複数の計測装置間で移動させなければならないため、高度な位置特定技術が必要になる上、評価が長時間化し易い。
本発明の微小物特性計測装置では、上記第1及び第2実施形態の説明からも分かるように、計測内容に応じて構成を適宜変更することにより、複数の特性(例えば付着力、鏡像力、帯電極性、電気抵抗、誘電率等)が計測可能である。上記第1及び第2実施形態では、1つのカンチレバーを用いて微小物の複数の特性を計測することができるが、計測内容によって適したカンチレバーは異なる。
そこで、微小物特性計測装置が複数のカンチレバーを保持する構成にすれば、上記複数の特性を、カンチレバーの交換無しに、短時間で計測可能となる。
《第3実施形態》
一例として、図13に示される第3実施形態の微小物特性計測装置300のように、複数のカンチレバーを保持し、かつ、位置(ここではY軸方向の位置)を変更可能な保持治具(カンチレバーホルダー)を用いることで、より効率良く複数の計測を実施できる。なお、図13では、微動ステージ50、レーザ変位計30、処理装置60の図示が省略されている。具体的には、帯電量計測用カンチレバー、付着力計測用カンチレバーに対しては、導電性及び接地機能を付与し、電気抵抗/誘電率計測用カンチレバーに対しては、電源、電流計、電圧計を含めて回路を組んだ状態にする。このような保持治具を用いれば、保持治具の位置を変えるだけでカンチレバーの位置を変更でき、短時間で測定内容を変更可能である。
また、第3実施形態の変形例として、微小物の帯電極性を判別可能にするため、帯電量計測用のカンチレバーに対して電圧印加機能(帯電装置)を設けることも有用である。また、保持冶具をY軸方向に移動させる代わりに、保持部材をY軸方向に移動させるようにしても良い。また、電気抵抗のみが計測対象の場合には、図13において、交流電源に代えて、直流電源を用いても良い。また、各カンチレバーが担う計測内容は、図13に示される例に限らず、適宜変更可能である。例えば、鏡像力計測と付着力計測を同一のカンチレバーに担わせても良いし、電気抵抗計測と誘電率計測を異なるカンチレバーに担わせても良い。また、帯電極性計測用のカンチレバーを追加しても良い。
以上説明した第3実施形態の微小物特性計測装置300は、微小物を保持可能な保持部材10と、該保持部材10に保持された微小物に個別に対向可能な複数のカンチレバーを一体的に含むカンチレバー装置と、複数のカンチレバーのうち、保持部材10に保持された微小物に対向するカンチレバーの変位を測定するレーザ変位計30と、微小物を保持する保持部材10及びカンチレバー装置の一方を、保持部材10に保持された微小物と複数のカンチレバーのうち任意の一のカンチレバーとが対向する位置に移動させ、保持部材10に保持された微小物と一のカンチレバーとが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な微動ステージ50を含む駆動装置と、を備えている。
この場合、計測内容(例えば微小物の鏡像力、付着力、帯電極性)に適したカンチレバーを簡易かつ迅速に選択して用いることができ、複数の特性(計測内容)を計測する際の計測時間の短縮化を図ることができる。
一方、同一の微小物について、複数の特性計測を試みようとした場合、微小サイズの同一サンプルを複数の計測装置間で移動させなければならないため、高度な位置特定技術が必要になる上、評価が長時間化し易い。
保持部材10は、導電性を有し、複数のカンチレバーは、導電性を有するカンチレバーを含み、保持部材10及び導電性を有するカンチレバーに両極が個別に接続された電源と、導電性を有するカンチレバーと保持部材10とが微小物を介して導通しているときに該カンチレバーと保持部材10との間に流れる電流を計測する電流計と、を更に備えている。
この場合、計測内容(例えば微小物の電気抵抗)に適したカンチレバーを簡易かつ迅速に選択して用いることができ、計測時間の短縮化を図ることができる。
また、微小物特性計測装置300は、微動ステージ50を含む駆動装置を制御し、レーザ変位計30の測定結果に基づいて微小物の特性を求めることが可能な処理装置を更に備えているため、必要に応じて微小物の特性(鏡像力、付着力、帯電極性)を自動的に精度良く計測することができる。
また、微小物特性計測装置300は、保持部材10に保持された微小物と導電性を有するカンチレバー20とが接触しているときの電流計の計測結果に基づいて、微小物の特性を求めることが可能なため、必要に応じて微小物の特性(電気抵抗)を自動的に精度良く計測することができる。
また、電源は交流電源であり、微小物特性計測装置300は、導電性を有するカンチレバー20と保持部材10とが微小物を介して導通しているときに該微小物に印加される電圧を計測する電圧計を更に備え、処理装置60は、保持部材10に保持された微小物と導電性を有するカンチレバー20とが接触しているときの電流計及び電圧計の計測結果に基づいて、微小物の電気的特性を求めることが可能なため、必要に応じて微小物の特性(電気抵抗や誘電率)を自動的に精度良く計測することができる。
また、処理装置は、カンチレバー毎に接地、電圧印加条件を変更可能であるため、少数のカンチレバーで多くの計測内容に対応することができ、かつ計測内容の変更を迅速に行うことができる。
なお、上記第2及び第3実施形態では、微小物を保持部材で保持しているが、これに代えて、微小物を導電性を有する部材に固定(例えば接着)しても良い。そして、導電性を有する部材に固定された微小物とカンチレバーとを接触させて、上記第2及び第3実施形態と同様に、該微小物の電気抵抗や誘電率を計測しても良い。
ところで、上記第1実施形態においては、図1に示されるように、微動ステージ50、レーザ変位計30、カンチレバー20を一体的に設けた構成を示した。図1の構成は、振動によるノイズの影響を受けにくい構成ではあるが、例えばコストもしくは作製上の都合で図1の構成を実現できない場合等には、例えば、図14に示される変形例1の微小物特性計測装置400のように保持部材10と微動ステージとを一体的に設け、保持部材10を微動ステージ50と共に微小移動させる構成を採用しても良い。更には、図15に示される変形例2の微小物特性計測装置500のようにレーザ変位計30の固定治具である変位計固定治具とカンチレバー20の固定治具であるカンチレバー固定治具を別々に設けて、カンチレバーとカンチレバー固定治具のみを微動ステージと共に微小移動させる構成を採用しても良い。
ただし、図15の構成の場合、カンチレバー20に力が作用せず変形していない状態でも、微動ステージ50の移動に伴ってカンチレバー20がレーザ変位計30に対して相対的に移動するため、レーザ変位計30の測定値が変化する。したがって、レーザ変位計30の測定値と微動ステージ50の移動量(カンチレバー20の移動量)の差分によってカンチレバーの変形による変位を求めた上で、鏡像力や付着力を求める必要がある。
また、カンチレバーの変位を検出する手段は、必ずしもレーザ変位計のように距離を直接測定するものである必要はない。例えば、図16、図17にそれぞれ示される変形例3、4の微小物特性計測装置600、700のように、レーザ光源からのレーザ光をカンチレバーに照射し、その反射光を2つの受光領域を有する2分割ディテクタ(例えば2分割フォトダイオードや2分割フォトトランジスタ)で検出する構成を採用することも可能である。カンチレバー20の変形による反射光の進行角度の変化を、2分割ディテクタ上での反射光位置で検知する方式である。すなわち、カンチレバー20が反ると、2分割ディテクタに当たるレーザ光の中心位置がずれ、2つの受光領域からの出力の差が変化する。この変化からカンチレバーの反り量を算出できる。これは、一般的に原子間力顕微鏡で用いられている光てこ方式と同じであるが、本発明のカンチレバー変位測定においても採用可能である。2分割ディテクタの設置サイズの都合上、図16のように高さ(厚さ)寸法が長い固定治具を用いても良いし、図17のように微動ステージ、レーザ変位計30、カンチレバー20が一体でない構成を採用しても良いが、必ずしもこれらの構成に限るものではない。
すなわち、変形例3、4の微小物特性計測装置600、700は、カンチレバーに向けてレーザ光を出射する光源と、該光源から出射され前記カンチレバーで反射された光を検出する2つの受光領域を含む光検出器(ディテクタ)とを含んでいるため、例えばレーザ変位計を用いる場合に比べて計測精度の向上を図ることができる。
《第4実施形態》
[装置概要]
第4実施形態の微小物特性計測装置800では、図18に示されるように、カンチレバー20とレーザ変位計30が固定された固定治具40が微動ステージ50上に設置されており、カンチレバー20の上方に保持部材10で保持された微小物を配置できる構成となっている。さらに、微小物特性計測装置800は、保持部材10を振動可能な振動装置810(振動手段)と、保持部材10の上方に配置され保持部材10の振動による変位(例えば振幅)を計測する計測装置820とを備えている。
計測装置820として、例えば図19(A)に示されるようにレーザ変位計を用いることができる。また、計測装置820として、図19(B)に示される光てこ方式や図19(C)に示される静電容量方式を用いることもできる。計測装置820は、カンチレバー20の変位方向(撓み方向)の変位量が計測できればどこに配置されても良い。ただし、光学顕微鏡や電子顕微鏡等の観察手段の光軸や保持部材10の移動軸上にあってはならない。
振動装置810は、例えばピエゾ素子(圧電素子)を含んで構成することができる。振動装置810は、保持部材10に接触していればどこに配置してもかまわない。この振動装置810は保持部材10のみを振動させることが好ましい。特に、保持部材10とカンチレバー20が直接接触していないときに、他部材を通してカンチレバー20に振動が伝わると、著しく計測精度が低下する。
カンチレバー20としては、一般的な原子間力顕微鏡用のカンチレバーを使用可能であるが、計測内容に応じて、適切なバネ定数及び材質のカンチレバーを選択する必要がある。また、原子間力顕微鏡用のカンチレバーはレバー先端に試料をスキャンするチップが設けてあるが、第4実施形態においてはチップを使用しない。したがって、第4実施形態では、チップレスカンチレバーを用いるか、もしくは、チップが設けてあるカンチレバーを使用する場合でも、チップは微小物側でなく、レーザ変位計30側に向くようにカンチレバーを固定する。
レーザ変位計30は、必ずしも特定の製品に限定されるものではないが、カンチレバー20の変形をモニタリングできるよう、そのスポットサイズがカンチレバー幅と同程度、もしくは、カンチレバー幅よりも小さくなければならない。また、微小変形を検出できるよう、測定分解能が高いことが望ましく、より具体的には1nm程度の分解能が必要である。
微動ステージ50も、ナノメーターオーダーの位置分解能が必要であり、具体的にはピエゾステージを用いるのが好適である。
保持部材10には、図2に示されるような、微小物を両端から挟みこむようにして保持するマイクロ/ナノグリッパー、マイクロ/ナノピンセットと称されるものや、図3(A)及び図3(B)に示されるような、微小物を吸引することで保持するマイクロ/ナノピペットと称されるものを用いることができる。これらの保持部材には接触センサが備えられたものを用いることもできるが、第4実施形態では保持部材10を常に振動させその変位をモニタリングすることで同様の機能を得ることができる。
第4実施形態の計測対象となる微小物のサイズは、図2、図3(A)、図3(B)に示される保持部材で保持可能な10nm〜1mmの範囲に入るものであり、より好適なサイズとしては1um〜100umの範囲に入るものである。具体的な対象物としては、複写機に用いられるトナー、医薬品、食料品、電子機器の構成材料に用いられる粉体や電子基板等に付着する微小異物、更には、細胞等の生体物質が考えられる。
保持部材10に付着した汚染物の有無は、振動装置810により保持部材10を振動させてその振幅を計測装置820で計測することによって確認できる。予め参考値として清浄な状態、あるいは一連の実験の初期の状態で保持部材10を振動させ、その振幅を計測しておく。その後、適時あるいは計測毎に保持部材10が微小物を保持していない状態で、再度振幅を計測する。これらの振幅は、保持部材10の重量に依存するため、汚染物が付着している状態ではその汚染物の重量に伴い振幅も変化する。具体的には、汚染物の付着に伴いその振幅は小さくなる。よって、これら計測値を参考値と比較することで汚染の有無を確認することができる。これらの振幅計測は、振動させている間に行うこともできるし、振動させた直後の減衰振動の間に行うこともできる。
振動装置810により保持部材10を振動させ、保持部材10と汚染物との付着力を超えるような加速度を保持部材10に与えることで汚染物を除去することができる。除去ができたかどうかは、上述の汚染状態の確認方法と同様の操作により確認できる。
以下に、第4実施形態の微小物特性計測装置800で実現可能な具体的な計測内容について説明する。
[鏡像力計測(帯電量)]
微小物の帯電量に依存する鏡像力の計測方法について説明する。第4実施形態では、図6に示されるように、微小物とカンチレバー20を近接させることで、微小物が保有する電荷と逆極性かつ等量の鏡像電荷をカンチレバー20に誘起させ、微小物とカンチレバー20に作用する鏡像力をカンチレバー20背面側に設置されたレーザ変位計30で計測するものである。より具体的には、試料台、カンチレバー20とレーザ変位計30と微動ステージ50とを含む計測系、保持部材10付随の3軸移動機能により、微小物とカンチレバー20を近接させ、更に、図5(A)〜図5(C)に示されるように微動ステージ50によって、カンチレバー20を微小物側へ移動させるとともに、レーザ変位計30によってカンチレバー20の反り量を計測する。微動ステージ50の移動は、カンチレバー20と微小物とが接触するまでおこなう。計測開始前、すなわち、微動ステージ50移動開始前の微小物とカンチレバー20の距離は、微小物が保有すると考えられる電荷量に応じて最適な値に設定すべきだが、およそ1〜100umに設定するのが良い。微動ステージ50の移動速度は、あまりに低速度の場合は、カンチレバー20がドリフトして計測値のSNが悪化し、また、あまりに高速度の場合は、微動ステージ50が速度設定値に追従して移動しない。0.1〜100um/secの速度範囲に設定するのが好ましい。
カンチレバー20とレーザ変位計30は微小物が保有すると考えられる電荷量に応じて決定すべきだが、一般的には、後述する付着力計測よりも鏡像力計測の方が、よりバネ定数が低いカンチレバー、かつ、より高分解能のレーザ変位計を用いるのが望ましい。具体的には、カンチレバー20のバネ定数は0.05N/m以下、より好適には0.01N/m以下であることが望ましい。レーザ変位計30の分解能は10nm以下、より好適には1nm以下であることが望ましい。更に、カンチレバー20はその表面が導電性であるべきで、かつ、接地した状態で使用しなければならない。
以上の方法にて、計測できた鏡像力は、更に、電荷量(帯電量)に変換することが可能である。具体的には、従来技術である参考文献3の手法を用いることで、微小物の電荷量(帯電量)を算出することが可能である。
[帯電極性判別]
微小物の帯電極性についても、第4実施形態の微小物特性計測装置800により判別可能である。具体的には、保持部材10で保持した微小物をカンチレバー20に近接させた状態で、カンチレバー20に電圧を印加する。カンチレバー20にプラス電圧を印加し、カンチレバー20が微小物に引き寄せられる方向に変形した場合は、微小物はマイナス帯電していると判断でき、カンチレバー20が微小物に対して反発する方向に変形した場合は、微小物はプラス帯電していると判断できる。カンチレバー20にマイナス電圧を印加した場合も同様に判断すれば良く、カンチレバー20が微小物に引き寄せられる方向に変形した場合は、微小物はプラス帯電していると判断でき、カンチレバー20が微小物に対して反発する方向に変形した場合は、微小物はマイナス帯電していると判断できる。カンチレバー20と微小物との距離は、1〜5umに設定するのが好ましい。カンチレバー20への印加電圧は、微小物の電荷量に応じて決定すべきだが、その絶対値でおよそ0.1〜3V程度に設定するのが良い。
[付着力計測]
微小物の付着力の計測方法について説明する。計測の流れとしては、微小物とカンチレバー20を接触させた後、微動ステージ50を、微小物とカンチレバー20が離間する方向に移動させる(図8(A)、8(B)参照)。微動ステージ50移動直後は、微小物とカンチレバー20が作用する付着力によって、微小物とカンチレバー20は接触状態を維持しているが、微動ステージ50を移動させ続けると、カンチレバー20の反りで発生する力が、微小物とカンチレバー20との間の付着力よりも大きくなり、微小物とカンチレバー20が離間する(図8(C)参照)。すなわち、微小物とカンチレバー20が離間する際にカンチレバー20に作用している力を求めれば、微小物とカンチレバー20の付着力を評価できる。微動ステージ50の移動速度は、あまりに低速度の場合は、カンチレバー20がドリフトして計測値のSNが悪化し、また、あまりに高速度の場合は、微動ステージ50が速度設定値に追従して移動しない。0.1〜100um/secの速度範囲に設定するのが好ましい。カンチレバー20とレーザ変位計30は微小物の付着力に応じて決定すべきだが、およそ、カンチレバー20のバネ定数は0.01N/mから1N/m以下、レーザ変位計30の分解能は100nm以下であることが望ましい。第4実施形態では、カンチレバー表面材料と微小物との付着力を計測することになる。保持した微小物間の付着力を相対比較するだけであれば、カンチレバー表面材料は限定する必要はないが、微小物がカンチレバーを帯電させ易いような材料の場合は、カンチレバー表面は導電性材料を用いて、更に、導通を確保した方が良い。繰り返しの計測に対して、カンチレバー20表面の汚染が懸念されるような材料で構成される微小物を評価する場合は、カンチレバー20表面は離型性の良好な材料でコートした方が良い。なお,微小物とカンチレバー20が接触したか否かは、レーザ変位計30の測定値によって判断する。微小物とカンチレバー20を接触させる際の、カンチレバー20の変形量(撓み量)は、カンチレバー20のバネ定数にも依存するが、およそ、1um以下に設定するのが好適である。
[電気抵抗計測]
微小物の電気抵抗を計測する構成、方法について図10を用いて説明する。図10は、保持部材10とカンチレバー20を電極として、微小物に直流電圧を印加するための電源と、微小物に流れた電流を測定するための電流計で構成された直列回路を表している。図10以外の構成による電流測定方法としては、測定回路に基準抵抗を挿入し、電圧計を用いて基準抵抗の電圧降下を測定する方法や、特定の周波数成分のみ抽出するロックインアンプを設けて、交流電圧を印加して電流を測定する方法などがある。また、図10では保持部材10が電源のhi端子と接続されているが、カンチレバー20をhi端子と接続する構成でも良い。
保持部材10は電極として利用するため、少なくとも微小物との接触面から電源との接続箇所までは導通が確保されている必要がある。導通に対する具体的な数値として、計測する微小物の抵抗値に対して、十分の一以下であることが望ましい。使用する保持部材10が標準で導通が得られていない場合は、例えば、保持部材10を金や銅、タングステン等を用いて表面を成膜する方法や、収束イオンビーム等によるデポジション機能を利用して微小電極を作成する方法によって導通を確保する。
計測の流れとしては、図示しない試料台、計測系、保持部材10付随の3軸移動機能により、微小物とカンチレバー20を近接させ、更に、微動ステージ50によって、微小物とカンチレバー20を接触させる。微小物とカンチレバー20が接触したか否かは、レーザ変位計30の測定値によって判断する。微小物とカンチレバー20を接触させる際の、カンチレバー20の変形量(撓み量)は、カンチレバー20のバネ定数にも依存するが、およそ、1um以下に設定するのが好適である。
微小物と電極の接触状態は、一方の電極にカンチレバー20を用いることで、精度良く管理できる。精度良く接触状態を管理できる理由として2つ挙げる。1つ目は、レーザ変位計30によりカンチレバー20の変形を計測することで、微小物にかかる圧力を管理できるからである。例えば、バネ定数が0.01N/mであるカンチレバー20、分解能が10nmであるレーザ変位計30による構成をとれば、0.1nN単位で微小物にかかる圧力を管理できる。2つ目は、カンチレバー20のレバー表面は高い平滑性を有するからである。これにより、測定毎の表面凹凸による微小物との接触面積の変化を最小限に抑えることができる。
その後、図10に示す電源により微小物に電圧を印加して、微小物に流れた電流値を電流計で読み取り、オームの法則より電気抵抗を求めることができる。
微小物に印加する電圧の上限は、電極間の放電を避けるために100V程度とすることが望ましい。電流測定は、入力突入電流の影響を避けるために、電圧印加直後一分程度放置してから読み取りを開始することが望ましい。また、精度の良い計測結果を得るためには、一回の測定の中で印加電圧の値を変化させて、それに伴う電流値の変化を読み取り、オームの法則に対する線形回帰によって抵抗値を得ることが望ましい。
[誘電率計測]
誘電率を計測する場合は、電気抵抗を計測する構成において直流電源に代えて交流電源を用いればよい。交流電源を用いることで、微小物に流れた電流の周波数応答を計測し、インピーダンスを求めることができる。更にインピーダンスからキャパシタを求めることで誘電率が得られる。
誘電率を計測する構成、方法について図12を用いて説明する。微小物に交流電圧を印加して、微小物に流れた電流と電圧を計測してインピーダンスを計測することができる。また、図12のような構成では、誘電率に併せて電気抵抗も計測することができる。
(粘弾性計測)
微小物の粘弾性の計測方法について図20(A)〜図20(C)を用いて説明する。計測の流れとしては、微小物とカンチレバー20を接触させた後(図20(A)参照)、保持部材10を振動させる。保持部材10を振動させると、微小物の粘弾性に応じてカンチレバー20が振動する(図20(B)、図20(C)参照)。このカンチレバー20の振動による変位(例えば振幅)を計測装置820で計測する。入力した保持部材10の振動の変位、出力されるカンチレバー20の変位と位相ずれ量を用いて、貯蔵弾性率や損失弾性率を求めることができる。これらの値を算出する方法には適当なモデルが必要である。例として、マックスウェル模型を想定した場合を図21に示す。マックスウェル模型を利用した場合、貯蔵弾性率は図22(A)で表すことができ、損失弾性率は図22(B)で表すことができる。このとき、応力sはカンチレバー20の変位量とカンチレバー20のバネ定数を乗じたもので表される。ここで保持部材10の振幅と振動数、カンチレバー20のバネ定数は微小物の粘弾性に応じて決定すべきであるが、おおよそ、保持部材10の振幅は数nmから数十nm、保持部材10の振動数は数Hzから数kHz、カンチレバー20のバネ定数は0.1N/mから数十N/mであることが望ましい。
[振動装置の振動数について]
第4実施形態の振動装置810に設定される振動数の種類は特に制限されるものではなく、任意に、あるいは連続的に変化させても良い。例えば、汚染を確認する際に振動数を連続的に変化させ保持部材10の固有振動数を計測する手法を採用すれば、汚染の有無を固有振動数の変化から感度良く確認することができる。また、粘弾性計測では振動数を連続的に変化させることで、貯蔵弾性率と損失弾性率の振動数依存性を計測することができる。
[保持部材の振動方向について]
第4実施形態の保持部材10は、粘弾性を計測するためには、少なくともカンチレバー20の変位方向に略平行に振動することが好ましいが、それ以外の方向に振動しても良く、例えばカンチレバー20の変位方向に略垂直な方向に振動させても良い。例えば、図23に示すように、保持部材10をカンチレバー20の変位方向に略平行な方向に振動させる振動装置1に加えて、保持部材10をカンチレバー20の変位方向に略垂直な方向に振動させる振動装置2を設ければ、保持部材10に付着した汚染物をより確実に除去できる。図23の例では、振動装置1を保持部材10に接触させ、かつ振動装置2を振動装置1に接触させた構成とすることで、保持部材10を直交する2方向に同時又は別々に振動させることができる。
以上の説明から分かるように、保持部材10を振動させる振動手段は、少なくとも1つの振動装置(例えばピエゾ素子)で構成することができる。この場合、少なくとも1つの振動装置を保持部材10に対して直接接触させても良いし、振動装置を保持部材10に対して他の振動装置もしくは他の部材等を介して間接的に接触させて良い。
以上説明した第4実施形態の微小物特性計測装置800は、保持部材10を振動可能な振動装置810を更に備えている。
この場合、例えば、保持部材10に付着した汚染物の除去や、微小物の粘弾性の計測が可能となる。
また、振動装置810が保持部材10をカンチレバー20の変位方向に振動可能である場合には、動的粘弾性計測による粘弾性の定量評価が可能となる。
なお、振動装置810を保持部材10に付着した汚染物の除去に用いる場合には、振動装置810による保持部材10の振動方向は、カンチレバー20の変位方向以外の方向でも良い。
また、微小物特性計測装置800が保持部材10の振動による変位を計測する計測装置820を更に備える場合には、保持部材10の汚染状況を容易に確認でき、更に汚染物を容易にかつ確実に除去できるため高精度な微小物の特性計測ができる。
具体的には、保持部材10の振幅変化を計測することで、保持部材10を直接観察することなく容易に汚染が把握できる。また、保持部材10を振動させることで容易に汚染物を除去できる。更に、保持部材10の振幅を計測して重量変化を計測することで汚染除去が完了したかどうかを判断できる。
なお、振動装置810を微小物の粘弾性の計測に用いる場合には、計測装置820は必須ではない。
また、計測装置820がレーザ変位計である場合には、保持部材10の振動による変位量を精度良く計測できる。
また、計測装置は820が保持部材10に向けて光を射出する光射出部と、保持部材10からの反射光を検出する、2個の受光領域を有する光検出部とを含む場合には、保持部材10の振動による変位量を精度良く計測できる。
また、計測装置820が保持部材10と該保持部材10に対向して設けられた電極との間の静電容量の変化を計測する場合には、保持部材10の振動による変位量を精度良く計測できる。
また、振動装置810が保持部材10の振動数を変更可能である場合には、保持部材10の固有振動数を計測することで、保持部材10の汚染状況を感度良く確認できる。また、粘弾性計測時に振動数を任意に変化させることで振動数依存性を計測できる。
また、振動装置810が保持部材10の振動方向を変更可能である場合には、保持部材10を適切な方向に振動させることで、汚染物がどのような箇所に付着しても確実に除去できる。
また、振動装置810が圧電素子を含む場合には、保持部材10を精度良く安定して振動させることができる。なお、少なくとも1つの振動装置を含む振動手段は、圧電素子に代えて又は加えて、例えば振動モータ等の保持部材10を振動可能な他の装置を有していても良い。
《第5実施形態》
[装置構成]
以下に、第5実施形態の微小物特性計測装置900について説明する。この微小物特性計測装置900は、一例として図24に示されるように、支持体としてのリング状の支持部材910の開口の周囲部に、保持部材10を保持しつつ鉛直方向に移動可能なZステージ930(微動ステージ)とカンチレバー20を保持しつつ水平方向に移動可能な水平移動ステージ920とが支持されている。使用の際には、例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡等の顕微鏡を、該顕微鏡のレンズが支持部材910の開口に挿入されるように設置する(図26参照)。なお、図26等では、顕微鏡のレンズのみを図示している。
なお、第5実施形態では、支持体としての支持部材910は、リング状の板部材であるが、これに限らず、要は、レンズが挿入される開口又は切り欠きが形成された部材であれば良い。また、支持体は、単一の部材に限らず、複数の部材で構成されても良い。
第5実施形態の微小物特性計測装置900は、例えば支持部材910の開口が試料台の上方に位置するように設置される(図26参照)。これにより、顕微鏡で観察しながら、保持部材10を用いての試料台からの微小物採取と、微小物を保持する保持部材10及びカンチレバー20を用いての計測動作を連続して効率良く行うことができる。
第5実施形態では、カンチレバー20の変位を測定する測定装置として、図25(A)及び図25(B)に示すように「光てこ」と呼ばれる方式を採用している。「光てこ」では、光射出部(例えばレーザ)から射出されたレーザ光をカンチレバー20に照射し、その反射光を光検出器(例えば2分割ディテクタ)で検出する。カンチレバー20の変形にともなう、光検出器上での反射光の移動から、カンチレバー20に作用する力を測定できる。
カンチレバー20は、一般的な原子間力顕微鏡用のカンチレバーを使用可能だが、計測内容に応じて、適切なバネ定数及び材質のカンチレバーを選択する必要がある。また、原子間力顕微鏡用のカンチレバーはレバー先端に試料をスキャンするチップが設けてあるが、第5実施形態においてはチップを使用しない。したがって、第5実施形態では、チップレスカンチレバーを用いるか、もしくは、チップが設けてあるカンチレバーを使用する場合でも、チップは微小物側でなく、レーザ照射側に向くようにカンチレバー20を固定する。
カンチレバー20は、水平移動ステージ920にカンチレバー保持部材を介して取り付けられている。図26に示されるように、微小物を採取する際に、カンチレバー20が顕微鏡視野に入ると、保持部材10を用いての微小物の採取作業が困難となるため、微小物採取(保持)後にカンチレバー20を微小物保持位置近くに移動できるようにするためである。
水平移動ステージ920は、その移動距離が数〜数十mmで,位置分解能が0.1〜0.5umのものが好ましく、具体的には、例えばステッピングモータ、リニアモータ等が使用可能である。
また、保持部材10を保持するZステージ930は2つの機能(目的)を持つ。一点目は、微小物保持の際に、微小物と保持部材10のZ方向の高さ調整の機能であり、2点目は、特性計測(付着力/帯電量計測)時のカンチレバー20と微小物との距離調整の機能である。特に、後者については、ナノメーターオーダーの位置分解能が必要であるため、Zステージ930にはピエゾステージを用いるのが好適である。
また、保持部材10には、図2に示すように、微小物を両端から挟みこむようにして保持するマイクロ/ナノグリッパー、マイクロ/ナノピンセットと称されるものや、図3(A)及び図3(B)に示すような、微小物を吸引することで保持するマイクロ/ナノピペットと称されるものを用いることができる。
第5実施形態の計測対象となる微小物のサイズは、図2、図3(A)、図3(B)の保持部材で保持可能な10nm〜1mmの範囲に入るものであり、より好適なサイズとしては1um〜100umの範囲に入るものである。具体的な対象物としては、複写機に用いられるトナー、医薬品、食料品、電子機器の構成材料に用いられる粉体や電子基板等に付着する微小異物、更には、細胞等の生体物質が考えられる。
以下に、第5実施形態の微小物特性計測装置900で実現できる具体的な計測内容について説明する。
[鏡像力計測(帯電量)]
微小物の帯電量に依存する鏡像力の計測方法を説明する。微小物特性計測装置900では、図28に示すように、微小物とカンチレバー20を近接させることで、微小物が保有する電荷と逆極性かつ等量の鏡像電荷をカンチレバー20に誘起させ、微小物とカンチレバー20に作用する鏡像力をカンチレバー20背面側に設置された「光てこ」で測定するものである。
より具体的には、試料台、カンチレバー20を保持する水平移動ステージ920、保持部材10を保持するZステージ930を用いて、微小物とカンチレバー20を近接させ(図27(A)参照)、更に、Zステージ930によって、保持部材10に保持された微小物をカンチレバー20側へ移動させるとともに(図27(B)参照、図27(C)参照)、「光てこ」によってカンチレバー20の反り量を計測する。Zステージ930の移動は、カンチレバー20を微小物が接触するまでおこなう。
計測開始前、すなわち、Zステージ930移動開始前の微小物とカンチレバー20の距離は、微小物が保有すると考えられる電荷量に応じて最適な値に設定すべきだが、およそ1〜100umに設定するのが良い。Zステージ930の移動速度は、あまりに低速度の場合は、カンチレバー20がドリフトして計測値のSNが悪化し、また、あまりに高速度の場合は、Zステージ930が速度設定値に追従して移動しない。0.1〜100um/secの速度範囲に設定するのが好ましい。
カンチレバー20と「光てこ」は微小物が保有すると考えられる電荷量に応じて決定すべきだが、一般的には、後述する付着力計測よりも鏡像力計測の方が、よりバネ定数が低いカンチレバー、かつ、より高分解能の「光てこ」を用いるのが望ましい。具体的には、カンチレバー20のバネ定数は0.05N/m以下、より好適には0.01N/m以下であることが望ましい。「光てこ」の分解能は10nm以下、より好適には1nm以下であることが望ましい。更に、カンチレバー20はその表面が導電性であるべきで、かつ、接地した状態で使用しなければならない。
以上の方法にて、計測できた鏡像力は、更に、電荷量(帯電量)に変換することが可能である。具体的には、従来技術である参考文献3の手法を用いることで、微小物の電荷量(帯電量)を算出することが可能である。
[帯電極性判別]
第5実施形態では、微小物の帯電極性についても判別可能である。具体的には、保持部材10で保持した微小物をカンチレバー20に近接させた状態で、カンチレバー20に電圧を印加する。カンチレバー20にプラス電圧を印加し、カンチレバー20が微小物に引き寄せられる方向に変形した場合は、微小物はマイナス帯電していると判断でき、カンチレバー20が微小物に対して反発する方向に変形した場合は、微小物はプラス帯電していると判断できる。カンチレバー20にマイナス電圧を印加した場合も同様に判断すれば良く、カンチレバー20が微小物に引き寄せられる方向に変形した場合は、微小物はプラス帯電していると判断でき、カンチレバー20が微小物に対して反発する方向に変形した場合は、微小物はマイナス帯電していると判断できる。カンチレバー20と微小物との距離は、1〜5umに設定するのが好ましい。カンチレバー20への印加電圧は、微小物の電荷量に応じて決定すべきだが、その絶対値でおよそ0.1〜3V程度に設定するのが良い。
[付着力計測]
微小物の付着力の計測方法について説明する。計測の流れとしては、微小物とカンチレバー20を接触させた後(図29(A)参照)、Zステージ930を、微小物とカンチレバー20が離間する方向に移動させる(図29(B)参照)。Zステージ930移動直後は、微小物とカンチレバー20が作用する付着力によって、微小物とカンチレバー20は接触状態を維持しているが、Zステージ930を移動させ続けると、カンチレバー20の反りで発生する力が、微小物とカンチレバーとの間の付着力よりも大きくなり、微小物とカンチレバーとが離間する(図29(C)参照)。すなわち、微小物とカンチレバー20が離間する際にカンチレバー20に作用している力を求めれば、微小物とカンチレバー20の付着力を評価できる。
Zステージ930の移動速度は、あまりに低速度の場合は、カンチレバー20がドリフトして計測値のSNが悪化し、また、あまりに高速度の場合は、Zステージ930が速度設定値に追従して移動しない。そこで、0.1〜100um/secの速度範囲に設定するのが好ましい。
カンチレバー20と「光てこ」は微小物の付着力に応じて決定すべきだが、およそ、カンチレバー20のバネ定数は0.01N/mから1N/m以下、「光てこ」の分解能は100nm以下であることが望ましい。第5実施形態では、カンチレバー表面材料と微小物との付着力を計測することになる。保持した微小物間の付着力を相対比較するだけであれば、カンチレバー表面材料は限定する必要はないが、微小物がカンチレバー20を帯電させ易いような材料の場合は、カンチレバー表面は導電性材料を用いて、更に、導通を確保した方が良い。繰り返しの計測に対して、カンチレバー表面の汚染が懸念されるような材料で構成される微小物を評価する場合は、カンチレバー表面は離型性の良好な材料でコートした方が良い。なお、微小物とカンチレバーが接触したか否かは、「光てこ」の測定値によって判断する。微小物とカンチレバー20を接触させる際の、カンチレバー20の変形量は、カンチレバー20のバネ定数にも依存するが、およそ、1um以下に設定するのが好適である。
[電気抵抗計測]
微小物の電気抵抗を計測する構成、方法について図10を用いて説明する。図10は、保持部材10とカンチレバー20を電極として、微小物に直流電圧を印加するための電源と、微小物に流れた電流を測定するための電流計で構成された直列回路を表している。図10以外の構成による電流測定方法としては、測定回路に基準抵抗を挿入し、電圧計を用いて基準抵抗の電圧降下を測定する方法や、特定の周波数成分のみ抽出するロックインアンプを設けて、交流電圧を印加して電流を測定する方法などがある。また、図10では保持部材10が電源のhi端子と接続されているが、カンチレバーをhi端子と接続する構成でも良い。
保持部材10は電極として利用するため、少なくとも微小体との接触面から電源との接続箇所までは導通が確保されている必要がある。導通に対する具体的な数値として、計測する微小物の抵抗値に対して、十分の一以下であることが望ましい。使用する保持部材が標準で導通を得られていない場合は、例えば、保持部材10を金や銅、タングステン等を用いて表面を成膜する方法や、収束イオンビーム等によるデポジション機能を利用して微小電極を作成する方法によって導通を確保する。
計測の流れとしては、試料台、カンチレバー20を保持する水平移動ステージ920、保持部材10を保持するZステージ930により、微小物とカンチレバー20を近接させ、更に、Zステージ930によって、微小物とカンチレバー20を接触させる。微小物とカンチレバー20が接触したか否かは、「光てこ」の測定値によって判断する。微小物とカンチレバー20を接触させる際の、カンチレバー20の変形量は、カンチレバー20のバネ定数にも依存するが、およそ、1um以下に設定するのが好適である。
微小物と電極の接触状態は、一方の電極にカンチレバー20を用いることで、精度良く管理できる。精度良く接触状態を管理できる理由として2つ挙げる。1つ目は、「光てこ」によりカンチレバー20の変形を計測することで、微小物にかかる圧力を管理できるからである。例えば、バネ定数が0.01N/mであるカンチレバー、分解能が10nmである「光てこ」による構成をとれば、0.1nN単位で微小物にかかる圧力を管理できる。2つ目は、カンチレバー20のレバー表面は高い平滑性を有するからである。これにより、測定毎の表面凹凸による微小物との接触面積の変化を最小限に抑えることができる。
その後、図10に示す電源により微小物に電圧を印加して、微小物に流れた電流値を電流計で読み取り、オームの法則より電気抵抗を求めることができる。微小物に印加する電圧の上限は、電極間の放電を避けるために100V程度とすることが望ましい。電流測定は、入力突入電流の影響を避けるために、電圧印加直後一分程度放置してから読み取りを開始することが望ましい。また、精度の良い計測結果を得るためには、一回の測定の中で印加電圧の値を変化させて、それに伴う電流値の変化を読み取り、オームの法則に対する線形回帰によって抵抗値を得ることが望ましい。
[誘電率計測]
微小物の誘電率を計測する場合は、電気抵抗を計測する構成で交流電源を用いればよい。交流電源を用いることで、微小物に流れた電流の周波数応答を計測し、インピーダンスを求めることができる。更にインピーダンスからキャパシタを求めることで誘電率が得られる。
微小物の誘電率を計測する構成、方法を図12を用いて簡単に説明する。微小物に交流電圧を印加して、微小物に流れた電流値を電流計で読み取り、かつ微小物に生じた電圧を電圧計で読み取ることで、インピーダンスを計測することができる。また、図12のような構成では、微小物の誘電率に併せて電気抵抗も計測することができる。
(水平移動ステージの駆動方向について)
第5実施形態において、カンチレバー20及びカンチレバー保持部材を駆動する水平移動ステージ920の駆動方向は、必ずしも図30(A)及び図30(B)に示される実施例1の微小物特性計測装置900−1の水平移動ステージであるXステージ920Xのように、保持部材10の設置方向(例えば長手方向)に対して、略平行な方向(X軸方向)である必要はない。
例えば、図31(A)及び図31(B)に示される実施例2の微小物特性計測装置900−2の水平移動ステージであるYステージ920Yのように、駆動方向を、保持部材10の設置方向に対して、略直交する方向(Y軸方向)にすることも可能である。このような構成にすることで、水平移動ステージ920の繰り返し位置決め精度(位置制御の再現精度)が、付着力/帯電量計測精度に与える影響を小さくすることができる。なお、実施例2では、カンチレバー保持部材をYステージ920Yに対してX軸方向にスライド可能に構成している。
その理由は、保持部材10の設置方向(例えば長手方向)に対して、水平移動ステージ920が略平行に移動する場合、カンチレバー20の長手方向に対する保持部材10の位置が変動し、計測感度も変動し得るが(図32参照)、保持部材10の設置方向に対して、水平移動ステージ920の移動方向が略直交する場合、カンチレバー20の長手方向に対する保持部材10の位置は略一定であるためである。
[計測時のカンチレバーと保持部材の位置関係について]
保持部材10とカンチレバー20の上下方向の位置関係は,必ずしも実施例1、2に示すように保持部材10がカンチレバー20に対して、下方に位置する必要はない。例えば図33(A)〜図33(C)に示される実施例3の微小物特性計測装置900−3のように、保持部材10がカンチレバー20に対して、上方に位置する構成も可能である。実施例1、2の構成では,微小物の上下面が露出する,マイクロ/ナノグリッパー、マイクロ/ナノピンセットのような保持部材を用いる必要があったが、実施例3の構成ではマイクロ/ナノピペットのように微小物の下面のみ露出する状態で保持する保持部材も使用可能である.
[複数のカンチレバーを用いる例]
第5実施形態でも、微小物について、複数の特性を計測できるが、計測内容によって適したカンチレバーは異なる。計測内容を変える毎に、カンチレバーを変えても良いが、図34に示される実施例4の微小物特性計測装置900−4のように、複数のカンチレバーを保持でき、かつ、該複数のカンチレバーの位置を可変な構成を用いることで、より効率良く複数の計測を実施できる。
複数のカンチレバーの位置を可変な構成としては、カンチレバー保持部材をXステージ920Xに対してY軸方向にスライド可能としても良いし、カンチレバー保持部材が固定された水平移動ステージをX軸方向及びY軸方向のいずれにも移動可能に構成しても良い。
具体的には、帯電量・付着力計測用カンチレバー保持部材は接地機能だけ設け、電気抵抗・誘電率計測用カンチレバー保持部材には、電源と電流計を含めて回路を組んだ状態にする。このようなカンチレバー保持治具を製作すれば、カンチレバーの位置を変えるだけで、短時間で測定内容を変更可能である。また、実施例4の変形例として、帯電極性を判別可能にするため、帯電量計測用カンチレバーの保持部材に電圧印加機能を設けることも有用である。
以上説明した第5実施形態の微小物特性計測装置900では、カンチレバー20を、保持部材10を駆動する駆動装置(例えばZステージ930)の駆動方向とは異なる方向に駆動可能な別の駆動装置(例えば水平移動ステージ920)を更に備えている。
この場合、微小物特性計測装置900の一側(例えば下側)に試料台を設置すれば良く、微小物の採取〜計測を容易かつ迅速に行うことが可能なコンパクトなシステムを構築できる。
また、微小物特性計測装置900は、保持部材10を保持する駆動装置(例えばZステージ930)と、カンチレバー20を保持する別の駆動装置(例えば水平移動ステージ920)と、測定装置(例えば光てこ)とを支持する支持体(例えば支持部材910)を更に備えている。
この場合、微小物特性計測装置をユニット化でき、使い勝手が良い。
また、支持体は、顕微鏡のレンズが挿入される開口又は切り欠きを有し、支持体の開口又は切り欠きの周囲部に駆動装置、別の駆動装置及び測定装置が支持されている。
この場合、微小物特性計測装置を顕微鏡にアドオン・ツールとして搭載できるため、実装コストを低減できる。
なお、支持体において、顕微鏡のレンズが挿入される開口や切り欠きは必須ではない。
また、別の駆動装置は、カンチレバー20を、保持部材10を駆動する駆動装置の駆動方向に直交する方向に駆動可能であるため、カンチレバー20と保持部材10が干渉しないような装置レイアウトを容易に構築できる。なお、駆動装置の駆動方向と別の駆動装置の駆動方向は、必ずしも直交しなくても良い。
また、駆動装置は、保持部材10を鉛直方向に駆動可能であり、別の駆動装置は、カンチレバー20を水平方向に駆動可能である。
この場合、保持部材10を用いての微小物の採取作業、保持部材10及びカンチレバー20を用いての計測動作を容易かつスムーズに行うことができる。
また、別の駆動装置が、カンチレバー20を保持部材10の設置方向(例えば長手方向)に略平行な方向に駆動可能である場合には、カンチレバー20を顕微鏡視野外へ移動させることで保持部材10による微小物保持(採取)を行うことができ、カンチレバー20を顕微鏡視野内へ移動させることで保持部材10とカンチレバー20による計測を行うことができる。
また、別の駆動装置が、カンチレバー20を保持部材10の設置方向(例えば長手方向)に略直交する方向に駆動可能である場合には、カンチレバー20の長手方向に対する保持部材10位置が略一定となるため、付着力/帯電量の計測感度を略一定にできる。
また、微小物特性計測時に、保持部材10がカンチレバー20の下方に位置する場合には、保持部材10がカンチレバー20の上方に位置する場合に比べて、保持部材10のZ軸方向の移動距離を短く設定できるため、駆動装置(例えばZステージ)の選定幅が拡がる。
また、微小物特性計測時に、保持部材10がカンチレバー20の上方に位置する場合には、微小物の下面のみが露出していれば良いので、保持部材10としてマイクロ/ナノピペットも使用できる。
なお、上記第4、第5実施形態、変形例3、4では、光検出器として2分割ディテクタが用いられているが、要は、2分割以上の(2つ以上の受光領域を有する)ディテクタ(好ましくはフォトディテクタ)であれば良い。
また、測定装置は、上記各実施形態及び各変形例で説明したものに限らず、カンチレバー20の変位を測定できるものであれば、他のものでも良い。要は、光波、音波、電波等をカンチレバー20に向けて出射し、その反射波を受ける構成を有するものであることが好ましい。
また、上記各実施形態及び各変形例では、微小物特性計測装置が有する保持部材として、微小物を挟み込むものや微小物を吸着するものを例に挙げたが、これに限らず、要は、微小物を1粒子ずつ保持可能なものであれば良い。
また、上記各実施形態及び各変形例の微小物特性計測装置は、保持部材を1つ有しているが、複数有していても良い。例えば、微小物の粒径に応じて異なるサイズの複数の保持部材を使い分けるようにしても良い。また、微小物を挟み込む保持部材と微小物を吸着する保持部材を微小物の種類や大きさに応じて使い分けるようにしても良い。また、一の保持部材に保持された微小物の特性を計測している間に別の微小物を保持する他の保持部材を待機させ、一の保持部材を用いた計測が終了した直後に他の保持部材を用いた計測を行うようにしても良い。この場合、複数の微小物の特性をより効率良く計測することができる。
また、上記各実施形態及び各変形例の微小物特性計測装置は、複数の保持部材と複数のカンチレバーを有していても良い。例えば一の保持部材に保持された微小物と一のカンチレバーとを対向させ、他の保持部材に保持された別の微小物と他のカンチレバーとを対向させて複数の微小物の同種又は異種の特性を並行して計測するようにしても良い。複数の微小物の異種の特性を並行して計測する場合には、微小物を保持する保持部材とカンチレバーとの組を入れ替えて順次計測を行うようにしても良い。
また、上記各実施形態及び各変形例では、微小物特性計測装置は、処理装置60を備えているが、備えていなくても良い。この場合、処理装置60が行う制御(例えば微動ステージ50の微小移動)を手動(マニュアル)で行うようにしても良いし、処理装置60が行う演算を人が行っても良い。また、微小物特性計測装置が処理装置60を備えている場合であっても、微動ステージ50の微小移動を手動で行っても良いし、処理装置60が行う演算を人が行っても良い。
以下に、本発明の発明者らが上記各実施形態及び各変形例を発案するに至った思考プロセスを説明する。
現在、様々な工業製品や医薬品、食料品でミクロン粒子が扱われている。複写機やレーザープリンターで用いられるトナーは小径化が進み、業界最小クラスで粒子径は約5umとなっている。液晶パネル間のスペーサー用シリカ粒子もおよそ5umである。医薬品や小麦粉等の食料品もミクロン粒子は、一般的に用いられている。急激に市場が拡大している3Dプリンターにおいて有力な技術の一つに粉末積層方式があるが、この方式で採用される粉末も小さいもので、10um以下のサイズの粒子も含まれるようになってきている。このようにミクロな粒子を取り扱う分野が拡大するにつれ、これらの粒子を、より確実で精度の良いハンドリングできるよう、付着性、帯電特性、電気抵抗、誘電率等の様々な特性を正確に評価する手段が求められている。近年、ナノテクノロジーと称される微小物体の操作・計測技術が発展しているのにともない、これらのミクロン粒子についても1粒子単位でその特性を評価する手法が開発されつつある。上記のような工業分野に限らず、人体細胞も数から数十umの大きさであり、その挙動を明らかにするために、付着特性等の計測が実現できることが望まれている。
このようなニーズに対応する代表的な手法として原子間力顕微鏡(AFM)を用いた手法がある。より具体的には、シリコン製の微小な片持ち梁(カンチレバー)先端に接着剤を介して粒子を固定し、その粒子に作用する力を計測する手法である。例えば、下記の参考文献1、2においては、カンチレバー先端に固定した粒子と部材の離間、接触、離間を連続しておこない、カンチレバー先端の粒子と部材表面との離間の瞬間のカンチレバーのたわみ量から、カンチレバーと試料表面の付着力を測定している。参考文献3においては、カンチレバー先端の粒子の帯電状態を評価している。より具体的には、接地した金属板とカンチレバー先端の粒子を近接させることで、粒子が保持する電荷で発生する鏡像力をカンチレバーの反り量から求めている。更に、参考文献4においては、カンチレバー先端の粒子を電圧印加されている電極間に挿入し、その際のカンチレバー反り量を計測することで、粒子の帯電量を評価している。また、原子間力顕微鏡とは異なる方法として、参考文献5においては、スプリングを内蔵した粒子捕獲針を用いて、1粒子の付着力を計測している。更に、参考文献6においては、粒子の両端に微小電極を押し当てて、粒子の電気抵抗を計測している。
参考文献1:特開2003−330264号公報、
参考文献2:水口由紀子, 宮本賢人:原子間力顕微鏡による固体表面―粒子間の付着力測定と解析, Konica Minolta Technical Report, Vol.1 (2004), pp. 19-22、
参考文献3:西谷佳典、村松裕明、丸山博之、田之上健一郎、松坂修二、増田弘和:AFMによる気相中粒子ー壁面間相互作用力の測定, 粉体工学会夏季シンポジウム講演論文集, (2000) pp. 67-69
参考文献4:J. W. Kwek, I. U. Vakarelski, W. K. Ng, J.Y.Y. Heng, and R. B. H. Tan: Colloids and Surfaces A: Physicocheme. Eng. 385 (2011) pp. 206-212
参考文献5:特許4649564号公報
参考文献6:特許3600674号公報
上記のように、ミクロンサイズの1粒子について、特性を計測する手法は様々な方法が提案されている。一方で、これらの手法に共通する課題として、部品・部材上に付着している任意の1粒子について、評価精度と効率を両立させて、計測することが困難なことが挙げられる。参考文献1〜4記載の原子間力顕微鏡を用いた手法では、カンチレバーへ粒子を固定する作業が計測効率向上のボトルネックとなる。一般的には、エポキシ接着剤を用いてカンチレバーへ粒子を固定するが、カンチレバーへの接着剤塗布、粒子のカンチレバー先端への接触、接着剤の硬化をおこなうと、トータルの作業時間は数時間に及ぶ。
参考文献1〜4の手法でも、部材上の任意粒子の付着力については、原理的には、計測できるが、例えば、10粒子について付着力計測を試みた場合、数十時間かかり現実的ではない。更に、帯電量を計測しようとした場合、カンチレバーへの固定中に帯電状態が変化してしまう可能性が高く、こちらは原理的にも計測困難である。
参考文献6の電気抵抗を計測する手法についても、そもそも電極上に粒子を配置するために、専用のマニピュレータを準備する必要がある。参考文献6の手法単独で任意粒子の電気抵抗を計測することは困難であり、別途用意すべきマニピュレータと組み合わせた評価を実施するとなると計測効率の低下は避けられない。
参考文献5の手法は、任意粒子について付着力を計測できるが、計測精度が課題である。すなわち、参考文献5の手法は計測対象の2物体が離間する際の振動数をモニタリングすることで付着力を算出するが、粒子を保持しながら離脱させる際の振動状態をモニタリングするという機構上、計測値が装置全体の振動の影響を受け易い。参考文献1〜4のように、原子間力顕微鏡を用いる手法に比べて、確実に計測精度は劣る。
以上のような状況を鑑みると、試料台や部品等に付着している任意のミクロンサイズの微小物の特性計測について、計測精度と計測効率を両立する計測装置の実現が望まれる。
そこで、発明者らは、計測精度と計測効率を両立すべく、微小物を保持できる保持部材と片持ち梁を接触、もしくは近接させた状態で片持ち梁に作用する力を計測することで、微小物の付着力や帯電量(鏡像力)を計測する上記第1〜第3実施形態及び各変形例の微小物特性装置を開発した。当該微小物特性計測装置を用いれば、任意の微小物を採取・保持した上で、更に、微小物に作用する力計測を高精度に実現できる。特に、微小物の保持機能と力計測機能を、別々の部品に担わせたことが本発明の本質である。具体的には、保持機能はマイクログリッパーやマイクロピペット、ピンセットに担わせて、力計測は原子間力顕微鏡用のカンチレバーに担わせる。このように微小物の保持と力計測の機能を分離したことで、参考文献1〜4の手法と同等レベルの精度で、かつ、効率の良い計測を実現できる。更には、片持ち梁と保持部材に電極機能を担わせることで、電気抵抗や誘電率等、微小物の電気特性の計測も可能になる。
更に、上記第1〜第3実施形態及び各変形例の微小物特性計測装置の利点として、片持ち梁を変えるだけで、複数の計測項目をカバーできることが挙げられる。研究者・技術者が品質評価や更にはメカニズム解析を進める上では、一つの特性値の評価では不十分なことが多い。一方、解析内容に応じて、複数の装置を導入するとなると、装置導入コスト、更には、維持コストが膨大になる。また、同一の微小物について、複数の特性計測を試みようとした場合、微小サイズの同一サンプルを複数の計測装置間で移動させなければならない為、高度な位置特定技術が必要になる上、評価が長時間化し易い。本発明を用いれば、一つの装置で、付着力、帯電量(鏡像力)、電気抵抗、誘電率が計測可能である。加えて、複数のカンチレバーを保持できる構成にすれば、上記の特性全てを、カンチレバーの交換無しに、短時間で複数の特性について計測できるようになる。
このように、従来の微小物特性計測装置では困難であった様々な問題を、上記第1〜第3実施形態及び各変形例によって解決したが、一方で別な問題もある。以下に2つの問題1、2について述べる。
一つ目の問題1は、保持部材の汚染によって微小物の特性値を高精度に計測できないことである。本発明が計測対象とするミクロンサイズの微小物は、重力よりも分子間力が支配的になる。故に、計測時には、計測対象以外の微小物が保持部材に付着する等の予期せぬ汚染が頻発する。このような汚染は、例えば、帯電量計測では汚染物の帯電量を含む計測値を、電気抵抗計測では汚染物の抵抗値も含まれた誤差を含む計測値を与えることになる。よって、高精度計測を実現するためには、常に保持部材の汚染状態を把握し、汚染が確認された場合は速やかに除去されなければならない。
しかしながら、上記第1〜第3実施形態及び各変形例では、保持部材の汚染状態の確認と除去は容易ではない。この発明では、計測中に光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて保持部材の状態を観察しながら行うが、このような観察手段では保持部材全体の汚染状態を常に把握することが困難である。汚染状況を確認するためには、例えば、保持部材を一度装置から外して角度を変えて、あらゆる面から観察する方法が考えられるが、このような方法は時間がかかるため計測毎に実施することは現実的ではない。更に、上記第1〜第3実施形態及び各変形例では、汚染を除去するために、例えば、ウレタンゴム等の粘着性の高い部材に保持部材を直接こすり付けて物理的に除去する方法が考えられるが、このような方法では、汚染を除去するために時間がかかることと、保持部材の破損のリスクにより、頻繁に実施することができない。
二つ目の問題2は、上記第1〜第3実施形態及び各変形例では高精度に微小物の粘弾性特性を計測することができないことである。上記第1〜第3実施形態及び各変形例を用いて粘弾性を計測する場合、フォースカーブの計測による静的粘弾性計測が実施できる。しかしながら、このような静的計測は直接特性値を得ることができないため計測結果の比較が難しいといった問題がある。
そこで、発明者らは、上記2つの問題1、2を解決すべく、微小物を保持できる保持部材、片持ち梁および片持ち梁に作用する力を計測する計測系、更に、保持部材を振動させる装置とその振動による保持部材の変位量を計測する計測装置で構成される第4実施形態の微小物特性計測装置800を開発した。
第4実施形態の微小物特性計測装置800を用いれば、保持部材に付着した汚染物を容易に確認し確実に除去でき、微小物の高精度な特性値の計測が可能となる。保持部材を振動させその振幅を計測することで、保持部材の重量を計測することができる。これにより、汚染による重量変化を、保持部材を直接観察することなく容易に確認することができる。また、汚染が確認された際は、保持部材を振動させて汚染を除去することができる。更に、再度保持部材の重量変化を確認することで、汚染が除去されたかどうかを知ることができる。
また、第4実施形態の微小物特性計測装置800を用いれば高精度な微小物の粘弾性計測が可能となる。保持部材により微小物を振動させ、片持ち梁に接触させて、片持ち梁の変位と位相変化を計測することで、動的な粘弾性計測が可能となる。これらの計測値を適切なモデル式に代入することで直ちに貯蔵弾性率や損失弾性率等の比較可能な粘弾性特性値を得ることができる。これにより、定量的で高精度な微小物の粘弾性計測が実現される。
以上のように従来の微小物特性計測装置では困難であった様々な問題を、上記第1〜第4実施形態及び各変形例によって解決したが、一方で、更なる別な問題も残っている。具体的には、上記の技術を実装する際に、微小物の保持部材やカンチレバーを用いた力検出系/電極、試料台、XYステージ等、複数の特殊なデバイスをシステム化する必要があり、導入コストが高額になることである。当然,使用頻度が高い場合は,専用の装置を導入しても、導入・維持コスト等を回収できるが、使用頻度が低い場合もしくは早急に測定を開始したい場合は、低コストかつ短納期で導入可能な装置に対するニーズも有ると考えられる。
更に、上記第1〜第4実施形態及び各変形例ではステージ上に試料台と力検出系を設置する必要があるため,装置寸法が大型化しやすいという問題もある。いわゆる光学顕微鏡のステージサイズ(5〜10cm角)では、設置は困難である。ステージの駆動距離は大きくならざるを得ない一方で、微小物保持の際は,ミクロンオーダーの移動を実施せねばならない為,(手動ではなく)自動ステージを導入しないと、実用的な評価時間も実現できない.設置面積についても、より大きくならざるを得ない。
以上のような状況を鑑みると、部品等に付着している任意のミクロンサイズの微小物の特性計測を低コストかつコンパクトに実現する手法を提供することが望まれる。
そこで、発明者らは、微小物を保持できる保持部材、片持ち梁及び片持ち梁に作用する力を計測する計測系、更に該片持ち梁を水平方向に駆動させる駆動系が一体で構成された第5実施形態の微小物特性計測装置900を開発した。より具体的にはリング状の支持部材に保持部材と片持ち梁による力検出系を取り付けた装置である。微小物を保持する際は、光学顕微鏡の視野に片持ち梁が含まれない位置に、微小物の特性計測を実施する際は、保持部材で保持した微小物上に片持ち梁が位置するように、駆動系で位置調整をおこなう。第5実施形態の微小物特性計測装置900を用いれば、既存の光学顕微鏡の光学レンズに、アドオン的に任意微小物計測システムを実装できる。計測精度は上記第1〜第4実施形態及び各変形例よりも劣るものの、上記第1〜第4実施形態及び各変形例で実現した、付着力・帯電量・電気抵抗・誘電率の全ての計測が実施可能である。
更に、第5実施形態では、ステージ上に試料台のみが設置できれば良く、コンパクトな装置設計も実現できる。微小物を保持する際の位置調整のために、試料台にXYの駆動機構は必要だが、手動の駆動機構で十分である。
以上のように、第5実施形態の微小物特性計測装置900を用いれば、低コストで、かつ、コンパクトな装置設計での微小物特性計測を実現できる。
10…保持部材、20…カンチレバー、30…レーザ変位計、40…固定治具(駆動装置の一部)、50…微動ステージ(駆動装置の一部)、60…処理装置、100…微小物特性計測装置。
特開2014‐119305号公報

Claims (14)

  1. 微小物を保持可能な導電性を有する保持部材と、
    前記保持部材に保持された前記微小物に対向する導電性を有するカンチレバーと、
    前記微小物を保持する保持部材及び前記カンチレバーの一方を、前記保持部材に保持された前記微小物と前記カンチレバーとが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な駆動装置と、
    前記保持部材及び前記カンチレバーに両極が個別に接続された電源と、
    前記保持部材と前記カンチレバーとが前記微小物を介して導通しているときに前記微小物に流れる電流を計測する電流計と、を備え、
    前記保持部材は、前記微小物を把持可能な一対のアームを有し、
    前記一対のアームに把持された前記微小物と前記カンチレバーとが接触しているときに、前記一対のアームの一方と前記カンチレバーが導通し、他方と前記カンチレバーが導通しない微小物特性計測装置。
  2. 前記カンチレバーの変位を測定する測定装置を更に備えることを特徴とする請求項に記載の微小物特性計測装置。
  3. 前記保持部材に保持された微小物と前記カンチレバーとが接触しているときの前記電流計の計測結果から前記微小物の特性を求める処理装置を更に備えることを特徴とする請求項又はに記載の微小物特性計測装置。
  4. 前記微小物の特性は、該微小物の電気抵抗であることを特徴とする請求項に記載の微小物特性計測装置。
  5. 前記電源は、交流電源であり、
    前記保持部材と前記カンチレバーとが前記微小物を介して導通しているときに前記微小物に印加される電圧を計測する電圧計を更に備え、
    前記微小物の特性は、該微小物の誘電率及び電気抵抗の少なくとも一方であることを特徴とする請求項に記載の微小物特性計測装置。
  6. 微小物を保持可能な保持部材と、
    前記保持部材に保持された前記微小物に個別に対向可能な複数のカンチレバーを一体的に含むカンチレバー装置と、
    前記複数のカンチレバーのうち、前記保持部材に保持された前記微小物に対向するカンチレバーの変位を測定する測定装置と、
    前記微小物を保持する保持部材及び前記カンチレバー装置の一方を、前記保持部材に保持された前記微小物と前記複数のカンチレバーのうち任意の一のカンチレバーとが対向する位置に移動させ、前記保持部材に保持された前記微小物と前記一のカンチレバーとが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な駆動装置と、を備える微小物特性計測装置。
  7. 前記保持部材は、導電性を有し、
    前記複数のカンチレバーは、導電性を有するカンチレバーを少なくとも1つ含み、
    前記保持部材及び前記導電性を有するカンチレバーに両極が個別に接続された電源と、
    前記導電性を有するカンチレバーと前記保持部材とが前記微小物を介して導通しているときに該微小物に流れる電流を計測する電流計と、を更に備えることを特徴とする請求項に記載の微小物特性計測装置。
  8. 前記駆動装置を制御し、前記測定装置の測定結果に基づいて前記微小物の特性を求めることが可能な処理装置を更に備えることを特徴とする請求項に記載の微小物特性計測装置。
  9. 前記処理装置は、前記保持部材に保持された前記微小物と前記導電性を有するカンチレバーとが接触しているときの前記電流計の計測結果に基づいて、前記微小物の特性を求めることが可能なことを特徴とする請求項に記載の微小物特性計測装置。
  10. 前記電源は、交流電源であり、
    前記導電性を有するカンチレバーと前記保持部材とが前記微小物を介して導通しているときに該微小物に印加される電圧を計測する電圧計を更に備え、
    前記処理装置は、前記保持部材に保持された前記微小物と前記導電性を有するカンチレバーとが接触しているときの前記電流計及び前記電圧計の計測結果に基づいて、前記微小物の特性を求めることが可能なことを特徴とする請求項又はに記載の微小物特性計測装置。
  11. 前記処理装置は、前記カンチレバー毎に接地、電圧印加条件を変更可能なことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の微小物特性計測装置。
  12. 微小物が固定される導電性を有する部材と、
    前記導電性を有する部材に固定された前記微小物に対向する、導電性を有するカンチレバーと、
    前記微小物が固定された部材及び前記カンチレバーの一方を、前記導電性を有する部材に固定された前記微小物と前記カンチレバーとが接近する方向及び離間する方向に駆動可能な駆動装置と、
    前記導電性を有する部材及び前記カンチレバーに両極が個別に接続された電源と、
    前記導電性を有する部材と前記カンチレバーとが前記微小物を介して導通しているときに前記微小物に流れる電流を計測する電流計と、を備え、
    前記導電性を有する部材は、前記微小物を把持可能な一対のアームを有し、
    前記一対のアームに把持された前記微小物と前記カンチレバーとが接触しているときに、前記一対のアームの一方と前記カンチレバーが導通し、他方と前記カンチレバーが導通しない微小物特性計測装置。
  13. 前記電源は、交流電源であり、
    前記導電性を有する部材と前記カンチレバーとが前記微小物を介して導通しているときに前記微小物に印加される電圧を計測する電圧計を更に備えることを特徴とする請求項12に記載の微小物特性計測装置。
  14. 前記カンチレバーの変位を測定する測定装置を更に備えることを特徴とする請求項12又は13に記載の微小物特性計測装置。
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